特許第6426467号(P6426467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6426467
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】接続部材および電気化学セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/30 20060101AFI20181112BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20181112BHJP
【FI】
   H01M2/30 A
   H01G11/74
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-265917(P2014-265917)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-126882(P2016-126882A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】玉地 恒昭
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 俊二
【審査官】 渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−099355(JP,A)
【文献】 特開2002−313313(JP,A)
【文献】 特開2008−091036(JP,A)
【文献】 実開昭63−199455(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/30
H01G 11/74
H01R 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルの電極端子とリード線とを接続する接続部材であって、
前記リード線の被覆部をカシメ固定する第1カシメ部と、
前記リード線の芯線をカシメ固定する第2カシメ部と、
前記電極端子をカシメ固定する第3カシメ部と、
を備え、
前記第1カシメ部と前記第2カシメ部とは、第1軸に沿うように延在し、
前記第3カシメ部は、前記第1軸に平行な第2軸に沿うように延在している、
ことを特徴とする接続部材。
【請求項2】
前記第1カシメ部および前記第2カシメ部は、筒状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の接続部材。
【請求項3】
前記第2カシメ部の内径は、前記第1カシメ部の内径よりも小さい、
ことを特徴とする請求項2に記載の接続部材。
【請求項4】
前記第1カシメ部と前記第2カシメ部との間には、間隙が形成されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の接続部材。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の接続部材と、
前記電極端子と、
前記リード線と、
を備える、
ことを特徴とする電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続部材および電気化学セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池、電気二重層キャパシタなどの電気化学セルは、各種デバイスの電源などに利用されている。電気化学セルの1つの形態として、例えば下記特許文献1のような電池が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の組電池(請求項の「電気化学セル」に相当。)は、電極端子リード(請求項の「電極端子」に相当。)を外部機器との接続用のリード線に中継接続するための矩形状のタブ端子が配設され、タブ端子には、両側端の縁を折り返し密着するように重ね合わせた折り返し縁部と、電極端子リードとの折り返し縁部の内側に位置するスポット溶接部と、リード線との半田付け部とが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−91036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の電気化学セルにおいては、接続部材とリード線とが半田付けにより接続されている。しかしながら、半田付けにより接続部材とリード線とを接続する場合には、接続の信頼性を向上させるために、大量の半田を用いる必要がある。このため、接続部材とリード線との接続箇所において厚みが増加し、電気化学セルが大型化する傾向にある。また、半田付けは、手作業となることが多いため、特に小型化した電気化学セルにおいては、完成寸法のばらつきが増加する傾向にある。さらに、接続部材とリード線とを半田付けにより接続すると、接続部材へのリード線の接続箇所がリード線の芯線のみとなる。このため、リード線を引っ張った際に、芯線に応力が集中し、芯線が破断したり、芯線がリード線の被覆部から引き抜けたりする。したがって、従来技術の電気化学セルにあっては、耐久性を維持しつつ、小型化するという点で改善の余地がある。
【0006】
そこで本発明は、電気化学セルの小型化および耐久性の向上が可能な接続部材、およびこの接続部材を備えた電気化学セルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の接続部材は、電気化学セルの電極端子とリード線とを接続する接続部材であって、前記リード線の被覆部をカシメ固定する第1カシメ部と、前記リード線の芯線をカシメ固定する第2カシメ部と、前記電極端子に接続される端子接続部と、を備える、ことを特徴とする。
本発明によれば、電気化学セルの電極端子とリード線とを、接続部材により半田を用いることなく接続することができる。このため、半田付けにより電気化学セルの厚さが増加することを抑制できる。また、第1カシメ部によりリード線の被覆部を固定するため、リード線を引っ張った際に、芯線のみに応力が作用することを防止できる。このため、芯線が破断したり、芯線が被覆部から引き抜けたりすることを防止できる。したがって、電気化学セルの小型化および耐久性の向上が可能な接続部材とすることができる。
【0008】
上記の接続部材において、前記第1カシメ部および前記第2カシメ部は、筒状に形成されている、ことを特徴とする。
本発明によれば、リード線を第1カシメ部および第2カシメ部に挿入することができる。これにより、リード線と接続部材との接続作業時において、リード線が接続部材から脱落しにくくなり、接続作業を容易に行うことができる。したがって、電気化学セルの小型化を容易に実現できる接続部材とすることができる。
【0009】
上記の接続部材において、前記第2カシメ部の内径は、前記第1カシメ部の内径よりも小さい、ことを特徴とする。
本発明によれば、第1カシメ部と第2カシメ部との間に段差が形成されるため、リード線を第1カシメ部および第2カシメ部に挿入する際に、リード線の被覆部の先端を、第2カシメ部に当接させることができる。これにより、カシメ固定時のリード線の位置決めが容易にできるとともに、接続部材に対するリード線の位置のばらつきが低減され、リード線の芯線および被覆部を接続部材に確実に接続させることができる。したがって、小型な電気化学セルの耐久性を確実に向上させることができる。
【0010】
上記の接続部材において、前記第1カシメ部と前記第2カシメ部との間には、間隙が形成されている、ことを特徴とする。
本発明によれば、第1カシメ部および第2カシメ部に挿入されたリード線を、間隙を通じて目視することができる。これにより、リード線と接続部材との接続作業時において、接続部材に対するリード線の位置を確認しながら容易に作業することができる。したがって、電気化学セルの小型化を容易に実現できる接続部材とすることができる。
さらに、第1カシメ部と第2カシメ部との間に間隙を設けることで、第1カシメ部および第2カシメ部をリード線に対して各別にカシメ固定することができる。これにより、リード線の被覆部に対する第1カシメ部のカシメ固定時の荷重と、リード線の芯線に対する第2カシメ部のカシメ固定時の荷重と、を適宜異なる大きさに設定することができる。したがって、リード線と接続部材との接続をより確実に行うことができる。
【0011】
上記の接続部材において、前記端子接続部は、前記電極端子をカシメ固定する第3カシメ部である、ことを特徴とする。
本発明によれば、接続部材と電極端子およびリード線との接続が全てカシメ固定となる。このため、接続部材と電極端子およびリード線との接続を、抵抗溶接や半田付けにより行う必要がなくなる。これにより、電気化学セルの内部の電極体や、その電極体を覆う外装体等が、電極端子を介して加熱されることを防止でき、電極体の劣化や外装体の溶融等を防止できる。したがって、電気化学セルの信頼性の低下を抑制することができる。
【0012】
上記の接続部材において、前記第1カシメ部と前記第2カシメ部と前記第3カシメ部とは、所定軸に沿うように延在する筒状に形成されている、ことを特徴とする。
本発明によれば、接続部材を幅狭に形成できる。これにより、電極端子が狭い間隔で並設されている場合でも、隣り合う接続部材同士が接触して短絡することを防止できる。したがって、小型な電気化学セルの信頼性を向上させることができる。
【0013】
上記の接続部材において、前記第1カシメ部と前記第2カシメ部とは、第1軸に沿うように延在する筒状に形成され、前記第3カシメ部は、前記第1軸に平行な第2軸に沿うように延在する筒状に形成されている、ことを特徴とする。
本発明によれば、第1カシメ部および第2カシメ部と第3カシメ部とが並設されるため、接続部材と電極端子とを接続した際に、電気化学セルの外装体から見た接続部材の先端までの距離を短くできる。接続部材は、リード線と比較して硬い部材であるため、電気化学セルの外装体から接続部材の先端までの距離を短くすることで、電気化学セルのうち、搭載先の機器の形状に合わせて柔軟に形状を変化させることができない部分を小さくできる。したがって、電気化学セルをより小型に形成できる接続部材とすることができる。
【0014】
上記の接続部材において、前記端子接続部は、前記電極端子が溶着される溶着部である、ことを特徴とする。
本発明によれば、電極端子がカシメ固定しにくい形状であっても、接続部材と電極端子とを溶着により電気的および機械的に接続できる。したがって、各種小型な電気化学セルに用いることができる接続部材とすることができる。
【0015】
本発明の電気化学セルは、上記接続部材と、前記電極端子と、前記リード線と、を備える、ことを特徴とする。
本発明によれば、電極端子とリード線とを半田を用いることなく接続できる。したがって、耐久性に優れた小型な電気化学セルが得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電気化学セルの電極端子とリード線とを、接続部材により半田を用いることなく接続することができる。このため、半田付けにより電気化学セルの厚さが増加することを抑制できる。また、第1カシメ部によりリード線の被覆部を固定するため、リード線を引っ張った際に、芯線のみに応力が作用することを防止できる。このため、芯線が破断したり、芯線が被覆部から引き抜けたりすることを防止できる。したがって、電気化学セルの小型化および耐久性の向上が可能な接続部材とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る電気化学セルの斜視図である。
図2】第1実施形態に係る接続部材の斜視図である。
図3】第1実施形態に係る接続部材の正面図である。
図4】第1実施形態に係る接続部材の説明図であって、電気化学セルにおける接続部材近傍の側面図である。
図5】第1実施形態に係る他の接続部材の正面図である。
図6】第1実施形態の変形例に係る接続部材の斜視図である。
図7】第1実施形態の変形例に係る接続部材の説明図であって、電気化学セルにおける接続部材近傍の側面図である。
図8】第2実施形態に係る接続部材の説明図であって、電気化学セルにおける接続部材近傍の斜視図である。
図9】第2実施形態の変形例に係る接続部材の説明図であって、電気化学セルにおける接続部材近傍の斜視図である。
図10】第3実施形態に係る接続部材の説明図であって、電気化学セルにおける接続部材近傍の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、電気化学セルとして、非水電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」という。)を例に挙げて説明する。
【0019】
[第1実施形態]
(電池)
図1は、第1実施形態に係る電気化学セルの斜視図である。なお、図1では、わかりやすくするために、接続部材40についてカシメ加工する前の状態を図示している(以下の図面についても同様)。
図1に示すように、電池10は、電極体11と、外装体15と、一対の電極端子20と、一対のリード線30と、一対の接続部材40と、を有している。
【0020】
(電極体)
電極体11は、直方体状に形成されている。電極体11は、セパレータを介して互いに積層された正極および負極を含み、正極および負極は、電解液などの非水電解質に接している。
電極体11の正極は、例えば、金属箔などの集電体に正極活物質を付着させたものである。正極の集電体として用いる金属箔としては、例えば、アルミニウム箔やステンレス箔などが用いられる。正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウムやチタン酸リチウム、マンガン酸リチウムなどのように、リチウムと遷移金属とを含む複合酸化物である。
【0021】
電極体11の負極は、金属箔などの集電体に負極活物質を付着させたものである。負極の集電体として用いる金属箔としては、例えば、銅箔やステンレス箔などが用いられる。負極活物質は、例えば、シリコン酸化物やグラファイト、ハードカーボン、チタン酸リチウム、LiAlなどである。
セパレータは、リチウムイオンを通す特性を有する。セパレータは、例えば、ポリオレフィン製の樹脂ポーラスフィルム、ガラス製不織布、樹脂製不織布、セルロース繊維の積層体の1つ、または2以上の組み合わせを含む。
電極体11は、正極および負極の一方から他方へリチウムイオンが移動することにより、電荷を蓄積(充電)したり電荷を放出(放電)したりすることができる。
【0022】
(外装体)
外装体15は、電解液などの非水電解質とともに電極体11を収容する。外装体15は、平面視矩形状に形成されている。外装体15は、矩形状のシートを重ね合わせて形成されている。本実施形態では、外装体15は、矩形状のシートを二つ折りにして、その折り目を除く3辺に沿って重ね合わされたシートを熱融着することで形成されている。
【0023】
シートは、金属箔と、重ね合わせ面(内側面)に設けられた樹脂層と、外側面に設けられた保護層と、を有するラミネートフィルムである。金属箔は、例えばアルミニウムやステンレスなどの外気や水蒸気を遮断する金属材料を用いて形成され、予め防錆処理を施すことができる。重ね合わせ面の樹脂層は、例えば、ポリオレフィンのポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を用いて形成される。外側面の保護層は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、またはナイロン樹脂を用いて形成される。重ね合わせ面の樹脂層および外側面の保護層は、それぞれ金属箔との間に接合層を介して、熱融着または接着剤により接合される。
【0024】
外装体15は、樹脂層同士が接触するようにシートを重ね合わせて形成される。外装体15は、電極体11を包み込むカップ状の凹みとして形成された収納部16と、収納部16の周囲においてシートを重ね合わせた平面視U字状の重ね合わせ部17と、を有する。収納部16は、電極体11の形状に対応する直方体状に形成されている。収納部16は、重ね合わせ部17においてシートが熱融着されることにより密封されている。
【0025】
(電極端子)
一対の電極端子20は、電極体11の正極および負極にそれぞれ接続され、外装体15の内部から外部へ導出されている。一対の電極端子20は、それぞれタブ状に形成されて略平行に並設されている。
一対の電極端子20は、正極側電極端子21と、負極側電極端子22と、を含んでいる。正極側電極端子21は、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等により形成され、外装体15の内部にて電極体11の正極と電気的に接続されている。負極側電極端子22は、例えばニッケルや銅のフープ材のニッケルメッキ品、ステンレス等により形成され、外装体15の内部にて電極体11の負極と電気的に接続されている。
【0026】
また、一対の電極端子20は、外装体15の重ね合わせ部17における熱融着部と交差する位置において、タブフィルム25を有する。タブフィルム25は、外装体15の樹脂層と同様に熱可塑性樹脂により形成されている。タブフィルム25は、外装体15のシートとともに熱融着されることで、電極端子20の引き出し位置における外装体15内部の密閉性を高めている。
【0027】
(リード線)
一対のリード線30は、外装体15の外部に配置され、一端部が後述する接続部材40にカシメ固定されている。リード線30は、例えば銅等の電気抵抗率の低い金属材料により形成された芯線30a(図4参照)と、芯線30aを覆う被覆部30bと、により構成されている。被覆部30bには、例えばゴムやポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂製の絶縁材料が用いられている。リード線30の両端部は、被覆部30bが剥ぎ取られて、芯線30aが露出している。
【0028】
(接続部材)
接続部材40は、電極端子20とリード線30の一端部とを電気的および機械的に接続する。接続部材40は、延性および展性が高く、電気抵抗率の低い金属材料により形成され、例えばアルミニウムやアルミニウム合金、ニッケルやスズのめっき処理が施された銅、真鍮等が好適である。
【0029】
図2は、第1実施形態に係る接続部材の斜視図である。図3は、第1実施形態に係る接続部材の正面図である。図4は、第1実施形態に係る接続部材の説明図であって、電気化学セルにおける接続部材近傍の側面図である。
図2および図4に示すように、接続部材40は、リード線30の被覆部30bをカシメ固定する第1カシメ部41と、リード線30の芯線30aをカシメ固定する第2カシメ部42と、電極端子20に接続される端子接続部45と、第1カシメ部41、第2カシメ部42および端子接続部45を連結する連結部44と、を有する。端子接続部45は、電極端子20をカシメ固定する第3カシメ部43である。
【0030】
図2に示すように、第1カシメ部41、第2カシメ部42および第3カシメ部43(以下、単に「カシメ部41〜43」という場合がある。)は、所定軸P1に沿うように延在する同一形状の円筒状に形成されている。第1カシメ部41、第2カシメ部42および第3カシメ部43は、この順に間隙47を設けた状態で、同軸となるように配置されている。
連結部44は、カシメ部41〜43の外周面に接するように、且つ所定軸P1の軸方向(以下、単に「軸方向」という。)に沿うように配置され、カシメ部41〜43を連結している。より具体的には、カシメ部41〜43は、それぞれ長方形状の金属板をその長手方向両端部を繋ぎ合わせるように円筒状に湾曲させることで形成されている。この際、各金属板の長手方向両端部は、円筒状の部分の径方向外方に向かって折り曲げられて、連結部44により固定されている(図3参照)。カシメ部41〜43の内径は、リード線30の被覆部30bの外径よりも大きく設定されている。
【0031】
図4に示すように、接続部材40は、第3カシメ部43に電極端子20が挿入され、第1カシメ部41および第2カシメ部42にリード線30の一端部が挿入されている。第1カシメ部41の円筒内部には、リード線30の被覆部30bが位置しており、被覆部30bと密着し固定するように第1カシメ部41を塑性変形させてカシメることにより、被覆部30bが接続部材40にカシメ固定される。第2カシメ部42の円筒内部には、リード線30の芯線30aが位置しており、第2カシメ部42をカシメることにより、芯線30aが接続部材40にカシメ固定される。第3カシメ部43の円筒内部には、電極端子20が位置しており、第3カシメ部43をカシメることにより、電極端子20が接続部材40にカシメ固定される。第1カシメ部41と第2カシメ部42とは、連結部44を介して接続されているため、リード線30の芯線30aと被覆部30bとが互いに固定される。また、第2カシメ部42と第3カシメ部43とは、連結部44を介して接続されているため、電極端子20とリード線30とが導通する。
【0032】
このように、本実施形態の接続部材40は、リード線30の被覆部30bをカシメ固定する第1カシメ部41と、リード線30の芯線30aをカシメ固定する第2カシメ部42と、電極端子20に接続される端子接続部45と、を備える。
この構成によれば、電池10の電極端子20とリード線30とを、接続部材40により半田を用いることなく接続することができる。このため、半田付けにより電池10の厚さが増加することを抑制できる。また、第1カシメ部41によりリード線30の被覆部30bを固定するため、リード線30を引っ張った際に、芯線30aのみに応力が作用することを防止できる。このため、芯線30aが破断したり、芯線30aが被覆部30bから引き抜けたりすることを防止できる。したがって、電池10の小型化および耐久性の向上が可能な接続部材40とすることができる。
【0033】
また、第1カシメ部41および第2カシメ部42は、筒状に形成されているため、リード線30を第1カシメ部41および第2カシメ部42に挿入することができる。これにより、リード線30と接続部材40との接続作業時において、リード線30が接続部材40から脱落しにくくなり、接続作業を容易に行うことができる。したがって、電池10の小型化を容易に実現できる接続部材40とすることができる。
【0034】
また、第1カシメ部41と第2カシメ部42との間には、間隙47が形成されているため、第1カシメ部41および第2カシメ部42に挿入されたリード線30を、間隙47を通じて目視することができる。これにより、リード線30と接続部材40との接続作業時において、接続部材40に対するリード線30の位置を確認しながら容易に作業することができる。したがって、電池10の小型化を容易に実現できる接続部材40とすることができる。
【0035】
さらに、第1カシメ部41と第2カシメ部42との間に間隙47を設けることで、第1カシメ部41および第2カシメ部42をリード線30に対して各別にカシメ固定することができる。これにより、リード線30の被覆部30bに対する第1カシメ部41のカシメ固定時の荷重と、リード線30の芯線30aに対する第2カシメ部42のカシメ固定時の荷重と、を適宜異なる大きさに設定することができる。したがって、リード線30と接続部材40との接続をより確実に行うことができる。
【0036】
また、端子接続部45は、電極端子20をカシメ固定する第3カシメ部43であるため、接続部材40と電極端子20およびリード線30との接続が全てカシメ固定となる。このため、接続部材40と電極端子20およびリード線30との接続を、抵抗溶接や半田付けにより行う必要がなくなる。これにより、電極体11や外装体15等が電極端子20を介して加熱されることを防止でき、電極体11の劣化や外装体15の溶融等を防止できる。したがって、電池10の信頼性の低下を抑制することができる。
【0037】
また、第1カシメ部41と第2カシメ部42と第3カシメ部43とは、所定軸P1に沿うように延在する筒状に形成されているため、接続部材40を幅狭に形成できる。これにより、電極端子20が狭い間隔で並設されている場合でも、隣り合う接続部材40同士が接触して短絡することを防止できる。したがって、小型な電池10の信頼性を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態の電池10は、接続部材40と、電極端子20と、リード線30と、を備えているため、電極端子20とリード線30とを半田を用いることなく接続できる。したがって、耐久性に優れた小型な電池10が得られる。
【0039】
なお、本実施形態では、カシメ部41〜43は、円筒状に形成されているが、これに限定されるものではない。カシメ部41〜43の形状は、例えば、図5に示すように軸方向から見て一部が開口した円筒状や、角筒状、U字状等であってもよい。
【0040】
[第1実施形態の変形例]
(接続部材)
図6は、第1実施形態の変形例に係る接続部材の斜視図である。図7は、第1実施形態の変形例に係る接続部材の説明図であって、電気化学セルにおける接続部材近傍の側面図である。
【0041】
図4に示す第1実施形態では、接続部材40のカシメ部41〜43は、同一形状に形成されていた。これに対して、図6に示す変形例では、接続部材140のカシメ部141〜143は、それぞれ互いに異なる形状に形成されている点で、第1実施形態と異なっている。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0042】
図6および図7に示すように、接続部材140は、第1カシメ部141と、第2カシメ部142と、第3カシメ部143と、を有する。第1カシメ部141は、所定軸P1に沿うように延在する円筒状に形成されている。第1カシメ部141の内径は、リード線30の被覆部30bの外径よりも大きく設定されている。第2カシメ部142は、所定軸P1に沿うように延在する円筒状に円筒状に形成されている。第2カシメ部142の内径は、第1カシメ部141の内径よりも小さく、且つリード線30の芯線30aよりも大きく設定されている。第3カシメ部143は、所定軸P1に沿うように延在する四角筒状に形成され、電極端子20を挿入可能となっている。第1カシメ部141、第2カシメ部142および第3カシメ部143は、この順に間隙147を設けた状態で、所定軸P1に沿って配置されている。
【0043】
このように、本変形例の接続部材140は、第2カシメ部142の内径が、第1カシメ部141の内径よりも小さくなっている。
この構成によれば、第1カシメ部141と第2カシメ部142との間に段差が形成されるため、リード線30を第1カシメ部141および第2カシメ部142に挿入する際に、リード線30の被覆部30bの先端を、第2カシメ部142に当接させることができる。これにより、カシメ固定時のリード線30の位置決めが容易にできるとともに、接続部材140に対するリード線30の位置のばらつきが低減され、リード線30の芯線30aおよび被覆部30bを接続部材140に確実に接続させることができる。したがって、小型な電池の耐久性を確実に向上させることができる。
【0044】
[第2実施形態]
(接続部材)
図8は、第2実施形態に係る接続部材の説明図であって、電気化学セルにおける接続部材近傍の斜視図である。
図4に示す第1実施形態では、接続部材40の第3カシメ部43は、第1カシメ部41および第2カシメ部42と同軸上に形成されていた。これに対して、図8に示す第2実施形態では、接続部材240の第3カシメ部243は、第1カシメ部241および第2カシメ部242の側面に沿って形成されている点で、第1実施形態と異なっている。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
図8に示すように、接続部材240は、長方形状の金属板240aの長手方向両端部に対して円筒状に曲げ加工を行うことにより形成されている。接続部材240は、第1カシメ部241と、第2カシメ部242と、第3カシメ部243と、連結部244と、を有する。
第1カシメ部241は、金属板240aの長手方向一端部であって、第2カシメ部242と一体的に形成された円筒状の部材である。第1カシメ部241および第2カシメ部242(以下、「リード線カシメ部241,242」という。)は、第1軸P2に沿うように延在している。リード線カシメ部241,242の内径は、リード線30の被覆部30bの外径よりも大きく設定されている。
【0046】
第3カシメ部243は、金属板240aの長手方向他端部であって、円筒状に形成されている。第3カシメ部243は、第1軸P2に平行な第2軸P3に沿うように延在している。第3カシメ部243の内径は、電極端子20を挿入可能に設定され、本実施形態ではリード線カシメ部241,242の内径と略一致する。第3カシメ部243の長さは、リード線カシメ部241,242の長さと同等となっている。
連結部244は、矩形板状に形成されている。連結部244は、金属板240aにおける長手方向一端部のリード線カシメ部241,242と、長手方向他端部の第3カシメ部243とを連結している。
【0047】
このように、本実施形態の接続部材240は、第1カシメ部241と第2カシメ部242とが第1軸に沿うように延在する筒状に形成され、第3カシメ部243は、第1軸に平行な第2軸に沿うように延在する筒状に形成されている。
この構成によれば、リード線カシメ部241,242と第3カシメ部243とが並設されているため、接続部材40と電極端子20とを接続した際に、外装体15から見た接続部材240の先端までの距離を短くできる。接続部材240は、リード線30と比較して硬い部材であるため、外装体15から接続部材240の先端までの距離を短くすることで、電池のうち、搭載先の機器の形状に合わせて柔軟に形状を変化させることができない部分を小さくできる。したがって、電池をより小型に形成できる接続部材240が得られる。
【0048】
[第2実施形態の変形例]
(接続部材)
図9は、第2実施形態の変形例に係る接続部材の説明図であって、電気化学セルにおける接続部材近傍の斜視図である。
図8に示す第2実施形態では、第1カシメ部241と第2カシメ部242とが一体的に形成されていたが、図9に示す変形例では、第1カシメ部341と第2カシメ部342とが分割形成されている点で、第2実施形態と異なっている。なお、第2実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0049】
図9に示すように、接続部材340は、第1カシメ部341と、第2カシメ部342と、を有する。第1カシメ部341および第2カシメ部342は、それぞれ第1軸P2に沿うように延在する円筒状に形成されている。第1カシメ部341と第2カシメ部342との間には、切込みが形成され、第1カシメ部341と第2カシメ部342とが異なる内径に設定されている。第1カシメ部341の内径は、リード線30の被覆部30bよりも大きく設定されている。また、第2カシメ部342の内径は、第1カシメ部341の内径よりも小さく、且つリード線30の芯線30aよりも大きく設定されている。
【0050】
第1カシメ部341と第2カシメ部342とが異なる内径に設定されていることで、第1カシメ部341と第2カシメ部342との間に段差が形成される。このため、リード線30を第1カシメ部341および第2カシメ部342に挿入する際に、リード線30の被覆部30bの先端を、第2カシメ部342に当接させることができる。これにより、カシメ固定時のリード線30の位置決めが容易にできるとともに、接続部材340に対するリード線30の位置のばらつきが低減され、リード線30の芯線30aおよび被覆部30bを接続部材340に確実に接続させることができる。したがって、小型な電池の耐久性を確実に向上させることができる。
【0051】
[第3実施形態]
(接続部材)
図10は、第3実施形態に係る接続部材の説明図であって、電気化学セルにおける接続部材近傍の斜視図である。
図9に示す第2実施形態の変形例では、端子接続部45が、電極端子20がカシメ固定される第3カシメ部243であった。これに対して、図10に示す第3実施形態では、端子接続部45が、電極端子20が溶着される溶着部446である点で、第2実施形態の変形例と異なっている。なお、第2実施形態の変形例と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
図10に示すように、接続部材440は、電極端子20が溶着される溶着部446を有する。溶着部446は、矩形板状であって、連結部244から第1カシメ部341および第2カシメ部342の延在方向に沿って、外側に向かって延出している。
溶着部446は、その主面が電極端子20の主面に接触した状態で、電極端子20に対して溶着される。溶着部446と電極端子20とは、抵抗溶接や超音波溶接、レーザー溶接等の接合手段により溶着される。これにより、接続部材440は、電極端子20に対して電気的および機械的に接続される。
【0053】
このように、本実施形態の接続部材440の端子接続部45は、電極端子20が溶着される溶着部446である。
この構成によれば、電極端子20がカシメ固定しにくい形状であっても、接続部材440と電極端子20とを溶着により電気的および機械的に接続できる。したがって、各種小型な電池に用いることができる接続部材440が得られる。
【0054】
また、電極端子20とリード線30とを接続する際に、リード線30と接続部材440とを予めカシメ固定しておくことで、溶着部446と電極端子20との溶着時において芯線30aの位置ずれが生じない。このため、電極端子20とリード線30との接続工程を自動化することが容易になる。したがって、電池を低コストで製造することが可能となる。
【0055】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態においては、各カシメ部において電極端子20およびリード線30は接続部材に対してカシメ固定のみにより固定されているが、これに限定されず、例えばカシメ固定後に溶着されてもよい。
【0056】
また、接続部材は、プリント基板等に固定された状態で用いられてもよい。このように、基板上に固定された接続部材を用いることで、電極端子20が撓み、接続部材同士が接触して短絡することを防止できる。
また、上記実施形態においては、電気化学セルの一例として、非水電解質二次電池を例に挙げて説明したが、この場合に限定されず、電気二重層キャパシタや一次電池等に上述した構成を適用することができる。
【0057】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0058】
10…電池(電気化学セル) 20…電極端子 30…リード線 30a…リード線の芯線 30b…リード線の被覆部 40,140,240,340,440…接続部材 41,141,241,341…第1カシメ部 42,142,242,342…第2カシメ部 43,143,243…第3カシメ部 45…端子接続部 47,147…間隙 446…溶着部 P1…所定軸 P2…第1軸 P3…第2軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10