特許第6425073号(P6425073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6425073
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】インダクタ
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20181112BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20181112BHJP
   H01F 27/26 20060101ALI20181112BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   H01F17/04 F
   H01F27/29 H
   H01F27/26 130
   H01F37/00 A
   H01F37/00 J
   H01F37/00 F
   H01F37/00 T
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-230955(P2014-230955)
(22)【出願日】2014年11月13日
(65)【公開番号】特開2016-96227(P2016-96227A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】大橋 紳悟
(72)【発明者】
【氏名】鄭 暁光
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−129593(JP,A)
【文献】 特開2013−089815(JP,A)
【文献】 特開2014−063923(JP,A)
【文献】 特開2012−212777(JP,A)
【文献】 特開平01−266705(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/010749(WO,A1)
【文献】 特開2010−118465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 27/26
H01F 27/29
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線を螺旋状に巻回してなる一つの円筒状の巻回部と、前記巻回部に連続する巻線引出部とを備えるコイルと、
前記巻回部の内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コアとを備え、
前記磁性コアは、
軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料によって構成され、
前記巻回部を埋設する埋設部と、設置用締結部材の貫通孔をつくる筒状部材を内包する複数のフランジ部とが一体成形された成形体であり、
前記設置用締結部材によって設置対象に取り付けた状態において前記巻回部の軸方向が前記設置対象の載置面に直交するように成形されており、
前記巻回部の軸方向からの平面視で、点対称な形状であり、かつ線対称な形状ではなく、
前記筒状部材の構成材料は、非磁性材料であり、
前記埋設部は、
前記巻回部の外形に沿った円柱体であり、
各フランジ部は、
前記埋設部の接線方向に沿った平面を有する突片であり、
前記巻回部の中心軸を中心として点対称な位置に設けられるインダクタ。
【請求項2】
前記巻線引出部は、前記複合材料に覆われておらず露出されている請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
前記埋設部及び前記フランジ部は、前記設置対象に載置される設置面を備える請求項1又は請求項2に記載のインダクタ。
【請求項4】
前記巻線引出部における前記巻回部側の領域は、前記巻回部の軸に平行な部分を含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルと磁性コアとを備えるインダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、電気機器、産業機械などの各種製品に備える部品として、巻線を螺旋状に巻回した巻回部を有するコイルと、コイルが配置される磁性コアとを備えるインダクタと呼ばれる磁気部品がある。
【0003】
特許文献1は、インダクタの一例としてチョークコイルを開示している。このチョークコイルは、巻回部が一つであるコイルと、巻線が巻回される巻胴(芯体)を有するボビンと、巻胴内に収納される柱状の内コア及び巻回部の外周を囲んで内コアと共に閉磁路を形成する矩形枠状の外コアとを有する磁性コアとを備える。
【0004】
特許文献2,3は、インダクタの一例として、リアクトルを開示している。特許文献2のリアクトルは、巻回部が一つであるコイルと、巻回部内に収納される内側コア部及びコイルと内側コア部とを覆う連結コア部を有する磁性コアとを備える。特許文献3のリアクトルは、横並びされた二つの巻回部を有するコイルと、各巻回部の内外にそれぞれ配置される複数のコア片及びギャップ材を有する磁性コアと、コイルと磁性コアとの組物の外周を覆う外側樹脂部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−051402号公報
【特許文献2】特開2011−129593号公報
【特許文献3】特開2011−054613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製造性に優れる上に、設置作業性にも優れるインダクタが望まれている。
【0007】
特許文献1のチョークコイルでは、コイルを保持するボビンと、内コアと、外コアとを組み付ける必要があり、組付部品点数が多く、製造性の改善が望まれる。また、特許文献1の図8に示すように設置対象に固定するために独立した取付具を利用すると、取付具の配置工程が必要であり、工程数が多く、設置作業性の改善も望まれる。
【0008】
特許文献2のリアクトルでは、巻回部内に内側コア部を収納する工程、その後に連結コア部を形成する工程が必要であり、工程数が多く、製造性の改善が望まれる。
【0009】
特許文献3のリアクトルでは、巻回部の数やコア片、ギャップ材の数が多いため組付部品点数が更に多く、製造性の改善が望まれる。
【0010】
そこで、コイルと磁性コアとの組み付けが不要で製造性に優れる上に、設置作業性にも優れるインダクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係るインダクタは、巻線を螺旋状に巻回してなる巻回部と、前記巻回部に連続する巻線引出部とを備えるコイルと、前記巻回部の内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コアとを備える。前記磁性コアは、軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料によって構成され、前記巻回部を埋設する埋設部と、設置用締結部材の貫通孔をつくる筒状部材を内包するフランジ部とが一体成形された成形体である。
【発明の効果】
【0012】
上記のインダクタによれば、コイルと磁性コアとの組み付けが不要で製造性に優れる上に、設置作業性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1のインダクタの概略斜視図である。
図2】実施形態1のインダクタの正面図である。
図3】実施形態2のインダクタの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様の内容を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係るインダクタは、巻線を螺旋状に巻回してなる巻回部と、上記巻回部に連続する巻線引出部とを備えるコイルと、上記巻回部の内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コアとを備える。上記磁性コアは、軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料によって構成され、上記巻回部を埋設する埋設部と、設置用締結部材の貫通孔をつくる筒状部材を内包するフランジ部とが一体成形された成形体である。
【0015】
上記のインダクタは、以下の理由によって、製造性に優れる上に、設置作業性にも優れる。
【0016】
(製造性)
上記のインダクタは、コイルと磁性コアとが一体化されているため、製造過程でコイルと磁性コアとを組み付ける必要が無い。そのため、上記のインダクタは、コイルと磁性コアとがそれぞれ独立した部品である場合、更にはボビンを備える場合と比較して、組付部品数が少なく、製造性に優れる。
【0017】
また、上記のインダクタは、例えば、コイルと筒状部材とを成形型に収納して、軟磁性粉末と原料樹脂とを含む溶融混合物を射出成形などして製造できる。上記溶融混合物は、流動性に優れるため、埋設部とフランジ部とを備えるといった複雑な立体形状であっても、更にはコイルの巻回部の内外を覆うと共に筒状部材の外周を覆うといった複雑な形状であっても、精度よく、かつ容易に成形可能である。この点からも上記のインダクタは、製造性に優れる。
【0018】
(設置作業性)
上記のインダクタは、設置対象に載置した後、フランジ部の貫通孔にボルトやねじといった設置用締結部材を締め付けることで設置対象に取り付けられる。そのため、上記のインダクタは、上述の取付具を利用する場合と比較して工程数が少なく、設置作業性に優れる。
【0019】
(2)上記のインダクタの一例として、上記巻線引出部が上記複合材料に覆われておらず露出されている形態が挙げられる。
【0020】
上記形態の磁性コアは、コイルのうち実質的に巻回部のみを覆っているといえる。そのため、上記の形態は、磁性コアの原料使用量を低減できる。
【0021】
(3)上記のインダクタの一例として、上記埋設部及び上記フランジ部が上記設置対象に載置される設置面を備え、上記フランジ部の設置面は上記インダクタを上記設置用締結部材によって設置対象に取り付けた状態において上記巻回部の軸方向が上記設置対象の載置面に直交するように成形されている形態が挙げられる。
【0022】
上記形態は、上述の製造性、設置作業性に優れることに加えて、以下の効果を奏する。
・ 埋設部の一面を設置面の一部とするため、設置面が大きく、安定性に優れる。
・ 埋設部を設置面の一部とするため、フランジ部を小さくしても安定して設置できる。フランジ部を小さくすれば小型にできる上に、上述のように原料使用量を低減できる。
・ 設置面が大きいため、軟磁性粉末が熱伝導性に優れる材料からなる粉末を含む場合、コイルの熱を設置対象に良好に伝えられて放熱性に優れる。
【0023】
(4)上記のインダクタの一例として、上記巻線引出部における上記巻回部側の領域は上記巻回部の軸に平行な部分を含む形態が挙げられる。
【0024】
上記形態は、上述の製造性、設置作業性に優れることに加えて、設置スペースを小さくできる場合がある。ここで、インダクタの設置スペースは、インダクタを内包する仮想の直方体に基づいて設計することがある。この仮想の直方体には、設置対象に近接配置され得る巻線引出部における巻回部との接続箇所及びその近傍を含む。そのため、例えば、上述の(3)の形態において、巻線引出部における巻回部との接続箇所を含む巻回部側の領域が巻回部の軸に直交する方向に引き出されていると、巻線引出部において巻回部から離れて配置される部分が多くなり得る。その結果、仮想の直方体が大きくなり易い。一方、上述の(3)の形態において、上記巻回部側の領域の実質的に全長が巻回部の軸に平行に引き出されていれば、巻線引出部において巻回部の近傍に配置される部分が多くなり、仮想の直方体を小さくし易い。即ち、この場合、設置スペースを小さくできて小型である。
【0025】
(5)上記のインダクタの一例として、上記巻回部が一つである形態が挙げられる。
【0026】
上記形態は、上述の製造性、設置作業性に優れることに加えて、巻回部を二つ備える場合に比較して小さくなり易く、この点から小型である。
【0027】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態に係るインダクタの具体例を説明する。図中、同一名称物は、同一物を意味する。
【0028】
[実施形態1]
図1図2を参照して、実施形態1のインダクタ1Aを説明する。図2においてフランジ部35のみ、図1に示す(II)−(II)切断線、即ちフランジ部35の貫通孔35hの軸に平行に切断した部分断面図を示す。
【0029】
・全体構成
インダクタ1Aは、巻線2wを巻回してなる巻回部20を有するコイル2Aと、巻回部20の内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コア3Aとを備える磁性部品である。インダクタ1Aは、基板や端子台、水冷台などの設置対象100(図2)にボルトやねじといった設置用締結部材(図示せず)が締結されて固定される。このインダクタ1Aは、磁性コア3Aが軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料(以下、軟磁性複合材料と呼ぶことがある)の成形体である点、この成形体は巻回部20を埋設している点、この成形体は上記の設置用締結部材が挿通される貫通孔35hをつくる筒状部材350を内包するフランジ部35を一体に備える点をそれぞれ、特徴の一つとする。以下、要素ごとに説明する。
【0030】
・コイル
コイル2Aは、巻線2wによって構成されて、少なくとも一つのターンを有する巻回部20と、ターンを形成しない巻線引出部2Al,2Alとを備える。この例のコイル2Aは、接続部が無く、連続する1本の巻線2wを螺旋状に巻回してなる一つの巻回部20と、巻回部20に連続し、巻線2wの各端部をそれぞれ含む二つの巻線引出部2Al,2Alとを備える。巻回部20は、その全体が磁性コア3Aを構成する軟磁性複合材料に覆われた埋設部分となっている。この例の巻線引出部2Al,2Alは、上記軟磁性複合材料に覆われず露出された露出部分となっている。
【0031】
・・巻線
コイル2Aを構成する巻線2wは、導体線の外周に絶縁被覆を備える被覆線を好適に利用できる。ここで、巻回部20は軟磁性複合材料に覆われるため、軟磁性粉末などの構成成分に接触し得る。軟磁性複合材料が金属を含む場合、インダクタ1A(コイル2A)の使用電圧によっては、巻回部20と磁性コア3Aとの間の絶縁性を高めることが望まれる。巻線2wを被覆線とすることで、軟磁性複合材料の組成によらず、巻回部20と磁性コア3Aとの間の絶縁性に優れて好ましい。
【0032】
・・・導体線
導体線は、銅やアルミニウム、その合金といった導電性材料からなる平角線や丸線が挙げられる。
【0033】
・・・絶縁被覆
絶縁被覆の構成材料は、エナメルと呼ばれるポリアミドイミドなどの電気絶縁性に優れる樹脂などが挙げられる。更に、絶縁被覆の構成材料は、耐熱性に優れるものが好ましい。インダクタ1Aの製造過程で高温のもの、具体的には軟磁性複合材料(磁性コア3A)の原料である溶融混合物に接触するからである。溶融混合物は、樹脂の種類にもよるが、例えば250℃以上350℃以下といった高温の場合がある。従って、製造過程の熱履歴を考慮して、耐熱性に優れる絶縁被覆とすることができる。
【0034】
絶縁被覆の最外層に自己融着層を有することができる。この場合、巻回部20をその軸方向に押圧するなどしてターン間の隙間を低減した状態で、適宜加熱などして自己融着層同士を接合させることで、スプリングバックによってターン間の隙間が広がることを低減できる。詳しくはターン間の隙間を、自己融着層を含む絶縁被覆の厚さ程度にでき、巻回部20の軸方向の長さが自然長よりも短くなる。このように圧縮した巻回部20を備えるインダクタ1Aは、巻回部20の軸方向に沿った長さが小さく、小型である。巻線2wの断面積、材質などは適宜選択できる。この例の巻線2wは被覆平角線である。
【0035】
・・その他の被覆
上記絶縁被覆に代えて又は絶縁被覆に加えて、コイル2Aのうち、軟磁性複合材料(磁性コア3A)に覆われる領域(主として巻回部20)に耐熱層(図示せず)を備えるコイル2Aとすることができる。耐熱層の構成材料は、耐熱性に優れる材料であって、コイル2Aに接することから電気絶縁性にも優れるものが好ましい。このような材料は、例えば、ガラス、各種のセラミックスなどの非金属無機材料、ポリイミドなどのスーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれる耐熱性樹脂といった有機材料などが挙げられる。耐熱層は、例えば、上述の構成材料を巻回部20などに塗布することで形成できる。
【0036】
上記絶縁被覆に加えて、上述の耐熱性及び電気絶縁性の双方に優れる材料からなる耐熱絶縁層を備える形態は、電気絶縁性により優れることから、使用電圧が高い用途、例えば数百V程度、具体的には100V〜500V程度の用途に好適である。使用電圧が低い用途、例えば数十V程度、具体的には3V〜50V程度であれば、耐熱絶縁層を備えず、上記絶縁被覆のみでも、十分な電気絶縁性を有すると考えられる。
【0037】
・・巻回部
この例の巻回部20は、被覆平角線をエッジワイズ巻きしてなり、端面形状が円筒状のエッジワイズコイルである。巻回部20の個数、端面形状、ターン数などは適宜選択できる。例えば端面形状は、矩形枠状、レーストラック状などとすることができる。
【0038】
・・・設置方向
インダクタ1Aは、図2に示すようにコイル2Aの巻回部20の軸方向が、設置対象100の載置面100fに直交するように設置対象100に取り付けられる形態(以下、縦置き形態と呼ぶことがある)、載置面100fに平行するように設置対象100に取り付けられる形態(後述の実施形態2。以下、横置き形態と呼ぶことがある)が挙げられる。この例のインダクタ1Aは、縦置き形態であり、設置対象100に安定して縦置きされるように磁性コア3Aが成形されている(後述)。
【0039】
・・巻線引出部
巻線引出部2Al,2Alは、巻回部20と、コイル2Aに電力供給する電源などの外部装置との間の導電路に利用される。各一端部は外部装置との接続箇所であり、各他端部は巻回部20との接続箇所である。巻線引出部2Alの長さ、引出方向などは適宜選択できる。この例の巻線引出部2Al,2Alはいずれも、実質的に全長に亘って巻回部20の軸に平行に引き出されている。詳しくは、巻線引出部2Al,2Alにおける巻回部20との接続箇所は、概ね巻回部20の巻回方向に沿って巻回部20の径方向に引き出された非常に短い部分であり、巻回部20の軸に概ね直交している。この接続箇所に続き、接続箇所から概ね直角にフラットワイズ曲げされて、巻回部20の軸に平行に並ぶように巻線引出部2Al,2Alが設けられている。即ち、図1に示す巻線引出部2Al,2Alでは、巻回部20側の領域だけでなく実質的に全長に亘って、巻回部20の軸に平行に引き出されている。インダクタ1Aは、巻線引出部2Al,2Alにおける巻回部20側の領域に巻回部20の軸に平行な部分を含むため、巻線引出部2Al,2Alが巻回部20に近接配置される領域が多い(図1に示す例では実質的に全長)。そのため、巻線引出部2Al,2Alにおける巻回部20側の領域を含めたインダクタ1Aを内包する仮想の直方体を小さくでき、設置スペース(設置対象100に対する投影面積)を小さくできる。設置対象100に巻線引出部2Al,2Alの一端部を直接取り付ける場合などでは、設置対象100の載置面100fに平行になるように上記一端部を折り曲げるなどしてもよい。この場合でも、巻線引出部2Al,2Alにおける他端側の領域、即ち巻回部20との接続箇所の近傍は、巻回部20に近接しており、小型である。巻線引出部2Al,2Alの引出方向がそれぞれ異なっていてもよい。
【0040】
・磁性コア
磁性コア3Aは、図1に示すように、軟磁性複合材料によって構成されてコイル2Aの一部である巻回部20を埋設する柱状の埋設部30と、埋設部30の外周面から突出する二つのフランジ部35,35とを備える複雑な立体形状を有する成形体である。また、磁性コア3Aは、埋設部30とフランジ部35,35とが一体成形された成形体である。
【0041】
・・埋設部
埋設部30は、巻回部20の内外を連続して覆い、かつ巻回部20の内周空間を埋めるように設けられることで柱状体となっている。
埋設部30の一部を構成する軟磁性複合材料が巻回部20の内周空間に充填されている。そのため、磁性コア3Aは、コイル2Aがつくる磁束の通路を十分に確保できる。
埋設部30の他部を構成する軟磁性複合材料が巻回部20の一端面を経て、巻回部20の円筒状の外周面を覆い、更に巻回部20の他端面に連続して存在する。
そのため、コイル2Aがつくる磁束は、上述の内周空間を埋める軟磁性複合材料と、上述の巻回部20の各端面及び外周面を覆う軟磁性複合材料とを経て環状に通過する。
【0042】
この例の埋設部30は、円筒状の巻回部20の外形に沿って設けられた円柱体であり、円形状の端面と円周面とを備える。埋設部30の外形を巻回部20の外形に沿った形状、即ち相似状とすることで、軟磁性複合材料の原料使用量を低減でき、ひいては製造時間を短縮できる。
【0043】
埋設部30の形状、大きさは、巻回部20の全体を覆って閉磁路を形成でき、かつ所望のインダクタンスを有する範囲で適宜選択できる。例えば、埋設部30は、巻回部20の外形と非相似形状(この例では直方体状など)とすることができる。埋設部30を大きくすれば、設置面を大きくでき、設置状態の安定性や放熱性などを高められるが、大き過ぎると、軟磁性複合材料の原料使用量の増大を招き得る。
【0044】
・・フランジ部
フランジ部35は、巻回部20の外周面から巻回部20の径方向外方に突出する突片であり、筒状部材350を内包する部分である。
【0045】
フランジ部35は、筒状部材350を保持可能であれば、形状、大きさは適宜選択できる。筒状部材350の外形に沿った相似形状(ここでは円筒状に近い形状)であれば、フランジ部35を形成する軟磁性複合材料の原料使用量を低減できる。本例のフランジ部35は、円筒状の筒状部材350の外形に沿って円筒状とした部分に加えて、円柱状の埋設部30に対して接線方向の平面を有する突片としている。即ち、磁性コア3Aをコイル2Aの巻回部20の軸方向に平面視したとき、巻回部20の中心を軸として点対称な形状ではあるが、線対称ではない形状となるようにフランジ部35,35を設けている。こうすることで、インダクタ1Aは、縦置き形態であることと相俟って、上述の仮想の直方体を小さくし易く、設置スペースを小さくできる。その他、磁性コア3Aは、巻回部20の直径を軸として点対称な形状かつ線対称な形状となるようにフランジ部(突片)を備えることができる。この場合でも、設置スペースが小さくなる場合がある。
【0046】
・・・配置位置、個数
フランジ部35は一つでもよいが、複数備えるとインダクタ1Aを設置対象100に安定して固定し易い。複数のフランジ部35を備える場合、埋設部30の設置面30d(図2)に対して対向位置にフランジ部35を備えると、より安定性に優れて好ましい。例えば、二つのフランジ部35を設ける場合には、円形状の設置面30dの直径方向の対向位置、三つのフランジ部35を設ける場合には、円形状の設置面30dの中心角が120°ずつずれた位置などが挙げられる。また、フランジ部35は、巻線引出部2Al,2Alと干渉し難い位置に設けられていることが好ましい。本例では、埋設部30における円形状の設置面30dの中心軸を中心として点対称な位置であって、巻線引出部2Al,2Alと実質的に接触しない位置に、二つのフランジ部35,35をそれぞれ備える(図1)。
【0047】
・・・筒状部材
筒状部材350は、インダクタ1Aの埋設部30を設置対象100に取り付ける設置用締結部材の通孔35hをつくる部材である。ここで、磁性コア3Aを軟磁性複合材料とすることで、磁性コア3A自体にボルト孔を成形可能である。しかし、軟磁性複合材料は軟磁性粉末と樹脂との異種材料を含むため、ボルトの締付力に対する強度を十分に有していない場合があり、上述の成形孔とすると、ボルトの締付時に割れが生じたり、長期使用によってクリープ変形してボルトの締付力が低下したりする可能性がある。一方、通孔35hをつくる部材を軟磁性複合材料とは独立した部材とすれば、構成材料の選択の自由度を高められる。具体的には高強度な材料、特にボルトなどの締結部材の締付力に対して十分な強度を有する材料からなるものを利用できる。そこで、実施形態1のインダクタ1Aでは、軟磁性複合材料とは異なる材料からなる筒状部材350を備える。
【0048】
筒状部材350は、コイル2Aの近傍に配置されることから、その構成材料は非磁性材が好ましい。また、上記構成材料は、上述のように強度に優れるものがより好ましい。具体的な構成材料は、樹脂に代表される有機材料、金属やセラミックスに代表される無機材料が挙げられる。樹脂であれば、筒状部材350と軟磁性複合材料との接合性に優れると期待される。繊維強化樹脂などを利用することもできる。金属であれば、通常、樹脂よりも強度に優れるため、筒状部材350の端面をボルトなどの締結部材の締付力の受圧面とすると、締結時に割れ難く、経年の締付力の低下も抑制できる。具体的な非磁性金属は、真鍮、非磁性のステンレス鋼などが挙げられる。この例では、筒状部材350は継ぎ目のない金属筒としている。
【0049】
筒状部材350は、ボルトなどの締結部材を挿通可能な大きさ、形状を有していればよく、大きさや形状は適宜選択できる。図1では、内周形状と外周形状とが相似形状であり、いずれも断面円形状である円筒状を例示している。その他、筒状部材350は、内周形状と外周形状とが異なるもの、例えば内周形状が断面円形状、外周形状が断面矩形状などの異形の筒などとすることができる。筒状部材350の内周形状も、断面円形状の他、断面矩形状などとするもできる。即ち、筒状部材350は、円筒状の他、多角筒状、楕円筒状などの非円筒状のものとすることができる。更に、筒状部材350の外周面に突起や凹部などを備える凹凸形状のものとすることができる。このように外周形状を工夫することで、軟磁性複合材料との接触面積を増大でき、磁性コア3に強固に保持される上に、脱落防止等の効果も期待できる。筒状部材350の構成材料が樹脂や金属、セラミックスなどであれば、継ぎ目のない筒材を容易に成形可能であり、このような筒材を利用できる。その他、筒状部材350は金属板などを適宜な形状に丸めて、又は折り曲げて筒状にしたものなどを利用できる。この場合、筒状部材350は、上記締結部材を挿通可能であれば必ずしも周方向に閉じた形状でなくてもよい。例えば、筒状部材350は断面C字状などでもよい。筒状部材350が完全に閉じていなくても、上記締結部材の挿通孔の一部を軟磁性複合材料によって成形できるからである。この板材を適宜成形した筒状部材350では、種々の大きさ、形状のものを容易に製造できて製造性に優れ、コストの低減も期待できる。筒状部材350の大きさ(内径、外径、長さ)は、設置用締結部材の大きさや固定強度などに応じて選択するとよい。
【0050】
筒状部材350は、その一端面を締結部材の受圧面とするために、この端面がフランジ部35の外表面と面一、又はフランジ部35の外表面よりも突出するようにフランジ部35に支持される。筒状部材350の端面を受圧面とすることで、上述のようにボルトなどの締結部材の挿通孔の一部が軟磁性複合材料で構成されている場合でも、上述の割れや締付力の低下の抑制などを十分に行える。本例では上記の面一の形態であり、筒状部材350の外周面の全体が軟磁性複合材料に覆われる。また、本例では、筒状部材350の他端面は、インダクタ1Aを設置対象100に載置したとき、載置面100fに接する。上記の突出した形態では、筒状部材350の外周面の一部が軟磁性複合材料に覆われる。
【0051】
・・設置面
この例のインダクタ1Aは、磁性コア3Aの埋設部30のうち、円形状の一端面と、フランジ部35,35の一面とを設置対象100に載置される設置面30d,35dとする。設置面30d,35dは連続する一様な平面、即ち面一な面である。これらの設置面30d,35d,35dは、インダクタ1Aを設置対象100に取り付けた状態において巻回部20の軸方向が載置面100fに直交するように、即ち縦置きになるように成形されている。そのため、インダクタ1Aを設置対象100に載置すると、埋設部30の設置面30dと、二つのフランジ部35,35の設置面35d,35dとが載置面100fに支持されて、インダクタ1Aは、設置対象100に安定して縦置きされる。
【0052】
インダクタ1Aは、フランジ部35,35のみが設置対象100に直接支持される形態とすることができる。この場合、フランジ部35を以下のように脚高に設けるとよい。インダクタ1Aを設置対象100に載置したとき、埋設部30における設置対象100の載置面100fに対向する面(図1図2では下面)が載置面100fに接触せず、フランジ部35,35の設置面35d,35dのみが載置面100fに接するように脚高にする。この形態では、フランジ部35の脚高さに応じて、埋設部30における載置面100fとの対向面(下面)と、載置面100fとの間に隙間を設けられる。この隙間に、インダクタ1Aと設置対象100との間の絶縁性を高める絶縁材(図示せず)を配置したり、この隙間を空気絶縁空間としたり、空冷空間としたりするなどすることができる。
【0053】
・・軟磁性複合材料
・・・軟磁性粉末
・・・・組成
軟磁性粉末の構成材料は、金属、非金属の双方があり、公知のものが利用できる。軟磁性粉末は、単一組成の粉末のみの他、複数種の組成の粉末を含むことができる。
【0054】
軟磁性金属は、例えば、鉄族金属(純鉄などのいわゆる純金属)、Feを主成分とするFe基合金、アモルファス金属などが挙げられる。
鉄族金属元素は、Fe,Co,Niが挙げられる。
Fe基合金は、例えば、添加元素としてSi,Ni,Al,Co,及びCrから選択される1種以上の元素を合計で1.0質量%以上20.0質量%以下含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる組成を有するものが挙げられる。具体的には、Fe−Si系合金,Fe−Ni系合金,Fe−Al系合金,Fe−Co系合金,Fe−Cr系合金,Fe−Si−Al系合金(センダスト)などが挙げられる。Fe−Si系合金のSi量は1.0質量%以上8.0質量%以下が挙げられる。
鉄族金属やFe基合金は、飽和磁化が高く、組成によっては渦電流損が低いため、磁性コア3Aがこれらの軟磁性金属粉末を含む場合には、高い飽和磁化を有するインダクタ1A、低損失なインダクタ1Aとすることができる。
【0055】
軟磁性非金属は、金属酸化物、例えばフェライトに代表されるFeを含む酸化物などが挙げられる。軟磁性非金属は、電気絶縁体や高抵抗材が多いため、磁性コア3Aがこれらの軟磁性非金属の粉末を含む場合には、低損失なインダクタ1Aとすることができる。
【0056】
・・・・含有量
軟磁性複合材料中の軟磁性粉末の含有量が多いほど磁気特性に優れる、例えば飽和磁化が高くなる傾向にある。一方、軟磁性複合材料中に樹脂を十分に含むと、樹脂は一般に非磁性材料であり、この樹脂を磁気ギャップに利用できる。そのため、図1に示すようにギャップ材を省略できて直流重畳特性に優れる。具体的な含有量は、軟磁性複合材料を100体積%として、30体積%以上80体積%以下が挙げられる。飽和磁化などを考慮すると、上記含有量は、50体積%以上、更に60体積%以上、65体積%以上、70体積%以上が好ましい。直流重畳特性、渦電流損などを考慮すると、上記含有量は、75体積%以下、更に73体積%以下、70体積%以下が好ましい。軟磁性粉末の含有量は、65体積%以上75体積%以下であるとより好ましい。
【0057】
・・・・大きさ
軟磁性複合材料中の軟磁性粉末の大きさが小さいほど、渦電流損が低くなり易く、充填率を高め易い。高充填化によって飽和磁化が高くなり易い。軟磁性粉末の大きさがある程度大きければ、凝集を防止できる上に、粉末粒子間に樹脂を十分に介在できる。具体的な大きさとして、平均粒径が50μm以上300μm以下が挙げられる。平均粒径は50μm以上100μm以下がより好ましい。また、軟磁性粉末は、相対的に小さい粉末粒子と相対的に大きい粉末粒子との微粗混合粉であると、充填率を高め易い。平均粒径が上記範囲であったり、微粗混合粉であったりすると、溶融混合物が流動性に優れて成形し易く、磁性コア3Aの製造性に優れる。
【0058】
・・・樹脂
・・・・組成
軟磁性複合材料中の樹脂は、軟磁性粉末を分散した状態で保持すると共に、粉末粒子間に介在されて磁気ギャップとして機能する。この樹脂は、射出成形に好適に利用できる熱可塑性樹脂が好ましい。具体的な熱可塑性樹脂は、ポリアミド(PA)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。PA樹脂は、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン9T、ナイロン10Tなどが挙げられる。ナイロン9TなどのPA樹脂、PPS樹脂、LCP、フッ素樹脂などは、エンジニアリング・プラスチックと呼ばれて耐熱性に優れる。そのため、ナイロン9Tなどを含むと、耐熱性に優れるインダクタ1Aとすることができる。
【0059】
・・・・含有量
軟磁性複合材料中の樹脂の含有量は、直流重畳特性などを考慮すると、軟磁性複合材料を100体積%として、15体積%以上、更に20体積%以上、25体積%以上が挙げられる。飽和磁化などを考慮すると、樹脂の含有量は、50体積%以下、更に45体積%以下、40体積%以下、35体積%以下が挙げられる。
【0060】
・インダクタの製造方法
実施形態1のインダクタ1Aは、代表的には、射出成形法を利用して製造できる。詳しくは、インダクタ1Aは、成形型にコイル2Aの巻回部20と、筒状部材350とを配置し、この成形型に軟磁性粉末と樹脂とを含む溶融混合物を射出、充填して、巻回部20を埋設すると共に、筒状部材350を内包するように成形した後、冷却して固化することで得られる。上述のように、巻回部20に別途、耐熱層や耐熱絶縁層を設けたり、自己融着層を融着させて、ターン間の隙間を低減したりすることができる。
【0061】
射出成形法、特にインサート成形法は、コイル2Aの巻回部20全体を埋設しながらも巻線引出部2Al,2Alを露出させ、かつ筒状部材350を内包する突片を有するという複雑な立体形状を精度よく成形可能である。即ち、インダクタ1Aは、形状や大きさの自由度が大きい上に成形精度、寸法精度に優れる。
【0062】
・効果
実施形態1のインダクタ1Aは、コイル2Aと磁性コア3Aとが一体成形されているため、製造時に両者の組み付けが不要であり、製造性に優れる。特にインダクタ1Aは、巻線引出部2Alが磁性コア3A(軟磁性複合材料)から露出されているため、磁性コア3Aの原料使用量を低減できる。更にインダクタ1Aは、巻線引出部2Alが磁性コア3A(軟磁性複合材料)から露出されている点、巻回部20の軸方向が設置対象100の載置面100fに直交する縦置きであり、かつフランジ部35及び埋設部30の双方が載置面100fに支持される設置面35d,30dを備えて、フランジ部35を小さくし易い点からも、磁性コア3Aの原料使用量を低減できる。
【0063】
かつ、インダクタ1Aは、フランジ部35を備えるため、インダクタ1Aを設置対象100に載置した後、筒状部材350の通孔35hにボルトなどの設置用締結部材を締め付けることで設置対象100に容易に取り付けられて、設置作業性にも優れる。
【0064】
その他、実施形態1のインダクタ1Aは、以下の効果を奏する。以下の効果は、埋設部30が設置面30dを有する効果5.、6.を除いて、後述する実施形態2も奏する。
1. 磁性コア3Aに含む樹脂によって、コイル2Aを強固に保持できて強度に優れる上に、コイル2Aを保護できる。
2. 磁性コア3Aが複数のコア片などの組物ではなく一体成形物であり、更にはコイル2Aと密着しているため、組物の部品間の隙間に起因する振動や騒音が発生し難く、振動や騒音を低減できる。
3. 巻線引出部2Alにおける巻回部20側の領域が巻回部20の軸と平行に配置される部分であることで、設置対象100の載置面100fに対する投影面積が小さくなる点、巻回部20が一つである点から小型である。
4. コイルと磁性コアとを組み付ける場合と比較して小型である。この理由は、通常、組付部品同士の間に若干の隙間を設けているが、インダクタ1Aではこの隙間を無くすことができるからである。
5. 縦置きであり、かつフランジ部35及び埋設部30の双方が設置対象100の載置面100fに支持されるため、設置状態の安定性に優れる。
6. 軟磁性粉末が金属といった熱伝導性に優れる材料からなる粉末を含む場合、コイル2Aと磁性コア3Aとが密着しており、かつフランジ部35及び埋設部30の双方が設置対象100の載置面100fに接するため、通電に起因するコイル2Aの発熱を水冷台などの設置対象100に良好に伝えられて、放熱性に優れる。
【0065】
[実施形態2]
図3を参照して、実施形態2のインダクタ1Bを説明する。
実施形態2のインダクタ1Bは、横置き形態である点が、縦置き形態である実施形態1のインダクタ1Aとの主な相違点である。以下、この相違点を中心に説明し、重複する構成及び効果は詳細な説明を省略する。
【0066】
インダクタ1Bの基本的構成は、実施形態1のインダクタ1Aと同様であり、巻線2wを螺旋状に巻回してなる一つの巻回部20を備えるコイル2Bと、上述の軟磁性複合材料から構成される磁性コア3Bとを備える。磁性コア3Bは、巻回部20を埋設する埋設部30と、埋設部30の外周面から突出して、非磁性の筒状部材350を内包するフランジ部35とが一体成形されている。
【0067】
インダクタ1Bは、コイル2Bの巻回部20の軸方向が、設置対象100(図2参照)の載置面100f(図2参照)に平行するように設置対象100に取り付けられる横置き形態である。ここで、図3に示すように磁性コア3Bの埋設部30を円筒状の巻回部20の外形に沿った円柱状の成形体とした場合に横置きにすると、インダクタ1Bが安定し難い。そこで、この例のインダクタ1Bは、設置対象100に安定して横置きできるように、フランジ部35の一部に巻回部20の回転を防止するストッパ部37を備える。具体的には、円柱状の埋設部30の接線方向にフランジ部35の設置面を備え、この設置面と円柱状の埋設部30の外周面の一部とで挟まれる三角形状の領域を埋めるようにフランジ部35が成形されている。この三角形状の埋設部分をストッパ部37とする。また、この例のフランジ部35は、筒状部材350の近傍が低く、コイル2Bに近い側が高くなるように段差形状に設けられている。こうすることで、フランジ部35の成形に必要な原料使用量を低減できる。インダクタ1Bは、二つのフランジ部35,35を、埋設部30(巻回部20)の中心軸を中心として点対称な位置に備える。そのため、実施形態1のインダクタ1Aと同様に、インダクタ1Bも設置スペースが小さく、小型である。
【0068】
図3に示すインダクタ1Bの巻線引出部2Bl,2Blは、巻回部20との接続箇所を含む巻回部20側の領域だけでなく、実質的にその全長に亘って、巻回部20の軸に直交に引き出されている。詳しくは、巻線引出部2Bl,2Blはいずれも、巻回部20から実質的に屈曲されることなく巻回方向に沿ってそのまま延伸されて、その端部が実施形態1と同様に、図において上方に向かうように設けられている。
【0069】
実施形態2のインダクタ1Bは、実施形態1と同様に、コイル2Bと磁性コア3Bとの組み付けが不要であり、製造性に優れる。また、インダクタ1Bは、実施形態1と同様に、巻線引出部2Bl,2Blが磁性コア3Bから露出されており、原料使用量を低減できる点からも、製造性に優れる。更に、インダクタ1Bは巻線引出部2Bl,2Blの形成にあたりフラットワイズ曲げが不要であり、コイル2Bの製造性に優れる点からも、製造性に優れる。
【0070】
かつ、実施形態2のインダクタ1Bは、実施形態1と同様に、フランジ部35を備えるため、設置対象に載置して、通孔35hにボルトなどの設置用締結部材を締め付けることで設置対象に容易に取り付けられて、設置作業性にも優れる。特に、インダクタ1Bは、埋設部30が回転し易い形状であるものの、フランジ部35がストッパ部37を含むことで、設置対象への載置も容易に行えることからも、設置作業性に優れる。
【0071】
その他、インダクタ1Bは、フランジ部35がストッパ部37を含むものの、段差形状である点、埋設部30(巻回部20)の軸方向の全長ではなく部分的にストッパ部37を備える点から、磁性コア3Bの原料使用量を低減し易く、この点からも製造性に優れる。また、インダクタ1Bは、埋設部30(巻回部20)の中心軸を中心として、その両側にフランジ部35,35及びストッパ部37,37を備えるため、インダクタ1Bの回転を防止して、良好に支持できる。
【0072】
横置き形態のインダクタ1Bでは、巻線引出部2Bl,2Blにおける巻回部20側の領域に巻回部20の軸に垂直な部分を含むことで、巻線引出部2Bl,2Blが巻回部20に近接配置される領域が多くなる(この例では実質的に全長)。そのため、巻線引出部2Bl,2Blにおける巻回部20側の領域を含めたインダクタ1Bを内包する仮想の直方体を小さくでき、設置スペース(設置対象に対する投影面積)を小さくできる。このように横置き形態であっても、巻線引出部2Blの引出状態によっては、設置スペースを小さくできる。
【0073】
[変形例]
実施形態1,2では、巻線引出部が図面上で上下に伸びるように引き出された場合を説明した。その他、巻線引出部が図面上で左右に伸びるように引き出された形態とすることができる。
【0074】
例えば、図1に示すコイル2Aの場合、巻線引出部2Al,2Alにおける巻回部20との接続箇所をフラットワイズ曲げせずに、図3に示すコイル2Bのようにそのまま引き出せば、巻線引出部2Al,2Alが左右に延伸された形態、即ち縦置きでは軸と垂直に引き出された形態にできる。このインダクタは、巻回部20の軸方向に沿った大きさ、即ち設置対象100の載置面100fからの距離が、埋設部30における巻回部20の軸方向に沿った大きさ程度になり、嵩が低いことで小型である。
【0075】
例えば、図3に示すコイル2Bの場合、巻線引出部2Bl,2Blにおける巻回部20との接続箇所を図1に示すように概ね直角にフラットワイズ曲げすれば、巻線引出部2Bl,2Blが左右に延伸された形態、即ち横置きでは軸に平行に引き出された形態にできる。このインダクタは、巻回部20の径方向に沿った大きさ、即ち設置対象100の載置面100fからの距離が巻回部20の外径程度になり、嵩が低いことで小型である。
【0076】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0077】
例えば、コイルとして、二つの巻回部を有し、各巻回部の軸方向が平行するように横並びされたものを備える形態、同軸に縦並びされたものを備える形態、同心状に積層したものを備える形態などとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
上記のインダクタは、チョークコイル、リアクトル、トランスなどに利用できる。このチョークコイルやリアクトルなどは、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車などの車両に搭載される車載用コンバータ(代表的にはDC−DCコンバータ)や空調機のコンバータなどの種々のコンバータ、電力変換装置の構成部品、その他の電気回路部品に利用できる。
【符号の説明】
【0079】
1A,1B インダクタ
2A,2B コイル 2w 巻線 20 巻回部 2Al,2Bl 巻線引出部
3A,3B 磁性コア
30 埋設部 35 フランジ部 350 筒状部材
35h 貫通孔 30d,35d 設置面 37 ストッパ部
100 設置対象 100f 載置面
図1
図2
図3