(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記合計値を計算する際に、前記キャリッジの移動速度に応じて、前記第1の値および前記第2の値の少なくともいずれか一方にさらに係数を乗じることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
前記合計値を計算する際に、前記キャリッジと記録媒体の間の距離に応じて、前記第1の値および前記第2の値の少なくともいずれか一方にさらに係数を乗じることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
前記合計値を計算するに当たり、記録装置本体の設置される環境に応じて、前記第1の値および前記第2の値の少なくともいずれか一方にさらに係数を乗じることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
前記回復手段は、前記吐出口列が設けられた吐出口面を払拭する回復動作を行うワイピング機構であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
前記制御手段は、前記合計値が閾値以上である場合に前記ワイピング機構に前記吐出口面を払拭させる回数を、前記合計値が前記閾値未満である場合に前記ワイピング機構に前記吐出口面を払拭させる回数よりも多くすることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
前記制御手段は、前記合計値が所定の閾値以上である場合に前記記録ヘッドに吐出させる予備吐出の回数を、前記合計値が前記閾値未満である場合に前記記録ヘッドに吐出させる予備吐出の回数よりも多くすることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置を示す正面図である。2は紙搬送ユニットを含む記録装置本体を示す。本記録装置は、比較的大判の記録媒体に画像(文字や図などを含む)を記録する。1はキャリッジである。キャリッジ1は、インクを吐出する吐出部(吐出口列、ノズル列)が複数設けられた記録ヘッド5を搭載して移動する。また、33はキャリッジをガイドするガイド軸である。キャリッジ1は、ベルト34を介して駆動力が伝達されることにより、ガイド軸33に沿って往復移動が可能である。これにより記録ヘッド5は、記録媒体に対して相対移動が可能である。記録ヘッド5は、キャリッジ1が往復移動(往方向および復方向への移動)をしながらインクを吐出することによって、記録媒体に対して画像を記録する。本実施形態において使用するインクの色は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の計4色である。
【0011】
30A、30Bは回復機構である。回復機構30A、30Bは、記録ヘッド5の各吐出部のインク吐出性能(記録性能)を良好な状態に維持または回復する回復動作を行う機構である。回復機構30A、30Bはそれぞれ2つの吐出部に対応した構成となっており、それぞれの吐出部に対応したキャップを備える。キャップは、記録ヘッド5の吐出口面を覆う(キャッピングする)ことで記録ヘッドの非使用時に吐出部および記録ヘッド5を保護する機能を有する。また、キャッピングした状態において不図示のポンプを駆動させることにより吸引力を吐出部に作用させ、インクを強制的に排出させる動作(吸引回復)を行うことができる。さらに、キャップを吐出部に対向させた状態でキャップ内にインクを予備吐出させることが可能である。31は、予備吐出動作によって吐出されるインクを受容するインク受容箱である。また、32は、記録ヘッド5の吐出口面に対してワイピング動作を実行するワイピング機構である。
【0012】
以上の構成において、記録すべきデータに従って、記録媒体が被記録位置に設定されると、キャリッジ1は、ガイド軸33に沿った方向(第2の方向)に移動するように制御される。そして、記録ヘッド5を第2の方向に移動させながら、各色インクの吐出部よりインクが吐出される。この動作によって、1バンド分(記録ヘッドの1回の移動において記録可能な領域)に対応した画像が記録媒体に記録される。そして、1バンド分の画像記録が終了すると、記録媒体はキャリッジ1の移動方向と交差する方向(第1の方向)に所定の距離(1バンドの幅、または所定数の記録素子により記録される記録幅に対応する距離)だけ、不図示の搬送ユニットによって搬送される。または、同一の記録領域に対して記録ヘッド5を複数回移動させて画像を記録する方式(マルチパス記録)の場合、搬送距離は上記の所定の距離未満とする場合もある。
【0013】
なお、キャリッジ1の移動経路に沿って、キャリッジ1の位置を検出するためのエンコーダ35が配設されている。キャリッジ1に搭載されたエンコーダセンサが、エンコーダ35を検出することによって、キャリッジの位置を知ることができる。また、このエンコーダ35の位置検出に基づいて、キャリッジ1のホームポジションへの移動が制御される。そして、回復機構30A、30Bおよびワイピング機構32などはこのホームポジションの近傍に配設される。
【0014】
図2は、記録ヘッド5およびワイピング機構32の構成とそれらの関係を説明するための模式図である。記録ヘッド5は、C、M、Y、Bkのインクに対応した吐出部5C、5M、5Y、5Bkを有している。各吐出部には、上記のキャリッジ1および記録ヘッド5の移動方向(図の左右方向)と交差する方向(図の上下方向)に1200dpi(ドット/インチ)の密度で、1280個の吐出口が配設されている。また、各吐出部5C、5M、5Y、5Bkは、それぞれ2列の吐出口で構成されている(
図2のa、b列)。a列は、600dpiの密度でそれに対応するピッチ間隔(N)で640個の吐出口が配設されている。一方、b列は、600dpiの密度でa列に対して吐出口の配列方向に半ピッチ分(N/2)ずれた位置に640個の吐出口が配設されている。そして、各吐出口に連通したインク液路内には、例えば、インクを局所的に加熱して膜沸騰を起こさせ、その圧力によってインクを吐出させるための電気熱変換体が設けられている。
【0015】
ワイピング機構32は、吐出部5C、5Mの吐出口面をワイピング可能なワイパ32Aと、吐出部5Y、5Bkの吐出口面をワイピング可能なワイパ32Bとを有している。そして、記録ヘッド5をワイピング機構32に対応した位置に設定した上で、ワイパ32Aおよびワイパ32Bを
図2の矢印の方向に移動させるワイピング動作を行う。
【0016】
図3は、本実施形態に係る記録装置の制御系の構成を示すブロック図である。300は、制御手段および記録ヘッドの駆動手段を構成する主制御部である。主制御部300は、CPU301、ROM302、RAM303、および入出力ポート304等を備える。CPU301は演算、制御、判別、設定等の所要の処理動作を実行する。ROM302は、CPU301によって実行すべき制御プログラムおよびその他の固定データを格納する。具体的には、後述するテーブル等を格納する。RAM303は、記録すべきデータのバッファ領域やCPU301が実行する処理の過程でワークエリアとして用いられる領域等を有する。具体的には、後述する処理において記録量(記録媒体の記録枚数や記録のためのインクの吐出数)をカウントするためのカウンタとして用いられる領域等を有する。
【0017】
入出力ポート304には、搬送系を駆動するためのLFモータ312の駆動回路305、キャリッジ1を移動させるためのCRモータ313の駆動回路306が接続される。また、入出力ポート304には、記録ヘッド5の各吐出部のノズルを駆動するための駆動回路307が接続される。さらに、入出力ポート304には、回復機構30A、30Bおよびワイピング機構32を駆動するための駆動回路308が接続される。さらに、入出力ポート304には、ホームポジションセンサ310、ヘッド温度センサ314、ギャップセンサ315およびインターフェース回路311が接続される。ホームポジションセンサ310は、キャリッジ1および記録ヘッド5の移動制御の基準となる位置を検出するためのセンサである。また、上記の回復機構30A、30Bおよびワイピング機構32に対する記録ヘッド5の設定も、このホームポジションセンサ310の検出結果に基づいて行われる。ギャップセンサ315は、記録ヘッドとプラテンとの間の距離を検出するために用いられる。インターフェース回路311は、記録すべきデータの供給源をなす外部装置(コンピュータはイメージスキャナ、デジタルカメラその他の適宜の形態とすることができる)との間で所要の情報を送受信するために用いられる。316は適宜の部位に設けられる湿度センサである。湿度センサ316は、記録装置本体の使用環境としての湿度を検出するために用いられる。
【0018】
(第1実施形態)
図4は、第1実施形態に係る記録ヘッドの構成と各吐出口列群の関係を説明するための模式図である。記録ヘッド5の構成は
図2に示すものと同様である。第1実施形態では、
図4の点線領域で囲んだ5C、5Mを第1吐出口列群、5Y、5Bkを第2吐出口列群と定義して、このときのワイピング動作の制御手順を説明する。
【0019】
図5は、本実施形態に係るワイピング動作の制御手順を示すフローチャートである。所定単位、例えば1枚の記録媒体への記録終了(1ページの記録)ごとにワイピング動作を実行すると、所要の時間を要するワイピング動作が介在することによって記録生産性が低下したり、ワイパ32A、32Bの耐久寿命が低下するという問題が生じる。このため、ワイピング動作は必要に応じて実行する。1ページの記録ごとにワイピング動作が必要であるか否かは、記録ヘッド5の吐出口面に付着し得るミストの量に応じて判断することが望ましい。記録ヘッド5の吐出口面に付着するミスト量は、インク吐出量や吐出回数に大きく依存する。
【0020】
本実施形態では、前回のワイピング動作以降に記録のために吐出したインクの吐出数をカウントし(ドットカウント)、各吐出口列群ごとのドットカウント値を得る。そして、その各ドットカウント値に記録ヘッドの移動方向に応じた所定の係数を乗じ、その合計値が所定の閾値以上である場合にワイピング動作を行う。
【0021】
図5において、まずステップS201で、1ライン分の記録データが記録される。そしてステップS202で、記録データに従って吐出されたインクの吐出回数が積算され、ドットカウント値が取得される。次に、ステップS203では、ステップS202で取得したドットカウント値に対して、
図6(a)に示すようなテーブルに基づいて、記録ヘッドの移動方向に応じた所定の係数を乗じる。例えば、
図4で示した吐出口列群の並び順においては、往路記録時(図の左方向)には、第1吐出口列群(5C、5M)が移動方向(往方向)の前方の吐出口列群となり流入気流の影響を強く受けるため、吐出されたインク量に第1の係数(=5)を乗じる。また、第2吐出口列群(5Y、5Bk)が後方の吐出口列群となり、前方の吐出口列群と比較して流入気流の影響が小さいため、吐出されたインク量に第1の係数よりも小さい第2の係数(=1)を乗じる。
【0022】
一方、復路記録時には、第2吐出口列群(5Y、5Bk)が移動方向(復方向)の前方の吐出口列群に、第1吐出口列群(5C、5M)が後方の吐出口列群になる。よって、記録ヘッド5の移動に伴う流入気流の影響は往路記録時とは逆になる。第2吐出口列群に乗じる係数が第1の係数(=5)となり、第1吐出口列群に乗じる係数が第2の係数(=1)となる。なお、ここでインク消費量に乗じる係数は実施形態の内容を理解しやすくするために用いた任意の数値であり、この値に限定するものではない。以降の実施形態においても同様である。以上の考えに基づき、往路記録時および復路記録時における両者のドットカウント値(吐出量)に対する処理の計算式は下記の通りとなる。
(往路記録時の計算式)
=移動方向の前方側の吐出口列群(第1吐出口列群)のインク吐出量×第1の係数(=5)
+移動方向の後方側の吐出口列群(第2吐出口列群)のインク吐出量×第2の係数(=1)
(復路記録時の計算式)
=移動方向の前方側の吐出口列群(第2吐出口列群)のインク吐出量×第1の係数(=5)
+移動方向の後方側の吐出口列群(第1吐出口列群)のインク吐出量×第2の係数(=1)
【0023】
なお、上記式において各インク吐出量はインク1回あたりの吐出量にドットカウント値を乗じることで算出される。各インク吐出量は、インクおよびヘッド(特にノズル)構成等により決定される既知の値である。次にステップS204において、上記計算式によって処理された値が所定の閾値以上であるか否かが判定される。所定の閾値以上であると判定された場合は、ステップS205でワイピング動作が実行される。そして、ステップS206でドットカウント値がリセットされる。次に、ステップS207へ進み、記録が終了したか否かが判定される。記録が終了していないと判定された場合は、ステップS201に戻り、次の1ライン分の記録データが記録される。
【0024】
一方、記録が終了したと判定された場合は、ステップS208に移行し、本手順を終了する。また、ステップS204において、所定の閾値未満であると判定された場合は、ステップS207に進む。そして、ステップS207において、同様に記録が終了したか否かが判定される。記録が終了していないと判定された場合は、ステップS201に戻り、次の1ライン分の記録データが記録される。記録が終了したと判定された場合は、ステップS208に移行し、本手順を終了する。
【0025】
以上のように、各吐出口列群ごとのドットカウント値に記録ヘッドの移動方向に応じた係数を乗じることで、吐出口面に付着したミスト量に応じて、記録ヘッドの吐出口面の汚れを除去することができる。これにより、吐出口面に浮遊ミストが付着することによって生じた吐出不良や混色などによる画像品質の低下を確実に防止することが可能となる。
【0026】
(第1実施形態の変形例)
図7は、
図4で示した吐出口列群の変形例である。
図7(a)は、5Cを第1吐出口列群、5M、5Y、5Bkを第2吐出口列群とした場合、
図7(b)は、5C、5M、5Yを第1吐出口列群、5Bkを第2吐出口列群とした場合である。記録ヘッド5の移動時においては、先頭側の吐出口列が最も流入気流の影響を受けるため、移動時に先頭側になる吐出口列を1つの吐出口列群とし、先頭の吐出口列群に大きい係数を乗じる。例えば、往路記録時は
図7(a)のように5Cを第1吐出口列群とし、復路記録時は
図7(b)のように5Bkを第2吐出口列群とする。
【0027】
往路記録時(図の左方向)には、第1吐出口列群(5C)が移動方向の前方の吐出口列群となり流入気流の影響を強く受けるため、吐出されたインク量に第1の係数(=5)を乗じる。また、第2吐出口列群(5M、5Y、5Bk)が後方の吐出口列群となり、前方の吐出口列群と比較して流入気流の影響が小さいため、吐出されたインク量に第1の係数よりも小さい第2の係数(=1)を乗じる。
【0028】
一方、復路記録時には、第2吐出口列群(5Bk)が移動方向の前方の吐出口列群に、第1吐出口列群(5C、5M、5Y)が後方の吐出口列群になる。よって、記録ヘッド5の移動に伴う流入気流の影響は往路記録時とは逆になる。第2吐出口列群に乗じる係数が第1の係数(=5)となり、第1吐出口列群に乗じる係数が第2の係数(=1)となる。このように、各吐出口列群の定義の仕方は1つに限定されるものではない。
【0029】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る記録ヘッドの構成と各吐出口列群の関係を説明するための模式図である。記録ヘッド5の構成は
図2と同様である。第2実施形態は、
図8の点線領域で囲んだ5Cを第1吐出口列群、5Mを第2吐出口列群、5Yを第3吐出口列群、5Bkを第4吐出口列群とした場合である。このときのワイピング動作の制御手順を説明する。第1実施形態と同様、
図5のフローチャートに基づきワイピング動作の制御を行う。本実施形態では、
図6(b)に示すようなテーブルに基づき、記録ヘッドの移動方向に応じて所定の係数を乗じる。
【0030】
図8において、記録ヘッド5の移動時に、移動方向の先頭側から後方側に向かうに従って流入気流の影響が段階的に弱くなる例を説明する。往路記録時(図の左方向)には、第1吐出口列群(5C)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第2吐出口列群(5M)から吐出されたインク量に第2の係数(=3)を乗じる。また、第3吐出口列群(5Y)から吐出されたインク量に第3の係数(=2)、第4吐出口列(5Bk)から吐出されたインク量に第4の係数(=1)を乗じる。
【0031】
一方、復路記録時(図の右方向)には、第4吐出口列群(5Bk)が移動方向の前方の吐出口列群になる。よって、記録ヘッド5の移動に伴う流入気流の影響は往路記録時とは逆になる。第4吐出口列群(5Bk)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第3吐出口列群(5Y)から吐出されたインク量に第2の係数(=3)を乗じる。また、第2吐出口列群(5M)から吐出されたインク量に第3の係数(=2)、第1吐出口列(5C)から吐出されたインク量に第4の係数(=1)を乗じる。以降は、第1実施形態と同様のワイピング動作の制御を行う。
【0032】
本実施形態のように、各色を吐出口列群とすることにより、インク吐出口列ごとに流入気流の影響を加味した係数を乗じ、第1実施形態よりもより緻密な制御が可能になる。
【0033】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態に係る記録ヘッドの構成と各吐出口列群の関係を説明するための模式図である。記録ヘッド5の構成は
図2と同様である。第3実施形態では、
図9の点線領域で囲んだ各色の各列(図のa、b列)を吐出口列群とする。このように、吐出口列群は1つの吐出口列を指定してもよく、必ずしも2つ以上の吐出口列である必要はない。このときのワイピング動作の制御手順を説明する。
【0034】
第1実施形態と同様、
図5のフローチャートに基づきワイピング動作の制御を行う。本実施形態は、
図6(c)に示すテーブルに基づき、記録ヘッドの移動方向に応じて所定の係数を乗じる。
【0035】
図9において、第2実施形態と同様、記録ヘッド5の移動時に、移動方向の先頭側から後方側に向かうに従って流入気流の影響が段階的に弱くなる例を説明する。往路記録時(図の左方向)には、第1吐出口列群(5Cのa列)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第2吐出口列群(5Cのb列)から吐出されたインク量に第2の係数(=3)を乗じる。また、第3吐出口列群(5Mのa列)から吐出されたインク量に第3の係数(=3)、第4吐出口列群(5Mのb列)から吐出されたインク量に第4の係数(=2)、・・・というように、第8吐出口列群(5Bkのb列)まで所定の係数を乗じる。
【0036】
一方、復路記録時には、第8吐出口列群(5Bkのb列)が移動方向の前方の吐出口列群になる。よって、記録ヘッド5の移動に伴う流入気流の影響は往路記録時とは逆になる。第8吐出口列群(5Bkのb列)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第7吐出口列群(5Bkのa列)から吐出されたインク量に第2の係数(=3)を乗じる。また、第6吐出口列群(5Yのb列)から吐出されたインク量に第3の係数(=3)、第5吐出口列(5Yのa列)から吐出されたインク量に第4の係数(=2)、・・・というように、第1吐出口列群(5Cのa列)まで所定の係数を乗じる。以降は、第1実施形態と同様のワイピング動作の制御を行う。
【0037】
本実施形態によれば、各色の各列を吐出口列群とすることにより、インク吐出口列ごとに流入気流の影響を加味した係数を乗じ、第1実施形態、第2実施形態よりもさらに緻密な制御が可能となる。
【0038】
(第4実施形態)
図10は、第4実施形態に係る記録ヘッドの構成と各吐出口列群の関係を説明するための模式図である。本実施形態において、記録ヘッド5は、C、M、Y、Bkインクに対応した吐出口列5C、5M、5Y、5Bkを有している。
図2において、各色の各a、b列の吐出口列の組み合わせが2つ並列して配設された構成を有している。この構成は
図2の記録ヘッドの構成と比較して、移動方向のノズル列が各色で倍の密度になるため、より高い周波数でのインク吐出が可能な構成である。この構成におけるワイピング動作の制御手順を説明する。
【0039】
第4実施形態は、
図10の点線領域で囲んだ5C、5Mを第1吐出口列群、5Y、5Bkを第2吐出口列群とした場合である。このときのワイピング動作の制御手順を説明する。
【0040】
本実施形態は、第1実施形態と同様、
図5のフローチャートに基づいてワイピング動作の制御を行う。本実施形態は、
図6(a)に示すようなテーブルに基づき、記録ヘッドの移動方向に応じて所定の係数を乗じる。
【0041】
図10で示した記録ヘッドの構成と各吐出口列の関係を例にとる。往路記録時(図の左方向)には、第1吐出口列群(5C、5M)が移動方向の前方の吐出口列群となり流入気流の影響を強く受けるため、吐出されたインク量に第1の係数(=5)を乗じる。また、第2吐出口列群(5Y、5Bk)が後方の吐出口列群となり流入気流の影響が小さいため、吐出されたインク量に第1の係数よりも小さい第2の係数(=1)を乗じる。
【0042】
一方、復路記録時には、第2吐出口列群(5Y、5Bk)が移動方向の前方の吐出口列群に、第1吐出口列群(5C、5M)が後方の吐出口列群になる。よって、記録ヘッド5の移動に伴う流入気流の影響は往路記録時とは逆になる。第2吐出口列群に乗じる係数が第1の係数(=5)となり、第1吐出口列群に乗じる係数は第2の係数(=1)となる。以降は、第1実施形態と同様にワイピング動作の制御を行う。
【0043】
(第4実施形態の変形例)
図11は、
図10で示した吐出口列群の変形例である。
図11(a)は、5Cを第1吐出口列群、5M、5Y、5Bkを第2吐出口列群とした場合である。
図11(b)は、5C、5M、5Yを第1吐出口列群、5Bkを第2吐出口列群とした場合である。第1実施形態の変形例と同様、記録ヘッド5の移動時においては、先頭側の吐出口列が最も流入気流の影響を受けるため、移動時に先頭側になる吐出口列を1つの吐出口列群とすることもできる。例えば、往路記録時には
図11(a)のように5Cを第1吐出口列群とし、一方、復路記録時には
図11(b)のように5Bkを第2吐出口列群とする。このように、本実施形においても第1実施形態同様、各吐出口列群の定義の仕方は1つに限定されるものではなく、移動方向に応じて吐出口列を変化させることも可能である。以降は、第1実施形態と同様にワイピング動作の制御を行う。
【0044】
(第5実施形態)
図12は、第5実施形態に係る記録ヘッド5の構成と各吐出口列群の関係を説明するための模式図である。記録ヘッドの構成は、
図10と同様である。第5実施形態は、
図12の点線領域で囲んだ5Cを第1吐出口列群、5Mを第2吐出口列群、5Yを第3吐出口列群、5Bkを第4吐出口列群とした場合である。このときのワイピング動作の制御手順を説明する。
【0045】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、
図5のフローチャートに基づきワイピング動作の制御を行う。本実施形態では、
図6(b)に示すようなテーブルに基づき、記録ヘッドの移動方向に応じて所定の係数を乗じる。
【0046】
図12で示した記録ヘッドの構成と各吐出口列の関係を例にとる。ここでは、記録ヘッド5の移動時、移動方向の先頭側から後方側に向かうに従って流入気流の影響が段階的に弱くなる例を説明する。例えば、往路記録時(図の左方向)には、第1吐出口列群(5C)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第2吐出口列群(5M)から吐出されたインク量に第2の係数(=3)を乗じる。また、第3吐出口列群(5Y)から吐出されたインク量に第3の係数(=2)、第4吐出口列(5Bk)から吐出されたインク量に第4の係数(=1)を乗じる。
【0047】
一方、復路記録時には、第4吐出口列群(5Bk)が移動方向の前方の吐出口列群になる。よって、記録ヘッド5の移動に伴う流入気流の影響は往路記録時とは逆になる。第4吐出口列群(5Bk)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第3吐出口列群(5Y)から吐出されたインク量に第2の係数(=3)を乗じる。また、第2吐出口列群(5M)から吐出されたインク量に第3の係数(=2)、第4吐出口列(5C)から吐出されたインク量に第4の係数(=1)を乗じる。以降は、第1実施形態と同様にワイピング動作の制御を行う。
【0048】
本実施形態によれば、各色を吐出口列群とすることにより、インク吐出口列ごとに流入気流の影響を加味した係数を乗じ、第4実施形態よりもより緻密な制御が可能になる。
【0049】
(第6実施形態)
図13は、第6実施形態に係る記録ヘッド5の構成と各吐出口列群の関係を説明するための模式図である。記録ヘッドの構成は
図10と同様である。第6実施形態は、
図13の点線領域で囲んだ各色の各列(a、b、2a、2b列)を吐出口列群とした場合である。このように、第3実施形態と同様に、吐出口列群には1つの吐出口列を指定してもよく、必ずしも2つ以上の吐出口列である必要はない。このときのワイピング動作の制御手順を説明する。
【0050】
本実施形態では、第1実施形態と同様、
図5のフローチャートに基づいてワイピング動作の制御を行う。本実施形態では、
図14に示すようなテーブルに基づき、記録ヘッドの移動方向に応じて所定の係数を乗じる。
図13で示した記録ヘッドの構成と各吐出口列の関係を例にとる。ここでは、記録ヘッド5の移動時に、移動方向の先頭側から後方側に向かうに従って流入気流の影響が段階的に弱くなる例を説明する。例えば、往路記録時(図の左方向)には、第1吐出口列群(5Cのa列)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第2吐出口列群(5Cのb列)から吐出されたインク量に第2の係数(=5)を乗じる。また、第3吐出口列群(5Cの2a列)から吐出されたインク量に第3の係数(=3)、第4吐出口列群(5Cの2b列)から吐出されたインク量に第4の係数(=3)、・・・というように、第16吐出口列群(5Bkの2b列)まで所定の係数を乗じる。
【0051】
一方、復路記録時には、第16吐出口列群(5Bkの2b列)が移動方向の前方の吐出口列群になる。よって、記録ヘッド5の移動に伴う流入気流の影響は、往路記録時とは逆になる。第16吐出口列群(5Bkの2b列)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第15吐出口列群(5Bkの2a列)から吐出されたインク量に第2の係数(=5)を乗じる。また、第14吐出口列群(5Bkのb列)から吐出されたインク量に第3の係数(=3)、第13吐出口列(5Bkのa列)から吐出されたインク量に第4の係数(=3)、・・・というように、第1吐出口列群(5Cのa列)まで所定の係数を乗じる。以降は、第1実施形態と同様にワイピング動作の制御を行う。
【0052】
本実施形態によれば、各色の各列を吐出口列群とすることにより、インク吐出口列ごとに流入気流の影響を加味した係数を乗じるため、第4〜第5実施形態よりもさらに緻密な制御が可能になる。
【0053】
(第7実施形態)
図15は、第7実施形態に係る記録ヘッド5の構成と各吐出口列群の関係を説明するための模式図である。本実施形態において、記録ヘッド5は、C、M、Yインクに対応した吐出口列5C、5M、5Yが一体となったカラー吐出口列5Colと、Bkインクに対応したBk吐出口列5Bkとを有している。各吐出口列には、上記のキャリッジ1および記録ヘッド5の移動方向(図の左右方向)と交差する方向(図の上下方向)に1200dpi(ドット/インチ;参考値)の密度で、1280個の吐出口が配設されている。また、各吐出口列は、それぞれ2列の吐出口列が構成されている(図のa、b列)。a列は、600dpiの密度でそれに対応するピッチ間隔(N)で640個の吐出口が配設されている。b列は、600dpiの密度でa列に対して吐出口の配列方向に半ピッチ分(N/2)ずれた位置に千鳥格子状に640個の吐出口が配設されている。
【0054】
第7実施形態は、
図15の点線領域で囲んだ5Colを第1吐出口列群、5Bkを第2吐出口列群とした場合である。このときのワイピング動作の制御手順を説明する。
【0055】
本実施形態では、第1実施形態と同様、
図5のフローチャートに基づきワイピング動作の制御を行う。本実施形態では、
図6(a)に示すようなテーブルに基づき、記録ヘッドの移動方向に応じて所定の係数を乗じる。
【0056】
図14で示した記録ヘッドの構成と各吐出口列の関係を例にとる。例えば、往路記録時(図の左方向)には、第1吐出口列群(5Col)が移動方向の前方の吐出口列群となり流入気流の影響を強く受けるため、吐出されたインク量に第1の係数(=5)を乗じる。また、第2吐出口列群(5Bk)が後方の吐出口列群となり流入気流の影響が小さいため、吐出されたインク量に第1の係数よりも小さい第2の係数(=1)を乗じる。
【0057】
一方、復路記録時には、第2吐出口列群(5Bk)が移動方向の前方の吐出口列群に、第1吐出口列群(5Col)が後方の吐出口列群になる。よって、記録ヘッド5の移動に伴う流入気流の影響は往路記録時とは逆になる。第2吐出口列群(5Bk)に乗じる係数は第1の係数(=5)となり、第1吐出口列群(5Col)に乗じる係数は第2の係数(=1)となる。以降は、第1実施形態と同様にワイピング動作の制御を行う。
【0058】
(第8実施形態)
図16は、第8実施形態に係る記録ヘッド5の構成と各吐出口列群の関係を説明するための模式図である。記録ヘッドの構成は
図15と同様である。第8実施形態は、
図16の点線領域で囲んだ5Cを第1吐出口列群、5Mを第2吐出口列群、5Yを第3吐出口列群、5Bkを第4吐出口列群とした場合である。このときのワイピング動作の制御手順を説明する。
【0059】
本実施形態では、第1実施形態と同様、
図5のフローチャートに基づきワイピング動作の制御を行う。本実施形態では、
図6(b)に示すようなテーブルに基づき、記録ヘッドの移動方向に応じて所定の係数を乗じる。
【0060】
図16で示した記録ヘッドの構成と各吐出口列の関係を例にとる。ここでは、記録ヘッド5の移動時、移動方向の先頭側から後方側に向かうに従って流入気流の影響が段階的に弱くなる例を説明する。例えば、往路記録時(図の左方向)には、第1吐出口列群(5C)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第2吐出口列群(5M)から吐出されたインク量に第2の係数(=3)を乗じる。また、第3吐出口列群(5Y)から吐出されたインク量に第3の係数(=2)、第4吐出口列(5Bk)から吐出されたインク量に第4の係数(=1)を乗じる。
【0061】
一方、復路記録時には、第4吐出口列群(5Bk)が移動方向の前方の吐出口列群になる。よって、記録ヘッド5の移動に伴う流入気流の影響は往路記録時とは逆になる。第4吐出口列群(5Bk)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第3吐出口列群(5Y)から吐出されたインク量に第2の係数(=3)を乗じる。また、第2吐出口列群(5M)から吐出されたインク量に第3の係数(=2)、第4吐出口列(5C)から吐出されたインク量に第4の係数(=1)を乗じる。以降は、第1実施形態と同様にワイピング動作の制御を行う。
【0062】
本実施形態によれば、各色を吐出口列群とすることにより、インク吐出口列ごとに流入気流の影響を加味した係数を乗じるため、第7実施形態よりもより緻密な制御が可能になる。
【0063】
(第9実施形態)
図17は、第9実施形態に係る記録ヘッド5の構成と各吐出口列群の関係を説明するための模式図である。記録ヘッドの構成は
図15と同様である。第9実施形態は、
図17の点線領域で囲んだ各色の各列(a、b列)を吐出口列群とした場合である。このときのワイピング動作の制御手順を説明する。
【0064】
第1実施形態と同様に、
図5のフローチャートに基づきワイピング動作の制御を行う。本実施形態では、
図6(c)に示すようなテーブルに基づき、記録ヘッドの移動方向に応じて所定の係数を乗じる。
【0065】
図17で示した記録ヘッドの構成と各吐出口列の関係を例にとる。ここでは、記録ヘッド5の移動時、移動方向の先頭側から後方側に向かうに従って流入気流の影響が段階的に弱くなる例を説明する。例えば、往路記録時(図の左方向)には、第1吐出口列群(5Cのa列)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第2吐出口列群(5Cのb列)から吐出されたインク量に第2の係数(=3)を乗じる。また、第3吐出口列群(5Mのa列)から吐出されたインク量に第3の係数(=3)、第4吐出口列群(5Mのb列)から吐出されたインク量に第4の係数(=2)、・・・というように、第8吐出口列群(5Bkのb列)まで所定の係数を乗じる。
【0066】
一方、復路記録時には、第8吐出口列群(5Bkのb列)が移動方向の前方の吐出口列群になる。よって、記録ヘッド5の移動に伴う流入気流の影響は往路記録時とは逆になる。第8吐出口列群(5Bkのb列)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第7吐出口列群(5Bkのa列)から吐出されたインク量に第2の係数(=3)を乗じる。また、第6吐出口列群(5Yのb列)から吐出されたインク量に第3の係数(=3)、第5吐出口列(5Yのa列)から吐出されたインク量に第4の係数(=2)、・・・というように、第1吐出口列群(5Cのa列)まで所定の係数を乗じる。以降は、第1実施形態と同様にワイピング動作の制御を行う。
【0067】
本実施形態によれば、各色の各列を吐出口列群とすることにより、インク吐出口列ごとに流入気流の影響を加味した係数を乗じるため、第7〜第8実施形態よりもさらに緻密な制御が可能になる。
【0068】
(第10実施形態)
図18は、第1実施形態に係る記録ヘッド5の構成と各吐出口列群の関係を説明するための模式図である。本実施形態において記録ヘッド5は、C、M、Yインクに対応した5C、5M、5Yインクが一体となったカラー吐出口列5Col、Bkインクに対応した吐出口列5Bkを有している。
図15において、各色のa、b列の吐出口列の組み合わせが各色で2つ並列して配設された構成を有している。
【0069】
第10実施形態は、
図18の点線領域で囲んだ5Colを第1吐出口列群、5Bkを第2吐出口列群とした場合である。このときのワイピング動作の制御手順を説明する。
【0070】
本実施形態は第1実施形態と同様、
図5のフローチャートに基づいてワイピング動作の制御を行う。本実施形態は、
図6(a)に示すようなテーブルに基づき、記録ヘッドの移動方向に応じて所定の係数を乗じる。
【0071】
図18で示した記録ヘッドの構成と各吐出口列の関係を例にとる。往路記録時(図の左方向)には、第1吐出口列群(5Col)が移動方向の前方の吐出口列群となり流入気流の影響を強く受けるため、吐出されたインク量に第1の係数(=5)を乗じる。また、第2吐出口列群(5Bk)が後方の吐出口列群となり流入気流の影響が小さいため、吐出されたインク量に第1の係数よりも小さい第2の係数(=1)を乗じる。
【0072】
一方、復路記録時には、第2吐出口列群(5Bk)が移動方向の前方の吐出口列群に、第1吐出口列群(5Col)が後方の吐出口列群になる。よって、記録ヘッド5の移動に伴う流入気流の影響は往路記録時とは逆になる。第2吐出口列群に乗じる係数が第1の係数(=5)となり、第1吐出口列群に乗じる係数は第2の係数(=1)となる。以降は第1実施形態と同様にワイピング動作の制御を行う。
【0073】
(第11実施形態)
図19は、第1実施形態に係る記録ヘッド5の構成と各吐出口列群の関係を説明するための模式図である。記録ヘッドの構成は
図18と同様である。第11実施形態は、
図19の点線領域で囲んだ5Cを第1吐出口列群、5Mを第2吐出口列群、5Yを第3吐出口列群、5Bkを第4吐出口列群とした場合である。このときのワイピング動作の制御手順を説明する。
【0074】
第1実施形態と同様、
図5のフローチャートに基づきワイピング動作の制御を行う。本実施形態は、
図6(b)に示すようなテーブルに基づき、記録ヘッドの移動方向に応じて所定の係数を乗じる。
【0075】
図19で示した記録ヘッドの構成と各吐出口列の関係を例にとる。ここでは、記録ヘッド5の移動時、移動方向の先頭側から後方側に向かうに従って流入気流の影響が段階的に弱くなる例を説明する。往路記録時(図の左方向)には、例えば、第1吐出口列群(5C)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第2吐出口列群(5M)から吐出されたインク量に第2の係数(=3)を乗じる。また、第3吐出口列群(5Y)から吐出されたインク量に第3の係数(=2)、第4吐出口列(5Bk)から吐出されたインク量に第4の係数(=1)を乗じる。
【0076】
一方、復路記録時には、第4吐出口列群(5Bk)が移動方向の前方の吐出口列群になる。よって、記録ヘッド5の移動に伴う流入気流の影響は往路記録時とは逆になる。第4吐出口列群(5Bk)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第3吐出口列群(5Y)から吐出されたインク量に第2の係数(=3)を乗じる。また、第2吐出口列群(5M)から吐出されたインク量に第3の係数(=2)、第4吐出口列(5C)から吐出されたインク量に第4の係数(=1)を乗じる。以降は、第1実施形態と同様にワイピング動作の制御を行う。
【0077】
本実施形態によれば、各色を吐出口列群とすることにより、インク吐出口列ごとに流入気流の影響を加味した係数を乗じるため、より緻密な制御が可能になる。
【0078】
(第12実施形態)
図20は、第12実施形態に係る記録ヘッド5の構成と各吐出口列群の関係を説明するための模式図である。記録ヘッドの構成は
図18と同様である。第12実施形態は、
図20の点線領域で囲んだ各色の各列(a、b、2a、2b列)を吐出口列群とした場合である。このときのワイピング動作の制御手順を説明する。
【0079】
本実施形態では、第1実施形態と同様、
図5のフローチャートに基づきワイピング動作の制御を行う。本実施形態では、
図6(c)に示すようなテーブルに基づき、記録ヘッドの移動方向に応じて所定の係数を乗じる。
【0080】
図20で示した記録ヘッドの構成と各吐出口列の関係を例にとる。ここでは、記録ヘッド5の移動時、移動方向の先頭側から後方側に向かうに従って流入気流の影響が段階的に弱くなる例を説明する。例えば、往路記録時(図の左方向)には、第1吐出口列群(5Cのa列)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第2吐出口列群(5Cのb列)から吐出されたインク量に第2の係数(=5)を乗じる。また、第3吐出口列群(5Cの2a列)から吐出されたインク量に第3の係数(=3)、第4吐出口列群(5Cの2b列)から吐出されたインク量に第4の係数(=3)、・・・というように、第16吐出口列群(5Bkの2b列)まで所定の係数を乗じる。
【0081】
一方、復路記録時には、第16吐出口列群(5Bkの2b列)が移動方向の前方の吐出口列群になる。よって、記録ヘッド5の移動に伴う流入気流の影響は往路記録時とは逆になる。第16吐出口列群(5Bkの2b列)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第15吐出口列群(5Bkの2a列)から吐出されたインク量に第2の係数(=5)を乗じる。また、第14吐出口列群(5Bkのb列)から吐出されたインク量に第3の係数(=3)、第13吐出口列(5Bkのa列)から吐出されたインク量に第4の係数(=3)、・・・というように、第1吐出口列群(5Cのa列)まで所定の係数を乗じる。以降は、第1実施形態と同様にワイピング動作の制御を行う。
【0082】
本実施形態によれば、各色の各列を吐出口列群とすることにより、インク吐出口列ごとに流入気流の影響を加味した係数を乗じるため、第10〜第11実施形態よりもさらに緻密な制御が可能になる。
【0083】
(第13実施形態)
図21は、第13実施形態に係る記録ヘッド5の構成と各吐出口列群の関係を説明するための模式図である。本実施形態においては、記録ヘッドの移動方向に2つ並んだいわゆるマルチヘッド構成での例を説明する。各記録ヘッドは、記録ヘッド5Aと記録ヘッド5Bの2つで構成されている。各記録ヘッドの構成は
図10のものと同様である。なお、各記録ヘッドの構成や各色の順番は互いに異なっていても良い。本実施形態では互いに同一の場合を例を説明する。
【0084】
第13実施形態は、
図21の点線領域で囲んだ第1記録ヘッド5Aの5C、5Mを第1吐出口列群、5Y、5Bkを第2吐出口列群、第2記録ヘッド5Bの5C、5Mを第3吐出口列群、5Y、5Bkを第4吐出口列群とした場合である。このときのワイピング動作の制御手順を説明する。
【0085】
本実施形態では、第1実施形態と同様、
図5のフローチャートに基づいてワイピング動作の制御を行う。本実施形態では、
図6(b)に示すようなテーブルに基づき、記録ヘッドの移動方向に応じて所定の係数を乗じる。
【0086】
図21で示した記録ヘッドの構成と各吐出口列の関係を例にとる。ここでは、記録ヘッド5の移動時、移動方向の先頭側から後方側に向かうに従って流入気流の影響が段階的に弱くなる例を説明する。例えば、往路記録時(図の左方向)には、第1吐出口列群(第1記録ヘッド5Aの5C、5M)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第2吐出口列群(第1記録ヘッド5Aの5Y、5Bk)から吐出されたインク量に第2の係数(=3)を乗じる。また、第3吐出口列群(第2記録ヘッド5Bの5C、5M)から吐出されたインク量に第3の係数(=2)、第4吐出口列(第2記録ヘッド5Bの5Y、5Bk)から吐出されたインク量に第4の係数(=1)を乗じる。
【0087】
一方、復路記録時には、第4吐出口列群(第2記録ヘッド5Bの5Y、5Bk)が移動方向の前方の吐出口列群になる。よって、記録ヘッド5の移動に伴う流入気流の影響は往路記録時とは逆になる。第4吐出口列群(第2記録ヘッド5Bの5Y、5Bk)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第3吐出口列群(第2記録ヘッド5Bの5C、5M)から吐出されたインク量に第2の係数(=3)を乗じる。また、第2吐出口列群(第1記録ヘッド5Aの5Y、5Bk)から吐出されたインク量に第3の係数(=2)、第1吐出口列群(第1記録ヘッド5Aの5C、5M)から吐出されたインク量に第4の係数(=1)を乗じる。以降は、第1実施形態と同様にワイピング動作の制御を行う。
【0088】
(第13実施形態の変形例1)
図22と
図23は、
図21の変形例である。
図22は、第1記録ヘッド5Aの5Cを第1吐出口列群、第1記録ヘッド5Aの5M、5Y、5Bkを第2吐出口列群、第2記録ヘッド5Bの5Cを第3吐出口列群、第2記録ヘッド5Bの5M、5Y、5Bkを第4吐出口列群とした場合である。
図23は、第1記録ヘッド5Aの5C、5M、5Yを第1吐出口列群、第1記録ヘッド5Aの5Bkを第2吐出口列群、第2記録ヘッド5Bの5C、5M、5Yを第3吐出口列群、第2記録ヘッド5Bの5Bkを第4吐出口列群とした場合である。
【0089】
記録ヘッド5の移動時においては、先頭側の吐出口列が最も流入気流の影響を受けるため、移動時に先頭側になる吐出口列を1つの吐出口列群とすることもできる。例えば、往路記録時には、
図22のように第1記録ヘッド5Aの5Cを第1吐出口列群とする。一方、復路記録時は
図23のように第2記録ヘッド5Bの5Bkを第2吐出口列群とする。
【0090】
このように、第1実施形態と同様、各吐出口列群の定義の仕方は1つに限定されるものではなく、移動方向に応じて吐出口列を変化させることも可能である。
【0091】
(第13実施形態の変形例2)
図24は、記録ヘッドの各吐出口列群に乗じる係数の変形例である。記録ヘッドが複数ある場合は各記録ヘッド間の気流の状態が変化する場合がある。具体的には、各記録ヘッド間の形状(凹形状)や間隙により、気流が凹形状や間隙に入り込むことで、各記録ヘッド間の周囲で渦気流が発生する場合等である。これにより、第2記録ヘッド5Bの先頭側の吐出口列(この場合、5C)が上記の渦気流の影響を強く受ける。また、この渦気流の影響も、流入気流の影響と同様に、後方側の吐出口列(この場合、5M、5Y、5Bk)で比較的弱くなる知見も得られている。
【0092】
そこで、
図24(a)のテーブルは、往路記録時には、第1記録ヘッド5Aの第1吐出口列群に乗じる係数が5であり、第2吐出口列群に乗じる係数はそれより小さい1である。一方、第2記録ヘッドの第3吐出口列群に乗じる係数を4とし、第4吐出口列群に乗じる係数を1としている。なお、この場合は、第1吐出口列群に乗じる係数>第3吐出口列群に乗じる係数としたが、第1吐出口列群に乗じる係数≦第3吐出口列群に乗じる係数としても良い。
【0093】
一方、復路記録時には、第4吐出口列群に乗じる係数を5、第3吐出口列群に乗じる係数を1、第2吐出口列群に乗じる係数を4、第1吐出口列群に乗じる係数を1としている。このように、各吐出口列のインク量に乗じる係数は、記録ヘッド移動方向の先頭側から段階的に小さくなる以外にも、
図24(a)のように変則的な値を取ることとしても良い。
【0094】
(第13実施形態の変形例3)
図24(b)のテーブルは、さらに別の変形例である。キャリッジ1の形状や移動速度(移動速度)等の変化によって、記録ヘッドの最後方側の吐出口列の直下において気流の状態が変化することを見出した。また記録媒体上に送風を与えて記録媒体上に着弾したインクの定着性を向上させる送風乾燥機構を有する記録装置等の場合も同様である。そのような場合に対応するため、
図24(b)のテーブルは、先頭側の吐出口列群に流入気流の影響を加味して大きい係数を乗じ、中間部分は小さい係数を乗じ、最後方側の吐出口列群はそれより大きめの係数を乗じることとする。
【0095】
往路記録時には、第1記録ヘッド5Aの第1吐出口列群に乗じる係数が5であり、第2吐出口列群と第3吐出口列群に乗じる係数はそれより小さい1である。一方、第2記録ヘッドの第4吐出口列群に乗じる係数を4としている。なお、第1吐出口列群に乗じる係数>第4吐出口列群に乗じる係数としたが、第1吐出口列群に乗じる係数≦第4吐出口列群に乗じる係数としても良い。
【0096】
一方、復路記録時には、第4吐出口列群に乗じる係数を5、第3吐出口列群と2吐出口列群に乗じる係数を1、第1吐出口列群に乗じる係数を4としている。以降は、第1実施形態と同様にワイピング動作の制御を行う。
【0097】
(第14実施形態)
図25は、第14実施形態に係る記録ヘッド5の構成と各吐出口列群の関係を説明するための模式図である。記録ヘッドの構成は
図21と同様である。第14実施形態は、
図25の点線領域で囲んだ第1記録ヘッド5Aの5Cを第1吐出口列群、5Mを第2吐出口列群、5Yを第3吐出口列群、5Bkを第4吐出口列群とする。また、第2記録ヘッド5Bの5Cを第5吐出口列群、5Mを第6吐出口列群、5Yを第7吐出口列群、5Bkを第8吐出口列群とした場合である。
【0098】
本実施形態は、第1実施形態と同様、
図5のフローチャートに基づいてワイピング動作の制御を行う。本実施形態は、
図6(c)に示すようなテーブルに基づき、記録ヘッドの移動方向に応じて所定の係数を乗じる。このときのワイピング動作の制御手順を説明する。
【0099】
図25で示した記録ヘッドの構成と各吐出口列の関係を例にとる。ここでは、記録ヘッド5の移動時、移動方向の先頭側から後方側に向かうに従って流入気流の影響が段階的に弱くなる例を説明する。例えば、往路記録時(図の左方向)には、第1記録ヘッド5Aの第1吐出口列群(5C)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第2吐出口列群(5M)から吐出されたインク量に第2の係数(=3)を乗じる。また、第3吐出口列群(5Y)から吐出されたインク量に第3の係数(=3)、第4吐出口列群(5Bk)から吐出されたインク量に第4の係数(=2)、・・・というように、第8吐出口列群(第2記録ヘッド5Bの5Bk)まで所定の係数を乗じる。
【0100】
一方、復路記録時には、第8吐出口列群(第2記録ヘッド5Bの5Bk)が移動方向の前方の吐出口列群になる。よって、記録ヘッド5の移動に伴う流入気流の影響は往路記録時とは逆になる。第8吐出口列群(第2記録ヘッド5Bの5Bk)から吐出されたインク量に第1の係数(=5)、第7吐出口列群(5Y)から吐出されたインク量に第2の係数(=3)を乗じる。また、第6吐出口列群(5M)から吐出されたインク量に第3の係数(=3)、第5吐出口列(5C)から吐出されたインク量に第4の係数(=2)、・・・というように、第1吐出口列群(第1記録ヘッド5Aの5C)まで所定の係数を乗じる。以降は、第1実施形態と同様にワイピング動作の制御を行う。
【0101】
本実施形態によれば、各色の各列を吐出口列群とすることにより、インク吐出口列ごとに流入気流の影響を加味した係数を乗じ、第13実施形態よりもさらに緻密な制御が可能になる。
【0102】
(第14実施形態の変形例)
図24(c)は、
図24(a)と同様に、各記録ヘッド間の気流の変化の影響を加味した制御であり、吐出口列群が4群から8群に変化した場合である。
図24(d)は、
図24(b)と同様に、記録ヘッドの最後方側の気流の変化の影響を加味した制御であり、吐出口列群が4群から8群に変化した場合である。制御は、第13実施形態の変形例2および3と同様の考え方で行う。
【0103】
(第15実施形態)
図26は、第15実施形態に係る記録ヘッド5の構成と各吐出口列群の関係を説明するための模式図である。本実施形態は、C、M、Y、Bkの吐出口列がすべて一体となった記録ヘッドの例である。本実施形態では、
図26の点線領域で囲んだ第1記録ヘッド5Aの5C、5M、5Y、5Bkを第1吐出口列群、第2記録ヘッド5Bの5C、5M、5Y、5Bkを第2吐出口列群とする。
【0104】
本実施形態では、第1実施形態と同様、
図5のフローチャートに基づいてワイピング動作の制御を行う。本実施形態では、
図6(a)に示すようなテーブルに基づき、記録ヘッドの移動方向に応じて所定の係数を乗じる。
【0105】
図26で示した記録ヘッドの構成と各吐出口列の関係を例にとる。往路記録時(図の左方向)には、第1吐出口列群(第1記録ヘッド5Aの5C、5M、5Y、5Bk)が移動方向の前方の記録ヘッドとなり流入気流の影響を比較的強く受けるため、吐出されたインク量に第1の係数(=5)を乗じる。また、第2吐出口列群(第2記録ヘッド5Bの5C、5M、5Y、5Bk)が後方の吐出口列群となり流入気流の影響が比較的小さいため、吐出されたインク量に第1の係数よりも小さい第2の係数(=1)を乗じる。
【0106】
一方、復路記録時には、第2吐出口列群(第2記録ヘッド5Bの5C、5M、5Y、5Bk)が移動方向の前方の吐出口列群に、第1吐出口列群(第1記録ヘッド5Aの5C、5M、5Y、5Bk)が後方の吐出口列群になる。よって、記録ヘッド5の移動に伴う流入気流の影響は往路記録時とは逆になる。第2吐出口列群に乗じる係数が5となり、第1吐出口列群に乗じる係数は1となる。以降は、第1実施形態と同様にワイピング動作の制御を行う。
【0107】
(第16実施形態)
第16実施形態は、第1実施形態の吐出条件以外の要因により、浮遊ミストが発生しやすい場合に特に有効である。具体的には、記録ヘッド5の移動速度により流入気流がより大きくなるときや、低湿環境下など吐出口面に付着したインクが増粘、固着しやすいときや、記録ヘッドと記録媒体の間の距離が広い場合などである。
【0108】
本実施形態では、記録ヘッドの移動方向に加えて、「記録ヘッドの移動速度」、「記録ヘッドと記録媒体の間の距離」や「装置本体を設置した環境湿度」に応じてドットカウント値に重み付け係数を乗じる。そして、その値が所定の閾値以上である場合にワイピング動作を行う。
【0109】
簡単な例として、ここでは第1実施形態の記録ヘッドの構成と色順を基にして、
図5のフローチャートを用いて説明する。まずステップS201で、1ライン分の記録データが記録される。そしてステップS202において、ドットカウント処理に基づき、記録データに従って吐出されたインクの吐出回数が積算される。次にステップS203で、ステップS202で取得したドットカウント値に対して、
図27(a)、(b)、(c)に示すようなテーブルに基づき、記録ヘッドの移動速度、記録ヘッドと記録媒体の間の距離、装置本体を設置した環境湿度に応じた係数を乗じる。例えば、
図2で示したインクの並び順で、記録ヘッドの移動速度が33.3インチ/秒で、かつ、記録ヘッドと記録媒体の間の距離が「高い」、環境湿度が30%未満の場合を例にとると、計算式は下記の通りとなる。
(往路記録時の計算式)
={移動方向の前方側の吐出口列群(第1吐出口列群)×第1の係数(=5)
+移動方向の後方側の吐出口列群(第2吐出口列群)×第2の係数(=1)}
×記録ヘッドの移動速度に応じた係数(=0.8)
×記録ヘッドと記録媒体の間の距離に応じた係数(=1.2)
×環境に応じた係数(=1)
(復路記録時の計算式)
={移動方向の前方側の吐出口列群(第2吐出口列群)×第1の係数(=5)
+移動方向の後方側の吐出口列群(第1吐出口列群)×第2の係数(=1)}
×記録ヘッドの移動速度に応じた係数(=0.8)
×記録ヘッドと記録媒体の間の距離に応じた係数(=1.2)
×環境に応じた係数(=1)
【0110】
以上のように、記録ヘッドの移動方向に加えて、移動速度、記録ヘッドと記録媒体の間の距離、および装置本体の設置環境に応じて、ドットカウント値に乗じる重み付けを変える。これにより、インク吐出口列に付着するミスト量をより正確に把握することが可能になる。本実施形態によれば、吐出口面に浮遊ミストが付着することによる吐出不良や、混色などによる記録媒体に記録される画像品質の低下を、第1〜第15実施形態よりも確実に防止することが可能となる。
【0111】
(第17実施形態)
第17実施形態は、ワイピング動作の強度、ここでは特に1回のワイピング動作中におけるワイピング回数の制御を行う例である。本実施形態は、1度のワイピング動作では吐出口面に付着したインクを所定の量で掻き取れない場合に特に有効である。
【0112】
図28は、本実施形態におけるワイピング動作の制御手順を示すフローチャートである。記録ヘッド5の吐出口面に付着したインクは、ワイパ32A、32Bによる払拭動作により吐出口面から掻き取られる。所定単位で行われる1度のワイピング動作における払拭回数は通常1回であるが、付着インクが増粘している場合は、1度の払拭動作では所望の量のインクを掻き取ることができない場合がある。このとき、1回のみではなく連続して払拭動作を行うことで、1回では掻き取れなかったインクをより積極的に掻き取ることが可能になる。本実施形態では、通常の1回の払拭動作に加え、必要に応じて払拭動作を2回連続して行うように制御する。なお、払拭動作は吐出口面に付着したインクを所望の量、掻き取るために行うものであり、払拭回数は2回に限定するものではなく、3回以上行っても良い。
【0113】
本実施形態では、「記録ヘッドの移動方向」、「記録ヘッドの移動速度」、「記録ヘッドと記録媒体間の距離」や「装置本体を設置した環境湿度」に応じてドットカウント値に重み付け係数を乗じる。そして、その値が所定の閾値以上である場合には、1回のワイピング動作におけるワイピングを複数回連続して行うように制御する。
【0114】
まずステップS211において、1ライン分の記録データが記録される。そしてステップS212において、ドットカウント処理に基づき、記録データに従って吐出されたインクの吐出回数が積算される。次にステップS213では、ステップS212で取得したドットカウント値に対して係数を乗じる。係数は、
図24の(a)、(b)、(c)に示すようなテーブルに基づき、記録ヘッドの移動方向と移動速度、記録ヘッドと記録媒体の間の距離、装置本体を設置した環境湿度に応じて変化する。例えば、
図2で示したインクの並び順で、記録ヘッドの移動速度が33.3インチ/秒で、かつ、記録ヘッドと記録媒体の間の距離が「高い」、環境湿度が30%未満の場合を例にとると、計算式は下記の通りとなる。
(往路記録時の計算式)
={移動方向の前方側の吐出口列群(第1吐出口列群)×第1の係数(=5)
+移動方向の後方側の吐出口列群(第2吐出口列群)×第2の係数(=1)}
×記録ヘッドの移動速度に応じた係数(=0.8)
×記録ヘッドと記録媒体の間の距離に応じた係数(=1.2)
×環境に応じた係数(=1)
(復路記録時の計算式)
={移動方向の前方側の吐出口列群(第2吐出口列群)×第1の係数(=5)
+移動方向の後方側の吐出口列群(第1吐出口列群)×第2の係数(=1)}
×記録ヘッドの移動速度に応じた係数(=0.8)
×記録ヘッドと記録媒体の間の距離に応じた係数(=1.2)
×環境に応じた係数(=1)
【0115】
なお、第1〜第16実施形態と同様、上記式において各インク吐出量はインク1回あたりの吐出量にドットカウント値を乗じることで算出される。各インク吐出量は、インクおよびヘッド(特にノズル)構成等により決定される既知の値である。次にステップS214において、重み付けされた値が所定の閾値以上であるか否かが判定される。ここで、所定の閾値以上であると判定された場合は、ステップS215において連続して2回のワイピング動作を実行し、ステップS216でドットカウント数がリセットされる。次に、ステップS218に進み、記録が終了したか否かが判定される。記録が終了していないと判定された場合は、ステップS211に戻り、次の1ライン分の記録データが記録される。
【0116】
一方、記録が終了したと判定された場合はステップS219に移行し、本手順を終了する。またステップS214において、重み付けされた値が所定の閾値未満であると判定された場合は、ステップS217に進み、通常の回数によるワイピング動作を実行し、ステップS216でドットカウント数がリセットされる。次にステップS218に進み、記録が終了したか否かが判定され、記録が終了していないと判定された場合はステップS211に戻り、次の1ライン分の記録データが記録される。一方、記録が終了したと判定された場合は、ステップS219に移行し、本手順を終了する。
【0117】
以上のように、記録ヘッドの移動方向、移動速度、記録ヘッドと記録媒体の間の距離、および装置本体の設置環境に応じて、ドットカウント値に乗じる重み付けを変えることにより、インク吐出口列に付着するミスト量をより正確に把握することが可能になる。
【0118】
本実施形態によれば、第1〜第16実施形態と同様、吐出口面に浮遊ミストが付着することによる吐出不良や、混色などによる記録媒体に記録される画像品質の低下を確実に防止することが可能になる。
【0119】
(第18実施形態)
本実施形態は、ワイピング動作後に予備吐出による回復動作を実行する場合の制御例である。ワイピング動作後には、所定量の予備吐出を行うのが好ましい。これは主に以下の2つの理由による。1つ目の理由は、ワイピング動作前に吐出口面に付着したミストは、吐出に伴うインク溶剤成分の蒸発、キャリッジの移動に伴う風の影響によるインク溶剤成分の蒸発、記録ヘッド近傍の熱によるインク溶剤成分の蒸発等の要因により、増粘している場合がある。この場合、ワイピング動作によって増粘インクがノズル内に押し込められることがあり、予備吐出をせずに次の記録のための吐出動作(本吐出動作)を行うと、吐出不良が生じるおそれがあるためである。2つ目の理由は、複数色の吐出部が一体となった記録ヘッド5と、いくつかのインク色について共通するワイパを用いる場合、ワイピング動作に伴って、吐出口面に付着していたある色のインクが他のインク色用のノズル内に押し込められる場合がある。この場合、予備吐出をせずに次の本吐出動作を行うと、混色が発生するおそれがあるためである。したがって、予備吐出を行って押し込められた増粘インクまたは他色インクを排出することで、これらの不都合を回避することができる。
【0120】
本実施形態では、記録ヘッドの移動方向と移動速度、記録ヘッドと記録媒体の間の距離、および装置本体の設置環境に応じて、ドットカウント値に重み付けをする。そしてその値が所定の閾値以上である場合には、予備吐出の量、具体的には予備吐出の吐出回数を制御する。
【0121】
例えば、
図24(d)に示すように、前回ワイピング動作が実行されてからの記録量をカウントし、そのカウント値に応じて、ワイピング動作後の予備吐出の回数を制御する。すなわち、前回ワイピング動作が実行されてからの記録量が多い場合は、吐出口面へのミスト付着量が多いと考えられる。したがって、ワイピング動作に伴って増粘インクや他色インクのノズル内への押し込みが多く発生すると想定し、予備吐出の回数を多くする。逆に前回ワイピング動作が実行されてからの記録量が少ない場合は、吐出口面へのミスト付着量が少ないと考えられる。したがって、ワイピング動作に伴う増粘インクや他色インクのノズル内への押し込みも少ないと想定し、予備吐出の回数を少なくする。
【0122】
このように、本実施形態では、ワイピング動作後に予備吐出による回復動作を実行することで、吐出不良や混色といった記録品位の低下を防止することができる。なお、上記の実施形態のように、ワイピング動作後の予備吐出の回数を記録量に応じて変更する場合には、予備吐出後にドットカウント値をリセットすれば良い。また本実施形態では、ワイピング動作後に予備吐出されるインク量が記録量に応じて変更されればよく、例えば、1液滴当たりのインク吐出量を変更してもよい。
【0123】
本実施形態を
図29のフローチャートに基づいて説明する。まずステップS221において、1ライン分の記録データが記録される。そしてステップS222において、ドットカウント処理に基づき、記録データに従って吐出されたインクの吐出回数が積算される。次にステップS223では、ステップS222で取得したドットカウント値に対して、上記の実施形態と同様にドットカウント値に係数を乗じる。例えば、
図4で示したインクの並び順で、記録ヘッドの移動速度が24インチ/秒で、かつ、記録ヘッドと記録媒体の間の距離が「低い」、環境湿度が60%以上の場合、計算式は下記の通りとなる。
(往路記録時の計算式)
={移動方向の前方側の吐出口列群(第1吐出口列群)×第1の係数(=5)
+移動方向の後方側の吐出口列群(第2吐出口列群)×第2の係数(=1)}
×記録ヘッドの移動速度に応じた係数(=0.6)
×記録ヘッドと記録媒体の間の距離に応じた係数(=0.4)
×環境に応じた係数(=0.8)
(復路記録時の計算式)
={移動方向の前方側の吐出口列群(第2吐出口列群)×第1の係数(=5)
+移動方向の後方側の吐出口列群(第1吐出口列群)×第2の係数(=1)}
×記録ヘッドの移動速度に応じた係数(=0.6)
×記録ヘッドと記録媒体の間の距離に応じた係数(=0.4)
×環境に応じた係数(=0.8)
【0124】
次にステップS224において、重み付けされた値が所定の閾値以上であるか否かが判定される。ここで、所定の閾値以上であると判定された場合は、ステップS225でワイピング動作が実行され、ステップS226で
図24(d)のテーブルに基づいて予備吐出の回数の設定が行われる。次にステップS227において、予備吐出を実行する。そしてステップS228において、ドットカウント数がリセットされる。次に、ステップS229において、記録が終了したか否かが判定される。記録が終了していないと判定された場合は、ステップS221に戻り、次の1ライン分の記録データが記録される。一方、記録が終了したと判定の場合はステップS230に移行し、本手順を終了する。
【0125】
一方、ステップS224において、所定の閾値未満であると判定された場合は、ステップS229に進み、同様に記録が終了したか否かが判定される。記録が終了していない場合には、ステップS221に戻り、次の1ライン分の記録データが記録される。記録が終了したと判定された場合はステップS230に移行し、本手順を終了する。
【0126】
以上のように本実施形態では、記録ヘッドの移動方向、移動速度、記録ヘッドと記録媒体の間の距離、および装置本体の設置環境を加味して、ワイピング動作後の予備吐出の回数を制御する。これにより、吐出口面に浮遊ミストが付着することによって生じた吐出不良や混色などによる画像品質の低下を確実に防止することが可能となる。