(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1:装置構成>
図1は、本発明の実施形態1に係る車両制御装置100の回路図である。車両制御装置100は、車両の動作を制御する処理を実行する装置であり、第1定電圧生成回路110、第1高電圧検出回路120、第1スイッチ130、第2定電圧生成回路140、第2高電圧検出回路150、第2スイッチ160、CPU170、IC(Integrated Circuit)180を備える。
【0011】
第1定電圧生成回路110は、外部電源Bから電圧(例えば14V)の供給を受け、これを所定の定電圧(例えば5V)に変換して、CPU170やIC180などの負荷回路に対して出力する。
【0012】
第1高電圧検出回路120は、第1定電圧生成回路110が第1基準電圧を超える電圧を生成したとき、第1スイッチ130をOFFする回路である。第1高電圧検出回路120は、コンパレータ121、第1基準電圧源122、バッファ123を備える。
【0013】
第1基準電圧源122は、上述の第1基準電圧(例えば5.5V)を出力する。コンパレータ121は、第1定電圧生成回路110の出力電圧と第1基準電圧源122が出力する第1基準電圧とを比較し、前者のほうが大きい場合は第1スイッチ130をOFFさせる駆動信号をバッファ123へ出力する。バッファ123はその駆動信号を適当な値まで増幅して第1スイッチ130を駆動する。
【0014】
第1スイッチ130は、第1定電圧生成回路110の出力端と各負荷回路の入力端との間に配置されており、第1スイッチ130がONになっているときのみ第1定電圧生成回路110の出力電圧は各負荷回路に対して供給される。
【0015】
第2定電圧生成回路140は第1定電圧生成回路110と同様の機能を備える。第1定電圧生成回路110の出力と第2定電圧生成回路140の出力は、後述する出力回路を介してCPU170やIC180などの負荷回路に対して出力される。第1定電圧生成回路110の定格電力と第2定電圧生成回路140の定格電力は必ずしも同一でなくともよいが、本実施形態1においては説明の簡易のため同一であるものとする。
【0016】
第2高電圧検出回路150は、第2定電圧生成回路140が第2基準電圧を超える電圧を生成したとき、第2スイッチ160をOFFする回路である。第2高電圧検出回路150は、コンパレータ151、第2基準電圧源152、バッファ153を備える。これら回路の機能は第1高電圧検出回路120が備える対応する各回路と同様である。第2基準電圧源152が出力する第2基準電圧は、必ずしも第1基準電圧源122が出力する第1基準電圧と同一でなくともよいが、本実施形態1においては各定電圧生成回路の定格電力が同一であることに鑑みて各基準電圧も同一であるものとする。
【0017】
第2スイッチ160は、第2定電圧生成回路140の出力端と各負荷回路の入力端との間に配置されており、第2スイッチ160がONになっているときのみ第2定電圧生成回路140の出力電圧は各負荷回路に対して供給される。
【0018】
第1スイッチ130と第2スイッチ160は、例えば電気リレーなどのような部品を用いて構成することができるが、同様の動作を実現することができればこれに限られるものではない。
【0019】
<実施の形態1:正常時の動作>
外部電源Bが車両制御装置100に対して供給されると、第1定電圧生成回路110は規定の定電圧を生成し出力する。第1定電圧生成回路110が生成した定電圧は、コンパレータ121に入力される。コンパレータ121には、第1基準電圧源122が出力する第1基準電圧も入力される。コンパレータ121に入力される定電圧が第1基準電圧以下である場合、コンパレータ121は第1スイッチ130をONする。その結果、第1定電圧生成回路110が生成した定電圧がCPU170とIC180に対して供給される。
【0020】
外部電源Bが第2定電圧生成回路140に対して供給されると、第2定電圧生成回路140は規定の定電圧を生成し出力する。第2定電圧生成回路140が生成した定電圧は、コンパレータ151に入力される。コンパレータ151には、第2基準電圧源152が出力する第2基準電圧も入力される。コンパレータ151に入力される定電圧が第2基準電圧以下である場合、コンパレータ151は第2スイッチ160をONする。その結果、第2定電圧生成回路140が生成した定電圧がCPU170およびIC180に対して供給される。
【0021】
第1スイッチ130の出力端と第2スイッチ160の出力端は、例えばワイヤードOR回路などによって構成された出力回路を介して各負荷回路の入力端と接続されている。出力回路は、第1スイッチ130の出力電圧と第2スイッチ160の出力電圧のうちいずれか大きい方を、各負荷回路に対して出力する。したがって正常動作時は、第1定電圧生成回路110と第2定電圧生成回路140それぞれが生成した定電圧が各負荷回路に対して供給される。
【0022】
<実施の形態1:電圧低下時の動作>
素子故障などの原因により、第1定電圧生成回路110が生成する電圧が規定電圧未満(例えば3V)まで低下したと仮定する。
【0023】
各定電圧生成回路の出力は、それぞれ第1スイッチ130の出力端と第2スイッチ160の出力端に配置されたワイヤードORによる出力回路を介して接続されている。したがって、第1定電圧生成回路110が生成する定電圧が低下しても、第2定電圧生成回路140が生成する定電圧が正常であれば、これらのうち高い方(すなわち第2定電圧生成回路140の出力電圧)が負荷回路に対して供給される。そのため、車両制御装置100は正常動作を継続することができる。第2定電圧生成回路140の出力電圧が低下した場合も同様である。
【0024】
<実施の形態1:電圧上昇時の動作>
素子故障などの原因により、第1定電圧生成回路110が生成する電圧が第1基準電圧を超えた(例えば6V)と仮定する。
【0025】
第1定電圧生成回路110が生成した、規定電圧よりも高い電圧は、コンパレータ121に対して入力される。その結果、コンパレータ121は、第1基準電圧を超える電圧が入力されたことを検知し、第1スイッチ130を駆動してOFFにする。第1スイッチ130がOFFになると、第1定電圧生成回路110は負荷回路から電気的に切断され、第1定電圧生成回路110の出力電圧は出力回路に対して供給されなくなる。一方で、第2定電圧生成回路140が生成する定電圧は、第2スイッチ160および出力回路を介して負荷回路に対して供給される。したがって、車両制御装置100は正常動作を継続することができる。第2定電圧生成回路140の出力電圧が第2基準電圧を超えた場合も同様である。
【0026】
<実施の形態1:動作フロー>
図2は、車両制御装置100の動作フローを示すフローチャートである。車両制御装置100は、外部電源Bが投入されると本フローチャートを開始する。ステップS201〜S204とステップS205〜S208は並列実行される。以下
図2の各ステップについて説明する。
【0027】
(
図2:ステップS201〜S204)
第1定電圧生成回路110は第1定電圧を生成する(S201)。コンパレータ121は、第1定電圧生成回路110が生成した第1定電圧を第1基準電圧と比較する(S202)。第1定電圧が第1基準電圧未満であれば、コンパレータ121は第1スイッチ130をONにする(S203)。第1定電圧が第1基準電圧以上であれば、コンパレータ121は第1スイッチ130をOFFにする(S204)。第1スイッチ130がOFFになった場合、第1定電圧生成回路110が生成した異常な第1定電圧は、出力回路に対して供給されない。
【0028】
(
図2:ステップS205〜S208)
第2定電圧生成回路140は第2定電圧を生成する(S205)。コンパレータ151は、第2定電圧生成回路140が生成した第2定電圧を第2基準電圧と比較する(S206)。第2定電圧が第2基準電圧未満であれば、コンパレータ151は第2スイッチ160をONにする(S207)。第2定電圧が第2基準電圧以上であれば、コンパレータ151は第2スイッチ160をOFFにする(S208)。第2スイッチ160がOFFになった場合、第2定電圧生成回路140が生成した異常な第2定電圧は、出力回路に対して供給されない。
【0029】
(
図2:ステップS209〜S210)
第1スイッチ130の出力電圧と第2スイッチ160の出力電圧は、出力回路に対して並列に入力される(S209)。出力回路は、これら電圧のうち高い方を負荷回路に対して出力する(S210)。いずれか一方のスイッチがOFFになっている場合、他方の出力電圧のみが負荷回路に対して出力される。
【0030】
<実施の形態1:まとめ>
本実施形態1に係る車両制御装置100は、いずれか一方の定電圧生成回路が生成する定電圧が、規定電圧未満または基準電圧超のいずれであっても、正常に機能している他方の定電圧生成回路が生成する正常な定電圧を負荷に対して供給し続けることができる。これにより、いずれか一方の定電圧生成回路が故障したとしても、車両制御装置100の正常動作を維持することができる。特に定電圧を動作電圧として用いるCPU170やIC180などの演算回路を用いる制御装置において、本実施形態1は有効である。
【0031】
本実施形態1において、2つの定電圧生成回路のいずれも基準電圧を超える電圧を生成する故障が生じた場合は、2つのスイッチがともにOFFになるので、負荷回路に対して異常な高電圧が供給されることはない。したがってこれら負荷回路を素子破壊から保護することができる。
【0032】
本実施形態1において、2つの定電圧生成回路を備える構成を説明したが、定電圧生成回路が3つ以上ある場合であっても、これらの出力電圧をスイッチ経由でOR出力回路に対して入力することにより、本実施形態1と同様の機能を実現できる。以下の実施形態においても同様である。
【0033】
本実施形態1においては、一方の定電圧生成回路が故障した場合の動作を説明したが、定電圧生成回路が3つ以上ある場合において複数の定電圧生成回路が故障した場合であっても、正常に動作する定電圧生成回路が少なくとも1つあれば本実施形態1と同様の機能を実現できる。以下の実施形態においても同様である。
【0034】
<実施の形態2>
図3は、本発明の実施形態2に係る車両制御装置100の回路図である。本実施形態2において、第1定電圧生成回路110の定格電力は第2定電圧生成回路140の定格電力よりも大きい。また本実施形態2において、第1高電圧検出回路120は、第1定電圧生成回路110が第1基準電圧よりも大きい電圧を生成したことを検出すると、その旨をCPU170に対して併せて通知する。CPU170の動作については後述する。その他の構成は実施形態1と同様であるため、以下では主に差異点について説明する。
【0035】
コンパレータ121は、第1定電圧生成回路110が生成した電圧が第1基準電圧を超えたことを検出すると、第1スイッチ130をOFFにするとともに、異常を検出した旨をCPU170に対して通知する。
【0036】
CPU170は、第1スイッチ130がOFFになった旨の通知を受け取ると、消費電力がより小さい処理を実行するように、制御処理の内容を変更する。定格電力が小さい第2定電圧生成回路140からの電圧供給のみを用いて動作する必要があるからである。CPU170は、例えば演算周期を大きくする、演算負荷が小さい代替処理に移行する、などの手法により、消費電力を小さくすることができる。これにより、定格電力が小さい第2定電圧生成回路140のみを用いる場合であっても、車両制御装置100は正常動作を継続することができる。
【0037】
図3においては、第1定電圧生成回路110の出力電圧を検出した結果をCPU170に対して通知することとしている。これに代えて、第2定電圧生成回路140の出力電圧を検出した結果をCPU170に対して通知し、CPU170は消費電力が小さい処理に移行するようにしてもよい。正常動作している定電圧生成回路が1つになると、車両制御装置100全体として定電圧を生成する能力が低下するからである。あるいは、各定電圧生成回路の出力電圧それぞれを検出した結果をいずれもCPU170へ通知するようにしてもよい。
【0038】
<実施の形態2:まとめ>
本実施形態2に係る車両制御装置100は、いずれかの定電圧生成回路が生成する定電圧が基準電圧を超えた場合、その定電圧生成回路を負荷から遮断するとともに、CPU170は消費電力が小さい動作へ移行する。これにより、定電圧生成回路の電力供給能力が低下した場合であっても、車両制御装置100の動作を維持することができる。
【0039】
本実施形態2に係る車両制御装置100において、第2定電圧生成回路140の定格電力は第1定電圧生成回路110の定格電力よりも小さい。したがって、同等の定格電力を有する定電圧生成回路を複数設けるよりも、車両制御装置100のコストを抑制することができる。
【0040】
<実施の形態3>
図4は、本発明の実施形態3に係る車両制御装置100の回路図である。本実施形態3において、第1スイッチ130と第2スイッチ160のいずれか一方または双方は、半導体スイッチを用いて構成されている。その他の構成は実施形態1〜2と同様である。
図4は実施形態1の回路構成において半導体スイッチを用いた構成を例示した。
【0041】
定電圧生成回路と負荷回路との間の電気的導通を遮断するスイッチとして半導体スイッチを用いることにより、実施形態1〜2と同様の効果を発揮しつつ、車両制御装置100の回路規模を小型化するとともに、コストを抑制することができる。また半導体スイッチは回路基板上に実装し易いので、特に車両の動作を電子的に制御する装置において有用である。
【0042】
<実施の形態4>
図5は、本発明の実施形態4に係る車両制御装置100の回路図である。本実施形態4において、第1高電圧検出回路120と第2高電圧検出回路150はともに、基準電圧源として共通基準電圧源190を用いる。共通基準電圧源190は、各高電圧検出回路のコンパレータが比較対象として用いる基準電圧を提供する。各基準電圧は共通であってもよいし、各高電圧検出回路に対して個別に基準電圧を提供するようにしてもよい。その他の構成は実施形態1〜3と同様である。
【0043】
共通基準電圧源190は、独自の電源を用いて基準電圧を生成する回路として構成することもできるし、外部電源Bから電力の供給を受けてこれを基準電圧に変換する回路として構成することもできる。さらには、例えば車両制御装置100が備える信号入力ポートを介して基準電圧値を指定する信号を受け取り、その指定値に応じて基準電圧を生成する回路として構成することもできる。
【0044】
基準電圧源を共通にすることにより、実施形態1〜3と同様の効果を発揮しつつ、車両制御装置100の回路規模を小型化してコストを抑制することができる。また基準電圧を可変に構成することにより、例えば車両の種類によってCPU170やIC180などの回路仕様が異なる場合、これらの具体的な回路仕様に応じて基準電圧を柔軟に変更することができる。
【0045】
<実施の形態5>
図6は、本発明の実施形態5に係る車両制御装置100の回路図である。本実施形態5において、第1高電圧検出回路120は、第1定電圧生成回路110が規定電圧を超える電圧を生成した旨を、CPU170へ通知する。CPU170は、その旨を記述したログを記憶デバイス171に格納する。記憶デバイス171は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などのようなデータ書き込み可能な記憶装置である。その他の構成は実施形態1〜4と同様である。なお
図6は実施形態2の回路構成において記憶デバイス171を設けた構成を例示した。記載の便宜上、IC180は省略した。
【0046】
本実施形態5によれば、定電圧生成回路が異常な高電圧を生成した場合、記憶デバイス171が格納しているログを解析することにより、故障原因を解析することができる。ログの内容としては、例えば異常発生日時、定電圧生成回路の(異常)出力電圧値、などが考えられる。
【0047】
<本発明の変形例について>
本発明は上記した実施形態の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることもできる。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることもできる。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成を追加・削除・置換することもできる。
【0048】
実施形態1〜5において、高電圧検出回路はコンパレータが入力電圧と基準電圧を比較することにより電圧異常を検出することを説明したが、高電圧検出回路の構成はこれに限られるものではなく、同様の機能を実現する適当な回路構成を用いることができる。
【0049】
実施形態1〜5において、負荷回路としてCPU170やIC180を例示した。これらは一般に動作電圧として定電圧を供給することが必要であるため、定電圧生成回路が電圧を供給する負荷回路として適している。ただし負荷回路はこれらに限られるものではなく、定電圧を動作電圧として用いるその他回路を負荷回路とすることもできる。
【0050】
実施形態1〜5において、第1基準電圧は第1定電圧生成回路110の定格電圧(例えば5V)よりも大きく、より望ましくは第1定電圧生成回路110の定格電圧と負荷回路の最大許容電圧(例えば6V)との間に設定される。第2基準電圧は第2定電圧生成回路140の定格電圧よりも大きく、より望ましくは第2定電圧生成回路140の定格電圧と負荷回路の最大許容電圧との間に設定される。
【0051】
実施形態1〜5において、第1スイッチ130の出力端と第2スイッチ160の出力端はワイヤードOR回路によって構成される出力回路へ入力されることを説明した。これら出力電圧のうちいずれか高い方を出力する回路であれば、ワイヤードOR以外の構成を用いて出力回路を構成してもよい。
【0052】
実施形態4において、共通基準電圧源190は自ら基準電圧を生成し、あるいは基準電圧を指定できるように構成されていることを説明した。第1基準電圧源122および第2基準電圧源152もこれと同様に構成することができる。