(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記解像力検出部が、振幅比と前記結像光学系の解像力との対応関係に基づいて、解像力が限度解像力よりも低いか否かを判断することを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
前記遮光部を前記露光エリアが相対移動する間にL/Sパターン光を投影させることによって前記測光部から出力される光量に基づいて、露光位置を検出する露光位置検出部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の露光装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
露光装置の設置状況によっては、長時間の使用に伴って埃、あるいは水蒸気などなどがレンズ表面に付着する。また、高輝度の光を樹脂などによって成形された基板に照射してパターンを形成することから、樹脂成分などが上記となってレンズ表面に付着する。埃などがレンズ表面に付着することによって光学系の結像性能が低下すると、パターン解像度が要求される解像度レベルから外れてしまう。
【0007】
水蒸気など透明な付着物の場合、光量低下なく結像性能だけ低下するため、光源の光量をモニタリングしても解像度低下を検出することができない。そのため、露光する前に解像度低下が生じているか否かをあらかじめ確認することが必要となる。しかしながら、試験用の基板にパターンを形成し、その形成されたパターンから解像度を判断することは、そのための長い作業時間を伴うことになり、基板製造のスループット向上の妨げとなる。
【0008】
したがって、露光装置において、簡易かつ精度よく光学系の解像性能をモニタリングすることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の露光装置は、複数の光変調素子をマトリクス状に配列した光変調素子アレイと、光変調素子アレイによる露光エリアを、被描画体に対し主走査方向に沿って相対移動させる走査部と、露光エリアの相対位置に応じたパターンデータに基づいて、複数の光変調素子を制御する露光制御部と、光変調素子アレイからのパターン光を、被描画体の描画面に結像させる結像光学系と、描画面に沿って少なくとも1つのスリットを形成した遮光部と、スリットを透過する光を受光する測光部と、測光部からの出力に基づいて、結像光学系の解像力を検出する解像力検出部とを備える。
【0010】
本発明の露光制御部は、遮光部を露光エリアが相対移動する間、ライン&スペース(L/S)パターン光を投影させる。L/Sパターン光が相対移動しながらスリットを通過することによって、波形状光量が測光部の出力に基づいて検出される。ここで、「波形状光量」とは、走査方向に沿った光量変化が周期的で波形状になっている空間的な光量分布を表す。測光部の出力は時系列的に周期性をもった波形出力(時系列的波形状光量という)となるが、時系列的波形状光量と光量変化の特性が相応する空間的な光量分布が得られる。
【0011】
そして解像力検出部は、L/Sパターン光の投影によって検出される波形状光量の振幅(つまり光量変位の幅)と、あらかじめ定められた限度解像力以上の解像力をもつときの基準振幅とに基づき、検出される解像力が限度解像力よりも低いか否かを検出するここで、「合焦範囲にあるときの基準振幅」とは、焦点深度を踏まえて合焦と判断される状態で検出される波形状光量の振幅を表す。波形状光量の振幅を検出するだけで、解像力の低下を検知することが可能となる。
【0012】
例えば解像力検出部は、検出される振幅と基準振幅との比である振幅比に基づいて、解像力が限度解像力よりも低いか否かを判断することができる。振幅比算出という容易な演算処理によって、解像力をモニタリングすることができる。
【0013】
特に、解像力がある場合と低下している場合の両方において波形状光量の中心光量(平均光量)が等しい場合、解像力検出部は、L/Sパターン光の平均光量と、L/Sパターン光が投影されていないときのベース光量とに基づいて、基準振幅を算出することができる。波形状光量の振幅については、最大光量と最小光量(Peak to Peak)を検出すればよい。
【0014】
合焦検出部は、振幅比と結像光学系の解像力との対応関係に基づいて、解像力が限度解像力よりも低いか否かを判断することができる。例えば、焦点調整時、あるいは出荷時などにおいて、結像光学系の解像力と振幅比との関係を表すデータをメモリに記憶し、解像力検出のときにデータに基づいて判断することができる。結像光学系の限度解像力は、結像光学系の光学性能に基づいて定めればよい。
【0015】
平均光量を算出する場合、専用の開口部および受光部を設けてもよい。例えば、遮光部は、平均光量測定用開口部を有し、測光部は、平均光量測定用開口部を通るL/Sパターン光を受光する平均光量用受光部を有する。
【0016】
オペレータに合焦範囲でないことを迅速に知らせることを考慮すると、合焦範囲から外れる場合、合焦範囲から外れていることを報知する報知部を設けるのがよい。
【0017】
露光装置は、遮光部を露光エリアが相対移動する間、露光位置検出用のL/Sパターン光を投影させることによって測光部から出力される光量に基づいて、露光位置を検出する露光位置検出部を設けることが可能である。この場合、露光位置検出と焦点検出の両方を同じ機構によって行うことが可能となる。
【0018】
本発明の他の態様における露光装置の解像力検出装置は、スリットを透過するライン&スペース(L/S)パターン光を受光する測光部と、L/Sパターン光の投影によって検出される波形状光量の振幅と、あらかじめ定められた限度解像力以上の解像力をもつときの基準振幅とに基づいて、検出される解像力が限度解像力よりも低いか否かを検出する解像力検出部とを備える。また、本発明の他の態様における露光装置の露光方法は、スリットを透過するライン&スペース(L/S)パターン光を受光し、L/Sパターン光の投影によって検出される波形状光量の振幅と、あらかじめ定められた限度解像力以上の解像力をもつときの基準振幅とに基づいて、解像力が限度解像力よりも低いか否かを検出する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、露光装置において、簡易かつ精度よく光学系の解像性能をモニタリングすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0022】
図1は、第1の実施形態である露光装置のブロック図である。
【0023】
露光装置10は、フォトレジストなどの感光材料を塗布、あるいは貼り付けた基板Wへ光を照射することによってパターンを形成するマスクレス露光装置であり、基板Wを搭載するステージ12が走査方向に沿って移動可能に設置されている。ステージ駆動機構15は、主走査方向X、副走査方向Yに沿ってステージ12を移動させることができる。
【0024】
露光装置10は、パターン光を投影する複数の露光ヘッドを備えており(ここでは1つの露光ヘッド18のみ図示)、露光ヘッド18は、DMD22、照明光学系(図示せず)、結像光学系23を備える。光源20は、例えば放電ランプ(図示せず)によって構成され、光源駆動部21によって駆動される。
【0025】
ベクタデータなどで構成されるCAD/CAMデータが露光装置10へ入力されると、ベクタデータがラスタ変換回路26に送られ、ベクタデータがラスタデータに変換される。生成されたラスタデータは、バッファメモリ(図示せず)に一時的に格納された後、DMD駆動回路24へ送られる。
【0026】
DMD22は、微小マイクロミラーを2次元配列させた光変調素子アレイ(光変調器)であり、各マイクロミラーは、姿勢を変化させることによって光の反射方向を選択的に切り替える。DMD駆動回路24によって各ミラーが姿勢制御されることにより、パターンに応じた光が、結像光学系23を介して基板Wの表面に投影(結像)される。これによって、パターン像が基板Wに形成される。
【0027】
ステージ駆動機構15は、コントローラ30からの制御信号に従い、ステージ12を移動させる。ステージ駆動機構15には不図示のリニアエンコーダが備わっており、ステージ12の位置を測定し、コントローラ30にフィードバックする。コントローラ30は、露光装置10の動作を制御し、ステージ駆動機構15、DMD駆動回路24へ制御信号を出力する。また、図示しないモニタへメニュー画面などを表示するための表示制御処理を実行する。露光動作に関するプログラムは、あらかじめメモリ32に格納されている。
【0028】
光検出部28は、ステージ12の端部付近に設置されており、フォトセンサPD、およびパルス信号発生部29を備えている。光検出部28の上方には、部分的に光を通す遮光部40が設けられている。光検出部28は、焦点調整およびアライメント調整時に使用される。演算部27は、光検出部28から送られてくる信号に基づき、合焦状態をモニタリングするためのパラメータとなる光量振幅比を算出する。また演算部27は、露光位置、すなわち露光ヘッドに対する基板W(ステージ12)の位置を算出可能である。
【0029】
結像光学系23と遮光部40との間の光路上に設けられた焦点調整用プリズム25は、2つの楔型プリズムを互いに斜面で接するように対向配置させた光学系であり、プリズム駆動部33は、光軸方向厚さが変化するように2つのプリズムを互いに相対移動させる。結像光学系23の焦点位置は、プリズム25を駆動することにより、基板鉛直方向(z軸方向)に沿って移動する。
【0030】
露光動作中、ステージ12は、走査方向Xに沿って一定速度で移動する。DMD22全体による投影エリア(以下、露光エリアという)は、基板Wの移動に伴って基板W上を相対的に移動する。露光動作は所定の露光ピッチに従って行なわれ、露光ピッチに合わせてマイクロミラーがパターン光を投影するように制御される。
【0031】
DMD22の各マイクロミラーの制御タイミングを露光エリアの相対位置に従って調整することにより、露光エリアの位置に描くべきパターンの光が順次投影される。そして、露光ヘッド18を含めた複数の露光ヘッドにより基板W全体を描画することによって、基板W全体にパターンが形成される。
【0032】
なお、露光方式としては、一定速度で移動する連続移動方式だけでなく、間欠的に移動するステップ&リピートも可能である。また、マイクロミラーの像を部分的に重ねて露光する多重露光(オーバラップ露光)も可能である。
【0033】
基板の種類変更などを行った場合、露光前に焦点調整用プリズム25を用いて焦点調整が行われる。具体的には、基板Wやフォトレジストの厚みの変更に応じて焦点調整量を計算し、焦点調整量に応じて焦点調整用プリズム25を駆動し、結像光学系23の焦点位置を基板Wの描画面と一致させる。
【0034】
焦点調整が行われると、各基板に対する露光動作の開始前、あるいは露光作業時間が所定時間経過する度に、合焦状態が維持されているか否かを検出/モニタリングする。具体的には、ステージ12を一定速度で移動させながら、焦点検出用のパターン光を投影する。コントローラ30は、光検出部28からの出力信号に基づいて、合焦状態にあるか否かを判断する。
【0035】
また、パターンを正確な位置に形成するため、露光開始位置に関する補正処理が露光動作開始前に行われる。具体的には、ステージ12を一定速度で移動させながら、位置検出用のパターンの光を投影する。ここでの位置検出用パターン光は、焦点検出用パターン光とは別のパターン列である。コントローラ30は、演算部27から送られてくる位置情報に基づき、露光開始位置を補正する。
【0036】
以下、
図2〜6を用いて、合焦状態の検出、モニタリングについて説明する。
【0037】
図2は、遮光部と、焦点調整および焦点検出用のパターン列を示した図である。
図3は、フォトセンサと遮光部の配置を示した概略的側面図である。
【0038】
遮光部40は、フォトセンサPDの光源側上方に配置されており、スリットエリアSTが主走査方向Xに沿って形成されている。ここでは、主走査方向Xに垂直、すなわち副走査方向Yに平行な6つのバー状スリットST1〜ST6が、スリットピッチSPで等間隔に形成されている。遮光部40のサイズは、フォトセンサPD全体のサイズよりも大きく、遮光部40の真下に配置されたフォトセンサPDは、スリットSTを通った光のみ受光する。
【0039】
図3に示すように、光強度/光量を検知するフォトセンサPDは支持機構60によって保持されており、支持機構60は、ステージ12に取り付けられている。支持機構50は、フォトセンサの受光面PSと基板Wの描画面に平行な遮光部40の両端を支持し、支持機構60によって保持されている。
【0040】
焦点調整および合焦状態を検出するとき、ステージ12の移動に伴って露光エリアが遮光部40を通過する。このとき、
図2に示すパターン列PTの光を遮光部40に向けて投影させる。パターン列PTは、いわゆるライン&スペース(L/S)パターンであって、主走査方向Xに垂直、すなわち副走査方向Yに平行なバー状パターンを複数並べたパターン列である。ここでは、パターンピッチPPで等間隔に並ぶ4つのバー状パターンPL1、PL2、PL3、PL4によって構成される。ここでは、パターン列PTのライン幅Kとライン間スペースの幅が等しい。すなわちパターンピッチPPが、ライン幅Kの2倍となる。
【0041】
バー状パターンPL1、PL2、PL3、PL4の各パターン幅Kは、遮光部40に形成されたスリットST1〜ST6各々のスリット幅Zよりも広い。また、パターンピッチPPも、スリット幅Zよりも広い。したがって、1つのバー状パターンが所定速度で1つのスリットを完全に通過した後、次のバー状パターンがスリット通過を開始する。また、バー状パターンPL1、PL2、PL3、PL4の各パターン幅Kは、結像光学系23の解像性能の上限に近い幅に定められている。例えば、パターン列PTのパターン幅Kは、2つの隣接する2つのマイクロミラーの像(2セル)の幅に定められる。
【0042】
図2に示すように、パターン列PTの主走査方向Xに沿った全体幅PWは、スリットピッチSPよりも小さい。このため、パターン列PTの最後尾バー状パターンPL4が1つのスリットを一定速度で通過終了すると、先頭のバー状パターンPL1が次のスリット通過を開始する。
【0043】
パターン列PTの光が遮光部40を一定速度で通過するとき、バー状パターンPL1がスリットST6を透過したときにフォトセンサPDから出力される信号(以下、光量信号という)は、時系列的に連続変化する。これは、上述したように、スリット幅Zがバー状パターンPL1のパターン幅Kよりも短いことに起因する。したがって、他のバー状パターンPL2、PL3、PL4が順次スリットSL6を通過するときも時系列的に連続変化する。
【0044】
図4、
図5は、1つのスリットを1つのバー状パターンの光が通過したときの空間的光量分布および時系列的光量分布を、合焦状態、ピント外れの状態に分けて示したグラフである。ただし、ここでの「空間的光量分布」は、X方向に沿った光量の変化の様子を表しており、Y方向に沿った光量は含まれない。
【0045】
結像光学系23の解像限界に近いバー状パターンPL1の主走査方向Xに沿った光強度分布/光量分布は、略ガウス分布になっており、ピーク値を中心にして光量が前後に減少していく。その結果、フォトセンサPDによって検出される光量の時系列的分布(以下、光量信号分布という)ALも略ガウス分布となり、時系列的な光量信号分布ALと空間的な光量分布GDが、互いに相似的な相関関係をもつ(
図4参照)。ただし、ここでの光量信号分布ALは、スリット幅Zに従って検出される光量信号値をステージ12の移動に対して連続的にプロットした軌跡を表す。
【0046】
光量信号分布ALと光量分布GDとが相似的関係をもつには、スリット幅Zがバー状パターン幅Kよりも短ければよく、十分短くすることによって光量信号分布ALの山形形状が光量分布GDの山形形状に一層近くなる。ここでは、スリット幅Zが、バー状パターン幅Kに対して0.1〜0.5倍に定められる。このような比率となるように、バー状パターンPL1の光を投影するマイクロミラーの領域設定あるいはスリット幅Zの調整いずれかを調整し、あるいは両方を行う。
【0047】
一方、
図5には、ピントが外れている状態における空間的光量分布を示している。この場合でも、光量分布は、徐々に増加しながら光量ピークP’を経て徐々に減少する分布形状になっているが、光量ピークP’は合焦状態の光量ピークPと比べて小さい。これは、焦点位置が遮光部40の表面、すなわち基板Wの表面と一致していないため、光量分布の範囲が拡大し、中心付近の光強度が低下するためである。
【0048】
図6は、バー状パターン列PTに応じた空間的光量分布を示した図である。
【0049】
図6では、4つのバー状パターンPT1〜PT4のスリット通過後の空間的光量分布を連ねた光量分布を表している。ただし、この分布は、各バー状パターンの位置に合わせてスリットを形成した場合に得られる光量分布であり、実際には、各バー状パターン通過に合わせて順番に空間的光量分布が得られる。
【0050】
このように表された一連の光量分布は、周期的な波形(なみがた)によって表されており、中心からの振幅Sをもつ。ピント位置において得られる振幅Sは、ピントが外れているときの振幅S’よりも大きい。しかしながら、上述したように、パターン列PTのライン/スペースの幅が同じ(=K)であることから、ピント位置とピントから外れた位置両方とも、波形の中心が一致する。したがって、空間的光量分布の振幅の大きさが、ピント位置、すなわち合焦位置にあるか否かを表すバロメータとなる。
【0051】
図7は、異なる振幅比をもつ空間的光量分布のグラフを示した図である。
【0052】
図7に示すように、合焦状態にある場合と合焦状態から外れている場合では、波形の振幅に差が生じる。また、焦点深度の範囲に応じて、合焦状態の中でも異なる振幅が得られる。一方、上述したように、振幅が異なっても波形中心位置Cは実質的に変化しない。これは、光量ピーク付近(波形の山部分)の光量減少分が生じると同時に、光量ボトム付近(波形の他に部分)に相補的な光量増加部分が生じるためである。
【0053】
したがって、合焦状態における振幅を基準として設定し、基準となる振幅と、検出される空間的光量分布の振幅とを比較することによって、焦点位置の変動を伴う焦点調整作業を行わなくても、合焦状態にあるか否かをモニタリングすることができる。例えば、基準振幅と検出される振幅との比を求め、合焦状態、すなわち焦点深度の範囲に収まる振幅比を定めることで、合焦状態をモニタリングすることができる。
【0054】
ところで、
図4に示したように、空間的光量分布と時系列的光量分布は相似関係にあることから、ステージ12を移動させながら位置検出用のパターン列PTの光を遮光部40に投影することにより、
図7と同様の時系列光量分布を得ることができる。また、フォトセンサPDによって検出される時系列的光量分布の振幅の大きさが、空間的光量分布の振幅の大きさに対応していることから、時系列的光量分布の振幅比は、空間的光量分布の振幅比に相当する。したがって、時系列的光量分布における振幅比に基づいて、合焦状態を判断することが可能となる。
【0055】
位置検出用のパターン列PTの光量が一定であるとき、空間的光量分布の中心位置Cは合焦状態、非合焦状態にかかわらず一定であることから、中心位置と最小もしくは最大光量を検出することによって振幅Aを算出することが可能である。中心位置Cは、例えば、空間的光量分布のピーク光量(最大光量)とボトム光量(最小光量)とから算出することができる。
【0056】
あるいは、中心位置Cがパターン列PTの1周期(1つのラインと1つのスペースのペア)の平均光量に等しいから、中心位置Cを、フォトセンサなどの測光部を設けて光量を測定し、測定されたパターン列PTの光量の平均値を求めてもよい。ここでは、各スリットを透過した光によって得られる時系列的光量値を周期に合わせて積分あるいは平均化することによって、中心位置Cを求める。
【0057】
一方、結像光学系23の焦点位置が基板Wの表面と一致するときの振幅(基準振幅)Bについては、パターンを投影していないとき検出される光量信号レベル(ベース光量)を検出することにより、中心位置Cと検出された光量信号レベルとの間の振幅Bを、基準振幅として得ることができる。
【0058】
なお、平均光量算出のため測光部を設ける場合、上記遮光部やフォトセンサとは異なる独立した測光部を設けてもよく、あるいは、上記遮光部および/またはフォトセンサによって測光部を兼用する構成してもよい。その場合、遮光部に上述したスリットとは異なる位置に開口部を別途設け、開口部を通過した光の光量を測定するようにするとよい。開口部としては、少なくともパターン列PTのライン幅Kより広く、好ましくはパターン列PT全体の幅PWよりも広い幅の透光部分をもつ開口部をもうければよい。また、光量を測定するためのフォトセンサを別途配置してもよく、あるいは、上述したフォトセンサによって測光してもよい。
【0059】
図8は、焦点移動量と振幅比との相関関係を表すグラフを示した図である。
【0060】
図8では、焦点位置を変えながら検出される光量分布に基づいて算出した振幅比をプロットしたグラフを示している。振幅比A/Bが大きいほど、すなわち検出される振幅Aが最大振幅Bに近いほど合焦位置に近く、焦点位置が結像光学系23の焦点深度が離れていくにつれて、振幅比A/Bが小さくなっていく。
【0061】
そこで、出荷時などにおいて、あらかじめ焦点移動可能な全範囲における振幅比を算出し、振幅比とその時の結像光学系23の焦点位置とを対応付けたデータ(マスタデータ)を、メモリ32に記憶する。具体的には、ステージ12を一定速度で移動させながら、焦点調整用パターンの光を投影する。そして、焦点調整用プリズム25を駆動して焦点位置を移動可能な距離範囲で変えながら、これを繰り返し行う。
【0062】
コントローラ30は、光検出部28から出力される信号に基づき振幅比を算出し、マスタデータを作成する。また、基板Wの合焦位置FPがメモリ32に記憶される。そして、合焦位置FPを中心とした合焦範囲ARが定められる。
【0063】
合焦位置FPは、振幅比が最も大きい合焦範囲AR0からオフセットした位置に定められる。これは、遮光部40の位置と基板Wの描画面の位置は、基板Wの厚さT(
図1参照)だけ差があり、また、遮光部40の光入射面が基板Wの搭載面(ステージ表面)より僅かに低い位置に設置されていることに起因する。合焦範囲ARの幅(上限、下限)は、結像光学系23の焦点深度とともに、基板Wの厚さT、基板Wの表面に形成された感光材料の種類、要求されるパターンオーダーなどに基づいて定められる。
【0064】
図9は、合焦状態モニタリング処理のフローを示した図である。ここでは、使用される基板Wなどに合わせて算出される焦点位置に焦点調整用プリズム25が調整された後、各基板の露光動作開始前、あるいは所定時間経過する度に処理が行われる。
【0065】
コントローラ30は、ステージ12を移動させながら、バー状パターン列PTを遮光部40に向けて照射するように、DMD駆動回路24を制御する(S101)。そして、フォトセンサPDから出力される光量信号に基づいて、振幅比Mが算出されると(S102)、メモリ32に記憶されたマスタデータの中から振幅比Mに応じた焦点位置が、合焦範囲Rに含まれるか否かが判断される(S103)。なお、振幅比の演算については、コントローラ30で実行してもよい。
【0066】
検出される振幅比Mに応じた焦点位置が合焦範囲Rから外れる場合、コントローラ30は、モニタへ警告表示するための表示制御処理を実行する(S104)。これによって、ユーザは、焦点位置が合焦範囲Rから外れていることを認識することができる。なお、警告表示以外のブザー音発生など、他の報知手段によってオペレータに知らせることも可能である。
【0067】
このように第1の実施形態によれば、ステージ12を移動させながら、バー状パターンPL1〜PL4から構成されるパターン列PTを、スリットST1〜ST6の形成された遮光部40に投影することにより、フォトセンサPDから光量信号が出力される。そして、光量信号から求められる振幅比Mに基づき、合焦状態が維持されているか否かを判断する。
【0068】
画素サイズなどによって分解能が制限されるCCDを使用せず、焦点検出用のパターン光を基板Wに対して走査させることによって結像光学系23の合焦あるいはピンボケを判断しているため、合焦状態を精度よく検出することができる。さらに、メモリに記憶されたマスタデータに対して定められる合焦範囲Rは、振幅比の変化率は単調減少していることから、ピンボケが生じた場合、焦点位置が合焦範囲Rから外れている方向を確実に検出することができる。一方、光検出部28は露光位置検出と兼用して使用されるため、焦点検出のため専用CCDを設置する必要がなく、コストを抑えることができる。
【0069】
また、複数のスリットをパターン光が通過し、その相対的移動量に基づいて平均中心値を算出することにより、光源の揺らぎやフォトセンサの感度ムラなどが生じた場合においても、その影響を抑えることができる。さらに、複数のバー状パターンが複数のスリットを通過することにより、平均値の母数が拡大し、振幅比が精度よく計測される。
【0070】
焦点検出用パターン列のバー状パターンは、主走査方向に垂直でなくてもよく、スリット形成方向に合わせてパターン形状を定め、上述した連続的光量分布が得られるようにスリットの主走査方向幅、パターン光の主走査方向幅を定めてもよい。フォトセンサについては、各走査バンドに対してフォトセンサを設置することも可能である。
【0071】
次に、
図10〜13を用いて、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、結像光学系の解像性能をモニタリングする。それ以外の構成については、第1の実施形態と実質的に同じである。
【0072】
図10は、解像性能を維持した場合の光量分布と解像性能が低下した場合の光量分布とを示した図である。
【0073】
結像光学系23の解像性能が高い(問題ない)場合、第1の実施形態で説明したように、解像性能限界に近いバー状パターンの光を1つのスリットが通過させることで得られる空間的光量分布GDは、そのピークを中心としたガウス分布となり、バー状パターンのエッジ部において光量変化(傾き)が比較的大きい。しかしながら、解像性能が低下すると、空間的光量分布GD1は、バー状パターンのエッジ部における光量変化が緩やかとなり、また、ピーク光量が低下し、平坦な波形状光量分布になる。
【0074】
その結果、パターン列PTによる連続した空間的光量分布では、波形の山(ピーク光量)と谷(ボトム光量)両方の中心位置からの距離は小さくなる。すなわち、空間的光量分布の振幅が小さくなる。したがって、要求される最低限の解像性能に応じた振幅を基準となる振幅と定め、第1の実施形態と同様、空間的光量分布の振幅を検出して振幅比を演算することによって、解像性能をモニタリングすることができる。
【0075】
図11は、解像力と振幅比との関係を表すグラフを示した図である。
図12は、基準となる振幅をもつ空間的光量分布を示した図である。
【0076】
図11には、解像力と振幅比との対応関係を示す曲線CGが描かれている。ただし、
図11のグラフ横軸を表す解像力は、結像光学系23に対する単位長さ(1mm)当たりイメージングすることができる直線本数を表す。解像性能が低下すると振幅が減少することから、振幅比の値が小さくなるにつれて解像力は低下する。したがって、測定される振幅比が限度(下限)となる振幅比D0よりも大きければ、要求される解像性能は維持される。
【0077】
図12に示す空間的光量分布GD’は、要求される解像性能の限度に応じた1つのバー状パターンに対する空間的光量分布GD1、GD2を隣接させたときに得られる光量分布を示している。解像性能限度に応じた空間的光量分布GD1、GD2の波形は、露光装置の仕様、結像光学系23などの光学性能に従って定められる。
【0078】
空間的光量分布GD’の振幅A0と解像性能が最も高い場合の最大振幅Bとの比(A0/B)を限度振幅比D0と定めると、検出される振幅Aと基準振幅Bとの比A/BがD0以上であれば、必要な解像性能を満たしていると判断することができる。限度振幅比D0および曲線CGに関するデータは、メモリ32にあらかじめ記憶される。
【0079】
図13は、解像性能のモニタリング処理のフローを示した図である。第1の実施形態と同様、任意のタイミング(ロット生産の開始時、あるいは所定時間経過する度等)に処理が行われる。
【0080】
コントローラ30は、ステージ12を移動させながら、バー状パターン列PTを遮光部40に向けて照射するように、DMD駆動回路24を制御する(S201)。そして、フォトセンサPDから出力される光量信号に基づいて振幅比Mが算出されると(S202)、振幅比Mが限度振幅比D0以上であるか否かが判断される(S203)。振幅比Mが限度振幅比D0未満である場合、警告音ブザーなどによって解像性能低下をオペレータに知らせる(S204)。
【0081】
このように第2の実施形態によれば、ステージ12を移動させながら、バー状パターンPL1〜PL4から構成されるパターン列PTを、スリットST1〜ST6の形成された遮光部40に投影することにより、フォトセンサPDから光量信号が出力される。そして、光量信号から求められる振幅比Mに基づき、解像力が限度となる解像力より低下しているか否かを判断する。
【0082】
第1、第2の実施形態では、パターン列のライン/スペース幅が等しいことによって光量振幅の中心位置(平均光量)が一定であるとみなし、合焦状態における基準振幅を平均光量とパターン非投影状態の光量から算出しているが、それ以外の方法で基準振幅を算出してもよく、また、パターン列のライン/スペース幅が等しくない場合においても、振幅比を求めることは可能である。例えば、光学系あるいは基板を移動させながら行う焦点調整において、合焦状態あるいは解像力のある状態における波形状光量の振幅を算出し、光源出力変動などを踏まえながら焦点検出時に基準振幅を定めてもよい。
【0083】
なお、ステージを移動させながらバー状パターン列を投影せず、CCDなどのイメージセンサに対してL/Sパターン光を投影し、その空間的光量分布から合焦状態、あるいは解像性能の状態を判断してもよい。