特許第6425440号(P6425440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6425440-撮像装置及び撮像方法 図000002
  • 特許6425440-撮像装置及び撮像方法 図000003
  • 特許6425440-撮像装置及び撮像方法 図000004
  • 特許6425440-撮像装置及び撮像方法 図000005
  • 特許6425440-撮像装置及び撮像方法 図000006
  • 特許6425440-撮像装置及び撮像方法 図000007
  • 特許6425440-撮像装置及び撮像方法 図000008
  • 特許6425440-撮像装置及び撮像方法 図000009
  • 特許6425440-撮像装置及び撮像方法 図000010
  • 特許6425440-撮像装置及び撮像方法 図000011
  • 特許6425440-撮像装置及び撮像方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6425440
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】撮像装置及び撮像方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/28 20060101AFI20181112BHJP
   G02B 7/36 20060101ALI20181112BHJP
   G03B 13/36 20060101ALI20181112BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   G02B7/28 N
   G02B7/36
   G03B13/36
   H04N5/232 480
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-145279(P2014-145279)
(22)【出願日】2014年7月15日
(65)【公開番号】特開2016-21016(P2016-21016A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2017年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 直樹
【審査官】 渡邉 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−025108(JP,A)
【文献】 特開昭63−125910(JP,A)
【文献】 特開平08−005896(JP,A)
【文献】 特開2006−301378(JP,A)
【文献】 特開2003−005024(JP,A)
【文献】 特開2002−318341(JP,A)
【文献】 特開2014−038197(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0236198(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28 − 7/40
G03B 13/36
H04N 5/222− 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
前記撮像素子から出力される撮像信号の特定の領域の信号を用いて前記撮像信号より特定の周波数成分を抽出し、前記撮像信号のコントラストを示す焦点評価値を算出する評価値算出手段と、
フォーカスレンズを所定値よりも小さい単位移動量で往復移動させ、前記焦点評価値の変化に基づいて焦点検出を行う第1の焦点調節手段と、
前記フォーカスレンズを前記焦点評価値が大きくなる方向に前記所定値以上の単位移動量で移動させ、前記焦点評価値の変化に基づいて焦点検出を行う第2の焦点調節手段と、
前記第1の焦点調節手段及び前記第2の焦点調節手段のいずれか一方によって得られた合焦位置にて前記焦点評価値が所定の閾値以上変化するか否かを監視する監視手段と、を有する撮像装置であって、
前記監視手段にて前記焦点評価値が所定の閾値以上変化した際に前記監視手段による監視状態から前記第1の焦点調節手段による焦点調節状態に移行する場合、前記第2の焦点調節手段によって得られた合焦位置にて行われる監視状態における前記所定の閾値は、前記第1の焦点調節手段によって得られた合焦位置にて行われる監視状態における前記所定の閾値よりも大きいことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第2の焦点調節手段によって今回得られなかった合焦位置にて行われる監視状態における前記所定の閾値は、前記第2の焦点調節手段によって今回得られた合焦位置にて行われる監視状態における前記所定の閾値よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第2の焦点調節手段によって今回得られなかった合焦位置にて行われる監視状態における合焦位置は、前記第1の焦点調節手段又は第2の焦点調節手段によって過去に得られた合焦位置であることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記監視手段による監視状態は、動画撮影状態にて行われていることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記撮像装置のブレを検出するためのブレ検出手段と、
前記ブレ検出手段の出力に基づき、前記撮像装置のブレの変化傾向を検出するブレ変化傾向検出手段と、を備え、
前記監視手段にて前記焦点評価値が所定の閾値以上変化した際に前記ブレ変化傾向検出手段から出力されるブレ量の傾きが所定値よりも大きい場合、前記監視手段による監視状態から前記第1の焦点調節手段による焦点調節状態に移行しないことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
撮像素子と、
前記撮像素子から出力される撮像信号の特定の領域の信号を用いて前記撮像信号より特定の周波数成分を抽出し、前記撮像信号のコントラストを示す焦点評価値を算出する評価値算出手段と、
フォーカスレンズを所定値よりも小さい単位移動量で往復移動させ、前記焦点評価値の変化に基づいて焦点検出を行う第1の焦点調節手段と、
前記フォーカスレンズを前記焦点評価値が大きくなる方向に前記所定値以上の単位移動量で移動させ、前記焦点評価値の変化に基づいて焦点検出を行う第2の焦点調節手段と、
前記第1の焦点調節手段及び前記第2の焦点調節手段のいずれか一方によって得られた合焦位置にて撮影シーンが変化するか否かを監視する監視手段と、を有する撮像装置であって、
前記監視手段にて前記撮影シーンが変化した際に前記監視手段による監視状態から前記第1の焦点調節手段による焦点調節状態に移行する場合、前記第2の焦点調節手段によって得られた合焦位置にて行われる監視状態における撮影シーンの変化を判定するための所定の閾値は、前記第1の焦点調節手段によって得られた合焦位置にて行われる監視状態における前記所定の閾値よりも大きいことを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
前記監視手段にて前記被写体の画像認識がなされ、前記認識された被写体が所定量以上だけ移動した際に前記監視手段による監視状態から前記第1の焦点調節手段による焦点調節状態に移行する場合、前記第2の焦点調節手段によって得られた合焦位置にて行われる監視状態における前記所定の閾値は、前記第1の焦点調節手段によって得られた合焦位置にて行われる監視状態における前記所定の閾値よりも大きいことを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項8】
撮像素子から出力される撮像信号の特定の領域の信号を用いて前記撮像信号より特定の周波数成分を抽出し、前記撮像信号のコントラストを示す焦点評価値を算出する評価値算出工程と、フォーカスレンズを所定値よりも小さい単位移動量で往復移動させ、前記焦点評価値の変化に基づいて焦点検出を行う第1の焦点調節工程と、前記フォーカスレンズを前記焦点評価値が大きくなる方向に前記所定値以上の単位移動量で移動させ、前記焦点評価値の変化に基づいて焦点検出を行う第2の焦点調節工程と、前記第1の焦点調節工程及び前記第2の焦点調節工程のいずれか一方によって得られた合焦位置にて前記焦点評価値が所定の閾値以上変化するか否かを監視する監視工程と、を有する撮像方法であって、
前記監視工程にて前記焦点評価値が所定の閾値以上変化した際に前記監視工程による監視状態から前記第1の焦点調節工程による焦点調節状態に移行する場合、前記第2の焦点調節工程によって得られた合焦位置にて行われる監視状態における前記所定の閾値は、前記第1の焦点調節工程によって得られた合焦位置にて行われる監視状態における前記所定の閾値よりも大きいことを特徴とする撮像方法。
【請求項9】
撮像素子から出力される撮像信号の特定の領域の信号を用いて前記撮像信号より特定の周波数成分を抽出し、前記撮像信号のコントラストを示す焦点評価値を算出する評価値算出工程と、
フォーカスレンズを所定値よりも小さい単位移動量で往復移動させ、前記焦点評価値の変化に基づいて焦点検出を行う第1の焦点調節工程と、
前記フォーカスレンズを前記焦点評価値が大きくなる方向に前記所定値以上の単位移動量で移動させ、前記焦点評価値の変化に基づいて焦点検出を行う第2の焦点調節工程と、
前記第1の焦点調節工程及び前記第2の焦点調節工程のいずれか一方によって得られた合焦位置にて撮影シーンが変化するか否かを監視する監視工程と、を有する撮像方法であって、
前記監視工程にて前記撮影シーンが変化した際に前記監視工程による監視状態から前記第1の焦点調節工程による焦点調節状態に移行する場合、前記第2の焦点調節工程によって得られた合焦位置にて行われる監視状態における撮影シーンの変化を判定するための所定の閾値は、前記第1の焦点調節工程によって得られた合焦位置にて行われる監視状態における前記所定の閾値よりも大きいことを特徴とする撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、撮像方法に関し、より詳しくはデジタルスチルカメラおよびデジタルビデオカメラに利用されるオートフォーカスに関する技術である。
【背景技術】
【0002】
従来、オートフォーカス装置は、撮像素子により、被写体像を光電変換して得られた映像信号より画面の鮮鋭度を検出しAF評価値として、それが最大となるようにフォーカスレンズ位置を制御して、焦点調節を行うようにした方式が主流である。
【0003】
AF評価値としては、一般にある帯域のバンドパスフィルタ−により抽出された映像信号の高周波成分のレベルを用いている。これは、通常の被写体像を撮影した場合、ピントが合ってくるにしたがってAF評価値のレベルは大きくなり、そのレベルが最大になる点が合焦位置となる。
【0004】
その後、撮影しているシーンに変化が無ければフォーカスレンズを停止させ、AF評価値や輝度等を監視した状態(以後、監視状態)となる。ただし、この監視状態は映像信号を基にAF評価値を算出しているため、被写体が画面内に出入りするような状況ではAF評価値が変化することにより、シーンが変化したと判断してしまう場合がある。その影響に合焦位置を探す動作に入ってしまうことがある(特許文献1)。
【0005】
たとえば、微小駆動動作や、山登り動作など、複数の焦点調整方式を使い分けて焦点調整を行う場合には次のよう課題がある。
【0006】
微小駆動動作は、フォーカスレンズを断続的に単位移動量が所定値よりも小さく往復移動させてAF評価値を取得し、値が大きくなる方向へ制御する動作である。
【0007】
山登り動作は、特定の方向にフォーカスレンズを単位移動量が所定値よりも大きく動かしながらAF評価値を取得し得られた複数のAF評価値の形状から合焦位置を特定する動作である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−38197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のようなシーン変化のある状況の場合、最初に微小駆動動作を行い合焦位置の方向や合焦位置の特定を行う。
【0010】
しかし、合焦位置特定の間に被写体が画面外に移動している場合、背景のコントラストが低いとAF評価値の変化が検出しにくいため合焦位置やその方向の特定に時間がかかる。
【0011】
そのため、途中で山登り動作に遷移して広い範囲で合焦位置を探すようになるが、前記のようなシーン変化判定により本来期待する合焦位置ではない位置に停止したり、合焦位置への追従動作が不安定で見苦しいものになってしまう場合があった。
【0012】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、画面内に被写体が出入りするような状況でAF評価値が期待した変化傾向を示さない場合であっても、安定したピント追従を実現する撮像装置、撮像方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
その課題を解決するために、本発明では、撮像素子と、前記撮像素子から出力される撮像信号の特定の領域の信号を用いて前記撮像信号より特定の周波数成分を抽出し、前記撮像信号のコントラストを示す焦点評価値を算出する評価値算出手段と、フォーカスレンズを所定値よりも小さい単位移動量で往復移動させ、前記焦点評価値の変化に基づいて焦点検出を行う第1の焦点調節手段と、前記フォーカスレンズを前記焦点評価値が大きくなる方向に前記所定値以上の単位移動量で移動させ、前記焦点評価値の変化に基づいて焦点検出を行う第2の焦点調節手段と、前記第1の焦点調節手段及び前記第2の焦点調節手段のいずれか一方によって得られた合焦位置にて前記焦点評価値が所定の閾値以上変化するか否かを監視する監視手段と、を有する撮像装置であって、
前記監視手段にて前記焦点評価値が所定の閾値以上変化した際に前記監視手段による監視状態から前記第1の焦点調節手段による焦点調節状態に移行する場合、前記第2の焦点調節手段によって得られた合焦位置にて行われる監視状態における前記所定の閾値は、前記第1の焦点調節手段によって得られた合焦位置にて行われる監視状態における前記所定の閾値よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上述の構成を有しているため、画面内に被写体が出入りするような状況でAF評価値が期待した変化傾向を示さない場合であっても安定したピント追従を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】撮像装置のシステム全体の構成を示すブロック図である。
図2】焦点調整動作の全体の流れを示すフローチャートである。
図3】微小駆動動作の流れを示すフローチャートである。
図4】山登り動作の流れを示すフローチャートである。
図5】AF評価値の監視処理の流れを示すフローチャートである。
図6】安定監視処理の流れを示すフローチャートである。
図7】焦点調整方式の決定処理の流れを示すフローチャートである。
図8】ブレ傾向検出処理の流れを示すフローチャートである。
図9】ブレ情報の変化傾向を示す説明図である。
図10】AF処理部の構成を示したブロック図である。
図11】AF評価値とレンズ位置の関係を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例1)
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
<撮像装置の全体構成>
まず、本発明の実施形態にかかる動画撮影機能のある撮像装置1の全体的な構成について説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる撮像装置1の構成を模式的に示したブロック図である。システム制御部115は、例えばCPU、RAMおよびROMを有する。
【0018】
そしてシステム制御部115は、ROMにあらかじめ記憶されたプログラムに従い、RAMを作業領域として用いながら、本発明の実施形態にかかる撮像装置1の全体の動作を制御する。なお、後述する各処理は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)として、主にシステム制御部115によって実行されるものとする。
【0019】
また、システム制御部115は、AF処理部105が算出した焦点評価値に基づいて合焦位置を特定し、フォーカスレンズ制御部104を制御することでフォーカスレンズを移動させ、自動焦点調整(AF)処理を実施する。焦点評価値は、測距領域内のコントラストの指標となる数値である。
【0020】
撮像レンズ100は、ズーム機能を備える従来一般の撮像レンズが適用できる。ズームレンズ制御部101は、焦点距離を変化させるズームレンズの駆動を制御する。絞り・シャッター制御部102は、光量を制御する絞りとシャッターの駆動を制御する。
【0021】
フォーカスレンズ制御部104は、撮像素子108上に焦点を合わせるためにフォーカスレンズの駆動を制御する。なお、ズームレンズ制御部101、絞り・シャッター制御部102とフォーカスレンズ制御部104は、レンズなどの光学要素、絞り・シャッターといった機構、これらを駆動するために必要な各種装置(いずれも図略)を含む。
【0022】
各種装置には、前記光学要素や前記機構を駆動するためのアクチュエータや、このアクチュエータを制御する回路や、D/A変換器などが含まれる。発光装置(ストロボ)106は、外部に向けて光を発することにより被写体輝度を調整する。
【0023】
EF処理部107は、システム制御部115から「フラッシュオン」の信号を受けると、発光装置(ストロボ)106を制御して発光させる。システム制御部115は、発光装置(ストロボ)106を発光させる必要があると判断した場合には、EF処理部107に「フラッシュオン」の信号を送る。
【0024】
撮像素子108には、入射光を電気信号に変換する受光手段又は光電変換手段が適用される。たとえば、撮像素子108は、CCDやCMOSイメージャなどの光電変換素子からなり、入射した光を光電変換して撮像信号(画像信号)を生成し出力することができる。
【0025】
撮像処理部109は、CDS回路と非線形増幅回路とA/D変換部とを含む。CDS回路は、撮像素子108の出力ノイズを、相関二重サンプリング方式により除去する。非線形増幅回路は、CDS回路によりノイズが除去された撮像信号に対して信号増幅(ゲイン制御)を行う。
【0026】
A/D変換部は、アナログ信号である撮像信号をデジタル信号に変換する。撮像素子108と撮像処理部109とが、被写体を撮像することにより撮像信号を取得する「撮像部」として機能する。
【0027】
画像処理部110は、撮像信号(すなわち画像データ)のガンマ補正や輪郭補正などの所定の画像処理を実施する。また、画像処理部110は、WB処理部111の制御に基づき、撮像信号のホワイトバランス処理を行う。
【0028】
フォーマット変換部112は、供給された撮像信号を、画像記録部114(後述)における記録媒体への記録や、操作表示部117(後述)における表示に適した形式に変換する。DRAM113は、高速な内蔵メモリ(たとえば、ランダムアクセスメモリ)である。
【0029】
DRAM113は、撮像信号を一時的に記憶できる記憶手段としての高速バッファに使用される。またDRAM113は、撮像信号の圧縮や伸張における作業用メモリなどとして使用される。
【0030】
画像記録部114は、撮像信号を記録できる。画像記録部114は、メモリカードなどの記録媒体とそのインターフェースからなる。
【0031】
AE処理部103は、撮像部(=撮像素子108および撮像処理部109)より得られた撮像信号に基づき、被写体の明るさに応じた測光値を算出する。すなわち、AE処理部103と撮像処理部109は、被写体撮像時の露出条件を検出する「露出条件検出部」として機能する。
【0032】
また、AE処理部103は、被写体輝度が低い場合などに、撮像信号を増幅させて適正露出を維持するための信号増幅量(ゲイン量)を決定する。換言すると、AE処理部103は、撮像信号を適正な露出に補正するための信号増幅量(ゲイン量)を決定する。
【0033】
そして、システム制御部115は、AE処理部103が算出した測光値に基づいて、絞りシャッター制御部102と撮像処理部109の非線形増幅回路とを制御する。このようにシステム制御部115は、露光量を自動的に調整する。換言すると、システム制御部115は、「露出条件検出部」が検出した露出条件を用いて、自動露出(AE)処理を実施する。
【0034】
AF処理部105より得られたAF評価値に基づいてシステム制御部115はフォーカスレンズ制御部115を制御し自動焦点調整(AF)処理を実施する。AF処理部105の詳細を図10に示す。撮像処理部109より得られた撮像信号は測距ゲート122にて画面の一部のみの撮像信号を抽出し、バンドパスフィルタ(BPF)123で所定の高周波成分のみを抽出し、検出(検波)部(DET)124にてピークホールドや積分等の処理を行う。なお本実施例中では積分処理した出力をAF評価値として使用する。
【0035】
AF処理部105は、撮像素子から出力される撮像信号の特定の領域の信号を用いて前記撮像信号より特定の周波数成分を抽出し、前記撮像信号のコントラストを示す焦点評価値を算出する評価値算出手段として機能する。
【0036】
また、AF処理部105はさらに、撮像信号がどの程度ピントが合っているかを示す合焦度を算出する。
【0037】
まず、測距ゲート122を通過した撮像信号は、ローパスフィルタ(LPF)125で高域周波成分が除去される。
【0038】
そして、ライン最大値部(Line Max)126で、水平1ラインの最大値を検出し、ライン最小値部(Line Min)127では、水平1ラインの最小値を検出する。
【0039】
水平1ラインの最大値と最小値との差分(最大値−最小値)を加算部128で算出し、ピークホールド部129で、測距ゲート122内のすべてのラインの最大値−最小値のピーク値MMを検出する。これは、ほぼ測距ゲート122内のコントラストの最大値に相当する。
【0040】
そして、測距ゲート122で抽出した撮像信号のうち検出部124で検出されたバンドパスフィルタ123のピークホールド値を除算部130にてピーク値MMで除することで算出する。なお、AF評価値は積分出力のためノイズ等の影響に対しては有利である半面、被写体の種類や撮像条件(たとえば、被写体輝度、照度、焦点距離など)により合焦位置での値が大きく変化する(図11(a))。
【0041】
一方、合焦度は正規化することにより、合焦位置では一定の値(図11(b)のMax)に近づき、ボケていくにつれて値が小さくなる傾向を示す(図11(b))。本実施例では、AF評価値と合焦度の特徴を用いて自動焦点調整処理を実施する。
【0042】
VRAM(画像表示用メモリ)116は、撮像信号などを記録できる。操作表示部117は、画像表示や操作補助のための表示やカメラ状態の表示を行うことができる。また、操作表示部117は、撮影時においては、撮影画面を表示することができる。メインスイッチ(メインSW)118は、本発明の実施形態にかかる撮像装置の電源をON/OFFするためのスイッチである。
【0043】
第一のスイッチ(SW1)119は、AFやAE等の撮影スタンバイ動作(撮影準備動作)を行うためのスイッチである。第二のスイッチ(SW2)120は、第一のスイッチ119が操作された後に、撮像を行うためのスイッチである。
【0044】
ブレ検出部121は振動ジャイロ等の角速度センサーで、そのセンサー出力に基づきシステム制御部115はブレ量を検出している。本実施例ではブレ検出方法として振動ジャイロ等の角速度センサーを用いているが、センサーを用いない画像検出による動きベクトル検出方式であっても適用可能である。
【0045】
<基本動作>
次に、本実施例における焦点調整動作の全体の流れについて図2のフローチャートを用いて説明する。
【0046】
本実施例中での焦点調整動作は動画記録中および待機中に継続して実施されるものとする。また、本実施例中におけるフローチャートはコンピュータプログラム(ソフトウェア)として、システム制御部115のROMに保持される。
【0047】
そして、メインスイッチ118が操作されることで電源が投入され、本発明の実施形態にかかる撮像装置1が起動した後に、主にシステム制御部115により実行されるものとする。
【0048】
まずステップS200にて、安定監視処理を実施する。この安定監視処理は手ブレやパンニング等、撮影者が撮像装置1を操作することによって生じるブレ状態を判断し、焦点調整動作が適切にできないと判断されるようなブレの状態の場合、安定化するまでブレの状態を監視する処理である。
【0049】
この処理の詳細については別途後述する。次にステップS201ではステップS200の安定監視処理の結果、次に遷移すべき状態が微小駆動動作であるか否かを判断する。ステップS201にて次の動作状態が微小駆動動作である場合はステップS202に進む。
【0050】
一方で、次の動作状態が微小駆動動作でない場合はステップS200に戻り、ブレ状態の監視を継続し安定化を待つ。
【0051】
次にステップS202では微小駆動動作を実施する。微小駆動動作とは、断続的に細かくフォーカスレンズを移動させ、得られたAF評価値の変化より合焦位置の方向および合焦位置を特定する焦点調整方法である。詳細については後述する。ステップS203、S204、S205ではステップS202の実行結果として、次にどの状態に遷移すべきかを判断する。
【0052】
具体的にはステップS203では先に述べた安定監視処理へ遷移するか否か、ステップS204では後述するAF評価値の監視処理へ遷移するか否か、ステップS205では後述する山登り動作へ遷移するか否かを判断する。ステップS203で安定監視処理へ遷移すると判断された場合は先に述べたステップ200に戻る。
【0053】
ステップS204でAF評価値の監視処理に遷移すると判断された場合はステップS210に進み、ステップS202で特定した合焦位置もしくは非合焦として中断したレンズ位置でのAF評価値を記憶し、後述するAF評価値の監視処理で使用する。
【0054】
ステップS205で山登り動作に遷移すると判断された場合はステップS206に進むが、該当しない場合はステップS202に戻り微小駆動動作を継続する。
【0055】
次にステップS206では山登り動作を実施する。山登り動作とは、連続的にフォーカスレンズを移動させ、得られた複数のAF評価値の変化より合焦位置を特定する焦点調整方法である。詳細については後述する。
【0056】
ステップS207、S208、S209ではステップS206の実行結果として、次にどの状態に遷移すべきかを判断する。具体的にはステップS207では先に述べた安定監視処理へ遷移するか否か、ステップS208では先に述べた微小駆動動作へ遷移するか否か、ステップS209ではAF評価値の監視処理へ遷移するか否かを判断する。
【0057】
ステップS207で安定監視処理へ遷移すると判断された場合は先に述べたステップ200に戻る。ステップS208で微小駆動動作へ遷移すると判断された場合は先に述べたステップ202に戻る。
【0058】
ステップS209でAF評価値の監視処理に遷移すると判断された場合はステップS210に進み、ステップS206で非合焦として中断したレンズ位置でのAF評価値を記憶し、後述するAF評価値の監視処理で使用する。一方で、ステップS209に該当しない場合はステップS206に戻り山登り動作を継続する。
【0059】
次にステップS211のAF評価値の監視処理について説明する。AF評価値の監視処理とは、予め記憶しておいたAF評価値と周期的に得られるAF評価値を比較し、その変化を監視する処理である。詳細については後述する。
【0060】
ステップS212、S213ではステップS211の実行結果として、次にどの状態に遷移すべきかを判断する。ステップS212で微小駆動動作へ遷移すると判断された場合は先に述べたステップ202に戻る。ステップS213で安定監視処理へ遷移すると判断された場合は先に述べたステップ200に戻る。
【0061】
一方で、ステップS213に該当しない場合はステップS211に戻りAF評価値の監視処理を継続する。
【0062】
以上説明したとおり、本発明の実施形態にかかる撮像装置1のシステム制御部115は、AF動作として先に述べた微小駆動動作、山登り動作と、AF評価値監視、安定監視とを継続的に実施する。そして、様々なシーンの変化に応じて合焦状態を維持するようにフォーカスレンズを制御する。
【0063】
<微小駆動動作>
次に微小駆動動作について図3のフローチャートを用いて説明する。
【0064】
微小駆動動作とは、断続的に細かくフォーカスレンズを移動させ、得られたAF評価値の変化より合焦位置の方向および合焦位置を特定する焦点調整方法である。
【0065】
言い換えると、微小駆動動作は、フォーカスレンズを所定値よりも小さい単位移動量で往復移動させ、焦点評価値の変化に基づいて焦点検出を行う動作である。微小駆動動作を行う手段を第1の焦点調節手段とする。
【0066】
まずステップS300にてシステム制御部115は、AF処理部105からAF評価値を取得する。ステップS301では合焦度を取得する。次にステップS302では微小駆動の移動量を決定する。
【0067】
本実施では合焦位置に近づくほど小さく、外れるほど大きくフォーカスレンズを移動させることで微小駆動動作において安定したピント追従を実現する。
【0068】
そのため、ステップS301にて取得した合焦度に応じてフォーカスレンズの移動量を決定するものとする。例えば、図11(b)のように合焦度の閾値をα>β>γの関係で設定した場合に対応する移動量は次のような関係となる。
現在の合焦度がαより大きい ⇒移動量Step1
現在の合焦度がβより大きくα以下⇒移動量Step2
現在の合焦度がγより大きくβ以下⇒移動量Step3
現在の合焦度がγ以下 ⇒移動量Step4
(Step1<Step2<Step3<Step4)
【0069】
次にステップS303にて現在のAF評価値が直前のAF評価値+変化閾値Aよりも大きいか否かを判断する。ここで変化閾値AとはAF評価値が明確に上昇したと判断するするための閾値であり、実際のAF評価値の増加量に加えノイズ成分によるばらつきを考慮して設定する。
【0070】
ステップS303にて条件が成立し、AF評価値の上昇傾向を検出した場合には、ステップS304に進み方向特定カウンタを増加する。この方向特定カウンタとは合焦位置の方向を特定する際に使用し、その値が大きくなるほど合焦位置に向け安定してAF評価値が上昇していることを示している。
【0071】
次にステップS305にてステップS302で決定した移動量分だけ現在の位置からフォーカスレンズを移動させる。その際、移動方向は直前の方向と同一である。一方で、ステップS303にてAF評価値が条件を満たさない場合は、ステップS306に進む。
【0072】
ステップS306では現在のAF評価値が直前のAF評価値−変化閾値Aよりも大きいか否かを判断する。これはステップS303とは反対にAF評価値の減少傾向を検出する。条件を満たす場合にはステップS308に進み、方向特定カウンタをクリアする。
【0073】
そしてステップS309にて直前の方向とは逆方向に向かってステップS302で決定した移動量分だけ現在の位置からフォーカスレンズを移動させる。ステップS306にて条件を満たさない場合はステップS307に進み、直前の方向と同一方向に向かってステップS302で決定した移動量分だけ現在の位置からフォーカスレンズを移動させる。
【0074】
この場合、明示的なAF評価値の増減が検出できないため、方向特定カウンタの操作は行わない。次に、ステップS310にて所定回数同一エリア内で往復したかを判断する。例えば図11(a)の領域Aのように合焦位置の近傍まで収束してきた場合、微小駆動動作で合焦位置を通り過ぎるとAF評価値が減少し、次の制御タイミングで反転することになる。
【0075】
このような動作を継続することで最終的に合焦位置をまたいで往復動作することになる。そして所定回数同一エリア内で往復していればステップS316に進み「合焦」と判断する。この判断がなされた場合、次の状態をAF評価値の監視処理に設定する。
【0076】
一方で、条件を満たさないと判断された場合はステップS311に進み、方向特定カウンタが所定値以上かを判断する。所定値以上の場合はステップS315に進み「方向特定」と判断する。この判断がなされた場合、次の状態を山登り動作に設定する。
【0077】
一方で、条件を満たさないと判断された場合はステップS312に進み、一連の微小駆動動作の処理が所定回数実施されたか、またステップS301で取得した合焦度が所定の閾値に対して低いか否かを判断する。例えば図11(a)の領域CのようにAF評価値の変化が乏しい状況で、所定回数以内に合焦位置やその方向が特定できない場合が考えられる。
【0078】
これはサーチ範囲が広く合焦位置に対して現在位置が離れすぎているために探しきれないか、サーチ範囲外に実際の合焦位置が存在する場合が考えられる。これは微小駆動動作を継続しても合焦位置とその方向を探し出すことが困難であるため、その場合はステップS314に進み「非合焦」と判断する。この判断がなされた場合、次の状態を山登り動作に設定する。
【0079】
一方で、条件を満たさないと判断された場合はステップS313に進み、微小駆動動作の継続を判断する。この判断がなされた場合、次の状態は変更せず微小駆動動作を継続して実施する。
【0080】
ステップS310からステップS316までの処理では、周期的に得られるAF評価値の変化を検出し、それに基づいて微小駆動動作における判定結果を出力する。その判定結果を基にステップS317の焦点調整方式の決定処理が実施されるが、詳細は後述する。
【0081】
以上が本発明の実施形態にかかる撮像装置1の微小駆動動作である。
【0082】
<山登り動作>
次に山登り動作について図4のフローチャートを用いて説明する。
【0083】
山登り動作とは、連続的にフォーカスレンズを移動させ、得られた複数のAF評価値の変化より合焦位置を特定する焦点調整方法である。
【0084】
言い換えると、山登り動作とは、フォーカスレンズを前記焦点評価値が大きくなる方向に所定値以上の単位移動量で移動させ、焦点評価値の変化に基づいて焦点検出を行う動作である。
【0085】
山登り動作は、第2の焦点調節手段にて行われる。
【0086】
まずステップS400にてAF評価値と対応したフォーカスレンズ位置を取得する。次にステップS401にて合焦度を取得する。ステップS402では山登り動作におけるフォーカスレンズの移動速度を決定する。
【0087】
本実施では合焦位置に近づくほど遅く、外れるほど速くフォーカスレンズを移動させることで山登り動作において安定したピント追従を実現する。
【0088】
そのため、ステップS401にて取得した合焦度に応じてフォーカスレンズの移動速度を決定するものとする。例えば、図11(b)のように合焦度の閾値をα>β>γの関係で設定した場合に対応する移動速度は次のような関係となる。
現在の合焦度がαより大きい ⇒レンズ速度Speed1
現在の合焦度がβより大きくα以下⇒レンズ速度Speed2
現在の合焦度がγより大きくβ以下⇒レンズ速度Speed3
現在の合焦度がγ以下 ⇒レンズ速度Speed4
(Speed1<Speed2<Speed3<Speed4)
【0089】
ステップS403にてフォーカスレンズが停止中であるか否かを判断する。
【0090】
フォーカスレンズが停止中であるのは、微小駆動動作から山登り動作に遷移した直後もしくは山登り動作中にフォーカスレンズがサーチ範囲の端に到達した場合のいずれかである。
【0091】
そこでステップS405では現在のレンズ位置が端であるか否かを判断する。ステップS405で端と判断された場合にはステップS407に進み、進行方向を端とは反対方向に設定してフォーカスレンズの移動を開始する。
【0092】
一方で、ステップS405にて条件を満たさない場合にはステップS406に進む。ステップS406の条件に該当するのは微小駆動動作から山登り動作に遷移した直後の場合であり、微小駆動動作における進行方向を引き継いでフォーカスレンズの移動を開始する。
【0093】
次にステップS408にて所定回数だけ端に到達したかを判断する。少なくともサーチ範囲の両方の端に到達し合焦位置が特定できない場合、サーチ範囲全域が図11(a)の領域CのようにAF評価値の変化が乏しい状況が考えられ、合焦位置はフォーカスレンズのサーチ範囲外に存在することが考えられる。
【0094】
そのような条件で山登り動作を継続した場合、大きなピント変動が繰り返されるため、この状態を回避すべくステップS408の条件を満たす場合はステップS409に進みフォーカスレンズを停止させる。
【0095】
そしてステップS410にて山登り動作における判定結果を「非合焦」とし、次に遷移する状態をAF評価値の監視処理に設定する。一方で、ステップS408の条件を満たさない場合にはステップS411に進む。
【0096】
ステップS411では現在のAF評価値と直前のAF評価値を比較し、現在の値が直前の値よりも大きいか否かを判断する。現在の値が直前の値よりも大きい場合はステップS412に進み山登り動作としては判定結果を「継続」とし、山登り動作の処理を引き続き実行する。
【0097】
つまり、図11(a)の領域Bにて実際の合焦位置の方向に正しく山登り動作を実施している場合など、AF評価値の増加傾向が検出できる場合にはその方向に向けて山登り動作が実施されることになる。
【0098】
一方、ステップS411にて条件が成立しない場合には、ステップS413に進む。ステップS413ではAF評価値がピークを越えて減少したか否かを判断する。具体的には図11(a)の領域Bから領域Aに向けて山登り動作を実施する場合などが該当し、この場合はステップS414に進み、フォーカスレンズを停止させる。
【0099】
その後、ステップS415にて山登り動作の判定結果を「合焦」とし、次に遷移する状態を微小駆動動作に設定する。そしてステップS416にてフォーカスレンズをAF評価値のピークの位置に移動させる。一方で、ステップS413にて条件が成立しない場合にはステップS417に進む。
【0100】
具体的には図11(a)の領域Bにて合焦位置とは反対方向に山登り動作が実施された場合が該当し、ステップS417ではフォーカスレンズの移動方向を反転し移動させる。そしてステップS418にて山登り動作の判定結果を「継続」とし、山登り動作の処理を引き続き実行する。
【0101】
ステップS408からステップS418までの処理は、周期的に得られるAF評価値の変化を検出し、それに基づいて山登り動作における判定結果を出力する。そして、その判定結果を基にステップS419の焦点調整方式の決定処理が実施されるが、詳細は後述する。
【0102】
以上が本発明の実施形態にかかる撮像装置1の山登り動作である。
【0103】
<AF評価値の監視処理>
次にAF評価値の監視処理について図5のフローチャートを用いて説明する。
【0104】
AF評価値の監視処理とは、予め記憶されたAF評価値に対して現在のAF評価値が変動したか否かを検出するための処理である。監視処理は、動画撮影状態にて行われている。
【0105】
まずステップS500では山登り動作後かを判別する。山登り動作後であればステップS501へ進み、そうでなければステップS508へ進む。ステップS501では山登り動作によって合焦位置が検出されたかどうかを調べる。合焦位置が検出されていればステップS514へ進み、検出されていなければステップS502へ進む。ステップS502では前記山登り動作前の焦点調整動作で合焦位置が検出されたかどうかを調べる。
【0106】
合焦位置が検出されていればステップS503へ進み、検出されていなければステップS504へ進む。ステップS503では合焦位置の検出された時間が現在の時間に対して所定時間内かどうかを判定する。
【0107】
所定時間内であればステップS505へ進み過去に検出された合焦位置へフォーカスレンズを駆動する。所定時間内でなければステップS515へ進み、山登り動作にて検出された最も大きいAF評価値が得られたレンズ位置へ駆動する。
【0108】
ステップS504では図2における焦点調整動作が開始した時間が現在の時間に対して所定時間内かどうかを判定する。この判定の時間経過閾値はステップS503の閾値と同じでも異なっていても良いとする。所定時間内であればステップS506へ進み、焦点調整動作開始時のフォーカスレンズ位置へレンズを駆動する。
【0109】
焦点調整動作開始時のレンズ位置については過焦点距離や過去に焦点調整動作を実施しているのであればその位置を採用しても良い。所定時間内でなければステップS507へ進む。ステップS507では後述するAF評価値の変化量によってシーン変化と判定する為のシーン変化閾値にTh1を設定する。
過焦点距離=(焦点距離)2乗/(絞り値×許容錯乱円径)で定義される。
【0110】
過焦点距離とは、カメラなどのレンズで、ある距離Sに焦点を合わせたとき、その後方が無限遠までぼけない画像が得られる距離Sである。
【0111】
ステップS514ではシーン変化閾値にTh2を設定する。ステップS508ではシーン変化閾値にTh3を設定する。Th1、Th2、Th3の関係はTh1>Th2>Th3とする。
【0112】
つまり、第2の焦点調節手段(山登り動作)によって今回得られなかった合焦位置にて行われる監視状態における所定の閾値は、第2の焦点調節手段によって今回得られた合焦位置にて行われる監視状態における所定の閾値よりも大きくしている。
【0113】
第2の焦点調節手段(山登り動作)によって今回得られなかった合焦位置にて行われる監視状態における合焦位置は、第1の焦点調節手段(微小駆動)又は第2の焦点調節手段によって過去に得られた合焦位置である。
【0115】
この三パターンの閾値以外にも被写体の動きに応じて別途閾値を設ける等の構成を取っても良い。例えば被写体の動きが大きい場合は、合焦位置を正しく算出できない可能性があるのでTh1よりも厳しい閾値Th4をさらに設けるなどである。
【0116】
つまり、監視手段にて被写体の画像認識がなされ、認識された被写体が所定量以上移動した際に監視手段による監視状態から第1の焦点調節手段(微小駆動)による焦点調節状態に移行する。
【0117】
その場合、第2の焦点調節手段(山登り駆動)によって得られた合焦位置にて行われる監視状態における所定の閾値は、第1の焦点調節手段によって得られた合焦位置にて行われる監視状態における所定の閾値よりも大きくしている。
【0118】
ステップS509ではAF評価値を取得する。次にステップS510では図2のステップS210で記憶したAF評価値と最新のAF評価値とを比較しAF評価値の変動がシーン変化閾値Thより大きいかを判定する。AF評価値が大きく変動していればステップS511へ進み次に遷移すべき状態を微小駆動動作に設定する。
【0119】
ステップS510にてAF評価値が変動していなければステップS512に進み、AF評価値の監視処理を継続するため次に遷移すべき状態をAF評価値の監視処理に設定する。次にステップS513では、それまでに判定された次に遷移すべき状態を基に焦点調整方式の決定処理が実施されるが、詳細は後述する。
【0120】
このように図2のステップS210からステップS213における処理の流れが示す通り、AF評価値の変動が小さく安定している場合にはAF評価値の監視処理が周期的に継続して実施されることになる。
【0121】
システム制御部115(監視手段)にて焦点評価値が所定の閾値以上変化した際に監視手段による監視状態から第1の焦点調節手段(微小駆動)による焦点調節状態に移行する。
【0122】
その場合、第2の焦点調節手段(山登り駆動)によって得られた合焦位置にて行われる監視状態における所定の閾値は、第1の焦点調節手段(微小駆動)によって得られた合焦位置にて行われる監視状態における所定の閾値よりも大きくしている。
【0123】
以上が本発明の実施形態にかかる撮像装置1のAF評価値の監視処理である。このような制御を行う事によって頻繁な山登り制御が抑制でき、安定したピント追従が可能となる。
【0124】
システム制御部115は、第1の焦点調節手段及び第2の焦点調節手段のいずれか一方によって得られた合焦位置にて焦点評価値が所定の閾値以上変化するか否かを監視する監視手段として機能する。
【0125】
<安定監視処理>
次に安定監視処理について図6のフローチャートを用いて説明する。
【0126】
安定監視処理とは、ブレの状態の変化傾向を確認し、撮像装置1が安定した状態となるまで監視する状態である。
【0127】
まず、ステップS600にてブレ傾向検出処理を実施する。このブレ傾向検出処理とはブレ検出部121より周期的に得られるブレ量の変化を監視し、撮像装置1がどのような状態にあるかを判断する処理である。
【0128】
詳細は後述する。次にステップS601にてブレ傾向検出処理の判定結果に基づいて、現在の状態が急激な変動をともなう状態であるか否かを判断する。
【0129】
ステップS601にて急激な変動状態であると判断された場合にはステップS603に進み、次に遷移すべき状態を安定監視処理に設定し処理を終了する。
【0130】
一方で、ステップS601にて条件を満たさないと判断された場合には、ステップS602に進み、次に遷移すべき状態を微小駆動動作に設定し処理を終了する。このように図2のステップS200からステップS201における一連の処理が示す通り、ブレの傾向がある程度安定した状態とならない場合には安定監視処理が周期的に継続して実施される。
【0131】
これは、これはブレの急激な変化が発生する場合は撮像信号がブレることでAF評価値が変動し、正しく焦点調整動作が実施できない場合があるためである。
【0132】
以上が本発明の実施形態にかかる撮像装置1の安定監視処理である。
【0133】
<ブレ傾向検出処理>
次にブレ傾向検出処理について図8のフローチャートおよび図9を用いて説明する。
【0134】
ブレ傾向検出処理とは、ブレ検出部121より周期的に得られるブレ量の変化を監視し、撮像装置1がどのような状態にあるかを判断する処理である。
【0135】
通常、ブレ量のみの判断ではブレが大きいか小さいかなどその大小のみが判別できるだけであるが、撮影者の撮り方や撮影状況によっては、緩やかなブレ、急激なブレ、周期的なブレなどブレの特徴は様々である。
【0136】
撮像装置のブレを検出するためのブレ検出部121と、ブレ検出部121の出力に基づき、撮像装置のブレの変化傾向を検出するブレ変化傾向検出手段と、を備えている。
【0137】
本実施例では、監視手段にて焦点評価値が所定の閾値以上変化した際にブレ変化傾向検出手段から出力されるブレ量の傾きが所定値よりも大きい場合、監視手段による監視状態から第1の焦点調節手段(微小駆動)による焦点調節状態に移行しないようにしている。
【0138】
それらをより細かく検出し、状況に応じて焦点調整動作にフィードバックすることで、より安定した焦点調整動作を実現することが望ましい。そこで、本実施例では緩やかな変化と急激な変化の2つのブレの傾向を特定する方法について説明する。
【0139】
まず図8のステップS800にてブレ検出部121よりブレ量を取得する。次にステップS801にて取得したブレ量に対してLPF処理を実施する。ブレ検出部121より得られたブレ量はノイズ等の影響によりばらついている可能性があるためステップS801にて平滑化することで信号の変化傾向が抽出しやすいようにする。次にステップS802にてHPF処理を実施する。
【0140】
具体的にはステップS801で算出したブレ量のLPF出力に対してHPF処理を実施する。なお本実施例中におけるHPF出力は絶対値を用いるものとする。これにより、ブレ量の1次微分出力(=傾き)を算出することができる。したがって、ステップS801では滑らかなブレ量の変化を、ステップS802では緩やかな変化や急激な変化などブレの変化傾向を抽出することが可能となる。
【0141】
これらの出力を元にステップS803では検出パターンに応じた閾値を設定する。以降の処理では同一の検出ルールに基づき検出する複数のパターンに応じて形状判定時の閾値(後述するHPF閾値、LPF閾値、カウント閾値)を切り換えながら処理するものとする。
【0142】
まず、ステップS804ではS802で算出したHPF出力をHPF閾値と比較し、閾値より大きいか否かを判定する。先に述べたとおりHPF出力は傾きを示すため、急激なブレほど値は大きく、緩やかなブレほど小さく変化する。この特徴に基づいてあらかじめ設定した閾値との比較を行うことでブレの傾向を特定する。
【0143】
HPF出力が閾値より大きい場合はステップS805に進みパターン検出の開始を設定する。一方でステップS804で条件に該当しない場合はステップS810に進む。ステップS810ではパターン検出が開始されているか否かを判断し、開始されていればステップS806に進み、開始されていなければステップS812に進む。
【0144】
ステップS812では全パターンの判定が終了したかを判断する。全パターンが終了していなければステップS803に戻り、閾値の条件を切り換えて再度パターンの判定を継続し、終了していればそのまま処理を終了する。ステップS806ではLPF出力がLPF閾値よりも小さいか否かを判断する。
【0145】
この処理ではLPF出力が小さくなりブレが安定したかどうかを判定し、条件に該当する場合にはステップS807に進む。ステップS807では検出パターンごとに用意している安定カウントをカウントアップする。ここで安定カウントとは、ブレが小さく安定した期間が継続したことを判断するために使用する。
【0146】
ステップS807で条件に該当しない場合はステップS811に進み安定カウントをクリアし、ステップS812に進む。ステップS808にて安定カウントがカウント閾値以上であるか否かを判断する。ここでは所定回数(=一定期間)だけLPFの出力が閾値よりも小さい状態が継続したか否かを判定している。
【0147】
この条件に該当する場合はステップS809に進み、パターン検出を解除する。一方でステップS808で条件に該当しない場合はステップS812に進む。このように、HPF出力の変化を起点としてパターン検出を開始し、LPF出力の一定回数の安定をもってパターン検出を終了する。この開始から終了までの期間が所定のブレの変化傾向を示す状態として認識される。
【0148】
また、ステップS812からステップS803に戻り閾値を変えて、判定を実施することで複数の変化傾向の検出を可能にしている。図9は今回のブレ傾向検出処理で検出するブレの変化傾向の例を示しており、図9(a)は緩やかな変化、図9(b)は急激な変化の例を示している。
【0149】
それぞれのブレの変化傾向に応じてLPF出力、HPF出力に違いが生じるため、それを検出すべくこれまでに説明したHPF閾値、LPF閾値、安定カウント閾値を図9に示すように設定する。これにより緩やかな変化と急激な変化の2パターンのブレの変化傾向を検出する。
【0150】
なお、本実施例のブレ傾向検出処理では図8で示したフローチャートの処理のみであるが、検出するための閾値のバリエーションを増やすことで検出するパターンを増やすことも可能である。
【0151】
また、変化の検出方法そのものを追加することで、さらに異なる変化傾向も抽出可能である。
【0152】
例えば、周期的なブレの影響などのように、一定時間内に所定のレベルの信号の増減が周期的に発生しているかを検出することも考えられる。
【0153】
さらに、撮像処理部109より得られた撮像信号が手ブレやパンニング等の影響を受ける場合、撮像信号上の被写体の移動量は焦点距離に比例する。そのため、ズームレンズ制御部101より現在のズームレンズ位置に対応した焦点距離を算出し、ブレ傾向検出処理における各種閾値(HPF閾値、LPF閾値等、安定カウント等)を焦点距離ごとに設定できるようにしてもよい。
【0154】
以上が本発明の実施形態に係る撮像装置1のブレ傾向検出処理である。
【0155】
<焦点調整方式の決定処理>
次に焦点調整方式の決定処理について図7のフローチャート用いて説明する。
【0156】
焦点調整方式の決定処理とは、検出されているブレの変化傾向に応じて焦点調整動作に用いる焦点調整方法を適時切り替える処理である。
【0157】
まずステップS700にてブレ傾向検出処理を実施する。次にステップS701にてステップS700で検出されたブレの変化傾向を判断し、急激な変化であるか否かを判定する。ステップS701にて条件を満たす場合はステップS704に進み、次の状態に遷移すべき状態を安定監視処理に設定する。
【0158】
一方で、S701にて条件を満たさない場合にはステップS702に進み、ブレの変化傾向が緩やかな変化か否かを判定する。ステップS702で条件を満たす場合はステップS703に進み、条件を満たさない場合はそのまま処理を終了する。ステップS703で次に遷移すべき状態が山登り動作であるか否かを判断する。
【0159】
この焦点調整方式の決定処理は図3で説明した微小駆動動作、図4で説明した山登り動作の終わりで実施しており、その直前では各動作における判定結果に応じて次に遷移すべき状態が確定している。そのため、ステップS703では事前に確定してる状態が山登り動作であるか否かを判断し、山登り動作である場合にはステップS705に進み次に遷移すべき状態を微小駆動動作に設定し直す。
【0160】
一方、ステップS703の条件を満たさない場合はそのまま処理を終了する。したがって、ステップS702やステップS703で条件を満たさない場合は、事前に確定している状態がそのまま反映されることになる。このように、ブレの変化傾向に応じて本来遷移すべき状態から別の状態へ、次に遷移すべき状態を更新する。これは微小駆動動作や山登り動作などの焦点調整の方法によってブレの影響の受けやすさが異なることに起因する。
【0161】
すなわち、断続的なレンズ移動より得られたAF評価値の変化から合焦位置を特定する微小駆動動作であれば、ある程度のブレの影響を受けた場合であっても、追従スピードが遅くなるだけで合焦位置に追従できる可能性がある。
【0162】
しかし、連続的なレンズ移動より得られた一連のAF評価値の変化から合焦位置を特定する山登り動作の場合では、ブレの影響がAF評価値の変動として直接表面化してしまい、合焦位置の特定において誤判定する可能性が高い。
【0163】
このような焦点調整方法ごとの特徴の違いを考慮した上で、焦点調整方式の決定処理ではブレの変化傾向を考慮し適切な焦点調整方式を選択する。
【0164】
以上が本発明の実施形態にかかる撮像装置1の焦点調整方式の決定処理である。
【0165】
本発明では、監視手段にて撮影シーンが変化した際に監視手段による監視状態から第1の焦点調節手段(微小駆動)による焦点調節状態に移行する。
【0166】
その場合、第2の焦点調節手段(山登り駆動)によって得られた合焦位置にて行われる監視状態における所定の閾値は、第1の焦点調節手段によって得られた合焦位置にて行われる監視状態における所定の閾値よりも大きくしている。
【0167】
以上説明したように、本発明によれば面内に被写体が出入りするような状況でAF評価値が期待した変化傾向を示さない場合であっても、一度焦点調整を実行した後に無駄なピント追従を避けることができる。これにより安定したピント追従を実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0168】
100 撮影レンズ
104 フォーカスレンズ制御部
105 AF処理部
108 撮像素子
109 撮像処理部
121 ブレ検出部
115 システム制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11