(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各相に対応して設けられたスイッチング素子を駆動することにより、直流電力を三相交流電力に変換し、モータに出力するインバータを制御するインバータ制御装置であって、
前記モータの速度指令を用いて2軸の電圧指令を生成し、該2軸の電圧指令から3相電圧指令を得る電圧指令生成手段と、
前記3相電圧指令を用いて、相毎のPWM信号を生成するPWM信号生成手段と、
相毎に設定された所定のスイッチング休止期間において、各相に対応する前記スイッチング素子のスイッチングを停止させるスイッチング休止手段と
を備え、
前記電圧指令生成手段は、
3相モータ電流を励磁電流成分とトルク電流成分に変換する3相/2相変換手段と、
力率角を設定する力率角設定手段と、
前記スイッチング休止期間に応じた補正角を設定する補正角設定手段と
を有し、
前記3相/2相変換手段は、電圧位相と前記力率角と前記補正角とを用いて決定される電流座標軸を用いて、前記3相モータ電流を前記励磁電流成分と前記トルク電流成分に変換し、
前記スイッチング休止手段は、前記電圧位相と前記力率角と前記補正角とを用いて決定された前記電流座標軸と、前記力率角とを用いて前記スイッチング休止期間か否かを判定するインバータ制御装置。
前記補正角設定手段は、前記スイッチング休止期間と前記補正角とが関連付けられた補正角情報を有しており、該補正角情報から前記スイッチング休止期間に対応する補正角を取得する請求項1に記載のインバータ制御装置。
各相に対応して設けられたスイッチング素子を駆動することにより、直流電力を三相交流電力に変換し、モータに出力するインバータを制御するインバータ制御方法であって、
前記モータの速度指令を用いて2軸の電圧指令を生成し、該2軸の電圧指令から3相電圧指令を得る電圧指令生成工程と、
前記3相電圧指令を用いて、相毎のPWM信号を生成するPWM信号生成工程と、
相毎に設定された所定のスイッチング休止期間において、各相に対応する前記スイッチング素子のスイッチングを停止させるスイッチング休止工程と
を備え、
前記電圧指令生成工程は、
3相モータ電流を励磁電流成分とトルク電流成分に変換する3相/2相変換工程と、
力率角を設定する力率角設定工程と、
前記スイッチング休止期間に応じた補正角を設定する補正角設定工程と
を有し、
前記3相/2相変換工程は、電圧位相と前記力率角と前記補正角とを用いて決定される電流座標軸を用いて、前記3相モータ電流を前記励磁電流成分と前記トルク電流成分に変換し、
前記スイッチング休止工程は、前記電圧位相と前記力率角と前記補正角とを用いて決定された前記電流座標軸と、前記力率角とを用いて前記スイッチング休止期間か否かを判定するインバータ制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている制御方法では、常にPWM制御によるスイッチングを行っているため、スイッチング損失が大きくなるという問題がある。また、特許文献2に開示の制御方法に記載の矩形波による駆動では、回転子位置を検出するか、あるいは通電を行わない期間にモータ端子に現れる誘起電圧を使用して回転子位置を推定する回路が必要となるという問題がある。また、特許文献3に記載の制御方法では、ベクトル制御により計算された電圧指令に従ってスイッチングを休止するので、インバータから出力される電圧が電圧指令から乖離してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、スイッチング休止期間を設けることによるインバータ制御の精度低下を抑制することのできるインバータ制御装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、各相に対応して設けられたスイッチング素子を駆動することにより、直流電力を三相交流電力に変換し、モータに出力するインバータを制御するインバータ制御装置であって、前記モータの速度指令を用いて2軸の電圧指令を生成し、該2軸の電圧指令から3相電圧指令を得る電圧指令生成手段と、前記3相電圧指令を用いて、相毎のPWM信号を生成するPWM信号生成手段と、相毎に設定された所定のスイッチング休止期間において、各相に対応する前記スイッチング素子のスイッチングを停止させるスイッチング休止手段とを備え、前記電圧指令生成手段は、3相モータ電流を励磁電流成分とトルク電流成分に変換する3相/2相変換手段と、力率角を設定する力率角設定手段と、前記スイッチング休止期間に応じた補正角を設定する補正角設定手段とを有し、前記3相/2相変換手段は、電圧位相
と前記力率角と前記補正角とを用いて
決定される電流座標軸を用いて、
前記3相モータ電流を前記励磁電流成分と前記トルク電流成分に変換し、前記スイッチング休止手段は、
前記電圧位相と前記力率角と前記補正角とを用いて決定された前記電流座標軸と
、前記力率角とを用いて前記スイッチング休止期間か否かを判定するインバータ制御装置である。
【0007】
上記インバータ制御装置によれば、電圧指令生成手段によって生成された3相電圧指令を用いてPWM信号が生成されるとともに、各相に設定された所定のスイッチング休止期間において、各相に対応して設けられたスイッチング素子のスイッチングが停止される。このように、スイッチング素子のスイッチング休止期間が設けられているので、スイッチング損失を低減させることができる。
また、スイッチング休止期間を設けることで、モータ電圧はモータ電圧指令通りに制御できないこととなる。これにより、何も補正を行わなければ、実際の力率角は、力率角設定手段によって設定された力率角からずれてしまうこととなる。この点、本発明によれば、スイッチング休止期間に応じた補正角を設定し、この補正角を用いて加減された電流座標軸を用いて3相/2相の座標変換が行われるので、実際の力率角と力率角設定手段によって設定された力率角との乖離を抑制することができる。これにより、力率角設定手段によって最適な力率角を設定することで、インバータを効率の良い領域で運転させることが可能となり、省エネルギー化を図ることが可能となる。
【0008】
上記インバータ制御装置において、前記補正角設定手段は、前記スイッチング休止期間と前記補正角とが関連付けられた補正角情報を有しており、該補正角情報から前記スイッチング休止期間に対応する補正角を取得することとしてもよい。
【0009】
これにより、スイッチング休止期間に対応する適切な補正角を容易に取得することが可能となる。
補正角情報は、例えば、スイッチング休止期間をそれぞれ変化させ、このときの実際の力率角と力率角設定手段によって設定された力率角との差分を補正角として取得し、この補正角とその補正角が得られたときのスイッチング休止期間とを関連付けることで作成される。
【0010】
上記インバータ制御装置において、前記スイッチング休止手段は、インバータの温度が所定値以上である場合に、前記スイッチング休止期間を設けることとしてもよい。
【0011】
例えば、モータ定数によっては、インバータの効率向上により、モータ電流がゆがむことによるモータ効率の低下が比較的大きい場合がある。このようなモータの場合には、インバータの温度が高い場合にのみ、スイッチング休止期間を設けることにより、モータ電流のゆがみによるモータ効率の低下を抑制することが可能となる。
【0012】
本発明の第2態様は、上記インバータ制御装置を備えるモータ駆動装置である。
本発明の第3態様は、圧縮機モータと、前記圧縮機モータを駆動する上記モータ駆動装置とを備える空気調和機である。
【0013】
本発明の第4態様は、各相に対応して設けられたスイッチング素子を駆動することにより、直流電力を三相交流電力に変換し、モータに出力するインバータを制御するインバータ制御方法であって、前記モータの速度指令を用いて2軸の電圧指令を生成し、該2軸の電圧指令から3相電圧指令を得る電圧指令生成工程と、前記3相電圧指令を用いて、相毎のPWM信号を生成するPWM信号生成工程と、相毎に設定された所定のスイッチング休止期間において、各相に対応する前記スイッチング素子のスイッチングを停止させるスイッチング休止工程とを備え、前記電圧指令生成工程は、3相モータ電流を励磁電流成分とトルク電流成分に変換する3相/2相変換工程と、力率角を設定する力率角設定工程と、前記スイッチング休止期間に応じた補正角を設定する補正角設定工程とを有し、前記3相/2相変換工程は、電圧位相
と前記力率角と前記補正角とを用いて
決定される電流座標軸を用いて、
前記3相モータ電流を前記励磁電流成分と前記トルク電流成分に変換し、前記スイッチング休止工程は、
前記電圧位相と前記力率角と前記補正角とを用いて決定された前記電流座標軸と
、前記力率角とを用いて前記スイッチング休止期間か否かを判定するインバータ制御方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スイッチング損失を低減させるとともに、スイッチング休止期間を設けることによるインバータ制御の精度低下を抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るインバータ制御装置及びその方法を空気調和機の圧縮機モータを駆動するモータ駆動装置に適用した場合の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るモータ駆動装置の電気的構成を概略的に示した図である。
図1に示すように、モータ駆動装置1は、直流電力を交流電力に変換して圧縮機モータ5に出力するインバータ2と、インバータ2を制御するインバータ制御装置3と、インバータ制御装置3から出力されるPWM信号に基づいてインバータ2を駆動するゲートドライバ4とを備えている。
圧縮機モータ5は、例えば、永久磁石型同期モータである。
【0018】
インバータ2は、各相に対応して設けられた上側アームのスイッチング素子S
1u、S
1v、S
1wと下側アームのスイッチング素子S
2u、S
2v、S
2wとを備えており、これらのスイッチング素子がインバータ制御装置3からのPWM信号に基づいてゲートドライバ4によって駆動されることにより、圧縮機モータ5に供給される3相交流電圧が生成される。スイッチング素子は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー半導体素子である。
【0019】
インバータ2から圧縮機モータ5に3相電圧を供給する電力線には、3相のモータ電流をそれぞれ検出する電流検出器が設けられている。電流検出器によって検出された3相モータ電流iu,iv,iwは、インバータ制御装置3に出力される。
【0020】
ゲートドライバ4は、インバータ2を構成する上アーム及び下アームのスイッチング素子の導通制御端子(例えば、ゲート端子)に、インバータ制御装置3から与えられる各相に対応するPWM信号に基づく駆動電圧を与える。
【0021】
インバータ制御装置3は、例えば、電圧指令生成部11、スイッチング休止部12、及びPWM信号生成部13を備えている。インバータ制御装置3は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)であり、上記各部によって実現される各処理を実行するためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有しており、CPUがこの記録媒体に記録されたプログラムをRAM等の主記憶装置に読み出して実行することにより、以下の各処理が実現される。コンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。
【0022】
電圧指令生成部11は、圧縮機モータの速度指令を用いて2軸の電圧指令を生成し、該2軸の電圧指令から3相電圧指令を得る。なお、電圧指令生成部11の詳細については後述する。
スイッチング休止部12は、モータ電流iu,iv,iwのゼロクロス点を挟んで設定された所定のスイッチング休止期間θss、換言すると、所定の電気角範囲θssにおいて、スイッチングを停止させるためのスイッチング休止信号をPWM信号生成部13に出力する。ここで、スイッチング休止部12は、各相電流のゼロクロス点を電圧指令生成部11から入力される電流座標軸θiに基づいて判定する。
【0023】
具体的には、スイッチング休止部12は、電流座標軸θiの値が|θi|<θssの条件を満たす場合に、U相の上アーム及び下アームのスイッチング素子S
1u、S
2uのスイッチングを休止させる。また、V相については、U相のスイッチング停止期間θssを120[deg]ずらした範囲においてV相の上アーム及び下アームのスイッチング素子S
1v、S
2vのスイッチングを休止させ、W相については、U相のスイッチング停止期間θssを240[deg]ずらした範囲においてW相の上アーム及び下アームのスイッチング素子S
1w、S
2wのスイッチングを休止させる。
上記スイッチング休止期間θssについては、予め設定されている固定の値を用いることとしてもよいし、圧縮機モータ5の運転状態(例えば、回転数等)に応じて可変としてもよい。
【0024】
また、スイッチング休止期間θssについては、インバータ2の温度が所定の温度よりも高い場合に設けられることとしてもよい。例えば、圧縮機モータ5のモータ定数によっては、インバータ2の効率向上により、モータ電流がゆがむことによるモータ効率の低下が比較的大きい場合がある。このような圧縮機モータ5に適用する場合には、インバータ2の温度が高い場合にのみ、スイッチング休止期間θssを設けることにしてもよい。これにより、インバータ2の温度が高く、スイッチング損失による発熱を抑えたい場合にのみ、スイッチング休止期間θssを設けることで、モータ電流のゆがみによるモータ効率の低下を抑えることが可能となる。
【0025】
PWM信号生成部13は、電圧指令生成部11から与えられた電圧指令vu
*,vv
*,vw
*と所定の周波数の搬送波とを比較することにより相毎のPWM信号Sを生成するとともに、スイッチング休止部12からスイッチング休止信号が入力されている期間において、各相のPWM信号Sをデューティ100%または0%に維持することで、スイッチングを停止させる。
【0026】
次に、電圧指令生成部11について、
図2を参照して詳しく説明する。
図2は、電圧指令生成部11の機能ブロック図である。
図2に示すように、電圧指令生成部11は、3相/2相変換部21と、力率角設定部22と、補正角設定部23と、電圧指令演算部24と、電圧位相演算部25と、2相/3相変換部26とを主な構成として備えている。
【0027】
3相/2相変換部21は、電流検出器によって検出された3相電流iu,iv,iwを、後述する電圧位相θ、力率角φ、補正角Δφで決定される電流座標軸θi(θ−(φ+Δφ))を用いて2軸変換することにより、励磁電流成分であるδ軸電流iδと、トルク電流成分であるγ軸電流iγとを得る。なお、ここでは、3相電流をそれぞれ検出することとしたが、2相の電流のみを検出し、残りの1相については演算により求めることとしてもよい。
【0028】
力率角設定部22は、γ軸電流iγを用いて力率角φを設定する。例えば、力率角設定部22は、γ軸電流iγと力率角φとを関連付けた力率角情報を有しており、この力率角情報を用いてγ軸電流iγに応じた力率角φを設定する。なお、力率角φの設定については、例えば、上述の特許文献1や、特開2009−189106号公報等に開示の方法を用いることが可能である。例えば、力率1で制御したい場合には、力率角φをゼロに設定すればよく、また、圧縮機モータのリラクタンストルクも考慮した適切な力率角情報を用いることで、力率角を積極的に制御して最小電流で圧縮機モータを駆動することが可能となる。このように、力率角の設定方法については、公知の方法を適宜適用すればよい。
【0029】
補正角設定部23は、上記スイッチング休止部12において設定されるスイッチング休止期間θssに応じた補正角Δφを設定する。補正角設定部23は、例えば、
図3に示すようなスイッチング休止期間θssと補正角Δφとを関連付ける補正角情報を有しており、この補正角情報を用いてスイッチング休止期間θssに対応する補正角Δφを取得する。
図3において、横軸はスイッチング休止期間θss、縦軸は補正角Δφである。
図3において、スイッチング休止期間θssと補正角Δφとはほぼ比例関係とされているので、この曲線を近似した比例関数として取り扱うこととしてもよい。
補正角情報は、例えば、スイッチング休止期間θssをパラメータとして含む関数や、テーブル等として保有されている。
【0030】
このような補正角設定部23を設ける理由は以下の通りである。
本実施形態では、上述したように、スイッチング休止部12によって、スイッチング素子のスイッチングが停止される休止期間がある。そして、当該補正角設定部23が設けられていない場合、スイッチング休止期間により、モータ電圧を3相電圧指令通りに制御できなくなる。例えば、スイッチングを休止している相は、誘起電圧を出力している状態と等価となり、スイッチングを休止していない相については互いに180[deg]位相差の電圧が印加されることとなる。これにより、例えば、力率角設定部22によって設定された力率角と、実際の力率角とにずれが生じ、インバータ効率の高い力率角からずれてしまうおそれがある。このような力率角のずれを抑制するために、補正角設定部23を設け、力率角設定部22によって設定された力率角と実際の力率角との差分を低減させることとしている。
【0031】
上記補正角情報は、例えば、スイッチング休止期間θssをそれぞれ変化させ、このときの実際の力率角と力率角設定部22によって設定された力率角との差分を補正角として取得し、取得した補正角Δφとスイッチング休止期間θssとを関連付けることで作成される。
【0032】
3相/2相変換部21において得られたγ軸電流iγは、ゲインKωが乗じられた後、速度指令nω
*に負帰還され、インバータ出力周波数ω1が演算される。例えば、負荷が重くなり、回転子の位置が回転磁界に対して遅れると電流が増え、逆に負荷が軽くなり、回転子の位置が回転磁界に対して進むと電流が減る。したがって、速度指令nω
*をγ軸電流iγに応じて修正することで、圧縮機モータ5が安定して動作するようなインバータ出力周波数ω1が設定される。ここで、速度指令nω
*は、例えば、インバータ制御装置の上位装置、例えばインバータが搭載されたシステムのメインマイコンや他のインターフェース(マンマシンインターフェースなど)より与えられる指令値である。
【0033】
インバータ出力周波数ω1は、電圧指令演算部24および電圧位相演算部25に出力される。電圧位相演算部25は、インバータ周波数ω1を積分することにより電圧位相θを演算する。電圧位相演算部25によって算出された電圧位相θは、3相/2相変換部21及び2相/3相変換部26における軸変換の際に用いられる。
【0034】
電圧指令演算部24は、インバータ周波数ω1と3相/2相変換部21で得られたδ軸電流iδとを用いて、インバータ2を駆動するための電圧指令値vδ
*,vγ
*を演算する。例えば、電圧指令演算部24は、以下の(1)、(2)式を用いて2軸の電圧指令vδ
*,vγ
*を算出する。
【0036】
上記(1)、(2)式において、K
δ,K
vは比例定数、Λ
dはd軸の誘起電圧係数、Λ
dω1は誘起電圧を示している。このように、電圧指令演算部24は、インバータ周波数ω1と電流iδとをパラメータとした演算式を保有しており、この演算式を利用して電圧指令値vδ
*,vγ
*を演算する。
【0037】
2相/3相変換部26は、電圧指令演算部24により演算された2軸の電圧指令vδ
*,vγ
*を電圧位相演算部25によって演算された電圧位相θを用いて軸変換することにより、3相の電圧指令値vu
*,vv
*,vw
*を得る。
【0038】
次に、上記構成を備えるモータ制御装置1の動作について説明する。
まず、モータ電流iu,iv,iwが検出され、インバータ制御装置3に入力される。インバータ制御装置3では、前回のサンプリング周期における力率角φ、電圧位相θ、補正角Δφによって決定される電流座標軸θi(θ−(φ+Δφ))を用いて3相電流iu,iv,iwが軸変換され、δ軸電流iδ、γ軸電流iγが得られる。
γ軸電流iγはゲインKωが乗じられて速度指令nω
*に負帰還され、インバータ出力周波数ω1が演算される。インバータ出力周波数ω1及び3相/2相変換部21により得られたδ軸電流iδは電圧指令演算部24に入力され、上記(1)、(2)式を用いて、δ軸電圧指令vδ
*及びγ軸電圧指令vγ
*が演算される。
【0039】
ここで、例えば、(1)、(2)式による電圧指令演算では、モータ電圧よりγ軸電圧指令vγ
*が小さければ、界磁を弱めるためにδ軸のインバータ出力電流iδは負になる。逆に、γ軸電圧指令vγ
*が大きければ、それに合わせて強め界磁となり、iδは正となる。具体的に、(1)式の演算では、δ軸電圧指令vδ
*はδ軸電流iδが0になるように負の比例制御を行っている。これにより、iδの正負のふらつきがあれば、ゲインK
δによって早急にiδのふらつきをなくすように電圧指令vδ*が決定される。
【0040】
γ軸電圧指令vγ
*は、誘起電圧に相当するΛ
dω1の電圧を補うような電圧値とすることに加え、δ軸電流iδを0にする演算をするために、ここではiδを積分する積分制御を行っている。つまり、(2)式の演算では、δ軸電流iδが正負のどちらか一方の値で累積すれば、その分大きな値で元に戻るような電圧値が決定される。なお、ここでは積分制御を用いたが、制御応答性によっては、比例制御、比例積分制御等としてもよい。
【0041】
このようにすることで、iδは0になり、iδが0になればvδも0になる。これにより、モータ電流とモータ電圧はγ軸成分のみとすることができる。また、このとき、力率角φ=0であれば、位相は一致するので力率1制御となり、また、圧縮機モータ7のリラクタンストルクも考慮した適切な力率角φが設定されていた場合には、力率1制御よりもV/f制御が適正となるトルク範囲が拡張され、低速回転から高速回転まで単純なV/f制御を基調としつつ、電流を最小にして動作させることが可能となる。これにより、電圧と電流の積は最小となり、省電力な制御が可能となる。
【0042】
電圧指令演算部24において演算されたγ軸電圧指令vγ
*、δ軸電圧指令vγ
*は、2相/3相変換部26において、電圧位相演算部25から与えられる電圧位相θに基づく座標軸を用いて3相電圧指令vu
*,vv
*,vw
*に変換され、PWM信号生成部13に出力される。
【0043】
また、力率角設定部22では、γ軸電流iγに基づいて力率角φが設定されるとともに、補正角設定部23ではその時のスイッチング休止期間θssに応じた補正角Δφが設定され、電圧位相θから力率角φ及び補正角Δφを差し引いた回転座標軸θ−(φ−Δφ)が3相/2相変換部21に電流座標軸θiとして出力され、次のサンプリング周期におけるモータ電流の座標変換に用いられる。
【0044】
また、この電流座標軸θiは、スイッチング休止部12に出力される。ここで、
図4に示すように、電流座標軸θiはU相電流と同期しており、ゼロクロス点と電流座標軸θiとは同期する。また、V相のゼロクロス点は、U相のゼロクロス点を120[deg]ずらした位置、W相のゼロクロス点はU相のゼロクロス点を240[deg]ずらした位置である。このように、電流座標軸θiは、U相のゼロクロス点と同期していることから、この電流座標軸θiを用いてゼロクロス点を挟む所定のスイッチング休止期間θssにおいてスイッチング休止信号を出力すればよい。
スイッチング休止部12は、|θi|<θssにおいてU相のスイッチングを停止させるスイッチング休止信号をPWM信号生成部13に出力する。また、上記範囲を120[deg]ずらした電気角範囲においてV相のスイッチングを停止させるスイッチング休止信号を、上記範囲を240[deg]ずらした電気角範囲においてW相のスイッチングを停止させるスイッチング休止信号をPWM信号生成部13に出力する。
【0045】
これにより、PWM信号生成部13では、スイッチング休止部12からスイッチング休止信号が入力されていない期間においては、電圧指令生成部11において生成された3相電圧指令値vu
*,vv
*,vw
*に基づくPWM信号Sが生成されて、ゲートドライバ4に出力される。これにより、PWM信号Sに基づいてインバータ2が備えるスイッチング素子(
図1参照)がオン・オフ制御される。また、スイッチング休止信号が入力されている期間においては、その相のスイッチングが停止される。
【0046】
この結果、
図5に示すように、ゼロクロス点を挟んで設定される2θssの期間において、各相のスイッチングが停止される。
図5において、SWU+はU相の上アームのスイッチング素子、SWU−はU相の下アームのスイッチング素子を示し、V相、W相についても同様の標記とされている。ここで、モータ電流は正弦波からゆがむものの、もともと電流がゼロの付近なのでその影響は比較的小さいものとなる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係るインバータ制御装置及びその方法によれば、各相のゼロクロス点付近においてスイッチングを停止させるので、その休止期間においてはスイッチング損失が発生せず、スイッチング損失を低減させることが可能となる。
また、スイッチングを停止させる期間が生ずることにより、モータ電圧は電圧指令通りではなくなるが、3相/2相変換部21における回転座標軸に休止期間θssに応じた単調増加の位相差Δφを含ませるので、スイッチングの休止期間における位相差の影響を解消でき、力率角設定部22において設定された力率角φを保つことが可能となる。これにより、力率角を効率の良い位相角に設定することにより、インバータ効率を向上させ、省エネルギー化を図ることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。