(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6425316
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】グレーチング
(51)【国際特許分類】
E03F 5/06 20060101AFI20181112BHJP
【FI】
E03F5/06 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-45561(P2017-45561)
(22)【出願日】2017年3月10日
(65)【公開番号】特開2018-150680(P2018-150680A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2018年3月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515018024
【氏名又は名称】有限会社ポラリス
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】堀 義昭
【審査官】
須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第10−2006−0026778(KR,A)
【文献】
中国特許出願公開第103074934(CN,A)
【文献】
特開2004−150171(JP,A)
【文献】
特開2003−227170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/04
E03F 5/046−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口に設けられるグレーチングにおいて、
排水口に単位時間当たりに流入する水量が所定量以上となったときに排水口を覆うグレーチング本体を水平状態を維持したまま垂直に上昇させる昇降機構を設けたことを特徴とするグレーチング。
【請求項2】
前記昇降機構は、前記排水口に単位時間当たりに流入する水量に応じて前記グレーチング本体を上昇させることを特徴とする請求項1に記載のグレーチング。
【請求項3】
前記昇降機構は、前記グレーチング本体が上昇した状態でも縦孔状の前記排水口に連通する横孔状の排水溝にまで張り出さないように前記排水口に収容されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグレーチング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水口に設けられるグレーチングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、雨水や廃水を排出するために屋内や屋外に排水溝に通じる排水口が設けられている。
【0003】
この排水口には、通行人等が落下するのを防止するため、或は、大量の塵の流入による詰まりを防止するためなどを目的として、格子状のグレーチングが設けられている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0004】
従来のグレーチングは、排水口の開口部分に載置されており、グレーチングの自重により自動的には昇降することができないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−142048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来のグレーチングにあっては、排水口の開口部において自動的に昇降することができないようになっていたために、豪雨時等に大量の水とともに木の葉等の塵が一気に流れ込み、木の葉等の塵によってグレーチングに詰まりが生じてグレーチングが大量の水の流れを阻害してしまうことがあった。
【0007】
このように、大量の水の流れをグレーチングで阻害してしまうと、雨水や廃水を円滑に排水口から排出させることができなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に係る本発明では、排水口に設けられるグレーチングにおいて、排水口に単位時間当たりに流入する水量が所定量以上となったときに排水口を覆うグレーチング本体を
水平状態を維持したまま垂直に上昇させる昇降機構を設けることにした。
【0009】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記昇降機構は、前記排水口に単位時間当たりに流入する水量に応じて前記グレーチング本体を上昇させることにした。
【0010】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記昇降機構は、
前記グレーチング本体が上昇した状態でも縦孔状の前記排水口に連通する横孔状の排水溝にまで張り出さないように前記排水口に収容されることにした。
【発明の効果】
【0011】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0012】
すなわち、本発明では、排水口に設けられるグレーチングにおいて、排水口に単位時間当たりに流入する水量が所定量以上となったときに排水口を覆うグレーチング本体を上昇させる昇降機構を設けることにしているために、排水口に流入する水量が所定量以上となったときに自動的にグレーチング本体が上昇することで円滑に排水を行わせることができる。
【0013】
特に、排水口に単位時間当たりに流入する水量に応じてグレーチング本体を上昇させることにした場合には、必要以上にグレーチング本体を上昇させることがなく、身体や車両などの負傷を防止することができ、安全性を確保することができる。
【0014】
また、グレーチング本体の一辺を支点として傾斜状に開閉させることにした場合には、人や車の進行方向などを考慮してグレーチング本体の開閉場所を適宜設定することができ、これによっても、身体や車両などの負傷を防止することができ、安全性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るグレーチングの具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1〜
図4に示すように、グレーチング1は、排水口2に設けられる。排水口2は、下水道等の横孔状の排水溝3に連通しており、縦孔状に形成されている。
【0018】
このグレーチング1は、排水口2の開口部分に載置されるグレーチング本体4と、グレーチング本体4を排水口2の開口部分に対して昇降させる昇降機構5とを有している。
【0019】
グレーチング本体4は、排水口2の開口部分に支持される左右に伸延する複数本のベアリングバー6を前後に間隔をあけて配置するとともに、複数本のベアリングバー6を前後に伸延する左右のクロスバー7で連結し、水を流す貫通状の開口を格子配列状に設けた構成となっている。ベアリングバー6の両端部及び排水口2の開口部分は、下方へ向けて内側に傾斜した傾斜面となっており、グレーチング本体4が排水口2の開口部分から円滑に昇降できるようにしている。
【0020】
昇降機構5は、排水口2の内部に前後に伸延する軸8を固定し、軸8に一対の昇降桿9,10の中途部を前後に間隔をあけて2組回転自在に交差させて取付けている。昇降桿9,10の上端は、グレーチング本体4のベアリングバー6に形成した水平方向に伸延する長孔11に移動自在に取付けている。一方、昇降桿9,10の下端は、水受体12を支持桿13,13を介して取付けている。水受体12は、矩形箱型形状で底壁14に多数の貫通孔15を形成している。図中、16は、水受体12に塵等が侵入するのを防止するための簾である。
【0021】
昇降機構5は、一対の昇降桿9,10を軸8で交差させて、一方の昇降桿9の上端をベアリングバー6の右側に取付けるとともに昇降桿9の下端を水受体12の左側に取付け、他方の昇降桿10の上端をベアリングバー6の左側に取付けるとともに昇降桿10の下端を水受体12の右側に取付けている。これにより、昇降機構5は、昇降桿9,10の軸8よりも下方の重量が上方の重量よりも重くなると昇降桿9,10の下端部が下方に引張され、軸8を中心に内側に昇降桿9,10が回転して、昇降桿9,10の上端部が上方に移動(上昇)し、昇降桿9,10の軸8よりも上方の重量が下方の重量よりも重くなると昇降桿9,10の上端部が下方に押圧され、軸8を中心に外側に昇降桿9,10が回転して、昇降桿9,10の上端部が下方に移動(降下)する。
【0022】
ここで、昇降機構5は、グレーチング本体4自体の重量よりも水受体12自体の重量を軽くして、水受体12の内部に水が含まれていない状態では、グレーチング本体4が排水口2の開口部分に停止(上昇していない)状態となるようにしている。
【0023】
そして、昇降機構5は、水受体12の内部に水が含まれることで水受体12の総重量(水受体12自体の重量と水の重量との合計)がグレーチング本体4の重量よりも重くなると、水受体12が降下するとともにグレーチング本体4が上昇した状態となるようにしている。なお、水受体12の降下量とグレーチング本体4の上昇量とは、昇降桿9,10の軸8の取付位置によってテコの原理で調整することができる。
【0024】
その際に、水受体12の底壁14に貫通孔15が形成されているため、単位時間当たりに所定量未満の水が水受体12に流入しても、全ての水が貫通孔15を通って水受体12から流出してしまい、水受体12の内部には溜まらないようになっている。一方、単位時間当たりに所定量以上の水が水受体12に流入すると、全ての水が貫通孔15から流出せずに一部の水が水受体12の内部に溜まり、水受体12の総重量が増加し、それに伴ってグレーチング本体4が上昇するようになっている。しかも、単位時間当たりに水受体12に流入する水の量から単位時間当たりに水受体12の貫通孔15から流出する水の量を引いた差分だけ単位時間当たりに水受体12に水が溜まるようになっているため、単位時間当たりに水受体12に流入する水の量が増えるほど、水受体12に早く水が溜まることになり、それだけグレーチング本体4を早く上昇させることができるようになっている。なお、水受体12に単位時間当たりに流入する水の量が再び所定量未満となった場合には、グレーチング本体4が降下する。また、水受体12の貫通孔15から流出する水の量は、貫通孔の15の大きさや個数で適宜設定することができ、貫通孔15に開閉可能な蓋を設けるなどして適宜調整可能とすることもできる。
【0025】
なお、上記グレーチング1は、昇降機構5などの全ての構成をグレーチング本体4が上昇した状態でも縦孔状の排水口2に収容されるようにし、横孔状の排水溝3にまで張り出さないようにしている。これにより、排水溝3を流れる水によってグレーチング1(昇降機構5)が破損してしまうのを防止している。
【0026】
このようにして、昇降機構5は、排水口2に単位時間当たりに流入する水量が所定量以上となったときにグレーチング本体4を上昇させるようにしている。特に、上記昇降機構5では、排水口2に単位時間当たりに流入する水量に応じてグレーチング本体4を(水量が多くなるほど)早く又は(水量が少なくなるほど)ゆっくり上昇させるようにしている。
【0027】
グレーチング1は、排水口2に単位時間当たりに流入する水量が所定量以上となったときにグレーチング本体4を上昇させることができればよく、グレーチング本体4を昇降させるどのような機構でもよい。たとえば、
図5に示すように、昇降桿9,10の軸8よりも下側に水受板17,18を取付けた構成であってもよい。この場合には、排水口2に流入する水が水受板17,18を下方に向けて押圧し、その作用でグレーチング本体4が上昇するようになっている。
【0028】
グレーチング1は、排水口2に単位時間当たりに流入する水量が所定量以上となったときに昇降機構5でグレーチング本体4を上昇させることができればよく、
図6(a)に示すように、グレーチング本体4を水平状態を維持したまま垂直に昇降させてもよく、また、
図6(b)に示すように、グレーチング本体4を排水口2の開口部分に軸支して、グレーチング本体4の一辺を支点19として傾斜状に開閉させてもよい。
【0029】
以上に説明したように、上記グレーチング1は、排水口2に単位時間当たりに流入する水量が所定量以上となったときに排水口2を覆うグレーチング本体4を上昇させる昇降機構5を設けた構成となっている。
【0030】
そのため、上記構成のグレーチング1では、排水口2に流入する水量が所定量以上となったときに自動的にグレーチング本体4が上昇することで、排水口2の開口部分とグレーチング本体4との間に隙間が形成され、排水口2の開口部分での流動抵抗が減少するので、豪雨時等に大量の水とともに木の葉等の塵が排水口2に流れ込んでも、雨水や廃水などの排水を円滑に行わせることができる。
【0031】
また、上記グレーチング1は、排水口2に単位時間当たりに流入する水量に応じてグレーチング本体4を上昇させる構成となっている。
【0032】
そのため、上記構成のグレーチング1では、必要以上にグレーチング本体4を上昇させることがなく、身体や車両などの負傷を防止することができ、安全性を確保することができる。
【0033】
また、上記グレーチング1は、グレーチング本体4の一辺を支点19として傾斜状に開閉させる構成となっている。
【0034】
そのため、上記構成のグレーチング1では、人や車の進行方向などを考慮してグレーチング本体4の開閉場所を適宜設定することができ、これによっても、身体や車両などの負傷を防止することができ、安全性を確保することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 グレーチング 2 排水口
3 排水溝 4 グレーチング本体
5 昇降機構 6 ベアリングバー
7 クロスバー 8 軸
9,10 昇降桿 11 長孔
12 水受体 13 支持桿
14 底壁 15 貫通孔
16 簾 17,18 水受板
19 支点