(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のインクを吐出する記録ヘッド201〜204がキャリッジ106に装着されている。インクタンク205〜208は、上記4つの記録ヘッドが吐出するインクを収容するともに、記録ヘッドに対して対応するインクを供給可能に構成されている。これらインクタンク205〜208は、キャリッジ106に着脱自在に搭載される。
【0013】
キャリッジ106は、インクタンク205〜208及び記録ヘッド201〜204を搭載して、図中矢印Xの方向およびその逆方向に往復移動可能に構成されている。このキャリッジの移動によって記録ヘッドは記録媒体に対して走査し、この走査の間に記録ヘッドからインクを吐出して記録媒体に画像を記録することができる。記録ヘッド201〜204の回復動作時等の非記録動作時には、このキャリッジ106は図中の破線で示したホームポジション位置hに待機するように制御される。搬送ローラ103は、補助ローラ104とともに記録媒体(記録用紙)107を挟持しながら回転して記録媒体107を搬送するとともに、記録媒体107を保持する役割も担っている。
【0014】
本実施形態の記録装置は、
図1に示すホームポジションhに待機している記録ヘッド201〜204が、記録開始命令が入力されると、キャリッジ106の移動によって図中X方向に移動し、これにより記録ヘッドの走査を行いインクを吐出して記録媒体107に画像を記録する。この記録ヘッドの1回の走査によって、記録ヘッド201の吐出口(ノズル)の配列範囲に対応した幅を有する領域に対して記録が行われる。キャリッジ106の主走査方向(X方向)への1回の走査に伴う記録が終了すると、キャリッジ106はホームポジションhに戻り、再び図中のX方向へ走査しながら記録ヘッド201〜204からインクを吐出して記録を行う。走査と次の走査の間には、搬送ローラ103が回転して、主走査方向と交差する副走査方向(Y方向)へと記録媒体が、上記配列範囲に対応した幅に対応する量、搬送される。このように記録ヘッドの走査と記録媒体の搬送とを繰り返すことにより記録媒体107に対する画像の記録が完成する。以上の記録動作は、後述の制御手段による制御に基づいて行われる。
【0015】
なお、上記の例では、記録ヘッドが往路方向に走査する時にのみ記録動作を行う、いわゆる片方向記録を行う例について説明した。しかし、記録ヘッドが往路方向への走査時と復路方向への走査時の両方において記録を行う、いわゆる双方向記録を行うものにも本発明は適用可能である。また、上記の例では、インクタンク205〜208と記録ヘッド201〜204とを分離可能にキャリッジ106に搭載する構成を示した。しかし、インクタンク205〜208と記録ヘッド201〜204とが一体となったカートリッジをキャリッジに搭載する形態を採用してもよい。さらに、一つの記録ヘッドから複数色のインクを吐出可能な複数色一体型のヘッドをキャリッジに搭載する形態を採用してもよい。
【0016】
図2は、
図1に示したインクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置600は、インターフェイス400を介して、ホストコンピュータ(以下、ホストPC)1200等のデータ供給装置に接続されている。データ供給装置から送信される各種データや記録に関連する制御信号等は、インクジェット記録装置600の記録制御部500に入力される。記録制御部500は、マルチパス記録用に記録データを生成するためのマスクを格納するメモリや演算を行うCPUを備える。記録制御部500は、ASICを備えていてもよい。インターフェイス400を介して入力された制御信号に従ってモータドライバ403〜404やヘッドドライバ405を制御する。また、記録制御部500は、入力される画像データに対して、
図3などにて後述される処理やヘッド種別信号発生回路405より入力される信号の処理を行う。搬送モータ401は、記録媒体107の搬送のために搬送ローラ103を回転させるための搬送モータである。キャリッジモータ402は、記録ヘッド201〜204を搭載するキャリッジ106を往復移動させるためのキャリッジモータである。モータドライバ403、404は、搬送モータ401、キャリッジモータ402をそれぞれ駆動する。ヘッド種別信号発生回路405は、記録ヘッド201〜204を駆動するヘッドドライバであり、記録ヘッドの数に対応して複数設けられている。また、ヘッド種別信号発生回路406は、キャリッジ106に搭載されている記録ヘッド201〜204の種類や数を示す信号を記録制御部500に供給する。
【0017】
図3は、
図2に示したインクジェット記録装置とホストPCとで構成される画像処理システムにおける画像処理の構成を示すブロック図である。記録制御部500は、
図2のインターフェイスを介して、プリンタドライバがインストールされたホストPC1200より転送されるデータの処理を行う。
【0018】
ホストPC1200では、アプリケーションから入力画像データ1000を受け取る。まず、受け取った入力画像データ1000を1200dpiの解像度でレンダリング処理1001を行う。これによって、記録用多値RGBデータ1002が生成される。本実施形態では、記録用多値RGBデータ1002は256値のデータである。生成された記録用多値RGBデータ1002は、記録制御部500に転送される。
【0019】
記録制御部500では、色変換処理1007を行い、記録用多値RGBデータ1002を、多値(256値)のCMYKデータ1008に変換する。次いで、量子化処理1009(例えば、誤差拡散)を行い、多値(256値)CMYKデータ1008を量子化(2値化)する。これにより、解像度1200dpiの2値CMYKデータ1010が生成される。
【0020】
次に、
図6などで後述されるように、2値CMYKデータ1010を基に、記録データの加工処理としてエッジ処理を行い、エッジ処理済みデータ1011を生成する。そして、エッジ処理後のデータに対して、不図示の不吐出検出部によって検出された吐出不良ノズルに対応させて不吐出補完処理を施し、不吐出補完済みデータ1012を生成する。
【0021】
なお、
図3は、1つのブロックで示される処理が終了した後に、次のブロックで示される処理を施すように記載しているが、本実施形態では、それぞれの処理をパイプライン的に行う。すなわち、処理に必要な数の画像が入力したら、その処理を行って後工程に処理後のデータを渡す。例えば、処理解像度が1200ppi×1200ppiである記録装置に1200ppi×1200ppiの画像データが入力された場合には、
図3のブロック1000〜1008のデータを生成するには、処理は1画素単位でよい。従って、ブロック1000〜1008のデータを生成する処理を1画素単位とし、その処理の繰り返しとするのであれば、必要とするメモリが最小限に抑えられる。1009では量子化処理が行われるが、その処理系が、例えばディザ法であれば、同様に1画素単位で処理することができる。また、誤差拡散法であれば、1ラスター(1行分の画素群)もしくは2ラスター単位で処理をすることができる。この場合でも、ブロック1008のデータを1ラスターもしくは2ラスター単位とすれば、ブロック1000〜1007のデータは1画素単位とすることができる。なお、記録装置の設計上、ブロック1008の処理をラスター単位とするには、ブロック1000〜1007の単位をブロック1008の単位に合わせてもよい。ブロック1010〜1012の処理も同様であり、それぞれのブロック1001〜1012の処理は、総ての画像領域分のメモリを持つのではなく、それぞれ最適化した単位とすることができる。
【0022】
不吐出補完済みデータ1012に基づいて、記録を行う。すなわち、記録ヘッドの走査で記録する範囲の不吐出補完済みデータ1012をメモリから読み出し、メモリに格納されているマルチパス記録用のマスクとの論理積を取り、それぞれの走査で記録するデータを生成する。
【0023】
以下では、本実施形態に係る、エッジ処理およびエッジ処理が施された記録データに対する不吐出補完処理について説明するが、その前に、本発明を適用しない場合の、エッジ処理およびその後の不吐出補完処理によって生じる問題を説明する。
【0024】
図4(a)〜(e)は、本発明を適用しない場合にエッジ処理およびその後の不吐出補完処理によって生じ得る、前述した問題を説明するための図である。
【0025】
図4(a)は、特許文献3に記載されるエッジ処理の一例を示しており、エッジ処理が、インクの種類(記録ヘッド)ごとに行われる例を示している。すなわち、エッジ処理によってインク色によって異なる複数のデータ(プレーン)が生成される。
図4(a)において、ステップS101で、記録データから、所定数の画素からなるエッジ処理の処理単位である領域(以下、単位領域)分の記録データを切り出し、ステップS102でエッジ処理を施す。単位領域202の周囲の破線で示す領域201は、エッジ処理に必要な、周囲情報(周囲の記録データ)である。周囲情報がない場合には、単位領域の境界部はすべてエッジになってしまうが、この周囲情報を参照することにより、単位領域の境界部でも適切にエッジ/非エッジの判断が可能となる。ステップS102のエッジ処理では、ステップS102aのエッジ処理によって第1プレーンを生成し、ステップS102bのエッジ処理によって第2プレーンを生成する。そして、ステップS103a、S103bで不吐出補完処理を行う。その後、ステップS104a、S104bで、記録ヘッドの1回の走査分の記録データを溜め、それに基づいて記録を行う。ステップS200では、以上説明したステップS100の処理と同じ処理を繰り返し行い、次の記録位置へ記録する。このように画像データを処理しつつ記録を行うという逐次処理によって画像を記録する。
【0026】
以上の処理において、ステップS103aで行う不吐出補完処理では、入力情報は、補完すべきノズルに対応した画素の位置情報の他、処理単位領域内の情報(記録データ)203aとエッジ処理で参照した、処理単位領域の周囲の情報(周囲画素の記録データ)201が入力情報である。すなわち、不吐出補完処理における入力情報のうち、エッジ処理が施されているデータは、処理単位領域の情報だけである。従って、処理単位領域と周囲との境界近傍の画素に対して不吐出補完を行う際に上記周囲の情報が必要となる場合には、この情報はエッジ処理が施されていないものとなる。このため、処理単位領域の境界を跨いだ不吐出補完は、エッジ処理が未だ施されていないデータ201を基に行われることになり、それによって、エッジ処理前後でデータが大きく異なるような記録データの場合には、本来記録したいデータとは比較的大きく異なってしまう。
【0027】
図4(b)は、ステップS103aにおける不吐出補完処理におけるデータを示しており、交互に上下の画素にデータを振り分ける方式(
図4(c))の不吐出補完を示している。上述したように、エッジ処理が施されたデータ203aは、処理単位内の記録データのみであり、その周囲記録データ201は未処理である。そして、周囲の画素に対応するノズルに不吐出があるときは(図の上段の矢印)、交互に上下の画素にデータを振り分ける不吐出補完の場合、不吐出ノズルに対応する画素の記録データの一部が、下向きの矢印で示すように、処理単位領域内の画素の記録データとされる。一方、処理単位領域の内部に不吐ノズルがある場合には(図の下段の矢印)、処理単位領域内で不吐出補完が完結するために、上述した問題は生じない。
【0028】
なお、不吐出補完の方式には、特許文献1に記載されているように、片側に寄せて不吐出補完を行うものもある(
図4(d)、
図4(e))。エッジ処理の境界部でこの方式を採用すれば、
図4(b)に示したように、周囲の画素に対応するノズルに不吐出があっても(図の上段の矢印)、その記録データをその画素の上側の画素に振り分けることにより、処理単位領域内のエッジ処理が既に施された記録データに影響を及ぼすことはない。しかし、片側の画素のみに振り分けることにより、振り分けられた画素に対応するノズルの使用頻度が高くなってしまう。また、不吐出のノズルが隣接しているような場合には、画質が大きく劣化する場合がある。
【0029】
図5(a)〜(g)は、このような不吐出補完の方式による、補完後の画質の違いを説明する図である。
図5(a)は、補完処理における処理対象の記録データを示している。
図5(b)および(c)は、上述した補完処理の二つの方式を示しており、
図5(b)は、上および下の画素に交互に振り分ける方式を示し、
図5(c)は、片側(図に示す例は上)の画素に振り分ける方式を示している。
【0030】
図5(d)、(e)および
図5(f)、(g)は、上記二つの方式で不吐出補完を施した後のデータを示しており、
図5(d)、(e)は、
図5(b)に示す方式によって、
図5(f)、(g)は、
図5(c))に示す方式によって、それぞれ不吐出補完を行った結果を示している。
図5(d)〜(g)において、符号「×」で示す画素の対応するノズルが不吐出であることを示している。
【0031】
図5(d)および(f)に示すように、生じている不吐ノズルが1つの場合は、処理後の画像に大きな差は生じない。しかし、
図5(e)および(g)に示すに、不吐出ノズルが2つ生じている場合は、片側の画素に振り分ける方式では(
図5(g))、画像において、比較的広い範囲の画素にドットが記録されない部分が生じ、これによって記録画像が大きく損なわれる。
【0032】
以上説明したとおり、不吐出補完処理では、不吐出を生じているノズルに対応する画素列に対して両側の方向の画素列に記録データを振り分けることが好ましい。しかし、エッジ処理の処理単位領域の周囲の画素は、エッジ処理前の記録データであることから、この部分の不吐出補完を適切に行えないという問題がある。
【0033】
これに対し、本発明の実施形態は、画像のエッジ部がエッジ処理の対象となることから、このエッジ部を記録するインク色(ブラック(K))の記録データがエッジ処理によってそれ程大きく変化しないデータと考え、エッジ処理の処理単位領域の境界を超えた不吐出補完処理を行うようにする。すなわち、記録データがエッジ処理によってそれ程大きく変化しないデータである場合は、処理単位領域の周囲の記録データもエッジ処理前後でそれ程変化しないことから、処理単位領域の境界を跨いだ不吐出補完処理を行っても記録データが大きく損なわれることはない。一方、画像のエッジ部以外(非エッジ部)を記録するインク色の記録データについては、エッジ処理の単位領域内で不吐出補完処理を行うようにする。すなわち、非エッジ部の記録データはエッジ処理によって比較的大きく変化することから、単位領域の周囲のエッジ処理を施していない記録データとの間の不吐出補完処理によって、その処理前後の記録データが比較的大きく変化するため、処理単位内だけで処理を行うようにする。
【0034】
図6(a)〜(t)は、本実施形態に係るエッジ処理を説明する図であり、また、
図7(a)〜(l)は、本実施形態に係る不吐出補完処理を説明する図である。これらの図において、「領域A」は、エッジ処理の処理単位領域の1つである。エッジ処理におけるこの処理単位(処理単位領域)のサイズは、上述したように、メモリ容量などの制約によってある程度定まるが、この制約と、この処理単位が記録画像の画質に及ぼす影響を考慮して、定めることができる。例えば、処理単位領域のノズル配列の方向に対応する画素列のサイズを、記録ヘッドのノズル配列の長さに対応した画素数またはそれ以下とし、また、ノズル配列方向と直交する方向のサイズも同じものとすることができる。図に示す例では、このサイズを、図示および説明の簡略化のため、8画素×8画素のサイズとして表されている。
【0035】
本実施形態は、ブラック(K)インクとして顔料インクを用い、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)インクとして染料インクを用いる。このうち、Kインクは普通紙に浸透し難いインクである。ぞして、ブラックの記録データKのうち、エッジ部は顔料のKインクで記録し、非エッジ部は、顔料のKインクと染料のC、M、Yインクとを用いて記録する。すなわち、本実施形態のエッジ処理は、Kインクの画像においてエッジ部と非エッジ部とを検出し、エッジ部についてはKインクで記録する記録データとし、非エッジ部についてはKインクとともにC、M、Yインクを用いて記録する記録データとするものである。
【0036】
図6(a)〜(d)は、2値のC、M、Y、Kインクそれぞれの記録データ1010を示している。この例では、Kインクの記録データのみが存在することを示している(
図6(d))。この
図6(d)に示すKインクの記録データの画像を、エッジ部と非エッジ部に分けると、
図6(e)および(f)に示すものとなる。
【0037】
一方、
図6(g)〜(k)は、非エッジ部のC、M、Y、Kインクの記録データ用のマスクデータおよびエッジ部のKインクの記録データ用のマスクデータを示している。
図6(e)および(f)に示す、Kインクの非エッジ部とエッジ部の記録データと、
図6(g)〜(k)に示す上記対応するマスクデータとの論理積をとることにより、
図6(l)〜(p)示す、エッジ処理後の記録データを得る。なお、
図6(g)〜(k)に示すマスクは3画素×3画素と比較的小さいマスクであるが、それを繰り返し並べてタイル状に用いる。そして、このようにしてKインクの記録データに基づいて得られる記録データC、M、Yについては、元々の記録データC、M、Y(
図6(a)〜(c))との論理和をとる。また、記録データKについては、エッジ部と非エッジ部の論理和をとって、最終的な、
図6(q)〜(t)に示すエッジ処理済みデータを得る。なお、この例では、元々の記録データC、M、Yが無い(ドット記録データが無い)ため、
図6(l)〜(n)および
図6(q)〜(s)に示すデータは同じである。
【0038】
図8(a)および(b)は、本実施形態に係るエッジ検出処理およびそれに基づくエッジ処理を示すフローチャートである。先ず、エッジ検出処理では、
図8(b)に示すように、ブラックの記録データKについて、着目する画素を中心にした3画素×3画素のマトリクスを考え、着目画素の記録データが「On」(ドット記録)で、かつ3画素×3画素マトリクス内の「On」画素の数が9であるか否かを判断する(S821)。この判定で肯定判断のときは、その画素は非エッジ部の画素と判定する(S823)。上記ステップS821で、否定判断のとき、着目画素が「On」(ドット記録)か否かを判断する(S822)。この判断で肯定判断のとき、その画素をエッジ部の画素と判定する(S824)。ステップS822で、否定判断のときは判定なしとする(S825)。検出対象の画素が無くなるまで上記処理を繰り返し(S826)、総ての対象画素についての処理を終了と判断したときは(S827)、本処理を終了する。
【0039】
図8(a)に示すエッジ処理では、先ずステップS801で、
図8(b)にて上述したようにエッジ検出処理を行う。そして、この検出処理の結果に基づき、ブラックの記録データKについて、処理単位領域ごとにエッジ部の記録データと非エッジ部の記録データとを判別する(S802)。そして、
図6にて上述したように、エッジ部の記録データに対してエッジマスクとの論理積をとる(S803)。また、非エッジ部の記録データについては、記録データK、C、M、Yそれぞれに対応するエッジマスクとの論理積をとる(S804、S805、S806、S807)。さらに、ブラックの記録データKについてステップS803、S804で得たデータの論理和をとる(S808)。また、シアン、マゼンタ、イエローのデータについても、エッジ処理で得たデータと、本来の記録データC、M、Yとの論理和をとる(S809、S810、S811)。最後に、それぞれのデータをエッジ処理済のデータ(
図3に示したエッジ処理済みデータ1011)とする(S812、S813、S814、S815)。
【0040】
本発明の一実施形態に係る不吐出補完処理は、処理単位領域の境界部における、C、M、Yインクのエッジ処理済データについては、処理単位領域の内側でデータの振り分けを行い、Kインクのエッジ処理済データについては、処理単位領域を超えた記録データの振り分けを許容する。
【0041】
図7(a)〜(d)は、C、M、Y、Kのエッジ処理後のデータを示しており、より具体的には、
図6(g)〜(t)に示すデータのうち、1つの処理単位領域である領域Aのデータを示している。エッジ処理は、処理単位領域ごとに行うため、領域Aについて処理するときにエッジ処理後の画像として得られるのは、領域Aの内側の画像のみである。領域Aの周囲のデータはエッジ検出に用いるが、未だエッジ処理は施されていない。一方、C、M、Y、Kインクのノズル列において、
図7(i)〜(l)において「×→」で示す位置の画素に対応するノズルに不吐出が生じているとする。この場合、本実施形態では、
図7(e)〜(h)に示すように補完処理を行う。
【0042】
ここで、本実施形態のようにブラックKの画像に対するエッジ処理では、そのエッジ処理の前後で、インクKの記録データはそれ程変化しない。従って、インクKの記録データのエッジ処理後の周囲情報もエッジ処理前の周囲情報(記録データ)に類似している。この点から、本実施形態は、インクKの記録データについては、処理単位領域を超えて不吐出補完を行う。すなわち、インクKの記録データの場合は、エッジ処理されていない、処理単位領域外の周囲のデータを用いて不吐出補完をしても、エッジ処理済みのデータに対して不吐出補完した場合とほぼ類似した結果が得られる。一方、C、M、Yインクの記録データは、エッジ処理の前後で比較的大きく変化する。例えば、
図6(a)〜(c)に示す例のように、元々のC、M、Yインクの記録データは無いのに対し、Kインクの記録データに対するエッジ処理によって、
図6(l)〜(n)に示すようにデータが生じる。このように、エッジ処理によってデータが存在するようになったにも係らず、不吐出補完処理で参照する領域Aの周囲情報は、エッジ処理が未だ行われていない、総て「0」のデータである。従って、本実施形態は、C、M、Yインクの記録データの不吐出補完を、処理単位領域内で完結するように実施する。
【0043】
図9(a)〜(w)は、上述したエッジ処理を処理単位に着目してより具体的に説明する図であり、また、
図10(a)〜(w)は、同じく上述した不吐出補完処理を処理単位に着目してより具体的に説明する図である。
【0044】
図9(a)〜(d)は、2値のC、M、Y、Kインクの記録データ1010を示している。この記録データに対してエッジ処理を行うために、
図9(e)〜(h)に示すように、処理単位領域である領域Aおよびその周囲(2画素分)の記録データを切り出す。なお、この周囲の情報(記録データ)について、本実施形態のエッジ処理は、インクKのデータをC、M、Y、Kインクのデータで置換する以外の処理を行っていないため、C、M、Yインクの周囲情報は参照されない。しかし、
図13にて後述するように、C、M、Yインクと、Kインクとの隣接関係を考慮してエッジ処理を行う場合には、C、M、Yインクの周囲情報が必要になる場合がある。
【0045】
図9(e)〜(h)に示す、領域Aに関して切り出した記録データに対して、
図8(b)に示したように、領域Aとその周囲の記録データを用いてエッジ検出を行い、
図9(i)〜(m)に示す、非エッジ部のデータおよびエッジ部のデータを得る。そして、それぞれのデータと、
図9(n)〜(r)に示すマスクとの論理積をとり、
図9(s)〜(w)に示すエッジ処理後のデータを得る。さらに、C、M、Yインクのデータについては、
図9(e)〜(g)に示す、元々のC、M、Yインクのデータと論理和をとる。また、Kインクのデータについては
図9(v)、(w)に示すエッジ部データと非エッジ部データとの論理和をとる。これにより、最終的な、領域Aの、
図10(a)〜(d)に示すエッジ処理済みデータ1011を得る。
【0046】
図10(e)〜(h)は、C、M、Y、Kインクの不吐出補完処理で用いられるデータを示している。すなわち、これらのデータは、処理単位である領域Aの内部は、
図10(a)〜(d)に示したエッジ処理済みデータであるが、その周囲の領域は、
図9(e)〜(h)に示した、エッジ処理を施す前のデータである。ここで、C、M、Yインクのデータはエッジ処理前のデータであるから、C、M、Yインクの周囲情報は総て「0」(ドット非記録)である。
【0047】
図10(i)〜(l)は、このような
図10(e)〜(h)に示すデータに対する不吐出補完処理を示している。例えば、
図10(i)に示すCインクのデータに対する補完処理は、処理単位領域の内部で不吐出補完をする。具体的には、「×→」出示す、不吐出のノズルに対応する画素の記録データ101は、領域Aの内部である1つ下の画素列の画素に振り分けられる。このように領域Aの境界に隣接する画素列に対応するノズルに不突出が生じている場合は、その領域の内側に向かう一方向において隣の画素列に振り分ける。なお、
図10(j)に示すように、領域Aの内部で境界に隣接しない画素列に対応するノズルに不吐出があるときは、振り分けは一方向でなく、上下方向の画素に交互に振り分ける。
【0048】
一方、
図10(l)に示すKインクのデータに対する補完処理は、領域Aの境界を超えた補完処理を許容する。例えば、領域Aの境界の外側で隣接する画素列に対応するノズルに不吐出がある場合、その記録データ102は下方向で隣接する、領域A内の画素に振り分けられる。このように、Kインクの補完処理に関するデータは、領域Aの周囲情報もエッジ処理後のデータに類似していることから、処理単位領域を超えて記録データの振り分けをしても、仮にエッジ処理済みのデータに対して不吐出補完した場合と、ほぼ類似した結果が得られる。
【0049】
なお、Kインクについて、処理単位領域の境界を超えた補完処理を行うのは、次の理由からである。1つは、不吐出補完処理することによって増すノズルの使用頻度を、できるだけ抑制するためである。そもそも不吐出補完処理は、記録ヘッドの走査回数が少ない場合に用いられる技術であり、普通紙等で利用する記録モードで多用される。普通紙で出力される記録内容は、例えば、黒文字が多いということが想定される。よって、Kインクのノズルの吐出頻度を、不吐出補完処理によって増すと、不吐出補完処理に利用されたノズルの故障へ繋がる確率が増すことがある。これを抑制すべく、特に、Kインクのノズルについては、不吐出補完処理の記録データの振り分けを、上下に分散させることが望ましい。2つ目は、画質上の理由である。
図11(a)〜(c)は、この理由を説明する図である。
図11(a)は、不吐出補完前のデータを示している。これに対し、領域Aの境界の下方で隣接する画素列およびそれに同方向で隣接する画素列に対応する2つの連続するノズルに不吐出が生じているとする。この場合、
図11(b)に示すように、処理単位領域の内部のみで不吐出補完を行うと、対応する画素の記録データ111のうち2つだけが隣接する画素に振り分けられ、画像の連続性が無くなる。これに対し、
図11(c)に示すように、処理単位領域を超えて不吐出補完を行うと、対応する画素の記録データ111のうち4つがそれぞれ上または下航行で隣接する画素に振り分けられ、画像の連続性がそれ程損なわれない。この例のような場合には、処理単位領域に制約されない不吐出補完が好ましいことが分かる。
【0050】
本実施形態では、処理単位領域内で不吐出補完するか、処理単位領域を超えて不吐出補完するか、は、エッジ処理によってどの程度元画像が変わるかを基準にしている。つまりエッジ処理のパラメータによって変化する。
【0051】
図12は、本実施形態に係る、処理単位領域内で不吐出補完をするか処理単位領域を超えて不吐出補完をするかを、インクの種類に応じて決定する処理を示すフローチャートである。先ず、エッジ処理によって施される画像加工の程度が小さく、エッジ処理前とは類似する第1のインク(本実施形態ではKインク)か、または処理単位を超えた不吐出補完を行い、エッジ処理によって施される画像加工の程度が大きく、エッジ処理前とは大きく異なる第2のインク(本実施形態ではC、M、Yインク)かを判断する(S121)。第1のインクである場合は、
図10(l)に示したように、処理単位領域を超えた補完処理を行う(S122〜S124)。一方、第2のインクである場合は、
図10(i)〜(k)に示したように、処理単位領域の内部で補完処理を行う(S125、S126)。
【0052】
他の例として、画像の属性情報を入力し、文字か否かを判定してエッジ処理をしても良い。その場合は、文字で無い場合は全て非エッジとして判定し、文字であると判定できる画像データのエッジのみをエッジとして判定すればよい。これにより、文字以外の例えば写真画像などのKインクをC、M、Yインクと混在させて記録することができ、より滑らかな記録を得ることができる。
【0053】
すなわち、本実施形態は、記録ヘッドが吐出する複数の種類のインク(C、M、Y、K)のうち、エッジ処理の前後で最も変化が少ない、インク(K)の記録データに対しては、処理単位領域の境界を超えて他のノズルに対応した画素(境界の外側または内側の画素)に記録データの振り分けを許容する不吐出補完を行うものである。
【0054】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態は、濃度の異なる2種類のKインクを記録できる記録装置に関するものである。Kインクの1つはブラックの色相を持つインク(以下、PBkインクと称する)であり、もう1つは、PBkインクとは濃度が異なるが、同じブラックの色相を持つインク(以下、MBkインクと称する)である。PBkインクはにじみやすいが対擦過性が良く、MBkインクはにじみ難いが対擦過性が低いインクである。このインクの特性を考えて、エッジは先鋭性を重視するために、にじみ難いMBkインクで記録し、他のC、M、Yインクの領域が隣接している画素ではブリード対策のためにPBkインクで記録する。
【0055】
図13(a)〜(y)は、本実施形態に係るエッジ処理を示す図であり、
図14(a)〜(t)は、本実施形態に係る不吐出補完処理を示す図である。
【0056】
図13(a)〜(d)は、2値のC、M、Y、Kインクそれぞれのデータ1010を示している。この記録データから、
図13(e)〜(h)に示す、それぞれのインクの処理単位領域(領域A)とその周囲のデータを得る。そして、
図13(h)に示すKインクのデータを、エッジ部と非エッジに切り分けることにより、
図13(l)および(m)に示すデータを得る。すなわち、MBkインク用のデータ(
図13(l))と、PBkインク用のデータ(
図13(m))を得る。次に、他のC、M、Yインクのデータと画素が隣接しているかを判断する。図に示す例では、エッジ部と非エッジ部とに分割するKインク用のデータに隣接するC、M、Yインクのデータが無いため、PBkインクが新たに生成される画素が存在せず、
図13(m)に示すデータはそのまま維持される。この結果、MBkインク用のデータは
図13(n)、(o)に示すもので、PBkインク用のデータは
図13(m)に示すものとなる。なお、Kインク用のデータに隣接するC、M、Yインクのデータがある場合、
図13(m)に示すデータにおいて、その隣接に係るKインクの画素にPBkインのデータが置かれることになる。
【0057】
次に、以上求めたデータと、
図13(p)〜(s)に示すマスクとの論理積をとって、
図13(t)〜(w)に示すエッジ処理されたデータを得、これらの論理和をとることにより、
図13(x)および(y)に示す、それぞれMBk用データおよびPBk用データを得る。
【0058】
図14(a)〜(e)は、これらのエッジ処理済みデータと、エッジ処理されていない周囲情報を結合したデータを示している。そして、
図14(f)〜(j)は、これらのデータに対して、不吐出補完処理を施したデータを示している。
【0059】
第1実施形態と同様に、エッジ処理前後でデータが似ているか否かを基準にして、処理単位領域内で不吐出補完をするか、あるいは処理単位領域を超えて不吐出補完をするか、を決定する。
【0060】
本実施形態では、C、M、YインクおよびMBkインクを、処理単位を超えて不吐出補完をする場合とし、PBkインクは処理単位内での不吐出補完をする場合とする。C、M、Yインクについては、第1実施形態と異なってKインクのデータのエッジ処理によってC、M、Yインクのデータが精製されないことから、エッジ処理前後データがそれ程変化しない。このため、処理単位領域を超えた不吐出補完とすることによるノズル負荷上昇の抑制を選択する。MBkインクおよびPBkインクについては、エッジ処理前のデータは存在しないが、そのデータを作り出す元となるデータということで、エッジ処理前データをKインクのデータとする。この場合、MBkインクのデータは、エッジ処理後のデータと、処理前となるKデータとの類似の度合いが大きい。よって、C、M、Yと同様に不吐出補完することによるノズル負荷上昇の抑制を選択する。一方、PBkインクは、エッジ処理前のKデータと、処理後のデータが大きく異なるため、処理単位領域内の不吐出補完を選択する。
【0061】
(他の実施形態)
上述した実施形態は、エッジ処理においてエッジ検出をする記録データをブラック(K)のデータである場合について説明したが、本発明の適用がこの形態に限られないことはもちろんである。例えば、ブラック以外の比較的光学濃度が高くなるインクのデータや混色によって表現する複数のインクのデータについて、エッジ検出を行うようにしてもよい。
【0062】
また、上述した実施形態では、エッジ処理およびその後の不吐出補完処理を記録装置において実行する例について説明したが、この形態に限られない。これらの処理をパーソナルコンピュータなどのホスト装置で実行してもよく、また、一部をホスト装置で行い、他の一部を記録装置で行うようにしてもよい。この点で、本発明に係るエッジ処理およびその後の不吐出補完処理を実行する装置または複数の装置からなるシステムを、本明細書では画像処理装置という。