(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記開口部の上に部材を形成する工程では、前記開口部内に犠牲部材を形成し、前記犠牲部材の上に前記遮蔽部材となる前記部材を形成し、前記犠牲部材を除去する、請求項7に記載の光電変換装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。ただし、以下に説明する形態は、発明の一つの実施形態であって、これに限定されるものではない。なお、以下の説明および図面において、複数の図面に渡って共通の構成については共通の符号を付している。そして、共通する構成を複数の図面を相互に参照して説明し、共通の符号を付した構成については適宜説明を省略する。また、以下に説明しない事項に関しては、適当な技術を適用することができる。
【0010】
図1(a)に画素増幅型のイメージセンサーとしての光電変換装置10の概略を示す。
図1(a)に示した光電変換装置10は、1点鎖線で囲んだ領域である受光領域21と、1点鎖線と2点鎖線の間の領域であり、受光領域21の周辺の周辺領域22とを有する。受光領域21には、複数の受光素子1が行列状あるいは列状に配列されている。受光領域21を撮像領域や画素領域と呼ぶこともできる。互いに隣り合う受光素子の中心軸同士の間隔(画素ピッチ)は、典型的には、10μm以下であり、5.0μm以下であることが好ましい。
【0011】
周辺領域22には垂直走査回路26と、2つの読み出し回路23と、2つの水平走査回路24と、2つの出力アンプ25を含む周辺回路が設けられている。周辺領域22の読み出し回路23は、例えば、列アンプ、相関二重サンプリング(CDS)回路、加算回路等で構成される。読み出し回路23は、垂直走査回路26によって選択された行の画素から垂直信号線を介して読み出された信号に対して増幅、加算等を行う。列アンプ、CDS回路、加算回路等は、例えば、画素列又は複数の画素列毎に配置される。水平走査回路24は、読み出し回路23の信号を順番に読み出すための信号を生成する。出力アンプ25は、水平走査回路24によって選択された列の信号を増幅して出力する。以上の構成は、光電変換装置10の一つの構成例に過ぎず、これに限定されるものではない。読み出し回路23と水平走査回路24と出力アンプ25とは、2系統の出力経路を構成し、受光領域21を挟んで上下に1つずつ配置されているが、この構成に限ったものではない。
【0012】
図1(b)は受光素子1の一例を表す平面模式図であり、
図1(c)は
図1(b)のA−B線における受光素子1の断面模式図である。単数の受光素子1は、半導体からなる基板100の内部に設けられた複数の光電変換部101、102を備えている。複数の光電変換部101、102の間には両者の信号電荷を分離するための分離部109が設けられる。分離部109はLOCOSやSTIなどの絶縁体による絶縁分離でなされていてもよいし、光電変換部101、102の蓄積領域とは反対の導電型の半導体領域による接合分離でなされていてもよい。本例では接合分離を採用している。分離部109の分離性能は不完全であってもよく、複数の光電変換部101、102のどちらで生成された信号電荷が多いかを判別できる程度の分離性能があればよい。そのため、光電変換部101で生成れた信号電荷の一部が、光電変換部102で生成された信号電荷として検出部で検出されることは許容されうる。
【0013】
複数の受光素子1の各々の光電変換部101、102は、共通の基板100内に、撮像面となる基板100の主面に沿って配列されている。撮像面の一部が光電変換部101、102の受光面に一致する。光電変換部101、102の受光面は基板100の表面の一部で有り得る。撮像面あるいは受光面に平行で2つの光電変換部101、102が分離部109を介して並ぶ方向をX方向とする。2つの光電変換部101、102が並ぶ方向は、光電変換部101を平面視した際の幾何学的重心G1と、光電変換部102を平面視した際の幾何学的重心G2とを結ぶ直線に平行な方向として定義できる。また、撮像面と平行で、X方向に直交する方向をY方向とする。典型的には、X方向は、受光領域21において行列状に配列された受光素子1の行方向(1行が延在する方向)および列方向(1列が延在する方向)の一方で有り得る。また、典型的には、Y方向は、受光領域21において行列状に配列された受光素子1の行方向(行に沿った方向)および列方向(列に沿った方向)の他方で有り得る。
【0014】
本例の光電変換部101、102は基板100の内部に、不純物を導入することによって形成されたフォトダイオードである。フォトダイオードとしての光電変換部101、102は信号電荷を多数キャリアとし、信号電荷を蓄積する第1導電型の半導体領域(蓄積領域)と、第2導電型の半導体領域とのPN接合によって形成される。光電変換部101、102の別の例としては、フォトゲートであってもよいし、ガラス等の絶縁体からなる基板の上にMIS型構造あるいはPIN型構造を有する半導体薄膜として形成されていてもよい。光電変換装置10の受光領域21には、受光素子1以外に、光電変換部を1つだけ備える受光素子を含んでいても良い。
【0015】
光電変換部101で得られた信号電荷は、MOS構造を有する転送ゲート103を介して検出部105へ転送され、光電変換部102で得られた信号電荷は、MOS構造を有する転送ゲート104を介して検出部106へ転送される。検出部105、106は例えば一定の静電容量を有する浮遊拡散部を含み、信号電荷の量を電圧に変換することで電荷量を検出することができる。検出部105、106は増幅トランジスタ107、リセットトランジスタ108にそれぞれ接続されている。ここでは、光電変換部101、102毎に検出部105、106を設けて、別々の光電変換部101、102からパラレルに信号電荷を転送する構成を示した。しかし、別々の光電変換部101、102から別々の転送ゲート103、104を用いてシリアルに信号電荷を転送する場合は、共通の検出部を用いることもできる。
【0016】
受光素子1を、
図1(a)で示した光電変換装置10の受光領域21に複数配置することで、位相差検出方式によって撮像領域内にて焦点検出(AF)を可能としている。さらに位相差検出方法を用いて距離測定を行う撮像システム(カメラ)へ応用することができる。また、受光素子1から出力される複数の光電変換部101、102の少なくとも一方の信号を撮像信号として用いて、撮像も行うことができる。例えば、光電変換部101、102の信号を合算して、撮像信号とすることができる。このように光電変換部101、102の信号を焦点検出と撮像の双方に利用することで、本実施形態の光電変換装置10は、いわゆる像面位相差AFを実現することができる。
【0017】
基板100の上には、絶縁膜110が設けられている。絶縁膜110は透明でありうる。絶縁膜110は一種類の材料からなる単層膜であってもよいが、典型的には絶縁膜110は互いに異なる材料からなる複数の絶縁層が積層された多層膜である。絶縁膜110のある絶縁層は、例えば酸化シリコン(SiO
2)からなる。また、ある絶縁層はBPSG(硼燐珪酸塩ガラス)、PSG(燐珪酸塩ガラス)、BSG(硼珪酸塩ガラス)などの珪酸塩ガラスでも良い。また、絶縁膜110を構成する多層膜のうちある絶縁層は、窒化シリコン(Si
3N
4)または、炭化シリコン(SiC)からなる場合もある。絶縁膜110の内部には配線120を設けてもよい。配線120は、複数の配線層がプラグを介して接続された多層配線であってもよい。
図1(b)には、配線120を2層とした例を示したが、3層以上の多層配線としてもよい。配線120には銅やアルミニウム、タングステン、タンタル、チタン、ポリシリコンなどの導電材料を用いることができる。
【0018】
受光素子1は少なくとも1つの導光部111を有し、単数の導光部111が複数の光電変換部101、102の上に跨って設けられている。導光部111は光電変換部101、102とZ方向において並んでいる。Z方向は撮像面に垂直な方向で有り得る。Y方向はX方向およびZ方向に直交する。導光部111は、導光部111に入射した光を導光部111内に閉じ込めて、光電変換部101、102まで伝搬させる機能を有する。
【0019】
導光部111は絶縁膜110で囲まれている。つまり、XY面内において導光部111の周囲に絶縁膜110が位置する。導光部111の屈折率を絶縁膜110の屈折率と異ならせることで、導光部111と絶縁膜110の界面での反射により、導光部111に入射した光を光電変換部101、102へ導くことができる。導光部111の屈折率を絶縁膜110の屈折率より高くすることで、全反射を生じさせることができるため、反射効率を向上することができる。
【0020】
導光部111を、導光部111および絶縁膜110よりも屈折率の低い低屈折率領域(例えばエアギャップ)で囲むこともできる。このような構成では、導光部111と低屈折率領域との界面での全反射により、導光部111に入射した光を光電変換部101、102へ導くことができる。また、導光部111の側面を金属などの反射体で囲むこともできる。このような構成では、金属反射により、導光部111に入射した光を光電変換部101、102へ導くことができる。低屈折率領域や反射体を設ける場合、導光部111の屈折率は絶縁膜110の屈折率と異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0021】
導光部111の材料は、有機材料(樹脂)でもよいし、無機材料でもよいが、可視光領域において、より透過率および屈折率が高い材料を選択するとよい。また、信頼性の面で、耐湿性や耐衝撃性も必要である。これらのことを勘案すると、樹脂としては、シロキサン系樹脂やポリイミド系樹脂等が挙げられる。また、無機材料としては、窒化シリコン(Si
XN
Y)、酸窒化シリコン(Si
XO
YN
Z)、酸化チタン(TiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)が好適である。特に、プラズマCVD法や熱CVD法などで容易に形成できる窒化シリコンは非常に好適である。導光部111は単一の材料で構成されていてもよいし、複数の材料で構成されていてもよい。
【0022】
導光部111、絶縁膜110の材料として例示した材料の屈折率の大まかな値を挙げる。酸化シリコンは1.4〜1.5、酸窒化シリコンは1.6〜1.9、窒化シリコンは1.8〜2.3、酸化チタンは2.5〜2.7、BSG、PSG、BPSGは1.4〜1.6である。上記した値は一例であって、同じ材料であっても、成膜方法を変更することによって、組成比や、材料の密度や空隙率が変化するため、屈折率を適宜設定することが可能である。なお、一般的な樹脂の屈折率は1.3〜1.6、高屈折率樹脂でも1.6〜1.8であるが、金属酸化物等の高屈折率無機材料を含有させることにより、実効的な屈折率を樹脂のみの場合よりも高くすることができる。樹脂に含有させる高屈折率無機材料としては、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ハフニウム等が挙げられる。
【0023】
受光素子1の他の構成について説明するが、これらは適宜変更することができる。導光部111および絶縁膜110の上に渡って高屈折率膜113が設けられている。高屈折率膜113は絶縁膜110の屈折率よりも高い屈折率を有している。高屈折率膜113は導光部111と同じ材料で構成することもできる。その場合、高屈折率膜113と導光部111の境界が、絶縁膜110の上面の高さと同じ高さに位置するとみなすことができる。
【0024】
高屈折率膜113の上には低屈折率膜114を挟んで層内レンズ115が設けられている。層内レンズ115を省略する場合、層内レンズ115の代わりに平坦なパッシベション膜を層内レンズ115の位置に配置することもできる。低屈折率膜114は層内レンズ115及び高屈折率膜113(あるいは導光部111)の少なくとも一方よりも低い屈折率を有する。低屈折率膜114は層内レンズ115と導光部111との距離を調節する機能、平坦化の機能、光の屈折による集光機能の少なくともいずれかを有し得る。層内レンズ115の上には平坦化膜116を介して波長選択部117が設けられている。波長選択部117はカラーフィルタやダイクロイックミラーであり、ベイヤー配列などに従って、受光領域21の受光素子1毎に異なる波長透過特性を有している。波長選択部117の上にはマイクロレンズとして形成された集光部118が設けられている。複数の光電変換部101、102に、単数の導光部111、単数の層内レンズ115、単数の波長選択部117、単数の集光部118が対応する。
【0025】
なお、以下の説明では、「絶縁膜110の屈折率」を絶縁膜110の或る絶縁層の屈折率として説明する。また「導光部111の屈折率」を導光部111の或る部分を成す材料の屈折率として説明する。導光部111の或る部分の屈折率は、絶縁膜110のある絶縁層の屈折率より高い。ただし、絶縁膜110は導光部111の或る部分の屈折率よりも高い屈折率を有する絶縁層を含みうる。絶縁膜110の大部分が導光部111の大部分の屈折率よりも高いことが好ましい。導光部111の或る部分の屈折率よりも高い屈折率を有する絶縁層は導光部111の或る部分の屈折率よりも低い屈折率を有する絶縁層よりも薄いことが好ましい。
【0026】
本発明において単に屈折率という場合には絶対屈折率を意味している。屈折率は波長によって異なるが、少なくとも光電変換部101で信号電荷を生成し得る光の波長に対する屈折率である。光電変換部で最も多く光電変換される光の波長を基準にすることが好ましい。光電変換装置10がカラーフィルタ等の波長選択部を有している場合には、当該波長選択部を透過した光の波長、特に主透過波長を用いることがより好ましい。特に、550nm付近にピークを有する緑色のカラーフィルタを有する受光素子1を基準にすることが好ましい。なお、波長選択部の選択性は不完全であってもよい。つまり、波長選択部にて選択された波長の透過率は100%未満であってよいし、波長選択部にて選択されない波長の透過率は0%でなくてもよい。
【0027】
図2を用いて、導光部111の構造の好ましい形態についてより詳細に説明する。
図2において、絶縁膜110は低屈折率絶縁層1101、1103、1105、1107と、高屈折率絶縁層1102、1104、1106、1108とが、
図2に示すように交互に積層されている。低屈折率絶縁層1101、1103、1105、1107は複数の配線層かららなる配線120の層間絶縁層として機能し、酸化シリコン系の材料で構成される。高屈折率絶縁層1102、1104、1106、1108は配線120に含まれる銅の拡散防止層として機能し、窒化シリコン系または炭化シリコン系の材料で構成される。低屈折率絶縁層1101、1103、1105、1107の各々は、隣接する高屈折率絶縁層1102、1104、1106、1108よりも低い屈折率と大きい厚みを有する。
【0028】
導光部111は絶縁膜110の各絶縁層で囲まれている。導光部111は低屈折率部206と高屈折率部207とを含む。高屈折率部207の屈折率は、低屈折率部206の屈折率はよりも高い。
【0029】
導光部111を構成する高屈折率部207は、それを囲む低屈折率絶縁層1101、1103、1105、1107よりも高い屈折率を有しうる。これによって、低屈折率絶縁層1101、1103、1105、1107と高屈折率部207との界面で全反射を生じさせることができる。高屈折率絶縁層1102、1104、1106、1108の屈折率は高屈折率部207の屈折率よりも高くてもよい。上述のように、高屈折率部207と絶縁膜110との間に、高屈折率部207および絶縁膜110よりも低い屈折率を有する低屈折率領域や反射体を設けることでも導光部111を構成できる。その場合には、高屈折率部207は絶縁膜110の屈折率よりも高くする必要はない。
【0030】
導光部111の高屈折率部207が複数の光電変換部101、102の上に位置している。光電変換部101の上の高屈折率部207と、光電変換部102上の高屈折率部207は連続していてもよいし、非連続であってもよい。
【0031】
分離部109の上には低屈折率部206が位置している。低屈折率部206は、絶縁膜110の屈折率と同じかそれよりも低い屈折率を有しうる。低屈折率部206の屈折率は、高屈折率絶縁層1102、1104、1106、1108の屈折率よりも低く、さらに、低屈折率絶縁層1101、1103、1105、1107の屈折率よりも低い。低屈折率部206は固体であっても液体であってもよいが、気体または真空空間であることが好ましい。気体または真空空間としての低屈折率部206の可視光領域における屈折率は1.0である。したがって、気体または真空空間としての低屈折率部206は、可視光領域において1.4〜2.4の範囲の屈折率を有する絶縁層で構成された絶縁膜110よりも十分に低い屈折率を有することができる。低屈折率部206は、その内部を光が伝搬する可能性があるが、低屈折率部206内を伝搬する光は非常に少ないか、無い。しかし、低屈折率部206の存在は、導光部111内における光の挙動を制御する上で非常に重要である。
【0032】
光電変換部101、102が並ぶX方向において、低屈折率部206の両側には、高屈折率部207が位置する。詳細には、高屈折率部207は、その一部であって光電変換部101の上に位置する第1部分2071と、その別の一部であって光電変換部102の上に位置する第2部分2072と、を含む。従って、低屈折率部206は、第1部分2071と第2部分2072の間に設けられていることになる。また、第1部分2071と第2部分2072の各々が導光部111を成すため、低屈折率部206はX方向において導光部111の高屈折率部207に挟まれているといえる。第1部分2071と第2部分2072の形状は、分離部109上に規定されたY−Z面に対して面対称でありうる。
【0033】
低屈折率部206はZ方向に延びた形状を有する。そして、低屈折率部206のX方向における幅は、Z方向に沿って分離部109から離れるほど小さくなる。
【0034】
図3を用いて、低屈折率部206の形状をより詳細に説明する。
図3にはZ方向における位置(分離部109からの高さ)をH1、H2、H3、H4で示している。H1は導光部111の入射端201の近傍における高さである。H2、3は導光部111の入射端201と出射端202の間における高さである。H4は導光部111の出射端202の近傍における高さである。各位置H1〜4の分離部109からの距離は、H1>H2>H3>H4の関係にある。位置H1〜H4を示す線を引き出す形で、位置H1〜H4の各々における受光素子1のZ方向に垂直な面での断面形状を記載している。
【0035】
位置H3での低屈折率部206のX方向における幅WX3は、位置H3よりも分離部109に近い位置H4での低屈折率部206のX方向における幅WX4よりも、小さい(WX3<WX4)。本例では、低屈折率部206のX方向における幅は分離部109から離れるにしたがって単調に減少するが、段階的に減少してもよいし、途中で増加してもよい。このように分離部109から離れた位置で低屈折率部206の幅を小さくすることで、低屈折率部206へ入射する光を減少することができる。そのため、低屈折率部206における光の損失を低減し、より多くの光を光電変換部101、102へ導くことができる。
【0036】
一方、高屈折率部207のX方向における幅は、Z方向に沿って光電変換部101、102から離れるほど大きくなる。位置H3での高屈折率部207(第1部分2071あるいは第2部分2072)のX方向における幅T3は、位置H3よりも分離部109に近い位置H4での高屈折率部207のX方向における幅T4よりも、大きい。本例では、高屈折率部207のX方向における幅は光電変換部101、102から離れるにしたがって単調に増加するが、段階的に増加してもよいし、途中で減少してもよい。このように光電変換部101、102から離れた位置で高屈折率部207の幅を大きくすることで、より多くの光を光電変換部101、102へ導くことができる。
【0037】
さらに、位置H3での低屈折率部206のY方向における幅WY3は、同位置H3での低屈折率部206のX方向における幅WX3よりも大きい。同様に、位置H4での低屈折率部206のY方向における幅WY4は、同位置H4での低屈折率部206のX方向における幅WX4よりも大きい。このように、低屈折率部206を分離部109の延在方向であるY方向に長くすることで、導光部111における光の振り分け精度を向上することができる。本例では、位置H3やH4における低屈折率部206の断面形状は略楕円形になっている。これは位置H3やH4における導光部111の断面形状が円形であることに起因するものである。すなわち、低屈折率部206の断面形状は、導光部111の断面形状をX方向において圧縮した形状を有し得る。導光部111の断面形状が略正方形である場合には、低屈折率部206の断面形状は略長方形を有し得る。
【0038】
分離部109の上には、中間部203が位置する。中間部203のX方向における幅は、X方向における分離部109の幅と同じかそれよりも小さいことが好ましい。
【0039】
中間部203は分離部109に沿って延びている。中間部203の少なくとも一部は低屈折率部206の上に位置する。つまり、X方向において、中間部203と分離部109との間に低屈折率部206が位置する。中間部203は、光電変換部101の上に位置する高屈折率部207(第1部分2071)と、光電変換部102の上に位置する高屈折率部207(第2部分2072)とのつなぎ目(シーム)である。この中間部203は光電変換部101、102の上の高屈折率部207(第1部分2071、第2部分2072)と同じ材料で構成されうる。しかし、中間部203は、光電変換部101、102の上の高屈折率部207(第1部分2071、第2部分2072)とは異質な部分であり、例えば密度、組成が異なる部分である。そのため、断面SEMなどで観察すると、中間部203は、光電変換部101、102の上の高屈折率部207とは異なる明るさで観察することができる。そして、中間部203は、光電変換部101、102の上の高屈折率部207とは屈折率も異なっている。そのため、中間部203は光電変換部101の上に位置する高屈折率部207と、光電変換部102の上に位置する高屈折率部207との間で光に対する障壁として機能しうる。中間部203は光電変換部101、102の上の高屈折率部207よりも低い屈折率、密度を有し得る。中間部203は低屈折率部206よりも高い屈折率を有することが好ましい。中間部203の上には凹部205が設けられている。凹部の側面は高屈折率部207で凹部の底面は中間部203で構成されうるが、その凹部の側面と底面の境界は明確でなくてよい。代わりに、凹部205の内面が高屈折率部207のみあるいは中間部203のみで構成され得る。凹部205の内部には導光部111の上に位置する高屈折率膜113あるいは低屈折率膜114の一部が位置しうる。凹部205は、その中に導光部111の屈折率よりも低い屈折率を有する部材(例えば低屈折率膜114)が配される場合に、発散レンズとして機能し得る。そのため、凹部205に入射した光は低屈折率部206を避けて、高屈折率部207の第1部分2071あるいは第2部分2072へ振り分けられ、光電変換部101、102へ導かれる。そのため、光利用効率が向上する。
【0040】
なお、
図2に示した符号204は後述する製造工程で用いられる遮蔽部材が存在する位置を示している。遮蔽部材204は製造工程中のみで用いられ、製造工程の途中で除去される。しかし、遮蔽部材204を光電変換装置の一部として残存させることも可能である。凹部205、中間部203、低屈折率部206および分離部109は遮蔽部材204の下に位置する。
【0041】
図3に示すように、Z方向において、分離部109の上方の領域について、位置H2では低屈折率部206は存在せずに、中間部203で占められている。位置H1では低屈折率部206も中間部203も存在せずに、凹部205で占められている。また、
図3に示すように、Y方向において、分離部109の上方の位置H3では、低屈折率部206が中間部203に挟まれている。
【0042】
次に受光素子1における光束の経路について説明する。受光素子1内部の光束の経路は、フレネル回折を考慮した物理光学的シミュレーションで波面形状を求めるが、理解しやすくするため幾何光学的に説明する。
【0043】
光電変換部101、102の寸法(0.1〜10μm)からすると光電変換部101、102のはるか遠方にある撮影レンズ(不図示)の射出瞳から光が光電変換装置10に入射する。射出瞳の或る一部(例えば右半分)から、
図1(a)に示した集光部118に入射する光束Lは、波長選択部117、層内レンズ115を透過し、
図2、
図3において矢印で示す光路を取る。そして、導光部111内の第1部分2071に入射する。同様に、撮影レンズ射出瞳の別の一部(例えば左半分)から、同受光素子1の集光部118に入射する光束L’(不図示)は、導光部111内の第2部分2072に光が入射する。このように、1つの集光部に対して複数の光電変換部101、102を設けることで射出瞳を分割している。
【0044】
そして、光束Lの一部は中間部203で反射し、さらに導光部111の絶縁膜110との界面や高屈折率部207と低屈折率部206との界面とで反射されて、下部にある光電変換部101に導かれる。一方、光束L’は、上記と反対方向で、下部にある光電変換部102に導かれる。瞳分割された2つの光束は、中間部203および低屈折率部206の少なくとも一方が隔壁となり2つに分離されて光電変換部101あるいは光電変換部102に導かれる。そのため、クロストークの発生が抑制され、精度よく光を複数の光電変換部101、102に振り分けることができる。
【0045】
このように、導光部111に挟まれた低屈折率部206の上部の幅(WX3)を下部の幅(WX4)よりも小さくすることで、低屈折率部206での光の損失を小さくできる。その結果、入射光を有効利用しつつ、複数の光電変換部へ光を適切に振り分けることができる。さらに、
図3に示すように、高屈折率部207の形状は半円形から三日月形に徐々に変形するので、高屈折率部207中の波面も徐々に変換され、光の伝搬が遮断されることなく、下部にある光電変換部101あるいは光電変換部102に到達する。したがって、高屈折率部207内での光の損失も低減される。
【0046】
次に、
図2、3に示した構造を有する光電変換装置10の製造方法を
図4を用いて説明する。分離部109を介して複数の光電変換部101、102が配された基板100を形成する(
図4(a))。次に、基板100の上に多層配線プロセスにより絶縁膜110および配線120を形成する(
図4(b))。配線120を避けて絶縁膜110をエッチングすることで、絶縁膜110の光電変換部101、102上に位置する部分に、開口部130を形成する(
図4(c))。開口部130に犠牲部材135を埋め込み、必要に応じて犠牲部材135の上面を平坦化する(
図4(d))。犠牲部材135の上面から絶縁膜110の上面に跨って、遮蔽部材204となる部材140を形成する(
図4(e))。部材140の形成に当たっては部材140の材料からなる膜を成膜し、この膜をレジストを用いたエッチングあるいはダマシン法によりパターニングすることで形成可能である。部材140は、分離部109に沿ってパターニングするとよい。次に、犠牲部材135を開口部130から除去する。これにより部材140の下に空間150が形成され、部材140は遮蔽部材204となる(
図4(f))。遮蔽部材204は絶縁膜110の上に位置する部分で支えられて橋桁状になっている。遮蔽部材204の存在下で開口部130の側面や底面上に高屈折率部207となる材料(高屈折率材料)を堆積させる。高屈折率材料の堆積を進めていくことにより、高屈折率部207が形成される。この時、遮蔽部材204の下方では遮蔽部材204によって高屈折率材料の供給が妨げられる。そのため、高屈折率材料が欠乏した領域にボイドが形成される。このボイドが低屈折率部206となる(
図4(g))。なお、
図4(g)では、高屈折率部207の形成途中における、高屈折率材料で形成された膜(高屈折率膜160)の形状を示している。開口部130の側面と底面に対して異方的に堆積が進行する。具体的には、開口部130の側面での堆積が底面での堆積よりも速く進むことにより、開口部130の上部において、ボイドが形成された状態で開口部130が閉塞するのである。また、遮蔽部材204の直下では高屈折率材の原料の供給が不足することにより、遮蔽部材204の直下にも空隙170が形成される。この空隙170の下には開口部130X方向において対向する側面から堆積が進行して高屈折率膜の間隔が狭くなっていく。そして高屈折率膜同士が接触することで中間部203が形成される。高屈折率膜の間隔が狭くなるにつれて、高屈折率材料の原料(ガス)の供給が減少するため、中間部203の密度は同じ高屈折率材料からなる他の部分(高屈折率部207)に比べて小さくなると考えられる。
【0047】
その後、遮蔽部材204を除去する(
図4(h))。遮蔽部材204を残しておくことも可能であるが、遮蔽部材204の存在は光の損失や散乱を生じるため、これを除去しておくことが好ましい。遮蔽部材204の除去にはドライエッチングやウェットエッチングを使用でき、他にはCMP法などの機械的な除去方法も使用できる。遮蔽部材204の直下の空隙170は、遮蔽部材204が除去されることで上部が解放され、凹部205となる。
【0048】
遮蔽部材204の材料は、高屈折率材料を開口部130に埋め込む工程(
図4(g))において、下部にある光電変換部101、102に金属汚染物質が拡散しないよう、スパッタされにくい材料であることが望ましい。具体的には、プラズマCVD法で高屈折率材料を堆積する場合は、高融点金属であるタングステンやタンタル、またその化合物などが特に好ましい。塗布やリフローで高屈折率部207を形成する場合は、耐薬品性と耐熱性を兼備した樹脂や窒化シリコン膜や酸化シリコン膜、アルミナ、酸化チタンなどの無機材料を遮蔽部材204に使用することが望ましい。
【0049】
図5(a)は遮蔽部材204を使用しない場合の例を示す。高屈折率材料の開口部130内面への堆積に伴ってボイドとしての低屈折率部206が形成される。そして、位置H4よりも位置H3、位置H3よりも位置H2において、低屈折率部206の幅は小さくなる。これは、高屈折率材料の原料(ガス)は、その多くが開口部130の入口付近で消費されて高屈折率材料となり、開口部130の底部付近に到達する原料は相対的に少なくなってしまうことによる。つまり、高屈折率材料の原料の供給量に応じて、堆積によって形成される高屈折率膜の厚みは開口部130の入口付近で大きく、開口部130の底付近で小さくなる。
【0050】
このように、遮蔽部材204を用いずとも低屈折率部206のX方向における幅をZ方向における位置に応じて異ならせることができる。しかし、遮蔽部材204を用いない場合には、位置H3や位置H4における低屈折率部206の断面形状を制御することが困難である。具体的には位置H3においては、低屈折率部206のX方向における幅WX3とY方向における幅WY3が等しくなる(WX3=WY3)。同様に、位置H4においては、低屈折率部206のX方向における幅WX4とY方向における幅WY4が等しくなる(WX4=WY4)。これは、開口部130の側壁から等方的に高屈折率材料が堆積するためである。開口部130のZ方向に垂直な断面形状が円形であれば、低屈折率部206のZ方向に垂直な断面形状も円形となる。これに対して、開口部130の形状を、X方向よりもY方向に長い断面形状、例えば楕円形や長方形に変更することもできる。そうすれば、遮蔽部材204を用いずとも、低屈折率部206の形状について、X方向における幅WY3やWY4を、X方向における幅WX3やWX4よりも大きくすることができる。ただし、このように開口部130の形状を制御する方法では、高屈折率部207の形状が感度向上や光の振り分けに不利となる場合がある。そのため、遮蔽部材204を用いて低屈折率部206の形状を制御することが好ましい。
【0051】
図5(b)は、開口部130の径を、開口部130の入口付近で不連続に大きくしたものである。これにより高屈折率材料の開口部130への埋め込み性が向上する。それに伴って、低屈折率部206の高さは減少し、低屈折率部206による光の損失を低減することができる。
【0052】
図5(c)、(d)は、遮蔽部材204の形状を変更した例である。遮蔽部材204の下面を下凸形状にしておくことで、遮蔽部材204を除去した際に、遮蔽部材204の下面の形状に応じた凹部205が高屈折率部207に転写される。
図5(d)の例では、遮蔽部材204の上面を上凸形状にしておくことで、遮蔽部材204に堆積した高屈折率材料が開口部130への埋め込みを阻害しないようにしている。また、
図5(d)の例では、遮蔽部材204を除去せずに残存させても、遮蔽部材204の上面での反射光が導光部111へ導かれる構成となる。そのため、遮蔽部材204を残存させても、遮蔽部材204よる光の損失を低減できる構成となる。
【0053】
1つの受光素子1が有する光電変換部の数は3つ以上であってもよい。
図6の右下の図は、1つの受光素子1において互いに分離部を介して分離された4つの光電変換部1011、1021、1012、1022を設けた形態である。
図6の右下の図に示した光電変換部1011と光電変換部1012は、分離部(不図示)を介して、
図6の左の図において光電変換部101として示した領域に配置される。
図6の右下の図における光電変換部1021と光電変換部1022は、分離部(不図示)を介して、
図6の左の図において光電変換部102として示した領域に配置される。また、1つの受光素子1が有する導光部111は、
図3の形態のようにZ方向に平行な軸に対して2回回転対称であってもよいが、
図6のようにZ方向に平行な軸に対して4回回転対称であってもよい。分離部109は略十字形状になっており、それに合わせて遮蔽部材204も略十字形状としている。略十字形状の遮蔽部材204を用いることで、Z方向に対して垂直な面での低屈折率部206の断面形状もまた、略十字型となっている。凹部205もまた、略十字型となっている。光電変換部1011と光電変換部1021、光電変換部1012と光電変換部1022がそれぞれ並ぶX方向において、低屈折率部206の幅は分離部109から離れるほど小さくなっている。また、光電変換部1011と光電変換部1012、光電変換部1021と光電変換部1022が並ぶY方向において、低屈折率部206の幅はX方向における幅よりも大きくなっている。
【0054】
以上説明した実施形態の要旨は、次のようになる。光電変換装置10の受光素子1は、光電変換部101および光電変換部102と、光電変換部101と光電変換部102の間に位置する分離部109とを備える。また、受光素子1は、少なくとも1つの絶縁層1105を含む絶縁膜110で囲まれ、光電変換部101と光電変換部102の上に跨って設けられた導光部111を備える。光電変換部101と光電変換部102が並ぶ方向をX方向とし、光電変換部101および光電変換部102と導光部111が並ぶ方向をZ方向とする。導光部111は、絶縁層1105の屈折率と同じかそれよりも低い屈折率を有する低屈折率部206と、低屈折率部206の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率部207と、を含む。低屈折率部206は、分離部109の上に位置し、かつ、X方向において高屈折率部207に挟まれている。Z方向において分離部109から離れた位置H3での低屈折率部206のX方向における幅WX3は、位置H3よりも分離部109に近い位置H4での低屈折率部206のX方向における幅WX4より小さい。X方向およびZ方向に直交する方向をY方向として、位置H3での低屈折率部206のY方向における幅WY3は、位置H3での低屈折率部206のX方向における幅WX3より大きい。このような構成によれば、入射光を有効利用しつつ、複数の光電変換部へ光を適切に振り分けることができる。