特許第6425542号(P6425542)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6425542モーター回転子及びそれを備えるモーター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6425542
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】モーター回転子及びそれを備えるモーター
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20181112BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   H02K1/27 501A
   H02K1/22 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-523164(P2014-523164)
(86)(22)【出願日】2011年8月29日
(65)【公表番号】特表2014-522225(P2014-522225A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】CN2011079062
(87)【国際公開番号】WO2013020312
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2014年1月31日
【審判番号】不服2016-13408(P2016-13408/J1)
【審判請求日】2016年9月7日
(31)【優先権主張番号】201110224896.8
(32)【優先日】2011年8月5日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512306405
【氏名又は名称】グリー エレクトリック アプライアンシーズ インク オブ ズーハイ
【氏名又は名称原語表記】GREE ELECTRIC APPLIANCES, INC. OF ZHUHAI
(73)【特許権者】
【識別番号】514027919
【氏名又は名称】グリー グリーン リフリジレーション テクノロジー センター カンパニー リミテッド オブ ズーハイ
【氏名又は名称原語表記】GREE GREEN REFRIGERATION TECHNOLOGY CENTER CO., LTD. OF ZHUHAI
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(72)【発明者】
【氏名】フワン,フュイ
(72)【発明者】
【氏名】フ,ユーシェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ドンスオ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,フアジエ
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シュエイン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ウェンミン
【合議体】
【審判長】 堀川 一郎
【審判官】 中川 真一
【審判官】 久保 竜一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−083066(JP,A)
【文献】 特開2000−050543(JP,A)
【文献】 特開2002−281701(JP,A)
【文献】 米国特許第4924130(US,A)
【文献】 本田幸夫、外5名著、“マルチフラックスバリア形シンクロナスリラクタンスモータのロータ構造と特性比較”、電気学会論文誌D(産業応用部門誌)118巻10号、平成10年12月19日、電気学会、1177−1184頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/17、1/27
H02K15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心(10)と、前記鉄心(10)の内部に設けられた永久磁石(20)とを備えるモーター回転子であって、
前記鉄心(10)に前記鉄心(10)の周方向に沿って4組の装着溝(30)が設けられ、各組の前記装着溝(30)は前記鉄心(10)の径方向に不連続的に設けられた3つの装着溝(30)を含み、
前記永久磁石(20)は4組あり、各組の前記永久磁石(20)の中の各永久磁石(20)は各組の装着溝(30)の各前記装着溝(30)に対応して嵌め込まれ、
各組の前記装着溝(30)は、第1の装着溝と、第2の装着溝と、第3の装着溝と、を含み、
前記第1の装着溝、前記第2の装着溝、及び前記第3の装着溝に嵌め込まれる前記永久磁石(20)はそれぞれ第1の永久磁石、第2の永久磁石、及び第3の永久磁石であって、各組の前記永久磁石(20)の中の各前記永久磁石(20)の、前記永久磁石(20)の対称線に沿う方向の厚みの和をTとし、各前記永久磁石(20)の、前記永久磁石(20)の対称線に沿う方向の距離の和をgとすると、
であり、
各組の前記永久磁石(20)のうち、モーター回転子の径方向に沿って最も外側に位置する前記永久磁石(20)の、モーター回転子の中心から遠ざかる表面は平面で、モーター回転子の中心に接近する表面はアーチ形の表面で、その他の各前記永久磁石(20)の、モーター回転子の中心から遠ざかる表面及びモーター回転子の中心に接近する表面はいずれもアーチ形の表面であり、各組の前記永久磁石(20)において、各前記永久磁石(20)のアーチ形の表面はいずれもモーター回転子の中心に向かって突出し、かつ各前記永久磁石のアーチ形の表面のうち、モーター回転子の中心へ接近するアーチ形の表面ほど、弧度が大きくなることを特徴とするモーター回転子。
【請求項2】
各前記永久磁石(20)の両端とそれが嵌め込まれる前記装着溝(30)の両端との間に隙間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のモーター回転子。
【請求項3】
前記永久磁石(20)の両端と前記装着溝(30)の両端との間の前記隙間に非透磁媒体が充填されていることを特徴とする請求項2に記載のモーター回転子。
【請求項4】
前記永久磁石(20)の、前記モーター回転子の軸線に垂直な横断面の中央の厚みは両端の厚みより大きいことを特徴とする請求項1に記載のモーター回転子。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一つに記載のモーター回転子を備えることを特徴とするモーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーター分野に関し、具体的に、モーター回転子及びそれを備えるモーターに関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石同期モーター(IPM)は、回転子の内側に一層の永久磁石を設けて、主に永久磁石トルクを利用し、リラクタンストルクを補助とするモーターである。
【0003】
リラクタンストルクと永久磁石トルクとの合成式は、
である。
ここで、Tはモーターの出力トルクで、Tの値を増加させると、モーターの性能が向上することができ、Tの後ろの等式中の一番目の項はリラクタンストルクで、二番目の項は永久磁石トルクで、ΨPMはモーターの永久磁石による固定子と回転子のカップリング磁束の最大値で、mは固定子導体の相数で、L、Lはそれぞれ、d軸とq軸のインダクタンスで、その中、d軸は主磁極軸線と重なる軸を指し、q軸は主磁極軸線に垂直な軸を指し、ここで、垂直とは電気角を言い、i、iはそれぞれ電機子電流のd軸、q軸方向における量である。
【0004】
従来、主に、永久磁石の性能を向上させることによってモーターの性能を向上させ、即ち、永久磁石トルクを増加させる方法で、合成トルクの値を増加し、モーターの効率を向上させており、その中、希土類永久磁石を内蔵することが常用の方法となっている。しかし、希土は非再生資源で、且つ、価格もかなり高いので、このようなモーターの更なる汎用が制限されている。なお、だた永久磁石の性能を向上させることによりモーターの性能を強くしても、モーターの効率をより一層向上させるのは無理である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、リラクタンストルクを増加することでモーターの効率を向上させることによって、希土類永久磁石の使用量を低減できるモーター回転子及びそれを備えるモーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明では、鉄心と、鉄心の内部に設けられた永久磁石とを含み、鉄心に、鉄心の周方向に沿って複数組の装着溝が設けられ、各組の装着溝は鉄心の径方向に不連続的に設けられた2つ又は2つ以上の装着溝を含み、永久磁石は複数組あり、各組の永久磁石の中の各永久磁石は各組の装着溝の各装着溝に対応して嵌め込まれるモーター回転子を提供する。
【0007】
また、各組の装着溝は第1の装着溝と第2の装着溝とを含み、第1の装着溝と第2の装着溝に嵌め込まれる永久磁石はそれぞれ第1の永久磁石と第2の永久磁石であって、各組の永久磁石の中の各永久磁石の、永久磁石の対称線に沿う方向の厚みの和をTとし、各永久磁石の、永久磁石の対称線に沿う方向の距離の和をgとすると、
である。
【0008】
また、各組の装着溝は第1の装着溝と、第2の装着溝と、第3の装着溝と、を含み、第1の装着溝、第2の装着溝、及び第3の装着溝に嵌め込まれる永久磁石はそれぞれ第1の永久磁石、第2の永久磁石、及び第3の永久磁石で、各組の永久磁石の中の各永久磁石の、永久磁石の対称線に沿う方向の厚みの和をTとし、各永久磁石の、永久磁石の対称線に沿う方向の距離の和をgとすると、
である。
【0009】
また、各永久磁石の両端とそれが嵌め込まれる装着溝の両端との間に隙間が形成されている。
【0010】
また、永久磁石の両端と装着溝の両端との間の隙間に非透磁媒体が充填されている。
【0011】
また、永久磁石の、回転子の軸線に垂直な横断面の中央の厚みは両端の厚みと同じ或いは両端より大きい。
【0012】
また、永久磁石の、回転子の軸線に垂直な横断面が矩形形状である。
【0013】
また、装着溝の、回転子の軸線に垂直な断面がU字形形状である。
【0014】
また、各組の永久磁石は、回転子の軸線に垂直な横断面がアーチ形の永久磁石を含む。
【0015】
また、各組の永久磁石の中の各永久磁石の、回転子の径方向に沿って回転子の中心に接近する表面はアーチ形の表面である。
【0016】
また、各組の永久磁石の中の各永久磁石はいずれも、横断面がアーチ形の永久磁石である。
【0017】
また、各組の永久磁石のうち、回転子の径方向に沿って最も外側に位置する永久磁石の、回転子の中心から遠ざかる表面は平面で、回転子の中心に接近する表面はアーチ形の表面である。
【0018】
また、各組の永久磁石において、各永久磁石のアーチ形の表面は全て回転子の中心に向かって突出する。
【0019】
また、各組の永久磁石において、各永久磁石のアーチ形の表面のうち、回転子の中心へ接近するアーチ形の表面ほど、弧度が大きくなる。
【0020】
本発明に係る一態様によると、上記のモーター回転子を備えるモーターが提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明のモーター回転子及びそれを備えるモーターによれば、鉄心に鉄心の周方向に沿って複数組の装着溝が設けられ、各組の装着溝が鉄心の径方向に不連続的に設けられた2つ又は2つ以上の装着溝を含み、複数組の永久磁石の中の各永久磁石は各組の装着溝の各装着溝に対応して嵌め込まれる。d軸に複数層の永久磁石が設けられ、且つ永久磁石自体のリラクタンスが大きく、空気の透磁率に相当するので、d軸方向のインダクタンスLは小さくなり、一方、q軸方向において、鉄心自体が高い透磁率を有するので、q軸のインダクタンスLは大きくなり、それにより、モーター回転子のリラクタンストルクを増加して、モーターの効率を向上させ、希土類永久磁石の使用量を増加する方法を利用する必要がなくなり、希土の使用量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
ここで説明する図面は本発明を理解させるためのもので、本発明の一部を構成し、本発明における実施例及びその説明は本発明を解釈するためのもので、本発明を不当に限定するものではない。
図1図1は、本発明に係るモーター回転子の第1の実施例の構造を示す図である。
図2図2は、本発明に係るモーター回転子の第2の実施例の構造を示す図である。
図3図3は、本発明に係るモーター回転子の第3の実施例の構造を示す図である。
図4図4は、本発明に係るモーター回転子の第1の実施例の永久磁石の厚み及び永久磁石間の間隔を示す図である。
図5図5は、本発明に係るモーター回転子の第2の実施例の永久磁石の厚み及び永久磁石間の間隔を示す図である。
図6図6は、本発明に係るモーター回転子の第1の実施例のd軸とq軸のインダクタンス差と永久磁石厚み及び永久磁石の間隔との関係を示す図である。
図7図7は、本発明に係るモーター回転子の第2の実施例のd軸とq軸のインダクタンス差と永久磁石厚み及び永久磁石の間隔との関係を示す図である。
図8図8は、本発明に係る第1の実施例の磁束分布を示す効果図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ実施例に関して本発明を詳しく説明する。
図1に示す本発明に係るモーター回転子の第1の実施例のように、モーター回転子は、鉄心10と、鉄心10の内部に設けられた永久磁石20と、を含み、鉄心10には、鉄心10の周方向に沿って複数組の装着溝30が設けられ、各組の装着溝30は鉄心10の径方向に不連続的に設けられた2つ又は2つ以上の装着溝30を含み、永久磁石20は複数組あり、各組の永久磁石20の中の各永久磁石20が各組の装着溝30の各装着溝30に対応して嵌め込まれる。
【0024】
図1中のモーター回転子の鉄心10は、けい素鋼板を積層してなり、一定の積層高さを有し、鉄心10の軸心を円心としてその円周方向に沿って均一に6組の装着溝30が分布され、各組の装着溝30はさらに2層のアーチ形の装着溝30を含む。モーター回転子のd軸とq軸において、図示したように、装着溝30はd軸方向に沿って順に収斂されて小さくなる。装着溝30に永久磁石20を設ける場合、同組の永久磁石20がモーター回転子の外周方向に向けて同一の極性を有しなければならず、例えば、図1に示すように、d軸方向に2層の永久磁石が全てS極をなし、同時に、隣り合う二組の永久磁石20の磁性が逆になり、6組の永久磁石20は外へ向けて円周方向に沿ってNS極の順で交互に分布されている。d軸方向に複数層の永久磁石20が設けられ、且つ永久磁石20自体のリラクタンスが大きく、空気の透磁率に相当するので、d軸方向のインダクタンスLは小さくなり、一方、q軸方向は鉄心10自体が高い透磁率を有するので、q軸方向のインダクタンスLが大きくなり、これにより、モーター回転子のリラクタンストルクを増加させることで、モーターの出力トルクを増加させ、さらにモーターの効率を向上させる。このような方法でモーターの効率を向上させるため、希土類永久磁石を追加してモーターの効率を向上させる方法の替わりに用いられることができ、希土の使用量を低減し、エネルギーを節約できる一方、環境負担を低減でき、また、コストを引き下げ、製品の競争力を高めることが可能となる。
【0025】
本実施例において、図1に示すように、各永久磁石20の両端とそれが嵌め込まれる装着溝30の両端との間に隙間が形成されている。永久磁石20の両端と装着溝30の両端との間の隙間に非透磁媒体を充填することが好ましい。
【0026】
図1に示すように、各組の永久磁石20は、回転子の軸線に垂直な横断面がアーチ形である永久磁石20を含み、各組の永久磁石20の中の各永久磁石20は、回転子の径方向に沿って回転子の中心に接近する表面がアーチ形の表面である。本実施例において、各組の永久磁石20の中の各永久磁石20はいずれも断面がアーチ形の永久磁石で、つまり、永久磁石20は厚みが同一のアーチ形である。アーチ形の永久磁石20は装着溝30より僅かに短く、永久磁石20を装着溝30に挿入した後、永久磁石20の両端部にいずれも隙間が形成され、その中に空気又はその他の非透磁性媒体を充填することができる。
【0027】
図4に示すように、モーター回転子の第1の実施例において、各組の装着溝30は、回転子の中心から遠ざかる第1の装着溝と、回転子の中心に接近する第2の装着溝と、を含み、第1の装着溝と第2の装着溝に嵌め込まれる永久磁石20はそれぞれ、第1の永久磁石と第2の永久磁石であって、各組の永久磁石20中の各永久磁石20の、永久磁石20の対称線に沿う方向の厚みの和をTとし、各永久磁石20の、永久磁石20の対称線に沿う方向の距離の和をgとすると、
である。図8に示すように、その値が上記式を満たす場合、隣り合う2層の磁性鋼通路間の磁束分布が密集し、q軸磁気通路を有効に利用し、モーターのトルク出力を増加することができる。
【0028】
具体的に、回転子の軸方向の横断面において、第1の永久磁石と第2の永久磁石の最長辺をそれぞれ第1の最長辺と第2の最長辺とし、第1の最長辺の幾何学的中心から第1の最長辺上の任意の一点までの接続線と、第1の最長辺とその対向辺の交差点との間の距離を第1の永久磁石の厚みとし、第2の最長辺の幾何学的中心から第2の最長辺上の任意の一点までの接続線と、第2の最長辺とその対向辺の交差点との間の距離を第2の永久磁石の厚みとする。第1の永久磁石と第2の永久磁石の2つの対向辺の中の長辺の幾何学的中心から第1の永久磁石と第2の永久磁石の2つの対向辺の交差点までの距離を第1の永久磁石と第2の永久磁石との間の距離とする。第1の永久磁石と第2の永久磁石の最大厚みをそれぞれT1とT2とし、第1の永久磁石と第2の永久磁石との間の最大距離をg1とする。
【0029】
本実施例において、各永久磁石20の、永久磁石20の対称線に沿う方向の厚みが永久磁石20の最大厚みであるので、T=T1+T2となる。本実施例において、各組に2つの永久磁石20が含まれるため、第1の永久磁石と第2の永久磁石との間の最大距離g1は、各永久磁石20の、永久磁石20の対称線に沿う方向の距離の和gと等しく、つまり、g=g1である。
【0030】
試験テストデータに基づいて、図6に示す第1の実施例のモーター回転子のd軸とq軸のインダクタンス差と永久磁石の厚み及び永久磁石の間隔との関係を得られる。gとTの比が
を満たす場合、大きいL-L値を得られ、これにより、モーターの出力トルクを増加させ、モーターの効率を向上させることができる。
また、
であることが好ましい。
【0031】
図2に示す本発明に係るモーター回転子の第2の実施例において、鉄心10の軸心を円心とし、その円周方向に沿って4組の装着溝30が均一に分布され、各組の装着溝30はさらに、3層のアーチ形の装着溝30を含む。
【0032】
各組の永久磁石20のうち、回転子の径方向に沿って最も外側に位置する永久磁石20の、回転子の中心から遠ざかる表面は平面で、回転子の中心に接近する表面はアーチ形の表面で、その他の各永久磁石20の、回転子の中心から遠ざかる表面及び回転子の中心に接近する表面はいずれもアーチ形の表面である。各組の永久磁石20において、各永久磁石20のアーチ形の表面は全て回転子の中心に向かって突出する。各組の永久磁石20において、各永久磁石のアーチ形の表面のうち、回転子の中心へ接近するアーチ形の表面ほど、弧度が大きくなる。したがって、本実施例において、永久磁石20の、回転子の軸線に垂直な横断面の中央厚みがその両端の厚みより大きく、即ち、永久磁石20はだんだん変化するアーチ形で、その中央の厚みが最も大きく、両端の厚みがだんだんと低減される。
【0033】
図3に示す本発明に係るモーター回転子の第3の実施例において、鉄心10の軸心を円心とし、その円周方向に沿って8組の装着溝30が均一に分布されており、各組の装着溝30はさらに、2層の矩形の装着溝30を含む。
【0034】
永久磁石20は、回転子の軸線に垂直な横断面の形状が矩形で、回転子の軸線に垂直な横断面の中央の厚みがその両端の厚みと同じである。装着溝30は、回転子の軸線に垂直な断面の形状がU字形状である。回転子の中心に接近する永久磁石20とそれが位置する装着溝30との間の隙間は、回転子の中心から遠ざかる永久磁石20とそれが位置する装着溝30との間の隙間より大きい。
【0035】
アーチ形の永久磁石が成型時に材料の影響を大きく受け、成型工程の後半は精密加工を行う工程が多いが、矩形の永久磁石の成型及び加工工程は比較的に簡単であるので、矩形の永久磁石を用いると、生産率を向上させるとともに、通用性が強くなり、回転子の第1層の永久磁石と第2層の永久磁石とが互いに通用できる。したがって、方形の永久磁石を用いると、コストを低減できる。同時に、当該U形構造では、磁性鋼の両端に隙間が形成されたので、サイズの異なる方形の永久磁石を簡単に当該隙間に挿入でき、モーターの性能を調節する作用を果たすと共に、新しい回転子溝型を変更する必要がなく、回転子の構造の通用化を実現できる。
【0036】
図5に示すように、モーター回転子の第2の実施例において、各組の装着溝30は、回転子の中心から遠ざかる位置から回転子の中心に接近する位置へ順に設けた第1の装着溝と、第2の装着溝と、第3の装着溝と、を含み、第1の装着溝、第2の装着溝、第3の装着溝に嵌め込まれる永久磁石20はそれぞれ第1の永久磁石、第2の永久磁石、第3の永久磁石であって、各組の永久磁石20の中の各永久磁石20の、永久磁石20の対称線に沿う方向の厚みの和をTとし、各永久磁石の、永久磁石20の対称線に沿う方向の距離の和をgとすると、
である。
【0037】
具体的に、回転子の横断面に沿う径方向において、第1の永久磁石、第2の永久磁石、第3の永久磁石の最長辺をそれぞれ、第1の最長辺、第2の最長辺、第3の最長辺とし、第1の最長辺の幾何学的中心から第1の最長辺上の任意の一点までの接続線と、第1の最長辺とその対向辺の交差点との間の距離を第1の永久磁石の厚みとし、第2の最長辺の幾何学的中心から第2の最長辺上の任意の一点までの接続線と、第2の最長辺とその対向辺の交差点との間の距離を第2の永久磁石の厚みとし、第3の最長辺の幾何学的中心から第3の最長辺上の任意の一点までの接続線と、第3の最長辺とその対向辺の交差点との間の距離を第3の永久磁石の厚みとする。第1の永久磁石と第2の永久磁石との2つの対向辺の中の長辺の幾何学的中心から第1の永久磁石と第2の永久磁石との2つの対向辺の交差点までの距離を第1の永久磁石と第2の永久磁石との間の距離とし、第2の永久磁石と第3の永久磁石との二つの対向辺の中の長辺の幾何学的中心から第2の永久磁石と第3の永久磁石との二つの対向辺の交差点までの距離を第2の永久磁石と第3の永久磁石との間の距離とする。
【0038】
第1の永久磁石、第2の永久磁石、第3の永久磁石の最大厚みをそれぞれT1、T2、T3とし、第1の永久磁石と第2の永久磁石との間の最大距離をg1、第2の永久磁石と第3の永久磁石との間の最大距離をg2とする。図5に示すように、本実施例において、各永久磁石20の、永久磁石20の対称線に沿う方向の厚みは各永久磁石20の最大厚みで、即ち、各組の装着溝30における各永久磁石20の最大厚みの和はT=T1+T2+T3であり、各永久磁石20の、永久磁石20の対称線に沿う方向の距離は各永久磁石20間の最大距離で、即ち、g=g1+g2である。
【0039】
図7は、第2の実施例のモーター回転子のd軸とq軸のインダクタンス差と永久磁石厚み及び永久磁石の間隔との関係を示す図であり、gとTの比が
を満たす場合、大きいL-L値を得られ、これにより、モーターの出力トルクを増加させ、モーターの効率を向上させることができる。
【0040】
本発明は、さらに上述のモーター回転子を備えるモーターを提供する。
本発明のモーターによれば、永久磁石の厚みとその間隔との関係を限定することでリラクタンストルクを最大限に利用でき、モーターの効率も高められる。本発明のモーターを、エアコンの圧縮機、電気自動車及び送風機システムに適用できることは言うまでもない。
【0041】
上述のように、本発明の上述の実施例によれば、以下の技術的効果を実現できる。
本発明のモーター回転子及びそれを備えるモーターによれば、モーター回転子のリラクタンストルクを高めることで、モーターの出力トルクを高め、それによりモーターの効率を向上させることができる。このような方法でモーターの効率を向上させるため、希土類永久磁石を追加してモーターの効率を向上させる方法の替わりに用いられることができ、希土の使用量を低減し、エネルギーを節約できると共に、環境負担を低減でき、また、コストを引き下げ、製品の競争力を高めることが可能となる。
【0042】
以上は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではない。当業者であれば本発明に様々な修正や変形が可能である。本発明の精神や原則内での如何なる修正、置換、改良なども本発明の保護範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8