特許第6425171号(P6425171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6425171
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】レール用締結具及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01B 9/10 20060101AFI20181112BHJP
   F16B 25/04 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   E01B9/10
   F16B25/04 A
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-257388(P2014-257388)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2016-118028(P2016-118028A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】390027627
【氏名又は名称】株式会社後関製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001922
【氏名又は名称】特許業務法人 日峯国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八城 勇一
(72)【発明者】
【氏名】人見 貴徳
(72)【発明者】
【氏名】倉重 雅一
(72)【発明者】
【氏名】百目鬼 勝幸
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−303509(JP,A)
【文献】 特開2003−328303(JP,A)
【文献】 特開2002−323031(JP,A)
【文献】 特開昭52−101638(JP,A)
【文献】 特開2005−299793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 9/10
F16B 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成枕木に空けた下穴に挿すための先端部と、
前記先端部に連設され、円柱状の周面にネジが形成されたストレート部と、
前記ストレート部に連設され、円錐台状の周面に前記ストレート部から続く前記ネジが形成されたテーパ部と、
前記テーパ部に連設された円柱状の軸部と、
前記軸部に連設された鍔状のフランジ部と、
前記フランジ部に連設され、回転用工具に固定するための頭部と、を有し、
前記先端部をテーパ状に細くし、
前記ネジの山の形状を二等辺状に形成し、
前記ネジの谷と前記下穴との隙間を無くした、
ことを特徴とするレール用締結具。
【請求項2】
前記ストレート部及び前記テーパ部の表面から酸化物を研削した、
ことを特徴とする請求項1に記載のレール用締結具。
【請求項3】
前記ストレート部及び前記テーパ部の表面に潤滑剤を被覆した、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のレール用締結具。
【請求項4】
前記ネジの内角を55度以下にした、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のレール用締結具。
【請求項5】
前記ネジの高さを、前記枕木と前記フランジ部の間に介されるタイプレートに空けられた孔を貫通できる範囲で高くした、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のレール用締結具。
【請求項6】
前記ネジのピッチを12ミリメートル以上にした、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のレール用締結具。
【請求項7】
前記ネジの稜線を湾曲状に凹ませた、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のレール用締結具。
【請求項8】
前記ネジの形状を二等辺状から外角が鋭角にならない範囲で傾斜させた、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のレール用締結具。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のレール用締結具を使用した、
ことを特徴とするレール締結装置。
【請求項10】
合成枕木に空けた下穴に挿すための先端部をテーパ状に細くする先付加工工程と、
前記先端部に連設された円柱状のストレート部及び前記ストレート部に連設された円錐台状のテーパ部を加熱し、3つの回転する円筒状の型の間に挿しこむことにより、周面にネジを形成する熱間転造工程と、
前記ストレート部及び前記テーパ部の表面から酸化物を研削する表面研削工程と、
前記ストレート部及び前記テーパ部の表面に潤滑剤を被覆する表面処理工程と、を有する、
ことを特徴とするレール用締結具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成枕木にレールを固定するためのレール用締結具及びレール用締結具の製造方法さらにレール用締結具を使用したレール締結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
線路においては、複数配置された枕木の上に、二本のレールが平行に敷設され、枕木とレールとがレール締結装置によって固定されている。枕木には、木製やコンクリート製の他に、ウレタン樹脂をガラス繊維で強化した合成枕木がある。レール締結装置は、レールを支持し、ねじくぎ等のレール締結具によって、合成枕木に螺子留めされる。合成枕木には、ネジの谷よりも大きい径の下穴が空けられ、インパクトレンチ等を使用してレール締結具が捻じ込まれる。なお、特許文献1に示すように、部材の交換の際でも引き抜く必要のないねじくぎの発明も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−303509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のねじくぎも、従来の形状や寸法に則ったものである。従来のねじくぎを使用した合成枕木では、電車等が通過する度に加わる振動によって、ねじくぎ周辺部の劣化が進み、ねじくぎが抜けてしまうケースが増えている。ただし、合成枕木に空ける下穴の径を小さくして、ねじくぎとの隙間を減らすことにより、振動に伴う劣化を抑えることはできるが、ねじくぎを捻じ込む際のトルクが大きくなり、作業効率が落ちてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、合成枕木にレールを敷設する際の作業効率を下げず、また敷設後に振動等があっても合成枕木が劣化しにくいレール用締結具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明であるレール用締結具は、合成枕木に空けた下穴に挿すための先端部と、前記先端部に連設され、円柱状の周面にネジが形成されたストレート部と、前記ストレート部に連設され、円錐台状の周面に前記ストレート部から続く前記ネジが形成されたテーパ部と、前記テーパ部に連設された円柱状の軸部と、前記軸部に連設された鍔状のフランジ部と、前記フランジ部に連設され、回転用工具に固定するための頭部と、を有し、前記先端部をテーパ状に細くし、前記ネジの山の形状を二等辺状に形成し、前記ネジの谷と前記下穴との隙間を無くした、ことを特徴とする。

【0007】
また、レール用締結具は、前記ストレート部及び前記テーパ部の表面から酸化物を研削した、ことを特徴とする。
【0008】
また、レール用締結具は、前記ストレート部及び前記テーパ部の表面に潤滑剤を被覆した、ことを特徴とする。
【0009】
また、レール用締結具は、前記先端部をテーパ状に細くした、ことを特徴とする。
【0010】
また、レール用締結具は、前記ネジの内角を55度以下にした、ことを特徴とする。
【0011】
また、レール用締結具は、前記ネジの高さを、前記枕木と前記フランジ部の間に介されるタイプレートに空けられた孔を貫通できる範囲で高くした、ことを特徴とする。
【0012】
また、レール用締結具は、前記ネジのピッチを12ミリメートル以上にした、ことを特徴とする。
【0013】
また、レール用締結具は、前記ネジの稜線を湾曲状に凹ませた、ことを特徴とする。
【0014】
また、レール用締結具は、前記ネジの形状を二等辺状から外角が鋭角にならない範囲で傾斜させた、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のレール用締結具。
【0015】
本発明であるレール締結装置は、レール用締結具を使用した、ことを特徴とする。
【0016】
本発明であるレール用締結具の製造方法は、合成枕木に空けた下穴に挿すための先端部をテーパ状に細くする先付加工工程と、前記先端部に連設された円柱状のストレート部及び前記ストレート部に連設された円錐台状のテーパ部を加熱し、3つの回転する円筒状の型の間に挿しこむことにより、周面にネジを形成する熱間転造工程と、前記ストレート部及び前記テーパ部の表面から酸化物を研削する表面研削工程と、前記ストレート部及び前記テーパ部の表面に潤滑剤を被覆する表面処理工程と、を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明であるレール用締結具は、合成枕木にレールを敷設する際に、従来よりも弱い力で捻じ込むことができ、作業効率を向上させることができる。また、敷設後に電車等が通過する際の振動等があっても、合成枕木との隙間が少ないので、合成枕木の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明であるレール用締結装置の全体図である。
図2】本発明であるレール用締結具の平面図及び正面図である。
図3】本発明であるレール用締結具のネジ(b)と、従来のレール用締結具のネジ(a)とを比較した図である。
図4】本発明であるレール用締結具の捻じ込み(b)と、従来のレール用締結具の捻じ込み(a)とを比較した図である。
図5】本発明であるレール用締結具の製造方法を示すフローチャートである。
図6】本発明であるレール用締結具の製造方法における熱間転造を説明する図である。
図7】本発明であるレール用締結具の試験方法を示すフローチャートである。
図8】本発明であるレール用締結具の従来との比較試験の結果を示す図である。
図9】本発明であるレール用締結具のネジ山の形状(a〜f)を示す図である。
図10】本発明であるレール用締結具の形状の比較試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【実施例1】
【0020】
まず、本発明であるレール用締結装置の全体図について説明する。図1は、レール用締結装置の全体図である。レール用締結装置100は、レール600を合成枕木400に固定するためのものである。レール用締結装置100は、タイプレート300、及びクリップ500等を有する。
【0021】
レール600は、鉄道の線路である。レール600には、例えば、断面が逆Tの字型をした鋼など金属製の棒材が使用される。所定の長さのレール600を端部で連結して延設する。平行な二本のレール600が、鉄道の進行方向に沿って直線状又は湾曲状に敷設される。
【0022】
合成枕木400は、鉄道の線路を支える枕木である。合成枕木400には、例えば、ガラス繊維で強化されたウレタン樹脂の板材が使用される。合成枕木400は、鉄道の進行方向に沿って所定の間隔で地中に埋め込まれる。そのため、合成枕木400は、レール600に対して垂直に配置される。
【0023】
タイプレート300は、レール600と合成枕木400の間に介される木製、金属製又は樹脂製などの板材である。タイプレート300には、四隅に貫通孔が空けられ、各貫通孔にねじくぎ200が通される。ねじくぎ200は、本発明であるレール締結具であり、タイプレート300を貫通して合成枕木400に捻じ込まれる。
【0024】
クリップ500は、レール600を支持する木製、金属製又は樹脂製などの部材である。クリップ500は、タイプレート300の上に設置される。クリップ500には、両端に孔が空けられ、両孔に留具510が通される。留具510は、クリップ500を貫通してタイプレート300又は合成枕木400に固定される。
【0025】
レール用締結装置100には、本発明であるレール締結具が使用される。そのため、レール600の敷設後に、電車等の通過に伴って繰り返し振動を受けても、又はその他の要因によっても、合成枕木400は劣化しにくく、その結果、レール締結具も抜けにくい。
【実施例2】
【0026】
次に、本発明であるレール締結具の構成について説明する。図2は、レール用締結具の平面図及び正面図である。レール用締結具は、レール用締結装置100において、タイプレート300を合成枕木400に締結するためのねじくぎ200である。
【0027】
ねじくぎ200は、螺旋状にネジ270が形成された鋼など金属製の釘材である。ねじくぎ200は、頭部210、フランジ部220、軸部230、テーパ部240、ストレート部250、及び先端部260などを有する。ねじくぎ200は、各部分が列挙した順で一体的に成形される。
【0028】
頭部210は、ねじくぎ200の一端側である。頭部210の下側にはフランジ部220が連設される。頭部210は、レンチ等の回転用工具で締め付けられる部分であり、図2の平面図で示すように、四角柱や六角柱など挟持しやすい形状である。頭部210をレンチ等で挟持し、回転させることにより、ねじくぎ200を合成枕木400に捻じ込む。
【0029】
フランジ部220は、ねじくぎ200における押さえである。フランジ部220の上側には頭部210が連設され、下側には軸部230が連設される。フランジ部220は、軸部230にあるものが抜けないように押さえる部分であり、図2の平面図で示すように、円板が鍔状に拡がり突出した形状である。
【0030】
軸部230は、ねじくぎ200のうちタイプレート300を貫通する部分である。軸部230の上側にはフランジ部220が連設され、下側にはテーパ部240が連設される。軸部230は、タイプレート300に空けた貫通孔を通るように円柱状の形状である。なお、タイプレート300とフランジ部220の間にワッシャー310を介在させても良い。
【0031】
ワッシャー310は、孔の空いた金属製又は樹脂製等の板材である。タイプレート300を押さえるために、フランジ部220との間にワッシャー310を介す。ねじくぎ200が抜けてくる等、タイプレート300とフランジ部220の間の緩みを防止するために、ロックナットワッシャーやコイルバネを用いても良い。
【0032】
テーパ部240は、ねじくぎ200のうち合成枕木400に捻じ込まれる部分の上半分である。テーパ部240の上側には軸部230が連設され、下側にはストレート部250が連設される。テーパ部240は、細いストレート部250と太い軸部230を繋ぐために円錐台の形状であり、周面には螺旋状に突出するネジ270が形成される。
【0033】
ストレート部250は、ねじくぎ200のうち合成枕木400に捻じ込まれる部分の下半分である。ストレート部250の上側にはテーパ部240が連設され、下側には先端部260が連設される。ストレート部250は、円柱状の形状であり、周面には螺旋状に突出するネジ270が形成される。
【0034】
ネジ270は、ねじくぎ200において、合成枕木400に埋め込まれる部分、即ちストレート部250とテーパ部240に形成される螺旋状の突起である。ネジ270は、ストレート部250の下端からテーパ部240の上端まで連続して形成される。なお、ストレート部250とテーパ部240において、突起の高さは同じとなるように形成される。
【0035】
先端部260は、ねじくぎ200の他端側である。先端部260の上側にはストレート部250が連設される。先端部260は、ストレート部250から下方向にテーパ状に細くなる円錐台の形状である。先端部260は、合成枕木400に空けた穴に最初に捻じ込まれる側であり、合成枕木400に空けた穴に挿したときに倒れないように先端を細くする。
【0036】
さらに、ネジ270について説明する。図3は、レール用締結具のネジと、従来のレール用締結具のネジとを比較した図である。図3(a)に示すように、従来のストレート部250aに形成されたネジ270aの形状は、直角三角形状である。それに対し、図3(b)に示すように、本発明のストレート部250に形成されたネジ270の形状は、二等辺三角形状である。
【0037】
図3(a)に示す従来のネジ270aにおいては、ネジ山280aの高さ(H)271aは3.5ミリメートルである。ネジ山280aの先端である内角(θ1)272aの角度は59.7度、上側の外角(θ2)273aの角度は90度、下側の外角(θ3)274aの角度は149.7度である。ネジ山280aの上側の稜線(L1)275aは3.5ミリメートル、下側の稜線(L2)276aは6.9ミリメートル、合計10.4ミリメートルである。ネジ山280aのピッチ(P)277aは12ミリメートルである。ネジ山280aの断面の面積(S1)281aは10.5平方ミリメートルであり、ネジ谷290aの断面の面積(S2)291aは31.5平方ミリメートルである。
【0038】
図3(b)に示す本発明のネジ270においては、ネジ山280の高さ(H)271は4.0ミリメートルである。ネジ山280の先端である内角(θ1)272の角度は55度、上側の外角(θ2)273の角度は117.5度、下側の外角(θ3)274の角度は117.5度である。ネジ山280の上側の稜線(L1)275は4.5ミリメートル、下側の稜線(L2)276は4.5ミリメートル、合計9.0ミリメートルである。ネジ山280のピッチ(P)277は12ミリメートルである。ネジ山280の断面の面積(S1)281は8.3平方ミリメートルであり、ネジ谷290の断面の面積(S2)291は39.7平方ミリメートルである。
【0039】
本発明のネジ270においては、従来と比較して、ネジ山280の高さ271が高くなり、ネジ山280の面積281が小さくなり、ネジ谷290の面積291が大きくなる。また、上側の稜線275は長くなるが、下側の稜線276は短くなる。すなわち、ネジ谷290の面積291が大きいので、ネジ山280同士に挟み込まれる合成枕木400の量が多くなり、本発明の方がネジ270は抜けにくい。
【0040】
従来のネジ270a及び本発明のネジ270が合成枕木400に埋め込まれていた場合に、それらを引抜方向(上方向)251に引き抜くとする。従来のネジ270aに掛かる力方向252aは、引抜方向251と同じである。それに対し、本発明のネジ270に掛かる力方向252は、上側の稜線275に対し垂直であることから、引抜方向251に対して斜め方向になる。すなわち、本発明では、力方向252に力が分散されるので、ネジ270が引き抜きにくくなる。
【0041】
なお、従来のネジ270aのように、上側の外角273aが直角又は鋭角であると、引抜方向251に引いたときに、ネジ270aの付け根に大きく力が掛かり疲労破壊の可能性が高くなる。また、上側の外角273aが鋭角になるほどネジ270aの先端が上側に向かって鋭く尖ることから、合成枕木400を抉ってボロボロに破壊してしまう可能性も高くなる。それに対し、本発明のネジ270のように、上側の外角273が鈍角であれば、引抜方向251に引いたときに、ネジ270の付け根に掛かる力も小さく、疲労破壊の可能性は低い。また、ネジ270の先端も上側又は下側に尖らないので、合成枕木400を傷付ける可能性も小さい。
【0042】
続いて、合成枕木400に捻じ込んだ状態のねじくぎ200について説明する。図4は、レール用締結具の捻じ込みと、従来のレール用締結具の捻じ込みとを比較した図である。図4(a)に示すように、従来においては、合成枕木400に空けた下穴410aとねじくぎ200aとの間に隙間が大きい。それに対し、図4(b)に示すように、本発明においては、合成枕木400の下穴410とねじくぎ200との間に隙間がほとんどない。
【0043】
図4(a)に示す従来のねじくぎ200aの場合、まず合成枕木400に内径(φ1)411aが18ミリメートルの下穴410aが空けられる。そして、外径(φ2)292aが16ミリメートルのねじくぎ200aが捻じ込まれる。なお、ねじくぎ200aのネジ270aの高さが3.5ミリメートルであることから、ネジ270aの外径(φ3)282aは23ミリメートルである。下穴410aの中心にねじくぎ200aを捻じ込めば、下穴410aと、ねじくぎ200aとの間に1ミリメートルの隙間が存在するので、下穴410aの内周面には、螺旋状の溝が2.5ミリメートルの深さで掘られる。
【0044】
図4(b)に示す本発明のねじくぎ200の場合、まず合成枕木400に内径(φ1)411が16.5ミリメートルの下穴410が空けられる。そして、外径(φ2)292が16ミリメートルのねじくぎ200が捻じ込まれる。なお、ねじくぎ200のネジ270の高さが4.0ミリメートルであることから、ネジ270の外径(φ3)282は24ミリメートルである。下穴410と、ねじくぎ200との間にはほとんど隙間が存在しないので、下穴410の内周面には、螺旋状の溝が約4.0ミリメートルの深さで掘られる。
【0045】
従来のねじくぎ200aにおいては、合成枕木400へのネジ270aの食い込みが浅い。それに対して、本発明のねじくぎ200においては、ネジ270が合成枕木400に深く食い込んでおり、抜けにくい。これについて行った引抜力試験の結果を以下に示す。なお、先端部260から軸部230まで140ミリメートルのねじくぎ200を使用し、先端部260からテーパ部240までの110ミリメートルを、合成枕木400に空けた内径411が約16ミリメートルの下穴410捻じ込んだときの引抜力を測定する。
【0046】
二つのねじくぎ200について行ったときの結果は、一つ目の引抜力が86.5キロニュートンであり、二つ目の引抜力が78.0キロニュートンである。その他のデータを含め平均すると、本発明のねじくぎ200の引抜力は、約82.0キロニュートンである。なお、従来のねじくぎ200aの引抜力は、約69.0キロニュートンであり、本発明のねじくぎ200の方が抜けにくい。
【0047】
また、従来のねじくぎ200aと本発明のねじくぎ200とが合成枕木400に埋め込まれていた場合に、電車等の通過により繰り返し振動が加わったと仮定する。例えば、横振動が加わった場合、従来のねじくぎ200は、下穴410aとの間にある隙間の範囲で横に揺れ、その結果、下穴410aの内周面をボロボロに劣化させてしまう可能性がある。本発明のねじくぎ200では、下穴410との間に隙間がないので、その可能性は低い。
【0048】
さらに、縦振動が加わった場合、従来のねじくぎ200aは、ネジ270aの形状が直角三角形であるので、ネジ270aの付け根が疲労破壊する可能性もあるし、先端の尖りが下穴410aの内周面をボロボロに劣化させてしまう可能性もある。本発明のねじくぎ200では、ネジ270の形状が二等辺三角形であるので、ネジ270の付け根に力は集中しにくいし、先端も上側又は下側に尖っていないため、その可能性は低い。
【実施例3】
【0049】
次に、本発明であるレール締結具の製造方法について説明する。図5は、レール用締結具の製造方法を示すフローチャートである。レール締結具の製造方法700は、先付加工710、熱間転造720、表面研削730、及び表面処理740の工程を有する。レール締結具であるねじくぎ200を製造する準備として、棒状の素材201を用意する。
【0050】
素材201は、頭部210、フランジ部220、軸部230、ネジ270のないテーパ部240、ネジ270のないストレート部250、及び先端が細くなっていない先端部260を有する。素材201には、一般構造用圧延鋼材(SS材)などの金属が使用される。素材201は、溶融させた金属を金型に流し込んで成形する鋳造、又は棒状の金属から余計な部分を削り取る切削若しくは研削などの方法により加工される。
【0051】
先付加工710の工程では、素材201の先端部260がテーパ状に細くなるように加工する。素材201において、先端部260は、ネジ270のないストレート部250と同じ径であるため、切削等の方法により先端を細くする。ねじくぎ200を合成枕木400に空けた下穴410に捻じ込むに際し、細い先端部260を下穴410に挿すことにより垂立させ、回転用工具がねじくぎ200を掴みやすくする。
【0052】
熱間転造720の工程では、先付加工710がされた素材201のテーパ部240及びストレート部250にネジ270を形成する。図6は、レール用締結具の製造方法における熱間転造を説明する図である。熱間転造720は、図6(a)に示すように、転造機721を使用する。転造機721は、図6(b)に示すように、上側の転造ダイス722、左側の転造ダイス723、及び右側の転造ダイス724を有し、それらが三角形状に隣接して配置される。
【0053】
図6(b)に示すように、上側の転造ダイス722、左側の転造ダイス723、及び右側の転造ダイス724の中心の隙間に素材201の先端部260からストレート部250までを挿し込む。各転造ダイス722、723、724は、円柱状の型であり、図6(c)に示すように、側周面には、凹凸725が形成されている。素材201を加熱して、各転造ダイス722、723、724で圧力を加えることにより、図6(c)に示すように、素材201に凹凸725の形状に合わせて螺旋状のネジ270が形成される。なお、各転造ダイス722、723、724の入口側は、素材201を入れやすいように若干広くなっており、それによってテーパ部240が形成される。
【0054】
表面研削730の工程では、ネジ270が形成された素材201の表面に付着した不要物を削り取る。熱間転造720における加熱により、素材201の表面が酸化スケールの被膜で覆われる。投射材を衝突させて表面を研削するショットブラストなどの方法により、素材201の表面から酸化スケールの被膜を除去して、ねじくぎ200を合成枕木400に捻じ込む際の摩擦力を軽減する。
【0055】
表面処理740の工程では、ネジ270が形成された素材201の表面を潤滑材などで被覆する。表面研削730とは逆に、ねじくぎ200を合成枕木400に捻じ込む際の摩擦力を軽減するために、表面にコーティングを施す。例えば、ワックスを塗布することにより、表面の滑りを良くする。その他に、表面の酸化を防止するために、酸化しにくい金属の薄膜でめっき加工しても良い。
【0056】
本発明であるレール用締結具の製造方法700によりねじくぎ200を製造すれば、先付加工710により、ねじくぎ200の先端部260が細くなっているので、作業者が容易にねじくぎ200を垂立させることができ、回転用工具でねじくぎ200を掴む際に、ねじくぎ200が倒れてしまうことを防止することができる。
【0057】
また、表面研削730により、ねじくぎ200の表面に被覆された酸化スケールを除去するので、ねじくぎ200を合成枕木400に捻じ込む際に余計な摩擦力が掛からず、作業効率を向上させることができる。さらに、表面処理740により、ねじくぎ200の表面にワックスを塗布するので、ねじくぎ200を合成枕木400に捻じ込む際の摩擦力を軽減し、より作業効率を向上させることができる。
【実施例4】
【0058】
次に、本発明であるレール用締結具を使用したときの捻じ込み易さを検証する。図7は、レール用締結具の試験方法を示すフローチャートである。図8は、レール用締結具の従来との比較試験の結果を示す図である。図7に示すように、レール用締結具の試験方法800は、実際の使用方法に沿って、下穴掘削810、手締め820、トルク測定830、及び評価840の工程で行う。
【0059】
下穴掘削810の工程は、合成枕木400に下穴410を掘削する。試験においては、地面に埋めていない枕木400をボール盤に設置し、ドリル等の切削工具を回転させて、穴あけ加工する。なお、本発明においては下穴410の内径411は16ミリメートルで検証し、従来においては内径411aを18ミリメートルで掘削していたので、内径411aが18ミリメートルの場合と16ミリメートルの場合とで検証する。
【0060】
手締め820の工程は、合成枕木400に空けた下穴410にねじくぎ200の先端部260を挿入する。先端部260が細くない場合、下穴410に垂立するまで作業者が手で締めることが困難であり、挿し込みが浅く倒れてしまう場合もある。本発明のように、先端部260を細くすることにより、ねじくぎ200は下穴410に容易に食い付く。
【0061】
トルク測定830の工程は、ねじくぎ200の捻じ込み易さを検証する。試験においては、ねじ込みトルクを測定するためにトルクレンチを使用する。なお、実際の合成枕木400に捻じ込む場合は、インパクトレンチ等を使用する。合成枕木400の下穴410に先端部260が挿されたねじくぎ200を、テーパ部240が埋まって軸部230より上が出ている状態になるまで捻じ込む。
【0062】
評価840の工程は、トルク測定830の結果を比較する。図8(a)は、本発明として、表面研削730せずに表面処理740を行って製造したねじくぎ200で検証している。また、図8(b)は、本発明として、表面研削730をした上で表面処理740も行って製造したねじくぎ200で検証している。なお、図8(a)及び(b)において、黒い四角及び黒い丸は、従来のねじくぎ200aの場合である。
【0063】
黒い四角は、内径411aが16ミリメートルの下穴410aに、ネジ山280aの外径282aが23ミリメートルのねじくぎ200aを捻じ込んだときの、捻じ込みの深さに応じた捻じ込みトルクを示す。このとき、捻じ込み深さが110ミリメートルのトルク平均値は、4100重量キログラム・センチメートルである。
【0064】
また、黒い丸は、内径411aが18ミリメートルの下穴410aに、ネジ山280aの外径282aが23ミリメートルのねじくぎ200aを捻じ込んだときの、捻じ込みの深さに応じた捻じ込みトルクを示す。このとき、捻じ込み深さが110ミリメートルのトルク平均値は、3000重量キログラム・センチメートルである。下穴410aを広くすることで、捻じ込み易くなる。
【0065】
そして、白い丸は、内径411が16ミリメートルの下穴410に、ネジ山280の外径282が24ミリメートルのねじくぎ200を捻じ込んだときの、捻じ込みの深さに応じた捻じ込みトルクを示す。図8(a)に示すように、表面研削730無しにおけるトルク平均値は、3000重量キログラム・センチメートルである。また、図8(b)に示すように、表面研削730有りにおけるトルク平均値は、2500重量キログラム・センチメートルである。
【0066】
図8(a)の表面研削730無しの場合でも、下穴410が狭くし、ネジ山280の外径282が広くしたにも関わらず、黒い丸の場合とトルクは同等であり、捻じ込み易さは変わらない。さらに、図8(b)に示すように、表面研削730有りの場合であれば、どの深さにおいても黒い丸の場合よりもトルクが下回っており、非常に捻じ込み易くなっている。これにより、合成枕木400に対してレールを敷設等する作業者の作業効率も向上する。
【実施例5】
【0067】
次に、本発明であるレール用締結具の変形例として、ネジ形状のバリエーションとその比較結果について説明する。図9は、レール用締結具のネジ山の形状を示す図である。図10は、レール用締結具の形状の比較試験の結果を示す図である。本発明は、従来の鋸歯のような直角三角形状のネジ270aを改良して、二等辺三角形状のネジ270を採用しているが、それに若干の変更を加えた形状でも同様の効果を有すれば、本発明に含まれるものである。
【0068】
ねじくぎ200のネジ270の内角272の角度は55度にしたが、図9(a)に示すように、ネジ270の内角272の角度を45度、40度又は35度と更に狭くしても良い。ネジ270の幅が狭くなることで、ねじくぎ200の捻じ込みトルクが減少する。ただし、ネジ270の幅が狭くなることで、ネジ270の耐久度が下がる可能性がある。
【0069】
ここで、ねじくぎ200に対し、二等辺三角形状のネジ270を形成したときの捻じ込みトルクを、内角272の角度が45度の場合と、35度の場合とで比較する。なお、合成枕木400に空ける下穴410内径411は16ミリメートルである。ねじくぎ200については、外径292は16ミリメートルで、先端部260からテーパ部240までの長さは115ミリメートルである。ネジ270については、ピッチ277は6ミリメートルで、高さ271は3.5ミリメートルであり、熱間転造720ではなく切削により形成したものである。
【0070】
図10(a)に示すように、ネジ270の内角272の角度が45度の場合、捻じ込み深さが115ミリメートルのトルク平均値である最大トルクは、2480重量キログラム・センチメートルである。また、図10(b)に示すように、ネジ270の内角272の角度が35度の場合、捻じ込み深さが115ミリメートルのトルク平均値である最大トルクは、1970重量キログラム・センチメートルである。
【0071】
図10(a)及び(b)を比較すると、ネジ270の内角272の角度を狭くすることにより、捻じ込みトルクが減少し、合成枕木400に対し、ねじくぎ200を捻じ込みやすくなっていることが分かる。また、ネジ270の内角272の角度が狭くなると、ネジ谷290の面積291が増えることから、ねじくぎ200が合成枕木200から抜けにくい。
【0072】
また、ねじくぎ200のネジ270の高さ271は4.0ミリメートルにしたが、図9(b)に示すように、ネジ270の高さ271を4.5ミリメートルにするなど更に高くしても良い。ただし、合成枕木400との間に介在させるタイプレート300の貫通孔の内径が25ミリメートルであることから、ねじくぎ200を通すことができる範囲までとなる。
【0073】
また、ねじくぎ200のネジ270のピッチ277は12ミリメートルにしたが、図9(c)に示すように、ネジ270のピッチ277を13ミリメートルにするなど更に拡げても良い。ネジ270のピッチ277を拡げると、ネジ谷290の面積291が増えることから、ねじくぎ200が合成枕木200から抜けにくくなる。
【0074】
また、ねじくぎ200のネジ270の上側の稜線275及び下側の稜線276は直線状にしたが、図9(d)に示すように、ネジ270の稜線275、276を湾曲状に凹ましても良い。ネジ270の稜線275、276を凹ませると、ネジ谷290の面積291が増えることから、ねじくぎ200が合成枕木200から抜けにくくなる。ただし、図9(a)におけるネジ270の内角272と同様に狭くしすぎると、ネジ270の耐久力が落ちる可能性がある。また逆に、ネジ谷290の面積291は減るが、ネジ270の稜線275、276を湾曲状に膨らませても良い。
【0075】
また、ねじくぎ200のネジ270の形状は二等辺三角形にしたが、図9(e)に示すように、上側又は下側に傾けても良い。なお、ネジ270の上側の外角273及び下側の外角274が共に鈍角となる範囲である。一方が直角又は鋭角になってしまうと、捻じ込み又は引き抜き時にネジ270の付け根に強い力が掛かり、破壊される可能性が大きくなる。また、一方が鋭角になると、ネジ270の先端が尖ってくるので、合成枕木400を傷付けやすくなる。共に鈍角であれば、その可能性は低減し、特に二等辺三角形に近い形状であれば、捻じ込み及び引き抜きにおける特性のバランスが良い。
【0076】
また、合成枕木400に空ける下穴410の内径411は16ミリメートルに狭めたが、図9(f)に示すように、従来に合わせて18ミリメートルの下穴410を空ける場合、ねじくぎ200の外径292を18ミリメートルと太くしても良い。下穴410とねじくぎ200の隙間を小さくすることにより、下穴410内でねじくぎ200がぐらつくことも無くなり、合成枕木400を傷付ける可能性も低くなる。
【0077】
レール600を敷設する場所に応じて、図9(a)〜(f)に示すような変形又はそれ以外の変形を加えても良い。それにより、本発明のレール用締結具と同様の効果を得ることができる。すなわち、従来よりも弱い力で捻じ込むことができ、作業効率を向上させることができ、また、敷設後に電車等が通過する際の振動等があっても、合成枕木400との隙間が少ないので、合成枕木400の劣化を抑制することができる。
【0078】
以上、本発明の実施例を述べたが、これらに限定されるものではない。例えば、レール締結具の製造方法700において、ねじくぎ200のネジ270は、熱間転造720によって形成しているが、素材201を切削することによって形成しても良い。また、表面研削730をした後で、表面処理740を行っているが、いずれかの工程を省いても良い。
【符号の説明】
【0079】
100:レール用締結装置
200,200a:ねじくぎ
201:素材
210:頭部
220:フランジ部
230:軸部
240:テーパ部
250,250a:ストレート部
251:引抜方向
252,252a:力方向
260:先端部
270,270a:ネジ
271,271a:高さ
272,272a:内角
273,273a:外角
274,274a:外角
275,275a:稜線
276,276a:稜線
277,277a:ピッチ
280,280a:ネジ山
281,281a:面積
282,282a:外径
290,290a:ネジ谷
291,291a:面積
292,292a:外径
300:タイプレート
310:ワッシャー
400:合成枕木
410,410a:下穴
411,411a:内径
500:クリップ
510:留具
600:レール
700:製造方法
710:先付加工
720:熱間転造
721:転造機
722:転造ダイス
723:転造ダイス
724:転造ダイス
725:凹凸
730:表面研削
740:表面処理
800:試験方法
810:下穴掘削
820:手締め
830:トルク測定
840:評価
図1
図2
図3
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図5
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図10