特許第6426197号(P6426197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6426197医療機器内の1つ以上のベクトルの選択を容易にするためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6426197
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】医療機器内の1つ以上のベクトルの選択を容易にするためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/368 20060101AFI20181112BHJP
【FI】
   A61N1/368
【請求項の数】7
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-559634(P2016-559634)
(86)(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公表番号】特表2017-512584(P2017-512584A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(86)【国際出願番号】US2015023128
(87)【国際公開番号】WO2015148995
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2016年9月28日
(31)【優先権主張番号】61/971,653
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/670,075
(32)【優先日】2015年3月26日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505003528
【氏名又は名称】カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ロックワイラー、ホリー イー.
(72)【発明者】
【氏名】サハ、スニパ
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン、キース エル.
(72)【発明者】
【氏名】ユー、インホン
(72)【発明者】
【氏名】クルーガー、ジョエル エイ.
【審査官】 白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0018872(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0101543(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0005742(US,A1)
【文献】 特表2012−531288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/368
A61N 1/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上のベクトルを使用して患者の心臓を刺激することができる医療システムであって、
3つ以上の電気刺激電極と、
前記電気刺激電極を介して前記2つ以上のベクトルのそれぞれを使用して電気的刺激パルスを供給するように構成されたパルス発生器と、
前記パルス発生器に接続されたコントローラであって、
前記パルス発生器に第1の電圧での電気的刺激パルスを第1組の2つ以上のベクトルの内の各ベクトルへ供給させ、
前記第1の電圧で供給した前記電気的刺激パルスが前記第1組の2つ以上のベクトル内の前記ベクトルのそれぞれに対して捕捉をもたらしたかどうかを判定し、
前記第1組の2つ以上のベクトルの内の捕捉をもたらしたと判定されたベクトルを第2組のベクトルとして特定し、
前記第2組のベクトルの内の各ベクトルに前記第1の電圧よりも低い第2の電圧で電気的刺激パルスを供給し、
前記第2の電圧で供給した前記電気的刺激パルスが前記第2組のベクトルの内の前記ベクトルのそれぞれに対して捕捉をもたらしたかどうかを判定するように構成されている、コントローラと
を含む、医療システム。
【請求項2】
請求項1に記載の医療システムにおいて、
前記第2組のベクトルの内の各ベクトルに対して、前記コントローラは、前記第2の電圧から電気的刺激パルスの電圧を下げ、前記第2の電圧よりも低い電圧で前記第2組のベクトルの内の各ベクトルに電気的刺激パルスを供給して、供給した前記電気的刺激パルスが捕捉をもたらしたかどうかを判定し、捕捉閾値が判定されるまで電圧を下げることと電気的刺激パルスを供給することを繰り返すように構成されている、医療システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の医療システムにおいて、
前記コントローラは、さらに、前記第1の電圧で供給した前記電気的刺激パルスが前記第1組の2つ以上のベクトルの内のいずれかの前記ベクトルに対する捕捉をもたらさない場合は、前記第1の電圧を上げて、前記パルス発生器が前記第1組の2つ以上のベクトル内の各ベクトルに前記第1の電圧で前記電気的刺激パルスを供給するステップに戻るように構成されている、医療システム。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の医療システムにおいて、
前記第1の電圧が1.0〜5.0ボルトである、医療システム。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の医療システムにおいて、
前記第1組の2つ以上のベクトルが前記医療システムの全ての利用可能なベクトルよりも少ない、医療システム。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の医療システムにおいて、
前記コントローラがさらに、前記医療システムの全ての利用可能なベクトルから前記第1組の2つ以上のベクトルを選択するように構成されている、医療システム。
【請求項7】
請求項6に記載の医療システムにおいて、
前記コントローラがさらに、
前記医療システムの前記利用可能なベクトルのそれぞれに対して1つ以上のパラメータを生成し、
前記1つ以上の生成したパラメータを用いて前記医療システムの全ての利用可能なベクトルから前記第1組の2つ以上のベクトルを選択するように構成されている、医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は大略的には埋め込み型医療機器を構成するためのシステムおよび方法に関し、より詳しくは、埋め込み型医療機器によって患者に電気的刺激を供給するための1つ以上のベクトルを評価・選択するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、心臓刺激治療、神経刺激治療、圧受容体刺激治療および/またはその他の形態の電気的刺激治療を含む、患者に対する様々なタイプの電気的刺激治療を提供する医療機器が開発されてきた。いくつかの例では、多数の電極が利用可能であり、電極は電気的活動を検出するためおよび電気的刺激治療を施すために、あるいは電気的活動を検出するためまたは電気的刺激治療を施すためにいくつかの異なる組み合わせで構成されている可能性がある。電気的活動を検出するための電極の異なる組み合わせを用いることにより、異なる検出信号を作成する可能性がある。電気的刺激治療を施すための電極の異なる組み合わせを用いることにより、電気的刺激治療の異なる有効性をもたらす可能性がある。電極の組み合わせはそれぞれ、「ベクトル」と称することができる。いくつかのシステムにおいて、利用可能な「ベクトル」の数は、比較的大きくすることができる。かかるシステムにおいて、電気的刺激治療を検出および施すため、あるいは電気的刺激治療を検出または施すための十分な、または最適のベクトルを選択するために各ベクトルを評価することは時間がかかる可能性があり、いくつかの場合には患者にとって煩わしい作業となる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、大略的には医療機器システム内の複数のベクトルを評価するための、およびいくつかの場合においては、電気的活動を検出するためおよび評価に基づいて電気的刺激治療を施すため、または電気的活動を検出するためまたは評価に基づいて電気的刺激治療を施すために1つ以上のベクトルの選択を支援するための、システムおよび方法に関している。いくつかの場合においては、本開示は心臓の電気的データを検出するためおよび電気的刺激治療を施すため、あるいは心臓の電気的データを検出するためまたは電気的刺激治療を施すために適切なベクトルを効率的に特定するためのシステムおよび方法を提供してもよい。適切なベクトルを特定するために要する時間および労力を削減することにより、埋め込み型医療機器を埋め込むためおよび構成するため、あるいは埋め込むためまたは構成するための処理時間の削減を支援することができ、いくつかの場合においては患者の不快感の削減を支援することができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、マルチベクトル医療システムの1つ以上のベクトルに対する捕捉閾値を判定する方法は、マルチベクトル医療システムの第1組の2つ以上のベクトルの内の各ベクトルに第1の電圧で電気的刺激を供給することと、第1の電圧で供給した電気的刺激が第1組の2つ以上のベクトルの内のベクトルのそれぞれに対して捕捉をもたらしたかどうかを判定することと、を含む。少なくともいくつかの実施形態において、方法はさらに、第1組の2つ以上のベクトルの内の捕捉をもたらすと判定されたベクトルを第2組のベクトルとして特定することと、第2組のベクトルの内の各ベクトルに第1の電圧よりも低い第2の電圧で電気的刺激を供給することと、を含んでいてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、方法は第2の電圧で供給した電気的刺激が第2組のベクトルの内のベクトルのそれぞれに対して捕捉をもたらしたかどうかを判定することを含んでいてもよい。
【0005】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態において、方法はさらに、第2組のベクトルの内の各ベクトルに対して、連続的により低い電圧で電気的刺激を繰り返し供給することと、捕捉閾値が判定されるまで、供給し電気的刺激が捕捉をもたらしたかどうかを各電圧で判定することと、を含んでいてもよい。
【0006】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、第1の電圧はユーザ定義である。
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、第1の電圧はユーザ定義であり、且つユーザディスプレイ上のメニューを介して承認される。
【0007】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、第1の電圧で供給した電気的刺激が第1組の2つ以上のベクトルの内のいずれかのベクトルに対する捕捉をもたらさない場合は、第1の電圧を上げて最初の供給ステップに戻る。
【0008】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、第1の電圧は1.0〜5.0ボルトである。
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、第1の電圧は1.5〜4.5ボルトである。
【0009】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、第1の電圧は2.0〜3.5ボルトである。
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、第1組の2つ以上のベクトルはマルチベクトル医療システムの全ての利用可能なベクトルのサブセットである。
【0010】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、方法はさらに、マルチベクトル医療システムの全ての利用可能なベクトルから第1組の2つ以上のベクトルを選択することを含んでいてもよい。
【0011】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、方法はさらに、マルチベクトル医療システムの利用可能なベクトルのそれぞれに対して1つ以上のパラメータを生成することと、1つ以上の生成したパラメータに、少なくとも部分的に基づいてマルチベクトル医療システムの全ての利用可能なベクトルから第1組の2つ以上のベクトルを選択することと、を含んでいてもよい。
【0012】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、1つ以上のパラメータは、インピーダンス、ディレイ、または横隔刺激値を含む。
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、方法はさらに、第2組のベクトルの内の捕捉をもたらしたと判定されたベクトルを第3組のベクトルとして特定することと、第3組のベクトルの内の各ベクトルに第2の電圧よりも低い第3の電圧で電気的刺激を供給することと、第3の電圧で供給した電気的刺激が第3組のベクトルの内のベクトルのそれぞれに対して捕捉をもたらしたかどうかを判定することと、を含んでいてもよい。
【0013】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、方法はさらに、第3組のベクトルの内の各ベクトルに対して、連続的により低い電圧で電気的刺激を繰り返し供給することと、捕捉閾値が判定されるまで、供給した電気的刺激が捕捉をもたらしたかどうかを各電圧で判定することと、を含んでいてもよい。
【0014】
別の実施形態において、2つ以上のベクトルを使用して患者の心臓を刺激することができる医療システムは、3つ以上の電気刺激電極と、電気刺激電極を介して2つ以上のベクトルのそれぞれを使用して電気的刺激パルスを供給するように構成されたパルス発生器と、パルス発生器に接続されたコントローラと、を含む。少なくともいくつかの実施形態において、コントローラは、パルス発生器に第1の電圧での電気的刺激パルスを第1組の2つ以上のベクトルの内の各ベクトルへ供給させ、第1の電圧で供給された電気的刺激パルスが第1組の2つ以上のベクトルの内のベクトルのそれぞれに対して捕捉をもたらしたかどうかを判定し、第1組の2つ以上のベクトルの内の捕捉をもたらしたと判定されたベクトルを第2組のベクトルとして特定し、第2組のベクトルの内の各ベクトルに第1の電圧よりも低い第2の電圧で電気的刺激を供給し、第2の電圧で供給した電気的刺激が第2組のベクトルの内のベクトルのそれぞれに対して捕捉をもたらしたかどうかを判定するように構成されている。
【0015】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態において、第2組のベクトルの内の各ベクトルに対して、コントローラは連続的により低い電圧で電気的刺激を繰り返し供給し、捕捉閾値が判定されるまで、供給した電気的刺激が捕捉をもたらしたかどうかを各電圧で判定するように構成されている。
【0016】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、コントローラはさらに、ユーザから第1の電圧の値を受信するように構成されている。
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、ユーザから第1の電圧の値を受信するためのディスプレイを含む。
【0017】
さらに別の実施形態において、電気的刺激パルスを使用して捕捉閾値を判定するための方法は、捕捉が検出されなくなるまで第1の電圧ステップを使用して電気的刺激パルスの電圧を連続的にステップダウンすることと、電圧を上げることと、その後、捕捉が検出されなくなるまで第2の電圧ステップを使用して電気的刺激パルスの電圧を連続的にステップダウンすることと、を含み、第2の電圧ステップは第1の電圧ステップよりも小さい。
【0018】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態において、第1の電圧ステップと第2の電圧ステップの内の少なくとも一方はディスプレイ上のメニューを介してユーザによる定義が可能である。
【0019】
さらに別の実施形態において、2つ以上のベクトルを使用して患者の心臓を刺激することができる医療システムは、3つ以上の電気刺激電極と、電気刺激電極を介して2つ以上のベクトルのそれぞれを使用して電気的刺激パルスを供給するように構成されたパルス発生器と、パルス発生器に接続されたコントローラと、を含んでいる。少なくともいくつかの実施形態において、コントローラは、パルス発生器に第1の電圧での電気的刺激パルスを第1組の2つ以上のベクトルの内の各ベクトルへ供給させ、第1の電圧で供給した電気的刺激パルスが第1組の2つ以上のベクトルの内のベクトルのそれぞれに対して捕捉をもたらしたかどうかを判定し、第1組の2つ以上のベクトルの内の捕捉をもたらしたと判定されたベクトルを第2組のベクトルとして特定し、第2組のベクトルの内の各ベクトルに第1の電圧よりも低い第2の電圧で電気的刺激を供給し、第2の電圧で供給された電気的刺激が第2組のベクトルの内のベクトルのそれぞれに対して捕捉をもたらしたかどうかを判定するように構成されている。
【0020】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、第2組のベクトルの内の各ベクトルに対して、コントローラは連続的により低い電圧で電気的刺激を繰り返し供給し、捕捉閾値が判定されるまで、供給した電気的刺激が捕捉をもたらしたかどうかを各電圧で判定するように構成されている。
【0021】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、コントローラはさらに、ユーザから第1の電圧に対する値を受信するように構成されている。
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、方法はさらに、ユーザから第1の電圧に対する値を受信するためのディスプレイを含んでいてもよい。
【0022】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、コントローラはさらに、第1の電圧で供給した電気的刺激が第1組の2つ以上のベクトルの内のいずれかのベクトルに対する捕捉をもたらさない場合は、第1の電圧を上げて最初の供給ステップに戻るように構成されている。
【0023】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、第1の電圧は1.0〜5.0ボルトである。
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、第1の電圧は1.5〜4.5ボルトである。
【0024】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、第1の電圧は2.0〜3.5ボルトである。
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、第1組の2つ以上のベクトルは医療システムの全ての利用可能なベクトルよりも少ない。
【0025】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、コントローラはさらに、医療システムの全ての利用可能なベクトルから第1組の2つ以上のベクトルを選択するように構成されている。
【0026】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、コントローラはさらに、医療システムの利用可能なベクトルのそれぞれに対して1つ以上のパラメータを生成し、1つ以上の生成したパラメータに、少なくとも部分的に基づいて医療システムの全ての利用可能なベクトルから第1組の2つ以上のベクトルを選択するように構成されている。
【0027】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、1つ以上のパラメータは、インピーダンス、ディレイ、および横隔刺激値の内の1つ以上を含む。
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、コントローラはさらに、第2組のベクトルの内の捕捉をもたらしたと判定されたベクトルを第3組のベクトルとして特定し、第3組のベクトルの内の各ベクトルに第2の電圧よりも低い第3の電圧で電気的刺激を供給し、第3の電圧で供給した電気的刺激が第3組のベクトルの内のベクトルのそれぞれに対して捕捉をもたらしたかどうかを判定するように構成されている。
【0028】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、コントローラはさらに、第3組のベクトルの内の各ベクトルに対して、連続的により低い電圧で電気的刺激を繰り返し供給し、捕捉閾値が判定されるまで、供給した電気的刺激が捕捉をもたらしたかどうかを各電圧で判定するように構成されている。
【0029】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、第2の電圧は第1の電圧よりも1電圧ステップ分低く、電圧ステップはユーザによる設定が可能であり、最大許容値を有する。
【0030】
別の実施形態において、マルチベクトル医療システムの複数のベクトルに対する捕捉を判定する方法は、ユーザ定義の電圧レベルを受信することと、マルチベクトル医療システムの第1群の2つ以上のベクトルの内の各ベクトルにユーザ定義の電圧レベルで電気的刺激を供給することと、第1群の2つ以上のベクトルの内のユーザ定義の電圧レベルで供給した電気的刺激が捕捉をもたらしたベクトルを含む第2群のベクトルを特定することと、を含む。少なくともいくつかの実施形態において、方法はさらに、第2群に特定されたベクトルに対する試験を実施することを含んでいてもよい。
【0031】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、試験は捕捉閾値試験を含む。
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、捕捉閾値試験を実施することは、ユーザ定義の電圧レベルを初期電圧レベルとして捕捉閾値試験を実施することを含む。
【0032】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、捕捉閾値試験を実施することは、ユーザ定義の電圧レベルよりも小さい初期電圧レベルで捕捉閾値試験を実施することを含む。
【0033】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、捕捉閾値試験を実施することは、ユーザ定義の電圧レベルよりも大きい初期電圧レベルで捕捉閾値試験を実施することを含む。
【0034】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、試験は、マルチベクトル医療システムの第2群のベクトルの内の各ベクトルに第2の電圧で電気的刺激を供給することと、第2の電圧で供給した電気的刺激が第2群のベクトルの内のベクトルのそれぞれに対して捕捉をもたらしたかどうかを判定することと、を含む。
【0035】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、方法はさらに、第2群のベクトルの内の捕捉をもたらすと判定されたベクトルを第3群のベクトルとして特定することと、第3群のベクトルの内の各ベクトルに第2の電圧よりも低い第3の電圧で電気的刺激を供給することと、第3の電圧で供給した電気的刺激が第3群のベクトル内のベクトルのそれぞれに対する捕捉をもたらしたかどうかを判定することと、を含んでいてもよい。
【0036】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態において、方法はさらに、第2群のベクトルの内の各ベクトルに対して、連続的により低い電圧で電気的刺激を繰り返し供給することと、捕捉閾値が判定されるまで、供給した電気的刺激が捕捉をもたらしたかどうかを各電圧で判定することと、を含んでいてもよい。
【0037】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、第2の電圧レベルはユーザ定義の電圧レベルである。
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、第2の電圧レベルはユーザ定義の電圧レベルよりも小さい。
【0038】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、第2の電圧レベルはユーザ定義の電圧レベルよりも大きい。
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、第2の電圧レベルはユーザ定義である。
【0039】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、試験は、捕捉が検出されなくなるまで第1の電圧ステップを使用して電気的刺激パルスの電圧を連続的にステップダウンすることと、電圧を上げることと、その後、捕捉が検出されなくなるまで第2の電圧ステップを使用して電気的刺激パルスの電圧を連続的にステップダウンすることと、を含み、第2の電圧ステップは第1の電圧ステップよりも小さい。
【0040】
さらに、またはあるいは、上述の実施形態のいずれかにおいて、第1の電圧ステップと第2の電圧ステップの内の少なくとも一方はディスプレイ上のメニューを介してユーザによる定義が可能である。
【0041】
上記概要は、本開示の各実施形態または全ての実施態様を説明することは意図していない。本開示の利点、達成およびより完全な理解は、以下の説明および請求項を参照し、添付図面とともに解釈することによって明確になり、正しく認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本開示は、添付図面とともに、様々な例示的な実施形態に関する以下の説明を考慮して、より完全に理解することができる。
図1】例示的な埋め込み型医療システムの模式図。
図2】様々な例示的なベクトルを示す、図1の埋め込み型医療システムの模式図。
図3図1の埋め込み型医療システムによって患者の心臓に供給される可能性のある電気的刺激のレベルを表すグラフ。
図4図1の埋め込み型医療システムによって患者の心臓に供給される可能性のある電気的刺激のレベルを表すグラフ。
図5図1の埋め込み型医療システムによって患者の心臓に供給される可能性のある電気的刺激のレベルを表すグラフ。
図6図1の埋め込み型医療システムによって患者の心臓に供給される可能性のある電気的刺激のレベルを表すグラフ。
図7図1の埋め込み型医療システムによって患者の心臓に供給される可能性のある電気的刺激のレベルを表すグラフ。
図8図1の埋め込み型医療システムによって患者の心臓に供給される可能性のある電気的刺激のレベルを表すグラフ。
図9図1の埋め込み型医療システムによって表示される可能性のあるベクトルの例示的な表。
図10図1の埋め込み型医療システムによって表示される可能性のあるベクトルの別の例示的な表。
図11図1の埋め込み型医療システムによって表示される可能性のあるベクトルの例示的な区分け可能な表を含むGUIを示すグラフ。
図12図1の埋め込み型医療システムなどの埋め込み型医療機器システムによって実施される可能性のある例示的な方法のフロー図。
図13図1の埋め込み型医療システムなどの埋め込み型医療機器システムによって実施される可能性のある別の例示的な方法のフロー図。
図14図1の埋め込み型医療システムなどの埋め込み型医療機器システムによって実施される可能性のある別の例示的な方法のフロー図。
【0043】
本開示は、様々な変更例および代替的な形態が可能であるが、それらの詳細を、図面に実施例として示し、詳細に説明する。しかし、本開示の態様を、記載されている特定の例示的な実施形態に限定する意図はないことを理解すべきである。むしろ、本開示の趣旨および範囲内にある全ての変更例、均等物および代替例を包含することが意図されている。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下の説明は、異なる図面における類似の要素に同じ符号が付けられている図面を参照して読むべきである。説明および必ずしも縮尺通りである必要はない図面は、例示的な実施形態を示しており、本開示の範囲を限定するように意図されていない。
【0045】
正常の健康な心臓は、内因的に生成された電気信号を心臓内に伝導することによって収縮を誘起する。これらの内因的信号は心臓の筋肉細胞または組織を収縮させる。この収縮力により血液を心臓から出し入れして、身体の残りの部分の血液循環を行う。しかし、多くの患者はこの心臓の収縮性に影響を与える心臓の状態に悩んでいる。たとえば、いくつかの心臓では、患部組織が内因的な電気的刺激信号を伝導しなくなる可能性がある。他の例では、患部組織が健康な心臓のように迅速に内因的な信号の伝導をせず、それにより心臓の収縮を非同期化する可能性がある。たとえば、心臓の筋肉の一部が、内因的な電気信号に関する心臓組織の伝導性が異なるために、心臓の他の筋肉細胞よりも速くまたは遅く収縮する可能性がある。この非協調的な収縮によって、身体の残りの部分全体の血流が減少して、様々な健康障害を引き起こす可能性がある。
【0046】
いくつかの例示的な埋め込み型医療機器(IMD)システムは、心臓に電気的刺激を供給することによってかかる病気の心臓を支援することができるであろう。たとえば、かかるIMDシステムは患者の心臓上または心臓内に埋め込まれた電極を含み、これらの電極を介して心臓に電気的刺激治療を施してもよい。施された電気的刺激治療は、心臓の収縮の誘起において内因的に生成される電気信号に換わるか、またはそれを支援してもよい。電気的刺激治療の1つのタイプは、心臓再同期治療(CRT)と称される。一般的に、CRTは心臓に電気的刺激治療を施すことを含んでおり、心臓の全ての部分が正常の同期性を有するように収縮することを確実にするために「心臓をペーシングする」あるいは「パルス」または「ペーシングパルス」を供給すると呼ばれることもある。
【0047】
いくつかの実施例において、CRTを施すためのIMDシステムは多数の電気刺激電極を含んでいてもよく、「ベクトル」と称される対(または組)の電気刺激電極を介して電気的刺激治療を施すようになっていてもよい。かかる例示的なIMDシステムは一般的に、心臓の電気信号の検出および電気的刺激治療の施術、あるいは心臓の電気信号の検出または電気的刺激治療の施術に利用可能なベクトルの内の選択されたベクトルを使用している。患者の特定の生理機能および埋め込み型電気刺激電極の位置が心臓の電気信号の検出および電気的刺激治療の施術、あるいは心臓の電気信号の検出または電気的刺激治療の施術に使用する可能性のある各ベクトルの適性または望ましさに影響を与え、かかるパラメータが患者間で異なるため、使用可能性のある各ベクトルの適性または望ましさもまた患者間で異なる。
【0048】
図1は、例示的な埋め込み型医療システムの模式図であり、このシステムは、少なくとも部分的に、心臓の電気信号の検出および電気的刺激治療の施術、あるいは心臓の電気信号の検出または電気的刺激治療の施術のための1つ以上のベクトルの選択に使用してもよい。図1は、埋め込み型医療機器101を含むことができるシステム100の一実施例を大略的に示している。埋め込み型医療機器101は1つ以上の電気刺激電極に接続することができ、この接続は埋め込み型リード110、120、および130などの1つ以上の埋め込み型リードによって行うことができる。埋め込み型リード110、120、および130は、心臓115からの心臓の電気信号を受信または検出するように構成することができる。いくつかの場合、埋め込み型医療機器101は密閉されたまたは同様のハウジング111を含むことができる。ハウジング111は、チタンまたは1つ以上のその他の導電材料などの他の生態適合性材料を含むことができる。
【0049】
いくつかの事例において、電気刺激電極はリード無しの心臓ペースメーカ(LCP)によって提供されていてもよく、このLCPは他のLCPおよび別の埋め込み型医療機器101、あるいは他のLCPまたは別の埋め込み型医療機器101と連通している。少なくともいくつかの実施例において、LCP(複数可)は大略的にパルス発生器およびパルス発生器を制御するためのコントローラを備えていてもよい。所望であれば、1つ以上のLCPの使用により、1つ以上の埋め込み型リード110、120、および130の必要性を削減するか、削除してもよい。
【0050】
大略的に、埋め込み型医療機器101は電気刺激装置またはパルス発生装置を含んでいてもよい。したがって、いくつかの実施例において、埋め込み型医療機器101は、ペースメーカ、除細動器、埋め込み型モニタ、薬物送達装置、心臓再同期治療(CRT)装置、神経刺激装置、圧受容体刺激装置の内の1つ以上および/または人を監視するように構成された、または人に1つ以上の電気的刺激治療を施すように構成された1つ以上の他の埋め込み型アセンブリを含んでいてもよい。かかる監視または治療の実施例は心臓組織などの組織に電気的刺激治療を施すこと、または筋肉活動または心臓活動の電気的監視を行うことを含むことができる。一実施例において、埋め込み型医療機器101は、ペーシングシステムアナライザ、プログラマレコーダモニタ、または多極性の埋め込み型リードのシステムを構成するために使用できる他の外部医療機器などの外部の医療機器を含んでいてもよい。いくつかの場合、埋め込み型医療機器101は皮下植え込み型除細動器(S−ICD)および皮下ペースメーカ、あるいは皮下植え込み型除細動器(S−ICD)または皮下ペースメーカを含んでいてもよい。
【0051】
図1の実施例において、埋め込み型医療機器101は、心臓115、または他の体組織に、電極システム107、心外膜の電極、または外部(たとえば、皮膚パッチ)の電極などを介して接続することができる。図1のシステムにおいて、電極システム107は少なくとも1つのリードおよび各リードに対して少なくとも1つの電気刺激電極を含む。図1は、3本の埋め込み型リード110、120、および130を用いた一実施例を示している。図1の実施例において、埋め込み型リード110は心臓115の左心室に関連して使用するように構成することができる。たとえば、埋め込み型リード110は、心臓115の左心室に関連する少なくとも1つの電気刺激電極を、冠静脈洞内に挿入し、血管内を進めて、設置することを可能にするようなサイズおよび形状にすることができる。埋め込み型リード110は、複数の電気刺激電極および対応する導体を含む、多極性リードとすることができる。一実施例において、埋め込み型リード110は、チップ電極112、第1のリング電極114、第2のリング電極116、および第3のリング電極118などの、4つの個別の電気刺激電極を含むことができる。一実施例において、電気刺激電極114、116、および118は、埋め込み型リード110の遠位部近傍に配置することができる。電気刺激電極114、116、および118のそれぞれは、電気的絶縁材料によって隔離することができ、したがって個々の電気刺激電極を電気的に絶縁することができる。4つの左心室用の電気刺激電極112、114、116、および118のそれぞれは、一意の電気伝導体に対応することができ、埋め込み型医療機器101内に含まれる検出回路106または電気刺激回路105によって個々にアドレシング可能とすることができる。
【0052】
図1に示す実施例において、埋め込み型リード120は、チップ電極122、第1のコイル電極124、および第2のコイル電極126を含むことができる。図1に大略的に示すように、埋め込み型リード120は、一実施例において、心臓115の右心房および右心室に挿入して、第1のコイル電極124が右心室に配置され、且つ第2コイル電極126が右心房に配置されるようにすることができる。同様に、図1の実施例において、埋め込み型リード130は、チップ電極132およびリング電極134を含むことができる。図1に大略的に示すように、埋め込み型リード130は心臓115の右心房内に挿入するように構成することができる。
【0053】
図1に示す埋め込み型リード110、120、および130の具体的な図は、説明のための非限定的な例示に過ぎない。他のシステムは心臓115に対して異なる配置のリードを含んでいてもよい。さらに他のシステムは、異なる数の電気刺激電極を有していてもよく、リードに対する電気刺激電極の配置が異なっていてもよい。また他のシステムは、より多くのまたはより少ない埋め込み型リードを含んでいてもよい。忠実にLCPを使用するシステムは、リードを必要としないまたは所望もしない可能性がある。総じて、本開示のシステムおよび技術は、特定の埋め込み位置または電極の配置もしくは数に関わらず、複数のベクトルに構成可能な複数の電極を含むあらゆるシステムに適している。
【0054】
一実施例において、埋め込み型医療機器101は、通信回路102、プロセッサ回路103、メモリ回路104、電気刺激回路105、および検出回路106を含むことができる。プロセッサ回路103およびメモリ回路104は、埋め込み型医療機器101の動作を制御するために使用することができる。たとえば、プロセッサ回路103は、検出回路106または他の生理センサの使用などによって心臓の状態を検出し、電気刺激回路105に1つ以上の電極を介して電気的刺激を心臓115に供給させることなどによって検出した心臓の状態に応答するように構成することができる。メモリ回路104は、様々なペーシングモードおよび検出モード、試験手順などの1つ以上のパラメータを含むことができる。メモリ回路104は、心臓115の状態に関するデータなどの生体データを保存するように構成することができる。メモリ回路104はまた、試験の状態または試験結果に関するデータなどの機器データを保存するように構成することもできる。一実施例において、埋め込み型医療機器101は、電気刺激回路105または検出回路106を電極システム107とのインターフェースに使用することができる。電気刺激回路105または検出回路106は、たとえば埋め込み型医療機器101内に格納されたバッテリ(図示せず)内に貯蔵されたエネルギーを使用して、心臓115に電気的刺激治療を供給するために電気刺激信号を生成するように構成することができる。電気刺激回路105または検出回路106は、電極システム107に電気接続することができる。たとえば、電気的刺激は電極システム107を介して電気刺激回路105から心臓115に伝導することができる。同様に、検出回路106は電極システム107から信号を受信してもよい。通信回路102は、埋め込み型医療機器101と、たとえば、外部アセンブリ140との間のデータ通信リンクを確立するように構成することができる。
【0055】
いくつかの事例において、埋め込み型医療機器101は、ベクトルの評価を実施するように構成することができる。たとえば、プロセッサ回路103は電気刺激電極105に、埋め込み型リード110、120、および130に接続された対の電気刺激電極によって作成されたベクトルの一部または全てを介して電気的刺激の供給を行わせることができる。検出回路106はベクトル評価の間に様々なパラメータを検出し、検出したパラメータをメモリ回路104に保存してもよい。いくつかの場合、プロセッサ回路103は通信回路102を介して外部アセンブリ140に検出したパラメータを送信してもよい。さらに、外部アセンブリ140は検出したパラメータを受信して、ユーザインターフェース145でそれらを表示してもよい。
【0056】
埋め込み型医療機器101は、通信回路102を介して、外部アセンブリ140などのローカルまたは遠隔の外部機器と(有線または無線で)通信するように構成することができる。この通信には、RFリンク、光リンク、音響リンク、導電性リンク、または他の通信リンクの使用を含むことができる。外部アセンブリ140は、患者管理システムの一部または部分とすることができる。一実施例において、外部アセンブリ140は、ウェブベースクライアントなどの1つ以上の遠隔クライアントと通信することができ、あるいは医療データベース及び患者データベースを含むことができる1つ以上のサーバに通信可能に接続することができる。
【0057】
いくつかの場合、外部アセンブリ140は、通信回路142、プロセッサ回路143、メモリ回路144、またはユーザインターフェース145を含むことができる。一実施例において、通信回路142は、誘導コイルまたは高周波テレメトリ回路を含むことができ、埋め込み型医療機器101と通信するように構成することができる。プロセッサ回路143およびメモリ回路144は、ユーザインターフェース145から受信した情報を解釈するために使用することができ、あるいは埋め込み型医療機器101との情報交換のために通信回路142をいつ使用するかを判定するために使用することができる。一実施例において、プロセッサ回路143およびメモリ回路144は、少なくとも部分的に電極システム107を使用して外部アセンブリ140によって制御されているベクトル評価を起動するために使用することができる。外部アセンブリ140は、電極システム107を使用してベクトル評価を実施することができ、ユーザインターフェース145などによって結果を表示するように構成することができる。いくつかの場合、外部アセンブリ140は使用せず、電極システム107を使用してベクトル評価を実施するように埋め込み型医療機器101を構成する。
【0058】
使用の際に、外部アセンブリ140は付属の(たとえば、非埋め込み型の)外部アセンブリとすることができる。一実施例において、外部アセンブリ140は、外部アセンブリ140が電極システム107に直接的または間接的に接続されるように構成できるように、上述し以下に説明する埋め込み型医療機器101の特徴を含むことができる。たとえば、外部アセンブリ140は、電気刺激電極112、114、116、118、122、124、126、132、および134の全ての様々な組み合わせから得られた利用可能性のあるベクトルのそれぞれを評価するように構成することができる。外部アセンブリ140は、電極システム107に電気的刺激治療を供給するために電源(図示せず)を利用することによって評価を実施可能にしてもよい。外部アセンブリ140は、1つ以上の評価したベクトルを自動的に選択し、選択したベクトルで埋め込み型医療機器101を構成する1つ以上のアルゴリズムを備えていてもよい。他の実施例において、医師またはその他の医療従事者などのユーザが、評価の結果を見て1つ以上のベクトルを選択してもよい。これらの選択したベクトルは、通信回路142を介して埋め込み型医療機器101に送信してもよい。ベクトル評価を実施するために外部アセンブリ140を使用することによって、埋め込み型医療機器101が電力を節約して使用してもよい。
【0059】
外部アセンブリ140のユーザインターフェース145は、これらには限定されないが、キーボード、マウス、ライトペン、タッチスクリーン、ディスプレイスクリーン、プリンタ、またはオーディオスピーカを含むことができる。一実施例において、ユーザインターフェース145は、LCDコンピュータモニタなどを使用した、フルカラーの高解像度グラフィカルディスプレイとして構成することができる。別の実施例において、ユーザインターフェース145は、テキストを表示するためのCRTモニタなどを使用した、モノクロのディスプレイとして使用するように構成することができる。いくつかの実施例において、ユーザインターフェース145は、ユーザにベクトル評価のグラフ表示をインタラクティブに提示するように構成することができる。他の実施例において、ユーザインターフェース145は、ベクトル評価のテキストベースの表示をインタラクティブに提示するように構成することができる。
【0060】
図2は、いくつかの例示的なベクトルを示す、図1の埋め込み型の医療システムの模式図である。図1に関して説明したように、埋め込み型医療機器101の各対の電気刺激電極を「ベクトル」と考えてよい。各対の電気刺激電極において、第1の電気刺激電極はカソード電極であり、第2の電極はアノード電極である。図示の例示的なベクトルのそれぞれにおいて、各ベクトルの矢印はアノード電極を指しており、各矢印の基部はカソード電極を指している。各ベクトルは経路を示す矢印として描かれているが、ベクトルは、電気的刺激が特定のベクトルを介して供給される場合の電気的刺激の伝播の大略的な流れを表しているに過ぎない。電気的刺激の伝播の正確な流れは生理系および物理系の要素を含む多くの要素によって決まる。
【0061】
いくつかの実施例において、埋め込み型医療機器101はさらに、図2に示す「can」電極150を含む。図2はさらに、例示的なベクトル160、162、164、166、および168を示している。図2において、電気刺激電極112、114、116、118、122、124、および150はそれぞれ、LV1、LV2、LV3、LV4、RV、RING、およびCANとも表示され、これらは当該技術分野において時々使用される用語である。ベクトル160はCAN電極およびLV2電極の対を表しており、CAN電極はアノード電極であり、LV2電極はカソード電極である。他のベクトル162、164、166、および168は全て、埋め込み型医療機器101のベクトルの実施例を表している。電気刺激電極のあらゆる組み合わせが一意のベクトルを表す可能性があることを理解すべきである。さらに、電気刺激電極の各対は、対の電気刺激電極のどちらの電極もカソード電極またはアノード電極にできるため、事実上2つのベクトルを作成することができる。以下の表1は、RING電極、LV1電極、LV2電極、LV3電極、LV4電極、およびCAN電極を備える埋め込み型医療機器101の全ての利用可能性のあるベクトルの一覧である。埋め込み型医療機器101の利用可能性のあるベクトルの全体は、電極126、132、134、およびRVを含む組み合わせをさらに含むと考えられる。しかし、他の埋め込み型の医療機器システム、特に異なる数の電極を有するシステムにおいては、システムのベクトルの数が異なる可能性があることを理解すべきである。本明細書において説明する例示的な技術は、多数の電極を含むかかるシステムの全てに適用可能である可能性がある。
【0062】
【表1】
図3図13に関して以下に説明する実施例は埋め込み型医療機器101に関する説明であるが、開示する技術は、いくつかの電気刺激電極を有する埋め込み型リードに接続された外部アセンブリ140を含む、電気的刺激治療の施術が可能なあらゆる適切な機器またはシステムに適用可能であってよいことを理解すべきである。
【0063】
図3は、電圧対時間のグラフを示しており、ベクトルに対する捕捉閾値の判定または電気的刺激治療の供給に使用するための1つ以上のベクトルの選択を支援するために使用してもよい医療機器またはシステムの1つの例示的な動作を表している。図3の実施例において、埋め込み型医療機器101は心臓内に埋め込んで、たとえばペーシングパルスなどの電気的刺激治療を心臓115に施してもよい。機器101は、心臓115内に埋め込まれたリード110、120、および130に接続された電気刺激電極による第1組のベクトルの内の各ベクトルにペーシングパルスを供給してもよい。いくつかの実施例において、第1組のベクトルは、機器101の電気刺激電極のそれぞれの可能な一意のペアリングから得られた機器101の全てのベクトルを含む。他の実施例において、第1組のベクトルは全てのベクトルのサブセット(すなわち、全てのベクトルよりも少ない)であってよく、ここでは、単一のベクトルから全てのベクトルよりも少ないベクトルまでの範囲であってよい。少なくともいくつかの実施例において、機器101は、インピーダンスパラメータ、捕捉閾値パラメータ、ディレイパラメータ、および/または横隔神経刺激値などの、各ベクトルに対する1つ以上のパラメータを判定するように動作してもよい。機器101は、各ベクトルを介して心臓115に電気的刺激を供給し、各パラメータを測定することによってこれらのパラメータの内の1つ以上を得てもよい。機器101は、そのように判定されたパラメータに基づいて第1組のベクトルに含めるための1つ以上のベクトルを自動的に選択するように構成してもよい。他の実施例において、機器101は、外部アセンブリ140などを介して、第1組のベクトルにどのベクトルを含めるかの選択を含むユーザからの入力を受信するように構成してもよい。さらに他の実施例においては、機器101は、2013年12月18日に出願され、「医療機器内の1つ以上のベクトルの選択を容易にするためのシステムおよび方法」と題する、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる、本願と同時係属中の米国仮特許出願第61/917,836号に詳細に説明されている技術に従って、1つ以上のパラメータの判定および第1組のベクトルにどのベクトルを含めるかの選択、あるいは1つ以上のパラメータの判定または第1組のベクトルにどのベクトルを含めるかの選択を行うように動作するように構成してもよい。
【0064】
機器101はその後、第1組のベクトルの内の1つのベクトルを介して第1の電圧レベルVで1つ以上のペーシングパルスを供給してもよい。機器101はその後、1つ以上の供給したペーシングパルスが心臓115を捕捉したかどうかを判定・記録してもよい。機器101は、1つまたは複数のペーシングパルスを供給した後に心臓の電気信号を検出することにより、1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したかどうかを判定してもよい。機器101が心臓の電気信号または捕捉に対応する特定のパターンの心臓の電気信号を検出した場合、機器101は1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したと判定してもよい。機器101はその後、第1組のベクトルの内の別のベクトルを介して第1の電圧レベルVで1つ以上のペーシングパルスを供給し、供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したかどうかを判定してもよい。同様の方法で、機器101は、第1組のベクトルの内の各ベクトルに対して、1つ以上のペーシングパルスを供給し、その供給した1つまたは複数のパルスが心臓115を捕捉したかどうかを判定してもよい。
【0065】
第1組のベクトルの内の各ベクトルに対して第1の電圧レベルVで供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したかどうかを判定した後、機器101は1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したベクトルを特定し、それらのベクトルを第2組のベクトルの組に特定してもよい。機器101はその後、第2組のベクトルの内の1つのベクトルに第2のより低い電圧レベルVで1つ以上のペーシングパルスを供給してもよい。機器101は、ベクトルに対して第2の電圧レベルVで供給した1つ以上のペーシングパルスが心臓115を捕捉したかどうかを判定することができる。機器101はこの工程を第2組のベクトルの内の各ベクトルに対して繰り返してもよい。
【0066】
他の実施例において、機器101は、第1組のベクトルの内の他のいずれかのベクトルを介してペーシングパルスを供給する前に、第1組のベクトルの内の第1のベクトルを介して、第1の電圧レベルVおよび、いくつかの事例では第2の電圧レベルVで、1つ以上のペーシングパルスを供給してもよい。たとえば、機器101は第1の電圧レベルVで第1組のベクトルの内の第1のベクトルを介して1つ以上のペーシングパルスを供給してもよい。機器101はその後、1つ以上の供給したペーシングパルスが心臓115を捕捉したかどうかを判定してもよい。1つ以上のペーシングパルスが心臓を捕捉した場合は、機器101は第1のベクトルを介して第2の電圧レベルVで1つ以上のペーシングパルスを供給してもよい。また、機器101は第2の電圧レベルVで供給した1つ以上のペーシングパルスが心臓115を捕捉したかどうかを判定してもよい。機器101が第1の電圧レベルVで供給した1つ以上のペーシングパルスが心臓115を捕捉しなかったと判定した場合は、機器101は第1のベクトルを介して第2の電圧レベルVで1つ以上のペーシングパルスを供給しなくてもよい。機器101は第1の電圧レベルVおよび第2の電圧レベルV2、あるいは第1の電圧レベルVまたは第2の電圧レベルVで1つ以上のペーシングパルスが心臓115を捕捉したかどうかを記録してもよい。機器101はその後、第1組のベクトルの内の他のベクトルのそれぞれに対して同様の工程を繰り返してもよい。
【0067】
いくつかの実施例において、第1の電圧レベルVで心臓115を捕捉したベクトルが無い場合は、機器101は第1の電圧レベルVの電圧値を上げて工程を再度開始してもよい。たとえば、機器101は、上述のいずれかの実施例に従う方法で、第1組のベクトルの内のベクトルを使用して、新たなより高い第1の電圧レベルVでペーシングパルスの供給を再度開始してもよい。
【0068】
いくつかの場合、第1の電圧レベルV1はメモリ104およびメモリ144、あるいはメモリ104またはメモリ144に保存された所定の値でもよい。いくつかの場合、第1の電圧レベルV1はユーザインターフェース145などを介してユーザが入力してもよい。いくつかの場合、第1の電圧レベルV1は、第1組のベクトルの内の全てのベクトルに対する捕捉閾値よりも高いと予測されるレベル(たとえば、7ボルト)に設定してもよい。他の事例において、第1の電圧レベルV1は、ユーザがその後の長期間のペーシングに対して容認可能な電圧レベルであるとみなすレベル(たとえば、3ボルト)に設定してもよく、システムは、第1組のベクトルの内のどのベクトルがその電圧レベルで心臓を捕捉しないかを判定して、第2組のベクトルからそれらのベクトルを自動的に削除してもよい。
【0069】
図4は、機器101が1つ以上のベクトルに対する捕捉閾値を判定してもよい他の実施例を示している。かかる実施例において、それを介して機器101が第2の電圧レベルVでペーシングパルスを供給し、パルスが心臓115を捕捉したと判定したベクトルのそれぞれに対して、機器101はそれに続き、供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉できなかったと判定するまで、連続的により低い電圧値でペーシングパルスを供給してもよい。たとえば、機器101は第2の電圧レベルVよりも小さい第3の電圧レベルVでベクトルを介して1つ以上のペーシングパルスを供給してもよい。機器101が供給した1つ以上のペーシングパルスが心臓115を捕捉したと判定する場合は、機器101はその後、第3の電圧レベルVよりも小さい第4の電圧レベルVで1つ以上のペーシングパルスを供給してもよい。機器101はその後、供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したかどうかを判定してもよい。機器101は、ベクトルに対して電圧レベルVで供給した1つ以上のペーシングパルスが心臓115を捕捉できなかったと判定するまでこの工程を繰り返した後、心臓115を捕捉した供給したペーシングパルスの最も低い電圧レベルをそのベクトルに対する捕捉閾値として記録してもよい。たとえば、上述の実施例において、1つのベクトルを介して第4の電圧レベルVで供給した1つまたは複数のパルスが心臓115を捕捉できなかった場合、機器101は第3の電圧レベルVをそのベクトルに対する捕捉閾値として記録してもよい。
【0070】
いくつかの実施例において、第1および第2の電圧レベルVおよびVは、ユーザにより構成可能としてもよい。たとえば、ユーザがたとえば外部アセンブリ140などの外部機器に値を入力して、外部機器がその値を機器101に送信してもよい。機器101はその後、入力した値に従って、第1および第2の電圧レベルVおよびVを構成してもよい。他の実施例において、第1および第2の電圧レベルVおよびVを所定の値として機器101のメモリ回路104に保存してもよい。第1の電圧レベルVのいくつかの例示的な所定の値は、5ボルト、4.5ボルト、3.5ボルト、2ボルト、1.5ボルト、および1ボルト、またはあらゆる他の適切な電圧値である。第2の電圧レベルVのいくつかの例示的な値は、4ボルト、3.5ボルト、2.5ボルト、2ボルト、1.5ボルト、および1ボルト、またはあらゆる他の適切な電圧値である。
【0071】
機器101が捕捉閾値を判定する実施例において、機器101は電圧レベルを所定のステップダウン値410ずつ連続的にステップダウンするように構成してもよい。たとえば、上述の実施例において、機器101は、第2の電圧レベルVよりもステップ値410だけ小さい第3の電圧レベルVを使用するように構成してもよい。したがって、第4の電圧レベルVもまた、第3の電圧レベルVよりもステップ値410だけ小さい。いくつかの実施例において、ステップ値410もまた、ユーザにより構成可能としてもよい。他の実施例において、ステップ値410は所定の値としてメモリ回路104に保存してもよい。少なくともいくつかの実施例において、ステップ値410は、第1および第2の電圧レベルVおよびVの間の差よりも小さい。
【0072】
第1および第2の電圧レベルVおよびVがユーザによって構成可能である実施例において、第1および第2の電圧レベルVおよびVはそれぞれ、最大許容値を有していてもよい。電圧レベルのいくつかの例示的な最大許容値は、7ボルト、6ボルト、および5ボルト、またはあらゆる他の適切な電圧値である。ユーザが最大許容値よりも高い値を入力する場合は、機器101はその電圧レベルを最大許容値に設定してもよく、そうでなければユーザは最大許容値よりも高い値を入力することを阻止されることになる。いくつかの実施例において、ステップ値410もまた、最大許容値を有していてもよい。たとえば、ステップ値410は、0.5ボルト、0.4ボルト、0.3ボルト、またはあらゆる他の適切な電圧値である最大許容値を有していてもよい。いくつかの場合、第1および第2の電圧レベル、ならびにステップ値410は、最小許容値を有していてもよい。
【0073】
図5は、ベクトルに対する捕捉閾値の判定または電気的刺激治療の施術に使用するための1つ以上のベクトルの選択を支援するために使用してもよい医療機器またはシステムの別の例示的な動作を示すグラフである。たとえば、機器101は、第1および第2の電圧レベルVおよびVで行う1組のベクトルの第1の試験に加えて、第3の電圧レベルVで1組のベクトルの試験をさらに行ってもよい。たとえば、図3および図4に関して上述したように第2組のベクトルの内のベクトルを介して1つまたは複数のペーシングパルスを供給した後に、機器101は第2の電圧レベルVで供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したと機器101が判定したベクトルを第3組のベクトルに分類してもよい。機器101はその後、第3組のベクトルの内の第1のベクトルを介して第3の電圧レベルVで1つまたは複数のペーシングパルスを供給し、供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したかどうかを判定してもよい。機器101は第3組のベクトルの内のベクトルのそれぞれに対してこの工程を繰り返し、その結果を記録してもよい。
【0074】
いくつかの実施例において、機器101は、第1組のベクトルの内の他のベクトルに1つまたは複数のペーシングパルスを供給する前に、第1組のベクトルの内の1つのベクトルに、第1、第2および/または第3の電圧レベルV、VおよびVでペーシングパルスを供給してもよい。たとえば、機器101は第1の電圧レベルVで1つまたは複数のペーシングパルスを供給し、供給したペーシングパルスが心臓115を捕捉したかどうかを判定してもよい。機器101はその後、ベクトルに対して第2の電圧レベル、必要であれば第3の電圧レベルでこの工程を繰り返してもよい。機器101がいずれかの電圧レベルで供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉できなかったと判定した場合、機器101はそのベクトルを介したペーシングパルスの供給を中止し、第1組のベクトルの内の別のベクトルに変更してもよい。機器101はその後、第1組のベクトルの次のベクトルを介したペーシングパルスの供給を開始してもよい。機器101は第1組のベクトルの内のベクトルのそれぞれに対してこの工程を繰り返してもよい。
【0075】
図6は、機器101の別の例示的な動作を示すグラフである。図6の実施例において、機器101は図5に関して上述した技術のいずれかを実施し、さらに1つ以上のベクトルに対する捕捉閾値を判定してもよい。たとえば、それを介して機器101が第3の電圧レベルVでペーシングパルスを供給し、パルスが心臓115を捕捉したと判定したベクトルのそれぞれに対して、機器101はそれに続き、供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉できなかったと判定するまで、連続的により低い電圧値でペーシングパルスを供給してもよい。かかる実施例において、機器101は第3の電圧レベルVよりも小さい第4の電圧レベルVで1つ以上のペーシングパルスを供給してもよい。機器101が第4の電圧レベルVで供給した1つ以上のペーシングパルスが心臓115を捕捉したと判定した場合、機器101はその後、第4の電圧レベルVよりも小さい第5の電圧レベルVで1つ以上のペーシングパルスを供給してもよい。機器101はその後、供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したかどうかを判定する。機器101は、電圧レベルVで供給した1つ以上のペーシングパルスが心臓115を捕捉できなかったと判定するまでこの工程を繰り返した後、心臓115を捕捉した供給したペーシングパルスの最も低い電圧レベルを捕捉閾値として記録してもよい。たとえば、上述の実施例において、ベクトルを介して第4の電圧レベルVで供給した1つまたは複数のパルスが心臓115を捕捉できなかった場合、機器101は第3の電圧レベルVをそのベクトルに対する捕捉閾値として記録してもよい。
【0076】
図5および図6の実施例において、様々な電圧レベルV、V、およびVは、ユーザにより構成可能としてもよい。たとえば、ユーザがたとえば外部アセンブリ140などの外部機器に値を入力して、外部機器がその値を機器101に送信してもよい。機器101はその後、入力した値に従って、第1、第2および第3の電圧レベルV、V、およびVを構成してもよい。他の実施例において、第1、第2および第3の電圧レベルV、V、およびVを所定の値として機器101のメモリ回路104に保存してもよい。第1の電圧レベルVのいくつかの例示的な所定の値は、5ボルト、4.5ボルト、3.5ボルト、2ボルト、1.5ボルト、および1ボルト、またはあらゆる他の適切な電圧値である。第2および第3の電圧レベルVおよびVのいくつかの例示的な値は、4ボルト、3.5ボルト、2.5ボルト、2ボルト、1.5ボルト、および1ボルト、またはあらゆる他の適切な電圧値である。いくつかの実施例において、機器101は電圧レベルを所定のステップ値610ずつ連続的にステップダウンするように構成してもよい。たとえば、上述の実施例において、機器101は、第3の電圧レベルVよりもステップ値610だけ小さい第4の電圧レベルVを使用するように構成してもよい。したがって、それに続く電圧レベルもまた、供給されたペーシングパルスのそれぞれ前の電圧レベルよりもステップ値610だけ小さくなっていてもよい。いくつかの実施例において、ステップ値10はユーザが構成してもよい。他の実施例において、ステップ値610は所定の値としてメモリ回路104に保存してもよい。少なくともいくつかの実施例において、ステップ値610は、第1および第2の電圧レベルVおよびVの間の差よりも小さい。
【0077】
第1、第2および第3の電圧レベルV、V、およびVがユーザによって構成される実施例において、第1、第2および第3の電圧レベルV、V、およびVはそれぞれ、最大許容値を有していてもよい。電圧レベルのいくつかの例示的な最大値は、7ボルト、6ボルト、および5ボルト、またはあらゆる他の適切な電圧値である。ユーザが最大許容値よりも高い値を入力する場合は、機器101はその電圧レベルを最大許容値に設定してもよく、そうでなければユーザは最大許容値よりも高い値を入力することを阻止されることになる。いくつかの実施例において、ステップ値610もまた、最大許容値を有していてもよい。たとえば、ステップ値610は、0.5ボルト、0.4ボルト、0.3ボルト、またはあらゆる他の適切な電圧値である最大許容値を有していてもよい。いくつかの場合、第1および第2の電圧レベル、ならびにステップ値410は、最小許容値を有していてもよい。
【0078】
図7は、ベクトルに対する捕捉閾値の判定または電気的刺激治療の施術に使用するための1つ以上のベクトルの選択の支援における機器101の別の例示的な動作を示すグラフである。図7の実施例において、機器101は1つの組のベクトルの内の第1のベクトルに対して第1の電圧レベルVで1つまたは複数のペーシングパルスを供給してもよい。図3と併せて説明した実施例のように、ベクトルの組は、時にはベクトルの1つ以上のパラメータに基づいて、機器101またはユーザが選択してもよい。第1の電圧レベルVで1つまたは複数のペーシングパルスを供給した後、機器101は供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したかどうかを判定してもよい。機器101が供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したと判定する場合、機器101は電圧を第1のステップ値710だけステップダウンして新たな第2の電圧レベルVを得てもよい。機器101はその後、第2の電圧レベルVでベクトルを介して心臓に1つ以上のペーシングパルスを供給し、供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したかどうかを判定してもよい。
【0079】
機器101は、供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉できなかったと判定するまで、電圧レベルを新たなより低い電圧レベルにステップダウンするこの工程を繰り返してもよい。図7の実施例において、機器101は電圧レベルV、V、およびVで1つ以上のペーシングパルスを供給し、電圧レベルVでのみ、供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉できないと判定する可能性がある。たとえば図7の実施例の電圧レベルVにおいて、1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉できなかったと判定すると、機器101はその後、電圧レベルを上げてもよい。いくつかの実施例において、機器101は、機器101が供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したと判定した最も低い電圧レベル(本実施例では電圧レベルV)よりも第2のステップ値710だけ小さいレベルに電圧レベルを上げてもよい。図7において、新たな電圧レベルをVと表示する。機器101はその後、電圧レベルVで1つ以上のペーシングパルスを供給し、1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したかどうかを判定してもよい。機器101が供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したと判定する場合、機器101は再度、電圧レベルを第2のステップ値720だけ下げて、電圧レベルVを得てもよい。上述のように、機器101は、現在の電圧レベルで供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉できないと判定するまで、この工程を続けてもよい。
【0080】
いくつかの場合、電圧レベルVで供給した1つまたは複数のペーシングパルスもまた心臓115を捕捉できない可能性がある。かかる場合は、上述のように、機器101は捕捉が検出された最も低い電圧を捕捉閾値として記録してもよい。たとえば、上記実施例において、機器101は、機器101が供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したことを検出した最も低い電圧レベルが電圧値Vであったため、電圧値Vを捕捉閾値として記録すると考えられる。
【0081】
現在の電圧レベルで供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉できなかったと判定すると、機器101は、供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉した最も低い電圧レベルをベクトルに対する捕捉閾値として記録してもよい。たとえば、図7において、電圧レベルVで供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したと判定した後、機器101は1つ以上のペーシングパルスを電圧レベルVで供給してもよい。この実施例において、機器101は電圧レベルVで供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉できなかったと判定する可能性がある。したがって、機器101は電圧レベルVを所定のベクトルに対する捕捉閾値として記録してもよい。
【0082】
いくつかの実施例において、1つ以上のペーシングパルスを電圧レベルVで供給する前に、機器101は電圧レベルを、図7の電圧レベルVなどの、供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉した、前の電圧レベルに上げてもよい。機器101はその後、図7の実施例の電圧レベルVなどの、この前の電圧レベルで1つ以上のペーシングパルスを供給し、供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したことを確認してもよい。供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したことを確認すると、機器101はその後、電圧レベルを第2のステップ値720だけステップダウンして、新たなより低い電圧値Vを得てもよい。機器101を、その後は、上述の工程に従って進めてもよい。
【0083】
図8は、ベクトルに対する捕捉閾値の判定または電気的刺激治療の施術に使用するための1つ以上のベクトルの選択の支援における機器101の別の例示的な動作を示すグラフである。図8の実施例において、機器101は図7に関して説明した方法と同様の方法で1つまたは複数のペーシングパルスを供給してもよい。たとえば、機器101は第1の電圧レベルVで1つ以上のペーシングパルスを供給し、供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉したかどうかを判定してもよい。供給したペーシングパルスが心臓115を捕捉したと判定すると、機器101は電圧レベルを第1のステップ値810だけ下げて、第2のより低い電圧レベルVを得てもよい。機器101はその後、第2の電圧レベルVで1つ以上のペーシングパルスを供給し、供給したペーシングパルスが心臓115を捕捉したかどうかを判定してもよい。機器101は、現在の電圧レベルに対して供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉できなかったと判定するまで、この工程を繰り返してもよい。図8の実施例において、機器101は、第5の電圧レベルVで供給した1つまたは複数のペーシングパルスは心臓115を捕捉できなかったと判定している。
【0084】
供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉できなかったと判定した後、機器101は電圧レベルを上げてもよい。たとえば、機器101は電圧レベルを第2のステップ値820だけ上げてもよい。図8の実施例において、これにより第5の電圧レベルVよりも第2の所定量820だけ高い新たな電圧レベルVを得てもよい。機器101はその後、電圧レベルVで供給した1つ以上のペーシングパルスが心臓115を捕捉したかどうかを判定してもよい。機器101は、機器101がある電圧レベルで供給した1つ以上のペーシングパルスが心臓115を捕捉すると判定するまで、電圧レベルを第2のステップ値820だけ上げるこの工程を続けてもよい。機器101はその後、供給したペーシングパルスが心臓115を捕捉したこの電圧レベルがそのベクトルに対する捕捉閾値であると判定してもよい。たとえば、図8において、機器101は、電圧レベルVおよびVで供給した1つまたは複数のペーシングパルスは心臓115を捕捉できなかったが、電圧レベルVで1つ以上のペーシングパルスを供給することは心臓115を捕捉したと判定する可能性がある。したがって、機器101は電圧レベルVをそのベクトルに対する捕捉閾値として記録してもよい。
【0085】
機器101は1つ以上の安全特徴を含んでいてもよい。いくつかの実施例において、機器101はさらに、内因的心臓活動を検出してもよい。機器101はさらに、心臓115を捕捉するペーシングパルスの各供給の後にリセットする所定の安全期を監視し、心臓115の収縮を示す内因的心臓活動を検出してもよい。所定の安全期が終了すると、機器101は特定の電圧レベルで特定のベクトルを介して1つ以上のペーシングパルスを供給するように構成してもよい。いくつかの実施例において、ベクトル及び電圧レベルはあらかじめ決められている。他の実施例において、ベクトル及び電圧レベルは機器101が決定してもよい。たとえば、機器101は、以前供給したペーシングパルスが心臓115を捕捉したベクトルおよび電圧レベルを選択することなどにより、供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を確実に捕捉するように支援するようにベクトル及び電圧レベルを選択してもよい。かかる安全特徴は、心臓115が確実に所定の安全期ごとに少なくとも1回収縮するように支援してもよい。これにより、心臓115の収縮率が捕捉閾値の試験中に低くなりすぎないことを確実にすることを支援する可能性がある。かかる安全特徴は、機器101が供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉できなかったと判定した後に連続的により高い電圧レベルで1つまたは複数のペーシングパルスを供給する実施例において、特に有用である可能性がある。
【0086】
いくつかの事例において、たとえば図7に関して説明したステップ値710および720または図8に関して説明したステップ値810および820などの第1及び第2のステップ値をユーザにより構成可能としてもよい。たとえばユーザは、外部アセンブリ140などの外部機器のインターフェースなどを介して、システム110に値を入力してもよい。外部機器140はその後、入力した値を機器101に送信してもよく、機器101が入力した値で第1及び第2のステップ値を構成してもよい。他の実施例において、第1及び第2のステップ値は機器101がメモリ回路104に保存する所定の値であってもよい。いくつかの事例において、第1および第2のステップ値は最大許容値を有していてもよい。第1のステップ値に対するいくつかの例示的な最大許容値は、0.5ボルト、0.4ボルト、0.3ボルト、またはあらゆる他の適切な電圧値を含む。第2のステップ値に対するいくつかの例示的な最大許容値は、0.25ボルト、0.2ボルト、0.15ボルト、またはあらゆる他の適切な電圧値を含む。いくつかの事例において、第1及び第2のステップ値は最小許容値を有していてもよい。
【0087】
上述の技術は説明のための実施例に過ぎないことを理解すべきである。上述の実施例とは異なるが、本開示の範囲内に入る他の実施例が可能であると考えられる。たとえば、上述の図3図8の実施例において、機器101は、供給した電気的刺激が心臓を捕捉したかどうかを自動的に判定するように説明した。しかし、他の実施例において、供給した電気的刺激が心臓を捕捉したかどうかをユーザが判定してもよい。かかる実施例において、ユーザは、機器101または別の機器が検出した心臓の電気信号をディスプレイ機器上で見てもよい。表示された心臓の電気信号に基づいて、ユーザは、供給した電気的刺激が心臓を捕捉したかどうかを表示する内容を、ユーザインターフェース145などを介して、入力してもよい。具体的に開示した実施例との他の違いもまた、本開示の範囲に入る。
【0088】
上述の技術のいずれかを実施した後、機器101はさらに、結果をユーザに表示してもよい。たとえば、上述のように、機器101はベクトルのそれぞれに対する結果を記録してもよい。機器101はさらにかかる記録結果を、通信回路102および142を介して、外部アセンブリ140などの外部機器に送信してもよい。外部アセンブリ140はかかる結果を、たとえばユーザインターフェース145などを介して、1つ以上の表に表示してもよい。図9および図10は、外部アセンブリ140がユーザインターフェース145を介して表示する可能性のある例示的な結果を示している。
【0089】
図9に示す例示的な結果は、2列の結果の表900に表示される。第1列はベクトル列910である。ベクトル列910は、第1組のベクトルの内の全てのベクトルの一覧を含んでいてもよい。他の実施例において、ベクトル列910は第1組のベクトルのサブセットを含んでいてもよい。第2列はクイック捕捉閾値列920である。クイック捕捉閾値列920は、図3図8に関して説明した技術のいずれかの結果を表示してもよい。たとえば、クイック捕捉閾値列920は、機器101がベクトルを介した心臓115への1つ以上のペーシングパルスの供給に使用した第1の電圧レベルVの値、および各ベクトルに対する捕捉閾値がその値よりも低いか高いかを表示してもよい。他の実施例において、クイック捕捉閾値列920は、機器101がベクトルを介した心臓115への1つ以上のペーシングパルスの供給に使用した第2の電圧レベルVの値を表示してもよい。さらに他の実施例において、クイック捕捉閾値列920は、機器101がベクトルを介した心臓115への1つ以上のペーシングパルスの供給に使用した第3の電圧レベルVの値を表示してもよい。
【0090】
例示としての一実施例において、機器101は、2.5ボルトの第1の電圧レベルVでベクトルLV2−RVを介して1つ以上のペーシングパルスを供給し、供給した1つ以上のペーシングパルスが心臓115を捕捉したかどうかを判定した可能性がある。例示としての実施例において、機器101は供給した1つ以上のペーシングパルスが心臓115を捕捉したと判定した。したがって、クイック捕捉閾値列920のベクトルLV2−RVに対応する結果の表のセル930には2.5ボルトのVと併せて小なりイコール記号が入り、ベクトルLV2−RVに対する捕捉閾値が2.5ボルト以下であることを示す。供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓115を捕捉しなかった場合は、結果の表900のセル930は大なり記号を表示して、ベクトルLV2−RVに対する捕捉閾値が2.5ボルトより大きいことを示してもよい。
【0091】
他の実施例において、クイック捕捉閾値列920に表示する値は、第2の電圧レベルVの値であってもよい。たとえば、機器101は第1の電圧レベルVでペーシングパルスを最初に供給してもよい。1つのベクトルに対して供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓を捕捉したと判定した後に、機器101はさらに第2の電圧レベルVで1つ以上のペーシングパルスを供給して、供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓を捕捉したかどうかを判定してもよい。したがって、クイック捕捉閾値列920に表示する値と記号は、対応するベクトルに対する捕捉閾値が第2の電圧レベルVよりも大きい、以下、または等しいことを示してもよい。同様に、クイック捕捉閾値列920に表示する値は第3の電圧レベルVの値であってもよい。
【0092】
いくつかの実施例において、クイック捕捉閾値列920は異なる電圧値を有するセルを含んでいてもよい。たとえば、機器101が第1のベクトルに対して第1の電圧レベルVで供給した1つまたは複数のペーシングパルスが心臓を捕捉しなかったと判定した場合、クイック捕捉閾値列920の対応するセルには、セル950に示すように、第1の電圧レベルVの値および大なり記号が入ってもよい。しかし、第2のベクトルに対して、機器101が、第1の電圧レベルVで供給した1つ以上のペーシングパルスは心臓を捕捉したが、第2の電圧レベルVで供給した1つ以上のペーシングパルスは心臓を捕捉しなかったと判定した場合は、クイック捕捉閾値列920の対応するセルは、セル960に示すように、第2の電圧レベルVに等しい値および大なり記号を表示してもよい。他のかかる実施例において、対応するセルは、セル940に示すように、第1の電圧レベルVと第2の電圧レベルVの両方を、第1の電圧レベルVには小なり記号、第2の電圧レベルVには大なり記号を伴って表示してもよい。この表示は、そのベクトルに対する捕捉閾値が第1の電圧レベルVと第2の電圧レベルVの間のどこかであることを示す。第3のベクトルに対して、機器101が、第1および第2の電圧レベルVおよびVの両方で供給した1つ以上のペーシングパルスが心臓115を捕捉したと判定した場合、クイック捕捉閾値列920の対応するセルは、セル930に示すように、第2の電圧レベルVの値には小なりイコール記号を伴って表示し、そのベクトルに対する捕捉閾値が第2の電圧レベルV以下であることを示してもよい。機器101がさらに1つ以上のベクトルに対して第3の電圧レベルVで1つ以上のペーシングパルスを供給する実施例においては、対応するセルは、上記実施例のように、第3の電圧レベルVの値および大なり記号または小なりイコール記号を表示してもよい。
【0093】
図10の例示的な結果は、3列の結果の表1000に表示される。最初の2列、ベクトル列1010およびクイック捕捉閾値列1020は、図9に関して説明したベクトル列910およびクイック捕捉閾値列920と同様である。閾値列1030は、機器101が、たとえば上述の技術のいずれかに従って判定したあらゆる捕捉閾値を表示してもよい。たとえば、ベクトルLV2−RVに対して、機器101が2.5ボルトの電圧レベルVで供給した1つ以上のペーシングパルスが心臓115を捕捉したと判定した場合、機器101はさらに捕捉閾値を判定してもよい。たとえば、機器101は、現在の電圧レベルで供給した1つ以上のペーシングパルスが心臓115を捕捉できなかったと判定するまで、電圧レベルを連続的にステップダウンし、低下する電圧レベルで1つ以上のペーシングパルスを供給してもよい。一実施例として、機器101は1.2ボルトを、供給した1つ以上のペーシングパルスが心臓115を捕捉した最も低い電圧レベルであったと判定する可能性がある。したがって、機器101は、セル1040に示すように、この値を結果の表1000に表示してもよい。同様に、機器101が、第1の電圧レベルVで供給した1つ以上のペーシングパルスは心臓115を捕捉したが、第2の電圧レベルVで供給したペーシングパルスは心臓115を捕捉できなかったと判定した場合は、機器101はさらに捕捉閾値を判定してもよい。一実施例として、第1の電圧レベルVが4ボルトで第2の電圧レベルVが2.5ボルトである可能性があり、機器101は捕捉閾値を2.7ボルトであると判定する可能性がある。したがって、機器101は、セル1050に示すように、この値を結果の表1000に表示してもよい。
【0094】
いくつかの実施例において、機器101は各ベクトルに対して捕捉閾値を判定しなくてもよい。たとえば、機器101は、第2の電圧レベルVで1つ以上のペーシングパルスを供給することが心臓115を捕捉したベクトルに対する捕捉閾値のみを判定してもよい。他の実施例において、機器101は、第1の電圧レベルVで1つ以上のペーシングパルスを供給することが心臓115を捕捉したベクトルに対する捕捉閾値のみを判定してもよい。さらに他の実施例において、機器101は、第3の電圧レベルVで1つ以上のペーシングパルスを供給することが心臓115を捕捉したベクトルに対する捕捉閾値のみを判定してもよい。したがって、閾値列1030の1つ以上のセルは、セル1060および1070のように、値を全く表示しなくてもよい。いくつかの実施例において、機器101は上述の実施例のいずれかのように、第1、第2、および/または第3の電圧レベルで1つ以上のペーシングパルスを供給してもよい。機器はその後、第3列1030にはいずれのベクトルに対しても記入することなく、結果の表1000に結果を表示してもよい。その後、ユーザは結果の表1000に表示された1つ以上のベクトルを選択してもよく、機器101はその後選択されたベクトルのみに対する捕捉閾値を判定してもよい。
【0095】
上述のように、それにより機器101が動作するパラメータの数がユーザによって構成されてもよい。図11は、たとえば外部アセンブリ140などの外部機器によってユーザに表示されてもよい例示的なGUI1116を示している。GUI1116は、たとえば、RV−LVディレイ列1140のRV−LVディレイ、インピーダンス列1142のインピーダンス、およびPS閾値列1144の横隔神経刺激閾値などの、各ベクトルに対する様々なパラメータに加えて、ベクトルの数1138を一覧にする表1136を含んでいてもよい。表1136はさらに、クイック捕捉閾値列1146を含んでいてもよい。クイック捕捉閾値列1146は、図9および図10のクイック捕捉閾値列920または1020と同様であってもよい。いくつかの実施例において、表1136は、図10の列1030に関して説明したように、閾値を表示する列をさらに含んでいてもよい。
【0096】
GUI1116はさらに、第1電圧レベル枠1120、第2電圧レベル枠1122、および/または第3電圧レベル枠1124を含んでいてもよい。そのように提供されている場合、ユーザは、機器101がベクトル1138にペーシングパルスを供給する前に、枠1120、1122、および/または1124のいずれかに値を入力または現在の値を変更してもよい。したがって、機器101は枠1120、1122、および/または1133内の値で第1の電圧レベルV、第2の電圧レベルV、および/または第3の電圧レベルVを構成してもよい。機器101が第3の電圧レベルVを介してペーシングパルスを供給しない実施例において、GUI1116は表示枠1124を省略してもよい。各枠は、最大および最小許容値、あるいは最大または最小許容値を有していてもよい。ユーザが枠1120、1122、および/または1124のいずれかに、その枠に対して最大許容値よりも大きい値および最小許容値よりも小さい値、あるいは最大許容値よりも大きい値または最小許容値よりも小さい値の入力を試みる場合、GUI1116は警告の新たなウィンドウをユーザに表示してもよい。さらに、機器101は、上述の実施例で説明したように、最大/最小許容値に対応する電圧レベルを構成してもよい。
【0097】
機器101が1つ以上のステップ値を使用し、かかるステップ値が構成可能である実施例において、GUI1116はさらに、第1ステップ値枠1126および第2ステップ値枠1128、あるいは第1ステップ値枠1126または第2ステップ値枠1128を表示してもよい。枠1120、1122、および1124と同様に、ユーザは枠1126と1128のいずれかまたは両方に値を入力または値を変更してもよい。機器101はその後、枠1126および1128の値で、第1ステップ値および第2ステップ値、あるいは第1ステップ値または第2ステップ値を構成してもよい。いくつかの場合、枠1126および1128は最大/最小許容値を有していてもよい。ユーザが枠1126および1128のいずれかに、その枠に対して最大許容値よりも大きい値および最小許容値よりも小さい値、あるいは最大許容値よりも大きい値または最小許容値よりも小さい値の入力を試みる場合、GUI1116は警告の新たなウィンドウをユーザに表示してもよい。さらに、機器101は、最大/最小許容値に対応するステップ値を構成してもよい。
【0098】
いくつかの場合、機器101は各ベクトルに対するRV−LVディレイパラメータ、インピーダンスパラメータ、および/または横隔神経刺激パラメータを判定するために7.5ボルトなどの比較的高い電圧を使用し、それらのパラメータを表1136のRV−LVディレイ列1140、インピーダンス列1142、および/またはPS閾値列1144に記入してもよい。いくつかの場合、ユーザは特定の列に対する分類ボタンを選択することによってベクトルを分類してもよい。図10に示す実施例において、ユーザは分類ボタン1144aを選択し、それにより7.5ボルトで横隔神経刺激を生成した全てのベクトルを、これらは所要性がより低いベクトルであるため、表1136の一番下に配置する。ユーザはその後、本明細書で説明する捕捉閾値アルゴリズムのいずれかを開始するためにLV閾値検索開始ボタン252を選択してもよい。いくつかの事例において、LV閾値検索開始ボタン252を選択する前に、ユーザは特定のベクトル1138を選択し、その後、本明細書で説明するように捕捉閾値アルゴリズムを選択したベクトルのみに対して実行するためにLV閾値検索開始ボタン252を選択してもよい。
【0099】
図12は、図1および図2のいずれかに示すような埋め込み型医療機器システムによって実施される可能性のある例示的な方法のフロー図である。図12の方法は図1の医療機器システム100に関して説明するが、図12の方法はあらゆる適切な医療機器システムによって実行される可能性がある。
【0100】
いくつかの実施例において、埋め込み型医療機器、たとえばシステム100の埋め込み型医療機器101は、心臓115内に延びる1つ以上のリードと共に患者内に埋め込まれてもよい。機器101は心臓の事象を検出し、心臓115に電気的刺激を供給するように構成してもよい。いくつかの実施例において、1202で示すように、機器101は、マルチベクトル医療システムの第1組の2つ以上のベクトルの内の各ベクトルに第1の電圧で電気的刺激を供給するように構成してもよい。1204で示すように、機器101はさらに、第1の電圧で供給した電気的刺激が第1組の2つ以上のベクトルの内のベクトルのそれぞれに対して捕捉をもたらしたかどうかを判定するように構成してもよい。たとえば、機器101は電気的刺激を供給した後に心臓の電気信号を検出してもよい。機器101が心臓の電気信号、または捕捉を示す特定のパターンの心臓の電気信号を検出する場合、機器101は供給した電気的刺激が捕捉をもたらしたと判定してもよい。機器101はさらに、1206で示すように、第1組の2つ以上のベクトルの内の捕捉をもたらしたと判定したベクトルを第2組のベクトルに特定するように構成してもよい。機器101はその後、1208で示すように、電気的刺激を第1の電圧よりも低い第2の電圧で第2組のベクトルの内の各ベクトルに供給してもよい。次に、機器101は、1210で示すように、第2の電圧で供給した電気的刺激が第2組のベクトルの内のベクトルのそれぞれに対して捕捉をもたらしたかどうかを判定してもよい。
【0101】
図13は、図1および図2のいずれかに示すような埋め込み型医療機器システムによって実施される可能性のある別の例示的な方法のフロー図である。図13の方法は図1の医療機器システム100に関して説明するが、図13の方法はあらゆる適切な医療機器システムによって実行される可能性がある。
【0102】
いくつかの実施例において、埋め込み型医療機器、たとえばシステム100の埋め込み型医療機器101は、心臓115内に延びる1つ以上のリードと共に患者内に埋め込まれてもよい。機器101は心臓の事象を検出し、心臓115に電気的刺激を供給するように構成してもよい。いくつかの実施例において、1302で示すように、機器101は、捕捉が検出されなくなるまで第1の電圧ステップを使用して電気刺激パルスの電圧を連続的にステップダウンするように構成してもよい。機器101はさらに、1304で示すように、電圧を上げて、その後捕捉が検出されなくなるまで、第1の電圧ステップよりも小さい第2の電圧ステップを使用して電気刺激パルスの電圧を連続的にステップダウンするように構成してもよい。
【0103】
図14は、図1および図2のいずれかに示すような埋め込み型医療機器システムによって実施される可能性のある例示的な方法の別のフロー図である。図14の方法は図1の医療機器システム100に関して説明するが、図14の方法はあらゆる適切な医療機器システムによって実行される可能性がある。
【0104】
いくつかの実施例において、埋め込み型医療機器、たとえばシステム100の埋め込み型医療機器101は、心臓115内に延びる1つ以上のリードと共に患者内に埋め込まれてもよい。機器101は心臓の事象を検出し、心臓115に電気的刺激を供給するように構成してもよい。機器101は、1402で示すように、ユーザが定義した第1の電圧レベルV1を受信するように構成してもよい。たとえばユーザは、ユーザインターフェース145などを介して、電圧レベルV1を示す入力を行ってもよい。いくつかの実施例において、機器101は、ユーザインターフェース145に、ユーザが入力を行うための入力枠を提供するGUI1116などのGUIを表示させてもよい。図示の実施例において、ユーザが定義した第1の電圧レベルはGUI1116の入力枠1120を介して入力してもよい。入力を行うと、機器101は、1404で示すように、マルチベクトル医療システムの第1群のベクトルの内の各ベクトルにユーザが定義した第1の電圧レベルで電気的刺激を供給してもよい。機器101はその後、1406で示すように、それに対してユーザが定義した第1の電圧レベルV1で供給した電気的刺激が捕捉をもたらした第1群の2つ以上のベクトルの内のベクトルを含む、第2群のベクトルを特定するように構成してもよい。たとえば、いくつかの実施例において、機器101は供給した電気的刺激が心臓を捕捉したかどうかを自動的に判定してもよい。他の実施例において、機器101は供給した電気的刺激が心臓を捕捉したかどうかを示すユーザからの入力を受信してもよい。
【0105】
第2群のベクトルを特定した後、機器101は、1408で示すように、特定した第2群のベクトルの内のベクトルのそれぞれに対して試験を実施してもよい。いくつかの実施例において、機器101は第2群のベクトルの内のベクトルのそれぞれに対して従来の捕捉閾値試験を実施してもよい。機器101は、従来の捕捉閾値試験のための初期電圧レベルとして、ユーザが定義した第1の電圧レベルV1を使用してもよい。他の実施例において、機器101は、従来の捕捉閾値試験のための初期電圧レベルとして、ユーザが定義した第1の電圧レベルV1よりも小さいかまたは大きい電圧レベルなどの異なる電圧レベルを使用してもよい。いくつかの事例において、従来の捕捉試験のための初期電圧レベルはユーザが定義したものでもよい。いくつかの実施例において、試験は図3図8図12、および図13に関して本明細書において開示したいずれかの技術を含んでいてもよい。
【0106】
いくつかの場合、第1の電圧レベルV1は第1群のベクトルの内の全てのベクトルに対する捕捉閾値を超えると予想されるレベル(たとえば、7ボルト)に設定してもよい。他の事例において、第1の電圧レベルV1はユーザがその後の長期間のペーシングに対して容認できる電圧レベルであるとみなすレベル(たとえば、3ボルト)に設定してもよく、システムは第1群のベクトルの内のどのベクトルがその電圧レベルで心臓を捕捉しないかを判定し、自動的にそれらのベクトルを第2群のベクトルから削除してもよい。
【0107】
当業者であれば、本開示は本明細書で説明・意図した特定の実施形態以外の様々な形態で実施する可能性があることを認識するであろう。したがって、形態及び詳細の変更は、添付の特許請求の範囲に記載する本開示の範囲および主旨から逸脱しない範囲で行うことができる。
図1
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図3
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図13
図14