(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の多層基板10の厚み方向DRtに沿った平面で多層基板10を切断した断面を示す断面図である。
図1に示すように、この多層基板10は、例えば銅箔から成る導体パターンを含む複数の導体層12、13、14、15、16、17(以下、複数の導体層12〜17と略することがある)と、絶縁体で構成された複数の絶縁層21、22、23、24、25、26(以下、複数の絶縁層21〜26と略することがある)とを有している。その複数の導体層12〜17および複数の絶縁層21〜26は、多層基板10の厚み方向DRtである基板厚み方向DRtへ交互に積層されている。また、多層基板10は、複数のビア34、36、38も有している。
【0014】
具体的に、複数の導体層12〜17は、第1導体層としての第1グランド包含層12と、第2導体層としての第1線路包含層13と、第3導体層14と、第4導体層15と、第5導体層としての第2グランド包含層16と、第6導体層としての第2線路包含層17とを含んでいる。その各導体層12〜17が有する導体パターンの厚みは、例えば互いに同じになっている。また、複数の絶縁層21〜26は、第1絶縁層21と第2絶縁層22と第3絶縁層23と第4絶縁層24と第5絶縁層25と第6絶縁層26とを含んでいる。
【0015】
すなわち、それらの複数の導体層12〜17および複数の絶縁層21〜26は、第1グランド包含層12、第1絶縁層21、第1線路包含層13、第2絶縁層22、第3導体層14、第3絶縁層23、第4導体層15、第4絶縁層24、第2グランド包含層16、第5絶縁層25、第2線路包含層17、第6絶縁層26の順に、基板厚み方向DRtにおいて一方側から順番に積層されている。このようなことから、基板厚み方向DRtは、複数の導体層12〜17の積層方向でもあり、複数の絶縁層21〜26の積層方向でもある。
【0016】
第1線路包含層13は、
図2に示すように、第1伝送線路131と第1ランド132とを有している。その第1伝送線路131は、例えば1GHzを超える高周波の電気信号(以下、単に「信号」とも呼ぶ)を伝送する導体パターンである。その第1伝送線路131の長手方向に直交する幅w1すなわち第1伝送線路131の線路幅w1は、第1伝送線路131の全長にわたって一定である。そして、第1伝送線路131は、その線路幅w1で直線的に延びている。
【0017】
第1ランド132は、第1伝送線路131が接続する導体パターンである。その第1ランド132は、例えば直径d1の円形状を成している。その第1ランド132の直径d1は第1伝送線路131の線路幅w1よりも大きい。
【0018】
また、第1線路包含層13は、第1伝送線路131および第1ランド132の他に、
図1に示すように、2つの中間グランドパターン133、134を備えている。
【0019】
第2線路包含層17は、
図3に示すように、第2伝送線路171と第2ランド172とを有している。その第2伝送線路171は、第1伝送線路131と同様に例えば1GHzを超える高周波の信号(すなわち、高周波の交流信号)を伝送する導体パターンである。その第2伝送線路171の長手方向に直交する幅w2すなわち第2伝送線路171の線路幅w2は、第2伝送線路171の全長にわたって一定である。そして、第2伝送線路171は、その線路幅w2で直線的に延びている。
【0020】
第2ランド172は、第2伝送線路171が接続する導体パターンである。その第2ランド172は、例えば直径d2の円形状を成している。その第2ランド172の直径d2は第2伝送線路171の線路幅w2よりも大きい。
【0021】
また、
図1〜3に示すように、第1ランド132の直径d1は第2ランド172の直径d2よりも小さい。すなわち、第1ランド132のランド面積S1は第2ランド172のランド面積S2よりも小さい。
【0022】
また、第1ランド132は例えば、第1ランド132の中心位置が第2ランド172の中心位置に対し基板厚み方向DRtへ重ねて設けられるように配置されている。厳密に言えば、第1ランド132は、多層基板10の平面方向DRpにおけるそれらのランド132、172の中心位置が互いに一致するように配置されている。従って、第1ランド132は、第2ランド172を基板厚み方向DRtへ投影した投影外形の範囲内に第1ランド132の投影外形が入るように配置されている。なお、多層基板10の平面方向DRpすなわち基板平面方向DRpとは、多層基板10の表面101、102に沿った方向であり、基板厚み方向DRtに対して交差する方向、厳密には基板厚み方向DRtに対して直交する方向である。そして、その基板平面方向DRpは、各導体層12〜17の平面方向DRpでもあり、各絶縁層21〜26の平面方向DRpでもある。
【0023】
第1グランド包含層12は第1グランドパターン121を有している。この第1グランドパターン121は、面状に拡がる導体パターンである。第1グランドパターン121は、例えば
図1および
図4に示すように、基板平面方向DRpにおいて多層基板10の全面にわたって面状に拡がるように形成されている。
【0024】
また、第1グランドパターン121は、不図示のグランド電位とされた部材と電気的に接続されており、それにより第1グランドパターン121はグランド電位に維持されている。要するに、第1グランドパターン121は接地されている。
【0025】
図1に示すように、第3導体層14は、導体パターンとして、1つの中間信号パターン141と2つの中間グランドパターン142、143とを備えている。これと同様に、第4導体層15も、導体パターンとして、1つの中間信号パターン151と2つの中間グランドパターン152、153とを備えている。
【0026】
第1絶縁層21は、第1線路包含層13に対し基板厚み方向DRtの一方側に隣接する隣接絶縁層である。従って、第1絶縁層21は、第1グランド包含層12と第1線路包含層13との間に配置されている。すなわち、第1グランド包含層12は、第1線路包含層13に対し第1絶縁層21を挟んで積層されている。
【0027】
第2グランド包含層16は、複数の導体層12〜17のうち第1グランド包含層12とは別の層を成すグランド包含層である。第2グランド包含層16は、第2線路包含層17に対し第5絶縁層25を挟んで積層されている。その第5絶縁層25は、上述の第1絶縁層21とは異なる他の絶縁層として設けられている。
【0028】
また、第2グランド包含層16は、第2グランドパターン161を有している。その第2グランドパターン161と第1グランドパターン121との間には第1グランドビア34と第2グランドビア36とが設けられている。そして、その第1グランドビア34および第2グランドビア36は第1グランドパターン121および第2グランドパターン161へ接合されており、それによって、第2グランドパターン161は、第1グランドパターン121に電気的に接続されている。詳細には、上述した合計6つの中間グランドパターン133、134、142、143、152、153も第2グランドパターン161と共に、第1グランドビア34および第2グランドビア36によって第1グランドパターン121に電気的に接続されている。
【0029】
従って、上記の合計6つの中間グランドパターン133、134、142、143、152、153および第2グランドパターン161も第1グランドパターン121と同様にグランド電位に維持されている。これらの中間グランドパターン133、134、142、143、152、153、第2グランドパターン161、第1グランドビア34、および第2グランドビア36は全体として、第1グランドパターン121に電気的に接続されたグランド接続部40を構成している。
【0030】
そして、そのグランド接続部40および第1グランドパターン121は、多層基板10の中でグランド電位に維持されたグランド部分42を構成している。そのグランド部分42は
図5に示されている。その
図5は、
図1に示す多層基板10の断面を模式的に示すと共に、多層基板10の中に生じる容量成分およびインダクタンス成分を模式的に表した模式図である。なお、基板平面方向DRpにおいて第1グランドビア34は、
図1に示すように、第2グランドビア36よりも第1ランド132に近い位置に配置されている。
【0031】
また、第2グランド包含層16は、第2グランドパターン161の他に、
図1に示すように、中間信号パターン162を備えている。
【0032】
信号ビア38は、基板厚み方向DRtにおいて第1ランド132と第2ランド172との間に配置されている。信号ビア38は、その第1ランド132と第2ランド172とを電気的に相互に接続している。詳細には、上記の合計3つの中間信号パターン141、151、162がその第1ランド132と第2ランド172との間に配置されているので、信号ビア38は、その合計3つの中間信号パターン141、151、162と第1ランド132と第2ランド172とを電気的に相互に接続している。
【0033】
また、信号ビア38は、第1〜第4信号ビア構成部38a、38b、38c、38dから構成されている。その第1信号ビア構成部38aは、第1ランド132と第3導体層14の中間信号パターン141との間に配置され、その第1ランド132と中間信号パターン141とを互いに接続する。また、第2信号ビア構成部38bは、第3導体層14の中間信号パターン141と第4導体層15の中間信号パターン151との間に配置され、その2つの中間信号パターン141、151を互いに接続する。また、第3信号ビア構成部38cは、第4導体層15の中間信号パターン151と第2グランド包含層16の中間信号パターン162との間に配置され、その2つの中間信号パターン151、162を互いに接続する。また、第4信号ビア構成部38dは、第2グランド包含層16の中間信号パターン162と第2ランド172との間に配置され、その中間信号パターン162と第2ランド172とを互いに接続する。
【0034】
また、信号ビア38が設けられている関係から、
図1および
図3に示すように、第2線路包含層17の第2伝送線路171は、第2グランドパターン161と隣り合うか否かに応じて2つの部位171a、171bに分かれる。すなわち、第2伝送線路171は、第5絶縁層25を挟んで第2グランドパターン161と隣り合う線路部171aと、その線路部171aと第2ランド172との間に配置されたランド接続部171bとを有している。そして、線路部171aは、ランド接続部171bを介して第2ランド172へ接続している。
【0035】
第2伝送線路171の長手方向において線路部171aとランド接続部171bとの境界位置Pbdは、第2グランドパターン161のうち信号ビア38側の端縁161aの位置Peに一致する。そして、ランド接続部171bの線路長b2は、第2伝送線路171の長手方向において、ランド接続部171bのうち第2ランド172へ接続する接続端171cから上記境界位置Pbdまでの長さになる。
【0036】
また、上述したような構成から、多層基板10では、第1伝送線路131、第1ランド132、信号ビア38、第2ランド172、および第2伝送線路171はその記載順で直列に接続されている。そして、それらの第1伝送線路131、第1ランド132、信号ビア38、第2ランド172、および第2伝送線路171は、信号が
図5の矢印AS1、AS2、AS3のように伝送される1本の信号伝送路を構成している。その信号伝送路は、本実施形態では例えば50Ωのインピーダンスを基本として構成されている。
【0037】
また、
図1および
図5に示すように、その信号伝送路には、上記のように信号ビア38が含まれている。従って、多層基板10の信号伝送路は、インピーダンスが50Ωに維持された2箇所の50Ω系伝送線路部分131、171a(以下、単に伝送線路部分131、171aと呼ぶ)と、その伝送線路部分131、171a以外のビア部分44とから構成されている。
【0038】
その伝送線路部分131、171aは、上記のようにインピーダンスが50Ωに維持された部分である。従って、その伝送線路部分131、171aとは、信号伝送路を信号として流れる電流の向きに直交する導体断面が一定に維持され且つその導体断面とグランド部分42との間の距離が一定に維持されて連なっている部分である。すなわち、本実施形態では、第1伝送線路131が2箇所の伝送線路部分131、171aのうちの一方に該当する。そして、第2伝送線路171の線路部171aがその伝送線路部分131、171aのうちの他方に該当する。
【0039】
また、ビア部分44では、上記伝送線路部分131、171aが備えている構成が崩れている。すなわち、ビア部分44では、上記導体断面が一定に維持され且つその導体断面とグランド部分42との間の距離が一定に維持されて連なっているという構成が崩れている。そして、その構成の崩れの原因は、多層基板10の信号伝送路において信号ビア38が設けられていることである。更に、その構成の崩れの結果として、ビア部分44のインダクタンス成分は第1伝送線路131のインダクタンス成分に対して変化している。従って、ビア部分44とは、言い換えれば、信号ビア38が設けられることに起因してインダクタンス成分が第1伝送線路131に対して変化している部分である。
【0040】
具体的には、ビア部分44は、第1ランド132、第2ランド172、第2伝送線路171のランド接続部171b、3つの中間信号パターン141、151、162、および信号ビア38から構成されている。
【0041】
次に、ビア部分44の容量成分Cvとインダクタンス成分LvとインピーダンスZvとについて説明する。ビア部分44のインピーダンスZvは、ビア部分44の容量成分Cvとインダクタンス成分Lvとに基づき下記式F1で算出される。
【0042】
【数1】
先ず、ビア部分44の容量成分Cvについて見ると、
図1および
図5に示すように、第1ランド132および第1グランドパターン121は、第1絶縁層21を挟んだ容量結合によって寄生容量C
LANDを生じている。この寄生容量C
LANDを第1寄生容量C
LANDと呼ぶものとする。
【0043】
また、ビア部分44は容量結合部441を有している。その容量結合部441は、グランド部分42のうちの一部位421に対し基板平面方向DRpへ並んで配置されている。これにより、その容量結合部441は、その一部位421であるグランド側容量部位421に対して容量結合しているので、そのグランド側容量部位421と容量結合部441との間には第2寄生容量C
VIAが生じている。ビア部分44の容量成分Cvは、第1寄生容量C
LANDと第2寄生容量C
VIAとの合計として算出することができる。
【0044】
なお、容量結合部441は、具体的には、第1ランド132と、第2グランド包含層16の中間信号パターン162と、信号ビア38のうち第1ランド132とその中間信号パターン162との間の部分とから構成されている。その信号ビア38のうち第1ランド132とその中間信号パターン162との間の部分とは第1〜第3信号ビア構成部38a〜38cである。
【0045】
また、厳密に言えば、容量結合部441以外の部分たとえば第2伝送線路171のランド接続部171bとグランド部分42との間にも寄生容量は生じているが、その寄生容量は上記の第1および第2寄生容量C
LAND、C
VIAと比較して非常に小さい。従って、ビア部分44の容量成分Cvを算出により推定する上で、上記の寄生容量C
LAND、C
VIA以外の寄生容量を考慮する必要はないと考えられる。
【0046】
次に、ビア部分44のインダクタンス成分Lvについて見ると、そのインダクタンス成分Lvは、第1インダンクタンスL
LINEと第2インダンクタンスL
VIA1と第3インダンクタンスL
VIA2との合計として算出することができる。
【0047】
その第1インダンクタンスL
LINEは第2伝送線路171のランド接続部171bのインダンクタンスである。また、第2インダンクタンスL
VIA1は、ランド接続部171bと容量結合部441との間の部分であるビア中間部442のインダンクタンスである。そのビア中間部442は、具体的には、第2ランド172と、信号ビア38のうち第2ランド172と第2グランド包含層16の中間信号パターン162との間の部分である第4信号ビア構成部38dとから構成されている。また、第3インダンクタンスL
VIA2は容量結合部441のインダンクタンスである。
【0048】
このようにビア部分44の容量成分Cvおよびインダクタンス成分Lvが構成されているので、上記式F1は、第1、第2寄生容量C
LAND、C
VIAと第1〜第3インダンクタンスL
LINE、L
VIA1、L
VIA2とを用いて下記式F2のように表される。
【0049】
【数2】
上記式F2は、ビア部分44全体のインピーダンスZvを主要部分から近似して計算するものである。そして、上記式F2から算出されるインピーダンスZvが、ビア部分44に接続する伝送線路部分131、171aのインピーダンス(例えば50Ω)に近いほど、インピーダンスの整合がとれており、伝送される信号の反射が少なくなる。
【0050】
上記式F2の第1インダンクタンスL
LINEは下記式F3によって算出される。
【0051】
【数3】
上記式F3において、b2はランド接続部171bの線路長であり、その単位は「cm」である。また、w2は第2伝送線路171の線路幅すなわちランド接続部171bの線路幅であり、その単位は「cm」である。また、t2は第2伝送線路171の銅箔厚さ(言い換えれば、導体パターン厚さ)すなわちランド接続部171bの銅箔厚さであり、その単位は「cm」である。本実施形態の多層基板10では何れの導体パターンも同じ銅箔厚さt2である。
【0052】
また、μrは多層基板10の導体パターンの比透磁率であり、具体的にその導体パターンは銅箔で構成されているのでμrは銅の比透磁率である。また、T(x)は下記式F4および式F5から算出される補正項である。また、上記式F3から得られる第1インダンクタンスL
LINEの単位は「μH」であるので、その第1インダンクタンスL
LINEは単位「H」に換算された上で上記式F2へ代入される。また、上記式F3に含まれる対数は自然対数であり、以降で説明する計算式に含まれる対数も全て自然対数である。また、各計算式の間で同一の符号が用いられている場合にはその同一の符号は同一のパラメータを表している。
【0054】
【数5】
補正項T(x)は上記式F5のxを用いて上記式F4から算出される。上記式F5において、fはビア部分44が伝送する信号の周波数であり、その単位は「Hz」である。また、σは、導体パターンおよび信号ビア38の導電率すなわちその構成材料である銅の導電率であり、その単位は「S/m」である。
【0055】
また、第2インダンクタンスL
VIA1は下記式F6によって算出される。
【0056】
【数6】
上記式F6において、btは基板厚み方向DRtにおけるビア中間部442の長さであり、その単位は「cm」である。また、aは、一定の円形断面を有するようにビア部分44を平均化した仮想のビア円柱が有する半径すなわちビア半径であり、その単位は「cm」である。例えば、その仮想のビア円柱は、基板厚み方向DRtにおいてビア部分44と同じ長さを有し且つそのビア部分44と同じ体積を有するように想定される。また、上記式F6から得られる第2インダンクタンスL
VIA1の単位は「μH」であるので、その第2インダンクタンスL
VIA1は単位「H」に換算された上で上記式F2へ代入される。
【0057】
上記式F3および式F6は何れも、リファレンスとなるグランドが無い部位に関するインダクタンス成分の計算式である。但し、ランド接続部171bの断面形状が長方形である一方で上記仮想のビア円柱の断面形状が円形であるので、それぞれに適用される式が相互に異なっている。
【0058】
また、第3インダンクタンスL
VIA2は下記式F7によって算出される。下記式F7は、リファレンスとなるグランドが有る部位に関するインダクタンス成分の計算式である。
【0059】
【数7】
上記式F7において、μは多層基板10の導体パターンの透磁率であり、具体的にその導体パターンは銅箔で構成されているのでμは銅の透磁率である。μの単位は「H/m」である。また、hは、容量結合部441における上記仮想のビア円柱の中心軸線とグランド側容量部位421との間の基板平面方向DRpにおける間隔である。すなわち、hは、信号ビア38の中心軸線とグランド側容量部位421との間の基板平面方向DRpにおける間隔、要するに信号ビア−グランド間距離である。hの単位は「cm」である。また、上記式F7から得られる第3インダンクタンスL
VIA2の単位は「H」である。なお、上記仮想のビア円柱の中心軸線は信号ビア38の中心軸線に一致する。
【0060】
また、第2寄生容量C
VIAは下記式F8によって算出される。下記式F8は、リファレンスとなるグランドが有る部位に関する容量成分の計算式である。
【0061】
【数8】
上記式F8において、εpは、ビア部分44の容量結合部441とグランド部分42のグランド側容量部位421との間に配置された絶縁材の誘電率であり、その単位は「F/m」である。その絶縁材および各絶縁層21〜26の材質は何れも同一である。また、上記式F8から得られる第2寄生容量C
VIAの単位は「F」である。
【0062】
また、第1寄生容量C
LANDは下記式F9によって算出される。下記式F9は、コンデンサの容量計算にも用いられる計算式であり、並行平板間の容量成分を算出する計算式である。
【0063】
【数9】
上記式F9において、S1は第1ランド132のランド面積であり、その単位は「m
2」である。また、Dgは、基板厚み方向DRtにおける第1ランド132と第1グランドパターン121との間の間隔、すなわちランド−グランド間距離である。Dgの単位は「m」である。また、上記式F9中のεtは、第1ランド132と第1グランドパターン121との間に配置された絶縁材料の誘電率、すなわち、本実施形態では第1絶縁層21の誘電率である。但し、その第1絶縁層21は、容量結合部441とグランド側容量部位421との間の絶縁材と同じ材質であるので、上記式F9中のεtは上記式F8中のεpと同じ値である。
【0064】
また、上記式F9から得られる第1寄生容量C
LANDの単位は「F」である。
【0065】
以上、説明した上記式F2〜式F9からビア部分44のインピーダンスZvを定量的に得ることが可能である。
【0066】
ところで、1GHzを超える高周波の信号を伝送する信号伝送路においては、伝送損失による信号の劣化を低減することが求められる。その信号伝送路は、
図1で言えば、第1および第2伝送線路131、171、第1および第2ランド132、172、および信号ビア38などから構成されている。
【0067】
その信号伝送路における伝送損失としては例えば、導体損失、誘電損失、および信号反射の3つが挙げられる。その伝送損失のうちの1つである導体損失は、一般的に銅箔で構成される導電材の断面形状、その導電材のサイズおよび表面粗さに依存する。また、誘電損失は、絶縁体である誘電材の材料特性に依存する。
【0068】
また、信号反射は、信号伝送路のインピーダンスの不整合箇所で生じる反射によって、信号が伝達しにくくなることに起因するものである。特に、その信号反射による伝送損失は数10GHzを超える高周波の信号伝送において顕著なる。従って、信号伝送路のインピーダンスの不整合を低減することが多層基板10の高周波特性の向上につながる。
【0069】
信号伝送路の特性インピーダンスZは、インダクタンス成分をLとし容量成分をCとすれば、「Z=(L/C)
1/2」の関係にある。そして、例えば
図1に示す本実施形態のように信号伝送路の途中に信号ビア38が設けられている構造では、信号ビア38とその信号ビア38に接続される線路包含層13、17の伝送線路131、171との間にて構造上、上記両成分L、Cの値が変化する。これにより、その信号ビア38と伝送線路131、171との間にてインピーダンスの不整合が生じ得る。
【0070】
ここで、その信号ビア38の単位長さあたりのインダクタンス成分は、その信号ビア38の断面積や信号ビア38とグランドおよび周辺金属との距離などによって変化する。そして、このインダクタンス成分を容量成分の変化によって相殺することができれば、インピーダンスの値の変化が抑制される。
【0071】
このような点から、上述の特許文献1に記載の多層プリント基板では、誘電材に空洞が設けられ、その誘電材の見かけの誘電率が小さくされている。これにより、その特許文献1の多層プリント基板ではインピーダンスの変化が抑制されている。
【0072】
これに対し、本実施形態では、ビア部分44の容量成分Cvへの寄与度として、
図1および
図5に示す第1ランド132と第1グランドパターン121との間に生じる第1寄生容量C
LANDの寄与度が大きいという点が着目されている。そして、第1ランド132のランド直径d1の変更、または、その第1ランド132と容量結合する第1グランドパターン121の一部に導体の欠落を設けること等でその第1寄生容量C
LANDを増減させることができる。従って、そのようにランド直径d1を変更すること、第1グランドパターン121の一部に導体の欠落を設けること、またはそれらの組合せ等により、ビア部分44のインピーダンスを調整することができる。このようにして信号反射が抑制されれば、多層基板10の伝送特性が向上する。
【0073】
そこで、本実施形態では、第1寄生容量C
LANDは所定容量とされている。そして、その所定容量は、上記式F2〜式F9を用いて、第1伝送線路131に対するビア部分44のインダクタンス成分Lvの変化に起因したビア部分44のインピーダンスZvの変化を抑えるように求められた大きさの容量とされる。また、上記式F2の右辺に含まれている容量成分は、第1寄生容量C
LANDおよび第2寄生容量C
VIAだけであるので、第1寄生容量C
LANDは、ビア部分44の容量成分Cvが第1寄生容量C
LANDと第2寄生容量C
VIAとの合計であるとして、上記所定容量とされている。
【0074】
そして、その第1寄生容量C
LANDの調整は、第1ランド132のランド面積S1の増減によって行われる。すなわち、第1ランド132は、第1寄生容量C
LANDが上記所定容量となるように決定されたランド面積S1を有している。
【0075】
具体的には次のような複数の工程を経て、第1寄生容量C
LANDが上記所定容量となるように第1ランド132が形成される。すなわち、先ず、第1の工程では、上記式F3〜式F8を用いて、第1〜第3インダンクタンスL
LINE、L
VIA1、L
VIA2と第2寄生容量C
VIAとが算出される。
【0076】
続く第2の工程では、上記式F2に示すビア部分44のインピーダンスZvが、信号伝送路の特性インピーダンスすなわち第1伝送線路131のインピーダンスと同一の値であるものと仮定される。例えば、ビア部分44のインピーダンスZvが50Ωであると仮定される。その上で、第1の工程で算出された各算出値L
LINE、L
VIA1、L
VIA2、C
VIAと上記式F2とを用いて、上記式F2中の第1寄生容量C
LANDが算出される。そして、その式F2から得られた第1寄生容量C
LANDの算出値が第1寄生容量C
LANDの目標値(以下、第1寄生容量目標値と呼ぶ)とされる。
【0077】
このような第1寄生容量目標値の算出方法からすると、実際の多層基板10において第1寄生容量C
LANDがこの第1寄生容量目標値になれば、ビア部分44のインピーダンスZvが50Ω程度になる。そして、第1伝送線路131のインピーダンスに対するビア部分44のインピーダンスZv変化が抑制される。
【0078】
すなわち、第2の工程で、このように第1寄生容量目標値を算出し決定することは、第1伝送線路131に対するビア部分44のインダクタンス成分Lvの変化に起因したビア部分44のインピーダンスZvの変化が抑えられるように第1寄生容量目標値を決定することである。なお、上述したように第1寄生容量C
LANDは所定容量とされるが、第1寄生容量目標値がこのような工程を経て決定されているので、その所定容量とは、例えば、この第1寄生容量目標値のことである。
【0079】
続く第3の工程では、第2の工程で決定された第1寄生容量目標値が上記式F9中のC
LANDへ代入される。その上で、その式F9から第1ランド132のランド面積S1が算出される。そして、その式F9から得られたランド面積S1の算出値はランド面積S1の目標面積として決定される。具体的には第1ランド132は円形状であるので、そのランド面積S1が得られる第1ランド132の直径d1が第1ランド132の目標直径として決定される。
【0080】
このようにして第1ランド132の目標面積が第1寄生容量目標値に基づいて決定されるので、その第1ランド132の目標面積は、第1寄生容量C
LANDが第1寄生容量目標値となるように決定されることになる。
【0081】
続く第4の工程では、第1ランド132のランド面積S1が上記目標面積となるように第1ランド132が形成される。具体的には、第1ランド132の直径d1が上記目標直径になるように第1ランド132が形成される。
【0082】
なお、上記の第1の工程から第3の工程までの工程は、第4の工程が実施される前に予め完了していればよく、1枚の多層基板10が製造される毎に実施される必要はない。
【0083】
次に、
図1の多層基板10で第1ランド132の直径d1を種々変化させた複数の比較構成例における伝送特性を、
図6を用いて説明する。その複数の比較構成例ではそれぞれ、第1ランド132の直径d1がφ100μm、φ200μm、φ250μm、φ300μm、φ350μmとされている。
図6において、第1ランド132の直径d1がφ100μmの比較構成例における伝送特性は曲線L10で示されている。また、第1ランド132の直径d1がφ200μmの比較構成例における伝送特性は曲線L20で示されている。また、第1ランド132の直径d1がφ250μmの比較構成例における伝送特性は曲線L25で示されている。また、第1ランド132の直径d1がφ300μmの比較構成例における伝送特性は曲線L30で示されている。また、第1ランド132の直径d1がφ350μmの比較構成例における伝送特性は曲線L35で示されている。
【0084】
この
図6から判るように、一部の比較構成例において、高周波側にてリップルが例えば矢印ALPのように発生し、そのリップルは、伝送損失を拡大させる要因となっている。
【0085】
また、周波数25GHzまでの範囲でリップル最大値を示した
図7において、その
図7の横軸に記載されたビア部分44の各インピーダンスZvは、上記式F2〜式F9から得られた算出値である。この
図7に示すように、5つの比較構成例のうち、第1ランド132の直径d1がφ250μmの比較構成例において伝送損失が最小となっている。そして、そのφ250μmの比較構成例では、
図7の横軸に記載されたインピーダンスZvが51.0Ωであり特性インピーダンス50Ωに最も近い。このことから、上記式F2〜式F9の近似式を用いてビア部分44のインピーダンスZvをその50Ωに近い値に設計することで、信号反射が低減され伝送損失が抑制されるということが判る。
【0086】
上述したように、本実施形態によれば、
図1および
図5に示すように、第1ランド132および第1グランドパターン121は、第1絶縁層21を挟んだ容量結合によって第1寄生容量C
LANDを生じるものである。そして、その第1寄生容量C
LANDは、第1伝送線路131に対するビア部分44のインダクタンス成分Lvの変化に起因したビア部分44のインピーダンスZvの変化を抑える所定容量とされている。
【0087】
これにより、第1ランド132と第1グランドパターン121とによって生じる第1寄生容量C
LANDの調整によって、ビア部分44のインピーダンスZvを第1伝送線路131のインピーダンスに整合させることが可能である。従って、多層基板10に貫通孔等の空洞を設けることを必要とせずに、多層基板10での伝送特性の悪化を防止することが可能である。
【0088】
また、ビア部分44のインダクタンス成分Lvおよび容量成分Cvは上記式F2〜式F9を用いて容易に近似計算することが可能である。従って、第1ランド132によって生じる第1寄生容量C
LANDだけを調整することで容易かつ定量的な伝送損失の低減が可能である。
【0089】
また、本実施形態によれば、第1ランド132は、第1寄生容量C
LANDが上記所定容量となるように決定されたランド面積S1を有する。従って、そのランド面積S1を適宜定めることで、ビア部分44のインピーダンスZvを第1伝送線路131のインピーダンスに容易に整合させることが可能である。
【0090】
また、本実施形態によれば、第2伝送線路171は、第5絶縁層25を挟んで第2グランドパターン161と隣り合う線路部171aと、その線路部171aと第2ランド172との間に配置されたランド接続部171bとを有している。そして、そのランド接続部171bはビア部分44に含まれる。例えばそのランド接続部171bがビア部分44に含まれるとしなかったとすれば、上記式F2を用いて、第1寄生容量目標値としての第1寄生容量C
LANDの算出値を精度良く算出できないことになる。従って、ランド接続部171bがビア部分44に含まれるとはしない場合と比較して、ビア部分44のインダクタンス成分Lvを精度良く推定することが可能である。
【0091】
また、本実施形態によれば、ビア部分44の容量成分Cvが第1寄生容量C
LANDと第2寄生容量C
VIAとの合計であるとして、その第1寄生容量C
LANDは上記所定容量とされている。そして、その第2寄生容量C
VIAは上記式F8から容易に算出される。従って、ビア部分44の容量成分Cvを容易に算出ことができる。
【0092】
また、本実施形態によれば、第1伝送線路131に対するビア部分44のインダクタンス成分Lvの変化に起因したビア部分44のインピーダンスZvの変化が抑えられる大きさの容量に第1寄生容量C
LANDがなるように、第1ランド132の目標面積が決定される。そして、その目標面積の決定の後に、第1ランド132のランド面積S1が上記目標面積となるようにその第1ランド132が形成される。
【0093】
これにより、ビア部分44のインピーダンスZvが第1伝送線路131のインピーダンスに整合するように第1ランド132を形成することが可能である。従って、多層基板10に貫通孔等の空洞を設けることを必要とせずに、多層基板10での伝送特性の悪化を防止することが可能である。
【0094】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。また、前述の実施形態と同一または均等な部分については省略または簡略化して説明する。このことは後述の第3実施形態以降でも同様である。
【0095】
本実施形態では、
図8および
図9に示すように、第1グランドパターン121に、導体が部分的に欠落した欠落箇所が設けられている。この点で本実施形態は第1実施形態と異なっている。また、本実施形態の第2ランド172の大きさは第1実施形態のものと同じであるが、本実施形態の第1ランド132は、第1実施形態とは異なり、第2ランド172と同じ大きさに形成されている。
【0096】
具体的には
図8および
図9に示すように、第1グランドパターン121は、第1ランド132と基板厚み方向DRtに対向するランド対向領域121aを有している。そのランド対向領域121aは、言い換えれば、第1グランドパターン121に対して基板厚み方向DRtに第1ランド132を投影したときにその第1ランド132が占める領域である。従って、ランド対向領域121aは、第1ランド132と同じ外形を有し、且つ、第1ランド132と同じ面積を有している。
【0097】
そして、そのランド対向領域121aの少なくとも一部では、第1グランドパターン121を構成する導体が欠落している。その欠落には、例えば導体に形成された孔または切欠きなどが該当する。本実施形態において詳細には、ランド対向領域121aの一部にて、導体の欠落としての孔121bが形成されている。この孔121b内は、例えば、第1絶縁層21を構成する絶縁材料と同じ材料で満たされている。
【0098】
この導体の欠落としての孔121bを第1グランドパターン121のランド対向領域121a内に設けることは、上記式F9で言えば、第1ランド132のランド面積S1を小さくすることに相当する。従って、上記式F2に含まれるパラメータとしての第1寄生容量C
LANDは、その孔121bが大きいほど小さくなる。
【0099】
このようなことから、本実施形態では、その孔121bの大きさは、ビア部分44のインピーダンスZvと第1伝送線路131のインピーダンスとの相互差が、孔121bが無い場合に比して小さくなるように定められている。言い換えれば、その孔121bは、孔121bが無い場合に比して上記インピーダンスの相互差が小さくなる大きさで形成されている。
【0100】
このように本実施形態では、上記の孔121bを設けることによって、第1寄生容量C
LANDは、第1伝送線路131に対するビア部分44のインダクタンス成分Lvの変化に起因したビア部分44のインピーダンスZvの変化を抑える所定容量とされている。
【0101】
本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0102】
また、本実施形態によれば、第1グランドパターン121のランド対向領域121a内の一部では導体が欠落している。具体的には、その導体の欠落としての孔121bが形成されている。そして、ビア部分44のインピーダンスZvと第1伝送線路131のインピーダンスとの相互差は、孔121bが無い場合に比して小さくなっている。従って、多層基板10の信号伝送路におけるインピーダンスの整合を、第1グランドパターン121の形状に応じて容易に図ることが可能である。
【0103】
なお、本実施形態では、第1実施形態とは異なり、インピーダンスの整合が第1ランド132のランド面積S1の調整によって図られてはいない。但し、本実施形態でも第1実施形態のように、ビア部分44のインピーダンスが伝送線路部分131、171aのインピーダンスに整合するように第1ランド132のランド面積S1が調整されて構わない。このことは、後述の第3〜第5実施形態でも同様である。
【0104】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0105】
本実施形態では、
図10に示すように、多層基板10は、基板厚み方向DRtにおける第1ランド132と第1グランドパターン121との間の誘電率εtを調整するための調整絶縁材46を備えている。この点で本実施形態は第1実施形態と異なっている。また、本実施形態の第2ランド172の大きさは第1実施形態のものと同じであるが、本実施形態の第1ランド132は、第1実施形態とは異なり、第2ランド172と同じ大きさに形成されている。
【0106】
具体的には、その調整絶縁材46は、第1絶縁層21の誘電率とは異なる誘電率を有する絶縁材である。そして、
図10に示すように、調整絶縁材46は、基板厚み方向DRtにおける第1絶縁層21と第1ランド132との間に設けられている。その調整絶縁材46は、例えば第1ランド132の第1グランドパターン121側の表面に塗布されることによって形成されている。従って、調整絶縁材46は、その第1ランド132に沿った薄膜状に形成されている。例えば調整絶縁材46の面積は、第1ランド132のランド面積S1と同じ、又はそのランド面積S1よりも小さくなっている。
【0107】
このようなことから、本実施形態では、調整絶縁材46の誘電率、厚み、および面積の何れか又は全部を変更することで、上記式F9中の誘電率εtを増減することができる。そこで、本実施形態では、ビア部分44のインピーダンスZvと第1伝送線路131のインピーダンスとの相互差が、調整絶縁材46が無い場合に比して小さくなるように、その調整絶縁材46の形状が決定され且つその材質が選択されている。
【0108】
このように本実施形態では、上記の調整絶縁材46を設けることによって、第1寄生容量C
LANDは、第1伝送線路131に対するビア部分44のインダクタンス成分Lvの変化に起因したビア部分44のインピーダンスZvの変化を抑える所定容量とされている。
【0109】
本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0110】
また、本実施形態によれば、調整絶縁材46は、基板厚み方向DRtにおける第1絶縁層21と第1ランド132との間に設けられている。そして、ビア部分44のインピーダンスZvと第1伝送線路131のインピーダンスとの相互差は、調整絶縁材46が無い場合に比して小さくなっている。従って、その調整絶縁材46の材質または形状を適宜決定することで、ビア部分44のインピーダンスZvを第1伝送線路131のインピーダンスに容易に整合させることが可能である。
【0111】
すなわち、多層基板10に空洞を設けることなく、第1ランド132と第1グランドパターン121との間における見かけ上の誘電率を、調整絶縁材46が無い構成に対し変化させることができる。従って、調整絶縁材46によってビア部分44の容量成分Cvを調整することが可能となり、前述の第1実施形態と同様に信号反射を抑制し伝送特性を向上させることが可能である。
【0112】
なお、本実施形態は第1実施形態に基づいた変形例であるが、本実施形態を前述の第2実施形態と組み合わせることも可能である。
【0113】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第3実施形態と異なる点を主として説明する。
【0114】
本実施形態では、
図11に示すように、調整絶縁材46が配置された位置が第3実施形態と異なっている。
【0115】
具体的に本実施形態では、調整絶縁材46は、基板厚み方向DRtにおいて第1絶縁層21と第1ランド132との間には設けられていない。その調整絶縁材46は、基板厚み方向DRtにおいて第1絶縁層21と第1グランドパターン121との間には設けられている。但し、調整絶縁材46は、その調整絶縁材46の少なくとも一部が第1絶縁層21を挟んで第1ランド132と対向する位置に配置されている。
【0116】
本実施形態では、前述の第3実施形態と共通の構成から奏される効果を第3実施形態と同様に得ることができる。また、本実施形態は前述の第3実施形態と同様に、前述の第2実施形態と組み合わせることも可能である。
【0117】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第3実施形態と異なる点を主として説明する。
【0118】
本実施形態では、
図12に示すように、調整絶縁材46が合計2つ設けられている。この点が第3実施形態と異なっている。
【0119】
具体的に本実施形態では、調整絶縁材46は、基板厚み方向DRtにおける第1絶縁層21と第1ランド132との間と、第1絶縁層21と第1グランドパターン121との間との両方に設けられている。すなわち、本実施形態において第1絶縁層21と第1ランド132との間に設けられた調整絶縁材46は第3実施形態の調整絶縁材46と同じ配置である。そして、第1絶縁層21と第1グランドパターン121との間に設けられた調整絶縁材46は第4実施形態の調整絶縁材46と同じ配置である。
【0120】
本実施形態では、前述の第3実施形態と共通の構成から奏される効果を第3実施形態と同様に得ることができる。また、本実施形態は前述の第3実施形態と同様に、前述の第2実施形態と組み合わせることも可能である。
【0121】
(他の実施形態)
(1)上述の第1実施形態の
図1および
図5において、第1寄生容量C
LANDは所定容量とされ、その所定容量とは、例えば第1寄生容量目標値のことである。この点に関し、その所定容量は、第1伝送線路131に対するビア部分44のインダクタンス成分Lvの変化に起因したビア部分44のインピーダンスZvの変化を抑えるように定まっていればよく、その定め方に限定はない。
【0122】
(2)上述の各実施形態において、ビア部分44のインピーダンスZvを算出するための上記式F2は、第1寄生容量C
LANDのほかに、第2寄生容量C
VIAと第1〜第3インダンクタンスL
LINE、L
VIA1、L
VIA2とをパラメータとして含んで構成されている。しかしながら、これは一例であり、ビア部分44のインピーダンスZvを算出するための複数のパラメータのうち第1寄生容量C
LAND以外のパラメータは、実際の多層基板に合わせて適宜設けられればよい。
【0123】
(3)上述の各実施形態において、上記式F6を計算するための上記仮想のビア円柱は、一定の円形断面を有するようにビア部分44を平均化した円柱である。そして、その仮想のビア円柱は、例えば、基板厚み方向DRtにおいてビア部分44と同じ長さを有し且つそのビア部分44と同じ体積を有するように想定される。しかしながら、これは一例であり、その仮想のビア円柱は、一定の円形断面を有するようにビア部分44を平均化した円柱であれば、そのビア部分44を平均化する方法に限定はない。
【0124】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0125】
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、第1ランドおよびグランドパターンは、隣接絶縁層を挟んだ容量結合によって寄生容量を生じるものである。そして、その寄生容量は、第1伝送線路に対するビア部分のインダクタンス成分の変化に起因したビア部分のインピーダンスの変化を抑える所定容量とされている。
【0126】
また、第2の観点によれば、グランドパターンのランド対向領域内の少なくとも一部では導体が欠落している。そして、ビア部分のインピーダンスと第1伝送線路のインピーダンスとの差は、その欠落が無い場合に比して小さくなっている。従って、上記グランドパターンの形状に応じて容易にインピーダンスの整合を図ることが可能である。
【0127】
また、第3の観点によれば、第1ランドは、上記寄生容量が上記所定容量となるように決定されたランド面積を有する。従って、そのランド面積を適宜定めることで、ビア部分のインピーダンスを第1伝送線路のインピーダンスに容易に整合させることが可能である。
【0128】
また、第4の観点によれば、隣接絶縁層の誘電率とは異なる誘電率を有する絶縁材が、厚み方向における隣接絶縁層と第1ランドとの間と、隣接絶縁層とグランドパターンとの間とのうちの一方または両方に設けられている。そして、ビア部分のインピーダンスと第1伝送線路のインピーダンスとの差は、絶縁材が無い場合に比して小さくなっている。従って、その絶縁材の材質または形状を適宜決定することで、ビア部分のインピーダンスを第1伝送線路のインピーダンスに容易に整合させることが可能である。
【0129】
また、第5の観点によれば、第2伝送線路は、隣接絶縁層とは異なる他の絶縁層を挟んで第2グランドパターンと隣り合う線路部と、その線路部と第2ランドとの間に配置されたランド接続部とを有している。そして、そのランド接続部はビア部分に含まれる。従って、そのランド接続部がビア部分に含まれるとはしない場合と比較して、第1伝送線路と第2伝送線路の線路部との間のインダクタンス成分を精度良く推定することが可能である。
【0130】
また、第6の観点によれば、ビア部分の容量成分が第1寄生容量と第2寄生容量との合計であるとして、その第1寄生容量は上記所定容量とされている。従って、ビア部分の容量成分を容易に算出ことができる。
【0131】
また、第7の観点によれば、第1伝送線路に対するビア部分のインダクタンス成分の変化に起因したビア部分のインピーダンスの変化が抑えられる大きさの容量に前記寄生容量がなるように、第1ランドの目標面積が決定される。その目標面積の決定の後に、第1ランドのランド面積が上記目標面積となるように第1ランドが形成される。