特許第6425823号(P6425823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6425823
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】聴診器のダイヤフラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 7/02 20060101AFI20181112BHJP
【FI】
   A61B7/02 H
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-538214(P2017-538214)
(86)(22)【出願日】2016年1月12日
(65)【公表番号】特表2018-506336(P2018-506336A)
(43)【公表日】2018年3月8日
(86)【国際出願番号】US2016012945
(87)【国際公開番号】WO2016118356
(87)【国際公開日】20160728
【審査請求日】2017年7月31日
(31)【優先権主張番号】62/105,898
(32)【優先日】2015年1月21日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100157185
【弁理士】
【氏名又は名称】吉野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】ディーン シッツ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーセフ ピー.ケラー
(72)【発明者】
【氏名】メアリー ジョ ジョンソン
【審査官】 ▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第201409933(CN,Y)
【文献】 中国実用新案第201409932(CN,Y)
【文献】 米国特許第06523639(US,B1)
【文献】 米国特許第06378648(US,B1)
【文献】 米国特許第07424929(US,B1)
【文献】 米国特許第05945640(US,A)
【文献】 中国実用新案第203244411(CN,U)
【文献】 中国実用新案第203354564(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 7/00−7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクと、
リムと、を備える、聴診器のダイヤフラムであって、前記リムが、
第1の端部及び第2の端部を有する壁、
前記壁の前記第1の端部から実質的に垂直に延びるリップ、
前記壁の前記第2の端部から実質的に垂直に延びるブリッジ、
前記ブリッジから延び、内フランジ及び外フランジを含むフォーク、並びに
前記内フランジから延びる複数の特徴部を備え、前記特徴部は歯の形状を有する、聴診器のダイヤフラム。
【請求項2】
前記複数の特徴部は、前記内フランジの周りに実質的に等間隔で並んでいる、請求項1に記載の聴診器のダイヤフラム。
【請求項3】
少なくとも3つの特徴部を備える、請求項1に記載の聴診器のダイヤフラム。
【請求項4】
前記ディスクは、前記ディスクの面の外周の周りに複数のアパーチャを有する、請求項1に記載の聴診器のダイヤフラム。
【請求項5】
前記複数のアパーチャは、前記複数の特徴部からずれている、請求項4に記載の聴診器のダイヤフラム。
【請求項6】
前記特徴部は、約0.5〜約3.8ミリメートルの長さを有する、請求項1に記載の聴診器のダイヤフラム。
【請求項7】
前記特徴部は、前記内フランジから切り抜かれた開口部によって形成される、請求項1に記載の聴診器のダイヤフラム。
【請求項8】
前記特徴部は、前記内フランジの約5〜約95%を構成する、請求項7に記載の聴診器のダイヤフラム。
【請求項9】
前記ディスク及び前記リムは一体部品である、請求項1に記載の聴診器のダイヤフラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね聴診器の分野に関する。詳細には、本発明は一連の特徴部を有する聴診器のダイヤフラムに関する。
【背景技術】
【0002】
聴診器を使用した患者の不備のない診断には、医師が、例えば心臓に関連付けられた低周波音及び高周波音を監視することが必要となることが多い。心臓に関して、医師は、次の心拍を聞く前にその前に聞いた心拍の印象を失わないよう、低周波数音と高周波数音とを交互に監視することが重要である。チューニング可能な技術の恩恵がなければ、臨床医は追加の音を聞くためにチェストピースを回す必要がある。現在ほとんどの聴診器に使用されるダイヤフラムは、ダイヤフラム及びリムの2つの部品を含む。これらの部品は、2つの別個の部品として、又は単一の一体部品として製造される場合がある。リムは、チェストピースにダイヤフラムを保持するために使用される。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態において、本発明はディスク及びリムを含む聴診器のダイヤフラムである。リムは、リムの内周から延びる複数の特徴部を含む。
【0004】
別の実施形態において、本発明はディスク及びリムを含む聴診器のダイヤフラムである。リムは、第1の端部及び第2の端部を有する壁と、壁の第1の端部から実質的に垂直に延びるリップと、壁の第2の壁から実質的に垂直に延びるブリッジと、ブリッジから延びるフォークとを含み、フォークは内フランジ及び外フランジを含み、複数の特徴部が内フランジから延びている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
これらの図は、正確な縮尺では描かれておらず、単に例示の目的を意図するものに過ぎない。
図1】本発明によるダイヤフラムを使用した聴診器の概略図である。
図2図1の聴診器のチェストピースを拡大分解した部分断面図である。
図3A】本発明のダイヤフラムを外位置に示す、組み立てられたチェストピースの断面図である。
図3B】本発明のダイヤフラムを内位置に示す、組み立てられたチェストピースの断面図である。
図4A】本発明のダイヤフラムの第1の実施形態の斜視図である。
図4B】本発明のダイヤフラムの第2の実施形態の斜視図である。
図5A図4Aに示された本発明のダイヤフラムの第1の実施形態の一部の拡大図である。
図5B図4Bに示された本発明のダイヤフラムの第2の実施形態の一部の拡大図である。
図5C】本発明のダイヤフラムの第3の実施形態の一部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は聴診器とともに使用するダイヤフラムである。一実施形態において、聴診器はチューニング可能な聴診器である。ダイヤフラムはディスク及びリムを含む。リムは、ディスクの下側を囲むリムの内周から延びる複数の特徴部を含む。複数の特徴部はディスクに支持を加え、均一な部分を提供する。更に、複数の特徴部を有するリムを含むダイヤフラムは、欠陥数を減らして製造することが可能になる。
【0007】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、ダイヤフラムの「音響剛性」は、ダイヤフラムの材料自体の機械的剛性により、ダイヤフラムの厚みにより、ダイヤフラムの形状により、ダイヤフラムの径により、及びダイヤフラムの聴診器ヘッドへの取付方法により影響を受ける、ダイヤフラムの機械的剛性を意味する。「ダイヤフラム面」という用語は、ダイヤフラム(ディスク)の概ね平坦な面を指す。
【0008】
本明細書及び特許請求の範囲に使用される場合、「懸架されたダイヤフラム」という用語は、以下で説明される少なくとも懸架部材を有するダイヤフラムを示す。ダイヤフラム及び懸架部材は、以下で説明されるように、固定手段と動作可能に関連付けられる。例えば、懸架されたダイヤフラムは、Packardに対する米国特許第4,440,258号(その全ての内容は参照によって本明細書に組み込まれる)の教示に従って構築され得る。
【0009】
まず図1を参照すると、聴診器10は、聴診器のチェストピースの組立てに利用される、例えばステンレス鋼及びアルミニウムなどの金属、金属複合体、プラスチック、並びに木材などの従来の材料で形成されるチェストピース12を含む。チェストピース12は、イヤーチップ18に達する可撓性チューブ16へと分岐する細長い可撓性チューブ14を含む、米国特許第4,200,169号に記載されたような従来のヘッドセットに取り付けられる。可撓性チューブ14の下端は、チェストピース12の従来のステム取付部に結合するようになっている。この結合には、米国特許第4,770,270号(その全ての内容は参照によって本明細書に明確に組み込まれる)で教示された、割出し止めが利用され得る。聴診器の両耳用チューブは、Packardに対する米国特許第5,111,904号、同第5,380,182号、及び同第5,324,471号(各々は参照によって本明細書に組み込まれる)の教示に従って作製できる。
【0010】
イヤーチップ18は、使用者の耳の表面に係合するようにサイズ及び形状が決められる。イヤーチップ18は、任意の好適なイヤーチップを含んでよい。一実施形態において、イヤーチップ18は、米国特許第4,852,684号、同第4,913,259号、及び同第5,449,865号(全ての内容は参照によって本明細書に組み込まれる)で開示された軟質イヤーチップを含む。
【0011】
図2図3A、及び図3Bに示す一実施形態を参照すると、チェストピース12は、第1の集音側20及び第2の集音側22を含む両面チェストピースである。本発明のダイヤフラムは両面チェストピースに関して説明されるが、本発明の範囲を限定せずに、ダイヤフラムは片面チェストピースとも使用され得ることに留意されたい。一実施形態において、聴診器10は、チェストピース12の第1の側20又は第2の側22のいずれかを使用している間に、音をチューニングすることができる。第1の集音側20は、成人患者から音を集めるようにサイズ及び形状を決められる。第2の集音側22は、小児患者又は痩身の患者に対して十分な表面接触ができるようにサイズ及び形状を決められる。第2の集音側22はまた、離れた位置又は届きにくい位置に容易に接近できるように、第1の集音側よりも実質的に小さい。
【0012】
第1の集音側20は、最深中央部26を伴う第1の凹部24、外リム部28、及び中央部26と通じている音響チャネル30、32を有する。第1のダイヤフラム34もまた、第1の集音側20に位置する。第1のダイヤフラム34は、リム36及びリム36内に位置付けられたディスク38を含み、それらはともに周縁部及び第1の凹部24の少なくとも一部に重なる所定の外形面を有する。図3A及び図3Bに示すように、第1のダイヤフラム34は、第1の凹部24の外リム部28と、移動可能に接続される、又は「動作可能に関連付け」られる。
【0013】
第1のダイヤフラム34は、1)第1のダイヤフラム34が付勢される通常の外位置と、2)第1の凹部24の中央部により近接した内位置との間で、第1のダイヤフラム34の面に実質的に垂直な方向に第1のダイヤフラム34が動けるように、チェストピース12の上に位置付けられる。この動きは、第1のダイヤフラム34の外形面、又は第1のダイヤフラム34の横方向の張力を実質的に変えることなく、達成される。
【0014】
第1の固定手段40は、チェストピース12の第1の集音側20に位置する。第1の固定手段40は第1の凹部24内に位置する。第1の凹部24の中央部とともに、第1の固定手段40は第1の凹部24の中に浅い凹部を形成する。固定手段40は、第1のダイヤフラム34に接触されるように、サイズ及び形状が決められる。図3Bにおいて、固定手段40に接触するのは第1のダイヤフラム34である。第1のダイヤフラム34が内位置にあるとき、固定手段40は第1のダイヤフラム34を固定する。
【0015】
第1のダイヤフラム34が外位置及び外位置と内位置との間にあるとき、チェストピース12の第1の集音側20は、低周波音(低音)を通過させ、高周波の音を徐々に減衰させる。第1のダイヤフラム34が内位置にあるときの第1のダイヤフラム34の音響剛性は、第1のダイヤフラム34が外位置にあるときの音響剛性よりも著しく高くなり、その結果、チェストピース12の第1の集音側20は、低周波音を減衰又は遮断する一方で、高周波音は変化させないままにする。使用中、外位置と内位置とを切り替えるには、医師は単にチェストピース12に加える手の圧力を加減するだけである。一実施形態において、低音が減衰するレベルは約3〜約21dBで変化する。
【0016】
第2の集音側22は、第2の懸架されたダイヤフラムを含むようになっている。第2の集音側22は、参照符号[B」が加えられた以外は、第1の集音側20の要素を説明するために使用した参照符号と同様の多くの参照符号を有する。第2の集音側22は、最深中央部26Bを伴う第2の凹部24B、外リム部28B、及び中央部26Bと通じている音響チャネル30、32’を有する。第2の集音側22は、リム36B及びリム36B内に位置付けられたディスク38Bを含み、ともに周縁部及び第2の凹部24Bの少なくとも一部に重なる所定の外形面を有する、第2のダイヤフラム34Bを有する。第2のダイヤフラム34Bは、第2の凹部24Bの外リム部28Bに移動可能に関連付けられる。
【0017】
第2の固定手段40Bは、チェストピース12の第2の集音側22に位置する。第2の固定手段40Bは、第2の凹部24B内に位置する。第2の凹部24Bの中央部26Bとともに、第2の固定手段40Bは第2の凹部24Bの中に浅い凹部を形成する。第2の固定手段40Bは、第2のダイヤフラム34Bに接触されるように、サイズ及び形状が決められる。第2のダイヤフラム34Bが内位置にあるとき、第2の固定手段40Bは第2のダイヤフラム34Bを固定する。
【0018】
第2のダイヤフラム34Bが外位置及び外位置と内位置との間にあるとき、チェストピース12の第2の集音側22は低周波音を通過させ、高周波の音を徐々に減衰させる。
第2のダイヤフラム34Bが内位置にあるときの第2のダイヤフラム34Bの音響剛性は、その第1の音響剛性よりも著しく高くなり、その結果、チェストピース12の第2集音側22は、低周波音を減衰又は遮断する一方で、高周波音は変化させないままにする。一実施形態において、低音が減衰するレベルは約3〜約21dBで変化する。
【0019】
第1の集音側20のサイズ及び形状は、第2の集音側22のサイズ及び形状とは異なる。
【0020】
一実施形態において、固定手段40及び40Bはチェストピース12の金属部に加工された隆起部を含む(図3A及び図3Bを参照)。本発明の聴診器ヘッドに採用するのに適している他の固定手段として、Oリング、成形した隆起部、及び挿入物(例えばプラスチック製挿入物)が挙げられる。例えば、加工した隆起部40Bは、内径約1.053インチ、深さ半径約0.016インチ(0.41ミリメートル)、及び幅0.015インチ(0.38ミリメートル)を有し得る。
【0021】
ダイヤフラム34及び34Bは、固定手段40及び40Bに接触できるように、各自の凹部24及び24Bの上に十分に重なる。ダイヤフラム34及び34Bの、リム36及び36B並びにディスク38及び38Bは、ダイヤフラムとしての使用に好適な当技術分野で知られている任意の材料を含み得る。好適な材料の例として、シリコーン、ウレタン、ポリマー樹脂材料、例えばポリエステル、繊維ガラス補強プラスチック及びポリスチレンなどのプラスチック、並びにステンレス鋼などの金属が挙げられる。ダイヤフラム34及び34Bの好適な厚さは、リム36、36Bの最も厚い断面で測定して、約0.08〜0.31インチ(2.03〜7.87ミリメートル)である。特に好適なダイヤフラムは、ミネソタ州セントポールにあるInnovize社から一般に入手可能である、0.110インチ厚(2.79ミリメートル厚)のエポキシ樹脂と繊維ガラスとの積層体を含む。図ではダイヤフラム34及び34Bは円形として示されているが、本発明の意図した範囲から逸脱することなく、任意の形状をとることができる。例えば、ダイヤフラムは卵型又は涙型を有し得る。
【0022】
低周波音及び高周波音に対するチェストピース12の応答は、いくつかのパラメータの影響を受ける。ダイヤフラムの厚さは応答に影響し、ダイヤフラムの好適な厚さについては上記で説明した。また、第1の凹部と第2の凹部との相対的な寸法も、応答に影響する。以下は、凹部24Bの好適な寸法であることが見出されている。すなわち、凹部24Bは、約1.32インチ(3.35センチメートル)の径、図3A及び図3Bに示す約0.196インチ(4.98ミリメートル)の主半径、約0.22インチ(5.6ミリメートル)の最初の一次深さ、及び約0.235インチ(5.97ミリメートル)の二次深さを有する。通過部32’は約0.125インチ(3.175ミリメートル)の径を有する。
【0023】
次に図4A及び図5A、並びに図4B及び図5Bを参照して、本発明のダイヤフラム100及び100Bそれぞれの、第1の実施形態及び第2の実施形態が更に詳細に説明される。図4Aはダイヤフラム100の第1の実施形態の斜視図であり、図5Aはダイヤフラム100の第1の実施形態の一部の拡大図である。図4Bはダイヤフラム100Bの第2の実施形態の斜視図であり、図5Bはダイヤフラム100Bの第2の実施形態の一部の拡大図である。ダイヤフラム100Bの第2の実施形態は、参照符号「B」が加えられた以外は、ダイヤフラム100の第1の実施形態の要素を説明するために使用した参照符号と同様の多くの参照符号を有する。それ以外では、要素は同様に機能する。上述のように、ダイヤフラム100、100Bはディスク102、102B、及びリム104、104Bを含む。一実施形態において、ディスク102、102B、及びリム104、104Bは異なる材料から作られるが、組み立てられたときに一体部品とすることができる。別の実施形態において、ディスク102、102B、及びリム104、104Bは同じ材料で作られる。
【0024】
ディスク102、102Bは、ダイヤフラムのディスクとして使用するのに好適である当技術分野で知られている任意の材料で形成されてよい。好適な材料の例として、ポリエステル、繊維ガラス補強プラスチック、ポリカーボネート、炭素繊維複合体、ポリスチレンなどのプラスチック、及びステンレス鋼などの金属が挙げられる。ディスク102、102Bの好適な厚さは、約0.005インチ〜約0.020インチ(127〜508マイクロメートル)、及び特に、約0.010〜約0.012インチ(254〜305マイクロメートル)である。一実施形態において、ディスク102、102Bは0.010インチ厚(254マイクロメートル厚)のエポキシ樹脂と繊維ガラスとの積層体である。
【0025】
図4A及び図5Aに示すダイヤフラム100の第1の実施形態において、ディスク102は、ディスク102の周囲に沿った複数のアパーチャ106を含む。アパーチャ106は、ダイヤフラム100の成形中及び長期の使用中に、ディスク102をリム104に維持する補助となる。一体成型処理において、ディスク102はダイヤフラムのリムの型工具(例えば射出金型)に置かれる。次に、リムに使用される材料が、ダイヤフラムのディスクの縁の周りに溶融成形(例えば射出成形)されて、リムを含む単一の一体部品のダイヤフラムを形成する。
【0026】
図4A及び図5Aではディスク102が複数のアパーチャ106を有するように示されるが、本発明の意図された範囲から逸脱することなく、ディスク102は周囲に沿ったただ1つのアパーチャを含む任意の数のアパーチャ106を含み得る。図4B及び図5Bに示す第2の実施形態において、ダイヤフラム100Bはディスク102Bにアパーチャを含まない。
【0027】
図5A及び図5Bを詳細に見ると、リム104、104Bは、第1の端部110、110B及び第2の端部112、112Bを有する壁108、108Bと、壁108、108Bの第1の端部から実質的に垂直に延びるリップ114、114Bと、壁108、108Bの第2の端部112、112Bから実質的に垂直に延びるブリッジ116、116Bと、ブリッジ116、116Bから延びるフォーク118、118Bとを含む。
【0028】
壁108、108Bは円形又は環形の構成を有し、ダイヤフラム100、100Bをチェストピース12の上に維持するよう機能する。壁108、108Bは、内側120、120B及び反対側の外側122、122B、患者に面する縁部124、124B及び反対側のチェストピースに面する縁部126、126Bを有する。壁108、108Bは、チェストピース12にとどまるために十分な剛性を有するのに足りる厚さである必要がある。壁108、108Bが厚すぎる場合、少しの圧力を加えられるとダイヤフラム100、100Bがチェストピース12(図1)から外れることがある。この壁が厚すぎる場合、例えば、医療提供者がチェストピースをポケットから取り出すときなどに、チェストピースが衣服をこすると、ダイヤフラムがチェストピースから意図せず外れることがある。壁108、108Bの高さは、チェストピース12上のディスク102、102Bの高さを決定する際に重要であり、またチェストピース12のチューニング性に影響を及ぼす。
【0029】
リップ114、114Bは、チェストピースに面する縁部126、126Bにおける壁108、108Bの第1の端部110、110Bの内側120、120Bから延び、ダイヤフラム100、100Bをチェストピース12に固定するように機能する。組み立てられるとき、チェストピース12は、リム104、104Bのリップ114、114Bとフォーク118、118Bとの間に挿入される。リップ114、114Bは、ダイヤフラム100、100Bをチェストピース12にとどめるために十分強く保持する必要があるが、例えば洗浄のために必要な場合にダイヤフラム100、100Bを外せないほどきつくてはならない。
【0030】
ブリッジ116、116Bは、患者に面する縁部124、124Bにおいて壁108、108Bの第2の端部112、112Bの内側120、120Bから延びる。ブリッジ116、116B、詳細にはブリッジの高さ及び厚さによって、ダイヤフラム100、100Bは、動いて良好な音響を実現するのに十分な可撓性を有することができる。ブリッジの高さは、リム104、104Bが通常の使用時に破損するリスクを最小にする一方で、できるだけ薄くする必要がある。ブリッジの幅は、成形中の充填を依然として可能にしながら、チェストピースの外径接触面とディスクとの間でできるだけ長くするべきである。
【0031】
フォーク118、118Bはブリッジ116、116Bから延び、リム104、104B内でディスク102、102Bを固定するよう機能し、内フランジ128、128B及び内フランジ128、128Bに実質的に垂直である外フランジ130、130Bを含む。ディスク102、102Bは内フランジ128、128Bと外フランジ130、130Bとの間に位置付けられ、リム104、104Bの中に維持される。フォークフランジ128、128B及び130、130Bは、成形処理の間にディスク102、102Bの両面を挟むのに十分な厚さである必要がある。
【0032】
図5A及び図5Bに示されているように、内フランジ128、128Bは複数の特徴部132、132Bを含む。一実施形態において、特徴部132、132Bは実質的に互いから等間隔であり、リム104、104Bの内周全体に沿ってパターンを形成し得る。別の実施形態において、特徴部132、132Bは、リム104、104Bの内周の周りにランダムに位置付けられる。リム104、104Bは、本発明の意図された範囲から逸脱することなく、任意の数の特徴部132、132Bを含むことができる。一実施形態において、内フランジ128、128Bは少なくとも2つの特徴部132、132B、詳細には少なくとも3つの特徴部132、132Bを含む。一実施形態において、仮想線Lを引いて、ブリッジ全ての点から等距離で延びる内フランジ128、128Bの内周を作り、ブリッジ116、116Bと仮想線Lとの間に領域Aを形成する場合、本発明の特徴部132、132Bは、領域Aの約5〜約95%、詳細には領域Aの約15〜約85%、更に詳細には領域Aの約25〜約75%を含むことになる。
【0033】
特徴部132、132Bは、リム104、104Bにディスク102、102Bを保持するために十分な距離だけブリッジ116、166Bから延びる。一実施形態において、特徴部132、132Bは、ブリッジ116、116Bから約0.02インチ(0.051ミリメートル)〜約0.15インチ(3.81ミリメートル)延びる。
【0034】
特徴部132、132Bは、当技術分野で知られている任意の方法で製造され得る。図4A及び図5A、並びに図4B及び図5Bでは特徴部132、132Bは歯の形状を有するように示されるが、本発明の意図された範囲を逸脱することなく、特徴部132、132Bは任意の形状をとることができる。例えば、特徴部132、132Bは円形、三角形、角錐形、楕円形、又は任意の他の形状であり得る。加えて、異なる形状の特徴部を組み合わせて使用でき、特徴部は特定のダイヤフラム上で全て同一である必要はない。
【0035】
再び図4A及び図5Aを参照すると、ディスク102がアパーチャ106を含むとき、特徴部132はブリッジ116から少なくともディスク102のアパーチャ106まで延びる必要がある。一実施形態において、リム104はディスク102に対して良好な接着品質を有さない場合があるので、特徴部132はディスク102との機械的な接合を提供する。これは、ディスク102の外径周りの複数のアパーチャ106と連携して達成される。アパーチャ106及び特徴部132は、ディスク102が半径方向でリム104のどこに置かれていても、2つのアパーチャ106の内の1つ又は一部が特徴部132と合わさるように、間隔がとられる。これは図4A及び図5Aに示されている。アパーチャ106及び特徴部132の配列によって、上述のように特徴部132の各々の機械的接合を可能にする。
【0036】
いくつかの実施形態において、ディスクにアパーチャは必要ない。この実施形態は、例えば図4B及び図5Bに示される。
【0037】
図5Cは、本発明のダイヤフラム100Cの、第3の実施形態の一部の拡大図である。ダイヤフラム100Cの第3の実施形態は、参照符号「C」が加えられた以外は、ダイヤフラム100の第1の実施形態の要素を説明するために使用した参照符号と同様の多くの参照符号を有する。それ以外では、要素は同様に機能する。図4A及び図5A、並びに図4B及び図5Bに示し説明した実施形態において、特徴部132、132Bは個々にブリッジ116、116Bから延びる。図5Cに示した実施形態において、内フランジ128Cは複数の開口部200を含み、特徴部132Cは各開口部200の間に形成される。図5Cでは開口部200は角型を有するように示されるが、本発明の意図された範囲を逸脱することなく、円形、三角形、又は不規則な形状など、任意の形状とすることができる。一実施形態において、複数の開口部200はディスク102Cの周囲で互いから等間隔としてよい。他の実施形態において、複数の開口部200は互いからランダムな間隔をとってよい。一実施形態において、特徴部132Cは内フランジ128Cの約5〜約95%、詳細には内フランジ128Cの約15〜約85%、更に詳細には内フランジ128Cの約25〜75%を含む。ダイヤフラム100Cの第3の実施形態における特徴部132Cは、図4A及び図5Aに示すダイヤフラム100の第1の実施形態の特徴部132と同様に機能する。したがって、ディスク102Cがアパーチャ106を含むとき、アパーチャ106及び特徴部132Cは、ディスク102が半径方向でリム104Cのどこに置かれていても、2つのアパーチャ106の内の1つ又は一部が特徴部132Cと合わさるように、間隔がとられるべきである。
【0038】
チェストピースに組み立てる際に、ダイヤフラムはチェストピースに容易に位置付け、かつチェストピースから容易に外すことが可能である十分な可撓性、及びダイヤフラムはチェストピースから意図せず外れることのない十分な剛性を有する必要がある。一実施形態において、リムのショアAデュロメータ硬さは、約40〜約110、詳細には約70〜約90、更に詳細には約75〜85である。
【0039】
好ましい実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、当業者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の変更を行えることを理解するであろう。本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[19]に記載する。
[1]
ディスクと、
リムと、を備え、
前記リムは、前記リムの内周から延びる複数の特徴部を備える、聴診器のダイヤフラム。
[2]
前記複数の特徴部は、前記リムの前記内周の周りに実質的に等間隔で並んでいる、項目1に記載の聴診器のダイヤフラム。
[3]
少なくとも3つの特徴部を備える、項目1に記載の聴診器のダイヤフラム。
[4]
前記ディスクは、前記ディスクの面の外周の周りに複数のアパーチャを有する、項目1に記載の聴診器のダイヤフラム。
[5]
前記複数のアパーチャは前記複数の特徴部からずれている、項目4に記載の聴診器のダイヤフラム。
[6]
前記ディスク及び前記リムは一体部品である、項目1に記載の聴診器のダイヤフラム。
[7]
前記リムは、
第1の端部及び第2の端部を有する壁と、
前記壁の前記第1の端部から実質的に垂直に延びるリップと、
前記壁の前記第2の端部から実質的に垂直に延びるブリッジと、
前記ブリッジから延び、内フランジ及び外フランジを含むフォークと、を備える、項目1に記載の聴診器のダイヤフラム。
[8]
前記特徴部の各々は前記内フランジから延びている、項目7に記載の聴診器のダイヤフラム。
[9]
前記特徴部は、前記内フランジから切り抜かれた開口部によって形成される、項目7に記載の聴診器のダイヤフラム。
[10]
前記特徴部は前記内フランジの約5〜約95%を構成する、項目9に記載の聴診器のダイヤフラム。
[11]
前記特徴部は、約0.5〜約3.8ミリメートルの長さを有する、項目1に記載の聴診器のダイヤフラム。
[12]
ディスクと、
リムと、を備える、聴診器のダイヤフラムであって、前記リムが、
第1の端部及び第2の端部を有する壁、
前記壁の前記第1の端部から実質的に垂直に延びるリップ、
前記壁の前記第2の端部から実質的に垂直に延びるブリッジ、
前記ブリッジから延び、内フランジ及び外フランジを含むフォーク、並びに
前記内フランジから延びる複数の特徴部を備える、聴診器のダイヤフラム。
[13]
前記複数の特徴部は、前記内フランジの周りに実質的に等間隔で並んでいる、項目12に記載の聴診器のダイヤフラム。
[14]
少なくとも3つの特徴部を備える、項目12に記載の聴診器のダイヤフラム。
[15]
前記ディスクは、前記ディスクの面の外周の周りに複数のアパーチャを有する、項目12に記載の聴診器のダイヤフラム。
[16]
前記複数のアパーチャは、前記複数の特徴部からずれている、項目15に記載の聴診器のダイヤフラム。
[17]
前記特徴部は、約0.5〜約3.8ミリメートルの長さを有する、項目12に記載の聴診器のダイヤフラム。
[18]
前記特徴部は、前記内フランジから切り抜かれた開口部によって形成される、項目12に記載の聴診器のダイヤフラム。
[19]
前記特徴部は、前記内フランジの約5〜約95%を構成する、項目18に記載の聴診器のダイヤフラム。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C