特許第6426465号(P6426465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6426465
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20181112BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20181112BHJP
【FI】
   H02P27/06
   H02M7/48 MZHV
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-262469(P2014-262469)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-123223(P2016-123223A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】野村 由利夫
(72)【発明者】
【氏名】青木 康明
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 芳光
(72)【発明者】
【氏名】脇本 亨
【審査官】 島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0181219(US,A1)
【文献】 特開2011−223707(JP,A)
【文献】 特表2013−529055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数相の巻線(11、12、13)を有する回転電機(10)の電力を変換する電力変換装置であって、
前記巻線の各相に対応して設けられる第1スイッチング素子(21〜26)を有し、前記巻線の一端(111、121、131)および第1電圧源(41)と接続される第1インバータ(20)と、
前記巻線の各相に対応して設けられる第2スイッチング素子(31〜36)を有し、前記巻線の他端(112、122、132)および第2電圧源(42)と接続される第2インバータ(30)と、
前記第1インバータと前記第1電圧源との間に設けられる第1リレー(51)と、
前記第2インバータと前記第2電圧源との間に設けられる第2リレー(52)と、
前記第1インバータおよび前記第2インバータを制御するインバータ制御手段(61)、前記第1リレーおよび前記第2リレーの開閉を制御するリレー制御手段(62)、および、前記第1インバータおよび前記第2インバータの異常を検出する異常検出手段(65)を有する制御部(60)と、
を備え、
高電位側に接続される前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子を上アーム素子(21〜23、31〜33)、前記上アーム素子の低電位側に接続される前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子を下アーム素子(24〜26、34〜36)とすると、
前記第1インバータまたは前記第2インバータのいずれかの相において、前記上アーム素子と前記下アーム素子とが短絡する短絡異常が検出された場合、
前記リレー制御手段は、前記短絡異常が生じた前記第1インバータまたは前記第2インバータである短絡インバータと接続される前記第1リレーまたは前記第2リレーを開とし、
前記短絡異常が生じている相を短絡相とし、前記短絡相以外の相を非短絡相とし、前記短絡異常が生じていない前記第1インバータまたは前記第2インバータを非短絡インバータとすると、
前記インバータ制御手段は、
前記短絡インバータの前記上アーム素子の前記非短絡相の全相、または、前記短絡インバータの前記下アーム素子の前記非短絡相の全相の一方をオン、他方をオフにし、
前記回転電機の駆動に係る指令値に基づき、前記非短絡インバータを制御し、
前記短絡インバータの前記非短絡相において、前記上アーム素子がオンされ前記下アーム素子がオフされる状態と、前記上アーム素子がオフされ前記下アーム素子がオンされる状態とを所定期間毎に切り替えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記回転電機の回転数およびトルクが、前記非短絡インバータおよび前記非短絡インバータに接続される前記第1電圧源または前記第2電圧源により出力可能な上限値を超えた場合、
前記リレー制御手段は、前記非短絡インバータ側に設けられる前記第1リレーまたは前記第2リレーを開とし、
前記インバータ制御手段は、前記短絡インバータおよび前記非短絡インバータをオフにすることを特徴とする請求項に記載の電力変換装置。
【請求項3】
複数相の巻線(11、12、13)を有する回転電機(10)の電力を変換する電力変換装置であって、
前記巻線の各相に対応して設けられる第1スイッチング素子(21〜26)を有し、前記巻線の一端(111、121、131)および第1電圧源(41)と接続される第1インバータ(20)と、
前記巻線の各相に対応して設けられる第2スイッチング素子(31〜36)を有し、前記巻線の他端(112、122、132)および第2電圧源(42)と接続される第2インバータ(30)と、
前記第1インバータと前記第1電圧源との間に設けられる第1リレー(51)と、
前記第2インバータと前記第2電圧源との間に設けられる第2リレー(52)と、
前記第1インバータおよび前記第2インバータを制御するインバータ制御手段(61)、前記第1リレーおよび前記第2リレーの開閉を制御するリレー制御手段(62)、および、前記第1インバータおよび前記第2インバータの異常を検出する異常検出手段(65)を有する制御部(60)と、
を備え、
高電位側に接続される前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子を上アーム素子(21〜23、31〜33)、前記上アーム素子の低電位側に接続される前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子を下アーム素子(24〜26、34〜36)とすると、
前記第1インバータまたは前記第2インバータのいずれかの相において、前記上アーム素子と前記下アーム素子とが短絡する短絡異常が検出された場合、
前記リレー制御手段は、前記短絡異常が生じた前記第1インバータまたは前記第2インバータである短絡インバータと接続される前記第1リレーまたは前記第2リレーを開とし、
前記短絡異常が生じている相を短絡相とし、前記短絡相以外の相を非短絡相とし、前記短絡異常が生じていない前記第1インバータまたは前記第2インバータを非短絡インバータとすると、
前記インバータ制御手段は、
前記短絡インバータの前記上アーム素子の前記非短絡相の全相、または、前記短絡インバータの前記下アーム素子の前記非短絡相の全相の一方をオン、他方をオフにし、
前記回転電機の駆動に係る指令値に基づき、前記非短絡インバータを制御し、
前記回転電機の回転数およびトルクが、前記非短絡インバータおよび前記非短絡インバータに接続される前記第1電圧源または前記第2電圧源により出力可能な上限値を超えた場合、
前記リレー制御手段は、前記非短絡インバータ側に設けられる前記第1リレーまたは前記第2リレーを開とし、
前記インバータ制御手段は、前記短絡インバータおよび前記非短絡インバータをオフにすることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
前記インバータ制御手段は、前記非短絡インバータにおいて、前記短絡相の前記上アーム素子および前記下アーム素子をオフにし、前記非短絡相の前記上アーム素子および前記下アーム素子を前記指令値に基づいて制御することを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
複数相の巻線(11、12、13)を有する回転電機(10)の電力を変換する電力変換装置であって、
前記巻線の各相に対応して設けられる第1スイッチング素子(21〜26)を有し、前記巻線の一端(111、121、131)および第1電圧源(41)と接続される第1インバータ(20)と、
前記巻線の各相に対応して設けられる第2スイッチング素子(31〜36)を有し、前記巻線の他端(112、122、132)および第2電圧源(42)と接続される第2インバータ(30)と、
前記第1インバータと前記第1電圧源との間に設けられる第1リレー(51)と、
前記第2インバータと前記第2電圧源との間に設けられる第2リレー(52)と、
前記第1インバータおよび前記第2インバータを制御するインバータ制御手段(61)、前記第1リレーおよび前記第2リレーの開閉を制御するリレー制御手段(62)、および、前記第1インバータおよび前記第2インバータの異常を検出する異常検出手段(65)を有する制御部(60)と、
を備え、
高電位側に接続される前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子を上アーム素子(21〜23、31〜33)、前記上アーム素子の低電位側に接続される前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子を下アーム素子(24〜26、34〜36)とすると、
前記第1インバータまたは前記第2インバータのいずれかの相において、前記上アーム素子と前記下アーム素子とが短絡する短絡異常が検出された場合、
前記リレー制御手段は、前記短絡異常が生じた前記第1インバータまたは前記第2インバータである短絡インバータと接続される前記第1リレーまたは前記第2リレーを開とし、
前記短絡異常が生じている相を短絡相とし、前記短絡相以外の相を非短絡相とし、前記短絡異常が生じていない前記第1インバータまたは前記第2インバータを非短絡インバータとすると、
前記インバータ制御手段は、
前記短絡インバータの前記上アーム素子の前記非短絡相の全相、または、前記短絡インバータの前記下アーム素子の前記非短絡相の全相の一方をオン、他方をオフにし、
前記回転電機の駆動に係る指令値に基づき、前記非短絡インバータを制御し、
前記非短絡インバータにおいて、前記短絡相の前記上アーム素子および前記下アーム素子をオフにし、前記非短絡相の前記上アーム素子および前記下アーム素子を前記指令値に基づいて制御することを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つのインバータによりモータの電力を変換するインバータ駆動システムが知られている。例えば特許文献1では、高電圧時において、第1のインバータシステムと第2のインバータシステムのパルス幅変調信号(以下、パルス幅変調を「PWM」という。)の基本波成分の位相を180[°]ずらすことで2つの電源が電気的に直列接続され、2つの電源電圧の和によりモータを駆動する。また、特許文献1では、低電圧時において、第1のインバータシステムまたは第2のインバータシステムの一方の上アームまたは下アームのいずれかを3相同時オンし、他方をPWM駆動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−238686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、例えばインバータを構成するスイッチング素子に異常が生じた場合について、何ら言及されてない。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、インバータを構成するスイッチング素子に異常が生じた場合であっても、回転電機を駆動可能である電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電力変換装置は、複数相の巻線を有する回転電機の電力を変換するものであって、第1インバータと、第2インバータと、第1リレーと、第2リレーと、制御部と、を備える。
第1インバータは、巻線の各相に対応して設けられる第1スイッチング素子を有し、巻線の一端および第1電圧源と接続される。
第2インバータは、巻線の各相に対応して設けられる第2スイッチング素子を有し、巻線の他端および第2電圧源と接続される。
第1リレーは、第1インバータと第1電圧源との間に設けられる。
第2リレーは、第2インバータと第2電圧源との間に設けられる。
【0006】
制御部は、インバータ制御手段、リレー制御手段、および、異常検出手段を有する。インバータ制御手段は、第1インバータおよび第2インバータを制御する。リレー制御手段は、第1リレーおよび第2リレーの開閉を制御する。異常検出手段は、第1インバータおよび第2インバータの異常を検出する。
【0007】
ここで、高電位側に接続される第1スイッチング素子および第2スイッチング素子を上アーム素子、上アーム素子の低電位側に接続される第1スイッチング素子および第2スイッチング素子を下アーム素子とする。
第1インバータまたは第2インバータのいずれかの相において、上アーム素子と下アーム素子とが短絡する短絡異常が検出された場合、リレー制御手段は、短絡異常が生じた第1インバータまたは第2インバータである短絡インバータと接続される第1リレーまたは第2リレーを開とする。短絡異常が生じている相を短絡相とし、短絡相以外の相を非短絡相とし、短絡異常が生じていない第1インバータまたは第2インバータを非短絡インバータとすると、インバータ制御手段は、短絡インバータの上アーム素子の非短絡相の全相、または、短絡インバータの下アーム素子の非短絡相の全相の一方をオン、他方をオフにし、回転電機の駆動に係る指令値に基づき、非短絡インバータを制御する。
第1態様では、インバータ制御手段は、短絡インバータの非短絡相において、上アーム素子がオンされ下アーム素子がオフされる状態と、上アーム素子がオフされ下アーム素子がオンされる状態とを所定期間毎に切り替える。
第2態様では、回転電機の回転数およびトルクが、非短絡インバータおよび非短絡インバータに接続される第1電圧源または第2電圧源により出力可能な上限値を超えた場合、リレー制御手段は、非短絡インバータ側に設けられる第1リレーまたは第2リレーを開とし、インバータ制御手段は、短絡インバータおよび非短絡インバータをオフにする。
第3態様では、インバータ制御手段は、非短絡インバータにおいて、短絡相の上アーム素子および下アーム素子をオフにし、非短絡相の上アーム素子および下アーム素子を指令値に基づいて制御する。
これにより、短絡インバータと接続される第1電圧源または第2電圧源に過電流が流れるのを防ぐことができ、第1電圧源および第2電圧源を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態による電力変換装置の構成を示す概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態によるモータジェネレータの駆動領域を説明する説明図である。
図3】本発明の一実施形態による片側駆動動作を説明する説明図である。
図4】本発明の一実施形態による反転駆動動作を説明する説明図である。
図5】本発明の一実施形態による上下短絡異常時の3相駆動制御を説明する説明図である。
図6】本発明の一実施形態による上下短絡異常時の2相駆動制御を説明する説明図である。
図7】本発明の一実施形態による上下短絡異常時の2相駆動制御におけるスイッチング素子のオンオフ作動を説明するタイムチャートである。
図8】本発明の一実施形態による3相駆動時および2相駆動時の電流を説明する説明図である。
図9】本発明の一実施形態による上限短絡異常時にモータジェネレータの負荷が高負荷領域となった場合の制御を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による電力変換装置を図面に基づいて説明する。
(一実施形態)
本発明の一実施形態による電力変換装置を図1図9に基づいて説明する。
図1に示すように、回転電機駆動システム1は、電力変換装置5、および、モータジェネレータ10を備える。
モータジェネレータ10は、例えば電気自動車やハイブリッド車両等の電動自動車に適用され、図示しない駆動輪を駆動するためのトルクを発生する、所謂「主機モータ」である。モータジェネレータ10は、駆動輪を駆動するための電動機としての機能、および、図示しないエンジンや駆動輪から伝わる運動エネルギによって駆動されて発電する発電機としての機能を有する。本実施形態では、モータジェネレータ10が電動機として機能する場合を中心に説明する。
【0010】
モータジェネレータ10は、3相交流の回転機であって、U相コイル11、V相コイル12、および、W相コイル13を有する。U相コイル11、V相コイル12およびW相コイル13が「巻線」に対応し、以下適宜、U相コイル11、V相コイル12およびW相コイル13を「コイル11〜13」という。
【0011】
電力変換装置5は、モータジェネレータ10の電力を変換するものであって、第1インバータ20、第2インバータ30、第1リレー51、第2リレー52、および、制御部60等を備える。
第1インバータ20は、コイル11〜13への通電を切り替える3相インバータであり、6つのスイッチング素子であるU1上アーム素子21、V1上アーム素子22、W1上アーム素子23、U1下アーム素子24、V1下アーム素子25、および、W1下アーム素子26を有する。以下適宜、U1上アーム素子21、V1上アーム素子22、W1上アーム素子23、U1下アーム素子24、V1下アーム素子25、および、W1下アーム素子26を「(第1)スイッチング素子21〜26」という。
【0012】
U1上アーム素子21はU1下アーム素子24の高電位側に接続され、V1上アーム素子はV1下アーム素子25の高電位側に接続され、W1上アーム素子23は、W1下アーム素子26の高電位側に接続される。以下適宜、高電位側に接続されるU1上アーム素子21、V1上アーム素子22、および、W1上アーム素子23を「(第1)上アーム素子21〜23」、低電位側に接続されるU1下アーム素子24、V1下アーム素子25、および、W1下アーム素子26を「(第1)下アーム素子24〜26」という。
【0013】
第1インバータ20は、コイル11、12、13の一端111、121、131と第1電圧源としての第1電源41との間に接続される。具体的には、U1上アーム素子21とU1下アーム素子24との接続点27がU相コイル11の一端111に接続され、V1上アーム素子22とV1下アーム素子25の接続点28がV相コイル12の一端121に接続され、W1上アーム素子23とW1下アーム素子26との接続点29がW相コイル13の一端131に接続される。また、第1上アーム素子21〜23の高電位側を接続する高電位側配線46が第1電源41の正極と接続され、第1下アーム素子24〜26の低電位側を接続する低電位側配線47が第1電源41の負極と接続される。
【0014】
第2インバータ30は、コイル11〜13への通電を切り替える3相インバータであり、6つのスイッチング素子であるU2上アーム素子31、V2上アーム素子32、W2上アーム素子33、U2下アーム素子34、V2下アーム素子35、および、W2下アーム素子36を有する。以下適宜、U2上アーム素子31、V2上アーム素子32、W2上アーム素子33、U2下アーム素子34、V2下アーム素子35、および、W2下アーム素子36を「(第2)スイッチング素子31〜36」という。
【0015】
U2上アーム素子31はU2下アーム素子34の高電位側に接続され、V2上アーム素子32はV2下アーム素子35の高電位側に接続され、W2上アーム素子33はW2下アーム素子36の高電位側に接続される。以下適宜、高電位側に接続されるU2上アーム素子31、V2上アーム素子32およびW2上アーム素子を「(第2)上アーム素子31〜33」、低電位側に接続されるU2下アーム素子34、V2下アーム素子35およびW2下アーム素子36を「(第2)下アーム素子34〜36」という。
【0016】
第2インバータ30は、コイル11、12、13の他端112、122、132と第2電圧源としての第2電源42との間に接続される。具体的には、U2上アーム素子31とU2下アーム素子34との接続点37がU相コイル11の他端112に接続され、V2上アーム素子32とV2下アーム素子35との接続点38がV相コイル12の他端122に接続され、W2上アーム素子33とW2下アーム素子36との接続点39がW相コイル13の他端132に接続される。また、第2上アーム素子31〜33の高電位側を接続する高電位側配線48が第2電源42の正極と接続され、第2下アーム素子34〜36の低電位側を接続する低電位側配線49が第2電源42の負極と接続される。
このように、本実施形態では、第1インバータ20および第2インバータ30がコイル11〜13の両側に接続される。
本実施形態では、スイッチング素子21〜26、31〜36は、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)であるが、MOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)やその他の素子を用いてもよい。
【0017】
第1電源41は、リチウムイオン電池等の充放電可能な直流電源であり、第1インバータ20と接続され、第1インバータ20を経由してモータジェネレータ10と電力を授受可能に設けられる。
第2電源42は、リチウムイオン電池等の充放電可能な直流電源であり、第2インバータ30と接続され、第2インバータ30を経由してモータジェネレータ10と電力を授受可能に設けられる。
本実施形態では、第1電源41にて印加可能な電圧である第1電源電圧Vb1と、第2電源42にて印加可能な電圧である第2電源電圧Vb2とが等しいものとする。
【0018】
第1コンデンサ43は、高電位側配線46と低電位側配線47とに接続される。第1コンデンサ43は、第1電源41から第1インバータ20側への電流、または、第1インバータ20から第1電源41側への電流を平滑化する平滑コンデンサである。
第2コンデンサ44は、高電位側配線48と低電位側配線49とに接続される。第2コンデンサ44は、第2電源42から第2インバータ30側への電流、または、第2インバータ30側から第2電源42側への電流を平滑化する平滑コンデンサである。
【0019】
第1リレー51は、第1電源41と第1インバータ20との間に設けられる。本実施形態では、第1リレー51は、高電位側配線46に設けられ、第1電源41と第1インバータ20との間の電流の導通および遮断を切り替え可能である。
第2リレー52は、第2電源42と第2インバータ30との間に設けられる。本実施形態では、第2リレー52は、高電位側配線48に設けられ、第2電源42と第2インバータ30との間の電流の導通および遮断を切り替え可能である。
【0020】
制御部60は、通常のコンピュータとして構成されており、内部にはCPU、ROM、RAM、I/O、および、これらの構成を接続するバスライン等を備える。制御部60における各処理は、予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理であってもよいし、専用の電子回路によるハードウェア処理であってもよい。
【0021】
制御部60は、機能ブロックとして、インバータ制御部61、リレー制御部62、および、異常検出部65を有する。
インバータ制御部61は、トルク指令値trq*や電流指令値Iu*、Iv*、Iw*等のモータジェネレータ10の駆動に係る指令値等に基づき、第1インバータ20および第2インバータ30を制御する。詳細には、インバータ制御部61は、スイッチング素子21〜26、31〜36のオンオフ作動を制御する制御信号を生成し、スイッチング素子21〜26、31〜36のゲートに出力する。これにより、第1インバータ20および第2インバータ30が制御されることにより、モータジェネレータ10の駆動が制御される。
【0022】
リレー制御部62は、第1リレー51および第2リレー52の開閉を制御する。
異常検出部65は、第1インバータ20および第2インバータ30の異常を検出する。本実施形態では、第1インバータ20または第2インバータ30のずれかの相において、上アーム素子と下アーム素子とが短絡する上下短絡異常を検出する。上下短絡異常の検出は、どのような方法で検出してもよい。インバータ制御部61は、異常検出部65の検出結果に基づき、第1インバータ20および第2インバータ30を制御する。また、リレー制御部62は、異常検出部65の検出結果に基づき、第1リレー51および第2リレー52を制御する。
上下短絡異常が生じた場合の駆動制御については、後述する。
【0023】
まず、回転電機駆動システム1が正常である場合の通常制御について説明する。本実施形態では、モータジェネレータ10の回転数およびトルクに応じ、駆動動作を切り替える。図2に示すように、モータジェネレータ10の回転数およびトルクが第1閾値L1未満の領域を低負荷領域A1、回転数およびトルクが第1閾値L1以上、第2閾値L2未満の領域を高負荷領域A2とする。第1閾値L1は、第1電源41または第2電源42の電力にて出力可能な最大値とする。第2閾値L2は、第1電源41および第2電源42の電力にて出力可能な最大値とする。本実施形態では、第1閾値L1が、「非短絡インバータおよび非短絡インバータに接続される第1電圧源または第2電圧源により出力可能な上限値」に対応する。
【0024】
モータジェネレータ10の回転数およびトルクが低負荷領域A1である場合、第1インバータ20および第2インバータ30の動作を片側駆動動作とする。片側駆動動作は、1電源駆動動作と捉えることもできる。
第1電源41の電力によりモータジェネレータ10を駆動する第1片側駆動動作では、インバータ制御部61は、第2上アーム素子31〜33の全相、または、第2下アーム素子34〜36の全相の一方をオン、他方をオフすることにより、第2インバータ30を中性点化する。また、インバータ制御部61は、モータジェネレータ10の駆動に係る指令値に基づき、第1インバータ20をPWM制御により制御する。
【0025】
図3(a)に示す例では、第2上アーム素子31〜33の全相がオン、第2下アーム素子34〜36の全相がオフされることにより、第2インバータ30が中性点化される。また、第1インバータ20において、U1上アーム素子21、V1下アーム素子25、および、W1下アーム素子26がオンされると、図3(a)中の矢印Y1で示す経路の電流が流れる。図3では、オンである素子を実線、オフである素子を破線で示す。また、図3中においては、制御部60や一部の符号の記載を適宜省略した。後述の図4等も同様である。
【0026】
第2電源42の電力によりモータジェネレータ10を駆動する第2片側駆動動作では、第1上アーム素子21〜23の全相、または、第1下アーム素子24〜26の全相の一方をオン、他方をオフすることにより、第1インバータ20を中性点化する。また、モータジェネレータ10の駆動に係る指令値に基づき、第2インバータ30をPWM制御により制御する。
【0027】
図2(b)に示す例では、第1上アーム素子21〜23の全相がオン、第1下アーム素子24〜26の全相がオフされることにより、第1インバータ20が中性点化される。また、第2インバータ30において、U2上アーム素子31、V2下アーム素子35、および、W2下アーム素子36がオンされると、図2(b)中の矢印Y2で示す経路の電流が流れる。
【0028】
スイッチング素子31〜36の熱劣化等に応じ、第2上アーム素子31〜33がオンされる状態と、第2下アーム素子34〜36がオンされる状態とを適宜切り替えてもよい。第1インバータ20を中性点化する場合も同様である。
また、第1電源電圧Vb1と第2電源電圧Vb2とが等しいので、モータジェネレータ10に印加される電圧は、第1片側駆動動作と第2片側駆動動作とで等しい。そのため、スイッチング素子21〜26、31〜36の熱劣化等に応じ、第1片側駆動動作と第2片側駆動動作とを適宜切り替えてもよい。中性点化しない方のインバータ20、30は、PWM制御に限らず、どのように制御してもよい。他の制御時も同様、PWM制御に限らず、どのような制御としてもよい。
なお、第1電源電圧Vb1と第2電源電圧Vb2とが異なる場合、電圧が低い方で駆動要求を満たせるときには、高電圧側を中性点化し、低電圧側で駆動する。これにより、スイッチング損失を低減することができる。
【0029】
モータジェネレータ10の回転数およびトルクが高負荷領域A2である場合、第1インバータ20および第2インバータ30の動作を反転駆動動作とする。反転駆動動作は、2電源駆動動作と捉えることもできる。
反転駆動動作では、インバータ制御部61は、モータジェネレータ10の駆動要求に応じた第1基本波F1に基づいて第1インバータ20の駆動を制御し、駆動要求に応じた第2基本波F2に基づいて第2インバータ30の駆動を制御する。
【0030】
例えば、インバータ制御部61は、第1基本波F1とキャリア波との比較によるPWM制御により第1制御信号を生成し、第2基本波F2とキャリア波との比較によるPWM制御により第2制御信号を生成する。PWM制御には、基本波F1、F2の振幅がキャリア波の振幅より小さい「正弦波PWM制御」、および、基本波F1、F2の振幅がキャリア波より大きい「過変調PWM制御」を含むものとする。
【0031】
反転駆動動作において、第1基本波F1と第2基本波F2とは、位相が反転されている。換言すると、第1基本波F1と第2基本波F2とは、位相が略180[°]ずれている。これにより、第1電源41と第2電源42とが直列接続されている状態とみなすことができ、第1電源電圧Vb1と第2電源電圧Vb2との和に相当する電圧をモータジェネレータ10に印加可能である。
なお、第1基本波F1と第2基本波F2との位相差は、180[°]とするが、第1電源電圧Vb1および第2電源電圧Vb2の和に相当する電圧をモータジェネレータ10に印加可能な程度のずれは許容される。
【0032】
第1基本波F1の振幅と第2基本波F2の振幅とは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。第1基本波F1と第2基本波F2の振幅および波形が等しい場合、各相にてオンされる素子が第1インバータ20と第2インバータ30とで上下反対となる。
図4に示す例では、U1上アーム素子21、V1下アーム素子25、W1下アーム素子26、V2上アーム素子32、W2上アーム素子33、および、U2下アーム素子34がオンされ、このとき、矢印Y3で示す経路の電流が流れる。
【0033】
また、第1基本波F1と第2基本波F2とは、ともに正弦波である場合のように同様の波形であってもよいし、例えば第1インバータ20または第2インバータ30の一方を正弦波PWM制御し、他方を過変調PWM制御するといった場合のように、異なる波形であってもよい。また、振幅を無限大とみなし、基本波F1、F2の半周期ごとにオンオフが切り替えられる矩形波制御としてもよい。矩形波制御は、180度通電制御ともいえる。また、矩形波制御に替えて、基本波F1、F2に基づく120度通電制御としてもよい。
なお、反転駆動動作にて、振幅や波形が異なる場合、各相にてオンされる素子は、第1インバータ20と第2インバータ30とで、必ずしも上下反対にならない。
【0034】
図3および図4に示すように、インバータ制御部61は、正常時には、U相、V相およびW相を用いる3相駆動制御により第1インバータ20および第2インバータ30を制御する。
また、リレー制御部62は、正常時には、第1リレー51および第2リレー52を閉にする。なお、片側駆動動作において、第1インバータ20を中性点化する場合、第1リレー51を開としてもよいし、第2インバータ30を中性点化する場合、第2リレー52を開としてもよい。
【0035】
次に、上下短絡異常が生じた場合の駆動制御について説明する。本実施形態では、図5図8にて「×」印を付した第1インバータ20のU1上アーム素子21とU1下アーム素子24とが短絡した場合の例を説明する。この場合、第1インバータ20が「短絡インバータ」、第2インバータ30が「非短絡インバータ」、U相が「短絡相」、V相およびW相が「非短絡相」である。なお、第1インバータ20のV相またはW相が上下短絡した場合、もしくは、第2インバータ30のいずれかの相が上下短絡した場合も同様であるので、説明を省略する。
【0036】
図5および図6に示すように、リレー制御部62は、短絡インバータ側のリレーである第1リレー51を開にする。これにより、短絡電流から第1電源41を保護することができる。また、インバータ制御部61は、モータジェネレータ10の駆動に係る指令値に基づいて、非短絡インバータである第2インバータ30を制御する。また、第2インバータ30を3相駆動制御または2相駆動制御するとき、リレー制御部62は、非短絡インバータ側のリレーである第2リレー52を閉にする。
【0037】
図5は、第2インバータ30を3相駆動制御する場合を示している。
インバータ制御部61は、短絡インバータである第1インバータ20を中性点化し、非短絡インバータである第2インバータ30をスイッチングし、第2電源42の電力によりモータジェネレータ10を駆動する。
【0038】
インバータ制御部61は、第1インバータ20の非短絡相であるV相およびW相の上アーム素子22、23、または、下アーム素子25、26の一方をオン、他方をオフにする。図5(a)に示すように、第1インバータ20のV相およびW相の上アーム素子22、23をオン、下アーム素子25、26をオフにすることで、第1インバータ20側を中性点化することができる。また、図5(b)に示すように、第1インバータ20のV相およびW相の上アーム素子22、23をオフ、下アーム素子25、26をオンにすることで、第1インバータ20を中性点化することができる。
【0039】
本実施形態では、インバータ制御部61は、スイッチング素子間の熱損失の偏りを低減すべく、図5(a)に示す上アーム素子22、23をオン、下アーム素子25、26をオフにする第1状態と、図5(b)に示す上アーム素子22、23をオフ、下アーム素子25、26をオンにする第2状態とを、所定期間毎に切り替える。第1状態と第2状態との切り替えに係る所定期間は、素子温度の上昇程度に応じて設定される。なお、通電量等に応じて切り替え期間を可変にしてもよいし、第1状態の期間と第2状態の期間とを異ならせてもよい。
【0040】
第2インバータ30は、PWM制御等により3相駆動制御される。例えば、図5に示す例では、U2上アーム素子31、V2下アーム素子35、および、W2下アーム素子36がオンされているとき、矢印Y4または矢印Y5で示す経路の電流が流れる。これにより、正常時における片側駆動時と同様に、モータジェネレータ10を駆動することができる。なお、第2インバータ30を3相駆動する場合、短絡している第1インバータ20のU1上アーム素子21またはU1下アーム素子24に電流が流れる。3相駆動制御時の相電流Iu、Iv、Iwは、図8(a)に示す如くの3相交流となる。
【0041】
図6は、第2インバータ30を2相駆動制御する場合を示している。
第1インバータ20の制御は、図5にて説明した3相駆動制御時と同様である。図6には、第1インバータ20の上アーム素子22、23をオンすることにより第1インバータ20を中性点化する例を示しているが、下アーム素子25、26をオンすることにより中性点化してもよいし、所定期間毎に切り替えてもよい。
【0042】
図7は、2相駆動時のスイッチング状態を示している。
図7(a)、(b)に示すように、インバータ制御部61は、第1インバータ20において、V1上アーム素子22およびW1上アーム素子23をオン、V1下アーム素子25およびW1下アーム素子26をオフにする。
【0043】
図7(c)に示すように、インバータ制御部61は、第2インバータ30において、短絡相であるU相の上アーム素子31および下アーム素子34をオフにする。
図7(d)、(e)に示すように、インバータ制御部61は、第2インバータ30において、非短絡相であるV2上アーム素子32とW2上アーム素子33のオンオフが反対となるように、モータジェネレータ10の駆動に係る指令値に基づいて制御する。すなわち、インバータ制御部61は、V2上アーム素子32がオンのとき、W2上アーム素子33がオフ、V2上アーム素子32がオフの時、W2上アーム素子33がオンとなるように制御する。なお、V2下アーム素子35は、V2上アーム素子32とオンオフが反対となるように制御され、W2下アーム素子36は、W2上アーム素子33とオンオフが反対となるように制御される。
例えば、V1上アーム素子22、W1上アーム素子23、V2上アーム素子32およびW2下アーム素子36がオンされているとき、図6に矢印Y6で示す経路の電流が流れる。
【0044】
図8(a)は、3相駆動時の電流波形を示し、図8(b)は、2相駆動時の電流波形を示す。図8に示すように、3相駆動時と2相駆動時とでは、電流位相が異なる。図8(b)に示すように、2相駆動を行うと、W相電流Iwは、V相電流Ivを反転した電流となる。また、2相駆動では、V相電流IvとW相電流Iwとの和がゼロとなる。すなわち、V相電流Ivがゼロのとき、W相電流Iwもゼロとなり、q軸電流Iqは変動する。q軸電流Iqの変動によるトルク変動があるものの、2相駆動制御とすることで、短絡相を用いることなく、より安全にモータジェネレータ10の駆動を行うことができる。
【0045】
本実施形態では、上下短絡異常が生じた場合、第1リレー51を開とするので、短絡インバータ側の電源である第1電源41をモータジェネレータ10の駆動に用いることができない。そのため、片側駆動にて出力可能な最大値である第1閾値L1よりも回転数またはトルクが大きい高負荷領域A2でモータジェネレータ10を駆動することができない。ここで、外力によりモータジェネレータ10の回転数およびトルクが高負荷領域A2で駆動されると、過大な電流が流れる虞がある。そこで本実施形態では、モータジェネレータ10の回転数およびトルクが第1閾値L1より大きい高負荷領域A2である場合、図9に示すように、第1リレー51および第2リレー52を共に開にする。また、上下短絡しているU1上アーム素子21およびU1下アーム素子24を除く全てのスイッチング素子22、23、25、26、31〜36をオフにする。上下短絡しているU1上アーム素子21およびU1下アーム素子24を除く全てのスイッチング素子22、23、25、26、31〜36をオフすることが、「短絡インバータおよび非短絡インバータをオフにする」ことに対応する。これにより、外力によりモータジェネレータ10が駆動されて生じる過電流が第1電源41および第2電源42に流れるのを防ぐことができ、第1電源41および第2電源42を保護することができる。
【0046】
以上詳述したように、電力変換装置5は、複数相のコイル11、12、13を有するモータジェネレータ10の電力を変換するものであって、第1インバータ20と、第2インバータ30と、第1リレー51と、第2リレー52と、制御部60と、を備える。
第1インバータ20は、コイル11、12、13の各相に対応して設けられる第1スイッチング素子21〜26を有し、コイル11、12、13の一端111、121、131および第1電源41と接続される。
第2インバータ30は、コイル11、12、13の各相に対応して設けられる第2スイッチング素子31〜36を有し、コイル11、12、13の他端112、122、132および第2電源42と接続される。
第1リレー51は、第1インバータ20と第1電源41との間に設けられる。
第2リレー52は、第2インバータ30と第2電源42との間に設けられる。
【0047】
制御部60は、インバータ制御部61、リレー制御部62、および、異常検出部65を有する。
インバータ制御部61は、第1インバータ20および第2インバータ30を制御する。リレー制御部62は、第1リレー51および第2リレー52の開閉を制御する。異常検出部65は、第1インバータ20および第2インバータ30の異常を検出する。
ここで、高電位側に接続される第1スイッチング素子および第2スイッチング素子を上アーム素子21〜23、31〜33、上アーム素子21〜23、31〜33の低電位側に接続される第1スイッチング素子および第2スイッチング素子を下アーム素子24〜26、34〜36とする。
第1インバータ20または第2インバータ30のいずれかの相において、上アーム素子と下アーム素子とが短絡する短絡異常が検出された場合、リレー制御部62は、短絡異常が生じた第1インバータ20または第2インバータ30である短絡インバータと接続される第1リレー51または第2リレー52を開とする。
これにより、短絡インバータと接続される第1電源41または第2電源42に過電流が流れるのを防ぐことができ、第1電源41および第2電源42を保護することができる。
【0048】
短絡異常が生じている相を短絡相とし、短絡相以外の相を非短絡相とし、短絡異常が生じていない第1インバータ20または第2インバータ30を非短絡インバータとする。
インバータ制御部61は、短絡インバータの上アーム素子の非短絡相の全相、または、短絡インバータの下アーム素子の非短絡相の全相の一方をオン、他方をオフにする。また、インバータ制御部61は、モータジェネレータ10の駆動に係る指令値に基づき、非短絡インバータを制御する。
短絡インバータを中性点化し、非短絡インバータ側を用いることにより、モータジェネレータ10の駆動を継続することができる。
【0049】
インバータ制御部61は、短絡インバータにおいて、上アーム素子がオンされ下アーム素子がオフされる状態と、上アーム素子がオフされて下アーム素子がオンされる状態とを所定期間毎に切り替える。例えば、短絡インバータが第1インバータ20であり、短絡相がU相である場合、インバータ制御部61は、V1上アーム素子22およびW1上アーム素子23がオンされ、V1下アーム素子25およびW1下アーム素子26がオンされる状態と、V1上アーム素子22およびW1上アーム素子23がオフされ、V1下アーム素子25およびW1下アーム素子26がオンされる状態と、を所定期間毎に切り替える。
これにより、短絡インバータにおける非短絡相の熱損失の偏りを低減することができる。
【0050】
モータジェネレータ10の回転数およびトルクが、非短絡インバータおよび非短絡インバータに接続される第1電源41または第2電源42により出力可能な上限値(本実施形態では、第1閾値L1)を超えた場合、リレー制御部62は、非短絡インバータ側に設けられる第1リレー51または第2リレー52を開とする。すなわち、モータジェネレータ10の回転数およびトルクが、非短絡インバータおよび非短絡インバータに接続される第1電源41または第2電源42により出力可能な上限値を超えた場合、リレー制御部62は、第1リレー51および第2リレー52を共に開にする。また、インバータ制御部61は、短絡インバータおよび非短絡インバータをオフにする。
これにより、モータジェネレータ10が外力により駆動されて生じる過電流が第1電源41および第2電源42に流れるのを防ぎ、第1電源41および第2電源42を保護することができる。
【0051】
インバータ制御部61は、非短絡インバータにおいて、短絡相の上アーム素子および下アーム素子をオフにし、非短絡相の上アーム素子および下アーム素子を指令値に基づいて制御する。例えば、非短絡インバータを第2インバータ30、短絡相をU相、非短絡相をV相およびW相とすると、U2上アーム素子31およびU2下アーム素子34をオフにし、V相およびW相のスイッチング素子32、33、35、36を指令値に基づいて制御する。すなわち、非短絡インバータを、短絡相を除く2相を用いた2相駆動制御とする。
これにより、短絡相を使用することなく、より安全にモータジェネレータ10を駆動することができる。
本実施形態では、インバータ制御部61が「インバータ制御手段」を構成し、リレー制御部62が「リレー制御手段」を構成し、異常検出部65が「異常検出手段」を構成する。
【0052】
(他の実施形態)
(ア)リレー
上記実施形態では、第1リレーおよび第2リレーは、高電位側配線に設けられる。他の実施形態では、第1リレーおよび第2リレーは、短絡箇所と第1電源または第2電源とを切り離せればよく、第1リレーおよび第2リレーの少なくとも一方を低電位側配線に設けてもよい。また、高電位側配線および低電位側配線にリレーを設け、2つのリレーを第1リレーとみなしてもよい。また、上記実施形態では、第1リレーは、コンデンサよりも第1電源側に設けられる。他の実施形態では、第1リレーをコンデンサよりも第1インバータ側に設けてもよい。第2リレーについても同様である。
【0053】
(イ)電源
上記実施形態では、第1電源および第2電源は、ともにリチウムイオン電池であり、第1電圧と第2電圧とが等しい。他の実施形態では、第1電源および第2電源の少なくとも一方をリチウムイオンバッテリ以外の鉛蓄電池、燃料電池、または、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等のキャパシタであってもよい。また、第1電源および第2電源の種類および電圧は異なっていてもよい。さらにまた、第1電源または第2電源の一方を、エンジン等の駆動源により駆動されて発電する発電機等としてもよい。
【0054】
(ウ)回転電機
上記実施形態では、回転電機はモータジェネレータである。他の実施形態では、回転電機は、発電機の機能を持たない電動機であってもよいし、電動機の機能を持たない発電機であってもよい。また、上記実施形態の回転電機は3相である。他の実施形態では、回転電機は、4相以上としてもよい。
また、上記実施形態では、回転電機が電動車両の主機モータである。他の実施形態では、回転電機は、主機モータに限らず、例えばスタータ機能とオルタネータ機能とを併せ持つ、所謂ISG(Integrated Starter Generator)や、補機モータであってもよい。また、電力変換装置を車両以外の装置に適用してもよい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0055】
5・・・電力変換装置
10・・・モータジェネレータ(回転電機)
11〜13・・・コイル(巻線)
20・・・第1インバータ 30・・・第2インバータ
51・・・第1リレー 52・・・第2リレー
60・・・制御部
61・・・インバータ制御部(インバータ制御手段)
62・・・リレー制御部(リレー制御手段)
65・・・異常検出部(異常検出手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9