特許第6424894号(P6424894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6424894ラテックスインク、これを用いた箔画像形成方法、積層体、および壁紙
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6424894
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】ラテックスインク、これを用いた箔画像形成方法、積層体、および壁紙
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20181112BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20181112BHJP
   C09J 121/02 20060101ALI20181112BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20181112BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20181112BHJP
   B44C 1/17 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   C09D11/30
   C09J5/06
   C09J121/02
   B41J2/01 501
   B41M5/00 120
   B44C1/17 A
【請求項の数】7
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2016-540261(P2016-540261)
(86)(22)【出願日】2015年8月5日
(86)【国際出願番号】JP2015072234
(87)【国際公開番号】WO2016021637
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2017年9月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-160377(P2014-160377)
(32)【優先日】2014年8月6日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-160469(P2014-160469)
(32)【優先日】2014年8月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【弁理士】
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】平本 隆一
(72)【発明者】
【氏名】茂谷 ひとみ
(72)【発明者】
【氏名】三輪 英也
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴之
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−127538(JP,A)
【文献】 特開2014−010302(JP,A)
【文献】 特開2013−222185(JP,A)
【文献】 特開2011−110732(JP,A)
【文献】 特開平11−314452(JP,A)
【文献】 特開平08−039997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/
B32B 27/
B41M 5/
B41C 1/
C09J 5/、7/、11/、201/
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にパターン状に形成された接着層に転写箔を加熱圧着し、前記接着層上に箔転写層を形成して箔画像を形成する方法に用いられる、接着層形成用のラテックスインクであり、
溶媒及びコアシェル型ラテックス樹脂粒子を含み、
前記コアシェル型ラテックス樹脂粒子は、弾性樹脂からなるコアと、溶融樹脂からなるシェル層とを有し、
前記弾性樹脂の120℃における貯蔵弾性率G’(120)が、1×10〜1×10dyn/cmである、ラテックスインク。
【請求項2】
前記コアシェル型ラテックス樹脂粒子の総質量に対する、前記弾性樹脂の量が2〜10質量%である、請求項1に記載のラテックスインク。
【請求項3】
基材上に、請求項1または2に記載のラテックスインクをパターン状に塗布し、接着層を形成する工程と、
前記接着層上に転写箔の転写面を接触させて加熱圧着し、前記接着層上に箔層を形成する工程と、
を含む、箔画像形成方法。
【請求項4】
前記接着層形成工程において、前記ラテックスインクをインクジェット法で塗布する、請求項3に記載の箔画像形成方法。
【請求項5】
前記基材が、天然パルプ基材、天然パルプと合成繊維とを混抄したフリース基材、及び和紙基材からなる群から選ばれる基材である、請求項3または4に記載の箔画像形成方法。
【請求項6】
基材と、前記基材上にパターン状に形成された接着層と、前記接着層上に前記接着層と同一のパターン状に形成された箔層とを含み、
前記接着層が、請求項1または2に記載のラテックスインクの硬化膜である、積層体。
【請求項7】
請求項6に記載の積層体からなる、壁紙
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上にパターン状に形成された接着層に転写箔を加熱圧着し、接着層上に箔転写層を形成して箔画像を形成する方法に用いられる、接着層形成用のラテックスインク、これを用いた箔画像形成方法、積層体、及び壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、溶媒に樹脂や顔料を分散させたラテックスインクが開発されている。当該ラテックスインクでは、被印刷物にインクを塗布後、加熱等によって樹脂を溶融・硬化させる。これにより、被印刷物上に樹脂皮膜が形成され、画像が定着する。このようなラテックスインクでは、一般的に溶媒として水が使用されるため、画像形成時の臭気が少なく、さらに揮発性有機化合物(VOC)の排出量も少ない。また、被印刷物にインクが染み込まなくとも、画像形成が可能である。つまり、各種基材に印刷可能であるとの利点も有する。特許文献1では、このようなラテックスインクをインクジェット法で塗布することが検討されている。
【0003】
一方、近年、箔押し加工により、装飾性を高めた壁紙が各種開発されている。このような壁紙では、デジタルプリントにより模様を形成したプリント壁紙のほか、模様として箔を部分的に転写した装飾壁紙などが知られている。このように、模様として箔を転写して箔画像を形成する方法として、感熱転写法(箔押し)が知られている。
【0004】
感熱転写法では、支持体/箔層/接着層を有する転写箔を、当該接着層が被転写材(基材)と接するように密着させる。次いで、転写箔の上から、加熱した金型を押し当てて、金型に対応する部分の接着層を加熱溶融させて、金型に対応する部分の箔層を基材上に転写させる。感熱転写法に用いられる接着剤としては、シアン化ビニル系モノマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含むモノマーを水性媒体で重合させて得られるアクリル系共重合体のエマルジョン接着剤が知られている(例えば特許文献2)。
【0005】
一方で、感熱転写法では、絵柄や模様に合わせて多種類の金型を準備する必要があったり、金型の加熱のばらつきにより箔転写が不均一になったりしやすいという問題があった。そのため、金型を用いない箔画像形成方法が検討されている。
【0006】
金型を用いない箔画像形成方法として、接着層をパターン形成する方法がある。接着剤をパターン形成する方法では、基材上に接着層をパターン形成する。次いで、基材の接着層付与面と、転写箔の箔層とを重ね合わせて加熱圧着させて、該接着層に対応する部分の箔層を転写させる。このような接着剤として、粘着性材料を内包するマイクロカプセルを含む潜像形成液が知られている(例えば特許文献3)。
【0007】
ここで、接着剤をパターン形成する技術によれば、箔転写作業の所要時間が短縮され、作業の効率化が図れる。この様な箔転写方法では、オンデマンドバリアブル出力の観点から、硬化型接着剤をデジタル印刷するのが有効であり、壁紙印刷においてもデザインの自由度からも実用化が期待されている。
【0008】
そして、ラテックスインクを、上記箔転写用の接着剤(熱溶融性の接着剤)とすることが検討されているが、ラテックスインクを用いると、箔の転写再現性に課題があった。近年、ラテックスインクは、印刷物の生産性や定着時の低エネルギー化の観点から、比較的低温で溶融させることが一般的である。一方で、箔転写は100℃以上の温度で行うことが一般的である。そのため、一般的なラテックスインクの塗膜を接着層とし、箔転写しようとすると、接着層が、箔転写時の加熱によって、容易に軟化してしまう。そして、この状態で転写のための圧力がかけられると、接着層が形状を維持できなかった。つまり、箔を所望のパターンに転写することが難しかった。
【0009】
このような問題に対し、接着剤に硬質フィラーを添加し、箔転写時の接着層の変形を抑制することが提案されている(特許文献4)。また、パターンの中央部の接着剤の量より、パターンの輪郭部の接着剤の量を少なくすることで、箔の転写面積を一回り小さくすることも提案されている(特許文献5)。一方、活性エネルギー線硬化型のインクを接着剤とし、当該インクを塗布後、仮硬化させることで、接着層の形状保持性を高め、箔のパターン再現性を高めることも提案されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2014−501636号公報
【特許文献2】特開2006−16513号公報
【特許文献3】特開2002−264495号公報
【特許文献4】特開2013−964号公報
【特許文献5】特開2009−279538号公報
【特許文献6】特開2009−226863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ただし、前述の特許文献4の技術では、箔の転写時に、硬質フィラーによって、箔と接着層との接着が阻害されたり、転写時に箔が破れたり、転写後の箔表面に硬質フィラーに起因する突起が生じたりする等の課題があった。この現象は壁紙のように貼り付け工程で強く押し付けられるような場合は特に顕著である。また、特許文献5の技術は、大面積のパターンには適用可能であるが、細線パターン等には適用が困難である。
【0012】
さらに、特許文献6の技術では、硬化工程が2回必要であり、画像形成工程が複雑である。さらに、紫外線硬化型インクには、揮発性有機化合物(VOC)が多く含まれるため、例えば壁紙等、屋内で使用される製品の製造には適用し難い等の問題もある。
【0013】
また、壁紙基材の素材として、塩ビ樹脂、プラスチック、および紙などが用いられている。最近では、施工性が良いことなどから、裏打ち紙がフリース素材で構成されたフリース壁紙が広く用いられている。フリース素材とは、天然繊維と合成繊維が混抄された素材をいう。
【0014】
そして特許文献2や3のような接着剤では、フリース素材などの異素材を組み合わせた基材に対して、転写された箔層と基材との接着強度にムラが生じやすく、箔層が剥がれたり、箔層の耐擦過性が低下したりするという問題があった。
【0015】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、箔転写に用いられる接着層用のインクであって、塗膜(接着層)と箔との接着性が良好であり、箔のパターン再現性が良好であり、かつ揮発性有機化合物(VOC)を排出し難い、ラテックスインクを提供することにある。また、例えばフリース素材などで構成された基材に対しても、良好な接着強度と耐擦過性を有する箔画像を形成できるラテックスインク、およびそれを用いた箔画像形成方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第一の実施形態は、以下に示すラテックスインク、箔画像形成方法、積層体、及び壁紙に関する。
[1]基材上にパターン状に形成された接着層に転写箔を加熱圧着し、前記接着層上に箔転写層を形成して箔画像を形成する方法に用いられる、接着層形成用のラテックスインクであり、溶媒と、コアシェル型ラテックス樹脂粒子とを含み、前記コアシェル型ラテックス樹脂粒子は、弾性樹脂からなるコアと、溶融樹脂からなるシェル層とを有し、前記弾性樹脂の120℃における貯蔵弾性率G’(120)が、1×10〜1×10dyn/cmである、ラテックスインク。
[2]前記コアシェル型ラテックス樹脂粒子の総質量に対する、前記弾性樹脂の量が2〜10質量%である、[1]に記載のラテックスインク。
【0017】
[3]基材上に、前記[1]または[2]に記載のラテックスインクをパターン状に塗布し、接着層を形成する工程と、前記接着層上に転写箔の転写面を接触させて加熱圧着し、前記接着層上に箔層を形成する工程と、を含む、箔画像形成方法。
[4]前記接着層形成工程において、前記ラテックスインクをインクジェット法で塗布する、[3]に記載の箔画像形成方法。
[5]前記基材が、天然パルプ基材、天然パルプと合成繊維とを混抄したフリース基材、及び和紙基材からなる群から選ばれる基材である、[3]または[4]に記載の箔画像形成方法。
【0018】
[6]基材と、前記基材上にパターン状に形成された接着層と、前記接着層上に前記接着層と同一のパターン状に形成された箔層とを含み、前記接着層が、[1]または[2]に記載のラテックスインクの硬化膜である、積層体。
[7]前記[6]に記載の積層体からなる、壁紙。
【0019】
本発明の第二の実施形態は、以下に示すラテックスインク、箔画像形成方法、積層体、及び壁紙に関する。
[8] 基材と転写箔の箔層とをパターン状に形成された接着層を介して加熱圧着して、前記基材層上に前記箔層を転写して箔画像を形成するための、接着層用ラテックスインクであって、樹脂粒子と、前記樹脂粒子を分散させる水系溶媒とを含み、前記樹脂粒子は、架橋性基を有する樹脂と、硬化剤とを含有する、ラテックスインク。
[9] 前記樹脂粒子は、コア層と、前記コア層の周囲を覆うシェル層とを有し、前記コア層が、前記硬化剤を含有する、[8]に記載のラテックスインク。
[10] 前記硬化剤が、ブロックイソシアネート化合物である、[8]または[9]に記載のラテックスインク。
[11] 前記樹脂粒子の体積平均粒径が、80〜300nmである、[8]〜[10]のいずれかに記載のラテックスインク。
[12] 前記樹脂粒子は、乳化重合法により製造されたものである、[8]〜[11]のいずれかに記載のラテックスインク。
【0020】
[13] 基材上または転写箔の箔層上に、[8]〜[12]のいずれかに記載のラテックスインクをパターン状に付与して接着層を形成する工程と、前記基材と前記転写箔の箔層とを前記パターン状に形成された接着層を介して加熱圧着して、前記基材上に前記転写箔の箔層を転写して箔画像を得る工程とを含む、箔画像形成方法。
[14] 前記接着層の形成は、前記ラテックスインクをインクジェット方式で付与することにより行う、[13]に記載の箔画像形成方法。
[15] 前記基材が、天然繊維と合成繊維とを混抄したフリース基材である、[13]または[14]に記載の箔画像形成方法。
【0021】
[16] 基材と、前記基材上にパターン状に配置された箔層と、前記基材と前記箔層との間に配置された[8]〜[12]のいずれかに記載のラテックスインクの硬化物層とを含む、積層体。
[17] 前記[16]に記載の積層体を含む、壁紙。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第一の実施形態のラテックスインクは、塗膜(接着層)と箔との接着性や、塗膜と基材との接着性が良好であり、当該塗膜の接着性を利用して、箔を所望のパターンに転写することができる。また、当該ラテックスインクは、塗膜から発生する揮発性有機化合物(VOC)が少ない。また、本発明の第二の実施形態のラテックスインクによれば、例えばフリース素材などで構成された基材に対しても、良好な接着強度と耐擦過性を有する箔画像を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1(a)〜図1(d)は、本発明の第一の実施形態のラテックスインクを用いた箔画像形成方法の一例を示す工程図である。
図2図2(a)〜図2(d)は、本発明の第二の実施形態のラテックスインクを箔画像の形成方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
【0025】
A.第一の実施形態
まず、本発明の第一の実施形態のラテックスインク及び箔画像形成方法について説明する。
【0026】
A−1.ラテックスインク
第一の実施形態のラテックスインクは、箔転写用に用いられる接着層用のインクである。本実施形態のラテックスインクを用いた箔画像形成方法の一例を図1に示す。図1(a)に示すように、本実施形態のラテックスインク2を、基材1上にパターン状に塗布する。そして、図1(b)に示すように、ラテックスインク2を加熱等により基材1上に定着させて接着層2’とする。その後、図1(c)に示すように、接着層2’上に支持材11及び箔12を含む転写箔10の転写面(箔12)を密着させて、加熱ローラー20等によって圧着する。そして、図1(d)に示すように、転写箔10を除去する。このとき、接着層2’と圧着された箔12は、接着層2’上に残り、箔層12’となる。一方、接着層2’と圧着されなかった箔12は、支持材11と共に除去される。つまり、基材1上には、接着層2’のパターン状に箔層12’が残存し、これが箔画像となる。
【0027】
従来、接着層の接着性を利用して箔を転写しようとすると、箔転写時の熱によって、接着層が軟化してしまい、その形状を維持できなかった。そのため、細線からなるパターン等はつぶれてしまい、所望のパターン状に、箔を転写できない、との問題があった。さらに、凹凸を有する基材に接着層を形成した場合、転写時の圧力によって接着層が凹部に押し込まれてしまい、これによっても箔画像を所望のパターン状に形成できない、との問題があった。
【0028】
一方、箔転写時の接着層の変形を抑制するため、接着層中に無機フィラー等を含めると、接着層の変形は抑制されるものの、無機フィラーが箔を突き破ったり、転写後の箔表面に無機フィラー由来の凹凸が浮き出ることがあった。また、無機フィラーによって、接着層と箔との接着が阻害されることもあった。
【0029】
これに対し、本実施形態では、コアシェル型のラテックス樹脂粒子を含むラテックスインクによって接着層を形成する。当該コアシェル型のラテックス樹脂粒子は、溶融樹脂を含むシェル層と、弾性樹脂を含むコアとを有する。そしてコアは、箔転写時の温度においても、比較的貯蔵弾性率が高いため、箔転写時に接着層が変形し難い。さらに、ラテックスインクを、凹凸を有する基材に塗布した場合にも、上記コアの効果によって溶融時の樹脂全体の流動性が上がり過ぎず、接着層が凹部に押し込まれることが抑制される。つまり、本実施形態のラテックスインクによれば、箔を所望の形状に転写することができ、たとえ細線パターンであっても再現可能である。一方で、コアは、ある程度の弾性を有するため、コアと箔とを圧着しても箔が破れ難く、転写後の箔表面に、凹凸も生じ難い。
【0030】
さらに、コアシェル型のラテックス樹脂粒子には、溶融樹脂からなるシェル層が含まれるため、当該溶融樹脂によって、箔及び接着層、さらには接着層及び基材が、十分に接着される。つまり、本実施形態のラテックスインクによれば、基材と箔とを強固に接着することができる。加えて、当該ラテックスインクには、揮発性有機化合物(VOC)が少量に抑えられるため、屋内用の製品、例えば壁紙等にも適用可能である。
【0031】
ここで、本実施形態のラテックスインクには、コアシェル型のラテックス樹脂粒子及び溶媒が少なくとも含まれるが、必要に応じて、界面活性剤や、各種添加剤等が含まれてもよい。
【0032】
(1.1)コアシェル型ラテックス樹脂粒子
本実施形態のラテックスインクに含まれるコアシェル型ラテックス樹脂粒子には、弾性樹脂からなるコアと、溶融樹脂からなるシェル層とが含まれる。
【0033】
ラテックスインクには、コアシェル型ラテックス樹脂粒子が、ラテックスインク全質量に対して1〜25質量%含まれることが好ましく、より好ましくは3〜20質量%であり、さらに好ましくは5〜18質量%である。コアシェル型ラテックス樹脂粒子の量が上記範囲であると、ラテックスインクの乾燥速度と粘度上昇のバランスが所望の範囲になりやすく、ラテックスインクの印刷性が良好になりやすい。またさらに、所望の厚みの接着層が得られやすい。ラテックスインクの粘度は、ラテックスインクの塗布方法に応じて適宜選択されるが、1〜30cpsであることが好ましく、より好ましくは2〜20cpsである。
【0034】
また、コアシェル型ラテックス樹脂粒子は、体積基準のメディアン径で50〜500nmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは70〜300nmであり、さらに好ましくは80〜250nmである。コアシェル型ラテックス樹脂粒子のメディアン径が上記範囲であると、コアシェル型ラテックス樹脂粒子を含むラテックスインクを、塗布装置から吐出する際に、ノズル詰まり等が生じ難い。コアシェル型ラテックス樹脂粒子の体積基準のメディアン径は、「UPA−150」(マイクロトラック社製)を用いて測定したものである。
【0035】
(コア)
コアシェル型ラテックス樹脂粒子のコアの形状は特に制限されないが、略球状であることが好ましい。コアの粒子径はシェル層を被覆する前に測定される。コアの体積基準のメディアン径は、30〜480nmであることが好ましく、より好ましくは50〜280nmであり、さらに好ましくは60〜230nmである。コアの体積基準のメディアン径は、「UPA−150」(マイクロトラック社製)を用いて測定したものである。
【0036】
なお、コアシェル型ラテックス樹脂粒子全体の質量に対する、弾性樹脂の量は2〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜8質量%であり、さらに好ましくは4〜7質量%である。弾性樹脂の量が2質量%以上であると、箔転写時に熱がかかっても、接着層の形状を維持しやすくなる。一方、弾性樹脂の量が10質量%以下であると、相対的に溶融樹脂等の量が多くなり、接着層の接着性が良好となり、さらに接着層の表面平滑性が高まりやすい。
【0037】
ここで、弾性樹脂とは、加熱によって軟化して可塑性を示し、かつ冷却によって固化する性質を有する熱可塑性樹脂であって、120℃における貯蔵弾性率G’(120)が、1×10〜1×10dyn/cmである樹脂をいう。貯蔵弾性率G’(120)は、より好ましくは1×10〜0.5×10dyn/cmである。貯蔵弾性率G’(120)が1×10dyn/cm以上であると、ラテックスインクの塗膜から得られる接着層が、箔転写時の熱によって変形し難い。その結果、高精細なパターン状に箔を転写しやすくなる。一方、コアの貯蔵弾性率G’(120)が過度に高いと、箔の転写時の圧力によっても、箔が変形できず、箔の接着性が低下することや、転写面の平滑性が劣るなどの問題がある。これに対し、本実施形態のように、コアの弾性率が1×10dyn/cm以下であれば、箔の転写時の圧力によって、コアがある程度変形するため、接着性の確保と流動性の抑制のバランスが好適になる。弾性樹脂の貯蔵弾性率G’(120)は、弾性樹脂の重量平均分子量(重合度)により適宜調整される。
【0038】
貯蔵弾性率G’(120)は、以下の(1)から(4)の方法で測定される。測定は、動的粘弾性測定装置により行われる。
(1)弾性樹脂(コア)粒子の分散液を20±1℃で測定試料シャーレに入れて平らにならす。当該シャーレを相対湿度50±5%Rhの環境下にて、24時間以上静置する。当該シャーレから試料を0.6g取り、これを圧縮成形機に装填する。そして、3tの荷重を30秒間加えて直径1cmのペレットを作製する。
(2)上記ペレットを直径0.977cmのパラレルプレートに装填する。
(3)動的粘弾性測定装置の測定部温度を、後述の方法で測定される弾性樹脂の軟化点より20℃低い温度(軟化点−20℃)に設定し、パラレルプレートギャップを3mmに設定;つまりペレットを圧縮する。
(4)その後、測定部温度を35℃に設定して、ペレットを35℃まで放冷する。そして、周波数1.0Hzの正弦波振動を加えながら、測定部を5℃/分で昇温させて、200℃まで昇温させる。このときの、120〜150℃における複素弾性率Gを測定し、これから貯蔵弾性率G’(120)を求める。なお、ひずみ角は、測定装置の自動ひずみ制御により制御する。
【0039】
ここで、上記弾性樹脂の軟化点はフローテスター法により、以下の方法で測定される。前述の弾性樹脂粒子の分散液を、温度20±1℃で測定試料シャーレに入れて平らにならす。当該シャーレを相対湿度50±5%Rhの環境下にて、12時間以上静置する。当該シャーレから試料を1.1g取り、これを圧縮成形機に装填する。そして3tの荷重を30秒間加えて直径1cmのペレットを作製する。
次いで、このサンプルを24±5℃、相対湿度50±20%RHの環境下におく。そして、フローテスター(例えばCFT−500D(島津製作所社製))により、荷重196N(20kg重)、開始温度80℃、余熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱形のダイ(1mm×1mm)より、直径1cmのピストンを押出し、オフセット値5mmとなる温度を軟化点とする。
【0040】
上記弾性樹脂は、融点を有する結晶性樹脂であってもよく、融点を有さずにガラス転移点を有する非晶性樹脂のいずれでもありうる。本実施形態において、結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、示差走査熱量測定(DSC)にて昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークとする。また、非晶性樹脂は、上述したDSCにおいて明確なピークを有さない、結晶性樹脂以外の樹脂をいう。
【0041】
コアに含まれる弾性樹脂の例には、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリウレタン樹脂、などの公知の熱可塑性樹脂が含まれる。コアには、これらの樹脂が1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。
【0042】
コアに含まれる弾性樹脂は、上記貯蔵弾性率G’(120)を調整するための重合度の調整が容易である、かつ粒子形成後に分散性が良好であるとの観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、またはスチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂であることが好ましく、特にスチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂であることが好ましい。
【0043】
(シェル層)
コアシェル型ラテックス樹脂粒子のシェル層は、前記コアの周囲に形成される層であり、コアを完全に被覆する層であってもよく、コアの一部のみを被覆する層であってもよい。当該シェル層には、溶融樹脂が含まれる。
【0044】
なお、コアシェル型ラテックス樹脂全体の質量に対する、溶融樹脂の量は90〜98質量%であることが好ましく、より好ましくは92〜97質量%であり、さらに好ましくは93〜96質量%である。溶融樹脂の量が90質量%以上であると、箔等の接着性が高まりやすい。一方、溶融樹脂の量が98質量%以下であると、相対的に弾性樹脂の量が十分になり、箔の転写時に、接着層の形状が維持されやすくなる。
【0045】
本実施形態において、溶融樹脂とは、融点またはガラス転移温度が65℃以下である熱可塑性樹脂とする。溶融樹脂の融点またはガラス転移温度は、好ましくは25〜60℃であり、より好ましくは30〜50℃である。溶融樹脂の融点またはガラス転移温度が65℃以下であると、箔を転写する際に、シェル層が軟化して箔や基材との密着性が高まる。溶融樹脂の融点またはガラス転移温度は、溶融樹脂の重量平均分子量(重合度)や、溶融樹脂の種類等で調整される。シェル層の融点またはガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)にて測定される。
【0046】
コアシェル粒子を形成した後にシェル層のみを分離してガラス転移温度を測定することは不可能である。そこで、コア粒子を添加せずに、シェル層形成条件と同じ反応条件で溶融樹脂のみからなる樹脂粒子を作製し、その粒子のガラス転移温度を測定する。
【0047】
ここで溶融樹脂は、例えばスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリウレタン樹脂、などの公知の熱可塑性樹脂でありうる。コアには、これらの樹脂が1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。
【0048】
これらの中でも、溶融時に低粘度であり、かつ高いシャープメルト性を有するとの観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、またはスチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂であることが好ましく、特にスチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂であることが好ましい。
【0049】
(コアシェル型ラテックス樹脂粒子の調製方法)
コアシェル型ラテックス樹脂粒子は、公知のコアシェル型の粒子の作製方法と同様に製造することができるが、粒子の制御性、粒子形成後の分散性の観点より乳化重合法で製造することが好ましい。具体的には、(i)公知の乳化重合法によってコアを形成し;(ii)さらにコアの周囲にシェル層を形成する方法等でありうる。
【0050】
(i)コアの形成
前述のように、粒子の組成調整が容易であり、かつ単量体の重合の制御が容易であるとの観点から、コアの形成は、乳化重合法で行うことが好ましい。コアの形成工程では、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体中に、コアとなる弾性樹脂の原料(重合性単量体)と、必要に応じて添加剤成分とが溶解あるいは分散された単量体溶液を添加する。そして、当該水溶液に、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させる。そして、水溶性のラジカル重合開始剤を添加して、液滴中において重合反応を進行させる。
【0051】
なお、前記液滴中には、油溶性の重合開始剤が含有されてもよい。このようなコアの形成工程において、機械的に乳化(液滴を形成)する手段(機械的エネルギーの付与手段)は、通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等でありうる。重合されるコア(弾性樹脂)の貯蔵弾性率G’(120)は、連鎖移動剤の量や重合反応時の温度によって調整される。上記攪拌時には、必要に応じて水溶液を加熱してもよい。
【0052】
コアの調製に用いる重合性単量体は、前述の弾性樹脂を調製可能なものであればよい。重合性単量体の例には、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等のスチレン系単量体;
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸またはアクリル酸エステルからなる単量体;
エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル系単量体;
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン系単量体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物系単量体;
ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物系単量体;
(メタ)アクリロニトリル、アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸誘導体;
エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等の多官能性ジビニル系単量体;等が含まれる。
【0053】
また、乳化重合凝集法でコアを形成する場合の溶媒は、通常水であるが、必要に応じて水溶性有機溶媒が含まれてもよい。水溶性有機溶媒は、後述のラテックスインクに含まれる水様性有機溶媒と同様のものでありうる。
【0054】
上記単量体を重合させるための重合開始剤としては、公知の油溶性または水溶性の重合開始剤を使用することができる。油溶性重合開始剤の例には、例えば2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジン等の過酸化物系重合開始剤が含まれる。
【0055】
また、水溶性重合開始剤の例には、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等が含まれる。
【0056】
また、連鎖移動剤の例には、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、ターピノーレン、四臭化炭素、α−メチルスチレンダイマー等が含まれる。連鎖移動剤の量によって、得られるコアに含まれる樹脂(弾性樹脂)の分子量が調整される。つまり、連鎖移動剤は、弾性樹脂の120℃における貯蔵弾性率G’(120)が所望の範囲に収まる程度、添加される。
【0057】
また、反応系には、前述の単量体を水溶液中に均一に分散させるための分散安定剤を添加することも好ましい。分散安定剤としては、公知の界面活性剤が適用できる。例えば分散安定剤として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等のものがある。また、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、エチレンオキサイド付加物、高級アルコール硫酸ナトリウム等の界面活性剤を使用することができる。
【0058】
また、分散安定剤として、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、脂肪酸塩等があり、スルホン酸塩には、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、o−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等のイオン界面活性剤を使用することもできる。上記硫酸エステル塩には、たとえば、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等があり、脂肪酸塩には、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等が含まれる。
【0059】
さらに、分散安定剤として、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等のノニオン界面活性剤も使用することができる。
【0060】
(ii)シェル層の形成
コアシェル型ラテックス樹脂粒子は、コアとシェル層とが、組成が異なる樹脂からなる。そして、シェル層の組成調整が容易であり、かつ単量体の重合の制御が容易であるとの観点から、シェル層の形成も、乳化重合法で形成されることが好ましい。シェル層の形成は、前述のように、乳化重合法(第1段重合)によって調製されたコアの分散液に、重合開始剤と重合性単量体とを添加し、さらに重合処理(第2段重合)して、コアにシェル層を積層する方法でありうる。
【0061】
具体的には、前述のコアを含む分散液及び重合開始剤を含む水溶液に、水に不溶または溶解性の低い単量体をさらに滴下して、重合反応させる方法であることが好ましい。このとき、重合される溶融樹脂のガラス転移温度や融点は、単量体の種類や、連鎖移動剤の量によって調整される。水溶液の攪拌は、例えば、通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等で行なうことができる。またこのとき、必要に応じて、水溶液を加熱してもよい。
【0062】
なお、シェル層の形成に用いられる単量体や重合開始剤、連鎖移動剤、分散剤等は前述のコアの調製に用いられるものと同様でありうる。
【0063】
(1.2)溶媒
本実施形態のラテックスインクには、溶媒が含まれる。溶媒は、主に水であり、ラテックスインクの総質量に対して、水が30〜95質量%含まれることが好ましく、より好ましくは40〜90質量%であり、さらに好ましくは50〜70質量%である。一方で、ラテックスインクの粘度を調整したり、インクの乾燥防止やコアシェル型ラテックス樹脂粒子の湿潤を促進する等の観点から、水と共に有機溶媒が含まれていてもよい。水との相溶性との観点から、有機溶媒は水溶性溶媒であることが好ましい。
【0064】
ここで、水より蒸気圧の低い有機溶媒が含まれると、ラテックスインクの乾燥が抑制され、例えばラテックスインクを塗布する装置内でのインク詰まり等が抑制される。湿潤剤や乾燥防止剤として用いられる水溶性有機溶媒の具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物;ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体等が挙げられる。ラテックスインクには、これらが1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。
【0065】
一方、ラテックスインクを粘度調整する際に用いられる水溶性有機溶媒の例には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の1価のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等の多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール誘導体;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン等のアミン;ホルムアミド;N,N−ジメチルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド;スルホラン;2−ピロリドン;N−メチル−2−ピロリドン;N−ビニル−2−ピロリドン;2−オキサゾリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;アセトニトリル;アセトン等が含まれる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を用いてもよい。
【0066】
ラテックスインクに含まれる溶媒は、水との相溶性が良好であり、乾燥防止及び粘度調整を同時に行える等の観点から、特にグリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールであることが好ましい。また、有機溶媒は、ラテックスインク全量に対して、10〜50質量%含まれることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%であり、さらに好ましくは10〜20質量%である。
【0067】
(1.3)その他
本実施形態のラテックスインクには、本実施形態の効果を損なわない範囲で、界面活性剤や、他の添加剤が含まれてもよい。ラテックスインクに界面活性剤が含まれると、表面張力が調整されたり、インクに泡が生じ難くなる。
【0068】
界面活性剤の例には、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が含まれる。界面活性剤の具体的な例には、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤;アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤;N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤;等が含まれる。
【0069】
さらに、ラテックスインクには、必要に応じて添加剤が含まれてもよく、添加剤の例には、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等が含まれる。
【0070】
(1.4)ラテックスインクの調製方法
本実施形態のラテックスインクは、前述のコアシェル型ラテックス樹脂粒子、溶媒、及びその他の成分を分散、または混合して調製される。これらを分散する方法としては、特に制限されず、例えばサンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェイカー、超音波分散機等による分散方法が挙げられる。また、これらを攪拌混合する方法も特に制限されず、通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等による攪拌方法が挙げられる。
【0071】
A−2.箔画像形成方法
前述のラテックスインクを用いた箔画像の形成方法を詳しく説明する。本実施形態の箔画像形成方法には、少なくとも以下の2つの工程が含まれる。
(1)基材上にラテックスインクをパターン状に塗布し、接着層を形成する工程
(2)前記接着層上に転写箔の転写面を接触させて加熱圧着し、前記接着層上に箔層を形成する工程
本実施形態の箔画像形成方法には、必要に応じて他の工程が含まれてもよい。
【0072】
(2.1)接着層形成工程
接着層形成工程では、基材上に前述のラテックスインクをパターン状に塗布し、接着層を形成する。ここで、ラテックスインクを塗布するパターンは、箔を転写したい領域のパターンとする。
【0073】
ここで、ラテックスインクを塗布する基材は、接着層が接着可能な素材であれば特に制限されず、用途に応じて適宜選択される。基材の例には、各種プラスチック基材、金属基材、ガラス基材、石基材、布基材、天然パルプ基材、天然パルプと合成繊維とを混抄したフリース基材、和紙基材等が含まれる。例えば、本実施形態の箔画像形成方法によって、壁紙を製造する場合には、基材は、天然パルプ基材、天然パルプと合成繊維とを混抄したフリース基材、和紙基材等でありうる。前述のように、本実施形態のラテックスインクから得られる接着層は、基材に凹凸があっても箔の転写時に押し込まれ難い。したがって、本実施形態の箔画像形成方法は、凹凸を有する基材であっても、適用可能である。
【0074】
ラテックスインクの塗布方法は、所望のパターン状にラテックスインクを塗布可能な方法であれば特に制限されず、接着層を塗布する面積やパターンの形状等に応じて適宜選択される。ラテックスインクの塗布方法は、インクジェット塗布、ディスペンサー塗布、スプレー塗布等、公知の方法でありうるが、高精細なパターンを形成するとの観点から、インクジェット法であることが好ましい。
【0075】
基材上にラテックスインクを塗布した後、通常、塗膜から溶媒を除去して、接着層とする。溶媒を除去する方法は特に制限されず、各種ヒーターによる加熱、風乾、自然乾燥等でありうる。効率の観点から、溶媒の除去は、各種ヒーターによる加熱で行うことが好ましい。各種ヒーターの例には、電熱式ヒーター、赤外線ヒーター、電磁誘導(IH)ヒーター等が含まれる。また、ヒーターによる加熱を行う場合、ヒーターは、塗膜側に配置してもよく、基材側に配置してもよい。加熱時の塗膜の表面温度は、70〜100℃であることが好ましく、より好ましくは75〜90℃である。このとき、塗膜から溶媒を除去するだけでなく、コアシェル型ラテックス樹脂粒子のシェル層を溶融させて、塗膜(接着層)表面を平滑化させてもよい。
【0076】
本工程で形成する接着層の厚みは、1〜30μmであることが好ましく、より好ましくは1〜20μmであり、さらに好ましくは1〜10μmである。接着層の厚みが、1μm以上であると、接着層の接着性が十分に得られ、当該接着層のパターン状に箔層を形成しやすくなる。一方、接着層の厚みが30μm以下であると、基材と転写層との接着性が高まりやすい。
【0077】
(2.2)箔層形成工程
前述の接着層がパターン状に形成された基材の接着層上に、転写箔の転写面を接触させて加熱圧着し、前記接着層上に箔層を形成する。
【0078】
接着層と接触させる転写箔には、例えば図1(c)に示すように、支持材11と箔12とを少なくとも含み、例えば支持材11と箔12との間には、剥離層(図示せず)が形成されていてもよい。また、転写箔の転写面に、接着層等が形成されていてもよい。
【0079】
転写箔に含まれる支持材は、可撓性を有する樹脂フィルム等から構成され、例えば、ポリエチレン系フィルム、ポリエステル系フィルム、オレフィン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム等の樹脂フィルムや紙等でありうる。
【0080】
箔は、着色剤や金属材料等を含有し、製品上に転写後は美的外観を発現するものである。製品上に転写する際には支持材よりスムーズに剥離する性能が求められるとともに転写後は製品の最表面を形成するため、耐久性も求められる。転写箔は、上記性能を満たす公知の樹脂(箔の材料)を、グラビアコータ、マイクログラビアコータ及びロールコータ等のコータを用いて支持材上に塗布して得られる。箔の材料でありうる公知の樹脂としては、たとえば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられ、当該樹脂中に公知の染料や顔料等を添加して着色することも可能である。箔の厚みは通常1〜2μm程度である。
【0081】
また、メタリックな光沢を有する仕上がりの箔を含む転写箔は、例えば金属等からなる層(反射層)を、前述の樹脂に積層することで得られる。反射層を形成する金属材料としては、アルミニウム、スズ、銀、クロム、ニッケル、金や、ニッケル−クロム−鉄合金や青銅、アルミ青銅等の合金も挙げられる。上記金属材料を用いて反射層を形成する方法は特に制限されず、たとえば、蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法等、公知の方法が挙げられる。これらの方法によれば、厚さ約10nm〜約100nmの反射層が形成される。また、反射層には、たとえば、水洗シーライト加工、エッチング加工、レーザ加工等の公知の加工方法を利用して規則的な模様を付与するパターニング処理を施すことも可能である。
【0082】
転写箔の転写面には、接着層が形成されていてもよい。転写箔の転写面に接着層が形成されていると、前述のラテックスインクを塗布して得られる接着層と、箔由来の接着層とが相溶し、より強固に接着する。転写箔側に設けられる接着層は、加熱により粘着性を発現するいわゆるホットメルトタイプと呼ばれる感熱性の接着剤を含有するものでありうる。感熱性の接着剤としては、たとえば、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂及びエチレン−ビニルアルコール共重合体等のホットメルトタイプの接着剤に使用可能な公知の熱可塑性樹脂が挙げられる。当該接着層は、たとえば、グラビアコータ、マイクログラビアコータ及びロールコータ等のコータを用いて、上述した箔(樹脂層及び/または金属層)上に、上記接着剤を塗布して得られる。転写箔側の接着層の厚さは2μm〜3μmであることが好ましい。
【0083】
本工程では、ラテックスインクを塗布して得られる接着層と転写箔の転写面とを接触させた状態で、加熱圧着する。このとき、加熱温度や圧着力、加熱時間は、転写箔の種類等に応じて適宜選択される。これらを加熱圧着する方法は特に制限されず、例えば加熱ローラー圧着する方法や、加熱した板状部材でプレスする方法等でありうる。
【0084】
加熱圧着時の温度は、一般的には90〜120℃であり、好ましくは100〜110℃である。また、圧着力は、一般的には100〜700kPaであり、好ましくは150〜400kPaである。また、加熱圧着時間は0.05〜20秒程度であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10秒である。
【0085】
上記転写箔と接着層とを加熱圧着させた後、転写箔を基材上から除去する。このとき、接着層と加熱圧着された箔は、接着層上に残り、箔層となる。一方、接着層と接触しなかった領域の箔は、支持材と共に基材上から除去される。つまり、接着層と同一のパターン状に、箔層が形成され、基材上に所望の箔画像が形成される。
【0086】
(2.3)積層体の用途
本実施形態の箔画像形成方法により、得られる積層体の用途は特に制限されず、種々の用途に適用できる。積層体の用途の一例として、各種壁紙、包装材料、本の装丁、文具、機械、機器、電化製品、衣料品等が挙げられる。
【0087】
これらの中でも壁紙基材、特に天然パルプや、天然パルプに合成繊維が混抄された不織布(フリース)基材、和紙など維質な基材からなる壁紙基材に、箔転写した装飾壁紙が好適である。このような壁紙基材の表面には、繊維が露出していることが多く、表面に微小な凹凸段差が存在する。そのため、壁紙基材上に一般的な接着剤を塗布すると、箔転写のための加熱加圧によって溶融した樹脂成分が凹部に押し込まれてしまい、箔の被転写面が形成され難いため、箔との接着力が低下しやすい。
【0088】
これに対し、本実施形態の箔画像形成方法によれば、コア層が溶融樹脂全体を流動し難くするため、壁紙基材表面の繊維内奥にラテックスインクの塗膜が流動し難い。つまり、接着層が壁紙基材表面に留まりやすい。そのため、これらの壁紙基材への箔転写再現性が確保され、このような装飾壁紙は、外観性や箔の耐久性等が良好である。
【0089】
B.第二の実施形態
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。
前述の通り、箔画像形成方法に用いられる従来の接着剤は、通常、樹脂粒子(バインダー樹脂)を熱融着させて接着性を発現するものである。これに対して本発明者らは、樹脂粒子(バインダー樹脂)を熱融着させるだけでなく、該樹脂を架橋させることで、高い接着性と耐擦過性が得られることを見出した。
【0090】
即ち、箔画像形成方法に用いられる接着剤であるラテックスインクにおいて、樹脂粒子に、1)硬化剤を含有させ、かつ2)樹脂粒子を構成する樹脂に該硬化剤と反応する架橋性基を導入することで、基材と箔層との高い接着性を得ることができる。それにより、フリース素材などの基材に対しても、基材と箔層とを強固に接着させることができ、良好な接着強度と耐擦過性とを有する箔画像を形成できる。本発明の第二の実施形態は、このような知見に基づきなされたものである。
【0091】
B−1.ラテックスインク
本実施形態のラテックスインクは、箔画像形成時の接着剤として用いられるものであり;樹脂粒子と、それを分散させる水系溶媒とを含む。
【0092】
1−1.樹脂粒子
樹脂粒子は、架橋性基を有する樹脂と、硬化剤とを含む。
【0093】
1−1−1.架橋性基を有する樹脂
樹脂粒子に含まれる、架橋性基を有する樹脂は、バインダーとして機能する熱可塑性樹脂でありうる。架橋性基を有する樹脂は、箔転写工程の加熱圧着時の熱により、硬化剤と反応する架橋性基を有する。架橋性基の例には、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イミダゾール基、チオール基、酸無水物基、およびグリシジル基などが含まれる。
【0094】
このような樹脂は、架橋性基を有する重合性単量体(A)の単独重合体、または該重合性単量体(A)とそれと共重合可能な他の重合性単量体(B)との共重合体でありうる。
【0095】
架橋性基を有する重合性単量体(A)は、架橋性基と、エチレン性不飽和結合とを有する単量体でありうる。エチレン性不飽和結合は、ラジカル重合可能な炭素原子間二重結合であり、そのような炭素原子間二重結合を有する基の例には、ビニル基(CH=CH−)、(メタ)アクリル基(CH=CH−CH−、CH=C(CH)−CH−)、(メタ)アクリロイル基(CH=CH−CO−、CH=C(CH)−CO−)、(メタ)アクリロイルオキシ基(CH=CH−COO−、CH=C(CH)−COO−)などが含まれる。
【0096】
架橋性基を有する重合性単量体(A)の例には、
アクリル酸、メタクリル酸などの炭素数2〜30の(メタ)アクリル酸類;
ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシメチルアクリレート、カルボキシフェニルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2ヒドロキシエチル−フタル酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−ヒドロキシ−3−フェイキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イミダゾール−4−アクリル酸、3−(1H−イミダゾール−4−イル)アクリル酸エチルなどの炭素数2〜30の(メタ)アクリル酸エステル類;
エテンチオール、プロピレンチオールなどの炭素数2〜30のオレフィン類等が含まれる。なかでも、アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸が好ましい。重合性単量体(A)は、1種類で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0097】
他の重合性単量体(B)は、エチレン性不飽和結合を有する単量体でありうる。そのようなエチレン性不飽和結合を有する単量体の例には、スチレンあるいはスチレン誘導体、メタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸エステル誘導体、オレフィン類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、N−ビニル化合物類などが含まれる。
【0098】
スチレンあるいはスチレン誘導体の例には、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。
【0099】
メタクリル酸エステル誘導体は、アルキル部分の炭素数1〜30のメタクリル酸アルキルエステルでありうる。メタクリル酸アルキルエステルの例には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等が挙げられる。
【0100】
アクリル酸エステル誘導体は、アルキル部分の炭素数1〜30のアクリル酸アルキルエステルでありうる。アクリル酸アルキルエステルの例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。
【0101】
オレフィン類は、炭素数2〜30のオレフィン類であり、その例には、エチレン、プロピレン、イソブチレン等が挙げられる。ビニルエステル類は、炭素数2〜30のビニルエステル類であり、その例には、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。ビニルエーテル類は、炭素数2〜30のビニルエーテル類であり、その例には、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等が挙げられる。ビニルケトン類は、炭素数2〜30のビニルケトン類であり、その例には、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等が挙げられる。N−ビニル化合物類の例には、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0102】
他の重合性単量体(B)の例には、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体なども含まれる。
【0103】
他の重合性単量体(B)は、1種類で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0104】
樹脂における、架橋性基を有する重合性単量体(A)由来の構成単位の含有割合は、特に限定されないが、硬化剤との架橋反応を十分に行う観点から、重合性単量体全体に対する1〜95質量%であることが好ましく、1.5〜50質量%であることがより好ましい。
【0105】
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、接着性やインクの保存安定性の観点から、25〜70℃であることが好ましく、30〜60℃であることがより好ましい。
【0106】
樹脂のガラス転移温度は、ASTM D3418に準拠して、示差走査熱量計(島津製作所製:DSC−60A)を用いて測定することができる。具体的には、以下の手順で測定することができる。
1)測定試料を封入したアルミニウム製パンを準備する。一方、対照用に、空のアルミニウム製パンを準備する。
2)これらを上記装置にセットし、昇温速度10℃/分で昇温し、200℃で5分間ホールドし、200℃から0℃まで液体窒素を用いて−10℃/分で降温し、0℃で5分間ホールドし、再度0℃から200℃まで10℃/分で昇温を行う。
3)上記温度プロファイルの2度目の昇温時の吸熱曲線を解析し、オンセット温度をTgとする。測定装置(DSC−60A)の検出部の温度補正には、インジウムと亜鉛との融点を用い;熱量の補正には、インジウムの融解熱を用いる。
【0107】
樹脂の重量平均分子量は、接着性やインクの保存安定性の観点から、1万〜30万であることが好ましく、1.5万〜20万であることがより好ましい。
【0108】
樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。測定条件は、以下の通りとしうる。
(測定条件)
溶媒 : テトラヒドロフラン
カラム : 東ソー製TSKgel G4000+2500+2000HXL
カラム温度: 40℃
注入量 : 100μl
検出器 : RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ : L6000(日立製作所(株)製)
流量 : 1.0ml/min
校正曲線 : 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13のサンプルによる校正曲線を使用する。13のサンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
【0109】
樹脂の含有割合は、箔層と基材との十分な接着性を得る観点から、樹脂粒子全体に対して5〜95質量%であることが好ましい。
【0110】
1−1−2.硬化剤
樹脂粒子に含まれる硬化剤は、常温では、前述の樹脂を硬化させないが、一定以上の温度に加熱されると該樹脂を硬化させる潜在性熱硬化剤である。具体的には、硬化剤は、80℃以上、好ましくは100℃以上に加熱されると、前述の樹脂を硬化させる潜在性熱硬化剤でありうる。
【0111】
そのような硬化剤は、TGIC等のエポキシ基を含有する化合物、HAA(βヒドロキシアルキルアミド)、ブロックイソシアネート化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド基を含有する化合物、オキサゾリン基を含有する化合物、またはヒドラジド化合物などでありうる。なかでも、良好な硬化性と保存安定性とを両立しやすいことから、ブロックイソシアネート化合物が好ましい。
【0112】
ブロックイソシアネート化合物は、イソシアネート化合物のイソシアネート基を、ブロック剤でブロックしたものであり、一定以上の温度に加熱されると、ブロック剤が解離してイソシアネート基が露出して硬化性を発現しうる。
【0113】
イソシアネート化合物は、分子中にイソシアネート基を一以上、好ましくは二つ有する化合物であり、脂肪族イソシアネート化合物、脂環式イソシアネート化合物または芳香族イソシアネート化合物でありうる。脂肪族イソシアネート化合物の例には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステルおよび水添キシリレンジイソシアネートなどが含まれる。脂環式イソシアネート化合物の例には、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4,1−シクロヘキシレン)ジイソシアネート、および1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどが含まれる。芳香族イソシアネート化合物の例には、キシリレンジイソシアネート、トリエンジイソシアネート、ポリメリックMDI(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)、ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートおよびジフェニルメタンジイソシアネートなどが含まれる。
【0114】
ブロック剤の例には、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノールなどのフェノール類;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、1,3−ブタンジオールなどの炭素数2〜8のアルコール類;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルなどの炭素数2〜8のエステル類が含まれる。
【0115】
ブロックイソシアネート化合物は、イソシアネート化合物とブロック剤とを、必要に応じて加温下で反応させて得ることができる。
【0116】
硬化剤の含有割合は、樹脂粒子全体に対して5〜80質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましい。硬化剤の含有量を一定以上とすることで、箔転写時の加熱圧着温度で、樹脂と硬化剤との架橋反応を十分に行うことができ、得られる箔画像の接着強度や耐擦過性を高めやすい。硬化剤の含有量を一定以下とすることで、インク保存時の樹脂と硬化剤との意図しない反応を抑制しやすい。
【0117】
1−1−3.樹脂粒子の構造
樹脂粒子は、単層で構成されていてもよいし、多層で構成されていてもよい。複数の機能を両立しやすいことなどから、樹脂粒子は、多層で構成されることが好ましい。多層で構成される樹脂粒子は、コア層と、その周囲を覆うシェル層とを有する。シェル層は、コア層表面の全部を被覆する層であることが好ましいが、コア層表面の一部のみを被覆する層であってもよい。
【0118】
コア層の組成とシェル層の組成は、互いに異なりうる。例えば、コア層の硬化剤の含有量は、シェル層の硬化剤の含有量よりも多いことが好ましく;コア層が硬化剤を含有し、シェル層が硬化剤を実質的に含有しないことがより好ましい。シェル層が硬化剤を実質的に含有しないとは、具体的には、シェル層における硬化剤の含有量が5質量%以下であり、好ましくは0質量%であることをいう。それにより、硬化剤が、樹脂粒子の表面に露出しにくいため、インク保存時の硬化剤の意図しない反応を抑制し、インクの保存安定性が得られやすい。
【0119】
また、シェル層の引張弾性率は、コア層の引張弾性率よりも低くしうる。例えば、シェル層を構成する樹脂を、コア層を構成する樹脂のガラス転移温度よりも低い樹脂としうる。それにより、樹脂粒子を含む接着層を介して基材と転写箔とを加熱圧着する際に、樹脂粒子のシェル層を軟化させやすくし、基材と転写箔との密着性を高めうる。
【0120】
樹脂粒子がコア層とシェル層とを有することや、硬化剤がコア層に偏在していることは、以下の方法で確認されうる。即ち、本実施形態のラテックスインクをベースフィルム上に塗布した後、樹脂と硬化剤が反応せず、かつ樹脂粒子が融着しない温度で乾燥させて、樹脂粒子を含む塗膜を形成する。塗膜を切断して得られる断面をSEM観察して、樹脂粒子がコア層とシェル層とを有することを確認することができる。
【0121】
シェル層の平均厚みは、コア層の直径の1〜50%程度であり、好ましくは2〜10%程度でありうる。シェル層の厚みは、前述のSEM観察により測定することができる。
【0122】
樹脂粒子の体積平均粒径は、例えばインクジェット法による射出安定性を得るためなどから、1〜500nmであることが好ましく、80〜300nmであることがより好ましい。樹脂粒子の体積平均粒径は、「UPA−150」(マイクロトラック社製)により測定されうる。
【0123】
1−1−4.樹脂粒子の製造方法
樹脂粒子は、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化重合法、溶解懸濁法、分散重合法などの任意の方法で製造されうる。なかでも、平均粒子径が均一な樹脂粒子が得られやすいことなどから、乳化重合法で製造することが好ましい。
【0124】
乳化重合法は、水系溶媒中で単量体組成物を重合させる方法である。具体的には、水系溶媒と、水系溶媒に難溶な単量体組成物と、界面活性剤(乳化剤)とを混合して乳化液を得た後;該乳化液に、水系溶媒に可溶な重合開始剤を添加して単量体組成物を重合させる方法でありうる。
【0125】
単量体組成物は、前述の重合性単量体(A)を含む単量体成分と、前述の硬化剤とを含み、必要に応じて連鎖移動剤などをさらに含みうる。
【0126】
連鎖移動剤の例には、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、メルカプトプロピオン酸誘導体、チオグリコール酸誘導体などが含まれる。連鎖移動剤の添加量は、重合性単量体全体に対して0.01〜1質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%でありうる。連鎖移動剤の添加量を上記範囲とすることで、樹脂粒子を構成する樹脂の重量平均分子量を適切な範囲に調整しうる。
【0127】
界面活性剤は、前述の単量体組成物を水媒体に均一に分散させるために添加されうる。界面活性剤の例には、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、および脂肪酸塩などが含まれる。スルホン酸塩の例には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、o−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等などのイオン界面活性剤が挙げられる。硫酸エステル塩の例には、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。脂肪酸塩の例には、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0128】
重合開始剤は、油溶性または水溶性の重合開始剤でありうる。油溶性重合開始剤の例には、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンなどの過酸化物が含まれる。水溶性重合開始剤の例には、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、過酸化水素などが含まれる。
【0129】
水系溶媒は、通常、水であり、必要に応じて水溶性有機溶媒をさらに含みうる。水溶性有機溶媒は、本実施形態のラテックスインクに含まれる後述の水溶性有機溶媒と同様のものでありうる。
【0130】
重合反応は、水系溶媒を攪拌しながら、樹脂粒子の平均粒径が所望の範囲となるまで行われる。水系溶媒の攪拌は、例えば、通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等で行なうことができる。重合反応時の温度は、硬化剤が樹脂の架橋性基と反応しない温度;例えば70〜90℃程度に調整されうる。
【0131】
コア層とシェル層とを有する樹脂粒子は、水系溶媒中で、コア層を構成する単量体組成物を重合させてコア粒子を得た後;該コア粒子を含む水系溶媒に、シェル層を構成する単量体組成物をさらに添加し、重合反応させて得ることができる。
【0132】
樹脂粒子の含有量は、ラテックスインク全体に対して5〜80質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。樹脂粒子の含有量を一定以上とすることで、十分な接着性が得らやすい。樹脂粒子の含有量を一定以下とすることで、インク粘度を、例えばインクジェット方式による射出に適した範囲に調整しやすい。
【0133】
1−2.水系溶媒
本実施形態のラテックスインクに含まれる水系溶媒は、水を主成分として含む。水系溶媒は、インクの粘度を調整したり、インクの乾燥を防止したりする観点から、必要に応じて水溶性有機溶媒をさらに含んでもよい。
【0134】
水溶性有機溶媒は、インクの乾燥を抑制するなどの観点では、水より蒸気圧の低い有機溶媒を含むことが好ましい。そのような水溶性有機溶媒の例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;
2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類;
スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物;
ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物などが挙げられる。
【0135】
一方、インクの粘度を調整しやすい観点では、
メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の1価のアルコール;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等の多価アルコール;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール誘導体;
エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン等のアミン;ホルムアミド;N,N−ジメチルホルムアミド;
N,N−ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド;スルホラン;2−ピロリドン;N−メチル−2−ピロリドン;N−ビニル−2−ピロリドン;2−オキサゾリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;アセトニトリル;アセトン等が含まれる。水溶性有機溶媒は、1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0136】
なかでも、水との相溶性が良好であり、インクの乾燥防止と粘度調整を同時に行いやすいなどの観点から、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールおよびグリコール誘導体が好ましい。
【0137】
水系溶媒中の水溶性有機溶媒の含有割合は、水系溶媒全体に対して0〜50質量%、好ましくは30〜45質量%としうる。
【0138】
1−3.その他成分
本実施形態のラテックスインクは、本実施形態の効果を損なわない範囲で、他の成分をさらに含んでもよい。他の成分の例には、界面活性剤、乾燥防止剤(湿潤剤)、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、およびキレート剤などが含まれ、好ましくは界面活性剤が含まれる。
【0139】
界面活性剤は、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、または両性界面活性剤でありうる。界面活性剤の例には、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤;アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤;N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤などが含まれる。
【0140】
1−4.インクの物性
ラテックスインクの25℃における粘度は、インクジェット方式におけるインクの射出安定性を高める観点から、例えば1〜40mPa・s程度とし、好ましくは5〜40mPa・sとしうる。インクの粘度は、E型粘度計により、25℃、1rpmで測定することができる。
【0141】
B−2.箔画像の形成方法
本実施形態の箔画像の形成方法は、1)基材上または転写箔の箔層上(好ましくは基材上)に、本実施形態のラテックスインクをパターン状に付与して接着層を形成する工程と、2)基材と転写箔とを接着層を介して加熱圧着して、基材上に転写箔の箔層を転写して箔画像を形成する工程とを含む。
【0142】
図2は、箔画像の形成方法の一例を示す模式図である。図2に示されるように、箔画像の形成方法は、1)被転写材である基材110上に、本実施形態のラテックスインクをパターン状に付与して接着層130を形成する工程(図2(a)および図2(b)参照)と、2)該接着層130を介して、基材110と転写箔150とを重ね合わせて加熱圧着して、基材110上に転写箔150の箔層190を転写して箔画像230を形成する工程(図2(c)および図2(d)参照)とを含みうる。
【0143】
2−1.前記1)の工程について
基材110上に、本実施形態のラテックスインクをパターン状に付与する(図2(a)参照)。
【0144】
基材110は、用途に応じて選択され、その例には、各種プラスチック基材、金属基材、ガラス基材、石基材、布基材、天然繊維基材、天然繊維と合成繊維とを混抄したフリース基材、和紙基材などが含まれる。例えば、壁紙に用いられる基材は、天然繊維基材、天然繊維と合成繊維とを混抄したフリース基材、和紙基材などであり、好ましくは天然繊維と合成繊維とを混抄したフリース基材でありうる。
【0145】
ラテックスインクを付与するパターンは、箔を転写すべきパターン(箔画像のパターン)と一致させる。ラテックスインクを付与する方法は、特に制限されず、例えばインクジェット法、ディスペンサー法、スプレー法などでありうる。なかでも、高精細なパターンを形成しうることから、インクジェット法が好ましい。
【0146】
次いで、パターン状に付与されたラテックスインクの塗膜から、溶媒成分を除去して、樹脂粒子130Aまたはその融着物を含む接着層130を得る(図2(b)参照)。溶媒成分の除去は、加熱、風乾、または自然乾燥などで行われ、迅速に溶媒成分を除去できることから、加熱により行うことが好ましい。加熱は、電熱式ヒーター、赤外線ヒーター、電磁誘導(IH)ヒーターなどの各種ヒーターで行われうる。
【0147】
加熱温度は、溶媒成分が蒸発する温度であり、かつ樹脂粒子を構成する樹脂が硬化剤と反応しない(架橋しない)温度に設定され、例えば80〜180℃としうる。図2(b)では、樹脂粒子130Aが融着しない温度で接着層130を形成する例を示したが、樹脂粒子130A中の硬化剤と樹脂とが反応せず、かつ樹脂粒子130A同士が融着する温度で加熱して、接着層130を形成してもよい。
【0148】
接着層130の厚みは、1〜30μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。接着層130の厚みが一定以上であると、箔画像と基材110との接着強度が十分に得られやすい。一方、接着層130の厚みが一定以下であると、得られる積層物の凸凹を少なくできる。
【0149】
2−2.前記2)の工程について
基材110の接着層130と、転写箔150の箔層190とを重ね合わせて、加熱ローラー210などで加熱圧着させる(図2(c)参照)。それにより、接着層130を加熱溶融させる。
【0150】
転写箔150は、少なくとも支持体170と、箔層190とを含む。
【0151】
支持体170の例には、ポリエチレン系フィルム、ポリエステル系フィルム、オレフィン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリカーボネートフィルムなどの可撓性を有する樹脂フィルムや、紙などが含まれる。
【0152】
箔層190は、金属箔、金属蒸着膜、ホログラム膜、パール調膜、虹色膜、白/黒膜、カラー膜、クリア膜などでありうる。箔層190は、強度向上を目的として、プラスチックフィルムと金属との複合材料からなる層でもありうる。箔層190の厚みは、通常、0.1〜2μm程度としうる。箔層190を着色するために、箔層190上には着色層がさらに積層されていてもよい。
【0153】
転写箔150は、必要に応じて支持体170と箔層190との間に剥離層(不図示)などの他の層をさらに含んでもよい。剥離層は、完全けん化ポリビニルアルコール、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂等の離型性を有する樹脂からなる層でありうる。
【0154】
加熱圧着は、例えば加熱ローラーで圧着する方法や、加熱した板状部材でプレスする方法などで行うことができる。加熱圧着時の加熱温度、圧力および加熱時間は、基材110や転写箔150の種類に応じて設定されうる。加熱温度は、樹脂粒子130が融着する温度以上であることが好ましく、例えば70〜200℃、好ましくは90〜150℃としうる。圧力は、100〜700kPa、好ましくは150〜400kPaとしうる。加熱時間は、0.05〜20秒程度としうる。
【0155】
接着層130は、本実施形態のラテックスインク由来の、硬化剤を含有する樹脂粒子130A(またはその融着物)を含む。従って、加熱圧着時の熱により、接着層130に含まれる樹脂粒子130A同士を融着させ、かつそれを構成する樹脂を架橋させうる。例えば、接着層130に含まれる硬化剤がブロックイソシアネート化合物である場合、加熱圧着時の熱により、ブロックイソシアネート化合物からブロック剤が解離する。それにより、露出したイソシアネート化合物のイソシアネート基と、架橋性基を有する樹脂の架橋性基とが反応し、樹脂を架橋させうる。それにより、箔層190と基材110とが、樹脂の硬化物(架橋物)を介して強固に接着される。
【0156】
基材110と転写箔150とを加熱圧着させた後、転写箔150の支持体170を剥離する(図2(d)参照)。それにより、パターン状に形成された接着層130と接触する領域の箔層190は、接着層130上に転写されて箔画像230となる。一方、接着層130と接触しない領域の箔層190は、支持体170と共に除去される。それにより、接着層130と同一のパターン状に箔層190を転写することができ、箔画像230を形成することができる。
【0157】
B−3.積層体
本実施形態の積層体は、基材110と、パターン状に形成された箔層190(箔画像230)と、基材110と箔層190との間に配置された硬化物層250とを含む。本実施形態の積層体は、前述の箔画像の形成方法により得ることができる。
【0158】
硬化物層250は、本実施形態のラテックスインクの硬化物で構成される。それにより、箔層190と基材110とを強固に接着させることができ、箔画像230の基材110に対する接着強度と耐擦過性を高めることができる。
【0159】
本実施形態の積層体は、種々の用途、例えば各種壁紙、包装材料、本の装丁、文具、機械、機器、電化製品、衣料品などに用いられ、好ましくは壁紙に用いられる。
【実施例】
【0160】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。しかしながら、本発明の範囲はこれによって何ら制限を受けない。
【0161】
A.第一の実施形態の実施例
[貯蔵弾性率の測定方法]
各実施例及び比較例で得られる樹脂粒子に含まれる弾性樹脂の120℃における貯蔵弾性率G’(120)は、以下のように測定した。測定装置は、MR−500型ソリキッドメータ(レオロジ社製)とし、以下の手順(1)〜(4)に基づいて、測定した。
【0162】
(1)コア粒子(弾性樹脂粒子)の分散液を、20±1℃で、測定試料シャーレに入れて平らにならした。当該シャーレを相対湿度50±5%Rhの環境下にて、24時間以上静置して乾燥させた。そして、当該シャーレから試料を0.6g取り、これを圧縮成形機に装填した。その後、3tの荷重を30秒間加えて直径1cmのペレットを作製した。
(2)ペレットを直径0.977cmのパラレルプレートに装填した。
(3)測定装置の測定部温度を、後述の方法で測定される「弾性樹脂の軟化点」より20℃低い温度に設定した。一方で、パラレルプレートギャップを3mmに設定してペレットを圧縮した。
(4)その後、測定装置の測定部温度を35℃に設定して、ペレットを35℃まで放冷した。そして、周波数1.0Hzの正弦波振動を加えながら、測定部を5℃/分で昇温させて、200℃まで昇温させた。このときの120〜150℃における複素弾性率Gを測定し、これより貯蔵弾性率G’(120)を算出した。
【0163】
(弾性樹脂の軟化点の測定方法)
弾性樹脂の軟化点は、フローテスター法によって測定した。
具体的には、前述の弾性樹脂粒子の分散液を、温度20±1℃で、測定試料シャーレに入れて平らにならした。当該シャーレを相対湿度50±5%Rhの環境下にて、12時間以上静置した。そして、当該シャーレから試料を1.1g取り、これを圧縮成形機に装填した。その後、3tの荷重を30秒間加えて直径1cmのペレットを作製した。
次いで、このサンプルを24±5℃、相対湿度50±20%RHの環境下においた。そして、フローテスター(CFT−500D(島津製作所社製)により、荷重196N(20kg重)、開始温度80℃、余熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱形のダイ(1mm×1mm)より、直径1cmのピストンを押出した。そして、オフセット値5mmとなる温度を軟化点とした。
【0164】
[実施例A−1]
・「単量体混合液1」の調製
スチレン567質量部、n−ブチルアクリレート165質量部、メタクリル酸68質量部、及びn−オクチルメルカプタン4質量部を混合し、これを「単量体混合液1」とした。
【0165】
・「単量体混合液2」の調製
スチレン390質量部、メタクリル酸40質量部、及びn−オクチルメルカプタン13質量部を混合し、これを「単量体混合液2」とした。
【0166】
・コアの形成
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン=ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部、及びイオン交換水3000質量部を投入し、窒素気流下、230rpmの撹拌速度で撹拌しながら温度を80℃に昇温させた。
昇温後、過硫酸カリウム(KPS)8質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、液温を75℃にして、前述の「単量体混合液1」を1時間かけて滴下した。滴下後、75℃にて2時間加熱、撹拌して重合反応を行うことにより、「コアA1」の分散液を作製した。
【0167】
・シェル層の形成
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に前記「コアA1」の分散液40質量部(固形分換算値)と、ポリオキシエチレン=ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部と、イオン交換水1270質量部とを投入し、温度を80℃に加熱した。
加熱後、上記分散液中に、過硫酸カリウム(KPS)10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した。その後、液温を80℃にして前述の「単量体混合液2」を1時間かけて滴下添加した。さらに、80℃で2時間加熱、撹拌して重合反応を行ったあと28℃まで冷却して、コアシェル型ラテックス樹脂粒子(A2)の分散液を得た。
【0168】
・ラテックスインクの調製
前述のコアシェル型ラテックス樹脂粒子(A2)の分散液58質量部と、グリセリン10質量部と、ジエチレングリコール10質量部と、イオン交換水22質量部とを混合し、ラテックスインクを調製した。
【0169】
[実施例A−2]
「コアA1」調製時の過硫酸カリウム(KPS)の量を10質量部とし、n−オクチルメルカプタンの量を8質量部とした以外は、実施例A−1と同様に調製し、「コアB2」を含む分散液を得た。そして、「コアA1」を含む分散液の代わりに、「コアB2」を含む分散液を使用した以外は、実施例A−1と同様にコアシェル型ラテックス樹脂粒子(B2)を調製し、コアシェル型ラテックス樹脂粒子(B2)を含むラテックスインクを調製した。
【0170】
[実施例A−3]
「コアA1」調製時の過硫酸カリウム(KPS)の量を10質量部とし、n−オクチルメルカプタンを添加しなかった以外は、実施例A−1と同様に調製し、「コアC2」を含む分散液を得た。そして、「コアA1」を含む分散液の代わりに、「コアC2」を含む分散液を使用した以外は、実施例A−1と同様にコアシェル型ラテックス樹脂粒子(C2)を調製し、コアシェル型ラテックス樹脂粒子(C2)を含むラテックスインクを調製した。
【0171】
[実施例A−4]
シェルの作製時の「コアA1」の量を、固形分換算で11.6質量部とした以外は、実施例A−1と同様に調製し、コアシェル型ラテックス樹脂粒子(D2)を含むラテックスインクを調製した。
【0172】
[実施例A−5]
シェルの作製時の「コアA1」の量を、固形分換算で63質量部とした以外は、実施例A−1と同様に調製し、コアシェル型ラテックス樹脂粒子(E2)を含むラテックスインクを調製した。
【0173】
[比較例A−1]
「コアA1」調製時の過硫酸カリウム(KPS)の量を10質量部とし、n−オクチルメルカプタンの量を10質量部とした以外は、実施例A−1と同様に調製し、コアシェル型ラテックス樹脂粒子(F2)を含むラテックスインクを調製した。
【0174】
[比較例A−2]
「コアA1」調製時の過硫酸カリウム(KPS)の量を6質量部とし、n−オクチルメルカプタンを添加しなかった以外は、実施例A−1と同様に調製し、コアシェル型ラテックス樹脂粒子(G2)を含むラテックスインクを調製した。
【0175】
[比較例A−3]
実施例A−1で調製した「コアA1」の分散液80質量部と、グリセリン10質量部と、ジエチレングリコール10質量部とを混合し、ラテックスインクを得た。
【0176】
[比較例A−4]
実施例A−2で調製した「コアB1」の分散液80質量部と、グリセリン10質量部と、ジエチレングリコール10質量部とを混合し、ラテックスインクを得た。
【0177】
[比較例A−5]
実施例A−3で調製したコアC1の分散液80質量部と、グリセリン10質量部と、ジエチレングリコール10質量部とを混合し、ラテックスインクを得た。
【0178】
[比較例A−6]
・単量体混合液3の調製
スチレン390質量部、n−ブチルアクリレート140質量部、メタクリル酸40質量部、及びn−オクチルメルカプタン13質量部を混合し、これを」「単量体混合液3」とした。
【0179】
・粒子の調製
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器にポリオキシエチレン=ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部と、イオン交換水1270質量部とを投入し、温度を80℃に加熱した。
加熱後、上記乳化粒子分散液中に、過硫酸カリウム(KPS)10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、液温を80℃にして上記「単量体混合液3」を1時間かけて滴下添加した。さらに、80℃で2時間加熱、撹拌して重合反応を行ったあと28℃まで冷却して、「樹脂微粒子K1」の分散液を作製した。
当該樹脂微粒子K1の分散液58質量部と、グリセリン10質量部と、ジエチレングリコール10質量部と、イオン交換水22質量部とを混合し、ラテックスインクを調製した。
【0180】
[比較例A−7]
比較例A−6のラテックスインクに、最大粒子径が1μm以下である、酸化チタン粒子を10質量部含有させて、ラテックスインクを得た。
【0181】
[比較例A−8]
実施例A−1の「コアA1」の分散液9質量部(固形分換算値)と、「樹脂微粒子K1」の分散液91質量部(固形分換算値)とを混合し、弾性樹脂を6.6%含有するラテックス樹脂分散液を得た。
当該ラテックス分散液80質量部と、グリセリン10質量部と、ジエチレングリコール10質量部とを混合し、ラテックスインクを得た。
【0182】
[評価]
上記実施例及び比較例で調製したラテックスインクを用いて接着層を形成し、転写箔を転写した。得られた積層体、及びラテックスインクについて、接着層と箔との接着性、パターン再現性、箔転写後の表面状態、フリース基材と接着層との接着性、及びラテックスインクの印刷性(インク詰まり)について、以下のように評価した。結果を表1に示す。なお、接着層の形成方法及び箔の転写方法は、以下のように行った。
【0183】
・接着層の形成及び転写方法
上記作製したラテックスインクを、ピエゾ型ヘッドを4列搭載したオンデマンド型インクジェット装置のインクタンクに充填した。ピエゾ型ヘッドの、ノズル口径は28μm、駆動周波数は18kHz、ノズル数は512、最小液滴量は12pl、ノズル密度は180dpiであった。そして、市販の画像支持体「DEEP UV ヴァンヌーボ スノーホワイト(坪量162.5g/m2)(株式会社 竹尾製)」上に、ラテックスインクをフル液滴量14pl、駆動周波数18kHz、印字解像度720dpi×720dpiの条件で画像を形成した。形成した画像を80℃で1分間加熱して乾燥させて、厚み2.0μmの接着層を得た。
【0184】
上記塗布装置にて、画像支持体上に各ラテックスインクによる接着層を形成した後、当該画像支持体上の接着層と転写箔の箔転写面(接着層)とを重ね合わせ、加熱加圧ロール間を通過させて、箔接着層上に箔を転写させた。なお、転写箔は、市販の転写箔(株)村田金箔製の「BL2号金2.8」を使用した。
【0185】
箔転写は以下に示す条件下で行った。
・加熱ロール:外径100mm、厚さ10mmのアルミニウム製基体上に厚さ3mmのシリコーンゴム層が配置されたものであり、表面温度を110℃に設定
・加圧ロール:外径80mm、厚さ10mmのアルミニウム製基体上に厚さ3mmのシリコーンゴム層が配置されたものであり、表面温度を100℃に設定
・熱源:加熱ロール及び加圧ロールの内部にハロゲンランプを各々配置(サーミスタにより温度制御)
・加熱ロールと加圧ロールのニップ幅:7mm
・加熱ロールと加圧ロールの面圧:300kPa
・画像支持体搬送速度:42mm/分
・転写箔材搬送方向:A3サイズの上記転写箔を縦方向に搬送させる
・評価環境:常温常湿環境(温度20℃、相対湿度50%RH)
【0186】
・箔と接着層との接着性評価
「DEEP UV ヴァンヌーボ スノーホワイト(坪量162.5g/m)(株式会社 竹尾製)」からなる基材に、前述の接着層形成方法にて、5cm×10cmの接着層を形成した。その後、前述の箔の転写方法により、箔を転写させて、5cm×10cmの箔画像(ベタ画像)を形成した。
そして、当該箔画像にテープを貼り付け、手で剥がした。このときの箔画像の状態を、肉眼及び10倍のルーペで確認し、以下の基準で評価した。なお、テープは、スコッチメンディングテープ MP−18(住友スリーエム社製)を使用した。
◎:ルーペ観察で確認可能な、微細な剥離が生じなかった
〇:ルーペ観察で確認可能な、微細な剥離は生じたが、肉眼では問題内レベルであった
△:肉眼観察で確認可能な微細な剥離は生じたものもあったが、実用上許容範囲内であった
×:肉眼観察で確認可能な剥離が生じ、実用上許容範囲外であった
【0187】
・パターン再現性評価
(パターン1)
「DEEP UV ヴァンヌーボ スノーホワイト(坪量162.5g/m)」からなる基材に、前述の接着層形成方法にて、幅2mmの線画を1.0mm間隔で通紙方向に対し、縦(垂直)と横(平行)に形成した。その後、前述の箔の転写方法により、転写箔を転写させて、細線パターンを形成した。
【0188】
(パターン2)
「DEEP UV ヴァンヌーボ スノーホワイト(坪量162.5g/m)」からなる基材に、前述の接着層形成方法にて、幅1mmの線画を0.5mm間隔で通紙方向に対し、縦(垂直)と横(平行)に形成した。その後、前述の箔の転写方法により、箔を転写させて、細線パターンを形成した。
【0189】
そして、当該細線パターンの状態を、肉眼及び10倍のルーペで確認した。そして、以下の基準で評価した。
◎:2つのパターンの細線画像とも、細線間に余分な箔が存在せず、細線上に箔の欠けがないことが、ルーペで認められた
〇:幅1mmの細線画像上に微小な欠けが見られたが、肉眼観察では問題ないレベルであり、かつ2つのパターンの細線画像とも、細線間に余分な箔が存在しなかった
△:部分的に、細線間に余分な箔が残存することが、肉眼観察で認められたが、実用上許容範囲内であった
×:細線が完全に再現できないものがあり、当該欠陥が肉眼で確認され、実用上許容範囲外であった
【0190】
・ローラー押し付け試験後の表面状態評価
箔と接着層との接着性評価と同様に、5cm×10cmの接着層を形成した。その後、転写箔を転写させて、5cm×10cmの箔画像(ベタ画像)を形成した。
そして、市販の壁紙貼り付け用押さえローラーを使用して、箔転写面上をローラーで押さえつけて10往復させた。そして、箔画像の状態を、肉眼及び10倍のルーペで確認した。そして、以下の基準で評価した。
◎:ルーペ観察で確認可能な、微細な傷や剥離が生じなかった
〇:ルーペ観察で確認可能な、微細な傷や剥離は生じたが、肉眼では問題内レベルであった
△:肉眼観察で確認可能な微細な傷や剥離は生じたものもあったが、実用上許容範囲内であった
×:肉眼観察で確認可能な傷や剥離が生じ、実用上許容範囲外であった
【0191】
・接着層とフリース基材との接着性評価
デジタルプリント壁紙用不織布(フリース基材)「MA8941D(アールストローム社製)」を基材とした以外は、前述の箔転写方法と同様にして箔転写を行い、その後接着性、再現性、および表面状態を前述の「箔と接着層との接着性評価方法」と同様に評価した。
【0192】
・ラテックスインクの印刷性評価(インク詰まり)
各ラテックスインクを用いて、接着性評価、及びパターン再現性評価で形成した接着層と同様のパターン状にそれぞれ100枚ずつ連続で出力した。その後、ノズルの状態を確認した。
【0193】
【表1】
【0194】
表1に示されるように、ラテックスインク中に含まれる樹脂粒子が、コアシェル構造を有し、かつコアに含まれる樹脂の貯蔵弾性率G’(120)が、1×10〜1×10dyn/cmであると、箔と接着層との接着性、接着層とフリース基材との接着性が良好であり、さらにパターン再現性やローラー押しつけ試験後の表面状態も良好であった。またさらに、インクジェット装置からのインクの吐出安定性も良好であった(実施例A−1〜A−5)。
【0195】
一方、樹脂粒子がコアシェル構造を有したとしても、コアに含まれる弾性樹脂の貯蔵弾性率が低すぎる場合、パターン再現性及び接着層とフリース基材との接着性の評価結果が悪かった(比較例A−1)。コアが軟らか過ぎるため、箔の転写時に接着層の形状が変化したり、フリース基材の凹凸に押し込まれたことによって、パターン再現性等が低下したと推察される。
【0196】
また、樹脂粒子がコアシェル構造を有したとしても、コアに含まれる弾性樹脂の貯蔵弾性率が高すぎる場合、箔と接着層との密着性が低かった(比較例A−2)。コアが硬すぎるため、接着層と箔との密着が阻害されたと推察される。
【0197】
さらに、樹脂粒子が弾性樹脂(貯蔵弾性率G’(120)が、1×10〜1×10dyn/cmである樹脂)のみからなる場合、接着層及び箔、並びに接着層及び基材の接着性が悪かった(比較例A−3〜A−5)。樹脂粒子が硬く、箔や基材と十分に密着しなかったと推察される。
【0198】
一方、樹脂粒子が弾性樹脂以外の樹脂(貯蔵弾性率G’(120)が、1×10dyn/cmである樹脂)からなる場合、パターン再現性が低かった(比較例A−6)。接着層が変形しやすく、箔の転写時に基材の凹凸に接着層が押し込まれたこと等によって、パターン再現性等が低下したと推察される。そして、当該インクに無機フィラーを入れると、パターン再現性は高まったものの、無機フィラー由来の凹凸が箔表面に現れてしまい、箔の表面状態が低下した(比較例A−7)。また、比較例A−7のラテックスインクについては添加されている硬質フィラーが原因と思われるノズルつまりが生じていることが確認された。
【0199】
また、弾性樹脂と溶融樹脂とをコアシェル構造にせず、混合した場合には、パターン再現性を高めることが難しかった(比較例A−8)。
【0200】
B.第二の実施形態の実施例
1.樹脂粒子の材料
<重合性単量体>
1)架橋性基を有する重合性単量体(A)
メタクリル酸
メタクリル酸グリシジル
2)その他の重合性単量体(B)
スチレン
n−ブチルアクリレート
【0201】
<硬化剤>
アミン:1,3−フェニレンジアミン
ブロックイソシアネート:下記合成例1で合成したブロックイソシアネート
(合成例1)
イソホロンジイソシアネート444部をトルエン816部に溶解した。これに、1,3−ブタンジオール90部を60℃で1時間かけて滴下した後、6時間反応を行った。次いで、マロン酸ジエチル640部をさらに添加し、6時間反応を行った。得られたブロックイソシアネート組成物溶液500部に、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル25部を添加し、撹拌しながら水391部を徐々に添加した後、ホモミキサーにて乳化を行った。その後、得られた溶液を減圧してトルエンを留去した。得られた水性分散液をろ過し、35℃のイオン交換水で繰り返し洗浄した後、40℃の温風で乾燥してブロックイソシアネートを得た。
【0202】
<連鎖移動剤>
n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル
【0203】
<界面活性剤>
ドデシル硫酸ナトリウム
【0204】
<重合開始剤>
過硫酸カリウム(KPS)
【0205】
2.ラテックスインクの作製
<ラテックスインク1の作製>
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に、重合性単量体としてスチレン326質量部、n−ブチルアクリレート133.1質量部およびメタクリル酸10.8質量部と、連鎖移動剤としてn−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル11.0質量部と、硬化剤としてブロックイソシアネート120.2質量部とを投入し、90℃に加熱して、混合液〔a1〕を得た。
【0206】
一方、撹拌装置、温度センサ、冷却管、および窒素導入装置を取り付けた反応容器において、ドデシル硫酸ナトリウム1.6質量部をイオン交換水2,700質量部に溶解させた界面活性剤溶液を調製した。この界面活性剤溶液を98℃に加熱し、上記混合液〔a1〕をさらに添加した。得られた溶液を、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により2時間混合分散させて、分散液(乳化液)を得た。
【0207】
次いで、この乳化液に、過硫酸カリウム(KPS)12.5質量部をイオン交換水440質量部に溶解させた開始剤溶液と、イオン交換水750質量部とを添加し、98℃で2時間撹拌して重合反応を行った。それにより、硬化剤を含有する樹脂粒子1Hが分散された樹脂粒子分散液〔1H〕を得た。樹脂粒子分散液〔1H〕に含まれる樹脂粒子の体積平均粒径は、200nmであった。体積平均粒径は、「UPA−150」(マイクロトラック社製)により測定した。樹脂粒子分散液〔1H〕に、エチレングリコールモノブチルエーテル20質量%、ヘキサンジオール20質量%をさらに添加して固形分を10質量%に調整し、ラテックスインク1とした。
【0208】
<ラテックスインク2の作製>
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に、重合性単量体としてスチレン163.8質量部、n−ブチルアクリレート122.3質量部、メタクリル酸10.8質量部およびメタクリル酸グリシジル173質量部と、連鎖移動剤としてn−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル11.0質量部と、硬化剤として1,3−フェニレンジアミン120.2質量部とを投入し、90℃に加熱して、混合液〔b1〕を得た。
【0209】
一方、撹拌装置、温度センサ、冷却管、および窒素導入装置を取り付けた反応容器において、ドデシル硫酸ナトリウム1.6質量部をイオン交換水2,700質量部に溶解させた界面活性剤溶液を調製した。この界面活性剤溶液を98℃に加熱し、上記混合液〔b1〕をさらに添加した。得られた溶液を、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により2時間混合分散させて、分散液(乳化液)を得た。
【0210】
次いで、この乳化液に、過硫酸カリウム(KPS)12.5質量部をイオン交換水440質量部に溶解させた開始剤溶液と、イオン交換水750質量部とを添加し、98℃で2時間撹拌して重合反応を行った。それにより、硬化剤を含有する樹脂粒子2Hが分散された樹脂粒子分散液〔2H〕を得た。樹脂粒子分散液〔2H〕に含まれる樹脂粒子の体積平均粒径は200nmであった。樹脂粒子分散液〔2H〕に、エチレングリコールモノブチルエーテルが20質量%、ヘキサンジオールが20質量%となるように添加して固形分を10質量%に調整し、ラテックスインク2とした。
【0211】
<ラテックスインク3の作製>
1)樹脂粒子3Hの作製
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に、重合性単量体としてスチレン135.9質量部、n−ブチルアクリレート55.4質量部、およびメタクリル酸4.5質量部と、硬化剤としてブロックイソシアネート120.2質量部とを添加し、90℃に加熱して、混合液〔c1〕を得た。
【0212】
一方、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器において、ドデシル硫酸ナトリウム1.6質量部をイオン交換水2,700質量部に溶解させた界面活性剤溶液を調製した。この界面活性剤溶液を98℃に加熱し、上記混合液〔c1〕をさらに添加した。得られた溶液を、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により2時間混合分散させて、分散液(乳化液)を得た。
【0213】
次いで、この乳化液に、過硫酸カリウム(KPS)5.1質量部をイオン交換水240質量部に溶解させた開始剤溶液と、イオン交換水750質量部とを添加し、98℃で2時間撹拌して重合反応を行った。それにより、硬化剤を含有する樹脂粒子3Hが分散された樹脂粒子分散液〔3H〕を得た。樹脂粒子分散液〔3H〕に含まれる樹脂粒子の体積平均粒径は160nmであった。
【0214】
2)樹脂粒子3HMの作製
上記作製した樹脂粒子分散液〔3H〕に、過酸化カリウム(KPS)7.4質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加して、温度を80℃に調整した。これに、スチレン190.1質量部、n−ブチルアクリレート77.7質量部、メタクリル酸6.3質量部、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル11.0質量部を含む混合液〔c2〕を1時間かけて滴下した。滴下終了後、得られた溶液を80℃に維持したままで2時間にわたって加熱および撹拌して重合反応を行った。得られた溶液を28℃に冷却して、樹脂粒子3HMが分散された樹脂粒子分散液〔3HM〕を得た。樹脂粒子3Hは、表面に樹脂が被覆された複合構造を有しており、体積平均粒径は200nmであった。樹脂粒子分散液〔3HM〕に、エチレングリコールモノブチルエーテルが20質量%、ヘキサンジオールが20質量%となるように添加して固形分を10質量%に調整し、ラテックスインク3とした。
【0215】
<ラテックスインク4の作製>
1)樹脂粒子4Hの作製
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に、重合性単量体としてスチレン17.0質量部、n−ブチルアクリレート6.9質量部およびメタクリル酸0.56質量部と、硬化剤としてブロックイソシアネート15.0質量部とを添加し、90℃に加熱して、混合液〔d1〕を得た。
【0216】
一方、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器において、ドデシル硫酸ナトリウム1.6質量部をイオン交換水2,700質量部に溶解させた界面活性剤溶液を調製した。これを98℃に加熱し、混合液〔d1〕をさらに投入した。得られた溶液を、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により2時間混合分散を行って分散液(乳化液)を得た。
【0217】
次いで、この乳化液に、過硫酸カリウム(KPS)5.1質量部をイオン交換水240質量部に溶解させた開始剤溶液と、イオン交換水750質量部とを添加し、98℃で2時間撹拌して重合反応を行った。それにより、硬化剤を含有する樹脂粒子4Hが分散された樹脂粒子分散液〔4H〕を得た。樹脂粒子分散液〔4H〕に含まれる樹脂粒子の体積平均粒径は80nmであった。
【0218】
2)樹脂粒子4HMの作製
上記作製した樹脂粒子分散液〔4H〕に、過酸化カリウム(KPS)7.4質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加して、温度を80℃に調整した。これに、スチレン23.8質量部、n−ブチルアクリレート9.7質量部、メタクリル酸0.79質量部、およびn−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル1.4質量部の混合液〔d2〕を1時間かけて滴下した。滴下終了後、得られた溶液を80℃に維持したままで2時間にわたって加熱、撹拌して重合反応を行った後、28℃に冷却して、樹脂粒子4HMが分散された樹脂粒子分散液〔4HM〕を調製した。樹脂粒子4Hは、表面に樹脂が被覆された複合構造を有しており、体積平均粒径は100nmであった。樹脂粒子分散液〔4HM〕に、エチレングリコールモノブチルエーテルが20質量%、ヘキサンジオールが20質量%となるように添加して固形分を10質量%に調整し、ラテックスインク4とした。
【0219】
<ラテックスインク5の作製>
1)樹脂粒子5Hの作製
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に、重合性単量体としてスチレン265質量部、n−ブチルアクリレート108質量部、およびメタクリル酸8.8質量部と、硬化剤としてブロックイソシアネート235質量部とを投入し、90℃に加熱して、混合液〔e1〕を得た。
【0220】
一方、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器において、ドデシル硫酸ナトリウム1.6質量部をイオン交換水2,700質量部に溶解させた界面活性剤溶液を調製した。この界面活性剤溶液を98℃に加熱し、上記混合液〔e1〕をさらに添加した。得られた溶液を、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により2時間混合分散させて、分散液(乳化液)を得た。
【0221】
次いで、この乳化液に、過硫酸カリウム(KPS)5.1質量部をイオン交換水240質量部に溶解させた開始剤溶液と、イオン交換水750質量部とを添加し、98℃で2時間撹拌して重合反応を行った。それにより、硬化剤を含有する樹脂粒子5Hが分散された樹脂粒子分散液〔5H〕を得た。樹脂粒子分散液〔5H〕に含まれる樹脂粒子の体積平均粒径は200nmであった。
【0222】
2)樹脂粒子5HMの作製
上記樹脂粒子分散液〔5H〕に、過酸化カリウム(KPS)7.4質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加して、温度を80℃に調整した。これに、スチレン371質量部、n−ブチルアクリレート152質量部、メタクリル酸12.3質量部、およびn−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル21.4質量部の混合液〔e2〕を1時間かけて滴下した。滴下終了後、得られた溶液を80℃に維持したままで2時間にわたって加熱、撹拌して重合反応を行った後、28℃に冷却して、樹脂粒子5HMが分散されてなる樹脂粒子分散液〔5HM〕を得た。樹脂粒子5Hは、表面に樹脂が被覆された複合構造を有しており、体積平均粒径は250nmであった。この樹脂粒子分散液〔5HM〕に、エチレングリコールモノブチルエーテルが20質量%、ヘキサンジオールが20質量%となるように添加して固形分を10質量%に調整し、ラテックスインク5とした。
【0223】
<ラテックスインク6の作製>
1)樹脂粒子6Hの作製
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に、重合性単量体としてスチレン1087質量部、n−ブチルアクリレート443質量部、およびメタクリル酸36質量部と、硬化剤としてブロックイソシアネート962質量部とを添加し、90℃に加熱して、混合液〔f1〕を得た。
【0224】
一方、撹拌装置、温度センサ、冷却管、および窒素導入装置を取り付けた反応容器において、ドデシル硫酸ナトリウム1.6質量部をイオン交換水2,700質量部に溶解させた界面活性剤溶液を調製した。この界面活性剤溶液を98℃に加熱し、上記混合液〔f1〕をさらに添加した。得られた溶液を、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により2時間混合分散させて、分散液(乳化液)を得た。
【0225】
次いで、この乳化液に、過硫酸カリウム(KPS)5.1質量部をイオン交換水240質量部に溶解させた開始剤溶液と、イオン交換水750質量部とを添加し、98℃で2時間撹拌して重合反応を行った。それにより、硬化剤を含有する樹脂粒子6Hが分散された樹脂粒子分散液〔6H〕を得た。樹脂粒子分散液〔6H〕に含まれる樹脂粒子の体積平均粒径は200nmであった。
【0226】
2)樹脂粒子6HMの作製
上記作製した樹脂粒子分散液〔6H〕に、過酸化カリウム(KPS)7.4質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加して、温度を80℃に調整した。これに、スチレン1520質量部、n−ブチルアクリレート622質量部、メタクリル酸50.4質量部およびn−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル87.7質量部の混合液〔f2〕を1時間かけて滴下した。滴下終了後、得られた溶液を80℃に維持したままで2時間にわたって加熱、撹拌して重合反応を行った後、28℃に冷却して、樹脂粒子6HMが分散された樹脂粒子分散液〔6HM〕を得た。樹脂粒子6Hは、表面に樹脂が被覆された複合構造を有しており、体積平均粒径は400nmであった。樹脂粒子分散液〔6HM〕に、エチレングリコールモノブチルエーテルが20質量%、ヘキサンジオールが20質量%となるように添加して固形分を10質量%に調整し、ラテックスインク6とした。
【0227】
<ラテックスインク7の作製>
撹拌装置、温度センサ、冷却管、および窒素導入装置を取り付けた反応容器内に、重合性単量体としてスチレン326質量部、n−ブチルアクリレート133.1質量部およびメタクリル酸10.8質量部と、連鎖移動剤としてn−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル11.0質量部と、硬化剤としてブロックイソシアネート120.2質量部、トルエン100質量部、メチルエチルケトン100質量部を投入し、60℃に加熱して、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)4質量部を添加し混合液〔g1〕を得た。
【0228】
一方、撹拌装置、温度センサ、冷却管、および窒素導入装置を取り付けた反応容器において、イオン交換水2,700質量部を70℃に加熱し、上記混合液〔g1〕をさらに添加した。得られた溶液を、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により2時間混合分散させて、分散液を得た。エバポレーターで減圧しながら溶剤を除去して樹脂微粒子を生成させ、さらに、イオン交換水を追加して固形分を20質量%に調整することにより、樹脂微粒子分散液〔7H〕を得た。樹脂粒子分散液〔7H〕に含まれる樹脂粒子の体積平均粒径は、210nmであった。樹脂粒子分散液〔7H〕に、エチレングリコールモノブチルエーテル20質量%、ヘキサンジオール20質量%をさらに添加して固形分を10質量%に調整し、ラテックスインク7とした。
【0229】
<ラテックスインク8の作製>
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に、重合性単量体としてスチレン407.5質量部、n−ブチルアクリレート166.4質量部、およびメタクリル酸13.5質量部と、連鎖移動剤としてn−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル13.7質量部とを添加し、90℃に加熱して混合し、混合液〔h1〕を得た。
【0230】
一方、撹拌装置、温度センサ、冷却管および窒素導入装置を取り付けた反応容器において、ドデシル硫酸ナトリウム1.6質量部をイオン交換水2,700質量部に溶解させた界面活性剤溶液を調製した。この界面活性剤溶液を98℃に加熱し、上記混合液〔h1〕をさらに添加した。得られた溶液を、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により2時間混合分散させて、分散液(乳化液)を得た。
【0231】
次いで、この乳化液に、過硫酸カリウム(KPS)12.5質量部をイオン交換水440質量部に溶解させた開始剤溶液と、イオン交換水750質量部とを添加し、98℃で2時間撹拌して重合反応を行った。それにより、樹脂粒子8Hが分散された樹脂粒子分散液〔8H〕を得た。樹脂粒子分散液〔8H〕に含まれる樹脂粒子の体積平均粒径は200nmであった。樹脂粒子分散液〔8H〕に、エチレングリコールモノブチルエーテルが20質量%、ヘキサンジオールが20質量%となるように添加して固形分を10質量%に調整し、ラテックスインク8とした。
【0232】
3.箔画像の形成
<実施例B−1>
上記作製したラテックスインクを用いて、以下の方法で箔画像を形成した。
【0233】
1)接着層の形成
上記作製したラテックスインク1を、ピエゾ型ヘッドを4列搭載したオンデマンド型インクジェット装置(コニカミノルタ社製)のインクタンクに充填した。ピエゾ型ヘッドの、ノズル口径は28μm、駆動周波数は18kHz、ノズル数は512、最小液滴量は12pl、ノズル密度は180dpiであった。そして、基材であるフリース壁紙基材BR5380D(アールストローム社製)上に、ラテックスインク1をフル液滴量14pl、駆動周波数18kHz、印字解像度720dpi×720dpiの条件で、10cm×10cmの印字率100%のベタ画像を形成した。形成したベタ画像を、80℃で5分間加熱して乾燥させて、厚み1.0μmの接着層を得た。画像形成時には、フリース壁紙基材を120℃に加熱した。
【0234】
2)箔層の転写
転写箔として、(株)村田金箔製の「BL 2号金2.8」を準備した。そして、箔転写装置の支持ドラムとピンチローラーとの間に、転写箔と上記接着層を形成したフリース壁紙基材とを、転写箔の箔層とフリース壁紙基材の接着剤画像面とが密着するように挟み、150℃で線速42mm/分、圧力300kPaをかけながら加熱圧着させた。それにより、フリース壁紙基材上に、転写箔の箔層を転写した。その後、転写箔の支持体を剥離して、箔画像を得た。
【0235】
<実施例B−2〜B−7、および比較例B−1>
ラテックスインク1を、表2に示されるラテックスインクに変更した以外は実施例B−1と同様にして箔画像を形成した。
【0236】
<実施例B−8>
被転写材(基材)であるフリース壁紙基材を紙に変更した以外は実施例B−3と同様にして箔画像を形成した。
【0237】
実施例B−1〜B−8および比較例B−1で得られた箔画像の接着強度と耐擦過性を、以下の方法で評価した。
【0238】
<接着強度>
基材上に形成した箔画像について、下記1)〜3)のステップを実施した。
1)カッターのナイフの刃を折り、新しい刃を準備した。次いで、カッターガイドを用いて、カッターナイフを60度の角度で用いて、3×3mm四方の碁盤目の切り傷を入れて、合計9マスの碁盤目を形成した。
2)碁盤目部分にセロテープ(登録商標)を指の腹で数回軽くこすり圧着させた後、テープの端を60度の角度で0.5〜1.0秒かけて引き剥がした。
3)9マスの内、残存したマス目数をカウントし、接着強度を評価した。残存したマス目の数が8以上であると良好であると判断した。
【0239】
<耐擦過性>
基材上に形成した箔画像について、JISK 5600−5−4に記載された方法に準拠して鉛筆引っかき試験を行った。そして、以下の基準に基づいて耐擦過性を評価した。
◎:3H
○:2H
△:H
×:F
【0240】
実施例B−1〜B−8および比較例B−1の評価結果を表2に示す。
【表2】
【0241】
表2に示されるように、硬化剤を含有する樹脂粒子を含むラテックスインク1〜6を用いて形成した実施例B−1〜B−8の箔画像は、基材との接着強度および耐擦過性がいずれも良好であった。これに対して、硬化剤を含有しない樹脂粒子を含むラテックスインク7を用いて形成した比較例B−1の箔画像は、基材との接着強度および耐擦過性がいずれも低かった。
【0242】
実施例B−1とB−3の対比から、樹脂粒子がコアシェル構造を有し、かつコア層に硬化剤を含む構造とすることで、樹脂粒子を単層構造とするよりも、得られる箔画像の接着強度と耐擦過性をさらに高めうることがわかった。
【0243】
実施例B−1とB−2の対比から、樹脂粒子に含まれる硬化剤がブロックイソシアネートとすることで、硬化剤がアミンであるよりも、得られる箔画像の接着強度と耐擦過性をさらに高めうることがわかった。
【0244】
実施例B−1とB−6の対比から、樹脂粒子の体積平均粒径を300nm以下とすることで、体積平均粒径を300nm超とするよりも、得られる箔画像の接着強度と耐擦過性をさらに高めうることがわかった。これは、樹脂粒子の体積平均粒径を300nm以下とすることで、ラテックスインクの分散安定性が高まり、均一な接着強度が得られたためと考えられる。
【0245】
実施例B−1とB−7の対比から、乳化重合法で作製した樹脂粒子を含むインクのほうが、懸濁重合法で作製した樹脂粒子を含むインクよりも、高い接着強度が得られやすいことがわかる。
【0246】
実施例B−3とB−8の対比から、基材をフリース壁紙基材としても、紙と同等以上の良好な接着強度と耐擦過性が得られることがわかる。
【0247】
本出願は、2014年8月6日出願の特願2014−160377号、及び2014年8月6日出願の特願2014−160469号に基づく優先権を主張する。これらの出願明細書および図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0248】
本発明の第一の実施形態のラテックスインクは、塗膜(接着層)と箔との接着性が良好であり、当該塗膜の接着性を利用して、箔を所望のパターンに転写することができる。また、当該ラテックスインクは、塗膜から発生する揮発性有機化合物(VOC)が少ない。したがって、屋外に使用される製品だけでなく、屋内に使用される製品にも適用可能である。また、本発明の第二の実施形態のラテックスインクは、フリース素材などで構成された基材に対しても、良好な接着強度と耐擦過性を有する箔画像を提供できる。
【符号の説明】
【0249】
1 基材
2 ラテックスインク
2’ 接着層
10 転写箔
11 支持材
12 箔
12’ 箔層
20 加熱ローラー
110 基材
130 接着層
130A 樹脂粒子
150 転写箔
170 支持体
190 箔層
210 加熱ローラー
230 箔画像
250 硬化物層
図1
図2