(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記案内板の回転角度を指定する外部入力が取得された場合に、前記第一状態及び前記第二状態における廃棄物の装入に優先して、前記外部入力に対応するように前記案内板の回転角度を調節した状態にて廃棄物を前記廃棄物溶融炉内に装入する、請求項1記載の廃棄物装入方法。
少なくとも一つの前記温度センサの位置は、前記側壁の中心に対して前記第一方向に偏っており、少なくとも一つの前記温度センサの位置は、前記側壁の中心に対して前記第二方向に偏っている、請求項5記載の廃棄物装入装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記廃棄物装入装置によれば、廃棄物溶融炉内における廃棄物の偏積が抑制されるので、廃棄物溶融炉の操業安定性を向上させることができる。本開示は、廃棄物溶融炉の操業安定性を更に向上させることができる廃棄物装入方法及び廃棄物装入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る廃棄物装入方法は、鉛直な軸線を囲むように配置された筒状の側壁を有する廃棄物溶融炉に、上方から廃棄物を装入する方法であって、水平な軸線まわりに回転して廃棄物の落下方向を調節する案内板を用い、側壁の中心に対して第一方向に偏った位置に廃棄物を落下させるように案内板の回転角度を調節した第一状態にて、廃棄物を廃棄物溶融炉内に装入すること、側壁の中心に対して第一方向の逆の第二方向に偏った位置に廃棄物を落下させるように案内板の回転角度を調節した第二状態にて、廃棄物を廃棄物溶融炉内に装入すること、を交互に繰り返す。
【0006】
本発明者等は、操業安定性を更に向上させるために、廃棄物溶融炉内の状況を調査し、以下の現象を見出した。
a)廃棄物溶融炉内における廃棄物の偏積が抑制されたとしても、炉内ガスは廃棄物溶融炉内の周辺部(側壁の近傍部)に偏って流れる傾向がある。
b)炉内ガスが廃棄物溶融炉内の周辺部に偏って流れることにより、廃棄物溶融炉内の周辺部における廃棄物の熱分解及び減容が部分的に促進され、廃棄物溶融炉内の周辺部において部分的な空洞が生じる場合がある。
c)廃棄物溶融炉内の部分的な空洞は炉内ガスの流路を形成する場合があり、その場合、空洞以外の部分に炉内ガスが流れ難くなる可能性がある。
これらの現象は、廃棄物溶融炉内のガス流れを偏流化するため、廃棄物の熱分解及び減容を部分的に停滞させる要因となる。これに対し、本廃棄物装入方法では、上記第一状態及び第二状態における廃棄物の装入を交互に実行するので、側壁の中心に対して第一方向及び第二方向に偏った位置に廃棄物が落下する。このため、側壁の中心に廃棄物を落下させる場合に比べて、廃棄物溶融炉内の周辺部における廃棄物の堆積高さが高くなり、廃棄物溶融炉内の周辺部における通気抵抗が高まる。これにより、上記現象の発生が抑制されるので、廃棄物の熱分解及び減容の部分的な停滞が抑制され、廃棄物溶融炉内全域における廃棄物の溶融処理が安定的に進行する。従って、廃棄物溶融炉の操業安定性を向上させることができる。
【0007】
廃棄物溶融炉内に堆積した廃棄物の上部が、第一方向に偏った位置及び第二方向に偏った位置において隆起した形状となるように、第一状態及び第二状態における案内板の回転角度を調節してもよい。この場合、上記現象の発生がより確実に抑制されるので、廃棄物溶融炉の操業安定性をより確実に向上させることができる。
【0008】
案内板の回転角度を指定する外部入力が取得された場合に、第一状態及び第二状態における廃棄物の装入に優先して、外部入力に対応するように案内板の回転角度を調節した状態にて廃棄物を廃棄物溶融炉内に装入してもよい。この場合、外部入力によって案内板の回転角度を一時的に操作し、廃棄物の堆積状況を調整することができる。例えば、上記現象c)が生じた場合には、炉内ガスの偏流を解消するように(例えば偏流が生じた箇所に廃棄物を落下させるように)、案内板の回転角度を一時的に操作することで、当該現象を抑制することができる。
【0009】
本開示に係る廃棄物装入装置は、鉛直な軸線を囲むように配置された筒状の側壁を有する廃棄物溶融炉に上方から廃棄物を装入する経路を開閉する開閉機構と、水平な軸線まわりに回転する案内板により廃棄物の落下方向を調節する案内機構と、側壁の中心に対して第一方向に偏った位置に廃棄物を落下させるように案内板の回転角度を調節した第一状態にて、廃棄物を廃棄物溶融炉内に装入するように案内機構及び開閉機構を制御すること、側壁の中心に対して第一方向の逆の第二方向に偏った位置に廃棄物を落下させるように案内板の回転角度を調節した第二状態にて、廃棄物を廃棄物溶融炉内に装入するように案内機構及び開閉機構を制御すること、を交互に繰り返すように構成されたコントローラと、を備える。この廃棄物装入装置によれば、上述した廃棄物装入方法を実行することで廃棄物溶融炉の操業安定性を向上させることができる。
【0010】
コントローラは、廃棄物溶融炉内に堆積した廃棄物の上部が、第一方向に偏った位置及び第二方向に偏った位置において隆起した形状となるように設定された角度を目標値として、第一状態及び第二状態における案内板の回転角度を調節するように案内機構を制御してもよい。この場合、廃棄物溶融炉の操業安定性をより確実に向上させることができる。
【0011】
案内板の回転角度を指定するためのコンソールを更に備え、コントローラは、案内板の回転角度を指定する外部入力がコンソールにより取得された場合には、第一状態及び第二状態における廃棄物の装入に優先して、案内板の回転角度を外部入力に対応するように調節した状態にて廃棄物を廃棄物溶融炉内に装入するように案内機構及び開閉機構を制御してもよい。この場合、コンソールへの入力によって案内板の回転角度を一時的に操作し、廃棄物の堆積状況を調整することができる。例えば、上記現象c)が生じた場合には、炉内ガスの偏流を解消するように(例えば偏流が生じた箇所に廃棄物を落下させるように)、案内板の回転角度を一時的に操作することで、当該現象を抑制することができる。
【0012】
廃棄物溶融炉の上部において、側壁の周方向に並ぶように配置された複数の温度センサを更に備え、コンソールは、複数の温度センサによる検出値に関する情報の表示部を有してもよい。この場合、温度センサによる検出値に関する情報をオペレータに提供することにより、廃棄物を落下させるべき位置を推定し易くすることができる。例えば、高い温度を示す温度センサの位置には炉内ガスの偏流が生じている可能性が高いので、オペレータは、当該温度センサの位置が廃棄物を落下させるべき位置だと推定することができる。
【0013】
少なくとも一つの温度センサの位置は、側壁の中心に対して第一方向に偏っており、少なくとも一つの温度センサの位置は、側壁の中心に対して第二方向に偏っていてもよい。この場合、温度センサによる検出値と、案内板の回転角度の双方が第一方向及び第二方向に関連付けられることとなるので、当該温度センサの位置に基づいて、コンソールに入力すべき案内板の回転角度を設定し易くなる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、廃棄物溶融炉の操業安定性を更に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔廃棄物装入装置〕
以下、実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1に示す廃棄物装入装置1は、廃棄物溶融炉2に廃棄物を装入する装置である。廃棄物溶融炉2は、鉛直な軸線を囲むように配置された筒状の側壁3を有する。一例として、側壁3は鉛直な軸線に沿っている。側壁3の上部は縮径され、上方に開口している。廃棄物溶融炉2は、廃棄物の乾燥、熱分解、燃焼及び溶融を行う。
【0018】
廃棄物装入装置1は、廃棄物溶融炉2の上に配置されており、廃棄物溶融炉2に上方から廃棄物を装入する。廃棄物装入装置1は、廃棄物シュート10と、中間ホッパ30と、廃棄物受入ホッパ20と、副資材装入装置40と、開閉機構50,60と、案内機構70と、複数の温度センサ80と、コントローラ100と、コンソール200とを有する。
【0019】
廃棄物シュート10は、廃棄物を廃棄物溶融炉2内に誘導する。廃棄物シュート10は、内筒11と、誘導部13とを有する。内筒11は、廃棄物溶融炉2に上方から挿入され、廃棄物溶融炉2の上端部に固定されている。内筒11の中心は側壁3の中心軸線CL1に一致している。誘導部13は内筒11の上端部に連なっており、中心軸線CL1を囲む側壁14と、側壁14の上部を塞ぐ天板17とを有する。側壁14は、上方へ向かうに従って広がっている。一例として、側壁14は、傾斜壁部15と鉛直壁部16とを有する。傾斜壁部15及び鉛直壁部16は、側壁14の周方向において互いに対向している。傾斜壁部15は、上方へ向かうに従い中心軸線CL1から遠ざかるように傾斜している。鉛直壁部16は、中心軸線CL1に沿っている。すなわち側壁14は、上方へ向かうに従い傾斜壁部15側に広がっている。
【0020】
中間ホッパ30は廃棄物シュート10の上に配置されており、廃棄物を廃棄物シュート10内に誘導する。中間ホッパ30は鉛直な軸線に沿った筒状を呈している。中間ホッパ30の下端部は廃棄物シュート10の天板17に挿入されており、誘導部13内の上部に位置している。中間ホッパ30の中心軸線CL2は、中心軸線CL1に対して傾斜壁部15側にずれており、中間ホッパ30の下側開口部32の少なくとも一部が傾斜壁部15の上にかかっている。
【0021】
廃棄物受入ホッパ20は、中間ホッパ30の上に配置されており、廃棄物を中間ホッパ30内に誘導する。廃棄物受入ホッパ20は鉛直な軸線に沿った筒状を呈し、その上部は上方へ向かうに従って広がっている。廃棄物受入ホッパ20の下側開口部22は中間ホッパ30の上側開口部31に対向しており、これらの間には隙間が形成されている。
【0022】
廃棄物受入ホッパ20の上方には、例えばバケット4によって廃棄物が搬送される。バケット4により搬送された廃棄物は、廃棄物受入ホッパ20内に投下される。廃棄物受入ホッパ20内に投下された廃棄物は、廃棄物受入ホッパ20、中間ホッパ30及び廃棄物シュート10を順に通って廃棄物溶融炉2内に装入される。すなわち、廃棄物受入ホッパ20、中間ホッパ30及び廃棄物シュート10は、廃棄物溶融炉2に上方から廃棄物を装入する経路R1を構成する。
【0023】
副資材装入装置40は、副資材を貯留し、中間ホッパ30を介して廃棄物溶融炉2内に装入する。副資材は、燃料、塩基度調整剤等である。燃料は例えばコークスであり、塩基度調整剤は例えば石灰である。副資材装入装置40は、副資材シュート41と、副資材ホッパ42と、副資材装入弁43とを有する。副資材シュート41は、中間ホッパ30の側面から斜め上方に突出した管状を呈しており、その内部は中間ホッパ30内に連通している。副資材ホッパ42は副資材シュート41の上端部に設けられ、上方に開口している。副資材装入弁43は、副資材シュート41と副資材ホッパ42の間を開閉する。副資材装入装置40は、中間ホッパ30を介さずに、廃棄物溶融炉2に副資材を直接装入するように構成されていてもよい。
【0024】
開閉機構50,60は、廃棄物溶融炉2に上方から廃棄物を装入する経路R1を開閉する。開閉機構50は、開閉板51と押圧リング52とを有する。開閉板51は、廃棄物受入ホッパ20の下端部と中間ホッパ30の上端部との間に介在し、経路R1を遮る。開閉板51は水平方向にスライド可能となっている。押圧リング52は、開閉板51の上において廃棄物受入ホッパ20の下端部を囲むように配置されており、昇降可能となっている。開閉機構50は、開閉板51をスライドさせることで経路R1を開閉し、押圧リング52により開閉板51を下方に押圧することで中間ホッパ30の上側開口部31を密封する。開閉板51は、例えば電動モータ又は油圧シリンダ等を動力源とし、チェーン又はベルト等の伝達機構を介して駆動される。押圧リング52は、例えば油圧シリンダ又はエアシリンダ等を動力源として駆動される。
【0025】
開閉機構60は、回転軸61と開閉板62と駆動装置63とを有する。回転軸61は、中間ホッパ30の下側開口部32の周囲に位置し、水平方向に延在している。回転軸61は傾斜壁部15側に位置し、傾斜壁部15に対して平行となっている。開閉板62は、回転軸61と一体化されており、下側開口部32を塞ぐように回転軸61の外周面から張り出している。駆動装置63は、回転軸61を回転させることで、回転軸61の中心軸まわりに開閉板62を回転させる。これにより下側開口部32が開閉される。駆動装置63は、回転軸61を回転させるための動力源と、回転軸61の回転角度を検出するセンサとを有する。駆動装置63の動力源は例えば電動モータ又は油圧シリンダである。駆動装置63のセンサは例えばロータリーエンコーダ又はポテンショメータである。
【0026】
案内機構70は、水平な軸線まわりに回転する案内板72により廃棄物の落下方向を調節する。一例として、案内機構70は、回転軸71と案内板72と駆動装置73とを有する。回転軸71は、中間ホッパ30の下側開口部32の周囲において回転軸61の逆側に位置し、回転軸61に平行となるように延在している。案内板72は、回転軸71と一体化されており、回転軸71の外周面から下方に張り出している。駆動装置73は、回転軸71を回転させることで、回転軸71の中心軸まわりに案内板72を回転させる。これにより案内板72の回転角度が調節される。駆動装置73は、回転軸71を回転させるための動力源と、回転軸71の回転角度を検出するセンサとを有する。駆動装置73の動力源は例えば電動モータ又は油圧シリンダである。駆動装置73のセンサは例えばロータリーエンコーダ又はポテンショメータである。
【0027】
複数の温度センサ80は、廃棄物溶融炉2の上部において、側壁3の周方向に並ぶように配置されている。一例として、廃棄物装入装置1は8個の温度センサ80を備え、これらの温度センサ80は側壁3の周方向において等間隔に並んでいる。少なくとも一つの温度センサ80の位置は、側壁3の中心軸線CL1に対して回転軸61側(以下、「第一方向D1」という。)に偏っており、少なくとも一つの温度センサ80の位置は、中心軸線CL1に対して回転軸71側(以下、「第二方向D2」という。)に偏っている。
【0028】
コントローラ100は、開閉機構50,60を制御する装置である。コンソール200は、オペレータによる各種操作入力を可能とする装置である。オペレータによる各種操作入力は、案内板72の回転角度の指定を含む。一例として、コンソール200は、モニタ211と入力部212とを有する。モニタ211は、オペレータに対する情報を表示する。モニタ211は、例えば液晶ディスプレイ等により構成される。入力部212は、オペレータによる入力を受け付ける。入力部212は、例えば操作スイッチ、キーボード、マウス又はタッチパネル等により構成される。コンソール200はコントローラ100と一体化されていてもよいし、コントローラ100から分離したユニットとして構成されていてもよい。
【0029】
コントローラ100は、中心軸線CL1に対して第一方向D1に偏った位置に廃棄物を落下させるように案内板72の回転角度を調節した第一状態にて、廃棄物を廃棄物溶融炉2内に装入するように案内機構70及び開閉機構50,60を制御すること、中心軸線CL1に対して第二方向D2に偏った位置に廃棄物を落下させるように案内板72の回転角度を調節した第二状態にて、廃棄物を廃棄物溶融炉2内に装入するように案内機構70及び開閉機構50,60を制御すること、を交互に繰り返すように構成されている。
【0030】
一例としてコントローラ100は、機能上のモジュールとして、目標角度設定部111と、目標角度取得部112と、案内機構制御部113と、開閉機構制御部114と、炉況情報取得部115と、炉況情報出力部116とを有する。目標角度設定部111は、オペレータからの指定がない場合に案内板72の回転角度の目標値を設定する。目標角度取得部112は、案内板72の回転角度を指令する外部入力を入力部212から取得する。一例として、目標角度取得部112は、オペレータにより入力部212に入力された案内板72の回転角度の目標値を取得する。案内機構制御部113は、案内機構70を制御する。開閉機構制御部114は、開閉機構50,60を制御する。炉況情報取得部115は、炉内状況に関する情報の一例として、温度センサ80による検出値を出力する。炉況情報出力部116は、炉況情報取得部115が取得した情報に基づいて、炉内状況に関する情報をモニタ211に出力する。このためモニタ211は、複数の温度センサ80による検出値に関する情報の表示部として機能する。
【0031】
コントローラ100は、ハードウェア上の構成として、例えば
図2に示す回路120を有する。回路120は、プロセッサ121と、メモリ122と、ストレージ123と、入出力ポート124と、ドライバ125とを有する。ドライバ125は、駆動装置63,73を駆動するための回路である。入出力ポート124は、温度センサ80、モニタ211及び入力部212との間でデータの入出力を行う。入出力ポート124は、ドライバ125との間でもデータの入出力を行い、駆動装置73,74に対する駆動指令をドライバ125に出力する。プロセッサ121は、メモリ122及びストレージ123の少なくとも一方と協働してプログラムを実行し、入出力ポート124に対する入出力を行うことで、上述した機能上のモジュールを構成する。
【0032】
なお、コントローラ100のハードウェア上の構成は、必ずしもプログラムの実行により機能モジュールを構成するものに限られない。例えばコントローラ100は、専用の論理回路により、又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)によりこれらの機能を構成するものであってもよい。
【0033】
〔廃棄物装入手順〕
続いて、廃棄物装入方法の一例として、廃棄物装入装置1による廃棄物装入手順について説明する。以下の説明において、「通常目標角度」とは、案内板72の回転角度の目標値のうち、目標角度設定部111により設定されるものを意味する。「指定目標角度」とは、案内板72の回転角度の目標値のうち、オペレータにより入力部212に入力されるものを意味する。第一角度θ1とは、側壁3の中心軸線CL1に対して第一方向D1に偏った位置(以下、単に「第一方向D1に偏った位置」という。)に廃棄物を落下させるように予め設定された案内板72の回転角度を意味する。第二角度θ2とは、側壁3の中心軸線CL1に対して第二方向D2に偏った位置(以下、単に「第二方向D2に偏った位置」という。)に廃棄物を落下させるように予め設定された案内板72の回転角度を意味する。第一角度θ1及び第二角度θ2は、廃棄物溶融炉2内に堆積した廃棄物の上部が、第一方向D1に偏った位置及び第二方向D2に偏った位置において隆起した形状となるように設定されていてもよい。
【0034】
廃棄物装入装置1による廃棄物装入手順は、コントローラ100が廃棄物装入装置1の各要素を制御することにより実行される。
図3に示すように、コントローラ100は、まずステップS01を実行する。ステップS01では、目標角度設定部111が、前回の通常目標角度が第一角度θ1であったか否かを確認する。
【0035】
ステップS01において、前回の通常目標角度が第一角度θ1であると判断した場合、コントローラ100はステップS02を実行する。ステップS02では、目標角度設定部111が、通常目標角度を第二角度θ2に設定する。ステップS01において、前回の通常目標角度が第一角度θ1でないと判断した場合、コントローラ100はステップS03を実行する。ステップS03では、目標角度設定部111が、通常目標角度を第一角度θ1に設定する。
【0036】
次に、コントローラ100はステップS04を実行する。ステップS04では、案内板72の回転角度を指定する外部入力(例えば指定目標角度)が入力部212により取得されたか否かを目標角度取得部112が確認する。
【0037】
ステップS04において、上記外部入力が取得されていないと判断した場合、コントローラ100はステップS05を実行する。ステップS05では、案内板72の回転角度を通常目標角度に一致させるように、案内機構制御部113が案内機構70を制御する。なお、ここでの「一致」は実質的な一致を意味し、制御上不可避な誤差がある場合も含む。以下の説明においても同様である。
【0038】
ステップS04において、上記外部入力が取得されていると判断した場合、コントローラ100はステップS06を実行する。ステップS06では、案内板72の回転角度を外部入力に対応させるように(例えば指定目標角度に一致させるように)、案内機構制御部113が案内機構70を制御する。
【0039】
次に、コントローラ100はステップS07を実行する。ステップS07では、開閉機構制御部114が、廃棄物溶融炉2内に廃棄物を装入するように開閉機構50,60を制御する。
【0040】
一例として、開閉機構制御部114は、まず開閉機構60が下側開口部32を閉じた状態で、開閉板51が経路R1を開くように開閉機構50を制御する。これにより、廃棄物が廃棄物受入ホッパ20内から中間ホッパ30内に装入される。この際、開閉機構制御部114は、副資材装入弁43を開閉させて中間ホッパ30内に副資材を装入するように、副資材装入装置40を制御してもよい。次に開閉機構制御部114は、開閉板51が経路R1を閉じるように開閉機構50を制御した後に、開閉板62が経路R1を開くように開閉機構60を制御する。これにより、廃棄物が中間ホッパ30内から廃棄物シュート10内を経て廃棄物溶融炉2内に装入される。
【0041】
廃棄物は、開閉板62及び傾斜壁部15の少なくとも一方の上を滑落した後、案内板72に案内されて廃棄物溶融炉2内に落下する。案内板72の回転角度が第一角度θ1となっている場合、廃棄物は中心軸線CL1に対して第一方向D1に偏った位置に落下する。
案内板72の回転角度が第二角度θ2となっている場合、廃棄物は中心軸線CL1に対して第二方向D2に偏った位置に落下する。
【0042】
次に、コントローラ100はステップS08,S09を実行する。ステップS08では、炉況情報取得部115が、炉内状況に関する情報の一例として、全ての温度センサ80による検出値を取得する。ステップS09では、炉況情報出力部116が、炉況情報取得部115により取得された情報に基づいて、炉内状況に関する情報をモニタ211に出力する。炉況情報出力部116は、炉況情報取得部115により取得された情報自体をモニタ211に出力してもよいし、炉況情報取得部115により取得された情報を加工してモニタ211に出力してもよい。例えば炉況情報出力部116は、複数の温度センサ80による検出値に基づいて、炉内ガスの偏流の発生個所を推定し、その推定結果をモニタ211に出力してもよい。
【0043】
次に、コントローラ100は、ステップS10において経過時間を確認する。所定時間が経過していない場合、コントローラ100は処理をステップS08に戻す。これにより、所定時間の経過までは、炉内状況の確認と表示が繰り返される。所定時間は、必要とされる廃棄物の装入サイクルに応じて適宜設定される。
【0044】
次に、コントローラ100は、ステップS11において停止指令の有無を確認する。
停止指令は、必要に応じオペレータにより入力部212に入力される。停止指令が入力部212により取得されていないと判断した場合、コントローラ100は処理をステップS01に戻す。
【0045】
以後、停止指令が入力されるまでは、上述したステップS01〜S11が繰り返される。これにより、
図4に示すように、案内板72の回転角度が第一角度θ1となった状態での廃棄物Gの装入と、案内板72の回転角度が第二角度θ2となった状態での廃棄物Gの装入とが交互に繰り返される。すなわち、中心軸線CL1に対して第一方向D1に偏った位置に廃棄物Gを落下させるように案内板72の回転角度を調節した第一状態にて、廃棄物Gを廃棄物溶融炉2内に装入すること、中心軸線CL1に対して第二方向D2に偏った位置に廃棄物Gを落下させるように案内板72の回転角度を調節した第二状態にて、廃棄物Gを廃棄物溶融炉2内に装入すること、が交互に繰り返される。これにより、廃棄物Gが、第一方向D1に偏った位置及び第二方向D2に偏った位置に交互に落下する。
【0046】
上述したように、第一角度θ1及び第二角度θ2は、廃棄物溶融炉2内に堆積した廃棄物の上部が第一方向D1に偏った位置及び第二方向D2に偏った位置において隆起した形状となるように設定されていてもよい。この場合、第一状態及び第二状態での廃棄物Gの装入を交互に繰り返すことにより、廃棄物溶融炉2内に堆積した廃棄物Gの上部が第一方向D1に偏った位置及び第二方向D2に偏った位置において隆起した形状となる。すなわち、第一方向D1に偏った位置における廃棄物Gの堆積高さH1と、第二方向D2に偏った位置における廃棄物Gの堆積高さH2とが、側壁3の中央部(中心軸線CL1及びその近傍部分)における廃棄物Gの堆積高さH0に比べて高い状態となる。
【0047】
案内板72の回転角度を指定する外部入力(例えば指定目標角度)が入力部212により取得された場合には、第一状態及び第二状態における廃棄物の装入に優先して、案内板72の回転角度を外部入力に対応するように(例えば指定目標角度に一致するように)調節した状態にて廃棄物Gが廃棄物溶融炉2内に装入される。
【0048】
ステップS11において、停止指令が入力部212により取得されたと判断した場合、コントローラ100は処理を終了する。以上で廃棄物装入手順が完了する。
【0049】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、本実施形態に係る廃棄物装入方法は、鉛直な軸線を囲むように配置された筒状の側壁3を有する廃棄物溶融炉2に、上方から廃棄物Gを装入する方法であって、水平な軸線まわりに回転して廃棄物Gの落下方向を調節する案内板72を用い、側壁3の中心に対して第一方向D1に偏った位置に廃棄物Gを落下させるように案内板72の回転角度を調節した第一状態にて、廃棄物Gを廃棄物溶融炉2内に装入すること、
側壁3の中心に対して第一方向D1の逆の第二方向D2に偏った位置に廃棄物Gを落下させるように案内板72の回転角度を調節した第二状態にて、廃棄物Gを廃棄物溶融炉2内に装入すること、を交互に繰り返す。
【0050】
本発明者等は、操業安定性を更に向上させるために、廃棄物溶融炉2内の状況を調査し、以下の現象を見出した。
a)廃棄物溶融炉2内における廃棄物の偏積が抑制されたとしても、炉内ガスは廃棄物溶融炉2内の周辺部(側壁3の近傍部)に偏って流れる傾向がある。
b)炉内ガスが廃棄物溶融炉2内の周辺部に偏って流れることにより、廃棄物溶融炉2内の周辺部における廃棄物の熱分解及び減容が部分的に促進され、廃棄物溶融炉2内の周辺部において部分的な空洞が生じる場合がある。
c)廃棄物溶融炉2内の部分的な空洞は炉内ガスの流路を形成する場合があり、その場合、空洞以外の部分に炉内ガスが流れ難くなる可能性がある。
これらの現象は、廃棄物溶融炉2内のガスの流れを偏流化するため、廃棄物Gの熱分解及び減容を部分的に停滞させる要因となる。これに対し、本廃棄物装入方法では、上記第一状態及び第二状態における廃棄物Gの装入を交互に実行するので、側壁3の中心に対して第一方向D1及び第二方向D2に偏った位置に廃棄物Gが落下する。このため、側壁3の中心に廃棄物Gを落下させる場合に比べて、廃棄物溶融炉2内の周辺部における廃棄物Gの堆積高さ(以下、単に「堆積高さ」という。)が高くなり、廃棄物溶融炉2内の周辺部における通気抵抗が高まる。これにより、上記現象の発生が抑制されるので、廃棄物の熱分解及び減容の部分的な停滞が抑制され、廃棄物溶融炉2内全域における廃棄物の溶融処理が安定的に進行する。従って、廃棄物溶融炉2の操業安定性を向上させることができる。
【0051】
廃棄物溶融炉2内に堆積した廃棄物Gの上部が、第一方向D1に偏った位置及び第二方向D2に偏った位置において隆起した形状となるように、第一状態及び第二状態における案内板72の回転角度を調節してもよい。この場合、上記現象の発生がより確実に抑制されるので、廃棄物溶融炉2の操業安定性をより確実に向上させることができる。
【0052】
案内板72の回転角度を指定する外部入力が取得された場合に、第一状態及び第二状態における廃棄物Gの装入に優先して、外部入力に対応するように案内板72の回転角度を調節した状態にて廃棄物Gを廃棄物溶融炉2内に装入してもよい。この場合、外部入力によって案内板72の回転角度を一時的に操作し、廃棄物Gの堆積状況を調整することができる。例えば、上記現象c)が生じた場合には、炉内ガスの偏流を解消するように(例えば偏流が生じた箇所に廃棄物Gを落下させるように)、案内板72の回転角度を一時的に操作することで、当該現象を抑制することができる。
【0053】
廃棄物装入装置1は、廃棄物溶融炉2の上部において、側壁3の周方向に並ぶように配置された複数の温度センサ80を更に備えてもよく、コンソール200は、複数の温度センサによる検出値に関する情報の表示部(モニタ211)を有してもよい。
【0054】
この場合、温度センサ80による検出値に関する情報をオペレータに提供することにより、廃棄物Gを落下させるべき位置を推定し易くすることができる。例えば、高い温度を示す温度センサ80の位置には炉内ガスの偏流が生じている可能性が高いので、オペレータは、当該温度センサ80の位置が廃棄物Gを落下させるべき位置だと推定することができる。
【0055】
少なくとも一つの温度センサ80の位置は、側壁3の中心に対して第一方向D1に偏っており、少なくとも一つの温度センサ80の位置は、側壁3の中心に対して第二方向D2に偏っていてもよい。この場合、温度センサ80による検出値と、案内板72の回転角度の双方が第一方向D1及び第二方向D2に関連付けられることとなるので、当該温度センサ80の位置に基づいて、コンソール200に入力すべき案内板72の回転角度を設定し易くなる。
【0056】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、第一状態及び第二状態における廃棄物の装入を複数回繰り返す度に、他の状態での廃棄物の装入を実行してもよい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例について説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されない。
【0058】
〔実施例及び比較例の内容〕
(実施例1)
廃棄物装入装置1を用い、以下の装入条件にて廃棄物を廃棄物溶融炉2内に装入しながら、廃棄物装入処理を継続的に行った。
装入条件 : 第一状態及び第二状態での廃棄物の装入を交互に繰り返す(
図4参照)。途中で指定目標角度の入力を行わない。
【0059】
(比較例1)
廃棄物装入装置1を用い、以下の装入条件にて廃棄物を廃棄物溶融炉2内に装入しながら、廃棄物装入処理を継続的に行った。
装入条件 : 案内板72をなくした状態にて廃棄物の装入を繰り返す(
図5参照)。途中で指定目標角度の入力を行わない。一回の廃棄物装入の継続時間、廃棄物装入の繰り返し周期は実施例1と同じである。
【0060】
(比較例2)
廃棄物装入装置1を用い、以下の装入条件にて廃棄物を廃棄物溶融炉2内に装入しながら、廃棄物装入処理を継続的に行った。
装入条件 : 廃棄物Gが側壁3の中央部に落下するように設定された第三角度θ3に案内板72の回転角度を一致させた第三状態にて廃棄物Gの装入を繰り返す(
図6参照)。途中で指定目標角度の入力を行わない。一回の廃棄物装入の継続時間、廃棄物装入の繰り返し周期は実施例1と同じである。
【0061】
(比較例3)
廃棄物装入装置1を用い、以下の装入条件にて廃棄物を廃棄物溶融炉2内に装入しながら、廃棄物装入処理を継続的に行った。
装入条件 : 第一状態、第三状態及び第二状態での廃棄物の装入を順に繰り返す(
図7参照)。途中で指定目標角度の入力を行わない。一回の廃棄物装入の継続時間、廃棄物装入の繰り返し周期は実施例1と同じである。
【0062】
〔操業安定性の評価〕
上記実施例1及び比較例1〜3のそれぞれにおいて、廃棄物の溶融処理を所定期間(5日以上)継続した時点での炉頂温度(廃棄物受入ホッパ20内の最上部の近傍における温度)を測定した。廃棄物溶融炉2内の廃棄物を高温のまま吹き抜ける炉内ガスが増えると、炉頂温度が高くなる。このため、炉頂温度に基づいて、炉内ガスの偏流状態を推定できる。炉頂温度が低いほど、炉内ガスの偏流が少なく、廃棄物溶融炉2の操業安定性が高いと考えられる。
図8に、炉頂温度の評価結果を示す。
図8は、比較例1の炉頂温度を100%として、炉頂温度を無次元化したグラフである。
【0063】
図8に示されるように、比較例2の炉頂温度は比較例1の炉頂温度に比べて約4%低かった。比較例3の炉頂温度は比較例2の炉頂温度に比べて更に約4%低かった。これらの差異は、廃棄物溶融炉2内における廃棄物の偏積の程度(例えば最も高く堆積した箇所と最も低く堆積した箇所との高低差)に関係しているものと考えられる。
【0064】
比較例1においては、開閉板62及び傾斜壁部15の少なくとも一方の上を滑落した廃棄物が第二方向D2に偏った位置に集中して落下するので、堆積高さH2に比べて堆積高さH1が低くなり易い(
図5参照)。このため、第一方向D1に偏った位置における通気抵抗が小さくなり、ここに炉内ガスの偏流が発生し易くなったものと考えられる。比較例2においては、廃棄物が側壁3の中央部に落下するので、側壁3の中央部における堆積高さH0に比べて堆積高さH1,H2が低くなるが、偏積の程度は比較例1に比べて小さくなり易い(
図6参照)。このため、比較例1に比べて炉内ガスの偏流が少なく、炉頂温度が低かったものと考えられる。比較例3においては、廃棄物が第一方向D1側に偏った位置、第二方向D2側に偏った位置及び側壁3の中央部に万遍なく落下するので、比較例2に比べて偏析の程度が更に小さくなり易い(
図7参照)。このため、比較例2に比べて炉内ガスの偏流が少なく、炉頂温度が低かったものと考えられる。
【0065】
実施例1の炉頂温度は、比較例3の炉頂温度に比べて更に約11%低かった。この差異は、廃棄物溶融炉2内の周辺部における廃棄物の堆積の程度に関係しているものと考えられる。
【0066】
実施例1においては、廃棄物が第一方向D1側に偏った位置及び第二方向D2側に偏った位置に交互に落下し、側壁3の中央部には落下しないので、堆積高さH0を基準とした堆積高さH1,H2の相対値が高まったものと考えられる。このため、比較例3に比べて廃棄物溶融炉2内の周辺における炉内ガスの偏流が少なく、炉頂温度が低かったものと考えられる。
【0067】
比較例1の炉頂温度と比較例2の炉頂温度との差異、及び比較例2の炉頂温度と比較例3の炉頂温度との差異に比べて、実施例1の炉頂温度と比較例3の炉頂温度との差異は著しく大きい。この評価結果から、第一状態及び第二状態での廃棄物の装入を繰り返すことの有効性が確認された。