(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の天板付き什器が教室や講演会場、競技場等の公共施設で用いられる場合には、共通の天板面を利用する使用者が知己の人間とは限らない。
しかしながら、従来の天板付き什器は、作業領域となる天板全体が略矩形状に形成され、使用者の前面側に対峙する天板の後端縁が、施設内の通路と略直交する直線的な形状とされている。このため、同じ天板を利用する隣接する使用者の視線の向く方向が近くなり、隣接する使用者が気になって作業に集中しにくい状況が考えられる。
【0006】
そこでこの発明は、同じ天板を共用する隣接する使用者の存在を気にせずに、使用者各自が快適に作業を行うことが
できる組み合わせ什器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る
組み合わせ什器は、上記課題を解決するために、
脚部材に支持された天板が複数の使用者の作業領域を有する天板付き什器と、当該天板付き什器の天板の前記各作業領域の後方に設置される椅子を備える組み合わせ什器において、
前記天板の両側の側部には、施設内の通路が隣接して配置され、前記天板は、幅方向の中心線を挟んで左右に二つの作業領域を有し、当該二つの作業領域の後端縁は、それぞれ隣接する前記通路に向かって後方側に傾斜して形成され、前記天板の前記通路に臨む側の作業領域に対面する前記椅子は、座の幅方向が隣接する前記通路に向かって後方側に傾斜するようにした。
【0008】
これにより、天板の後方側から天板上の作業領域に対面する使用者のうち、通路に臨む側の作業領域に対面する使用者は通路側に斜めに向くことになる。したがって、通路に臨む側の作業領域に対面する使用者と、その隣の作業領域に対面する使用者とは、両者の視線の向く方向が相反方向にずれることになる。
【0012】
また、上記の構成により、天板の後方側の椅子に着座する使用者のうち、通路に臨む側の作業領域に対面して着座する使用者は通路側に斜めに向くことになる。このため、通路に臨む側の作業領域に対面して着座する使用者と、その隣の作業領域に対面して着座する使用者とは、両者の視線の向く方向が相反方向にずれることになる。また、通路に臨む側の作業領域に対面して着座した使用者は通路側に斜めに向くことなるため、着座状態から通路に出易くなる。また、通路から入ってきた使用者も座に着座し易くなる。
【0013】
前記天板付き什器と前記椅子が組を成し、当該天板付き什器と椅子の組が前後方向に複数配列されて使用される組み合わせ什器において、前記天板付き什器の天板の前記通路に臨む側の作業領域の前端縁は、隣接する前記通路に向かって後方側に傾斜させるようにしても良い。
この場合、通路に臨む側の作業領域に対面する椅子の座の幅方向の向きと、その後方側の天板付き什器の天板の作業領域の前端縁の向きがほぼ合致することになる。したがって、天板付き什器とその前方側の椅子の間に不要なスペースができなくなり、施設内の限られたスペース内に天板付き什器と椅子を効率良く配置することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、通路に臨む側の作業領域に対面する使用者と、その隣の作業領域に対面する使用者の視線の向く方向が相反方向にずれることになるため、同じ天板を共用する隣接する使用者の存在を気にせずに、使用者各自が快適に作業を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
この実施形態に係る天板付き什器10は、使用者二人が左右に並んで利用可能な二人用テーブルであり、天板付き什器10の後方側に設置される二つの椅子20,20と組み合わされて利用される。天板付き什器10と二つの椅子20,20が組を成し、これらが組み合わせ什器を構成している。
【0017】
この実施形態では、天板付き什器10と椅子20,20の組が、競技場の階段状の段床1に、前後と左右に並んで複数設置されて用いられている。競技場の段床1は、観戦方向に向かって次第に低位となるように形成されており、天板付き什器10…は、その段床1の傾斜に沿って前後方向に直線的に並んで設置されている。前後に並ぶ各天板付き什器10は、段床1の高さの異なる各段に設置されている。
【0018】
こうして直線的に前後に並んだ天板付き什器10…の列の左右両側には、施設内の階段通路2が配置されている。施設内には、段床1の傾斜に沿う階段通路2(通路)が複数略平行に設けられている。
なお、以下においては、特別に断らない限り、施設内の競技観戦方向を「前」と呼び、その反対側を「後」と呼ぶものとする。図中矢印FRは、施設内の前方を指すものとする。
【0019】
天板付き什器10は、段床1の水平面1aに固定設置される脚部材11と、脚部材11の上端部に略水平に取り付けられる天板12と、脚部材11と天板12に取り付けられて天板12の前部を前方側から遮蔽する幕板13と、を備えている。各天板付き什器10の天板12の後方側(競技観戦方向に向かっての後方側)には、天板12を使用する使用者の進入スペースが確保され、その進入スペースに天板付き什器10と組を成す椅子20,20が設置されている。
【0020】
天板12は、幅方向に横長に形成され、幅方向の中心線Cを挟んだ左右に二つの作業領域WL,WRが設けられている。各作業領域WL,WRの前端縁(前端面14を含む。)と後端縁(後端面15を含む。)は、それぞれ隣接する階段通路2に向かって設定角度(例えば、5°程度)後方側に傾斜している。具体的には、左側の作業領域WLの前端縁(前端面14を含む。)と後端縁(後端面15を含む。)とは、左側に位置される階段通路2に向かって設定角度後方側に傾斜しており、右側の作業領域WRのの前端縁(前端面14を含む。)と後端縁(後端面15を含む。)とは、右側に位置される階段通路2に向かって設定角度後方側に傾斜している。
【0021】
また、天板12の階段通路2に臨む側端部19(側部側の端面)は、階段通路2の延出方向と略平行に形成されている。つまり、天板12の各側端部19は、端面が階段通路2に沿うように形成されている。
【0022】
幕板13は、板厚方向が略前後方向を向くようにして、脚部材11と天板12の前端面14とに跨って取り付けられている。幕板13は、幅方向の中心線Cの位置を前側に凸の稜線として左右両側が後方側に設定角度傾斜している。幕板13のこの傾斜角度は、天板12の左右の作業領域WL,WRの前端面14の傾斜角度と合致する角度に設定されている。
【0023】
また、幕板13は、
図3に示すように、天板12の前部下方を覆う下方遮蔽領域13aと、天板12の前面と天板12の前部上方側を覆う上方遮蔽領域13bとを備えている。下方遮蔽領域13aの幅方向の寸法は、脚部材11の幅方向の寸法とほぼ同寸法に設定され、上方遮蔽領域13bの幅方向の寸法は、天板12の幅方向の寸法とほぼ同寸法に設定されている。天板12の幅方向の寸法は、脚部材11の幅方向の寸法よりも大きく設定されている。幕板13の上方遮蔽領域13bの側端部は、下方遮蔽領域13aの側端部に対して隣接する階段通路2側に段差状に膨出している。
【0024】
脚部材11の階段通路2に臨む側面のうちの、幕板13の下方遮蔽領域13aに対応する高さ位置には、階段通路2を移動する歩行者が把持可能な把持部材16が取り付けられている。
また、幕板13の上方遮蔽領域13bの前面には、前方の着座者の頭部を保護するための頭部保護部材17が取り付けられている。
【0025】
ところで、天板付き什器10と組みを成す二つの椅子20,20は、その天板付き什器10の設置される段床1の段よりも一段上の段の前部垂立面1bに支持されている。
各椅子20は、基端が段床1の前部垂立面1bに固定設置されて、その基端から前部上方側に向かって延出する一対の支持アーム21,21と、後縁部が一対の支持アーム21,21に跳ね上げ回動可能に軸支される座22と、下端が一対の支持アーム21,21に固定される背凭れ23と、を備えている。
【0026】
座22は、
図4に示すように、左右の支持アーム21,21に保持された回動軸24に軸支されている。各回動軸24は、前方の天板付き什器10の天板12の作業領域WLまたはWRの後端面15(後端縁)と平行になるように、つまり、隣接する階段通路2に向かって後方側に傾斜するように設置されている。そして、各回動軸24に軸支される座22は、幅方向が隣接する階段通路2に向かって後方側に傾斜している。また、下端が左右の支持アーム21,21に固定される背凭れ23も、座22と同様に幅方向が隣接する階段通路2に向かって後方側に傾斜している。
【0027】
以上のように、階段通路2の両側に設置された天板付き什器10と椅子20,20の組は以下のようにして使用される。
各天板付き什器10の天板12を利用する使用者は、階段通路2から使用する天板12の作業領域WL,WRの後方側に進入し、その作業領域WL,WRの後方側の対応する椅子20に着座する。
【0028】
このとき、天板12の作業領域WL,WRの後端縁(後端面15を含む。)は、隣接する階段通路2に向かって後方側に傾斜し、対応する椅子20,20も、幅方向が同様に隣接する階段通路2に向かって後方側に傾斜している。このため、椅子20に着座して天板12上の作業領域WL,WRに向かった使用者は、体全体が隣接する階段通路2の前方側に斜め向くことになる。したがって、一つの天板付き什器10の天板12を共用する左右の使用者は、両者の視線の向く方向が相反方向にずれ、隣接する使用者の存在を気にせずに作業領域WL,WRに向かって快適に作業を行うことができる。
一方で、階段通路2を挟んで隣り合う天板付き什器10を使用している使用者とは視線が交差するようになるが、この使用者が使用している天板付き什器10とは階段通路2を挟んで離間していることから、天板12上で行っている作業の内容が露見しにくい。したがって、天板付き什器10の利用者は、この点からも快適に作業を行うことができる。
【0029】
また、この実施形態に係る天板付き什器10とそれに対応する椅子20,20とは、椅子20の座22の幅方向が、天板12の対応する作業領域WL,WRの後端縁(後端面15を含む。)と同様に、隣接する階段通路2に向かって後方側に傾斜しているため、作業領域WL,WRを利用する使用者が階段通路2側から椅子20の座22に容易に着座でき、また、座22から階段通路2側に容易に抜け出ることができる。
【0030】
また、この実施形態に係る天板付き什器10は、天板12の階段通路2に臨む側端部19が階段通路2の延出方向と略平行に形成されているため、天板12の側端部19の角部が階段通路2側に突出することがない。したがって、この構成により、階段通路2を通行する人が天板12の側端部19の角部に接触しにくくなる。
【0031】
さらに、この実施形態に係る天板付き什器10の場合、天板12の作業領域WL,WRの後端縁(後端面15を含む。)だけでなく、前端縁(前端面14を含む。)側も同様に隣接する階段通路2に向かって後方側に傾斜していることから、天板付き什器10の各作業領域WL,WRの前端縁と、その前方の椅子20,20の座22や背凭れ23の幅方向とが同方向を向くことなになる。したがって、この構成により、天板付き什器10とその前方側の椅子20,20の間に不要なスペースができなくなり、施設内の限られたスペース内に天板付き什器10と椅子20,20を前後方向に効率良く配置することができる。
【0032】
この実施形態の天板付き什器10は、天板12の幅方向の中心線Cを挟んで左右に二つの作業領域WL,WRを有しているが、天板の幅方向に三つ以上の作業領域が設けられるようにしても良い。ただし、この実施形態のように、天板12の両側部に階段通路2が隣接して配置されるとともに、天板12の幅方向の中心線Cを挟んで左右に二つの作業領域WL,WRが設けられ、その各作業領域WL,WRの後端縁(後端面15を含む。)がそれぞれ隣接する階段通路2に向かって後方側に傾斜する構造である場合には、天板12上の各作業領域WL,WRを使用する使用者が隣接する階段通路2側にそれぞれ斜めに向くことになる。
【0033】
したがって、この実施形態の場合、使用者が各作業領域WL,WRに正対したときに、作用者の視線の向く方向が確実に相反方向にずれるようになるうえ、階段通路2に対する人の出入りも容易になる。また、この実施形態の場合、天板の幅方向に三つ以上の作業領域を設ける場合に比較して、各作業領域WL,WRの正面からのずれ角を大きくすることなく隣接する使用者の視線の向く方向をより大きくずらすことができる。
【0034】
また、
図5は、上記の実施形態の変形例を示す施設内の側面図である。
この変形例の組み合わせ什器は、上記と同様の天板付き什器10と、上記と若干形状や構造の異なる椅子120,120Aによって構成されている。図中左側と中央の椅子120は、段床1の前部垂立面1bに一対の支持アーム21,21が取り付けられ、その一対の支持アーム21,21に座22と背凭れ23とが固定状態で取り付けられている。この椅子120は、座22が跳ね上げ不能に固定されている点と、背凭れ23の高さが低い点が、
図1〜
図4に示したものと異なっている。また、図中右側の椅子120Aは、座22と背凭れ23が段床1の水平面1a上に垂立支柱121を介して取り付けられている。ただし、この変形例の椅子120,120Aの場合も、座22や背凭れ23は幅方向が隣接する階段通路に向かって後方側に傾斜している。
【0035】
この変形例の組み合わせ什器は、椅子120,120Aの形状と構造が
図1〜
図4に示したものと若干異なるものの、天板付き什器10の構造と椅子120,120Aの設置向き等は同様とされているため、
図1〜
図4に示したものと同様の効果を得ることができる。
【0036】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、天板付き什器10とそれに対応する椅子20,20が階段通路2に隣接するように施設内の段床1に設置されているが、設置する床は必ずしも段床である必要はなく、通路も階段通路ではなく平坦な通路であっても良い。
また、上記の実施形態の天板付き什器10は、天板12の両側部が通路に隣接しているが、天板は必ずしも両側部が通路に隣接する必要はなく、片側の側部のみが通路に隣接する構造であっても良い。