(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6425064
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】トイレ排泄時水はね等防止泡
(51)【国際特許分類】
C11D 3/10 20060101AFI20181112BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20181112BHJP
C11D 17/04 20060101ALI20181112BHJP
E03D 9/00 20060101ALI20181112BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
C11D3/10
C11D3/20
C11D17/04
E03D9/00 A
E03D9/00 B
E03D9/00 F
A61L9/16 Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-165576(P2014-165576)
(22)【出願日】2014年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-120882(P2015-120882A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2017年7月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515233878
【氏名又は名称】とべる工房株式会社
(72)【発明者】
【氏名】外村 正太郎
【審査官】
小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−063503(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0220690(US,A1)
【文献】
特表2005−516112(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0039089(US,A1)
【文献】
特開2004−188235(JP,A)
【文献】
特開平03−193182(JP,A)
【文献】
特開平07−278598(JP,A)
【文献】
特開平06−105893(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102367399(CN,A)
【文献】
国際公開第2008/020246(WO,A2)
【文献】
特開平03−072124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00− 19/00
E03D 9/00− 9/16
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレため水の水面上に、トイレ排泄時の水はね汚れ及び排せつ音を防ぐ効果のある泡の層を形成するために、アルカリ性物質と酸性物質と界面活性剤を含有した混合物で、排泄直前にトイレため水に投入して排泄時にトイレ水面上に泡の層を形成させる混合物を、携帯可能でトイレため水にそのまま投入しやすいよう当該混合物を水溶紙で包装することを特徴とする、トイレ排泄時の水はね防止及び防音を目的とする泡の層形成組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トイレ排泄時前に、便器内のため水に本発明品を投入して泡の層を作りだし、排泄時における水はね防止、消臭、防音、洗浄、トイレ室内の汚れ抑制に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、人がトイレで排泄を行うには、便器のため水に向けて排泄を行う形になっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これは次のような欠点があった。
(イ)便器のため水に排泄物を落下させるため、水はねが必然的に起こり、便器外に飛び 散り、身体、衣服、床、壁などに付着し不衛生であった。
(ロ)男性が洋式便器に立って行う一回の放尿時には、目に見えない微量の水滴も含めて 多くて約2000滴もの水滴が便器外に飛び散っているといわれている。また、そ れが和式便器である場合には、身体とため水の水面との距離が洋式便器よりも遠く なるものがほとんどのため、排泄物の落下する勢いがさらに増し、さらに多くの水 はねが起こっている。
(ハ)女性が洋式または和式便器で排泄を行う際にも、臀部、性器などの身体と便器のた め水との距離が近いため、ため水の水はねを受けやすく、汚れ、感染症引き起こす おそれもあった。
(二)また、ため水に向けて排泄を行うため、排泄物の着水音、臭いが無防備に発生し、 羞恥心を起こさせていた。
本発明は以上のような欠点なくすためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
排泄直前に、携帯可能でおよそ掌に乗るサイズの本発明品をトイレため水にそのまま直接手で放り込む。本発明品は水に触れると先ず包装物である水溶紙やフィルムが水に溶けだす。そして内容物のアルカリ性物質と酸性物質と界面活性剤が水に触れると化学反応を起こし、泡の層を発生させるものである。水面から上に約1〜10cmのほどの泡の層をため水の水面上に作る。人はその泡の層に向けて排泄を行う。泡の層がクッションとなり排泄物の落下によるトイレため水の飛沫等を防ぐものである。
【発明の効果】
【0005】
便器のため水の水面上に、厚さ約1〜10cmほどの泡の層を張るため、排泄物の着水時のはね返り水が、泡の層によって便器外への飛び散りを防ぐことができる。
よって、汚水の飛沫が防止されるため、身体、衣服、床、壁等への汚れが防げ、衛生的になる。便器、トイレ室内の掃除の頻度も減る。また排泄物の着水音を泡の層によって抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
(イ)アルカリ性の重曹等と酸性のクエン酸等を混ぜたものに水を加えると化学反応を起 こし炭酸ガスつまり二酸化炭素を出すという性質を利用し、トイレ便器内のため水 の水面上に泡の層を作る。
(ロ)その泡をすぐに消えないように界面活性剤を含有させることで発生した泡を持続可 能にし、一つひとつの気泡を強化する。
(ハ)消毒液や石鹸などで利用されるカチオン性界面活性剤や両性界面活性剤を本発明品に含有させることにより、細菌を吸着し洗い流す効果も有する。
これを使用するときは、本発明品を排泄時前に直接便器内のため水に一度投入するだけでよい。本発明品は、水に触れると自動的に化学反応を起こし、泡の層が形成される。
【0007】
本発明品には、アルカリ性物質と酸性物質と界面活性剤、三つの物質を必要とする。排泄前に直接手に取って簡単にワンアクションでトイレため水に投入することが肝である。よってアルカリ性物質と酸性物質と界面活性剤だけを使って簡単に投入できるなら水溶紙、水に溶けるフィルムを使用しないことも考えられる。
例えば、アルカリ性物質と酸性物質だけが粉状またはジェル状または液体状またはフレーク状または板状にし、その周りをチューイングガムの糖衣がけのように界面活性剤でコーティングすることも考えられる。このことは上記三つの物質それぞれ入れ替えて作成することも考えられる。
【0008】
アルカリ性物質と酸性物質と界面活性剤は、粉末状だけではなくジェル状または液体状にすることも考えられる。それらを水溶紙または水に溶けるフィルムで包装、パッケージングする。
【0009】
アルカリ性とは、正式には塩基性といい。アルカリ性とは塩基性の物質のうち、特に水に溶ける物質のことをいう。アルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化銅、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、炭酸塩、セスキ炭酸ソーダ、ベーキングパウダー、炭酸水素ナトリウムつまり重曹などである。重曹は、水質汚染で問題とされるBOD・COD値がなく、環境ホルモンも含まれていないため環境にやさしいとされる。また食品添加物としても使用できるくらい人体に対しても安全であると考えられている。
【0010】
酸性とは、化学において塩基と対になって働く物質のことで単純に言えば酢、梅干し、レモン、胃液のようなスッパイものが酸性であるといえる。有機酸または無機酸がある。酸性物質としては、例えば、ハロゲン化水素、ハロゲンオキソ酸、硫酸ナトリウム、フルオロスルホン酸、硝酸、リン酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、クロム酸、ホウ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、カルボン酸、酢酸、クエン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸カリウム、ビニル性カルボン酸、核酸、デオキシリボ核酸、リボ核酸、コハク酸、リンゴ酸、サリチル酸、グルコール酸、安息香酸、塩酸などが挙げられる。
【0011】
界面活性剤は界面に作用して界面の性質を変化させる物質として定められている。界面活性剤としての物質は、アニオン系、非イオン系、カチオン系、両性系、サポニンやたんぱく質の天然の界面活性能を有する物質などに分類される。例えば、脂肪酸塩つまり石鹸、スルホ脂肪酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ラウレス‐4、ラウレス‐3硫酸アンモニウム、石鹸素地、グリセリン、アルキルエーテル硫酸エステル塩、ホホバ種子油、アルキル硫酸トリエタノールアミン、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、卵白、サボニン、アルキルカルボキシベタイン、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、パイン油、ユーカリ油、オレイン酸ナトリウム、ラウリルベタイン、ミリスチン酸ナトリウム、ショ糖エステルなどである。
【0012】
水に溶けるフィルムは、ゼラチンなどで形成したカプセルを使うことが考えられる。フィルムの素材としては、プロビレングリコール、グリセリン、塩化マグネシウム、亜硫酸カリウム、エタノール、プロパンジオール、ホウ酸などが考えられる。
【0013】
水溶紙はシークレットペーパーともいう。アルカリ性物質と酸性物質と界面活性剤を水溶紙で包装する。水溶紙はトイレットペーパーよりも水によく溶ける。接着素材は下水トラブルを起こさないものや環境にやさしいものを使うのが望ましい。例えば、でんぷん糊や米ぬかを使った接着剤が考えられる。
【0014】
アルカリ性物質は重曹を使い、酸性物質はクエン酸を使い、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムを使うことが望ましい。これらの物質は人体や環境にやさしいとされている。この場合は、アルカリ性物質と酸性物質と界面活性剤の混合割合は、およそ3対4対1が最適である。
【0015】
本発明品のサイズは指でつまめる大きさ、手のひらに簡単に乗るくらいの大きさである。1回使い切り、破らずそのままトイレため水に投入する。
【0016】
本発明品はトイレため水に投入すると水溶紙が数秒で水に溶けだし、内容物のアルカリ性物質と酸性物質と界面活性剤が水に触れると化学反応を起こし泡の層が形成される。
【0017】
泡の層は、小便の勢いとともに、ブクブクとさらに発達していく。小用時の水圧とともに気泡が大きくなったり、気泡が増加する。
【0018】
アルカリ性物質と酸性物質と界面活性剤は水に触れるだけで自動的に化学反応が起きてしまうので、携帯可能で投入しやすいように上記3つの物質だけで、例えばアルコールなどを使って圧力を加えてプレスし、固めることも考えられる。つまり、簡単に指でつまめるくらいため水に投入するのが容易になるなら、水溶紙または水に溶けるフィルムを使用しないことも考えられる。
【0019】
本発明の目的、効果を阻害しない程度であれば、気泡剤、起泡剤、増粘安定剤、防腐剤、抗菌剤、殺菌剤、香料、消剤、酵素、色素、増粘多糖類、ゲル化剤、アルコール、PH調整剤、泡調整剤、水軟化剤、分散剤、安定化剤、凍結防止剤等を含有することも考えられる。また防臭剤、洗浄剤なども本発明品に含有させて、におい、よごれを抑えることも考えられる。
【0020】
本発明品はトイレため水の水面上に泡の層を形成し、水面を覆うものである。泡の層がクッションとなり、排せつ時の水はね等を抑える効果がある。この観点からすると界面活性剤のみを携帯可能で直接手に触れて投入しやすいように加工して使用することも考えられる。この場合自動的に泡の層は形成されないが、小用時の水面にあたる水圧でブクブクと泡が発達していくことで、水はね等防止の効果が増していくのである。
【0021】
トイレの便器の大きさは様々なので、トイレため水の量や水面の大きさも様々である。約2リットルが平均的な水の量だと言われている。節水型の便器の場合の水の量は1リットル前後である。その場合は本発明品を一つだけ投入する、旧式で大きな便器の場合は水の量が多いこともあり、その場合は本発明品を1〜3つくらいを投入する、という様に適宜調節することが望ましい。
【0022】
本発明品はトイレ便器に付属させた装置またはトイレ便器に内蔵させた装置ではなく、携帯可能なので自宅だけでなく外出先のトイレにおいても使用できる。手でつまめるサイズ、重さで、ワンアクションで直接手でポンと放り込むだけである。
本発明は以上のような構造である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】人が排泄前に本発明品をトイレため水に直接手でポイっと投入する場面の図。本発明品は水に触れると化学反応を起こし、数秒でブクブクと泡の層を形成し始める。水の量に応じて1つから3つくらいを投入する。
【
図2】水面上に泡の層ができた図。本発明品を投入後、水面上に約1〜10センチくらいの厚さの泡の層ができる。
【
図3】泡の層に向けて排泄をしている図。排泄物が水面に当たる圧力に応じて泡の層がブクブクとより発達していく。泡の層が大きくなるにつれ、水はね防止等の効果が高まる。
【
図4】仮に、本発明品を使用せずに用を足した場合の図。飛沫は床、壁、身体等など便器外に飛び散る。
【符号の説明】
【0024】
1 本発明品を投入する手
2 本発明品
3 化学反応を起こし泡の層を形成し始める泡
4 トイレため水
5 便器の断面図
6 泡の層
7 尿
8 泡の層によって抑制される飛沫
9 便器外に飛び散る飛沫