(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6426346
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】グロープラグ
(51)【国際特許分類】
F23Q 7/00 20060101AFI20181112BHJP
【FI】
F23Q7/00 605B
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-5817(P2014-5817)
(22)【出願日】2014年1月16日
(65)【公開番号】特開2015-135191(P2015-135191A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2016年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173037
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 将典
(72)【発明者】
【氏名】江口 和隆
【審査官】
青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/126171(WO,A1)
【文献】
実開昭53−082630(JP,U)
【文献】
特開平03−091614(JP,A)
【文献】
特開2002−367760(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/103657(WO,A1)
【文献】
特開2013−228183(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0023910(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる筒状のシース管と、
少なくとも自身の一部が前記シース管の内部に配置されるとともに、自身の先端側に設
けられたコイル用雄ネジ部を有する中軸と、
前記コイル用雄ネジ部が内部に嵌合され、前記中軸を介して通電されるコイルと、
を備えるグロープラグであって、
前記コイルは、密巻きである密巻き部と、前記密巻き部よりも先端側に設けられると共
に、疎巻きである疎巻き部とを含み、
前記密巻き部のみが前記コイル用雄ネジ部と嵌合し、
前記密巻き部は、抵抗溶接によって前記中軸に結合され、
前記疎巻き部は、前記中軸の外周に接触し、
前記疎巻き部が前記中軸の外周に接触している部分には、前記コイル用雄ネジ部が設けられていないこと
を特徴とするグロープラグ。
【請求項2】
前記中軸は、大径部と、前記大径部よりも先端側に設けられると共に、前記大径部の先
端外径よりも径が小さい小径部と、を有し、
前記コイル用雄ネジ部は、前記小径部に設けられ、
前記疎巻き部は、前記小径部の外周に接触していること
を特徴とする請求項1に記載のグロープラグ。
【請求項3】
前記小径部のビッカース硬度は、前記大径部のビッカース硬度よりも高いこと
を特徴とする請求項2に記載のグロープラグ。
【請求項4】
前記大径部の先端の外径よりも、前記コイルの外径の方が小さいこと
を特徴とする請求項2から請求項3までの何れか一項に記載のグロープラグ。
【請求項5】
前記コイルは、前記小径部と前記大径部との段差によって形成された面に接触すること
を特徴とする請求項2から請求項4までの何れか一項に記載のグロープラグ。
【請求項6】
前記小径部は、先端付近において、先細りに形成されていること
を特徴とする請求項2から請求項5までの何れか一項に記載のグロープラグ。
【請求項7】
前記シース管の後端側を自身の内側に配置させると共に、前記中軸の外周面から離間し
た状態で当該中軸の径方向周囲を取り囲む主体金具を更に有し、
前記主体金具の外周面にはエンジンへの取り付け用のエンジン用雄ネジ部が形成されて
おり、
前記エンジン用雄ネジ部は、ネジの呼び径がM6以下であること
を特徴とする請求項2から請求項6までの何れか一項に記載のグロープラグ。
【請求項8】
前記コイル用雄ネジ部の外径は、前記コイル用雄ネジ部の前記軸線方向の長さよりも大
きいこと
を特徴とする請求項1から請求項7までの何れか一項に記載のグロープラグ。
【請求項9】
前記コイル用雄ネジ部の外径は、前記コイル用雄ネジ部の前記軸線方向の長さよりも小
さいこと
を特徴とする請求項1から請求項7までの何れか一項に記載のグロープラグ。
【請求項10】
前記コイルは、前記中軸からの通電により発熱する発熱コイルと、前記発熱コイルの後
端部に接合され、前記発熱コイルと直列接続される制御コイルとを備え、
前記コイルが前記コイル用雄ネジ部と嵌合する部位は、前記制御コイルであること
を特徴とする請求項1から請求項9までの何れか一項に記載のグロープラグ。
【請求項11】
前記シース管は、先端が閉塞しており、
前記コイルは、前記シース管に接合されていること
を特徴とする請求項1から請求項10までの何れか一項に記載のグロープラグ。
【請求項12】
前記コイル用雄ネジ部は、ネジ山の頂部に丸みがつけられていること
を特徴とする請求項1から請求項11までの何れか一項に記載のグロープラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロープラグに関する。
【背景技術】
【0002】
グロープラグは、例えば圧縮着火方式による内燃機関(例えばディーゼルエンジン等)の補助熱源として用いられる。グロープラグの製造は、グロープラグの内部に配置される中軸と、通電によって発熱する部位を含むコイルとを結合する工程を含む場合がある。この結合は、例えば、ネジ止めを利用して実現される。このネジ止めは、中軸の端に設けられた雄ネジと、コイルの内周とによるものである。コイルの内周は、その形状によって、雌ネジとして機能する(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−47642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術が有する課題は、中軸の強度の確保と、コイル内周に雄ネジ部が挿入された部材(以下「結合部材」ともいう)の小径化との両立が難しいことである。中軸の強度を確保するためには、中軸の外径を大きくするのが好ましい。一方、コイルの外径は、雄ネジ部の外径よりも大きくなる。よって、強度の確保のために中軸の外径を大きくすると、コイルの外径も大きくなり、ひいては結合部材の外径が大きくなりがちであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、先述した課題を解決するためのものであり、以下の形態として実現できる。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、軸線方向に延びる筒状のシース管と;少なくとも自身の一部が前記シース管の内部に配置されるとともに、自身の先端側に設けられたコイル用雄ネジ部を有する中軸と;前記コイル用雄ネジ部が内部に嵌合され、前記中軸を介して通電されるコイルと;を備えるグロープラグが提供される。このグロープラグにおいて、前記中軸は、大径部と、前記大径部よりも先端側に設けられると共に、前記大径部の先端外径よりも径が小さい小径部と、を有し;前記コイル用雄ネジ部は、前記小径部に設けられていることを特徴とする。この形態によれば、中軸の強度の低下を抑制しつつ、結合部材の外径を細くしやすくなる。
【0007】
(2)上記形態において、前記コイルは、密巻きである密巻き部と、前記密巻き部よりも先端側に設けられると共に、疎巻きである疎巻き部とを含み;前記密巻き部が前記コイル用雄ネジ部と嵌合してもよい。この形態によれば、密巻き部によってコイル用雄ネジ部の挿入が容易になり、且つ、疎巻き部を制御コイルとして機能させることによって、温度制御が可能になる。加えて、疎巻き部は、少ない材料で軸線方向の長さを確保できる。
【0008】
(3)上記形態において、前記小径部のビッカース硬度は、前記大径部のビッカース硬度よりも高くてもよい。この形態によれば、大径部よりも細い小径部を補強しつつ、中軸全体の硬度を上げることを避けることができる。
【0009】
(4)上記形態において、前記大径部の先端の外径よりも、前記コイルの外径の方が小さくてもよい。この形態によれば、結合部材の外径が、コイルの外径によって大きくなることが回避される。
【0010】
(5)上記形態において、前記コイルは、前記小径部と前記大径部との段差によって形成された面に接触してもよい。この形態によれば、製造工程において、コイルの位置決めが容易になる。
【0011】
(6)上記形態において、前記小径部は、先端付近において、先細りに形成されてもよい。この形態によれば、小径部をコイル内周に挿入しやすくなる。
【0012】
(7)上記形態において、前記シース管の後端側を自身の内側に配置させると共に、前記中軸の外周面から離間した状態で当該中軸の径方向周囲を取り囲む主体金具を更に有し;前記主体金具の外周面にはエンジンへの取り付け用のエンジン用雄ネジ部が形成されており;前記エンジン用雄ネジ部は、ネジの呼び径がM6以下であってもよい。この形態によれば、グロープラグの小径化が実現しやすくなる。グロープラグの小径化のためには、この形態のようにエンジン用雄ネジ部の呼び径を小さくして、細くすることが好ましい。エンジン用雄ネジ部を細くすると共に、主体金具を全体的に細くすることで、グロープラグの小径化が実現される。主体金具を全体的に細くすれば、主体金具の内径も小さくなるので、主体金具の内側に位置するシース管も細くするのが好ましい。シース管が細くなると、内部に配置されるコイルも細くして、シース管との接触を回避するのが好ましい。コイルが細くなると、コイルの内周と嵌合する中軸も細くするのが好ましい。但し、中軸を全体的に細くすると中軸の強度が低下する。そこで、既に述べたように、コイルと嵌合する小径部を設けることによって、中軸の強度低下を抑制しつつ、上記の通りグロープラグの小径化が実現しやすくなる。
【0013】
(8)他の形態において、軸線方向に延びる筒状のシース管と;少なくとも自身の一部が前記シース管の内部に配置されるとともに、自身の先端側に設けられたコイル用雄ネジ部を有する中軸と;前記コイル用雄ネジ部が内部に嵌合され、前記中軸を介して通電されるコイルと;を備えるグロープラグが提供される。このグロープラグにおいて、前記コイルは、密巻きである密巻き部と疎巻きである疎巻き部とを含み;前記密巻き部が前記コイル用雄ネジ部と嵌合していることを特徴とする。この形態によれば、密巻きによってコイル用雄ネジ部の挿入が容易なり、且つ、疎巻き部を制御コイルとして機能させることによって、温度制御が可能になる。加えて、疎巻き部は、少ない材料で軸線方向の長さを確保できる。
【0014】
(9)上記形態において、前記コイル用雄ネジ部の外径は、前記コイル用雄ネジ部の前記軸線方向の長さよりも大きくてもよい。この形態によれば、コイル用雄ネジ部の軸線方向の長さが短いことによって、コイル用雄ネジ部と密巻き部との嵌合のばらつきが小さくなり、ひいては、コイルの温度性能のばらつきが小さくなる。
【0015】
(10)上記形態において、前記コイル用雄ネジ部の外径は、前記コイル用雄ネジ部の前記軸線方向の長さよりも小さくてもよい。この形態によれば、コイル用雄ネジ部の軸線方向の長さが長いことによって、コイル用雄ネジ部とコイルとの挿入長さが長くなり、コイルが安定的に保持される。
【0016】
(11)上記形態において、前記コイルは、前記中軸からの通電により発熱する発熱コイルと、前記発熱コイルの後端部に接合され、前記発熱コイルと直列接続される制御コイルとを備え;前記コイルが前記コイル用雄ネジ部と嵌合する部位は、前記制御コイルでもよい。この形態によれば、発熱コイルの発熱を制御コイルで自己制御できる。
【0017】
(12)上記形態において、前記シース管は、先端が閉塞しており;前記コイルは、前記シース管に接合されてもよい。この形態によれば、コイルをシース管によって保護しつつ、コイルとシース管とを導通させることができる。
【0018】
(13)上記形態において、前記コイル用雄ネジ部は、ネジ山の頂部に丸みがつけられてもよい。この形態によれば、コイルの嵌合がスムーズに実行できる。
【0019】
(14)上記形態において、前記コイルは、抵抗溶接によって前記コイル用雄ネジ部に結合されてもよい。この形態によれば、コイルをコイル用雄ネジ部に確実に結合できる。ひいては、製造工程において、結合部材の取り扱いが容易になる。
【0020】
本発明は、上記以外の種々の形態でも実現できる。例えば、グロープラグの製造方法、グロープラグの一部としてのシースヒータ等として実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】接合される前における中軸と制御コイルとを示す図。
【
図4】接合された状態における中軸と制御コイルとの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施形態1を説明する。
図1は、グロープラグ10を示す。
図1は、軸線Oから紙面右側に外観構成を示し、軸線Oから紙面左側に断面構成を示す。グロープラグ10は、いわゆるメタルグロープラグであり、ディーゼルエンジンの始動時における点火を補助する熱源として機能する。
【0023】
グロープラグ10は、中軸200と、主体金具500と、通電によって発熱するシースヒータ800とを備える。これらの部材は、グロープラグ10の軸線Oに沿って組み付けられている。なお、本明細書では、グロープラグ10におけるシースヒータ800側を「先端側」と呼び、その反対側を「後端側」と呼ぶ。
【0024】
主体金具500は、炭素鋼等の素材を筒状に成形した部材である。主体金具500は、先端側の端部においてシースヒータ800を保持する。主体金具500は、後端側の端部において絶縁部材410とオーリング460とを介して中軸200を保持する。絶縁部材410は、絶縁部材410の後端に接するリング300が中軸200に加締められることで、軸線O方向の位置が固定される。絶縁部材410によって、主体金具500の後端側が絶縁される。主体金具500は、中軸200の一部、具体的には絶縁部材410からシースヒータ800に至る部位を内包する。主体金具500は、軸孔510と、工具係合部520と、エンジン用雄ネジ部540とを備える。
【0025】
軸孔510は、軸線Oに沿って形成された貫通孔であり、中軸200よりも大きな径を有する。軸孔510に中軸200が位置決めされた状態で、軸孔510と中軸200との間には、両者を電気的に絶縁する空隙が形成される。つまり、主体金具500は、中軸200の外周面から離間した状態で、中軸200の外周面を取り囲む。
【0026】
軸孔510の先端側には、シースヒータ800が圧入されて接合されている。エンジン用雄ネジ部540は、エンジン(図示しない)に形成された雌ネジと嵌合する。エンジン用雄ネジ部540の呼び径は、本実施形態においてはM6である。工具係合部520は、グロープラグ10の取り付けと取り外しとに用いられる工具(図示しない)に係合する。
【0027】
中軸200は、導電材料で円柱状に成形されている。中軸200は、主体金具500の軸孔510に挿入された状態で軸線Oに沿って組み付けられる。中軸200は、後端側に設けられた接続部290を備える。接続部290は、主体金具500から突出した雄ネジである。接続部290には、係合部材100が嵌り合う。
【0028】
図2は、シースヒータ800の断面図である。シースヒータ800は、シース管810と、発熱体としての発熱コイル820と、制御コイル830と、絶縁粉末840とを備える。
【0029】
シース管810は、軸線O方向に延び、先端が閉塞した筒状部材である。発熱コイル820、制御コイル830及び絶縁粉末840は、シース管810の内部に配置される。シース管810は、シース管先端部811とシース管後端部819とを備える。シース管先端部811は、シース管810の先端側において、外側に向けて丸く形成された端部である。シース管後端部819は、シース管810の後端側において開口した端部である。
【0030】
シース管810は、パッキン600と絶縁粉末840とによって、中軸200から電気的に絶縁される。パッキン600は、中軸200とシース管810との間に挟まれた絶縁部材である。シース管810は、主体金具500とは電気的に接続されている。
【0031】
絶縁粉末840は、電気絶縁性を有する粉末である。絶縁粉末840としては、例えば、酸化マグネシウム(MgO)の粉末が用いられる。絶縁粉末840は、シース管810の内側に充填され、シース管810と、発熱コイル820と、制御コイル830と、中軸200との各隙間を電気的に絶縁する。
【0032】
制御コイル830は、発熱コイル820を形成する材料よりも電気比抵抗の温度係数が大きい導電材料で形成されたコイルである。この導電材料としては、ニッケルが好ましく、この他、例えば、コバルトやニッケルを主成分とする合金でもよい。制御コイル830は、シース管810の内側に設けられ、発熱コイル820に供給される電力を制御する。
【0033】
制御コイル830は、疎巻き部835と、密巻き部837とを備える。疎巻き部835は、密巻き部837よりも先端側に設けられると共に、軸線O方向について密巻き部837よりも疎巻きである。
【0034】
疎巻き部835は、制御コイル先端部831を備える。制御コイル先端部831は、制御コイル830の先端側の端部である。制御コイル先端部831は、発熱コイル820の発熱コイル後端部829に溶接される。この溶接によって、制御コイル830は、発熱コイル820に直列接続されて導通する。
【0035】
密巻き部837は、制御コイル後端部839を備える。制御コイル後端部839は、制御コイル830の後端側の端部である。制御コイル後端部839は、中軸200の段差面215(
図3参照)に接触し、密巻き部837は、小径部210に接合される。この接合と、小径部210とについては、
図3と共に詳述する。この接合によって、制御コイル830は、中軸200と電気的に接続される。
【0036】
発熱コイル820は、導電材料で形成されたコイルである。発熱コイル820は、シース管810の内側に軸線O方向に沿って配置され、通電によって発熱する。発熱コイル820は、先端側の端部である発熱コイル先端部821と、後端側の端部である発熱コイル後端部829とを備える。発熱コイル先端部821は、シース管810の先端付近に溶接されることによってシース管810と電気的に接続される。
【0037】
図3は、接合される前における中軸200と、制御コイル830とを示す。中軸200は、小径部210と、段差面220と、大径部230とを備える。小径部210の外周には、コイル用雄ネジ部215が設けられている。
【0038】
大径部230は、軸線O方向において、中軸200の大部分を占める部位であり、外径は軸線O方向について一定である。小径部210は、大径部230の先端に設けられ、大径部230よりも外径が小さい部位である。段差面220は、小径部210と大径部230との外径に差があることによって、小径部210と大径部230との境界に形成される平面である。
【0039】
制御コイル830は、発熱コイル820と溶接された後、小径部210に仮接続される。この仮接続は、密巻き部837の内周を雌ネジとして機能させ、コイル用雄ネジ部215に対して嵌合させることによって実現される。この嵌合のために、コイル用雄ネジ部215のピッチは、密巻き部837のピッチと同程度に設定されている。この嵌合は、密巻き部837の後端が段差面220に接触するまで、発熱コイル820と一体になった制御コイル830を回転させることによって実現される。仮接続の後、抵抗溶接によって、小径部210と密巻き部837とを結合させる。
【0040】
なお、このようにして中軸200と発熱コイル820と制御コイル830とが一体となった部材を、結合部材と呼ぶ。結合部材は、次の製造工程において、シース管810に挿入される。この後、シース管810と発熱コイル820の先端との溶接が実施される。
【0041】
図3に示されるように、小径部210の軸線O方向の長さX1は、小径部210の外径Y1よりも短い。長さY1は、本実施形態においては、コイル用雄ネジ部215の外径に相当する。このように長さX1が短いことによって、密巻き部837を嵌合させるために、密巻き部837を挿入する長さが短くなる。これによって、挿入のばらつきが抑制され、ひいては、発熱コイル820の温度性能のばらつきが抑制される。
【0042】
加えて、長さX1が短いことによって、密巻き部837の長さが短くて済むので、密巻き部837の製造コストが安価になる。さらには、上記のように密巻き部837を挿入する長さが短くなるので、挿入時間が短縮され、製造コストが安価になる。
【0043】
小径部210のビッカース硬度は、大径部230のビッカース硬度よりも高い。小径部210のビッカース硬度は、小径部210をヘッダー加工によって成形することで高くする。なお、焼き入れ等によって、小径部210のビッカース硬度を高くしてもよい。これによって、中軸200全体に焼き入れ等を施すことを回避しつつ、大径部230より細い小径部210を補強している。
【0044】
図4は、接合された状態における中軸200と、制御コイル830との断面図である。
図4に示されるように、大径部230の外径Tdは、密巻き部837の外径Tcよりも大きい。よって、結合部材の外径は、大径部230の外径に一致する。このような寸法関係によって、結合部材の小径化が図られている。
【0045】
図5は、
図3に示された範囲Aの拡大図であり、小径部210の先端付近を示す。
図5に示されるように、小径部210の先端は面取りされており、テーパ217が形成されている。テーパ217は、先細りに成形されている。これによって、密巻き部837を小径部210に挿入しやすくなる。
【0046】
図5に示されるように、コイル用雄ネジ部215におけるネジ山の頂部は、滑らかな形状をしており、丸みを帯びている。この形状によって、制御コイル830をスムーズに回転させることができる。
【0047】
実施形態2を説明する。
図6は、実施形態2の中軸202を示す。中軸202は、小径部212を備える。軸線O方向における小径部212の長さX2は、小径部212の外径Y2よりも長い。このため、疎巻き部835が、一巻き分、小径部212の外周に接触する。
【0048】
図7は、実施形態2において抵抗溶接が実施される様子を示す。この抵抗溶接は、実施形態と同様に、密巻き部837を小径部212に溶接するために実施される。抵抗溶接に用いられる溶接電極900は、抵抗溶接の際に、所定の圧縮力によって密巻き部837を圧縮する。
【0049】
この圧縮力は、密巻き部837の先端付近を局部的に強く圧縮し、疎巻き部835と密巻き部837との境界付近にモーメントを発生させる場合がある。但し、実施形態2においては、このモーメントに対する反力が発生し、制御コイル830は、殆ど曲がらない。この反力は、上記のように疎巻き部835が小径部212の外周に接触していることによって発生する。
【0050】
上記のように曲げを抑制する効果は、疎巻き部837と小径部212との接触箇所が多ければ、より大きくなると考えられる。
【0051】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。例えば、以下のものが例示される。
【0052】
エンジン用雄ネジ部の呼び径は、M6より小さくてもよく、例えばM5等でもよい。このようにエンジン用雄ネジ部の呼び径を小さくすることは、先述したように、小径部にコイルを嵌合させる構成によって容易に実現される。一方で、エンジン用雄ネジ部の呼び径は、M6より大きくてもよく、例えば、M8,M9,M10,M12,M14,M18でもよい。
【0053】
実施形態に例示した製造手順は、どのように変更してもよい。例えば、制御コイルと発熱コイルとを溶接したものをシース管に挿入し、その後、中軸と密巻き部とを嵌合させてもよい。或いは、中軸と密巻き部との嵌合を、発熱コイルと制御コイルとの溶接の前に実施してもよい。また、小径部と密巻き部との嵌合において、小径部を回転させてもよいし、両方を回転させてもよい。
【0054】
小径部の先端は、他の先細りの形状、例えばR形状などであってもよい。
シース管は、先端が閉塞しておらず、開放されていてもよい。
中軸の大径部の外径は、軸線方向について一定でなくてもよい。
密巻き部の外径は、大径部の外径が軸線方向について一定でない場合、大径部の先端より小さく、大径部の最も細い部位より大きくてもよい。
大径部と小径部との間は、平面(段差面)でなくても、例えば、斜面でもよい。
大径部や小径部自体が、軸線方向の少なくとも一部において、テーパ形状を有していてもよい。
メタルタイプ以外のグロープラグ、例えば、セラミックグロープラグであってもよい。
小径部と密巻き部との結合は、例えば、レーザ溶接によって実現してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…グロープラグ
100…係合部材
200…中軸
202…中軸
210…小径部
212…小径部
215…コイル用雄ネジ部
217…テーパ
220…段差面
230…大径部
290…接続部
300…リング
410…絶縁部材
460…オーリング
500…主体金具
510…軸孔
520…工具係合部
540…エンジン用雄ネジ部
600…パッキン
800…シースヒータ
810…シース管
811…シース管先端部
819…シース管後端部
820…発熱コイル
821…発熱コイル先端部
829…発熱コイル後端部
830…制御コイル
831…制御コイル先端部
835…疎巻き部
837…密巻き部
839…制御コイル後端部
840…絶縁粉末
900…溶接電極
O…軸線