(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酸変性ポリプロピレン樹脂が、アイソタクチックポリプロピレン−(無水)マレイン酸二元共重合体であることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン樹脂押出しラミネート用アンカーコート剤。
酸変性ポリプロピレン樹脂に含まれる未反応不飽和カルボン酸成分の残存量が50〜10,000ppmであることを特徴とする請求項1または2記載のポリプロピレン樹脂押出しラミネート用アンカーコート剤。
酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、ポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂を、1〜100質量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂押出しラミネート用アンカーコート剤。
熱可塑性樹脂フィルム層、アンカーコート層、および押出しポリプロピレン樹脂層が少なくともこの順に積層されてなる包装材料であって、アンカーコート層が、請求項1〜4のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂押出しラミネート用アンカーコート剤により形成された塗膜であることを特徴とする包装材料。
請求項1〜4のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂押出しラミネート用アンカーコート剤を、熱可塑性樹脂フィルム層の少なくとも一方の面に塗布し乾燥して、アンカーコート層を形成した後、形成されたアンカーコート層の上に、溶融したポリプロピレン樹脂を、押出しラミネートにより積層することを特徴とする包装材料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリプロピレン樹脂押出しラミネート用アンカーコート剤は、酸変性ポリプロピレン樹脂および水性媒体を含有する水性分散体である。
【0017】
本発明において、酸変性ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン成分が、アイソタクチック構造からなるホモポリプロピレンであることが必要である。ポリプロピレンが、アイソタクチック構造以外の、シンジオタクチック構造、アタクチック構造などの構造の場合、熱可塑性樹脂フィルム基材と押出しポリプロピレン樹脂との接着性に劣る傾向がある。ここで、アイソタクチック構造とは、ポリプロピレン主鎖に対して側鎖であるメチル基が同一方向に位置する構造のことをいう。ただし、一般的にアイソタクチックポリプロピレン樹脂においても、ポリプロピレン主鎖に対して側鎖であるメチル基の方向に、わずかながら不一致が認められることがある。本発明においては、このようなポリプロピレン主鎖に対して側鎖であるメチル基の方向の不一致の割合(以下、「不一致率」ということがある)が、ポリプロピレン樹脂の側鎖であるメチル基100モル%中の3.0モル%以下であることが好ましく、2.0モル%以下であることがより好ましく、1.0モル%以下であることがさらに好ましく、0.5モル%以下であることが特に好ましい。不一致率が3モル%を超えた場合は、熱可塑性樹脂フィルム基材への接着性が低下する傾向にある。
【0018】
ポリプロピレン樹脂は、一般に、プロピレン成分のみからなるホモポリプロピレン、エチレン成分を4〜5質量%含有したランダムポリプロピレンやブロックポリプロピレン、エチレン成分や1−ブテン成分などを含有したポリプロピレン3元共重合体であるターポリマーなどに分類できる。しかし、本発明における酸変性ポリプロピレン樹脂のポリプロピレン成分は、オレフィン成分がプロピレン成分からのみからなるホモポリプロピレンであることが必要である。酸変性ポリプロピレン樹脂のポリプロピレン成分が、ホモポリプロピレン以外の、ランダムポリプロピレンやブロックポリプロピレン、ターポリマーなどのポリプロピレンである場合には、熱可塑性樹脂フィルム基材と押出しポリプロピレン樹脂との接着性に劣る傾向がある。
【0019】
本発明における酸変性ポリプロピレン樹脂は、上記のようなアイソタクチック構造からなるホモポリプロピレンが、不飽和カルボン酸成分により酸変性されたものである。
酸変性に用いられる不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、フマル酸、クロトン酸などのほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミドなどが挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸が、接着性の観点から好ましく、特に(無水)マレイン酸が好ましい。なお、「(無水)〜酸」とは、「〜酸または無水〜酸」を意味する。すなわち、(無水)マレイン酸とは、マレイン酸または無水マレイン酸を意味する。
不飽和カルボン酸成分は、酸変性ポリプロピレン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられ、製造のし易さや接着性の観点から、グラフト共重合が好ましい。
【0020】
不飽和カルボン酸成分を、ポリプロピレン樹脂へ導入するグラフト共重合方法は、特に限定されず、例えば、ラジカル発生剤存在下、ポリプロピレン樹脂と不飽和カルボン酸とをポリプロピレン樹脂の融点以上に加熱溶融して反応させる方法や、ポリプロピレン樹脂と不飽和カルボン酸とを有機溶媒に溶解させた後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌して反応させる方法が挙げられる。操作が簡便である点から、前者の方法が好ましい。
グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、エチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル類が挙げられる。これらは反応温度によって適宜、選択して使用すればよい。
【0021】
酸変性ポリプロピレン樹脂における共重合成分としての不飽和カルボン酸成分の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、1〜7質量%がより好ましく、2〜5質量%がさらに好ましい。不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1質量%未満であると、後述する水性分散体への加工が困難となったり、十分な接着性が得難い傾向にある。一方、10質量%を超えると、押出しポリプロピレン樹脂層との接着性が低下する傾向にある。
【0022】
本発明において、酸変性ポリプロピレン樹脂は、オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分以外の成分、たとえば(メタ)アクリル酸エステルのような成分を、共重合成分として含有してもよい。このような共重合成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、酸変性ポリプロピレン樹脂の20質量%以下であることが好ましい。
【0023】
本発明における酸変性ポリプロピレン樹脂の最も好ましい具体例としては、アイソタクチックポリプロピレン−(無水)マレイン酸二元共重合体が挙げられる。酸変性ポリプロピレン樹脂が、アイソタクチックポリプロピレン−(無水)マレイン酸二元共重合体であることで、ポリエステル樹脂フィルムやポリアミド樹脂フィルムなどの熱可塑性樹脂フィルム基材との接着性がより良好なものとなり、さらには、ライン速度の高速化やPP臭の抑制効果に優れたものとなる。なお、アイソタクチックポリプロピレン−(無水)マレイン酸二元共重合体における(無水)マレイン酸は、無水マレイン酸、マレイン酸のいずれであってもよく、両者が混在していてもよい。両者の混在した組成とは、アイソタクチックポリプロピレン−無水マレイン酸−マレイン酸共重合体のことであり、本発明ではこの共重合体も、アイソタクチックポリプロピレン−(無水)マレイン酸二元共重合体に含まれる。
【0024】
酸変性ポリプロピレン樹脂の分子量の目安となる170℃、2160g荷重におけるメルトフローレートは、0.01〜300g/10分であることが好ましく、0.1〜100g/10分であることがより好ましく、1〜50g/10分であることがさらに好ましく、1〜20g/10分であることが特に好ましい。メルトフローレートが300g/10分を超える場合は、耐内容物性が低下する傾向にあり、0.01g/10分未満の場合は、樹脂を高分子量化する際の製造面に制約を受けることがある。
【0025】
酸変性ポリプロピレン樹脂は、耐熱性の観点から、融点が100〜200℃であることが好ましく、120〜180℃であることがより好ましく、130〜170℃であることがさらに好ましく、140〜160℃であることが特に好ましい。
【0026】
本発明における酸変性ポリプロピレン樹脂は、酸変性ポリプロピレン樹脂に含まれる、未反応不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量が50〜10,000ppmであることが好ましく、100〜7,000ppmであることがより好ましく、200〜5,000ppmであることがさらに好ましく、300〜3,000ppmであることが特に好ましく、300〜2,000ppmであることが最も好ましい。未反応不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量が上記好ましい範囲であることで、熱可塑性樹脂フィルム基材と押出しポリプロピレン樹脂との接着性や耐内容物性能、さらにはライン速度の高速化やPP臭の抑制効果に優れたものとなる。ここで未反応不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量とは、酸変性ポリプロピレン樹脂の製造の際に原料として使用された不飽和カルボン酸モノマー成分のうち、ポリプロピレン樹脂と反応せずに遊離状態で酸変性ポリプロピレン樹脂中に残存する不飽和カルボン酸モノマー成分の量を意味する。
【0027】
酸変性ポリプロピレン樹脂に含まれる未反応不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量は、酸変性ポリプロピレン樹脂と水性媒体とから水性分散体を作製する前において、例えば、酸変性ポリプロピレン樹脂を加熱および減圧して、未反応不飽和カルボン酸モノマー成分を留去する方法、酸変性ポリプロピレン樹脂を溶媒に溶解させて再沈殿により、未反応不飽和カルボン酸モノマー成分を分離する方法、粉末やペレット状にした酸変性ポリプロピレン樹脂を水や有機溶媒などの液で洗浄して、未反応不飽和カルボン酸モノマー成分を除去する方法などの方法で低減することが可能である。
【0028】
これらの方法の中でも、粉末やペレット状にした酸変性ポリプロピレン樹脂を水や有機溶媒などを洗浄液として用いて洗浄する方法が、低減効果が高く好ましい。
洗浄液に使用する有機溶媒としては、酸変性ポリプロピレン樹脂に対する溶解性が劣り、かつ不飽和カルボン酸モノマー成分に対する溶解性に優れるものを選定することが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコールや、アセトンなどを用いることが好ましい。
【0029】
また、洗浄液として、有機アミンを添加したものを使用することで、不飽和カルボン酸成分の残存量を効率よく低減することが可能となる。洗浄液に添加できる有機アミンとしては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−メトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2,2−ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピロール、ピリジン等が挙げられる。
洗浄液における有機アミンの含有量は、未反応不飽和カルボン酸モノマー成分の低減効率の観点から、洗浄液100質量部に対して、0.5〜30質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。
【0030】
具体的な洗浄方法としては、例えば、粉末やペレット状にした酸変性ポリプロピレン樹脂と、水や有機溶媒などからなる洗浄液とを混合し、加熱および攪拌する方法が挙げられる。また、洗浄回数を増やすことで、残存量をより低減することが可能となる。洗浄液の量は、酸変性ポリプロピレン樹脂と等質量以上であることが好ましい。洗浄温度としては、樹脂の溶解や変形のない範囲で高温であることが好ましい。洗浄時間としては、30分以上が好ましく、60分以上がより好ましい。洗浄後の酸変性ポリプロピレン樹脂は、加熱や減圧などにより、洗浄液を乾燥させることが好ましい。
【0031】
次に、本発明における水性媒体について説明する。
本発明における水性分散体は、上記酸変性ポリプロピレン樹脂と、水性媒体とを含有する。水性媒体とは、水または、水を主成分とする液体のことであり、後述する塩基性化合物や有機溶媒を含有していてもよい。
【0032】
本発明における水性媒体には、塩基性化合物が含有されていることが好ましい。水性分散体中に含まれる酸変性ポリプロピレン樹脂のカルボキシル基が、塩基性化合物によって中和され、生成したカルボキシルアニオン間の電気反発力によって、微粒子間の凝集が防がれ、水性分散体に分散安定性が付与される。塩基性化合物としてはカルボキシル基を中和できるものであればよいが、包装材料に用いた際の包装材料の性能を良好に保つ観点から、揮発性のものを用いることが好ましい。
【0033】
塩基性化合物としては、アンモニアや有機アミンが好ましい。有機アミンの具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−メトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2,2−ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピロール、ピリジン等が挙げられる。
塩基性化合物の含有量は、酸変性ポリプロピレン樹脂中のカルボキシル基に対して0.5〜10倍当量であることが好ましく、0.8〜5倍当量であることがより好ましく、0.9〜3.0倍当量であることが特に好ましい。塩基性化合物の含有量が0.5倍当量未満であると、塩基性化合物の添加効果が認められず、一方、含有量が10倍当量を超えると、アンカーコート層形成時の乾燥時間が長くなったり、水性分散体の安定性が低下することがある。
【0034】
本発明における水性媒体は、さらに有機溶媒を含有してもよい。有機溶媒を含有することで基材への濡れ性を改善することができる。さらには、後述する酸変性ポリプロピレン樹脂の水性分散化の際に有機溶媒を添加することで、水性分散化を促進し、分散粒子径を小さくすることができる。
水性分散体中の有機溶媒の含有量は、水性分散体全体に対し、50質量%以下であることが好ましく、0.1〜45質量%であることがより好ましく、2〜40質量%であることがさらに好ましく、3〜35質量%であることが特に好ましい。有機溶媒の含有量が50質量%を超えると、水性分散体の安定性が低下することがある。
水性分散体に含有する有機溶媒は、水性分散化促進性能や分散安定性の観点から、20℃の水に対する溶解性が10g/L以上であることが好ましく、20g/L以上であることがより好ましく、50g/L以上であることがさらに好ましい。
また、水性分散体を含有するアンカーコート剤を乾燥してアンカーコート層を得る際の乾燥性の観点から、有機溶媒の沸点は、200℃以下であることが好ましい。沸点が200℃を超える有機溶媒は、アンカーコート層に残存する傾向にあり、接着性等が低下することがある。
【0035】
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル、1,2−ジメチルグリセリン、1,3−ジメチルグリセリン、トリメチルグリセリン等が挙げられる。
中でも、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散化促進により効果的であり、好ましい。
本発明では、これらの有機溶媒を複数混合して使用してもよい。
【0036】
次に、本発明における水性分散体について説明する。
本発明における水性分散体は、酸変性ポリプロピレン樹脂と、水性媒体とを含有し、酸変性ポリプロピレン樹脂は、水性媒体中に分散している。
【0037】
水性分散体中に分散している酸変性ポリプロピレン樹脂粒子の数平均粒子径は、押出しラミネートのライン速度を高速化した際の接着性の観点から、0.5μm以下であることが好ましく、0.001〜0.3μmであることがより好ましく、0.01〜0.2μmであることがさらに好ましく、0.02〜0.1μmであることが特に好ましく、0.02〜0.07μmであることが最も好ましい。
【0038】
本発明において、水性分散体における酸変性ポリプロピレン樹脂の含有量は、コーティング条件やコーティング厚み、性能等に応じて適宜選択でき、特に限定されるものでないが、水性分散体の粘性を適度に保ち、かつ良好なコーティング性を発現させる点で、1〜60質量%であることが好ましく、3〜55質量%であることがより好ましく、5〜50質量%であることがさらに好ましく、10〜45質量%であることが特に好ましい。
【0039】
本発明における水性分散体の粘度は、特に限定されないが、B型粘度計で20℃条件下にて測定した粘度は、4〜100000mPa・sであることが好ましい。また、水性分散体のpHも特に限定されないが、pH6〜12であることが好ましい。
【0040】
本発明における水性分散体は、不揮発性の水性分散化助剤を実質的に含有しないことが好ましい。本発明は、不揮発性水性分散化助剤の使用を排除するものではないが、水性化分散助剤を用いずとも、酸変性ポリプロピレン樹脂を数平均粒子径0.5μm以下で水性媒体中に安定的に分散することができる。本発明における水性分散体は、不揮発性の水性分散化助剤を実質的に含有しないため、接着性や耐内容物性、耐水性に優れており、これらの性能は長期的にもほとんど変化しない。
【0041】
ここで、「水性分散化助剤」とは、水性分散体の製造において、水性分散化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことであり、「不揮発性」とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。
【0042】
「不揮発性水性分散化助剤を実質的に含有しない」とは、こうした助剤を製造時(酸変性ポリプロピレン樹脂の水性分散化時)に用いず、得られる水性分散体が結果的にこの助剤を含有しないことを意味する。したがって、こうした水性分散化助剤は、含有量がゼロであることが特に好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、酸変性ポリプロピレン樹脂に対して5質量%以下、好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%未満程度含まれていても差し支えない。
【0043】
本発明でいう不揮発性水性分散化助剤としては、例えば、後述する乳化剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子などが挙げられる。
【0044】
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0045】
保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物等が挙げられる。
【0046】
次に、本発明における水性分散体の製造方法について説明する。
酸変性ポリプロピレン樹脂の水性分散体を製造する方法として、たとえば、酸変性ポリプロピレン樹脂と、水性媒体(必要に応じて有機溶剤や塩基性化合物等を含有)とを、密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法などが知られている。しかしながら本発明における酸変性ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン成分が、アイソタクチック構造からなるホモポリプロピレンであることから、結晶度が高くかつ高融点であり、また酸、アルカリ、有機溶媒などの薬品や水に対して安定であるため、水性分散化が困難な特性を有している。特に得られる水性分散体の数平均粒子径を、好ましい範囲にすることはさらに困難であった。そのため、本発明では、このような方法の中でも、後述する製造方法を採用することが好ましい。以下に、本発明における好ましい製造方法について具体的に説明する。
【0047】
水性分散化に用いる装置としては、固/液撹拌装置や乳化機として使用されている容器を使用することができ、0.1MPa以上の加圧が可能な装置を使用することが好ましい。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されないが、酸変性ポリプロピレン樹脂が水性媒体中で浮遊状態となる程度の低速の撹拌でよい。したがって、高速撹拌(例えば1000rpm以上)やホモジナイザーの使用は必須ではなく、簡便な装置でも水性分散体の製造が可能である。
【0048】
上記の装置に、酸変性ポリプロピレン樹脂、塩基性化合物、有機溶媒および水などの原料を投入し、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合しておく。次いで、槽内の温度を80〜240℃、好ましくは100〜220℃、さらに好ましくは110〜200℃、特に好ましくは100〜190℃の温度に保ちつつ、好ましくは粗大粒子が無くなるまで攪拌を続ける(例えば、5〜300分間)。
上記工程において、槽内の温度が80℃未満であると、酸変性ポリプロピレン樹脂の水性分散化が進行し難くなり、一方、槽内の温度が240℃を超えると、酸変性アイソタクチックポリプロピレン樹脂の分子量が低下することがある。
【0049】
ここまでの工程で、酸変性ポリプロピレン樹脂は水性媒体におおよそ分散した状態となっている。しかし、本発明においては、酸変性ポリプロピレン樹脂の分散化をより良好なものとし、酸変性ポリプロピレン樹脂の数平均粒子径を、本発明で規定する好ましい範囲にするために、その後さらに系内に、塩基性化合物、有機溶媒および水から選ばれる少なくとも1種を加え、密閉容器中で、再度、100〜240℃の温度下で加熱(再昇温)、攪拌することが好ましい。このように、水性媒体を構成するものを追加し、再度加熱、攪拌することで、水性分散体中の酸変性ポリプロピレン樹脂の数平均粒子径や粒子径分布にかかる分散度を好ましい範囲に調整することができる。
再昇温の工程において、槽内の温度が100℃未満であると、酸変性ポリプロピレン樹脂の水性分散化が進行し難くなり、一方、槽内の温度が240℃を超えると、酸変性ポリプロピレン樹脂の分子量が低下することがある。
なお、塩基性化合物、有機溶媒、水を追加配合する方法は特に限定されないが、ギヤポンプなどを用いて加圧下で配合する方法や、一旦系内温度を下げ常圧になってから配合する方法などがある。
追加配合する塩基性化合物と、有機溶媒と、水との割合は、所望する固形分濃度、粒子径、分散度等に応じて適宜決めればよい。また、塩基性化合物、有機溶媒、水の合計は、配合した後の固形分濃度が1〜50質量%となるよう調整することが好ましく、2〜45質量%となる量がより好ましく、3〜40質量%となる量が特に好ましい。
【0050】
水性分散体の製造時に上記の有機溶媒を用いた場合には、水性分散化の後に、その一部またはすべてを、一般に「ストリッピング」と呼ばれる脱溶媒処理によって系外へ留去させ、有機溶媒の含有量を低減させてもよい。ストリッピングにより、水性分散体中の有機溶媒含有量を50質量%以下とすることが、水性分散体の安定性の観点から好ましい。
ストリッピングの工程では、水性分散化に使用した有機溶媒を実質的に全て留去することもできる。しかし、有機溶媒を実質的に全て留去するためには、装置の減圧度を高めたり、操業時間を長くする必要があり、生産性を考慮すると、有機溶媒含有量の下限は0.01質量%程度が好ましい。
ストリッピングの方法としては、常圧または減圧下で水性分散体を攪拌しながら加熱し、有機溶媒を留去する方法が挙げられる。また、水性媒体が留去されることにより、固形分濃度が高くなるので、例えば、粘度が上昇して作業性が低下するような場合には、予め水性分散体に水を添加しておいてもよい。
【0051】
水性分散体の固形分濃度は、このようなストリッピングによって有機溶媒を留去することや、水性媒体で希釈することにより調整することができる。
【0052】
上記の方法により、水性媒体中に、酸変性ポリプロピレン樹脂を、未分散樹脂がほとんどまたは全く残存することなく、水性分散化することが可能となる。しかし容器内の異物や少量の未分散樹脂を除くために、水性分散体を装置から払い出す際に、濾過工程を設けてもよい。濾過方法は限定されないが、例えば、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(例えば空気圧0.5MPa)する方法が挙げられる。このような濾過工程を設けることで、異物や未分散樹脂が存在した場合であってもそれらを除去できるので、得られた水性分散体をポリプロピレン樹脂押出しラミネート用アンカーコート剤として問題なく使用することができる。
【0053】
本発明のアンカーコート剤には、目的に応じて性能をさらに向上させるために、酸変性ポリプロピレン樹脂以外の樹脂(以下、「他の樹脂」と称すことがある)、架橋剤、無機粒子、顔料、染料等の添加剤を添加することができる。
【0054】
本発明のアンカーコート剤に添加される他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、変性ナイロン樹脂、ロジン系やテルペン系などの粘着付与樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。必要に応じて複数のものを混合使用してもよい。
【0055】
本発明のアンカーコート剤を熱可塑性樹脂フィルム基材に塗布乾燥した後、ポリプロピレン樹脂の押出しラミネートによって得られた積層体は、折りたたんで包装材料とし、これに油もしくは揮発性物質などの内容物を内封して保存した際に、折り目部分にデラミが発生することがある。しかしながら、アンカーコート剤にポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂を添加することによって、このようなデラミの発生を抑制することができる。ポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂の添加量は、水性分散体中の酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、1〜100質量部であることが好ましく、5〜60質量部であることがより好ましい。酸変性ポリプロピレン樹脂の水性分散体に、ポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などを添加する場合は、それぞれの樹脂の水性分散体であって、不揮発性水性分散化助剤を含有しないものを用いることが、包装材料の折り目部分のデラミを抑制する効果に優れるために好ましい。
【0056】
本発明のアンカーコート剤に好ましく添加されるポリエチレン樹脂は、酸変性ポリエチレン樹脂であることがより好ましく、不飽和カルボン酸の含有量が1〜5質量%である酸変性ポリエチレン樹脂であることが特に好ましい。酸変性ポリエチレン樹脂の具体例としては、不飽和カルボン酸の含有量が1〜5質量%のエチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体が挙げられる。
【0057】
本発明のアンカーコート剤に好ましく添加されるポリウレタン樹脂は、主鎖中にウレタン結合を含有する高分子であり、例えばポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応で得られるものである。
ポリウレタン樹脂は、接着性や水性媒体への分散性の点から陰イオン性基を有していることが好ましい。陰イオン性基とは水性媒体中で陰イオンとなる官能基のことであり、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基などである。この中でもカルボキシル基を有していることが好ましい。
ポリウレタン樹脂としては、包装材料の折り目部分のデラミを抑制する観点から、ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂、ポリエステル型ポリウレタン樹脂が好ましく、ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂がより好ましく、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂が特に好ましい。
なお、本発明におけるポリウレタン樹脂は、2液型、1液型のいずれであってもよい。しかし、ポットライフが長く使用時の作業性に優れる観点から1液型であることが好ましい。
2液型のポリウレタン樹脂とは、ポットライフの観点から、使用直前(およそ使用の12時間前まで)に、主にポリオール成分からなる主剤と、主にイソシアネート成分からなる硬化剤とを混合してから使用するポリウレタン樹脂のことであり、媒体の蒸発と共に主剤中のポリオール成分と硬化剤中のイソシアネート成分が反応し造膜するタイプである。
1液型のポリウレタン樹脂とは、長期のポットライフを有し、使用直前に複数の成分を混合する必要がないポリウレタン樹脂のことであり、媒体の蒸発のみであっても造膜するタイプである。
【0058】
本発明のアンカーコート剤に好ましく添加されるポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とを主成分とする高分子である。ポリエステル樹脂には、モノカルボン酸、モノアルコール、ヒドロキシカルボン酸が共重合されていてもよい。
【0059】
本発明のアンカーコート剤に添加される架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する架橋剤、多価の配位座を有する金属錯体などを用いることができる。
具体的には、オキサゾリン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤(ブロック型を含む)、アミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、エポキシ系架橋剤、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤、有機過酸化物などが挙げられる。
中でも、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する架橋剤がより好ましい。このような架橋剤としては、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤などが挙げられる。これらは複数を組み合わせて使用してもよい。中でも、包装材料とした場合の折り目部分のデラミを抑制する観点から、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤の添加が好ましい。
オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤の添加量は、水性分散体中の酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、0.1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。
【0060】
本発明のアンカーコート剤に添加される無機粒子としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化すず等の金属酸化物、炭酸カルシウム、シリカ等の無機粒子や、バーミキュライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ハイドロタルサイト、合成雲母等の層状無機化合物等が挙げられる。これらの無機粒子の平均粒子径は、水性分散体の安定性の面から、0.005〜10μmであることが好ましく、0.005〜5μmであることがより好ましい。なお、無機粒子として複数のものを混合して使用してもよい。酸化亜鉛は紫外線遮蔽の目的に、酸化すずは帯電防止の目的にそれぞれ使用できるものである。
【0061】
本発明のアンカーコート剤に添加する顔料、染料としては、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等が挙げられ、分散染料、酸性染料、カチオン染料、反応染料等、いずれのものも使用することが可能である。
本発明のアンカーコート剤には、さらに必要に応じて、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、増粘剤、耐候剤、難燃剤等の各種薬剤を添加することも可能である。
【0062】
以上のような添加剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また添加剤は、アンカーコート剤への添加、混合のしやすさの観点から、水溶性または水性分散性のものを用いることが好ましい。
【0063】
本発明のアンカーコート剤は、基材に塗布乾燥してアンカーコート層を形成した後、アンカーコート層を介してポリプロピレン樹脂を押出しラミネートする方法によって得られる包装材料全般に適用可能である。この方法が適用できるのであれば、包装材料の構成は特に限定されないが、本発明では以下に説明する包装材料に用いることによって、本発明の効果が好ましく発現される。
【0064】
次に、本発明の包装材料について説明する。
本発明の包装材料は、熱可塑性樹脂フィルム層、アンカーコート層、および、押出しポリプロピレン樹脂層が少なくともこの順に積層されてなる包装材料であって、アンカーコート層は、本発明のアンカーコート剤より得られる塗膜である。
【0065】
熱可塑性樹脂フィルム層に用いるフィルムとしては、種々の熱可塑性樹脂を原料として製造されたフィルムを用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と示すことがある)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、およびこれらの混合物などのポリエステル樹脂;ポリカプロンアミド(ナイロン6)、ポリへキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリ−p−キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)、およびこれらの混合物などのポリアミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、およびこれらの混和物などのポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、包装材料としたときの力学特性に優れるポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましく、中でもポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンがより好ましい。
【0066】
熱可塑性樹脂フィルムは、通常公知の方法で製造されたものを用いることができ、無延伸フィルムまたは延伸フィルムのどちらであってもよいが、透明性や光沢性付与の点から一軸または二軸延伸フィルムが好ましく、二軸延伸フィルムがより好ましい。フィルムの厚みは特に限定されず、通常5〜500μmのものが用いられる。
【0067】
熱可塑性樹脂フィルムは、接着性の向上のために、アンカーコート層を設ける面に表面活性化処理がなされていることが好ましい。表面活性化処理としては、例えば、コロナ放電処理、フレームプラズマ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理、オゾン処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、薬品処理、溶剤処理などが挙げられ、簡便さと接着効果のバランスから、コロナ放電処理が好ましい。
【0068】
アンカーコート層は、本発明のアンカーコート剤を、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に塗布、乾燥して形成された塗膜である。アンカーコート層を有することによって、熱可塑性樹脂フィルム層と押出しポリプロピレン樹脂層とは良好に接着することが可能となり、本発明の効果が発現される。
【0069】
アンカーコート層は、アンカーコート剤を、公知の方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法などの方法により、熱可塑性樹脂フィルム表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理または乾燥のための加熱処理に供し、水性媒体の一部または全てを乾燥することにより、均一な塗膜として、熱可塑性樹脂フィルム層表面に密着させて形成することができる。
【0070】
熱可塑性樹脂フィルム層は、アンカーコート層を形成する前に、予め、後述するバリア層やその他の層などを、どちらか一方の面に積層してから、もう一方の面の少なくとも一部に、アンカーコート剤を塗布、乾燥することが可能である。
【0071】
アンカーコート層の量は、塗布面の面積に対して、乾燥質量で0.001〜5g/m
2であることが好ましく、0.01〜3g/m
2であることがより好ましく、0.02〜2g/m
2であることがさらに好ましく、0.03〜1g/m
2であることが特に好ましく、0.05〜0.5g/m
2であることが最も好ましい。アンカーコート層の量が0.001g/m
2未満では、十分な接着性や耐内容物性が得られない傾向にあり、一方、5g/m
2を超える場合には、経済的に不利となる傾向にある。
【0072】
アンカーコート剤をコーティング後の乾燥の際は、水性媒体の全てを乾燥させることが、接着性や耐内容物性を良好にする観点から好ましい。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥温度として40〜200℃の範囲で、乾燥時間として1〜600秒の範囲で、乾燥性や性能を考慮して適宜選択すればよい。
【0073】
以上の方法で熱可塑性樹脂フィルムにアンカーコート層が積層された積層体は、直接インラインで後述するような押出しラミネート工程に供してもよいし、一旦ロールに巻き取った後、巻出しながら押出しラミネート工程に供してもよい。
【0074】
押出しポリプロピレン樹脂層は、熱可塑性樹脂フィルム層上のアンカーコート層に、ポリプロピレン樹脂を押出しラミネートすることによって形成された樹脂層であり、通常シーラント層としての役割を果たす。
【0075】
押出しラミネートに使用するポリプロピレン樹脂の種類としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ターポリマーなどのポリプロピレン樹脂、酸変性ポリプロピレン樹脂、プロピレンモノマーを共重合成分として全体の50質量%以上含有するポリプロピレン共重合体などが挙げられる。これらは、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造、アタクチック構造いずれの構造であってもよい。
【0076】
押出しポリプロピレン樹脂層を形成する方法としては、本発明のアンカーコート剤を熱可塑性樹脂フィルム層の少なくとも一方の面に塗布し乾燥することでアンカーコート層を形成した後、アンカーコート層の上に、溶融したポリプロピレン樹脂を押出しラミネートする方法が挙げられる。溶融したポリプロピレン樹脂を押出しラミネートした直後は、冷却ロールを設け、冷却固化させることが好ましい。押出しの際の、溶融ポリプロピレン樹脂の温度としては、接着性や耐内容物性を良好にする観点から、180〜400℃であることが好ましく、200〜300℃であることがより好ましく、220〜280℃であることが特に好ましい。押出しの際の溶融ポリプロピレン樹脂には、オゾン処理などの処理を施しても構わない。また、押出しラミネートの際は、押出しポリプロピレン樹脂層のさらに内側に、別の層を設けることを目的としたサンドラミネート法や共押出しラミネート法を併用してもよい。なお、包装材料における内側とは、押出しラミネートして得られた積層体を包装材料とした際の、内容物を内封する側の面(内面)のことであり、外側とはそのもう一方の面(外面)のことである。
【0077】
ポリプロピレン樹脂を押出しラミネートする際のライン速度(ラミネートされた積層体の巻き取り速度)は、100〜600m/分であることが好ましく、120〜500m/分であることがより好ましく、150〜400m/分であることがさらに好ましい。ライン速度が100/分未満の場合は、生産性が低く、さらにPP臭が高まる傾向があり、600m/分を超えた場合は、ラミネートが困難となる。
【0078】
本発明の包装材料は、熱可塑性樹脂フィルム層のさらに外側にバリア層が積層されていることが好ましい。バリア層を積層させることで、内容物の湿りや酸化が抑制され、内容物を良好に保持することが可能となる。
バリア層は、液体や気体を遮断できる材料であればどのような材料から構成されていてもよい。そのバリア性は、包装する内容物や保存期間などに応じて、最適範囲に適宜設定すればよく、おおむね、水蒸気透過度として、100g/m
2・day(40℃、90%RH)以下が好ましく、20g/m
2・day以下がより好ましく、10g/m
2・day以下がさらに好ましく、1g/m
2・day以下が特に好ましい。酸素透過度としては、100ml/m
2・day・MPa(20℃、90%RH)以下が好ましく、20ml/m
2・day・MPa以下がより好ましく、10ml/m
2・day・MPa以下がさらに好ましく、1ml/m
2・day・MPa以下が特に好ましい。
バリア層の具体例としては、アルミニウム箔などの軟質金属箔の他、アルミ蒸着、シリカ蒸着、アルミナ蒸着、シリカアルミナ2元蒸着などの蒸着層、さらには塩化ビニリデン系樹脂、変性ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、MXDナイロンなどからなる有機バリア層などが採用できる。中でも、安価でバリア性に優れることから、アルミ蒸着、シリカ蒸着、アルミナ蒸着、シリカアルミナ2元蒸着などの蒸着層が好ましく、隠蔽性の観点から、アルミ蒸着が特に好ましい。なお、蒸着層の上には保護コート層を設けてもよい。
【0079】
本発明の包装材料は、耐久性や剛性(例えば、耐衝撃性や耐ピンホール性など)、必要な物性(例えば、易引裂性やハンドカット性など)、各層間の接着性、意匠性など包装材料として要求される性能などを考慮し、上記、バリア層、熱可塑性樹脂フィルム層、アンカーコート層、および、押出しポリプロピレン樹脂層以外に、フィルム基材、印刷、紙、不織布などの、他の層を本発明の効果を損なわない範囲で、内側、外側および各層間に積層してもよい。
フィルム基材の種類としては、限定されず、熱可塑性樹脂フィルム層やバリア層と同じ材料のものを用いてもよい。また、他の層との層間には接着剤層を設けて公知の方法で積層してもよい。接着剤としては、1液タイプのウレタン系接着剤、2液タイプのウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、酸変性ポリオレフィンの水性分散体などを用いることが可能である。また、本発明のアンカーコート剤を他の層の接着に用いてもよい。
これら他の層は、公知の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、易接着コート剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含んでいてもよく、その他の材料と積層する場合の密着性を向上させるために、表面を、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理などで前処理してもよい。
他の層の厚さは、包装材料としての適性、積層する場合の加工性を考慮して決定すればよく、特に制限されないが、実用的には1〜300μmの範囲で、用途によっては300μm以上のものを採用すればよい。
【0080】
本発明の包装材料の態様としては、特に限定されない。三方シール袋、四方シール袋、ガセット包装袋、ピロー包装袋、ゲーベルトップ型の有底容器、テトラクラシック、ブリュックタイプ、チューブ容器、紙カップ(胴部と底部のブランク板を作製し、該ブランク板をカップ成形機で筒状の胴部と、該胴部の一方の開口端に底部を成形、熱接着してなる紙カップ容器など)、蓋材など種々あり、最内層のシーラント層にポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂製チャックを設けて、チャック付き包装袋とすることもできる。
【0081】
本発明の包装材料は、油や揮発性物質を含有した内容物に対して良好な耐性を有し、かつ製造ラインの速度(ポリプロピレン樹脂を押出しラミネートにより積層する際のライン速度)を早めることが可能なことから、スナック菓子用包装材料に好適である。さらには、PP臭を抑制することが可能となり、ポテトチップスなどのポテトスナック菓子の風味を損なうことがないため、ポテトスナック菓子用包装材料に最適である。ここで、ポテトスナック菓子とは、ジャガイモを主原料としたスナック菓子のことであり、ポテトチップスとは、生じゃがいもをスライスした後調理したポテトチップスと、加熱した生じゃがいもをつぶしたマッシュポテト、乾燥ポテト原料である乾燥ポテトグラニュール、乾燥マッシュポテト、乾燥ポテトフレークのうち、単独または2種以上に必要に応じ水を加えて混練し、生地を形成後、型抜きし、成型調理した成型ポテトチップスをいう。なお、型抜き後の生地を成型調理する前に、乾燥工程を設けたものでもよい。
【0082】
本発明の包装材料は、アンカーコート層を介して接着された、熱可塑性樹脂フィルム層と押出しポリプロピレン樹脂層との層間の接着性に優れている。熱可塑性樹脂フィルム層と押出しポリプロピレン樹脂層との層間の接着性としては、1N/15mm以上であることが好ましく、2N/15mm以上がより好ましく、3N/15mm以上が特に好ましく、4N/15mm以上がさらに好ましく、5N/15mm以上が最も好ましい。また、本発明の包装材料は、油や揮発性物質を含有した内容物を内封しても接着強度の保持率が高いことが好ましく、かつ、以上のような接着性を有していることがより好ましい。
【実施例】
【0083】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0084】
1.酸変性ポリプロピレン樹脂の特性
(1)酸変性ポリプロピレン樹脂の組成、構造、不一致率
1H−NMR分析装置(日本電子社製、ECA500、500MHz)より求めた。テトラクロロエタン(d
2)を溶媒とし、120℃で測定した。
【0085】
(2)酸変性ポリプロピレン樹脂の未反応不飽和カルボン酸成分の残存量
酸変性ポリプロピレン樹脂を約0.05g精秤し、20mlのメタノールを抽出溶媒とし、連続転倒混和により室温で21時間抽出を行った。この抽出液をディスクフィルター(孔径0.45μm)で濾過した濾液について、高速液体クロマトグラフィー(Hewlett Packard社製 HP1100、カラムはWaters社製 Puresil 5μ C18 120Å φ4.6mm×250mm(40℃))にて定量した。
未反応不飽和カルボン酸モノマー成分残存量が1000ppm未満の場合、酸変性ポリプロピレン樹脂ペレット量を0.5gに変更して同様に定量した。
検量線は、濃度既知の無水マレイン酸標準サンプルを用いて作成した。
【0086】
(3)酸変性ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)
JIS K7210:1999記載の方法に準じ、170℃、2160g荷重で測定した。
(4)酸変性ポリプロピレン樹脂の融点
パーキンエルマー社製DSC7を用いてDSC法にて測定した。
【0087】
2.ポリプロピレン樹脂押出しラミネート用アンカーコート剤の特性
(1)水性分散体中の分散粒子の数平均粒子径
マイクロトラック粒度分布計(日機装社製、UPA150、MODEL No.9340、動的光散乱法)を用いて求めた。粒子径算出に用いる樹脂の屈折率は1.50とした。
【0088】
3.包装材料の特性
(1)ラミネート強度
各実施例で得られた包装材料の80mm辺の中央付近から、100mm辺と平行に幅15mmで試験片を切り出し、引張り試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)を用い、20℃、65%RHの雰囲気中、引張速度200mm/分の条件で、試験片の熱可塑性樹脂フィルム層と押出しポリプロピレン樹脂層との界面を剥離するのに必要な強度を、T型剥離試験により測定した。測定はサンプル数10で行い、その平均値を、ラミネート強度とした。
【0089】
(2)耐内容物試験後のラミネート強度(耐内容物試験1)
各実施例で得られた包装材料に、内容物として12gの日清オイリオ社製サラダ油(キャノーラ油)を仕込み、空気を排除し、ヒートシールにより密封した。ヒートシールの際は、包装材料の中に空気が入らないように密封した。このサラダ油が密封された包装材料を50℃で2週間保存した。その後、内容物を除き、前記(1)と同様にして、ラミネート強度を測定した。測定はサンプル数10で行い、その平均値を、耐内容物試験後のラミネート強度とした。
【0090】
(3)耐内容物試験後の折り目部分の評価(耐内容物試験2)
上記(2)と同様にしてサラダ油が密封された包装材料を作成して、50℃で2週間保存した。その後、この包装材料のヒートシール部分を切除し内容物を除いた後、包装材料を広げ、包装材料の折り目に位置する部分のデラミの有無を目視で確認した。測定はサンプル数10で行い、10サンプル中のデラミのあったサンプル数で評価した。
なお、本評価におけるデラミのあったサンプル数は、実用上の観点から5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましく、1以下が特に好ましく、0が最も好ましい。
【0091】
(4)PP臭の評価
各実施例で得られた包装材料の内部のPP臭の程度を、熟練した臭いの官能試験員によって、以下の3段階の相対比較で評価した。なお、評価1の場合は、ポテトスナック菓子を内封しても不快な臭いはせず、ポテトスナック菓子の風味に悪影響はなく、評価2の場合は、ポテトスナック菓子を内封すると微かに不快な臭いがするが、実用上ポテトスナック菓子の風味に悪影響の無いレベル、すなわち実用レベルであり、評価3の場合は、ポテトスナック菓子を内封すると不快な臭いがして、実用上ポテトスナック菓子の風味に悪影響があり、問題となるレベルである。
評価1:PP臭が小
評価2:PP臭が中
評価3:PP臭が大
【0092】
〔酸変性ポリプロピレン樹脂の調製〕
調製例1(酸変性ポリプロピレン樹脂「PP1」の製造)
アイソタクチック構造のホモポリプロピレン樹脂(MFR=0.1g/10分−170℃・2160g)を窒素ガス通気下、常圧において、360℃×80分の熱減成処理を施し、得られたポリプロピレン樹脂1000gをジャケット付き反応器に入れ、窒素置換し、180℃まで加熱昇温し溶融させた後、無水マレイン酸125gを加え、均一に混合した。そこに、ジクミルパーオキサイド6.3gを溶解させたキシレン125gを滴下し、180℃で3時間撹拌し反応させた。その後、減圧下でキシレンを留去し、得られた反応物を3kgのアセトン中に投入し、樹脂を固化させた。この樹脂を細かく切断し、ペレット状に加工した。このペレット状の樹脂を「ベース樹脂」とした。
このベース樹脂100gを、アセトン300gと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌して樹脂を洗浄した。樹脂を洗浄液から回収後、さらに同様の方法を2回繰り返して樹脂を洗浄した。樹脂を洗浄液から回収後、さらにこの樹脂を、アセトンとジメチルアミノエタノールからなる洗浄液〔アセトン/ジメチルアミノエタノール=90/10(質量比)〕300gと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌し樹脂を洗浄し、遊離状態の無水マレイン酸を除去した。この樹脂を減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性ポリプロピレン樹脂「PP1」を得た。
【0093】
調製例2(酸変性ポリプロピレン樹脂「PP2」の製造)
調製例1で取得したベース樹脂100gを、アセトン300gと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌して樹脂を洗浄した。樹脂を回収後、さらに同様の方法で樹脂を洗浄した。樹脂を回収後、さらにこの樹脂を、アセトンとジメチルアミノエタノールからなる洗浄液〔アセトン/ジメチルアミノエタノール=90/10(質量比)〕300gと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌し樹脂を洗浄した。樹脂を回収後、さらに同様の方法(アセトンとジメチルアミノエタノールからなる洗浄液を使った方法)で樹脂を洗浄し、遊離状態の無水マレイン酸を除去した。この樹脂を減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性ポリプロピレン樹脂「PP2」を得た。
【0094】
調製例3(酸変性ポリプロピレン樹脂「PP3」の製造)
調製例1で取得したベース樹脂100gを、アセトン300gと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌して樹脂を洗浄した。樹脂を回収後、さらにこの樹脂を、アセトンとジメチルアミノエタノールからなる洗浄液〔アセトン/ジメチルアミノエタノール=90/10(質量比)〕300gと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌し樹脂を洗浄した。樹脂を回収後、さらに同様の方法(アセトンとジメチルアミノエタノールからなる洗浄液を使った方法)を2回繰り返して樹脂を洗浄し、遊離状態の無水マレイン酸を除去した。この樹脂を減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性ポリプロピレン樹脂「PP3」を得た。
【0095】
調製例4(酸変性ポリプロピレン樹脂「PP4」の製造)
アセトンでの洗浄およびアセトンとジメチルアミノエタノールからなる洗浄液での洗浄の際の温度50℃を80℃に変更した以外は、調製例3と同様の操作を行い、酸変性ポリプロピレン樹脂「PP4」を得た。
【0096】
調製例5(酸変性ポリプロピレン樹脂「PP5」の製造)
アセトンでの洗浄およびアセトンとジメチルアミノエタノールからなる洗浄液での洗浄の際の温度50℃を85℃に変更した以外は、調製例3と同様の操作を行い、酸変性ポリプロピレン樹脂「PP5」を得た。
【0097】
調製例6(酸変性ポリプロピレン樹脂「PP6」の製造)
調製例1で取得したベース樹脂100gを、アセトン300gと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌して樹脂を洗浄した。樹脂を回収後、さらに同様の方法を3回繰り返して樹脂を洗浄し、遊離状態の無水マレイン酸を除去した。この樹脂を減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性ポリプロピレン樹脂「PP6」を得た。
【0098】
調製例7(酸変性シンジオタクチックポリプロピレン樹脂「PP7」の製造)
シンジオタクチック構造のホモポリプロピレン樹脂(MFR=0.1g/10分−170℃・2160g)を窒素ガス通気下、常圧において、360℃×80分の熱減成処理を施し、得られたポリプロピレン樹脂1000gをジャケット付き反応器に入れ、窒素置換し、180℃まで加熱昇温し溶融させた後、無水マレイン酸125gを加え、均一に混合した。そこに、ジクミルパーオキサイド6.3gを溶解させたキシレン125gを滴下し、180℃で3時間撹拌し反応させた。その後、減圧下でキシレンを留去し、得られた反応物を3kgのアセトン中に投入し、樹脂を固化させた。この樹脂を細かく切断し、ペレット状に加工した。
このペレット状の樹脂100gをアセトン300gと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌して樹脂を洗浄した。樹脂を回収後、さらにこの樹脂を、アセトンとジメチルアミノエタノールからなる洗浄液〔アセトン/ジメチルアミノエタノール=90/10(質量比)〕300gと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌し樹脂を洗浄した。樹脂を回収後、さらに同様の方法(アセトンとジメチルアミノエタノールからなる洗浄液を使った方法)を2回繰り返して樹脂を洗浄し、遊離状態の無水マレイン酸を除去した。この樹脂を減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性シンジオタクチックポリプロピレン樹脂「PP7」を得た。
【0099】
調製例8(酸変性アイソタクチック(ランダム)ポリプロピレン樹脂「PP8」の製造)
ポリプロピレン樹脂として、シンジオタクチック構造のホモポリプロピレン樹脂に代えて、アイソタクチック構造のランダムポリプロピレン(プロピレン/エチレン=95/5(質量%)、MFR=0.1g/10分−170℃・2160g)を用いた以外は、調製例7と同様の操作を行い、酸変性アイソタクチック構造のランダムポリプロピレン樹脂「PP8」を得た。
【0100】
調製例9(酸変性アイソタクチック(ブロック)ポリプロピレン樹脂「PP9」の製造)
ポリプロピレン樹脂として、シンジオタクチック構造のホモポリプロピレン樹脂に代えて、アイソタクチック構造のブロックポリプロピレン樹脂(プロピレン/エチレン=95/5質量%、MFR=0.2g/10分−170℃・2160g)を用いた以外は、調製例7と同様の操作を行い、酸変性アイソタクチック構造のブロックポリプロピレン樹脂「PP9」を得た。
【0101】
調製例10(酸変性アイソタクチック(ター)ポリプロピレン樹脂「PP10」の製造)
アイソタクチック構造のポリプロピレン3元共重合体(プロピレン/エチレン/ブテン=64.8/11.3/23.9(質量%)、MFR=0.3g/10分−170℃・2160g)1000gをジャケット付き反応器に入れ、窒素置換し、180℃まで加熱昇温し溶融させた後、無水マレイン酸110gを加え、均一に混合した。そこに、ジクミルパーオキサイド4.0gを滴下し、180℃で3時間撹拌し反応させた。反応終了後、得られた反応物を3kgのアセトン中に投入し、樹脂を固化させた。この樹脂を細かく切断し、ペレット状に加工した。
このペレット状の樹脂100gをアセトン300gと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌して樹脂を洗浄した。樹脂を回収後、さらにこの樹脂を、アセトンとジメチルアミノエタノールからなる洗浄液〔アセトン/ジメチルアミノエタノール=90/10(質量比)〕300gと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌し樹脂を洗浄した。樹脂を回収後、さらに同様の方法(アセトンとジメチルアミノエタノールからなる洗浄液を使った方法)を2回繰り返して樹脂を洗浄し、遊離状態の無水マレイン酸を除去した。この樹脂を減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性アイソタクチック構造のターポリプロピレン(ターポリマー)樹脂「PP10」を得た。
【0102】
酸変性ポリプロピレン樹脂(PP1〜PP10)の特性を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
実施例1
<アンカーコート剤の製造>
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、75.0gの酸変性ポリプロピレン樹脂「PP1」、30.0gのイソプロパノール、170.0gのテトラヒドロフラン、15.0gのジメチルアミノエタノールおよび210.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を150℃に保ってさらに60分間撹拌した後、ヒーターの電源を切り自然冷却した。
内温が80℃まで冷えたところで容器を開封して、60.0gのテトラヒドロフラン、10.0gのジメチルアミノエタノールおよび50.0gの蒸留水からなる原料を追加投入した。その後、容器を密閉し、ヒーターの電源を入れ、撹拌翼の回転速度を300rpmの状態で再度加熱(再昇温)した。系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した後、ヒーターの出力を、内温80℃になるように調整した。
内温が80℃まで冷えたところで、真空ポンプを使って系内を徐々に減圧して、イソプロパノール、テトラヒドロフランと水を除去した。テトラヒドロフラン、イソプロパノールと水を400g以上除去した後、ヒーターの電源を切り、系内温度が35℃になったところで、水を添加して水性分散体中の「PP1」の濃度が20質量%となるように調整し、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、均一な酸変性ポリプロピレン樹脂の水性分散体、即ち、ポリプロピレン樹脂押出しラミネート用アンカーコート剤を得た。この水性分散体を「AC1」とした。なお加圧濾過の後、フィルター上に樹脂の未分散物は確認できなかった。
<積層体の製造>
基材として、片面にアルミ蒸着層を有した、厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムを用い、このPET面に、乾燥後のアンカーコート層の量が0.3g/m
2となるように、「AC1」を塗布し、100℃で10秒間乾燥させ、アンカーコート層を形成させた。
次いで、Tダイを備えた押出しラミネート装置を用いて、アンカーコート層の表面にポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、ノバテックPP FL02A)を溶融押出して、厚み30μmの押出しポリプロピレン樹脂層を積層した。このとき、Tダイ直下の溶融ポリプロピレン樹脂の温度は240℃であった。また、押出しラミネートのライン速度(積層体の巻き取り速度)は120m/分で実施した。
このようにして、アルミ蒸着層/PETフィルム/アンカーコート層/押出しポリプロピレン樹脂層の構成からなる積層体を得た。
<包装材料の製造>
この積層体を、160mm×100mmの長方形に切り取り、160mmの辺が半分になるように、かつ押出しポリプロピレン樹脂層が内側になる様に、2つ折りに折りたたんだ(ここでの状態は、100mmの一辺が折り目となって、折りたたまれた80mm×100mmの長方形の積層体となっている)。この積層体の80mmの辺の一方の辺と、100mmの辺の折れ目でない方の辺を、3mm幅でヒートシールして、80mm×100mmの長方形の包装材料を得た。
【0105】
実施例2〜6
<アンカーコート剤の製造>
実施例1におけるアンカーコート剤の製造の際に使用する、酸変性ポリプロピレン樹脂として、「PP1」の代わりに、実施例2では「PP2」を、実施例3では「PP3」を、実施例4では「PP4」を、実施例5では「PP5」を、実施例6では「PP6」を、用いた以外は、実施例1と同様の方法で、均一な酸変性ポリプロピレン樹脂の水性分散体からなるアンカーコート剤を得た。実施例2で得られた水性分散体を「AC2」、実施例3で得られた水性分散体を「AC3」、実施例4で得られた水性分散体を「AC4」、実施例5で得られた水性分散体を「AC5」、実施例6で得られた水性分散体を「AC6」とした。なお、水性分散体の濾過の後、フィルター上に樹脂の未分散物はいずれの実施例でも確認できなかった。
<積層体、包装材料の製造>
アンカーコート剤として「AC1」の代わりに、実施例2では「AC2」を、実施例3では「AC3」を、実施例4では「AC4」を、実施例5では「AC5」を、実施例6では「AC6」を用いた以外は、実施例1の積層体の製造および包装材料の製造と同様の方法で、積層体および包装材料を得た。
【0106】
実施例7
<アンカーコート剤の製造>
実施例3におけるアンカーコート剤の製造の際の、再昇温による系内温度を140℃から110℃に変更した以外は、実施例3と同様の方法で、均一な酸変性ポリプロピレン樹脂の水性分散体「AC7」からなるアンカーコート剤を得た。なお、水性分散体の濾過の後、フィルター上に樹脂の未分散物は確認できなかった。
<積層体、包装材料の製造>
アンカーコート剤として「AC1」の代わりに「AC7」を用いた以外は、実施例1の積層体の製造および包装材料の製造と同様の方法で、積層体および包装材料を得た。
【0107】
実施例8
<アンカーコート剤の製造>
実施例3におけるアンカーコート剤の製造において、全ての原料を一括して1度に仕込み水性分散体を得た。
すなわち、ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、75.0gの酸変性ポリプロピレン樹脂「PP3」、30.0gのイソプロパノール、230.0gのテトラヒドロフラン、25.0gのジメチルアミノエタノールおよび260.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を150℃に保ってさらに60分間撹拌した後、ヒーターの出力を、内温80℃になるように調整した。
内温が80℃まで冷えたところで、真空ポンプを使って系内を徐々に減圧して、イソプロパノール、テトラヒドロフランと水を除去した。テトラヒドロフラン、イソプロパノールと水を400g以上除去した後、ヒーターの電源を切り、系内温度が35℃になったところで、水を添加して水性分散体中の「PP3」の濃度が20質量%となるように調整し、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、均一な酸変性ポリプロピレン樹脂の水性分散体「AC8」からなるポリプロピレン樹脂押出しラミネート用アンカーコート剤を得た。なお加圧濾過の後、フィルター上に樹脂の未分散物が確認された。
<積層体、包装材料の製造>
アンカーコート剤として「AC1」の代わりに「AC8」を用いた以外は、実施例1の積層体の製造および包装材料の製造と同様の方法で、積層体および包装材料を得た。
【0108】
実施例9〜11
実施例3における積層体の製造の際の、押出しラミネートのライン速度120m/分を、実施例9では160m/分に、実施例10では500m/分に、実施例11では、600m/分に変更した以外は、実施例3の積層体の製造および包装材料の製造と同様の方法で、積層体および包装材料を得た。
【0109】
実施例12
<アンカーコート剤の製造>
酸変性ポリプロピレン樹脂の水性分散体として「AC7」を用い、「AC7」に、添加剤として、不飽和カルボン酸の含有量が2.5質量%であるエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体の水性分散体(固形分濃度20質量%、不揮発性水性分散化助剤含有せず、以下「EAM」と示すことがある)を添加し混合した。なお、「AC7」に含まれる酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体の水性分散体の固形分(エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体)が50質量部となるように添加した。
このようにして、酸変性ポリプロピレン樹脂と酸変性ポリエチレン樹脂とを含有した水性分散体からなるポリプロピレン樹脂押出しラミネート用アンカーコート剤を得た。
<積層体、包装材料の製造>
アンカーコート剤として「AC1」の代わりに上記アンカーコート剤を用いた以外は、実施例1の積層体の製造および包装材料の製造と同様の方法で、積層体および包装材料を得た。
【0110】
実施例13
<アンカーコート剤の製造>
酸変性ポリプロピレン樹脂の水性分散体として「AC7」を用い、「AC7」に、添加剤として、ポリウレタン樹脂の水性分散体(アデカ社製、アデカボンタイターHUX350、固形分濃度30質量%、不揮発性水性分散化助剤含有せず、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂の水性分散体、以下「HUX350」と示すことがある)を添加し混合した。なお、「AC7」に含まれる酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、ポリウレタン樹脂の水性分散体の固形分(ポリウレタン樹脂)が50質量部となるように添加した。
このようにして、酸変性ポリプロピレン樹脂とポリウレタン樹脂とを含有した水性分散体からなるポリプロピレン樹脂押出しラミネート用アンカーコート剤を得た。
<積層体、包装材料の製造>
アンカーコート剤として「AC1」の代わりに上記アンカーコート剤を用いた以外は、実施例1の積層体の製造および包装材料の製造と同様の方法で、積層体および包装材料を得た。
【0111】
実施例14
<アンカーコート剤の製造>
酸変性ポリプロピレン樹脂の水性分散体として「AC7」を用い、「AC7」に、添加剤として、ポリエステル樹脂の水性分散体(ユニチカ社製、エリーテルKT−9204、固形分濃度30質量%、不揮発性水性分散化助剤含有せず、以下「KT9204」と示すことがある)を添加し混合した。なお、「AC7」に含まれる酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、ポリエステル樹脂の水性分散体の固形分(ポリエステル樹脂)が50質量部となるように添加した。
このようにして、酸変性ポリプロピレン樹脂とポリエステル樹脂とを含有した水性分散体からなるポリプロピレン樹脂押出しラミネート用アンカーコート剤を得た。
<積層体、包装材料の製造>
アンカーコート剤として「AC1」の代わりに上記アンカーコート剤を用いた以外は、実施例1の積層体の製造および包装材料の製造と同様の方法で、積層体および包装材料を得た。
【0112】
実施例15
<アンカーコート剤の製造>
酸変性ポリプロピレン樹脂の水性分散体として「AC7」を用い、「AC7」に、添加剤として、オキサゾリン系架橋剤(日本触媒社製、エポクロスWS700、固形分濃度25質量%、不揮発性水性分散化助剤含有せず、多価オキサゾリン化合物の水溶液、以下「WS700」と示すことがある)を添加し混合した。なお、「AC7」に含まれる酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、オキサゾリン系架橋剤の固形分が5質量部となるように添加した。
このようにして、酸変性ポリプロピレン樹脂とオキサゾリン系架橋剤とを含有した水性分散体からなるポリプロピレン樹脂押出しラミネート用アンカーコート剤を得た。
<積層体、包装材料の製造>
アンカーコート剤として「AC1」の代わりに上記アンカーコート剤を用いた以外は、実施例1の積層体の製造および包装材料の製造と同様の方法で、積層体および包装材料を得た。
【0113】
実施例16
<アンカーコート剤の製造>
酸変性ポリプロピレン樹脂の水性分散体として「AC7」を用い、「AC7」に、添加剤として、カルボジイミド系架橋剤(日清紡ケミカル社製、カルボジライトV−02、固形分濃度40質量%、不揮発性水性分散化助剤含有せず、多価カルボジイミド化合物の水溶液、以下「V−02」と示すことがある)を添加し混合した。なお、「AC7」に含まれる酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、カルボジイミド系架橋剤の固形分が5質量部となるように添加した。
このようにして、酸変性ポリプロピレン樹脂とカルボジイミド系架橋剤とを含有した水性分散体からなるポリプロピレン樹脂押出しラミネート用アンカーコート剤を得た。
<積層体、包装材料の製造>
アンカーコート剤として「AC1」の代わりに上記アンカーコート剤を用いた以外は、実施例1の積層体の製造および包装材料の製造と同様の方法で、積層体および包装材料を得た。
【0114】
実施例17
実施例3における積層体の製造の際に使用する基材である「片面にアルミ蒸着層を有した、厚さ12μmの二軸延伸PETフィルム」の代わりに、「片面にアルミ蒸着層を有した、厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム」を用い、これの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、「OPP」と示すことがある)面に、アンカーコート層を形成させた以外は、実施例3の積層体の製造および包装材料の製造と同様の方法で、積層体および包装材料を得た。
【0115】
実施例18
実施例17における積層体の製造の際の、押出しラミネートのライン速度を、120m/分から500m/分に変更した以外は、実施例17の積層体の製造および包装材料の製造と同様の方法で、積層体および包装材料を得た。
【0116】
実施例19〜26
実施例1〜8における積層体の製造の際に使用する基材である「片面にアルミ蒸着層を有した、厚さ12μmの二軸延伸PETフィルム」の代わりに、「片面に厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムがドライラミネートにより接着された、厚さ9μmのアルミ箔(即ち、PETフィルム/ドライラミネート接着剤/アルミ箔)」を用い、これのアルミ箔面に、アンカーコート層を形成させた以外は、実施例1〜8の積層体の製造および包装材料の製造と同様の方法で、それぞれ実施例19〜26の積層体および包装材料を得た。なお、得られる積層体の構成は、PETフィルム/ドライラミネート接着剤/アルミ箔/アンカーコート層/押出しポリプロピレン樹脂層である。
【0117】
比較例1
<アンカーコート剤の製造>
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、75.0gの酸変性シンジオタクチックポリプロピレン樹脂「PP7」、200.0gのテトラヒドロフラン、15.0gのジメチルアミノエタノールおよび210.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を130℃に保ってさらに60分間撹拌した後、ヒーターの出力を、内温80℃になるように調整した。
内温が80℃まで冷えたところで、真空ポンプを使って系内を徐々に減圧して、テトラヒドロフランと水を除去した。テトラヒドロフランと水を300g以上除去した後、ヒーターの電源を切り、系内温度が35℃になったところで、水を添加して水性分散体中の「PP7」の濃度が20質量%となるように調整し、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、均一な酸変性シンジオタクチックポリプロピレン樹脂の水性分散体「AC9」からなるアンカーコート剤を得た。なお、水性分散体の濾過の後、フィルター上に樹脂の未分散物は確認できなかった。
<積層体、包装材料の製造>
アンカーコート剤として「AC1」の代わりに「AC9」からなるアンカーコート剤を用い、かつ押出しラミネートのライン速度を120m/分から70m/分に変更した以外は、実施例1の積層体の製造および包装材料の製造と同様の方法で、積層体および包装材料を得た。
【0118】
比較例2
<アンカーコート剤の製造>
アンカーコート剤の製造の際に使用する、酸変性シンジオタクチックポリプロピレン樹脂「PP7」の代わりに酸変性アイソタクチック構造のランダムポリプロピレン樹脂「PP8」を用いた以外は、比較例1と同様の方法で、均一な酸変性アイソタクチック構造のランダムポリプロピレン樹脂の水性分散体「AC10」からなるアンカーコート剤を得た。なお、水性分散体の濾過の後、フィルター上に樹脂の未分散物は確認できなかった。
<積層体、包装材料の製造>
アンカーコート剤として「AC9」の代わりに「AC10」からなるアンカーコート剤を用いた以外は、比較例1の積層体の製造および包装材料の製造と同様の方法で、積層体および包装材料を得た。
【0119】
比較例3
アンカーコート剤の製造の際に使用する、酸変性ポリプロピレン樹脂として、「PP1」の代わりに酸変性アイソタクチック構造のブロックポリプロピレン樹脂「PP9」を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、均一な酸変性アイソタクチック構造のブロックポリプロピレン樹脂の水性分散体「AC11」からなるアンカーコート剤を得た。なお、水性分散体の濾過の後、フィルター上に樹脂の未分散物は確認できなかった。
<積層体、包装材料の製造>
アンカーコート剤として「AC9」の代わりに「AC11」からなるアンカーコート剤を用いた以外は、比較例1の積層体の製造および包装材料の製造と同様の方法で、積層体および包装材料を得た。
【0120】
比較例4
アンカーコート剤の製造の際に使用する、酸変性シンジオタクチックポリプロピレン樹脂「PP7」の代わりに酸変性アイソタクチック構造のターポリプロピレン(ターポリマー)樹脂「PP10」を用いた以外は、比較例1と同様の方法で、均一な酸変性アイソタクチック構造のターポリプロピレン樹脂の水性分散体「AC12」からなるアンカーコート剤を得た。なお、水性分散体の濾過の後、フィルター上に樹脂の未分散物は確認できなかった。
<積層体、包装材料の製造>
アンカーコート剤として「AC9」の代わりに「AC12」からなるアンカーコート剤を用いた以外は、比較例1の積層体の製造および包装材料の製造と同様の方法で、積層体および包装材料を得た。
【0121】
比較例5〜8
比較例1〜4における積層体の製造の際の、押出しラミネートのライン速度を70m/分から120m/分に変更した以外は、比較例1〜4の積層体の製造および包装材料の製造と同様の方法で、それぞれ比較例5〜8の積層体および包装材料を得た。
【0122】
比較例9〜12
比較例1〜4における積層体の製造の際に使用する基材である「片面にアルミ蒸着層を有した、厚さ12μmの二軸延伸PETフィルム」の代わりに、「片面にアルミ蒸着層を有した、厚さ20μmの二軸延伸OPPフィルム」を用い、これのOPP面に、アンカーコート層を形成させた以外は、比較例1〜4の積層体の製造および包装材料の製造と同様の方法で、それぞれ比較例9〜12の積層体および包装材料を得た。
【0123】
比較例13〜16
比較例5〜8における積層体の製造の際に使用する基材である「片面にアルミ蒸着層を有した、厚さ12μmの二軸延伸PETフィルム」の代わりに、「片面に厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムがドライラミネートにより接着された、厚さ9μmのアルミ箔」を用い、これのアルミ箔面に、アンカーコート層を形成させた以外は、比較例5〜8の積層体の製造および包装材料の製造と同様の方法で、それぞれ比較例13〜16の積層体および包装材料を得た。なお、得られる積層体の構成は、PETフィルム/ドライラミネート接着剤/アルミ箔/アンカーコート層/押出しポリプロピレン樹脂層である。
【0124】
実施例1〜26および比較例1〜16で得られたアンカーコート剤と包装材料の特性を表2、表3に示す。
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
【0127】
実施例1〜26では、ポリプロピレン成分がアイソタクチック構造からなるホモポリプロピレンである酸変性ポリプロピレン樹脂と水性媒体とを含有する水性分散体からなるアンカーコート剤は、ポリプロピレン樹脂の押出しラミネートに適した特性を有していた。
特に、実施例1〜18において、アンカーコート剤を熱可塑性樹脂フィルム面に塗布した場合であっても、優れた特性を有することが確認された。
実施例1〜4、7、9〜11では、酸変性ポリプロピレン樹脂に含まれる未反応不飽和カルボン酸成分の残存量や、水性分散体中の酸変性ポリプロピレン樹脂の数平均粒子径が、ともに本発明に規定する好ましい範囲にあったため、押出しラミネートのライン速度が100m/分以上でも優れた接着性を有し、また耐内容物性を有していた。
実施例8のアンカーコート剤の製造方法では、酸変性ポリプロピレン樹脂の水性分散化が不十分であり、水性分散体中の数平均粒子径を本発明に規定する好ましい範囲にすることができなかったため、アンカーコート剤は、やや性能が劣るものとなった。
実施例12〜16では、各種の添加剤を併用することで、包装材料の折り目部分のデラミが抑制できることが確認された。
【0128】
これに対し、比較例1〜16では、アンカーコート剤は、酸変性ポリプロピレン樹脂のポリプロピレン成分が、本発明で規定する成分でないため、ポリプロピレン樹脂の押出しラミネートに用いても、接着性が不十分であったり、PP臭の問題を有していた。
【0129】
なお、本実施例の耐内容物試験は、内容物にサラダ油を用いた。サラダ油はスナック菓子よりラミネート強度の低下を招きやすい性質を有するため、サラダ油を用いた本試験で良好な結果が得られれば、スナック菓子包装として十分な性能を有していると判断できる。
また、実施例で得られた包装材料は、PP臭が抑制されたものであって、ポテトスナック菓子の包装に適していた。本発明において包装材料のPP臭が抑制されるメカニズムは不明であるが、使用するアンカーコート剤の酸変性ポリプロピレン樹脂が、結晶化度が高くかつ高融点であるため、押出しラミネートの熱による酸変性ポリプロピレン樹脂の分解が抑制されている可能性が考えられる。また、押出しラミネートのライン速度とPP臭の関連性も伺えた。