(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリアミドが、PA6、PA11、PA12、PA6/12、PA6.12、PA6.10、PA10.10、PA10.12、PA6.6、PA8、PA4およびPA4.6、ならびにこれらのポリマーのブレンドから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の他の特徴、態様、主題および利点は、以下の説明および実施例を読むとさらにより明確になる。
【0015】
さらに、「aとbとの間(between a and b)」という表現によって示される値の範囲は、aを超えてb未満(即ち限度aおよびbは排除される。)の値の範囲を表す一方で、「aからb(from a to b)」という表現によって示される値の範囲は、aからbまでの(即ち厳密な限度aおよびbを含む。)値の範囲を示す。
【0016】
本発明の趣旨上、用語「粒子」および「粉末」は、互いに差別なく使用され、ポリマーの形態を示す。用語「粒子」は、個別化された様式でのポリマーの形態を示すために使用され、用語「粉末」は、一組のポリマー粒子を示すために使用される。
【0017】
本発明によるポリマー粒子は、固体状態である。
【0018】
架橋方法
本発明は、1つ以上の不安定水素官能基を有する粒子形態のポリマーの表面架橋のための方法に関し、ポリマーの不安定水素官能基と反応できる少なくとも2つの官能基を含む架橋剤を用いる工程を含み、この架橋方法は、ポリマーの融点より低い温度で行われる。
【0019】
粒子
本発明による架橋方法のための原料は、1つ以上の不安定水素官能基を有するポリマーである。
【0020】
用語「不安定水素官能基」は、本発明によれば、水素原子の離脱の後に共有結合を形成できる官能基を意味することが意図される。
【0021】
故に、例えば触媒によって生じたいずれかの可能性としての酸−塩基反応の後、不安定水素官能基は、求核性になり、そして架橋剤の求電子性官能基と反応して、結果として共有結合を形成する。
【0022】
こうした官能基の例として、ヒドロキシル(−OH)、一級アミン(−NH
2)または二級アミン(−NHR)、一級アミド(−CONH−)、尿素(−NHCONH−)またはウレタン(−NHCOO−)基、またはこの他にチオール(−SH)基を挙げることができる。
【0023】
本発明による1つ以上の不安定水素官能基を有するポリマーは、好ましくは1つ以上のアミド官能基を含むポリマー、特にポリアミドおよびポリアミド−イミド、ポリウレタン、ポリアミンならびにこれらのポリマーのブレンドから選択できる。
【0024】
特に好ましくは、本発明による1つ以上の不安定水素官能基を有するポリマーは、ポリアミドおよびポリアミド−イミドならびにこれらのブレンドから選択され;この場合不安定水素官能基はアミド官能基である。ポリアミドは特に好ましい。
【0025】
本発明による特に好ましいポリアミドは、ラクタム、アミノ酸または二酸およびジアミンの重縮合によってまたはアニオン性重合によって得られるポリアミドから選択できる。
【0026】
本発明の趣旨上、用語「ポリアミド」は、ホモポリアミド、即ち単一タイプのモノマーから得られたポリアミド、またはコポリアミド、即ち幾つかのタイプの異なるモノマーから得られたポリアミドを意味することが意図される。
【0027】
ポリアミドを構成する繰り返しユニットは、アミノ酸、ラクタムおよび式:(Caジアミン).(Cb二酸)に対応するユニットから誘導されるユニットから選択でき、aはジアミンの炭素原子の数を表し、bは二酸の炭素原子の数を表し、aおよびbそれぞれは4から36の範囲である。
【0028】
ユニットがアミノ酸から誘導されるユニットを表す場合には、ユニットは9−アミノノナン酸(A=9)、10−アミノデカン酸(A=10)、12−アミノドデカン酸(A=12)および11−アミノウンデカン酸(A=11)ならびにこの誘導体、特にN−ヘプチル−11−アミノウンデカン酸から選択できる。
【0029】
ユニットがラクタムから誘導されるユニットを表す場合には、ユニットは、ピロリジノン、2−ピペリジノン、カプロラクタム(A=6)、エナントラクタム、カプリロラクタム、ペラルゴラクタム、デカノラクタム、ウンデカノラクタムおよびラウリルラクタム(A=12)から選択できる。
【0030】
ユニットが式:(Caジアミン)(Cb二酸)に対応するユニットから誘導されるユニットを表す場合には、(Caジアミン)ユニットは、線状または分岐状脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンおよびアルキル芳香族ジアミンから選択される。
【0031】
ジアミンが脂肪族であり、且つ線状で、式:H
2N−(CH
2)
a−NH
2を有する場合には、(Caジアミン)モノマーは、優先的に、ブタンジアミン(a=4)、ペンタンジアミン(a=5)、ヘキサンジアミン(a=6)、ヘプタンジアミン(a=7)、オクタンジアミン(a=8)、ノナンジアミン(a=9)、デカンジアミン(a=10)、ウンデカンジアミン(a=11)、ドデカンジアミン(a=12)、トリデカンジアミン(a=13)、テトラデカンジアミン(a=14)、ヘキサデカンジアミン(a=16)、オクタデカンジアミン(a=18)、オクタデセンジアミン(a=18)、エイコサンジアミン(a=20)、ドコサンジアミン(a=22)および脂肪酸から得られるジアミンから選択される。
【0032】
ジアミンが脂肪族であり、且つ分岐状である場合には、ジアミンは、主鎖に1つ以上のメチルまたはエチル置換基を含むことができる。例えば、(Caジアミン)モノマーは、有利なことには、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、1,3−ジアミノペンタン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンおよび2−メチル−1,8−オクタンジアミンから選択できる。
【0033】
(Caジアミン)モノマーが脂環式である場合には、これは優先的に、ビス(3,5−ジアルキル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5−ジアルキル−4−アミノシクロヘキシル)エタン、ビス(3,5−ジアルキル−4−アミノシクロ−ヘキシル)プロパン、ビス(3,5−ジアルキル−4−アミノシクロヘキシル)ブタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン(BMACMまたはMACM)、p−ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)およびイソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)(PACP)から選択される。これはまた、以下の炭素系骨格:ノルボルニルメタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジ(メチルシクロヘキシル)およびジ(メチルシクロヘキシル)プロパンを含むことができる。これらの脂環式ジアミンの非包括的リストは、刊行物「Cycloaliphatic Amines」(Encyclopedia of Chemical Technology,Kirk−Othmer,4th Edition(1992),pp.386−405)に記載されている。
【0034】
(Caジアミン)モノマーがアルキル芳香族である場合には、これは、優先的に、1,3−キシリレンジアミンおよび1,4−キシリレンジアミンから選択される。
【0035】
ユニットが式:(Caジアミン)(Cb二酸)に対応するユニットである場合には、(Cb二酸)ユニットは、線状または分岐状脂肪族二酸、脂環式二酸および芳香族二酸から選択される。
【0036】
(Cb二酸)モノマーが脂肪族であり、且つ線状である場合には、これは、コハク酸(b=4)、ペンタン二酸(b=5)、アジピン酸(b=6)、ヘプタン二酸(b=7)、オクタン二酸(b=8)、アゼライン酸(b=9)、セバシン酸(b=10)、ウンデカン二酸(b=11)、ドデカン二酸(b=12)、ブラシル酸(b=13)、テトラデカン二酸(b=14)、ヘキサデカン二酸(b=16)、オクタデカン二酸(b=18)、オクタデセン二酸(b=18)、エイコサン二酸(b=20)、ドコサン二酸(b=22)および36個の炭素を含有する脂肪酸ダイマーから選択される。
【0037】
上述された脂肪酸ダイマーは、文献EP0471566に特に記載されるように、炭化水素系、長鎖不飽和一塩基性脂肪酸(例えばリノール酸およびオレイン酸)のオリゴマー化または重合によって得られる二量化脂肪酸である。
【0038】
二酸が脂環式である場合には、二酸は、以下の炭素系骨格を含むことができる:ノルボルニルメタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジ(メチルシクロヘキシル)およびジ(メチルシクロヘキシル)プロパン。
【0039】
二酸が芳香族である場合には、二酸は、優先的に、テレフタル酸(Tと示す。)、イソフタル酸(Iと示す。)およびナフタレン二酸から選択される。
【0040】
ポリアミドは、結晶性または非晶質であってもよく、透明であってもよい。
【0041】
好ましくは、本発明によるポリアミドは、脂肪族ポリアミド、より詳細にはユニットの鎖長さが4から18、より詳細には4から12の範囲であるポリアミドから選択される。より優先的には、本発明によるポリアミドは、PA6、PA11、PA12、PA6/12、PA6.12、PA6.6、PA8、PA4、PA4.6、PA10.10、PA6.10およびPA10.12、ならびにこれらのポリマーのブレンドから選択される。好ましくは、ポリアミドがPA12である。
【0042】
本発明による方法の別の好ましい実施形態によれば、本発明による1つ以上の不安定水素官能基を有するポリマーは、ポリアミド−イミドであり、この場合不安定水素官能基はアミド官能基である。
【0043】
Solvay社によって名称Torlon(R)として販売されるポリアミド−イミドが好適である。
【0044】
平均直径
本発明によるポリマーは、粒子の形態であり、これは形状が球体、擬球体または角形であってもよい。一般に、粒子の粒径は、この粒子の製造方法に依存する。
【0045】
ISO標準13319に従って測定される粒子の平均直径は、1から200μm、特に1と200μmとの間、好ましくは1から150μm、より詳細には1と150μmとの間の範囲であることができる。
【0046】
有利なことには、粒子の平均直径は、1から100μm、好ましくは5から100μm、より詳細には5から60μm、さらにより詳細には5から20μmの範囲である。
【0047】
好ましくは、使用される粒子形態のポリマーは、Arkema Franceによって販売されるOrgasol(R)レンジに属する。
【0048】
架橋剤
本発明による架橋剤は、ポリマーの不安定水素官能基と反応できる少なくとも2つの官能基を含む。
【0049】
換言すれば、架橋剤は、ポリマーの不安定水素官能基、即ち求核性の官能基と反応できる少なくとも2つの求電子性の官能基を含む。
【0050】
故に本発明による多官能性架橋剤は、ポリマーの種々の巨大分子鎖間に「ブリッジ」を形成することができ、これらは共有結合によって必然的に構成される。
【0051】
ポリマーの官能基と反応できる少なくとも2つの官能基を含む架橋剤は、好ましくは以下の官能基:イソシアネート、カルボジイミド、エポキシ、アシルラクタム、オキサゾリンおよびこの異性体、オキサジンおよびこの異性体ならびにPCl
3を有する化合物である。
【0052】
好ましくは架橋剤が、イソシアネート官能基を有し;これらはポリイソシアネートである。
【0053】
本発明による特に好ましい多官能性架橋剤として、特にキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネートおよびアルキレンジイソシアネート、より優先的にはヘキサメチレンジイソシアネート(HMDIと示す。)を挙げることができる。
【0054】
例として、以下の図(I)は、ポリアミド鎖と多官能性架橋剤、この場合にはヘキサメチレンジイソシアネートとの間の架橋反応を示す。
【0055】
触媒作用工程では、ポリマーの不安定水素官能基の1つから生じるアミデートの生成をもたらした。
【0057】
本発明による方法の1つの実施形態によれば、本発明による1つ以上の不安定水素官能基を有するポリマーは、既に架橋されているが、既に使用された架橋剤と同一または異なる架橋剤と反応できる不安定水素官能基を依然として含むポリマーであってもよい。
【0058】
故に架橋剤の選択は、所望の最終材料の物理化学的特性に影響し得る。
【0059】
本発明による方法に使用される架橋剤は、本発明による1つ以上の不安定水素官能基を有するポリマーを構成するモノマーの総モル数に対して0.1から15モル%、好ましくは0.5から10モル%の含有量であってもよい。
【0060】
添加工程
本発明による1つ以上の不安定水素官能基を有するポリマーの粉末への架橋剤の添加工程は、以下:
(1)架橋剤が液体であるまたは溶媒中にある場合には粒子上に直接架橋剤を含浸させ、次いで反応を開始させるために加熱させるか;
(2)または架橋剤の溶媒中の固体/液体分散液中にポリマー粉末を入れ、ここに架橋反応を開始するための反応温度で架橋剤を添加させるか;
のいずれかの方法で行うことができる。
【0061】
当業者は、架橋剤のための適切な溶媒を選択できる。例えば、HMDIのためのパラフィン系炭化水素画分を特に挙げることができる。
【0062】
好ましくは、本発明による方法は、ラテックスを使用せず、ラテックスをもたらさない。
【0063】
反応は、ポリマーの溶融より低い温度で行われなければならず、このため粉末は凝集しない。
【0064】
反応種生成工程
ポリマーの反応種の生成の先行工程が必要とされる場合がある。反応種、即ち求核性種を生じさせるために、ポリマーから不安定水素を引き抜くのに十分強い塩基を使用できる。
【0065】
これらの塩基は、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウム、ナトリウムメトキシドおよび/またはナトリウムエトキシドから選択できる。
【0066】
塩基の量は、一般に、100モルのポリマーに対して0.1から3モルの範囲であることができ、好ましくは100モルのポリマーに対して0.1と3モルとの間である。
【0067】
ポリマー粒子の表面架橋のための本方法は、部分的に架橋されたポリマーの粒子をもたらす。実際、ポリマー粒子は、この方法で使用される架橋剤の含有量に従って架橋ポリマーの1つ以上の領域を含むことになる。
【0068】
より詳細には、架橋ポリマーの領域は、導入された架橋剤の含有量および架橋反応の期間に依存して、多かれ少なかれ厚さのある層であり、粒子の表面上にあり、即ち本発明による1つ以上の不安定水素官能基を有するポリマーのコア上にある。この場合、層は、架橋ポリマーの組成勾配であり、これはコアからの距離が増大するにつれて架橋ノードに関して次第に集中する。
【0069】
本発明による方法の1つの実施形態によれば、1つ以上の不安定水素官能基を有するポリマーはポリアミドであり、架橋剤はポリイソシアネートである。この場合、方法は、ポリアミドコアおよびポリアミド−イミドシェルを有するコア−シェル構造の粉末をもたらし、これはコアからの距離が増大するにつれてイミド官能基に関して次第に集中する。
【0070】
本発明による方法の別の実施形態によれば、1つ以上の不安定水素官能基を有するポリマーはポリアミド−イミドであり、架橋剤はポリイソシアネートである。この場合方法は、ポリアミド−イミドコアおよびポリアミド−イミドシェルを有するコア−シェル構造の粉末をもたらし、これはコアからの距離が増大するにつれてイミド官能基に関して次第に集中する。
【0071】
この方法によって提供される利点は、架橋ポリマーの層の厚さおよび架橋剤の性質によって巨大分子鎖間の「ブリッジ」の性質を制御できることである。
【0072】
重合方法
本発明による架橋方法は、「最終」製品としてのポリマー粉末において行うことができる。これはまた重合方法に取り入れることができる。
【0073】
本発明によるポリマーがポリアミドである場合には、これは、例えば、重縮合方法またはこの他にアニオン性重合方法の最終工程の1つを構成できる。
【0074】
本発明の主題はまた、粉末形態のポリマーの重合のための方法であり、以下の連続工程:
重合工程、
先行工程において得られた粉末形態のポリマーの上記で定義されるような架橋工程および
反応媒体の中和の任意工程
を含む。
【0075】
好ましくは、重合工程が、触媒の存在下および活性化剤の存在下、溶媒中の溶液のアニオン性重合の工程である。
【0076】
好ましくは、粉末がポリアミド粉末である。より詳細には、方法は、アミドの重合、例えばラクタム6、ラクタム12またはこれらの混合物の重合を対象とする。重合は、触媒の存在下および活性化剤の存在下で行われる。
【0077】
PA粒子を得るために行われるアニオン性重合に関して、重合は溶媒中で行われる。
【0078】
溶媒
使用される溶媒はモノマーを溶解するが、重合中に生成するポリマー粒子を溶解しない。溶媒の例は特許EP192515に記載されている。有利なことには、溶媒がパラフィン系炭化水素画分であり、この沸点の範囲は、120から170℃であり、有利なことには120と170℃との間、好ましくは140から170℃、有利なことには140と170℃との間である。溶媒は、開始温度、即ち重合が始まる温度においてモノマーで過飽和されてもよい。
【0079】
モノマーで過飽和されない溶媒中で重合を行うこともできる。この場合には、反応媒体は、開始温度において過飽和から離れた濃度にて溶媒中に溶解されるモノマーを含有する。
【0080】
触媒
触媒は、ラクタムのアニオン性重合のための通常の触媒から選択される。これは、ラクタムの場合には、ラクタムとの反応の後にラクタメートをもたらす程度に十分強い塩基である。幾つかの触媒の組み合わせが想定できる。非限定例としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウム、ナトリウムメトキシドおよび/またはナトリウムエトキシドを挙げることができる。導入された触媒の量は、一般にモノマー100モルに対して0.5から3モルの範囲であることができ、有利なことには、モノマー100モルに対して0.5と3モルとの間である。
【0081】
活性化剤
重合をもたらすおよび/または促進することが役割である活性化剤も添加される。活性化剤は、ラクタム−N−カルボキシアニリド、(モノ)イソシアネート、ポリイソシアネート、カルボジイミド、シアンアミド、アシルラクタムおよびアシルカルバメート、トリアジン、尿素、N−置換イミド、三塩化リンおよびエステルから選択される。これはまた、場合により幾つかの活性化剤の混合物であることもできる。活性化剤はまた、場合により、例えばラクタムとアルキルイソシアネートとを反応させてアシルラクタムを得ることによって、インサイチュで生成することができる。触媒/活性化剤のモル比は、0.2から2の範囲、有利なことには0.2と2との間、好ましくは0.8から1.2、有利なことには0.8と1.2との間である。
【0082】
反応媒体には、いずれかのタイプのフィラー(顔料、染料、カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)、または添加剤(酸化防止剤、UV防止剤、可塑剤など)を添加できるが、ただしこれらの化合物はすべて、完全に乾燥しており、反応媒体に対して不活性である。
【0083】
重合
アニオン性重合は、連続またはこの他に好ましくはバッチで行われる。バッチで行われる場合には、溶媒が導入され、次いで同時にまたは連続的にモノマー、触媒、活性化剤が導入される。まず溶媒およびモノマーを導入し、次いで例えば共沸蒸留を用いて微量の水を除去し、次いで媒体が無水物になったら触媒を添加することが推奨される。固化が生じるのを防止するためにまたは重合の制御の損失を防止するために、一度ではなく、漸進的またはこの他に所与の導入割合にて活性化剤を導入することが有利な場合がある。重合は、大気圧またはこの他にわずかに大きな圧力(熱溶媒の分圧)下、20℃から溶媒の沸点までの範囲の温度にて、行われる。
【0084】
開始温度およびラクタムの重合温度は、一般に70から150℃の範囲であり、有利なことには70と150℃との間、好ましくは80から130℃の範囲であり、有利なことには80と130℃との間であり、有利なことには<120℃で>90℃である。
【0085】
次いで架橋反応が、上記で定義されるような架橋剤を添加することによって行われる。
【0086】
最終的に、重合は中和工程で終了する。
【0087】
粉末粒子
本発明による粉末粒子は、上記で記載されるような架橋方法によって得られる。本発明による粒子はまた、上記で記載される架橋方法によって得られることができる。
【0088】
本発明によるポリマー粉末の粒子は、
上記で定義されるような1つ以上の不安定水素官能基を有するポリマーからなる1つ以上の領域および
上記で定義されるような架橋剤で架橋されたポリマーを含む1つ以上の領域
を含む。
【0089】
好ましくは、粉末粒子が、
上記で定義されるような1つ以上の不安定水素官能基を有するポリマーからなるコアおよび
上記で定義されるような架橋剤で架橋されたポリマーを含むコア上にある層
を含む。
【0090】
架橋ポリマーの層は、架橋ポリマーの組成の勾配であり、コアからの距離が増大するにつれて、架橋ノードに関して次第に集中する。
【0091】
第1の実施形態によれば、架橋ポリマーの層は、空気と接触することが意図される外部層であることができる。この実施形態による粒子は、コア−シェル構造を有する。
【0092】
第2の実施形態によれば、架橋ポリマーの層は、多層構造に挿入されることが意図される中間層を構成できる。架橋層は、場合により架橋されたポリマーの2つの層間に存在することができる。
【0093】
第3の実施形態によれば、粒子は、異なる架橋剤で架橋されたポリマーの幾つかの層を含むことができる。
【0094】
本発明による粒子の形状は、1つ以上の不安定水素官能基を有する初期ポリマーの粒子の形状に依存する。
【0095】
架橋ポリマーの層の厚さは、架橋方法および架橋工程の期間の間に導入される架橋剤の量に依存することになる。
【0096】
本発明による粒子の粒径は、1つ以上の不安定水素官能基を有する初期ポリマーの粒子の粒径に依存する。
【0097】
本発明による架橋方法の利点は、初期試薬である粉末の粒径分布、即ち平均サイズおよび狭い分布を保持することである。さらに、溶融時には、本発明による粉末の粒子は、初期粒子の形状を保持する。
【0098】
この特性は、特に複合体分野において強く求められている。ターゲット付近にできる限り多くの粒子を有するおよび非常に大きな粒子がほとんどないまたはさらには全くないことを必要とし、結果としてこれらは複合体において炭素繊維のシート間のスペーサとしての役割を果たすことができる。さらに、初期粉末の表面多孔性が変化しないままである。初期ポリマーが結晶性である場合には、結晶性も保持されることが観察された。
【0099】
1つ以上の不安定水素官能基を有するポリマーおよび架橋剤は、架橋方法に関して上記で記載される通りである。
【0100】
本発明の1つの特定実施形態によれば、1つ以上の不安定水素官能基を有するポリマーは、ポリアミドであり、架橋剤はポリイソシアネートであり;コア−シェル構造の粒子は、ポリアミドコアおよびポリアミド−イミドシェルを有することになり、これはコアからの距離が増大するにつれてイミド官能基に関して次第に集中する。
【0101】
1つの好ましい実施形態によれば、1つ以上の不安定水素官能基を有するポリマーは、Orgasol(R)製品レンジに属し、架橋剤はポリイソシアネートである。
【0102】
配合
本発明はまた、上記で定義されるような粉末を含む組成物に関する。好ましくは、組成物が熱硬化性組成物である。
【0103】
得られた粉末は、そのまま使用でき、無水物タイプまたは水中油型(O/W)または油中水型(W/O)エマルションの形態の組成物に導入される。
【0104】
好ましくは、本発明による組成物は、上記で定義されたような粉末を含む。
【0105】
組成物が化粧品分野に使用される場合には、組成物は、化粧品として許容される媒体を含み、この媒体は水または1つ以上のアルコールおよびこれらの混合物であってもよい。
【0106】
使用
本発明は、上記で定義されるような粉末の、複合体、構造接着剤、特に金属、プラスチック、木材、ガラス、紙またはゴム基材に適用できる粉末塗料または液体塗料に基づく基材コーティングおよび転写紙における、特にフィラーまたは補強材としての使用に関する。
【0107】
本発明はまた、レーザービーム、赤外放射線またはUV放射線から選択される放射線によってもたらされる溶融による粉末の凝集によって対象物を製造するための、上記で定義されるような粉末の使用に関する。
【0108】
最後に、本発明は、化粧品組成物における添加剤としての、上記で定義されるような粉末の使用に関する。
【0109】
以下の実施例は、本発明を例示するのに役立つが、本来限定されるものではない。
【実施例】
【0110】
例示された粉末の物理化学的特徴は、以下の方法に従って評価された。
平均直径の測定:
例示された粉末の粒子の平均
直径は、ISO標準13319に従って測定される。
【0111】
熱特徴の測定:
粉末の分析は、ISO標準11357−3「プラスチック:示差走査熱量分析(DSC)パート3:溶融および結晶化の温度およびエンタルピーの決定」に従って行われる。
【0112】
溶融エンタルピーの測定:
溶融エンタルピーは、ポリマーの結晶化度に正比例する。故に2つの製品間の溶融エンタルピーの比較により、これらの結晶化度を比較することができる。
【0113】
溶融エンタルピーは、ISO標準11357−3に従ってDSCによって測定される。
【0114】
溶解度テスト:
溶解度は、ヘキサフルオロイソプロパノールのリットルあたり1gの粉末を導入することによって測定される。これらの混合物は、非架橋ポリマー鎖を溶解するために24時間周囲温度で維持される。
【0115】
次いでこれらの溶液は、不溶性部分を除去するために濾過され、次いでWaters Alliance 2695装置を用いてSECによって分析される。Waters 2414 RID検出器が使用される。次いで屈折率応答係数K(RI)が測定される。
【0116】
1.架橋ポリアミド12粉末の合成
2800mlの溶媒、次いで連続的に899gのラクタム12、14.4gのEBS(エチレンビスステアルアミド)および73.0gのOrgasol(R)2002 UD NAT1(PA12粉末)を窒素下で維持された反応器中に入れる。300rpmにて撹拌を開始した後、110℃まで徐々に加熱し、次いで存在し得る微量の水を共沸捕捉するために280mlの溶媒を真空下で留去する。
【0117】
大気圧に戻した後、アニオン性触媒:油中60%純度での2.2gの水素化ナトリウムを次いで、窒素下で迅速に導入し、窒素下、105℃にて撹拌を700rpmまで増大させる。
【0118】
次いでこの温度を30分間維持する。計量ポンプによって、選択された活性化剤、即ちステアリルイソシアネート(38.3gを溶媒と合わせて153.0gまでにする)を連続的に以下のプログラム:3時間で51g/hに従って反応媒体に注入し、次いで温度を2時間で120℃に上昇させる。
【0119】
得られた粉末を表面架橋する工程を以下のように行う。撹拌しながら120℃にて、ヘキサメチレンジイソシアネートの溶液:ラクタム12に対して5モル%のHMDIを、3時間で反応媒体に添加し、次いで混合物をすべての反応を終了させるためにさらに2時間放置する。
【0120】
次いで粉末を濾過し、H
3PO
4水溶液で中和させるために乾燥する。次いで中和された粉末を再び乾燥させる。
【0121】
架橋の効率を検証するために、粉末を90℃にてm−クレゾールに含浸する;不溶性粒子が生じ、これがポリアミドの良好な架橋を特徴付ける(Orgasol 2002D Nat1の場合には不溶性材料はない。)。
【0122】
粉末の評価:
2つのタイプの粉末を比較した:
架橋されていないOrgasol(R)2002 D NAT1と呼ばれる市販の粉末;この粉末は比較粉末Aを構成する。これは、先に記載された方法に従って調製された粉末に対応するが、架橋工程はない、
実施例1による方法を用いて得られる本発明によるBと示される粉末。
【0123】
溶解度テスト:
屈折率応答係数K(RI)を測定する。K(RI)は、HFIP中のPA12の濃度に正比例する。201の係数が、Orgasol(R)2002 D NAT1に関して測定され、45の係数が、本発明の粉末に関して測定される。
【0124】
結果を以下の表1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
これらの結果は、初期粉末の粒径が保持されているという事実を実証する。
【0127】
溶融エンタルピーに関する試験は、粉末の架橋が材料の結晶化度をいかなる方法によっても変更しないことを示す。
【0128】
粉末の溶解度に関する結果は、粉末の架橋が実際行われたことを示す。さらに、この試験は、本発明による粉末Bの溶媒耐性を実証する。
【0129】
2.架橋PA6粉末の合成
2452mlの溶媒、次いで連続的に919.3gのラクタム6(カプロラクタム)、4.7gのEBS(エチレンビスステアルアミド)および10.5gのAerosyl(R)R972を窒素下で維持された反応器中に入れる。300rpmにて撹拌を開始した後、110℃まで徐々に加熱し、次いで294mlの溶媒を、存在し得る微量の水を共沸捕捉するために真空下で留去する。
【0130】
大気圧に戻した後、アニオン性触媒:油中60%純度での6.3gの水素化ナトリウムを次いで、窒素下で迅速に導入し、窒素下、105℃にて撹拌を900rpmまで撹拌を増大させる。次いでこの温度を30分間維持する。計量ポンプによって、選択された活性化剤、即ちステアリルイソシアネート(27.3gを溶媒と合わせて147.1gにする)を連続的に以下のプログラム:3時間で49g/hに従って反応媒体に注入し、次いで反応を120℃でさらに2時間行う。
【0131】
得られた粉末を表面架橋する工程を以下のように行う。撹拌しながら120℃にて、ヘキサメチレンジイソシアネートの溶液:ラクタム6に対して5モル%のHMDIを、3時間で反応媒体に添加し、次いで得られた混合物をすべての反応性官能基が消費されるようにさらに2時間放置する。
【0132】
次いで粉末を濾過し、H
3PO
4水溶液で中和させるために乾燥する。次いで中和された粉末を再び乾燥させる。
【0133】
粉末の評価:
2つのタイプの粉末を比較した:
架橋されていないOrgasol(R)1002 D Nat1と呼ばれる市販の粉末;この粉末は比較粉末Cを構成する。これは、先に記載された方法に従って調製された粉末に対応するが、架橋工程はない、
実施例2による方法を用いて得られる本発明によるDと示される粉末。
【0134】
溶解度テスト
粉末を90℃にてm−クレゾールに含浸させる。不溶性粒子が生じ、これがポリアミドDの良好な架橋を特徴付ける。比較粉末Cの場合、不溶性材料は生じない。
【0135】
屈折率応答係数K(RI)を測定する。K(RI)は、HFIP中のPA6の濃度に正比例する。209の係数が、比較粉末Cに関して測定され、82の係数が、本発明による粉末Dに関して測定される。
【0136】
結果を以下の表2に示す。
【0137】
【表2】
【0138】
3.架橋ポリアミド−イミド粉末の合成
ポリアミドの合成:
2800mlの溶媒、次いで連続的に919.3gのラクタム12(ラウリルラクタム)、14.7gのEBS(エチレンビスステアルアミド)および1.84gのSipernat(R)320DSを窒素下に維持された反応器に入れる。300rpmにて撹拌を開始した後、110℃まで徐々に加熱し、次いで存在し得る微量の水を共沸捕捉するために280mlの溶媒を真空下で留去する。
【0139】
大気圧に戻した後、アニオン性触媒:油中60%純度での2.36gの水素化ナトリウムを次いで、窒素下で迅速に導入し、窒素下、105℃にて撹拌を800rpmまで撹拌を増大させる。次いでこの温度を30分間維持する。計量ポンプによって、選択された活性化剤、即ちステアリルイソシアネート(27.3gを溶媒と合わせて147.1gにする)を連続的に以下のプログラム:3時間で49g/hに従って反応媒体に注入し、次いで温度を2時間で120℃に上昇させる。
【0140】
ポリアミド−イミドの合成:
ポリアミド−イミド粉末を以下のように得る。撹拌を伴って120℃にて、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の溶液:ラクタム12に対して0.1モル%のH12MDIを、3時間で反応媒体に添加し、次いで得られた混合物を架橋剤のすべての官能基が消費されるようにさらに2時間放置する。比較粉末Eを構成する、90℃でm−クレゾール中に完全に可溶性のポリアミド−イミド粉末を、次いで得る。
【0141】
ポリアミド−イミドの架橋:
得られた粉末を表面架橋する工程を以下のように行う。撹拌しながら120℃にて、ヘキサメチレンジイソシアネートの溶液:ラクタム12に対して4.9モル%のHMDIを、3時間で反応媒体に添加し、次いで得られた混合物をすべての反応性官能基が消費されるようにさらに2時間放置する。
【0142】
次いで粉末を濾過し、H
3PO
4水溶液で中和させるために乾燥する。次いで中和された粉末を再び乾燥させる。
【0143】
粉末の評価:
2つのタイプの粉末を比較した:
上記で記載されるポリアミド−イミドの合成から得られる比較粉末E;
実施例3による方法を用いて得られる本発明によるFと示される粉末。
【0144】
溶解度テスト
粉末を90℃にてm−クレゾールに含浸させる。不溶性粒子が生じ、これがポリアミド−イミドFの良好な架橋を特徴付ける。
【0145】
結果を以下の表3に示す。
【0146】
【表3】
【0147】
これらの実施例は、使用されたポリマーのタイプにかかわらず、初期粉末の粒径および材料の結晶化度を保持することを示す。