【実施例1】
【0010】
以下、本発明に係る接近車両検出装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
本実施例1は、本発明を、走行中の車両の後側方の道路を監視して、隣接車線の後側方の所定の距離範囲に接近車両があるときに運転者が車線変更を行う意図を示したとき、警報を出力して注意喚起を行う、BSW機能を備えた接近車両検出装置に適用したものである。
(接近車両検出装置の適用場面の説明)
【0012】
まず、
図1A,
図1Bを用いて、接近車両検出装置100a(
図2参照)の概要と、接近車両検出装置100aが適用される道路環境について説明する。この接近車両検出装置100aは、片側3車線以上の車線数を有する道路を走行中に動作する。なお、接近車両検出装置100aは昼夜を問わず動作するが、特に、本発明を適用することによって、夜間においてより一層効果的に動作する。
【0013】
図1Aは、接近車両検出装置100aが適用される道路30の一例を示す図である。道路30は、接近車両検出装置100aが搭載された車両10が走行している走行車線20と、車両10の右方側に隣接した隣接車線22と、隣接車線22にさらに隣接した2本隣の車線24(以後、隣隣接車線24と呼ぶ)と、の3車線からなる。走行車線20の左右端はそれぞれレーンマーカL1,L2で区画されており、隣接車線22の左右端はそれぞれレーンマーカL2,L3で区画されており、隣隣接車線24の左右端はそれぞれレーンマーカL3,L4で区画されている。
【0014】
今、車両10が道路30の走行車線20を
図1Aの左向き(矢印10dの方向)に走行しているものとする。このとき、車両10の後端に後ろ向きに設置されたリアカメラ50は、少なくとも、走行車線20と隣接車線22と隣隣接車線24の路面を含む撮像範囲ωを撮像する。そして、撮像された画像の中から、車両10の後側方に設定された所定の検知範囲(ウインドウ)W1の内部に存在する、車両10に接近している他車両12(矢印12dの方向に進行)を検出する。そして、車両10に接近している他車両12が検出されたとき、および、車両10の運転者が、他車両12が接近しているにもかかわらず、車両10を隣接車線22側に車線変更しようとしたときに、後述する警報を出して注意喚起を行う。
【0015】
ここで、検知範囲(ウインドウ)W1は、例えば、車両10の後方3mから30mの範囲、車両10の右端から3mの範囲に設定される。
【0016】
なお、このとき、他車両12は前照灯12h,12hを点灯して照射範囲12rの内部を照明しているものとする。また、隣隣接車線24を矢印14dの方向に進行している他車両14は、前照灯14h,14hを点灯して照射範囲14rの内部を照明しているものとする。
【0017】
図1Aは、車両10の右後側方の領域のみを図示したものであるが、接近車両検出装置100aは、車両10の左後側方の領域に対しても同様に作用する。すなわち、
図1Bに示すように、車両10が走行車線20を走行しているときには、リアカメラ50は、少なくともレーンマーカL1,L2をそれぞれ左右端とする走行車線20と、レーンマーカL5,L1をそれぞれ左右端とする隣接車線26を含む撮像範囲ωを撮像する。そして、撮像された画像の中から、車両10の後側方に設定された所定の検知範囲(ウインドウ)W2の内部に存在する、車両10に接近している他車両16(矢印16dの方向に進行)を検出する。そして、車両10に接近している他車両16が検出されたとき、および、車両10の運転者が、他車両16が接近しているにもかかわらず、車両10を隣接車線26側に車線変更しようとしたときには、後述するように警報を出して注意喚起を行う。
【0018】
ここで、検知範囲(ウインドウ)W2は、例えば、車両10の後方3mから30mの範囲、車両10の左端から3mの範囲に設定される。
【0019】
なお、このとき、他車両16は前照灯16h,16hを点灯して照射範囲16rの内部を照明しているものとする。また、レーンマーカL6,L5をそれぞれ左右端とする2本隣の車線28(以後、隣隣接車線28と呼ぶ)を矢印18dの方向に進行している他車両18は、前照灯18h,18hを点灯して照射範囲18rの内部を照明しているものとする。
(接近車両検出装置のシステム構成の説明)
【0020】
次に、
図2を用いて本実施例の接近車両検出装置のハードウェア構成について説明する。本実施例に係る接近車両検出装置100aは車両10に搭載されて、
図2に示すように、車両10の後部ライセンスプレート付近に後方に向けて設置された、車両10の後側方の路面を含む画像を撮像するリアカメラ50を有する。また、リアカメラ50で撮像された画像の認識処理を実行して接近車両を検出するとともに、接近車両の存在を報知するための警報の制御を行うECU60を有する。ECU60には、車両10の内部に配設されたCANバス80が接続されており、このCANバス80には、車両10の車速vを検出する車速センサ82と運転者のウインカ操作を検出するウインカスイッチ84が接続されている。さらに、ECU60には、接近車両の存在を視覚情報として報知するインジケータ90と、接近車両の存在を聴覚情報として報知するブザー92とが接続されている。
【0021】
なお、リアカメラ50は、周囲の明るさに応じてゲイン値を自動的に変更するAGC機能を有している。すなわち、周囲が暗いときには自動的にゲイン値を上げて画像を明るくし、周囲が明るいときには自動的にゲイン値を下げて画像を暗くする。そして、リアカメラ50は、撮像された画像とともに、そのときのゲイン値を出力できるものとする。
【0022】
ECU60の内部には、必要な処理を実行する複数のソフトウェアモジュールが実装されている。夜間判定部61は、接近車両検出装置100aが動作している周囲環境が昼夜のいずれであるかの判定を行う。車両情報取得部62は、CANバス80を介して、車速センサ82で検出された車両10の車速v、ウインカスイッチ84の操作信号等を取得する。画像認識処理部63は、車両10の後方を走行している車両の前照灯の検出と接近車両の検出を行う。他車両走行車線判定部64は、検出された他車両が隣接車線を走行しているか、隣隣接車線を走行しているかの判定を行う。警報制御部65は、接近車両の検出結果と、車両10の運転者の操作に基づいて、警報の出力や抑制を行う。またECU60には、
図2に非図示のソフトウェアモジュール、例えば、ソフトウェア全体の動きを制御する全体制御部等のモジュールをはじめ、必要な画像や情報を記憶する記憶部も実装されている。
【0023】
次に、
図3を用いて本実施例の接近車両検出装置100aの機能構成、特に画像認識処理部63と警報制御部65の詳細構成について説明する。
【0024】
画像認識処理部63は、
図3に示すように、リアカメラ50で撮像された画像の中から他車両(12,14(
図1A),16,18(
図1B))の前照灯を検出する前照灯検出部70を有する。また、リアカメラ50で撮像された画像を車両10の前上から俯瞰した俯瞰画像に変換する俯瞰画像生成部71を有する。そして、変換された俯瞰画像の所定の位置に所定のサイズの検知範囲(ウインドウ)W1(
図1A),W2(
図1B)を設定するウインドウ設定部72を有する。また、俯瞰画像の中で、設定された検知範囲W1,W2に対応する画素の輝度の平均値を算出する輝度分布算出部73aを有する。この輝度分布算出部73aは、検知範囲W1,W2の内部の平均輝度の移動平均値を算出する移動平均算出部74と接続されている。
【0025】
画像認識処理部63は、さらに、俯瞰画像生成部71において異なる時刻に得られた俯瞰画像同士の位置合わせを行う画像位置合わせ部75を有する。また、位置合わせされた俯瞰画像同士のフレーム差分を行って差分画像を生成する差分画像生成部76を有する。そして、フレーム差分を行った結果に基づいて車両10と移動物体との相対速度を算出する相対速度算出部77を有する。また、検知範囲W1,W2の内部に写った移動物体が他車両(12,14(
図1A),16,18(
図1B))であるか否かを判定する立体物判定部78を有する。
【0026】
警報制御部65は、
図3に示すように、接近車両が検出されたとき、および、接近車両が検出されているにも関わらず、車両10の運転者がウインカを操作して車線変更の意思表示をしたときに警報を出力する警報出力部66と、接近車両が隣隣接車線で検出されたときに警報の出力を抑制する警報抑制部67とを有する。
(前照灯検出部の作用の説明)
【0027】
次に、
図4を用いて接近車両検出装置100aの前照灯検出部70の作用について説明する。
【0028】
実施例1に示す接近車両検出装置100aの最大の特徴は、車両10に後方から接近している他車両(12,14(
図1A),16,18(
図1B))を検出する際に、他車両が隣接車線(
図1Aの22,
図1Bの26)を走行しているのか、隣隣接車線(
図1Aの24,
図1Bの28)を走行しているのかを判定できる点にある。そして、接近車両検出装置100aは、特に夜間においてその効果を発揮する。
【0029】
夜間にあっては、
図4に示すように、リアカメラ50(
図3)で時刻tに撮像された原画像I(t)は全体的に輝度が小さくなるため暗い画像となる。したがって、原画像I(t)の中から他車両の車体を認識するのは非常に困難である。
【0030】
そこで、接近車両検出装置100aでは、他車両の前照灯像を検出することによって他車両の存在を認識する。このとき、他車両の中には、車両10と同じ走行車線20(
図4)を走行している他車両(
図4の前照灯像120に対応)も存在している。このように車両10と同じ走行車線を走行している他車両は、接近車両検出装置100aの検出対象ではないため、走行車線20以外の領域で他車両の前照灯像(例えば、
図4の前照灯像122)の検出を行う必要がある。
【0031】
そのため、接近車両検出装置100aにあっては、
図4に示すように、走行車線20を避けるように、左右に前照灯検出領域R1,R2(所定領域)を設定する。そして、設定された前照灯検出領域R1,R2の中で、所定輝度以上の高い輝度を有する領域を検出し、該当する領域が検出されたときに他車両の前照灯像であるとする。すなわち、
図4に示す原画像I(t)の場合、前照灯検出領域R1の内部では前照灯像は検出されず、前照灯検出領域R2の内部では前照灯像122が検出される。なお、ここで設定される前照灯検出領域R1,R2は、少なくとも隣接車線に存在する他車両の前照灯像を検出できる範囲に設定される。具体的な寸法は、予め実験等を行って適切な値を決定すればよい。
【0032】
なお、昼間にあっては、リアカメラ50(
図3)で撮像された画像の中に他車両の車体が視認できるため、前述した前照灯像の検出処理を行う必要はない。そこで、接近車両検出装置100aでは、夜間判定部61(
図3)において前照灯像の検出処理を行うか否かを判定する。
【0033】
具体的には、リアカメラ50で撮像を行った際に出力されるゲイン値を夜間判定部61で受信して、ゲイン値が所定ゲイン以上であるときは周囲が暗いと判断して、前照灯像の検出処理を行うものとする。
(輝度分布算出部,移動平均算出部の作用の説明)
【0034】
次に、
図5,
図6Aを用いて接近車両検出装置100aの輝度分布算出部73a,移動平均算出部74の作用について説明する。なお、リアカメラ50で撮像された画像は、俯瞰画像生成部71において、車両10を真上から俯瞰した俯瞰画像に変換されて、以下に説明する処理は、この俯瞰画像に対して行われるものとする。
【0035】
輝度分布算出部73aは、ウインドウ設定部72によって設定された検知範囲(ウインドウ)W1,W2の内部の輝度の平均値(輝度評価値)をそれぞれ算出する。ここで、検知範囲W1は、
図5に示すように、俯瞰画像上に、車両10の左端から左方向の幅waに亘って設定される。また、車両10の後端から距離dだけ後方の位置から、長さwbに亘って設定される。幅wa,距離d,長さwbの具体的な値は、前述したように、例えば、wa=3m,d=3m,wb=27mが設定される。
【0036】
次に、
図6Aを用いて、検知範囲(ウインドウ)W1,W2の内部の輝度分布を算出する作用について説明する。
【0037】
図6Aに示すように、車両10の後方から他車両14,16が接近しており、このうち他車両14は隣隣接車線24を走行しており、他車両16は隣接車線26を走行しているものとする。また、他車両14は前照灯を点灯しており、その照射範囲は14rとする。そして他車両16も前照灯を点灯しており、その照射範囲は16rとする。
【0038】
このとき、
図6Aからわかるように、他車両14の前照灯の照射範囲14rは検知範囲(ウインドウ)W1と部分的に重複する。一方、他車両16の前照灯の照射範囲16rは検知範囲(ウインドウ)W2と殆ど重複する。したがって、検知範囲W1,W2の内部の平均輝度の大小によって、他車両14,16の走行車線を推定することができる。
【0039】
輝度分布算出部73aでは、俯瞰画像に対して、検知範囲(ウインドウ)W1,W2にそれぞれ対応する領域内部の画素の平均輝度(輝度評価値)をそれぞれ算出する。平均輝度は、俯瞰画像において、検知範囲W1,W2にそれぞれ対応する領域内部の画素値の総和を、それぞれ検知範囲W1,W2の総画素数で除した値として算出する。ここで、時刻tにおける検知範囲W1の内部の画素の平均輝度をB
W1(t)で表し、検知範囲W2の内部の画素の平均輝度をB
W2(t)で表すものとする。
【0040】
道路30の路面の輝度は、仮に夜間であっても、道路照明が明るい箇所では高い値となる。したがって、輝度分布算出部73aで算出された平均輝度B
W1(t),B
W2(t)を、単に固定しきい値と比較して、検知範囲W1,W2と他車両の前照灯の照射範囲14r,16rとの重複状態を判定するのは困難である。
【0041】
そのため、移動平均算出部74において、平均輝度B
W1(t),B
W2(t)の移動平均値B
thW1(t),B
thW2(t)をそれぞれ算出し、この移動平均値B
thW1(t),B
thW2(t)をそれぞれしきい値として、検知範囲W1,W2と他車両の前照灯の照射範囲14r,16rとの重複状態の判定を行う。詳しくは後述する。
【0042】
なお、移動平均値を計算する時間長は、実験等を行って適切な値を設定すればよいが、判定精度を高めるために、検知範囲W1,W2の内部に他車両の前照灯が照射されていない期間を含むように定めるのが望ましい。
(他車両走行車線判定部の作用の説明)
【0043】
次に、
図6Bを用いて接近車両検出装置100aの他車両走行車線判定部64の作用について説明する。
【0044】
他車両走行車線判定部64は、
図6Bに示すように、輝度分布算出部73aで算出された平均輝度B
W1(t),B
W2(t)を、移動平均算出部74で算出された移動平均値B
thW1(t),B
thW2(t)とそれぞれ比較する。
【0045】
そして、B
W1(t)≧B
thW1(t)であるときは、他車両14は隣接車線22を走行していると判定する。また、B
W1(t)<B
thW1(t)であるときは、他車両14は隣隣接車線24を走行していると判定する。
【0046】
同様に、B
W2(t)≧B
thW2(t)であるときは、他車両16は隣接車線26を走行していると判定する。また、B
W2(t)<B
thW2(t)であるときは、他車両16は隣隣接車線28を走行していると判定する。
【0047】
このように移動平均値B
thW1(t),B
thW2(t)をしきい値として用いることにより、道路30(
図6A)の路面の明るさが変動した場合、例えば路面が明るいときは移動平均値B
thW1(t),B
thW2(t)が大きくなり、路面が暗いときは移動平均値B
thW1(t),B
thW2(t)が小さくなるため、他車両の前照灯による路面の輝度変化を確実に検出することができる。
(立体物検出部の作用の説明)
【0048】
接近車両検出装置100aは、リアカメラ50で撮像された画像を処理して接近車両の検出を行う。そのときに行われる画像処理の概要について説明する。なお、ここで行われる一連の処理は、BSW機能が実装された車両に適用されて実用化されているため、図面による説明は省略して、文章のみで説明する。
【0049】
まず、リアカメラ50で時間間隔Δtを隔てた異なる時間に撮像された2枚の画像が、それぞれ俯瞰画像生成部71において俯瞰画像に変換される。
【0050】
次に、画像位置合わせ部75において、生成された2枚の俯瞰画像のうち、時間的に過去の俯瞰画像を変形して、時間的に新しい俯瞰画像と重ね合わせる。この変形は、車両情報取得部62で取得した、時間間隔Δtの間の車両10の車速vと、
図3には図示しない時間間隔Δtの間の車両10の操舵角を用いて、時間間隔Δtの間の車両10の挙動と対応するように行われる。すなわち、時間間隔Δtにおける車両10の移動方向と移動量にそれぞれ対応するように俯瞰画像を平行移動、回転移動させて位置合わせを行う。この位置合わせによって、2枚の俯瞰画像の道路の路面領域は完全に重なる。
【0051】
その後、差分画像生成部76において、位置合わせされた2枚の俯瞰画像のフレーム間差分を行う。このとき、時間的に新しい俯瞰画像から、過去の俯瞰画像が差し引かれる。この差分演算によって、時間間隔Δtの間に輝度の変化が生じた領域、すなわち、移動物体が存在する領域が検出される。
【0052】
次に、相対速度算出部77において、移動物体が存在する領域の大きさ(車両10の前後方向に長さ)を求めて、車両10と移動物体との相対速度を算出する。
【0053】
そして、立体物判定部78において、移動物体が他車両であることを確認する。この処理は、例えば、俯瞰画像上で移動物体があると認識された領域をリアカメラ50で撮像された原画像I(t)上に逆変換して、逆変換された領域に物体が存在するか否かを判定することによって行う。物体が存在するか否かの判定は、逆変換された領域の近傍に、車両の形状を模したテンプレートを当てはめてテンプレートマッチング行えばよい。あるいは、原画像I(t)の各画素の輝度を縦方向と横方向にそれぞれ投影して、得られた輝度投影曲線の中で、逆変換された領域に対応する部分に変化点が存在することを確認して他車両が存在すると判定してもよい。
(警報制御部の作用の説明)
【0054】
警報制御部65は、他車両の検出結果と、車両10の車速vとウインカスイッチ84の操作状態に基づいて、接近車両に対する警報出力の制御を行う。
【0055】
具体的には、車両10の車速vが所定車速(例えば30km/h)以上であるときに、隣接車線22または隣接車線26(
図6A)上で接近車両が検出されたときには、警報出力部66の作用によってインジケータ90を点灯させる。
【0056】
さらに、車両10の運転者が、インジケータ90の点灯に気づかずにウインカスイッチ84を操作して、接近車両が検出された隣接車線22または隣接車線26側にウインカを出したときには、さらにブザー92を吹鳴させて注意喚起を行う。
【0057】
なお、隣隣接車線24または隣隣接車線28(
図6A)上で接近車両が検出されたときには、上述した制御を実行しない。すなわち、インジケータ90の点灯もブザー92の吹鳴も行わない。
【0058】
もしくは、隣隣接車線24または隣隣接車線28(
図6A)上で接近車両が検出されたときには、警報抑制部67の作用によって、一定時間の間、警報の出力を抑制して、インジケータ90の点灯もブザー92の吹鳴も行わないようにしてもよい。
(接近車両検出装置で行われる処理の流れの説明)
【0059】
次に、
図7を用いて、接近車両検出装置100aで行われる処理の全体の流れを説明する。なお、構成部位の説明のために
図3を参照する。
【0060】
(ステップS10)車両情報取得部62で車両情報を取得する。具体的には、車速センサ82で得た車両10の車速vと、
図3に非図示の車両10の操舵角を取得する。
【0061】
(ステップS12)リアカメラ50で撮像された車両10の後方の画像を画像認識処理部63に入力する。
【0062】
(ステップS14)夜間判定部61がリアカメラ50から出力されたゲイン値を取得する。
【0063】
(ステップS16)俯瞰画像生成部71において入力された画像から俯瞰画像を生成する。
【0064】
(ステップS18)画像位置合わせ部75において、異なる時刻に得られた2枚の俯瞰画像の位置合わせを行う。
【0065】
(ステップS20)差分画像生成部76において、位置合わせされた2枚の俯瞰画像のフレーム差分を行い、差分画像を生成する。
【0066】
(ステップS22)相対速度算出部77において、差分画像の中から検出された移動物体を表す領域の相対速度を算出する。
【0067】
(ステップS24)夜間判定部61において昼夜判定を行う。昼であると判定されたときはステップS30に進み、夜であると判定されたときはステップS26に進む。
【0068】
(ステップS26)前照灯検出部70において他車両の前照灯の検出を行う。
【0069】
(ステップS28)他車両走行車線判定部64において、他車両が走行して車線を判定する他車両走行車線判定処理を行う。他車両走行車線判定処理の詳細な流れは後述する。
【0070】
(ステップS30)立体物判定部78において、後方に立体物(他車両)が存在するか否かを判定する。
【0071】
(ステップS32)警報制御部65において、所定の警報制御を行う。警報制御の概要は前述した通りである。
【0072】
(ステップS34)車両情報取得部で取得した車両10の車速vをモニタして、車両10の車速vが所定車速を下回ったか否かを判定する。所定車速(例えば時速30km)を下回ったときは
図7の処理を終了し、それ以外のときはステップS10に戻る。
【0073】
なお、
図7のフローチャートにあっては、ステップS24で昼夜判定を行っているが、この昼夜判定はステップS14の後で行っても構わない。
(他車両走行車線判定処理の流れの説明)
【0074】
次に、
図8を用いて、他車両走行車線判定処理の流れを説明する。なお、構成部位の説明のために
図3を参照する。
【0075】
(ステップS50)ウインドウ設定部72において、俯瞰画像上に検知範囲(ウインドウ)W1,W2を設定する。
【0076】
(ステップS52)輝度分布算出部73aにおいて、検知範囲(ウインドウ)W1,W2の内部の平均輝度B
W1(t),B
W2(t)をそれぞれ算出する。
【0077】
(ステップS54)移動平均算出部74において、検知範囲(ウインドウ)W1,W2の内部の平均輝度の移動平均値B
thW1(t),B
thW2(t)をそれぞれ更新する。
【0078】
(ステップS56)他車両走行車線判定部64において、平均輝度B
W1(t)が移動平均値B
thW1(t)以上か否か、また平均輝度B
W2(t)が移動平均値B
thW2(t)以上か否かを判定する。平均輝度が移動平均値以上であるときはステップS60に進み、それ以外のときはステップS58に進む。
【0079】
(ステップS58)他車両は隣隣接車線を走行していると判断してメインルーチン(
図7)に戻る。
【0080】
(ステップS60)他車両は隣接車線を走行していると判断してメインルーチン(
図7)に戻る。
【実施例2】
【0081】
次に、本発明に係る接近車両検出装置の第2の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施例2は、実施例1と同様に、本発明をBSW機能を備えた接近車両検出装置に適用したものである。
(接近車両検出装置のシステム構成の説明)
【0082】
まず、
図9を用いて本実施例の接近車両検出装置100bの機能構成について説明する。
図9に示すように、基本的な機能構成は実施例1の機能構成(
図3)と同じであるが、ウインドウ設定部72で設定された検知範囲(ウインドウ)W1,W2内部の輝度分布の算出方法のみが異なっている。すなわち、実施例1(
図3)が備える輝度分布算出部73aと移動平均算出部74の代わりに、実施例2は輝度投影分布算出部73bを備えている。
【0083】
この輝度投影分布算出部73bは、ウインドウ設定部72で設定された検知範囲(ウインドウ)W1,W2それぞれに対して、検知範囲W1,W2をそれぞれ横切る方向(車両10の左右方向)に沿って、俯瞰画像の対応する画素の輝度を累積して、輝度投影値を算出する機能を有している。
(輝度投影分布算出部の作用の説明)
【0084】
次に、接近車両検出装置100bの輝度投影分布算出部73bの作用について説明する。
【0085】
輝度投影分布算出部73bは、前述したように、検知範囲(ウインドウ)W1,W2(
図6A)をそれぞれ横切る方向(車両10の左右方向)に沿って、俯瞰画像の対応する画素の輝度を累積して輝度投影値Bp
W1,Bp
W2を算出して、検知範囲W1,W2の前後方向に亘る輝度投影値の分布曲線である輝度投影分布Bp
W1(Z),Bp
W2(Z)をそれぞれ生成する。ここで、Zは検知範囲W1,W2の前後方向の位置を特定する座標であって、車両10の後方位置を表す座標である。
【0086】
図10は、車両10が
図6Aの状態にあるときに生成された輝度投影分布Bp
W1(Z),Bp
W2(Z)の一例を示す図である。
【0087】
図10からわかるように、他車両16が隣接車線26にあるときには、輝度投影分布Bp
W2(Z)は、検知範囲W2の全域に亘ってほぼ一様な分布となる。一方、他車両14が隣隣接車線24にあるときには、輝度投影分布Bp
W1(Z)は、検知範囲W1の特定の位置で突出した輝度投影値を有する分布となる。
図10の例では、検知範囲W2の最も車両10寄りの位置において輝度投影値は高い値を呈する。
【0088】
したがって、例えば、輝度投影分布Bp
W1(Z),Bp
W2(Z)から算出された標準偏差(輝度評価値)σが所定の標準偏差以上であるときには、他車両は隣接車線を走行していると判定することができる。また、標準偏差(輝度評価値)σが所定の標準偏差に満たないときには、他車両は隣隣接車線を走行していると判定することができる。なお、しきい値となる所定の標準偏差は、実験等に基づいて適切な値が設定される。
(実施例2における他車両走行車線判定処理の流れの説明)
【0089】
接近車両検出装置100bで行われる処理の全体の流れは、
図7に示した実施例1の流れとほぼ同様であって、他車両走行車線判定処理(
図7のステップS28)の方法のみが異なる。したがって、実施例2で行われる処理全体の流れを示すフローチャートの図示は省略する。
【0090】
以下、
図11を用いて、接近車両検出装置100bで行われる他車両走行車線判定処理の流れを説明する。なお、構成部位の説明のために
図9を参照する。
【0091】
(ステップS80)ウインドウ設定部72において、俯瞰画像上に検知範囲(ウインドウ)W1,W2を設定する。
【0092】
(ステップS82)輝度投影分布算出部73bにおいて、検知範囲(ウインドウ)W1,W2の内部の輝度投影分布Bp
W1(Z),Bp
W2(Z)をそれぞれ算出する。
【0093】
(ステップS84)他車両走行車線判定部64において、輝度投影分布Bp
W1(Z),Bp
W2(Z)の標準偏差σが所定の標準偏差以上であるか否かを判定する。所定の標準偏差以上であるときはステップS88に進み、それ以外のときはステップS86に進む。
【0094】
(ステップS86)他車両は隣隣接車線を走行していると判断してメインルーチン(非図示)に戻る。
【0095】
(ステップS88)他車両は隣接車線を走行していると判断してメインルーチン(非図示)に戻る。
【0096】
なお、他車両14が隣隣接車線24にあるときには、輝度投影分布Bp
W1(Z)の突出位置が、車両10と他車両14の相対速度に応じて時間とともに変化する。したがって、輝度投影分布Bp
W1(Z)の突出位置を輝度評価値として併せて利用することも可能である。すなわち、輝度投影分布Bp
W1(Z)の標準偏差σが所定の標準偏差よりも小さく、なおかつ、輝度投影分布Bp
W1(Z)の突出位置が時間とともに移動しているときに、他車両14は隣隣接車線を走行していると判定することによって、判定精度を向上させることができる。
【0097】
以上説明したように、このように構成された本発明の実施例1に係る接近車両検出装置100aによれば、リアカメラ50(撮像部)で撮像された車両10の後側方の路面を含む原画像I(t)の中から、前照灯検出部70が他車両の前照灯を検出したときに、輝度分布算出部73aが、原画像I(t)が俯瞰変換された俯瞰画像の中にウインドウ設定部72が設定した所定サイズの検知範囲W1(W2)(ウインドウ)の内部の平均輝度B
W1(t)(B
W2(t))(輝度評価値)を算出して、他車両走行車線判定部64が、平均輝度B
W1(t)(B
W2(t))(輝度評価値)に基づいて、他車両が車両10が走行している車線の隣接車線22(26)を走行しているか、隣隣接車線24(28)を走行しているかを判定するため、隣隣接車線24(28)を走行している接近車両を、隣接車線22(26)を走行している接近車両であると誤検出することがない。
【0098】
また、このように構成された本発明の実施例1に係る接近車両検出装置100aによれば、輝度分布算出部73aは、輝度評価値として検知範囲W1(W2)(ウインドウ)の内部の平均輝度B
W1(t)(B
W2(t))を算出して、他車両走行車線判定部64は、平均輝度B
W1(t)(B
W2(t))が移動平均値B
thW1(t)(B
thW2(t))(所定の平均値)より大きいときには、他車両は隣接車線22(26)を走行していると判定して、それ以外のときには、他車両は隣隣接車線24(28)を走行していると判定するため、簡単な演算処理によって短時間で確実に他車両の走行車線を判定することができる。
【0099】
そして、このように構成された本発明の実施例1に係る接近車両検出装置100aによれば、他車両の走行車線を判定するための平均輝度B
W1(t)(B
W2(t))のしきい値(所定の平均値)を、平均輝度B
W1(t)(B
W2(t))の移動平均値B
thW1(t)(B
thW2(t))としたため、道路30の路面の明るさが変動した場合であっても、他車両の前照灯による路面の輝度変化を確実に検出することができる。
【0100】
さらに、このように構成された本発明の実施例1に係る接近車両検出装置100aによれば、ウインドウ設定部72は、リアカメラ50(撮像部)で撮像された画像を真上から俯瞰した俯瞰画像に変換して、この俯瞰画像の中に少なくとも1つの所定サイズの検知範囲W1(W2)(ウインドウ)を設定するため、所定サイズの検知範囲W1(W2)(ウインドウ)を容易かつ確実に設定することができる。特に、車両毎にリアカメラ50の取り付け位置が異なる場合であっても、俯瞰画像への変換さえ行うことができれば、俯瞰画像上で同じ位置に同じ形状のウインドウを設定すればよいため、車両毎に異なるプログラムを準備する必要がない。
【0101】
また、このように構成された本発明の実施例1に係る接近車両検出装置100aによれば、前照灯検出部70は、リアカメラ50(撮像部)が撮像した画像の中の、車両10の隣接車線または隣隣接車線を走行している他車両の前照灯が観測される範囲に設定された前照灯検出領域R1、R2(所定領域)の内部で他車両の前照灯を検出するため、前照灯の検出範囲を絞り込むことによって、必要な前照灯を短時間で確実に検出することができる。
【0102】
そして、このように構成された本発明の実施例1に係る接近車両検出装置100aによれば、他車両走行車線判定部64は、他車両が隣隣接車線を走行していると判定されたときに、隣隣接車線側に他車両は存在しないものと判断するため、警報の誤報知を確実に防止することができる。
【0103】
さらに、このように構成された本発明の実施例1に係る接近車両検出装置100aによれば、車両10は、他車両が隣隣接車線を走行していると判定されたときに、車両10が前記隣隣接車線側に車線変更しようとした際の警報出力を抑制する警報抑制部67を有するため、他車両が隣隣接車線を走行しているときに、警報の誤報知を確実に防止することができる。
【0104】
また、このように構成された本発明の実施例2に係る接近車両検出装置100bによれば、輝度評価値は、検知範囲W1(W2)(ウインドウ)内の輝度値を、車両10の左右方向に沿って累積した輝度投影分布Bp
W1(Z)(Bp
W2(Z))の標準偏差σであって、他車両走行車線判定部64は、標準偏差σが所定の標準偏差よりも大きいときに、他車両は隣接車線を走行していると判定して、それ以外であるときに、他車両は隣隣接車線を走行していると判定するため、簡単な演算処理によって短時間で確実に他車両の走行車線を判定することができる。
【0105】
なお、実施例1,実施例2では、検知範囲W1,W2をともに設定したが、
図5において、車両10が道路30の右寄り(隣接車線22,隣隣接車線24)を走行しているときには検知範囲W2のみを設定して、車両10が道路30の左寄り(隣接車線26,隣隣接28)を走行しているときには検知範囲W1のみを設定してもよい。車両10が道路30の右寄りを走行しているか左寄りを走行しているかは、実施例1,2には記載しない、例えば、道路の車線端にひかれたレーンマーカを検出して、その配置を分析することによって判定することができる。
【0106】
また、実施例1,実施例2では、リアカメラ50で撮像した画像のみを用いて処理を行う例を示したが、リアカメラ50に加えて、さらに、車両10の左右のドアミラーに内蔵した左右後側方カメラを用い、より広範囲を撮像した画像を使って同様の処理を行うことも可能である。
【0107】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであるため、本発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。