(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記剛性インサート、前記反応性モノマー混合物、前記前方湾曲成形型部品、及び前記後方湾曲成形型部品のうちの少なくとも1つを脱気する工程であって、前記脱気により、レンズ欠陥を生じる可能性のあるガスを除去する、工程を追加的に含む、請求項1に記載の方法。
前記安定化機構の前記付加により、前記眼用レンズに質量を付加し、前記質量は、前記眼用レンズを前記眼上において方向付けるのに十分である、請求項10に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、乱視患者の視力を矯正する剛性インサートを有する眼用レンズの製造方法及び装置を含む。加えて、本発明は、結果として生じる、剛性インサートを有する眼用レンズを含む。概して、本発明のいくつかの実施形態によれば、剛性インサートは、眼用レンズを作るために使用される成形型部品に対して、所望の位置に剛性インサートを配置するオートメーションを介して眼用レンズ内に一体化されてよい。
【0012】
現在、乱視を矯正するための眼用レンズが存在している。例えば、剛性ガス透過性レンズが角膜を覆って配置されてよく、レンズと眼との間に涙液層が形成されることになる。本質的に、剛性ガス透過性レンズは、非乱視眼の曲率を模倣するように設計されてよい新たな角膜の役割を果たす。この技法は不顕在化と見なされる。しかし、典型的な剛性ガス透過性レンズは使い心地が悪く、高価である。
【0013】
ソフトコンタクトレンズは、より使い心地が良く、より安価な代替物を提供する。RGPと異なり、眼とレンズとの間に涙液層が形成されなくてよいため、ソフトコンタクトレンズは、眼の乱視特性を反映するように調整され得る。レンズは、眼のそれぞれの部分を矯正するために、変化のある屈折力及び屈折角を包含してよい。しかし、レンズが柔らかいので、レンズは眼の形状にある程度自然になじむ。これはレンズの効果を減じさせ、使用者はぼやけ又は二重視をしばしば訴える。
【0014】
どちらの解決策の使い心地及び効果の問題も、重度の乱視患者において深刻になる。したがって、本発明は、乱視患者の視力を矯正するための新しい代替物を提供する。剛性インサートを含んでよい眼用レンズ、及びより詳細には、封入された剛性インサートが乱視に対する矯正を提供してよい眼用レンズを説明する。
【0015】
以下のセクションでは、本発明の実施形態の「発明を実施するための形態」が記載される。好ましい実施形態及び代替の実施形態の両方の説明は、代表的な実施形態に過ぎず、変形、修正、及び代替が当業者にとって明白であり得ることが理解される。したがって、これらの代表的な実施形態は基礎をなす発明の範囲を制限しない点は理解されなければならない。
【0016】
用語集
本発明を対象としたこの説明及び特許請求の範囲においては、以下の定義が適用される様々な用語が用いられ得る。
接着促進:本明細書で使用するとき、2つの表面の間の、例えば、剛性インサートと封入材との間等の、接着傾向を高めるプロセスを指す。
【0017】
後方湾曲ピース又は後方インサートピース:本明細書で使用するとき、前述のインサート内に組み付けられた際に、眼用レンズの、後方になる側の位置を占有するマルチピース型剛性インサートの固体要素を指す。眼用デバイスでは、そのようなピースは、着用者の目の表面により近いインサートの面上に配置される。実施形態によっては、後方湾曲ピースは、眼用デバイスの中心部における領域を収容し、かつこれを含んでもよく、この領域を通じて光が装用者の目に進入する。この領域は視覚ゾーンと呼ばれ得る。他の実施形態では、このピースは、視覚ゾーンにおける領域の一部又は全てを収容しない、又は含まない環状の形状をとり得る。眼用インサートのいくつかの実施形態では、複数の後方湾曲ピースが存在してもよく、それらのうちの1つは、視覚ゾーンを含んでもよく、一方で、他のものは環状又は環の部分であってもよい。
【0018】
構成要素:本明細書で使用するとき、論理的状態、又は物理的状態の1つ以上の変化を生じるためにエネルギー源から電流を引くことができる装置を指す。
【0019】
封入:本明細書で使用するとき、例えば媒体インサート等の実体を、その実体に隣接する環境から分離する障壁を作り出すことを指す。
【0020】
封入材:本明細書で使用するとき、例えば媒体インサート等の実体を取り囲んで形成され、その実体に隣接する環境から実体を分離する障壁を作り出す層を指す。例えば、封入材は、エタフィルコン、ガリフィルコン、ナラフィルコン、及びセノフィルコン等のシリコーンヒドロゲル類、あるいはその他のヒドロゲルコンタクトレンズ材料を含んでもよい。実施形態によっては、特定の物質は実体内部に収容し、例えば水等の特定の物質は実体に侵入するのを阻止するべく、封入材が半透過性であってよい。
【0021】
エネルギー印加:本明細書で使用するとき、電流を供給することが可能であるか、又は電気エネルギーを内部に蓄積させることが可能である状態を指す。
【0022】
エネルギー:本明細書で使用するとき、ある物理系が仕事をする能力のことを指す。本発明で使用される場合の多くは、動作する際に電気的作用を行うことが可能なこの容量に関連し得る。
【0023】
エネルギー源:本明細書で使用する場合、エネルギーを供給することができるか、又は生体医学的装置を付勢された状態に置くことができる装置を指す。
【0024】
エネルギーハーベスター:本明細書で使用するとき、環境からエネルギーを抽出し、これを電気エネルギーに変換することができる装置を指す。
【0025】
前方湾曲ピース又前方インサートピース:本明細書で使用するとき、前述のインサート内に組み付けられた際に、眼用レンズの、前方になる側の位置を占有するマルチピース型剛性インサートの固体要素を指す。眼用デバイスでは、そのようなピースは、着用者の目の表面からより遠い面のインサート上に配置される。いくつかの実施形態では、ピースは、眼用デバイスの中心部における領域を収容し、かつこれを含んでもよく、この領域を通じて光が着用者の目の内部に進む。この領域は視覚ゾーンと呼ばれ得る。他の実施形態では、このピースは、視覚ゾーンにおける領域の一部又は全てを収容しない、又は含まない環状の形状をとり得る。眼用インサートのいくつかの実施形態では、複数の前方湾曲ピースが存在してもよく、それらのうちの1つは、視覚ゾーンを含んでもよく、一方で、他のものは環状又は環の部分であってもよい。
【0026】
レンズ形成用混合物、又は反応性混合物、又は反応性モノマー混合物(RMM):本明細書で使用されるとき、硬化及び架橋することができるか、又は架橋して眼用レンズを形成することができる、モノマー、又はプレポリマー材料を指す。様々な実施形態は、例えばUV遮断剤、染料、光開始剤、又は触媒、及びコンタクト若しくは眼内レンズ等の眼用レンズに有用な他の添加剤等の、1つ又は2つ以上の添加剤を有するレンズ形成用混合物を含んでよい。
【0027】
レンズ形成表面:本明細書で使用するとき、眼用レンズの成型に使用される表面を指す。いくつかの実施形態では、任意のこのような表面は、光学品質表面仕上げを有することができ、これは、表面が十分に滑らかで、成形型表面に接触しているレンズ形成用混合物の重合によって作られる眼用レンズ表面が光学的に許容可能であるように形成されていることを示す。更に、いくつかの実施形態では、レンズ形成表面は、眼用レンズ表面に所望の光学特性を付与するのに必要な幾何学形状を有することができ、所望の光学特性としては、限定することなく、球面、非球面、及び円筒屈折力、波面収差補正、角膜トポグラフィ補正、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0028】
リチウムイオンセル:本明細書で使用するとき、リチウムイオンセルは、セル内を移動するリチウムイオンが電気的エネルギーを生成する、電気化学セルを指す。典型的には電池とよばれるこの電気化学セルは、その通常の状態に再付勢又は再充電され得る。
【0029】
媒体インサート:本明細書で使用するとき、エネルギー印加眼用デバイス内に含まれることになる封入インサートを指す。媒体インサート内には、エネルギー印加要素及び回路機構が埋め込まれてよい。媒体インサートはエネルギー印加眼用デバイスの主要目的を定める。例えば、エネルギー印加眼用デバイスが、使用者が屈折力を調節することを可能とする実施形態では、媒体インサートは、視覚ゾーン内の液体メニスカス部分を制御するエネルギー印加要素を含んでよい。代替的に、媒体インサートは、視覚ゾーンが材料の空隙となるように、環状であってよい。このような実施形態では、レンズのエネルギー印加機能は光学的成形型部品のものでなくてよく、例えば、グルコースの監視又は薬剤の投与であってよい。
【0030】
成形型:本明細書で使用されるとき、未硬化配合物から眼用レンズを形成するために使用され得る、剛性又は半剛性の物体を指す。いくつかの好ましい成形型は、前方湾曲成形型及び後方湾曲成形型を形成する2つの成形型部品を含む。
【0031】
眼用レンズ又は眼用デバイス又はレンズ:本明細書で使用されるとき、眼内又は眼上に存在する任意の眼用デバイスを指す。デバイスは視力矯正を提供してもよく、美容のためのものであるか、又は光学的性質と関係のない何らかの機能性を提供してもよい。例えば、レンズという用語は、コンタクトレンズ、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、眼用インサート、光学インサート、あるいは視力が補正若しくは変更されるか、又は視力を妨げることなく目の生理機能が美容的に拡張される(例えば、虹彩色)他の同様のデバイスを指してよい。代替的に、レンズは、眼上に配置されてよい、例えば、涙液の成分の監視又は活性剤の投与手段等の、視力矯正以外の機能を有するデバイスを指してもよい。実施形態によっては、本発明の好ましいレンズは、例えば、シリコーンヒドロゲル類及びフロオロヒドロゲル類を含んでよい、シリコーンエラストマー類又はヒドロゲル類で作られたソフトコンタクトレンズであってよい。
【0032】
視覚ゾーン:本明細書で使用するとき、眼用レンズの範囲であって、そこを通して眼用レンズの装用者がものが見える範囲を指す。
【0033】
電力:本明細書で使用するとき、単位時間当たりに行われる仕事又は移動するエネルギーのことを指す。
【0034】
予備硬化:本明細書で使用するとき、混合物を部分的に硬化させるプロセスを指す。実施形態によっては、予備硬化プロセスは、期間を短縮した完全硬化プロセスを含んでよい。代替的に、予備硬化は、例えば、材料の完全硬化に用い得るものと異なる温度及び光の波長に混合物を曝露することによる、独自のプロセスを含んでもよい。
【0035】
前投入:本明細書で使用するとき、プロセスの完了に必要になり得る全量よりも少ない量での材料の初期堆積を指す。例えば、前投入は必要な物質の4分の1を含んでよい。
【0036】
後投入:本明細書で使用するとき、プロセスの完了に必要になり得る、前投入後の残りの量の材料の堆積を指す。例えば、前投入が必要な物質の4分の1を含む場合には、後続の後投入は物質の残りの4分の3を提供してよい。
【0037】
再充電可能又は再付勢可能:本明細書で使用するとき、仕事を行うためのより高い能力を有する状態へと回復するための能力を指す。本発明内の多くの用途は、特定の速度で、特定の再度回復された時間の間、電流を流す能力を備える所与の状態まで回復するための能力に関連し得る。
【0038】
再充電又は再付勢:本明細書で使用するとき、仕事をするためのより高い能力を有する状態まで回復する活動を指す。本発明の多くの用途は、再確定された時間において、一定の速度で電流を流す能力を備える所定の状態までデバイスを回復させることに関連し得る。
【0039】
成形型から取り外れた:本明細書に使用されるとき、眼用レンズが、成形型から完全に分離される、又は穏やかな振動によって取り外す、若しくは綿棒を用いて押し外すことができるように、ほんの軽く付着しているか、のいずれかである行為を指す。
【0040】
剛性インサート:本明細書で使用するとき、所定のトポグラフィを維持するインサートを指す。コンタクトレンズ内に含められると、剛性インサートはレンズの機能性に寄与してよい。例えば、剛性インサートのトポグラフィ又はその内部の密度を変化させることが、乱視の使用者の視力を矯正し得るゾーンを規定してよい。
【0041】
安定化機構:本明細書で使用するとき、眼用デバイスが眼上に配置されている際に、眼用デバイスを眼上において特定の方向に安定化させる物理的特性を指す。実施形態によっては、安定化機構は、眼用デバイスをバラストで安定させるのに十分な質量を付加し得る。実施形態によっては、安定化機構は前方湾曲表面を変更してよく、まぶたが安定化機構を捉えてよく、使用者はまばたきによってレンズを配置し直してよい。このような実施形態は、質量を付加し得る安定化機構を含めることによって、更に向上し得る。一部の例示的な実施形態では、安定化機構は、封入生体適合性材料とは独立した材料であってもよく、成形プロセスとは独立に形成されるインサートであってもよく、あるいは剛性インサート又は媒体インサート内に含まれてもよい。
【0042】
スタック一体型コンポーネントデバイス(SIC−デバイス):本明細書で使用するとき、電気的及び電気機械的デバイスを含み得る基材の薄層を、各層の少なくとも一部分を互いの上に積み重ねる手段により、動作可能な一体型デバイスへと組み立て得るパッケージング技術製品を指す。層は、様々な型式、材料、形状及びサイズのコンポーネントデバイスを含んでもよい。更に、層は、様々な輪郭に適合しかつこの輪郭に接するために、様々なデバイス製造技術により作製され得る。
【0043】
膨張率:
眼用レンズ
図1に進むと、剛性インサート110を有する例示的な実施形態の眼用レンズ100が示されている。剛性インサート110は、乱視患者の視力を矯正する物理的特質を含む。実施形態によっては、剛性インサート110は眼の乱視特性を反映してよい。例えば、剛性インサート110は、第1屈折力及び屈折角を有する第1ゾーン111、及び第2屈折力及び屈折角を有する第2ゾーン112を含んでよい。実施形態によっては、第1ゾーン111は眼のちょうど中心に位置しなくてもよく、第2ゾーン112は半径方向に対称でなくてもよい。
【0044】
このような実施形態では、眼用レンズ100を眼上において適切に方向付けるために、安定化機構120が必要となり得る。安定化機構120は、封入反応性モノマー混合物とは異なる材料を含んでよい。実施形態によっては、安定化機構120用の材料は、剛性インサート110の配置の前に前方湾曲成形型ピース上に配置されてよい。代替的に、材料は、前方湾曲成形型ピースと後方湾曲成形型ピースとの間に剛性インサート110が配置された後に、眼用レンズ100内に注入されてもよい。
【0045】
断面で示されているように、安定化機構120は、眼上における回転を阻止するべく眼用レンズ100を固定するために十分な質量を付加することによって、眼用レンズ100を眼上において方向付けてよい。一部の代替実施形態では、安定化機構110は、封入RMMとは異なる膨張率を有する材料を含んでよい。このような実施形態では、安定化機構110は、眼用レンズ100を形成するプロセスの間に膨張してよく、膨張は、安定化機構110が眼用レンズ100の前面トポグラフィを変更することを可能にする。眼上に配置されると、まぶたが安定化機構110を捉え、ユーザーがまばたきすることにより、レンズを方向付け直することができる。眼上における配置を更に容易にするために、安定化機構110は染料を含有してよく、使用者は、眼用レンズ100が配置前に眼上でどのように方向付けてよいかを見ることができる。
【0046】
実施形態によっては、剛性インサートは、位置合わせされ、保持されたシートを、熱成形用成形型ピースの表面を複製できる3次元形状に熱成形することによって、形成されてよい。その結果生じるピースが薄い材料シートから切り取られてよい。前方及び後方湾曲成形型ピースによって画定される空洞の内部に剛性インサートを位置付け、反応性モノマー混合物でインサートを取り囲むことによって、眼用レンズが形成されてよい。熱成形材料からインサートピースを切り取るプロセスの間、例えば刻み目、溝、若しくは平坦部等の位置合わせ機構がインサートピース内に切削されてよい。これらの機構は、インサートピース又は形成された眼用インサートデバイスを後の処理において位置合わせするために用いられてよい。
【0047】
図2に進むと、剛性インサート210を有する眼用レンズ200の代替実施形態が示されている。剛性インサート210は、乱視患者の視力を矯正する物理的特質を含む。重度の乱視患者においては、剛性インサート210は複雑な構成のゾーン211〜213を含んでよく、それぞれのゾーン211〜213は眼の特定の部分のために視力を矯正する。剛性インサート210は眼用レンズ200内に完全に封入されてよく、眼と直接接触しなくてよい。したがって、実施形態によっては、剛性インサート210は様々な材料を含んでよく、材料は生体適合性でなくてもよい。例えば、第1ゾーン211は、第2ゾーン212又は第3ゾーン213と異なる材料を含んでよい。それぞれの材料の特性はゾーン211〜213毎の視力矯正の効果を高めてもよく、又は特性だけで乱視特性を矯正するために十分であってもよい。特性は、例えば、密度又は屈折率を含んでよい。
【0048】
実施形態によっては、剛性インサート210は熱成形プロセスを通じて形成されてよい。例えば、それぞれのゾーン211〜213が独自の材料を含む実施形態では、薄いシートがそれぞれの材料で局部的にコーティングされてよい。薄いシート、又は薄いシートから切り取られた剛性インサートは、3次元表面を含むべく熱成形されてよく、剛性インサートの3次元表面のトポグラフィは眼の乱視特性の矯正に寄与する。実施形態によっては、3次元表面は、必要なゾーン211〜213を作り出すのに十分であってよい。
【0049】
複数のゾーンを有する剛性インサート210を含む眼用レンズ200の一部の実施形態、及び特に、剛性インサート210が複雑な変化を含む実施形態では、安定化機構220が剛性インサート210と共に含まれてよい。これにより、安定化機構220と剛性インサート210との間の精密な位置合わせが可能になってよい。剛性インサート210が熱成形されてよい一部の特定の実施形態では、安定化機構220が剛性インサート220から延在する断面で示されるように、剛性インサートは、薄いシートから、安定化機構220を含むように切り取られてよい。
【0050】
図1と同様に、安定化機構220は、使用者がまばたきによって眼用レンズ200を方向付け直し得るように、前面トポグラフィを変更してよく、又は、実施形態によっては、安定化機構220は、眼用レンズ200を眼上において方向付けるのに十分な質量を付加してよい。一部の他の実施形態は、質量と変更された前面トポグラフィとを組み合わせて含んでよい。安定化機構220は、使用者が眼用レンズ200を適切に方向付ける助けとなり得る更なる特性を含んでよい。例えば、安定化機構220は、眼用レンズ200が眼上にどのように配置されている可能性があるのかを使用者に示す刻印又は着色を含んでよい。
【0051】
実施形態によっては、その他の受動要素が剛性インサート210と共に含まれてもよい。実施形態によっては、剛性インサート210は、グレアを低減し得る偏光要素を含んでよく、これによって視覚の鮮明さが向上し得る。実施形態によっては、剛性インサート210は、剛性インサート210上のゾーン211〜213の隠蔽部を含む、美容的機能性を付加し得る印刷パターンを含んでよい。実施形態によっては、剛性インサート210は、眼用レンズ200が眼上に配置されると溶解し得る活性剤を含んでよい。乱視が眼に対する損傷によって生じている場合には、活性剤が薬剤である実施形態が特に重要となり得る。
【0052】
図3に進むと、剛性インサート304を有する眼用レンズ309を形成する例示的な処理工程であって、剛性インサート304は封入され、乱視を矯正する能力を有してよい、処理工程が示されている。表1には、例示的な材料及び硬化仕様が含まれているが、その他の材料及び重合技法が明らかであってよく、上述の本発明の技術の範囲内である。310において、前方湾曲成形型301に反応性モノマー混合物303が前投入されてよい。実施形態によっては、前方湾曲成形型301上又は前投入されたRMM 303上に安定化機構302が堆積されてよい。
【0053】
320において、前方湾曲成形型304に近接し、かつ前投入されたRMMと接触して剛性インサート304が配置されてよく、配置は前方湾曲アセンブリ301〜304を形成する。安定化機構302が剛性インサート304と分離した実施形態では、剛性インサート304は安定化機構302と位置合わせされ、眼用レンズ309が眼上に配置されると眼用レンズ309の適切な方向付けを可能にするように配置されてよい。
【0054】
330において、前方湾曲アセンブリ301〜304に反応性モノマー混合物305が後投入されてよく、前投入量303と後投入量305とで剛性インサート304を完全に封入し、眼用レンズ308を適切に形成してよい。340において、前方湾曲成形型301に近接して後方湾曲成形型306が配置されてよく、前方湾曲成形型301と後方湾曲成形型306とでレンズ形成空洞308を形成してよい。レンズ形成空洞308は、後投入されたRMM 305と前投入されたRMM 303とを結合させてよく、これにより、RMM 307が剛性インサート304を完全に封入することが可能になってよい。
【0055】
実施形態によっては、RMM 307は安定化機構303に接着するか又はそれを少なくとも部分的に封入してよい。前方湾曲及び後方湾曲アセンブリ301〜307は、眼用レンズ309を形成するべく、例えば硬化プロセスを通じて、重合されてよい。350において、眼用レンズ309は成形装置301、306から取り出されてよい。
【0057】
要素は、眼用デバイスが占有する環境(例えば要素と接触する眼球表面の涙の流体を含む)において安定であっても、又は安定でなくてもよい材料から形成されてもよい。この使用は、例えばパリレンC、N及びD族の成分に限定されないが、これらを含むパリレン族を含むコーティングから封入層を形成することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、封入コーティングは、他の接着剤又はシーラント層の適用前又は適用後に生じてもよい。
【0058】
インサート系の眼用レンズのための方法及び材料
図3を再び参照すると、剛性インサート304を有する眼用レンズ309を形成する例示的な処理工程であって、剛性インサート304は封入され、乱視を矯正する能力を有してよい、処理工程が示されている。本明細書で使用するとき、成形型装置301、306は、レンズ形成用混合物307が分注されてよく、レンズ形成用混合物307を反応又は硬化させると、所望の形状の眼用レンズ309が作製されるレンズ形成空洞308を形作るように形成されたプラスチックを含んでよい。成形型部品301、306の結合は好ましくは一時的なものであり、眼用レンズ309が形成されると、成形型部品301、306は350における眼用レンズ309の取り出しのために分離されてよい。
【0059】
少なくとも一方の成形型部品301、306は、その表面の少なくとも一部分がレンズ形成用混合物307と接触してよく、これによりレンズ形成用混合物307を反応又は硬化させると、この表面は、表面が接触している眼用レンズの部分に所望の形状及び形態をもたらす。少なくとももう一方の成形型部品301、306についても同じである。
【0060】
したがって、例えば、例示的な実施形態においては、成形型装置301、306は、2つの部分301、306、雌型の凹型ピース(前方湾曲成形型)301と雄型の凸型ピース(後方湾曲成形型)306、から形成され、それらの間に空洞308が形成される。レンズ形成用混合物307と接触する、凹型表面の部分は、眼用レンズ309の前方湾曲部の曲率を有する。
【0061】
前述の部分は十分に平滑であり、凹型表面と接触するレンズ形成用混合物307の重合によって形成される眼用レンズ309の表面が、光学的に許容できるものになるように形成される。一部の実施形態では、前方湾曲成形型301は、この前方湾曲成形型301から、軸に垂直な平面内に延在し、同様にフランジ(不図示)から延在する円形の周辺縁部と一体でこれを取り囲む環状フランジを有してもよい。
【0062】
レンズ形成表面は、光学品質表面仕上げを備える表面を含むことができ、これは、表面が十分に滑らかで、成形型表面に接触しているレンズ形成用混合物308の重合によって作られた眼用レンズ表面が、光学的に許容可能であるように形成されることを示す。さらに、いくつかの実施形態では、成形型ピース301、306のレンズ形成表面は、球面、非球面、及び円筒屈折力、波面収差補正、角膜トポグラフィ補正、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない、所望の光学特性を眼用レンズ表面に付与するのに必要な幾何学形状を有してよい。当業者は、説明される特性以外の特性もまた、本発明の範囲内に含まれ得るということを理解するであろう。
【0063】
一部の追加的な実施形態は、ヒドロゲルマトリックス内に完全に封入されてよい剛性レンズインサートである、剛性インサート304を含む。剛性インサート304は、例えばマイクロ射出成形技術を用いることによって製造し得る。実施形態は、例えば、直径が約6mm〜10mm、前方表面半径が約6mm〜10mm、後方表面半径が約6mm〜10mm、並びに中心厚さが約0.050mm〜0.5mmのポリ(4−メチルペンテン−1)コポリマー樹脂を含み得る。いくつかの代表的な実施形態は、約8.9mmの直径、約7.9mmの前側表面半径、約7.8mmの後側表面半径、及び約0.100mmの中心厚さ、及び約0.050半径の縁部プロファイルのインサートを含む。1つの代表的なマイクロ成形装置としては、Battenfield Inc.によって提供されているMicrosystem 50 4536−kg(5トン)システムを挙げることができる。以下のものに限定されるわけではないが、スロット、リップ、及びナイフ・エッジを含む、封止機構の一部又は全ては、成形プロセス中に形成されるか、又は成形プロセスの結果の後続処理によって、後で形成されてよい。
【0064】
剛性インサート304は、眼用レンズ308を形成するために利用される成形型部品301、306内に配置されてよい。成形型部品301、306の材料には、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、及び変性ポリオレフィン類、のうちの1つ又は2つ以上のポリオレフィンを挙げることができる。その他の成形型には、セラミック又は金属材料を含むことも可能である。
【0065】
眼用レンズの成形型を形成するために、1つ又は2つ以上の添加剤と組み合わせることができる他の成形材料としては、例えば、Zieglar−Nattaポリプロピレン樹脂(znPPと称されることがある)、FDA規則21 CFR(c)3.2による清浄な成形のための精製ランダムコポリマー、エチレン基を有するランダムコポリマー(znPP)が挙げられる。
【0066】
また更には、いくつかの実施形態では、本発明の成形型には、ポリプロピレン等のポリマー、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、主鎖に脂環式部分を含む変性ポリオレフィン、及び環状ポリオレフィンが含まれ得る。このブレンドを、成形型の半分の一方又は両方に対して用いることができる。このブレンドを後方湾曲部上で用いて、前方湾曲部は脂環式コポリマーからなることが好ましい。
【0067】
本発明に係る成形型300のいくつかの好ましい作製方法では、射出成形は既知の技法によって使用される。実施形態はまた、例えば旋盤法、ダイヤモンド切削、又はレーザー切断を含む、他の方法によって作られる成形型を含んでもよい。
【0068】
典型的に、眼用レンズは、両方の成形型部品301及び302のうちの少なくとも1つの表面上に形成される。しかしながら、いくつかの実施形態では、眼用レンズの1つの表面は、成形型部品301及び302から形成されてもよく、レンズの他方の表面は、例えば旋盤方法を使用して形成されてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、眼用レンズの種類は、シリコーン含有成分を含む、眼用レンズを含むことができる。シリコーン含有成分は、モノマー、マクロマー又はプレポリマー中に少なくとも1個の[−Si−O]単位を含有する成分である。好ましくは、合計シリコーン及び結合した酸素は、シリコーン含有成分中に、当該シリコーン含有成分の総分子量の約20重量%より大きい、更に好ましくは30重量%より大きい量で存在する。有用なシリコーン含有成分は、好ましくは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニル、N−ビニルラクタム、N−ビニルアミド及びスチリル官能基などの重合性官能基が含まれる。
【0070】
いくつかの実施形態では、インサートを包囲するインサート封入層とも呼ばれる、眼用レンズのスカートは、標準的なヒドロゲルの眼用レンズ配合物から構成され得る。多くのインサート材料と許容可能な調和を呈する特性を備える代表的な材料には、ナラフィルコン系(ナラフィルコンA及びナラフィルコンB)、及びエタフィルコン系(エタフィルコンAを含む)が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書の技術と一致する材料の成形型部品に関して、より技術的に包括的な説明は以下に続く。当業者は、説明された以外の他の材料もまた、封止され、封入されたインサートの許容可能なエンクロージャ又は部分的なエンクロージャを形成することができ、本請求項と一致しており、これに含まれると見なされるべきであるということを理解するであろう。
【0071】
好適なシリコーン含有成分は、式Iの化合物を含む。
【化1】
式中、R
1は、独立して、一価反応基、一価アルキル基、又は一価アリール基から選択され、前述のいずれかは、ヒドロキシ、アミノ、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、アルコキシ、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロゲン、又はこれらの組み合わせから選択される官能基を更に含み得、1〜100のSi−Oの繰り返し単位を含む一価シロキサン鎖は、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、アルコキシ、アミド、カルバメート、ハロゲン、又はこれらの組み合わせから選択される官能基を更に含むこともあり、
式中、bは0〜500であり、bが0以外のときに、bは、表示値と同等のモードを有する分配であると理解され、
式中、少なくとも1個のR
1が一価の反応基を含み、いくつかの実施形態では、1〜3個のR
1が一価の反応基を含む。
【0072】
本明細書に使用されるとき、一価反応基は、フリーラジカル及び/又はカチオン重合を受けることができる基である。フリーラジカル反応性基の非限定的な例としては、(メタ)アクリレート、スチリル、ビニル、ビニルエーテル、C
1〜6アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、C
1〜6アルキル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルラクタム、N−ビニルアミド、C
2〜12アルケニル、C
2〜12アルケニルフェニル、C
2〜12アルケニルナフチル、C
2〜6アルケニルフェニルC
1〜6アルキル、O−ビニルカルバメート及びO−ビニルカーボネートが挙げられる。カチオン反応性基の非限定例としては、ビニルエーテル又はエポキシド基及びこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、フリーラジカル反応基は、(メタ)アクリレート、アクリルオキシ、(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物を含む。
【0073】
好適な一価のアルキル基及びアリール基には、置換及び非置換のメチル、エチル、プロピル、ブチル、2−ヒドロキシプロピル、プロポキシプロピル、ポリエチレンオキシプロピル、これらの組み合わせなどの、非置換の一価のC
1〜16アルキル基、C
6〜14アリール基が挙げられる。
【0074】
一実施形態では、bは、ゼロであり、1個のR
1は、一価反応基であり、少なくとも3個のR
1は、1〜16個の炭素原子を有する一価アルキル基から選択され、別の実施形態では、1〜6個の炭素原子を有する一価アルキル基から選択される。本発明のシリコーン成分の制限されない例には、2−メチル−、2−ヒドロキシ−3−[3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキザニル]プロポキシ]プロピルエステル(「SiGMA」)、
2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルオキシプロピル−トリ(トリメチルシロキシ)シラン、
3−メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(「TRIS」)、
3−メタクリルオキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、及び
3−メタクリルオキシプロピルペンタメチルジシロキサンが含まれる。
【0075】
別の実施形態では、bは、2〜20、3〜15、又はいくつかの実施形態では、3〜10であり、少なくとも1つの末端R
1は、一価反応基を含み、残りのR
1は、1〜16個の炭素原子を有する一価アルキル基から選択され、別の実施形態では、1〜6個の炭素原子を有する一価アルキル基から選択される。更に他の一実施形態では、bが3〜15であり、1つの末端R
1が一価の反応性基を含み、その他の末端R
1が1〜6の炭素原子を有する一価のアルキル基を含み、残余のR
1が1〜3の炭素原子を有する一価のアルキル基を含む。本発明のシリコーン成分の非限定例としては、(モノ−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピル)−プロピルエーテル末端ポリジメチルシロキサン(400〜1000MW))(「OH−mPDMS])、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジメチルシロキサン(800〜1000MW)、(mPDMS)が挙げられる。
【0076】
別の実施形態では、bは、5〜400、又は10〜300であり、両方の末端R
1は、一価反応基を含み、残りのR
1は、独立して、炭素原子間のエーテル結合を有することもあり、ハロゲンを更に含むこともある、1〜18個の炭素原子を有する一価アルキル基から選択される。
【0077】
シリコーンヒドロゲルの眼用レンズが望ましい一実施形態では、本発明の眼用レンズは、ポリマーを作製する反応性モノマー成分の総重量に基づき、少なくとも約20、好ましくは、約20重量%〜70重量%のシリコーン含有成分を含む反応性混合物から作製される。
【0078】
別の実施形態では、1〜4のR
1は以下の式IIのビニルカーボネート又はカルバメートを含み、
【化2】
式中、Yは、O−、S−、又はNH−を示し、Rは、ヒドロゲン又はメチルを示し、dは、1、2、3、又は4であり、qは、0又は1である。
【0079】
シリコーン含有ビニルカーボネート又はビニルカルバメートモノマーは、具体的には、1,3−ビス[4−(ビニルオキシカルボニルオキシ)ブト−1−イル]テトラメチル−ジシロキサン、3−(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル−[トリス(トリメチルシロキシ)シラン]、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート、トリメチルシリルエチルビニルカーボネート、トリメチルシリルメチルビニルカーボネートを含み、
【化3】
【0080】
約200以下の弾性率を有する生物医学的装置が所望される場合、1個のR
1のみが一価反応基を含むものとし、残りのR
1基のうちの2個以下は、一価シロキサン基を含む。
【0081】
別のクラスのシリコーン含有成分としては、次の式のポリウレタンマクロマーが挙げられる。
式IV〜VI
(
*D
*A
*D
*G)
a *D
*D
*E
1;
E(
*D
*G
*D
*A)
a *D
*G
*D
*E
1又は
E(
*D
*A
*D
*G)
a *D
*A
*D
*E
1
式中、Dは、炭素原子6〜30個を有するアルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アリールジラジカル又はアルキルアリールジラジカルを示し、
式中、Gは、炭素原子1〜40個を有するアルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、アリールジラジカル又はアルキルアリールジラジカルを示し、これは、主鎖中にエーテル、チオ又はアミン結合を含有でき、
*はウレタン又はウレイド結合を意味し、
aは、少なくとも1であり、
Aは次の式の二価重合ラジカルを意味する。
【化4】
式中、R
11は独立してアルキル又は1〜10個の炭素原子を有するフルオロ置換アルキル基を意味し、これには炭素原子間にエーテル結合を含んでよく、yは少なくとも1であり、pは400〜10,000の部分重量を提供し、E及びE
1はそれぞれ独立して式VIIIに示される重合性不飽和有機ラジカルを意味し、
【化5】
式中、R
12は水素又はメチルであり、R
13は水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキルラジカル又は−CO−Y−R
15ラジカルで、Yは−O−、Y−S−又は−NH−であり、R
14は1〜12個の炭素原子を有する二価ラジカルであり、Xは−CO−又は−OCO−を意味し、Zは−O−又は−NH−を意味し、Arは6〜30個の炭素原子を有する芳香族ラジカルを意味し、wは0〜6であり、xは0又は1であり、yは0又は1であり、zは0又は1である。
【0082】
好ましいシリコーン含有構成要素は、式IXによって表されるポリウレタンマクロマである(完全な構造は、対応する星印領域同士、
*〜
*、
**〜
**、を連結することによって理解されてよい)。
【化6】
R
16は、イソフォロンジイソシアネートのジラジカルなどのイソシアネート基除去後のジイソシアネートのジラジカルである。別の好適なシリコーン含有マクロマーは、フルオロエーテル、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、イソホロンジイソシアネート及びイソシアネートエチルメタクリレートの反応によって形成される式X(式中、x+yは10〜30の範囲の数である)の化合物である。
【0083】
式X(完全な構造は、対応する星印領域同士、
*〜
*、を連結することによって理解されてよい)。
【化7】
【0084】
本発明の使用に好適な他のシリコーン含有成分には、ポリシロキサン、ポリアルキレンエーテル、ジイソシアネート、ポリフッ素化炭化水素、ポリフッ素化エーテル、及び多糖類基を含有するマクロマー;末端のジフルオロで置換された炭素原子に結合する水素原子を有する、極性のフッ素化グラフト又は側基を有するポリシロキサン;エーテルを含有する親水性シロキサニルメタクリレート、並びにポリエーテル及びポリシロキサニル基を含有するシロキサニル結合及び架橋性モノマーが含まれる。前述のポリシロキサンのいずれもまた、本発明のシリコーン含有成分として使用することができる。
【0085】
プロセス
以下の方法ステップは、本発明のいくつかの態様により実施しても良いプロセスの例として与えられる。本方法のステップが示される順番は限定を意図するものではなく、他の順番を用いて本発明を実施しても良いことを理解されるべきである。加えて、本発明を実施するために全てのステップを必要とするわけではなく、また本発明の種々の実施形態には付加的なステップを含んでも良い。更なる実施形態が実用的であり得、かかる方法は、当該請求項の十分に範囲内であるということは、当業者には明白であり得る。
【0086】
ここで
図4を参照すると、フローチャートによって、本発明を実施するために用い得る代表的なステップを示している。プロセス全体を通じて、プラスチック含有構成要素は、そのプラスチック含有構成要素を利用する工程の実施前に脱気されてよい。脱気は、酸素等のガス、あるいは重合を妨害したり、又は穴若しくは液だまり等の、肉眼で見える欠陥を含む、他のレンズ欠陥を生み出したりし得る溶存ガスを除去してよい。
【0087】
405において、眼の特定の乱視特性を矯正する能力を有する剛性インサートが形成されてよい。剛性インサートは種々のゾーンを含んでよく、それぞれのゾーンは乱視眼の特定の部分のために視力を矯正する。成形プロセスに含める前に、剛性インサートはプラズマ洗浄されてよい。
【0088】
410において、剛性インサートは、封入反応性モノマー混合物への剛性インサートの接着傾向を高めるように処理されてよい。実施形態によっては、剛性インサートの形成は接着促進処理を含んでよい。RMMと剛性インサートとの間の接着傾向は気相堆積を通じて促進されてよく、剛性インサートは、真空チャンバ内に格納されている間に接着促進化学物質に曝露される。
【0089】
412において、前方湾曲成形型は、凹側を上にして、例えばパレットを含む、保持プレート内に配置されてよい。415において、前方湾曲成形型に反応性モノマー混合物が前投入されてよい。前投入量及び位置は、結果として生じる眼用レンズが剛性インサートを適切に封入することを確実にするように最適化されてよい。例えば、前投入RMMが少なすぎると、完全な封入が阻まれる恐れがあり、前投入RMMが多すぎると、レンズ形成空洞内部における気泡の形成を生じさせる恐れがある。一部の好ましい実施形態では、前投入量はおよそ10uLのRMMであってよい。同様に、剛性インサートに関する前投入の配置は封入の問題を低減し得る。例えば、前方湾曲成形型上の前投入の配置は剛性インサート上の最急勾配凹点と一致してよい。
【0090】
実施形態によっては、成形工程415〜445は、好ましくは酸素含有量が0.0%〜0.5%である、窒素富化環境中で行われてよい。したがって、プロセス全体にわたって利用される構成要素は使用前に環境と平衡化されてよい。
【0091】
実施形態によっては、417において、前方湾曲成形型に近接して安定化機構が配置されてよい。一部のこのような実施形態では、安定化機構は前方湾曲成形型上に直接配置又は堆積されてよい。他の実施形態では、安定化機構は、前投入されたRMM上に配置又は堆積されてよい。安定化機構は、剛性インサートとの精密な位置合わせを可能にするべく規定された位置に配置されてよい。他の実施形態では、安定化機構は、前方湾曲成形型が完全に投入された後に、眼用レンズ内に含められてよい。このような実施形態では、安定化機構は、剛性インサートと適切に位置合わせするべく、特定の位置に注入されてよい。
【0092】
420において、前方湾曲成形型に近接し、かつ前投入されたRMMと接触して剛性インサートが配置されてよく、配置は前方湾曲アセンブリを形成する。実施形態によっては、剛性インサートは、415における前投入の前に前方湾曲成形型に近接して位置合わせされてよい。このような実施形態では、剛性インサートは、415における前投入工程後に、前方湾曲成形型内に入れ子になってよい。安定化機構が剛性インサートと共に含まれる実施形態では、配置剛性インサートは前方湾曲成形型上の特定の位置合わせを必要としなくてよい。安定化機構及び剛性インサートが眼用レンズ内で分離して含まれる代替実施形態は、剛性インサートと前方湾曲成形型又はより具体的には安定化機構との間の特定の位置合わせを必要としてよい。
【0093】
一部の好ましい実施形態では、420において、剛性インサートは機械的配置によって配置されてよい。機械的配置は、例えば、例として、表面実装構成要素を配置するために当業界で知られているもの、又はピックアンドプレイス自動装置等の、ロボット又はその他のオートメーションを含んでよい。人間による剛性インサートの配置も、本発明の範囲内である。したがって、成形型部品によって収容される反応性混合物の重合化によって、得られる眼用レンズ内に剛性インサートが含まれ得るように、成形型部分内に剛性インサートを配置する場合には、機械的配置が有効となり得る。
【0094】
実施形態によっては、425において、残りの封入プロセスのために剛性インサートを固定するために、RMMは予備硬化されてよい。例えば、前方湾曲アセンブリは、5mWの青色硬化ランプの下で22℃等の周囲温度で2分間予備硬化されてよい。一部の代替実施形態は複数の封入工程を同時に実行してよい。このような実施形態では、425における予備硬化工程は必要でなくてもよい。
【0095】
430において、前方湾曲アセンブリに、剛性インサートを完全に封入し、眼用レンズを作り出すために必要であってよい残りのRMMが後投入されてよい。435において、前方湾曲アセンブリに近接して後方湾曲成形型が配置されてよく、配置は後方湾曲成形型と前方湾曲成形型との間に空洞を形成する。レンズ形成空洞は眼用レンズの形状を規定してよく、RMMは剛性インサートを空洞内部に完全に封入してよい。
【0096】
実施形態によっては、440において、前方及び後方湾曲アセンブリが、アセンブリを補強し得る程度まで予備硬化されてよい。440における予備硬化により、完全硬化プロセスの間の前方及び後方湾曲アセンブリの構成要素の移動又は傾斜を阻止し得る。予備硬化は、前方及び後方湾曲アセンブリの完全構築の直後に行われる短いプロセスであってよい。
【0097】
445において、前方及び後方湾曲アセンブリは完全に硬化されてよい。空洞内部の反応性モノマー混合物は重合されてよい。重合は、例えば、化学線及び熱のいずれか又は両方への曝露によって達成されてよい。硬化プロセスのパラメータは、RMM及び剛性インサートの特定の化学的性質によって定義されてよい。例えば、放射線への曝露はRMMを硬化し得るが、放射線は剛性インサートの完全性を劣化させるか又はそれに影響を及ぼし得る。実施形態によっては、許容可能な硬化状態を可能にするために、硬化時間が延長されてよい。
【0098】
450において、前方及び後方湾曲アセンブリは離型されてよい。実施形態によっては、450において、前方及び後方湾曲アセンブリは、後方湾曲成形型から前方湾曲成形型を分離することによって離型されてよい。一部の実施形態は前方湾曲成形型をアセンブリから外してよく、他のものは後方湾曲成形型をアセンブリから外してよく、更に別のものは前方湾曲成形型及び後方湾曲成形型を同時に外してよい。外された成形型は、離型されたアセンブリから眼用レンズがどのように取り出されてよいのかを定義してよい。
【0099】
455において、離型された前方及び後方湾曲アセンブリから、剛性レンズを有する眼用レンズが取り出されてよい。離型後、眼用レンズは、前方湾曲成形型又は後方湾曲成形型のどちらかに付着したままであってよい。実施形態によっては、眼用レンズは、450における離型プロセスの間に外されない成形型部品上に残ってよい。
【0100】
実施形態によっては、眼用レンズを含む成形型部品は、眼用レンズを放すべく操作されてよい。操作は、例えば、成形型部品を曲げることを含んでよく、眼用レンズのより容易な取り出しを可能にしてよい。実施形態によっては、眼用レンズを含む成形型部品は振盪されてよい。455における取り出しプロセスは、成形型部品及び眼用レンズが溶液、例えば恒温槽、の中に沈められている間に行われてよい。眼用レンズ及び成形型部品を水溶液中に沈めることによって、眼用レンズの部分膨張が可能になってよく、それによって、成形型部品からの取り出しが容易になり得る。
【0101】
眼用レンズが前方湾曲成形型上に残る実施形態では、眼用レンズの取り出しは追加の工程を必要とし得る。例えば、前方湾曲成形型の表面から眼用レンズを持ち上げるために、レンズの縁部において溶液が注入されてよい。
【0102】
460において、眼用レンズは水和されてよい。460における水和プロセスは、眼用レンズが眼に適合することを可能にしてよく、剛性インサートを含む眼用レンズの機能性は前述の適合性に依存してよい。実施形態によっては、水和プロセスは、眼用レンズの適切な膨張を確実にするために、複数の段階を含んでよい。例えば、第1段階は、眼用レンズを、約0.45%のホウ酸ナトリウム溶液中に50℃で1時間浸すことを含んでよい。第2段階は、新鮮な溶液を用いて第1段階の条件を繰り返してよい。第3及び最終段階は、眼用レンズを溶液中に室温で浸すことを含んでよい。
【0103】
465において、眼用レンズは封止容器内に包装されてよい。封止容器は空気への曝露を阻止してよく、使用前の眼用レンズの乾燥を阻止する溶液を含んでよい。
【0104】
本発明を使用して、任意の既知の眼用レンズ材料、又はそのような眼用レンズの製造に好適な材料から製造されるハード若しくはソフトコンタクトレンズを提供することができるが、好ましくは、本発明の眼用レンズは、約0〜約90パーセントの含水量を有するソフトコンタクトレンズである。更に好ましくは、眼用レンズは、モノマー含有のヒドロキシ基及びカルボキシル基の一方又は両方から製造され、あるいはシロキサン、ヒドロゲル、シリコーンヒドロゲル、及びこれらの組み合わせ等のシリコーン含有ポリマーから製造される。本発明の眼用レンズを形成するのに有用な材料は、マクロマー、モノマー、ポリマー、及びこれらの組み合わせの混合物を、重合開始剤等の添加剤と共に反応させることによって製造され得る。好適な材料は、シリコーンマクロマー及び親水性モノマーから製造されるシリコーンヒドロゲルを含むが、これらに限定されない。
【0105】
装置
ここで
図5を参照すると、自動装置510の実施形態500が、1つ又は2つ以上のインサート514の移送インタフェース511を有するものとして示されている。例示されるように、それぞれがインサート514と結合している多数の成形型部品が、パレット512上に収容され、媒体移送インタフェース511に置かれている。諸実施形態は、剛性インサート514を個別に配置する単一のインタフェース、又は剛性インサート514を複数の成形型部品内に、及び一部の実施形態ではそれぞれの成形型に、同時に配置する複数のインタフェース(不図示)を含み得る。
【0106】
一部の実施形態の別の態様は、眼用レンズの本体がこれらの構成要素の周囲において成形されている間に、剛性インサート514を支持するための装置を含む。保持点は、眼用レンズ本体を形成するものと同種の重合材料によって固定してよい。
【0107】
結論
本発明は、上述したように、及び添付の請求項によって更に定義されるように、眼の特定の乱視特性を矯正するように調整されてよい剛性インサートを封入する眼用レンズの形成方法、及びこのような方法を実装する装置、並びに剛性インサートを有して形成される眼用レンズを提供する。
【0108】
〔実施の態様〕
(1) 剛性インサートを有する眼用レンズの形成方法であって、前記方法は、
前記前方湾曲成形型部品に反応性モノマー混合物を前投入する工程と、
前記反応性モノマー混合物上に前記剛性インサートを配置する工程と、
前記剛性インサートを前記前方湾曲成形型に近接して固定保持するべく、前記反応性モノマー混合物を予備硬化させる工程であって、前記予備硬化により前方湾曲アセンブリを形成する、工程と、
前記前方湾曲アセンブリに前記反応性モノマー混合物を後投入する工程であって、前記前投入の量と前記後投入の量とで前記剛性インサートを封入することができる、工程と、
前記前方湾曲アセンブリに近接して前記後方湾曲成形型部品を配置する工程であって、前記配置により前方湾曲及び後方湾曲アセンブリを形成する、工程と、
前記眼用レンズを形成するべく、前記反応性モノマー混合物を硬化させる工程と、
前記前方湾曲及び後方湾曲アセンブリを離型する工程と、
前記離型された前方湾曲及び後方湾曲アセンブリから前記眼用レンズを取り出す工程と、
前記眼用レンズを水和させる工程と、
を含む、方法。
(2) 前記剛性インサートの前記表面が接着促進層を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記剛性インサート、前記反応性モノマー混合物、前記前方湾曲成形型、及び前記後方湾曲成形型のうちの少なくとも1つを脱気する工程であって、前記脱気により、レンズ欠陥を生じる可能性のあるガスを除去する、工程を追加的に含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記後方湾曲成形型を前記前方湾曲アセンブリに近接して固定保持するべく、前記反応性モノマー混合物を予備硬化させる工程を追加的に含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記前方湾曲アセンブリを形成する前記工程が自動デバイスによって実行される、実施態様1に記載の方法。
【0109】
(6) 前記重合された反応性モノマー混合物がヒドロゲルを含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記ヒドロゲルがシリコーンヒドロゲルを含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 剛性インサートを有する複数の眼用レンズが前記パレット上で同時に形成される、実施態様4に記載の方法。
(9) 前記剛性インサートが乱視を矯正する能力を有する、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記剛性インサートが熱成形材料を含む、実施態様9に記載の方法。
【0110】
(11) 前記反応性モノマー混合物に安定化機構を付加する工程であって、前記安定化機構は前記眼用レンズを眼上において方向付ける能力を有する、工程と、
前記安定化機構を前記剛性インサートと位置合わせする工程であって、前記位置合わせは、前記眼用レンズが前記眼上において方向が定まると、前記乱視矯正を可能にする、工程と、
を更に含む、実施態様9に記載の方法。
(12) 前記剛性インサートが前記安定化機構を含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記水和が、
前記眼用レンズを、およそ0.45%のホウ酸ナトリウムを含む溶液中に約50℃の温度で少なくとも1時間浸す方法工程を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(14) 前記安定化機構が、前記反応性モノマー混合物とは異なる膨張率(swellable index)を含む注入材料である、実施態様11に記載の方法。
(15) 前記安定化機構の前記付加により、前記眼用レンズの前方湾曲表面を変化させる、実施態様11に記載の方法。
【0111】
(16) 前記安定化機構の前記付加により、前記眼用レンズに質量を付加し、前記質量は、前記眼用レンズを前記眼上において方向付けるのに十分である、実施態様11に記載の方法。
(17) 前記安定化機構が視覚的な方向付けの手がかりを含み、前記視覚的な方向付けの手がかりは可視の彩色又は標示を含む、実施態様11に記載の方法。