特許第6426515号(P6426515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東日本旅客鉄道株式会社の特許一覧 ▶ 新潟トランシス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6426515-砕石運搬散布車 図000002
  • 特許6426515-砕石運搬散布車 図000003
  • 特許6426515-砕石運搬散布車 図000004
  • 特許6426515-砕石運搬散布車 図000005
  • 特許6426515-砕石運搬散布車 図000006
  • 特許6426515-砕石運搬散布車 図000007
  • 特許6426515-砕石運搬散布車 図000008
  • 特許6426515-砕石運搬散布車 図000009
  • 特許6426515-砕石運搬散布車 図000010
  • 特許6426515-砕石運搬散布車 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6426515
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】砕石運搬散布車
(51)【国際特許分類】
   E01B 27/02 20060101AFI20181112BHJP
   B61D 47/00 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   E01B27/02
   B61D47/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-64727(P2015-64727)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-183520(P2016-183520A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2018年3月12日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 佐々木亨、外1名,軌間内散布可能なミニホキの開発,JR EAST Technical Review,日本,東日本旅客鉄道株式会社 総合企画本部 技術企画部,2014年 9月30日,No.48,67−70頁
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503132257
【氏名又は名称】新潟トランシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 宣章
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 亨
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】野澤 直城
(72)【発明者】
【氏名】宮廻 成志
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−234670(JP,A)
【文献】 特開平06−206539(JP,A)
【文献】 特開昭60−015234(JP,A)
【文献】 米国特許第4144655(US,A)
【文献】 佐々木亨、外1名,軌間内散布可能なミニホキの開発,JR EAST Technical Review,日本,東日本旅客鉄道株式会社 総合企画本部 技術企画部,2014年 9月30日,No.48,67−70頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 27/02
B61D 47/00
B60P 1/40
B60P 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砕石を落下させる開口と、前記開口に向けて下り傾斜する一対の側壁を有する荷受台と、
前記開口の上方に配置されて、前記荷受台に載積された前記砕石を前記一対の側壁の各々に向けて振り分けることで前記砕石が前記開口に集中することを規制する規制部材と、
前記開口から落下した前記砕石を一方向に向けて搬送するスクリューコンベヤと、
前記スクリューコンベヤにより搬送された前記砕石を排出する排出口と、
を備え、
前記規制部材は、短手方向における中心からずれた位置で上方に折り曲げた折曲部を有する板部材であり、
前記規制部材は、前記荷受台の幅方向において、前記折曲部の位置が前記荷受台の中心からずれた位置で、且つ、前記規制部材の両端部と前記一対の側壁との隙間が同一間隔となるように、前記荷受台の内部に配置されることを特徴とする砕石運搬散布車。
【請求項2】
請求項1に記載の砕石運搬散布車において、
前記開口は、前記荷受台の幅方向において、前記開口の中心が前記荷受台の中心に対して、前記折曲部とは逆方向にずれた位置に設けられることを特徴とする砕石運搬散布車。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の砕石運搬散布車において、
前記スクリューコンベヤは、前記荷受台の幅方向において、前記スクリューコンベヤの回転中心の位置が前記荷受台の中心と一致するように設けられることを特徴とする砕石運搬散布車。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の砕石運搬散布車において、
前記開口及び前記規制部材は、前記荷受台の上面視における前記荷受台の中心を基準としたときに点対称の位置関係となるように各々2個備えたことを特徴とする砕石運搬散布車。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の砕石運搬散布車において、
前記スクリューコンベヤは、前記荷受台の長手方向に、且つ回転中心が同軸となるように2個配置されることを特徴とする砕石運搬散布車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬される砕石(バラスト)をレールの軌間外や軌間内に散布する砕石運搬散布車に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道のレールの軌間内やレールの軌間外には、レールの安定化を図る目的で砕石などのバラストが敷き詰められている。バラストは、砕石運搬散布車を用いてレールの軌間内や軌間外に散布される。砕石運搬散布車の中には、荷台の側壁を所定量回動させてバラストを散布するもの(特許文献1参照)や、荷台の底面に設けられた開口を開放することでバラストを散布するものがある。このような砕石運搬散布車を用いることで、徐行させながらバラストを散布する、又は停止した状態でバラストを散布することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−115393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
砕石運搬散布車を用いてバラストを散布する場合、バラストが散布される領域や、バラストの散布量を作業者が目視確認する必要があり、バラストの散布作業に係る効率が悪い。したがって、砕石運搬散布車を徐行させながら、荷台に積載したバラストをレールの軌間内や軌間外に散布するための技術が要望されている。
【0005】
本発明は、バラストをレールの軌間内に確実に且つ安定して散布することができるようにした砕石運搬散布車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の砕石運搬散布車は、砕石を落下させる開口と、前記開口に向けて下り傾斜する一対の側壁を有する荷受台と、前記開口の上方に配置されて、前記荷受台に載積された前記砕石を前記一対の側壁の各々に向けて振り分けることで前記砕石が前記開口に集中することを規制する規制部材と、前記開口から落下した前記砕石を一方向に向けて搬送するスクリューコンベヤと、前記スクリューコンベヤにより搬送された前記砕石を排出する排出口と、を備え、前記規制部材は、短手方向における中心からずれた位置で上方に折り曲げた折曲部を有する板部材であり、前記規制部材は、前記荷受台の幅方向において、前記折曲部の位置が前記荷受台の中心からずれた位置で、且つ、前記規制部材の両端部と前記一対の側壁との隙間が同一間隔となるように、前記荷受台の内部に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バラストをレールの軌間内に確実に且つ安定して散布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】砕石運搬散布車とモータ車両との側面図である。
図2】砕石運搬散布車の側面図である。
図3】砕石運搬散布車の正面図である。
図4】砕石運搬散布車の上面図である。
図5図2におけるA−A断面図である。
図6図2におけるB−B断面図である。
図7図3におけるC−C断面図である。
図8】砕石運搬散布車及びモータ車両間で信号を送受信する際の電気的構成を示す図である。
図9】レールの軌間内にバラストを散布する場合のスクリューコンベヤ近傍の構成を示す断面図である。
図10】レールの軌間外にバラストを散布する場合のスクリューコンベヤ近傍の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施した砕石運搬散布車10について説明する。
【0010】
図1に示すように、レールが設置される道床への砕石散布作業は、本発明の砕石運搬散布車10を用いて実行される。詳細には、砕石散布作業は、2〜4台の砕石運搬散布車10と、これら砕石運搬散布車10を牽引して走行するモータ車両11とを用いて実行される。図1においては、2台の砕石運搬散布車10a,10bとモータ車両11とを用いて砕石散布作業を行う場合を示している。
【0011】
図2に示すように、砕石運搬散布車10は、2台の資材輸送車15a,15bと、荷受台16とから構成される。荷受台16は、資材輸送車15a,15bに対して着脱自在に組み付けられる。周知のように、資材輸送車15a,15bは、レール等の資材を搬送する際に用いられる車両である。本発明では、砕石運搬散布車10を資材輸送車15a,15b及び荷受台16から構成し、荷受台16を資材輸送車15a,15bに対して着脱自在としているが、これに限定される必要はなく、車輪や車軸などからなる車輪ユニットが荷受台16に一体に組み付けられた砕石運搬散布車10であってもよい。なお、符号17は、資材輸送車15a,15bを走行させるためのレールである。
【0012】
図2から図7に示すように、荷受台16は、荷受台枠20、ホッパーフレーム21、スクリューコンベヤ22,23、駆動モータ24,25、操作盤30,31を主要構成としている。
【0013】
荷受台枠20は、例えばI形鋼、溝形鋼、鋼板を溶接することで形成される。荷受台枠20は、ホッパーフレーム21を上部に備える。荷受台枠20は、長手方向(Y方向)の両端下部に旋回軸受け(図示省略)が設けられる。旋回軸受けを介して、荷受台枠20が資材輸送車15a,15bに組み付けられる。
【0014】
ホッパーフレーム21は、レール17の軌間内及び軌間外に散布する砕石(バラスト)を積載する。ここで、バラストは、例えば直径100mm程度の大きさからなる。ホッパーフレーム21は、複数の鋼板を溶接することで形成される。ホッパーフレーム21は、上面が開口され、上面から下面にかけてXY平面の断面積が小さくなる筒形状である。ホッパーフレーム21の下面には、長手方向(Y方向)に沿った2つの開口32,33が設けられる。開口32,33は、ホッパーフレーム21に積載されたバラストをホッパーフレーム21の下方に設けた樋に落下させる。開口32,33のうち、開口32は短手方向の中心がスクリューコンベヤ22の中心(又はホッパーフレーム21の幅方向における中心)から図4中左側にずれた位置に設けられる。また、開口33は、短手方向の中心がスクリューコンベヤ23の中心(又はホッパーフレーム21の幅方向における中心)から図4中右側にずれた位置に設けられる。なお図4においては、ホッパーフレーム21の幅方向における中心に対して記号Sを付している。
【0015】
ホッパーフレーム21の側壁21a,21bは、ホッパーフレーム21の幅方向の中心に向けて下り傾斜している。これにより、ホッパーフレーム21の側壁21a,21b近傍に位置するバラストは、開口32,33に向けて移動する。また、ホッパーフレーム21の側壁21c,21dは、ホッパーフレーム21の長手方向の中心に向けて下り傾斜している。ここで、符号34はホッパーフレーム21の補強を目的として側壁21a及び側壁21bに設けた補強材、符号35はホッパーフレーム21の内部を移動するバラストを開口32又は開口33のいずれかの開口のいずれか一方の開口に振り分けるための部材である。
【0016】
ホッパーフレーム21の側壁21aは、開口32の近傍に排出口36を、開口33の近傍に排出口37を有する。上述したように、排出口36は開口32に沿って、また、排出口37は開口33に沿って設けられる。上述したように、ホッパーフレーム21の側壁21aには補強材34が設けられる。したがって、排出口36及び排出口37は、補強材34により例えば4個にそれぞれ分割される。排出口36は遮蔽板38に被覆され、また、排出口37は遮蔽板39に被覆される。
【0017】
同様にして、ホッパーフレーム21の側壁21bは、開口32の近傍に排出口40を、開口33の近傍に排出口41を有する。上述したように、排出口40は開口32に沿って、また、排出口41は開口33に沿って設けられる。上述したように、ホッパーフレーム21の側壁21aには補強材34が設けられる。したがって、排出口40及び排出口41は、補強材34により例えば4個にそれぞれ分割される。排出口40は遮蔽板42に被覆され、また、排出口41は遮蔽板43に被覆される。
【0018】
ホッパーフレーム21は、スタビライザ45,46を備えている。スタビライザ45は、開口32の上方近傍に、スタビライザ46は開口33の上方近傍に配置される。したがって、ホッパーフレーム21の上面視を示す図4において、スタビライザ45は開口32を、スタビライザ46は開口33をそれぞれ被覆した状態となる。
【0019】
スタビライザ45,46は、短手方向における中心から所定量ずれた位置で上方に折り曲げた板部材である。スタビライザ45は、XZ平面における短片45aの先端とホッパーフレーム21の側壁21aとの隙間Dと、XZ平面における長片45bの先端とホッパーフレーム21の側壁21bとの隙間Eとが同一の隙間(D=E)となるように開口32の上方に配置される。つまり、スタビライザ45の短片45aの先端とホッパーフレーム21の側壁21aとの間に設けられる開口部分の面積と、スタビライザ45の長片45bとホッパーフレーム21の側壁21bとの間に設けられる開口部分の面積とは同一面積に設定される。なお、スタビライザ45がホッパーフレーム21に配置されると、折り曲げられた箇所(以下、折曲部45c)のX方向の位置は、ホッパーフレーム21の幅方向における中心から右側(X方向)にずれた位置となる。
【0020】
同様にして、スタビライザ46は、XZ平面における短片46aの先端とホッパーフレーム21の側壁21bとの隙間Fと、XZ平面における長片46bの先端とホッパーフレーム21の側壁21aとの隙間Gとが同一の隙間(F=G)となるように開口33の上方に配置される。つまり、スタビライザ46の短片46aの先端とホッパーフレーム21の側壁21bとの間に設けられる開口部分の面積と、スタビライザ46の長片46bとホッパーフレーム21の側壁21aとの間に設けられる開口部分の面積とは同一面積に設定される。なお、スタビライザ46はホッパーフレーム21に配置されたときには、折り曲げられた箇所(以下、折曲部46c)のX方向の位置は、ホッパーフレーム21の幅方向における中心から右側(−X方向)にずれた位置となる。
【0021】
ここで、スタビライザ45とホッパーフレーム21の側壁21a,21bとの間に生じる隙間D,E及びスタビライザ46とホッパーフレーム21の側壁21a,21bの隙間F,Gは、平均的な大きさのバラスト1個又は2個分の直径程度に設定される。
【0022】
上述したスタビライザ45,46をホッパーフレーム21の内部に設けることで、スタビライザ45,46の位置まで到達したバラストがスタビライザ45,46の斜面によって、ホッパーフレーム21の側壁21a又は側壁21bに向けてそれぞれ振り分けられる。その結果、ホッパーフレーム21に積載されたバラストのうち、下層のバラストが開口32,33に集中し、開口32,33近傍でバラストが詰まることを防止することが可能となる。
【0023】
図4に示すように、砕石運搬散布車10の上面視において、ホッパーフレーム21の内部の構造において、砕石運搬散布車10の中心Pを基準としたときに、開口32と開口33との位置関係は、点対称の関係である。同様にして、スタビライザ45とスタビライザ46との位置関係は、点対称の関係である。また、スクリューコンベヤ23とスクリューコンベヤ24の位置関係は、砕石運搬散布車10の中心Pを通る直線Qを基準としたときに線対称の関係である。
【0024】
なお、図4における上面視において、スクリューコンベア22,23及び開口32,33は、スタビライザ45,46やホッパーフレームによって隠れているが、便宜上、スクリューコンベヤ22,23に対して二点鎖線、開口32,33に対して点線を用いて示している。
【0025】
操作レバー48,49,50,51は、上述した4枚の遮蔽板38,39,42,43の各々に対応して設けられる。例えば操作レバー48は、操作される一端部が砕石運搬散布車10の幅方向における中心に向けて傾斜した状態(図3中実線に示す位置)と、該一端部が砕石運搬散布車10の幅方向における外側に向けて傾斜した状態(図3中二点鎖線に示す位置)との間で回動可能に設けられる。操作レバー48が図3中実線に示す位置に保持されているときには、排出口36は遮蔽板38により遮蔽される。また、操作レバー48が図3中実線に示す位置から図3中二点鎖線にて示す位置に操作されると、遮蔽板38がスライドして排出口36を開放する。
【0026】
同様にして、操作レバー49は、排出口37を遮蔽する位置及び排出口37を開放する位置との間で遮蔽板39をスライドさせる。操作レバー50は、排出口40を遮蔽する位置及び排出口40を開放する位置との間で遮蔽板42をスライドさせる。操作レバー51は、排出口41を遮蔽する位置及び排出口41を開放する位置との間で遮蔽板43をスライドさせる。
【0027】
ホッパーフレーム21に設けられる開口32,33の下方には、ホッパーフレーム21の長手方向(Y方向)に沿った樋53,54が設けられる。樋53,54の内部には、スクリューコンベヤ22,23がそれぞれ配置される。
【0028】
スクリューコンベヤ22,23は、それぞれの回転軸がホッパーフレーム21の長手方向(Y方向)に沿って、また、それぞれの回転軸が同軸となるように配置される。ここで、スクリューコンベヤ22,23は、回転軸が砕石運搬散布車10の幅方向(X方向)における中心に配置される。
【0029】
スクリューコンベヤ22は、例えばドライブチェーン及びスプロケットからなる駆動機構を介して駆動モータ24に連結される。駆動モータ24の作動によりスクリューコンベヤ22が回転すると、樋53に落下したバラストが回転するスクリューコンベヤ22のスクリュー部22aに押圧される。その結果、バラストはスクリューコンベヤ22によって樋53の内部を排出口53aに向けて搬送された後、排出口53aからレール17の軌間内に落下する。なお、樋53に設けた排出口53aは、常に開放されていてもよいし、主動又は自動により開閉されるものであってもよい。
【0030】
同様にして、スクリューコンベヤ23は、例えばドライブチェーン及びスプロケットからなる駆動機構を介して駆動モータ25に連結される。駆動モータ25の作動によりスクリューコンベヤ23が回転すると、樋54に落下したバラストが回転するスクリューコンベヤ23のスクリュー部23aに押圧される。その結果、バラストはスクリューコンベヤ23によって樋54の内部を排出口54aに向けて搬送された後、排出口54aからレール17の軌間内に落下する。なお、樋54に設けた排出口54aは、常に開放されていてもよいし、主動又は自動により開閉されるものであってもよい。
【0031】
ホッパーフレーム21の側壁21aに有する排出口36,37の下方にはシュート61,62が設けられる。また、ホッパーフレーム21の側壁21bに有する排出口40及び排出口41の下方にはシュート63,64が設けられる。シュート61,62,63,64は鋼板から形成される。シュート61,62,63,64は、ホッパーフレーム21の幅方向における中心側に配置された一端部から、ホッパーフレーム21の幅方向における外側に配置された他端部に向けて、それぞれ下り傾斜するように配置される。このようなシュート61,62,63,64を配置することで、排出口36,37,40,41から落下するバラストがシュート61,62,63,64に沿って移動した後、シュート61,62,63,64の先端からレール17の軌間外に落下する。
【0032】
操作盤30,31は、駆動モータ23を駆動するボタンや、駆動モータ23の駆動を停止させるボタンなどを含む複数の操作ボタンを有する。また、操作盤30,31は、後述するカメラ72,73により撮像された映像や、複数の操作ボタンにおける操作を補助する画像などを表示するモニタ30a,31aを有する。
【0033】
図8は、砕石運搬散布車10及びモータ車両11の間で信号を送受信する際の電気的構成を示す図である。なお、図8においては、1台の砕石運搬散布車10がモータ車両11に連結される場合を示している。また、図8において、モータ車両11の構成は砕石運搬散布車10との間の通信を行う構成についてのみ記載している。
【0034】
砕石運搬散布車10は、上述した操作盤30,31の他、制御部70、通信部71、カメラ72,73、散布量検知センサ74などを有する。制御部70は、操作盤30,31からの操作信号を受けて、砕石運搬散布車10に搭載される駆動モータ24,25の駆動制御や操作盤30,31に設けたモニタ30a,31aの表示制御の他、モータ車両11との間の通信制御を行う。通信部71は、モータ車両11との間での無線通信により信号の送受信を行う。なお、信号としては、カメラ72,73により取得される映像信号の他、制御コマンドなどの信号が挙げられる。
【0035】
カメラ72は、樋53の排出口53aの近傍に、カメラ73は樋54の排出口54aの近傍にそれぞれ配置される。カメラ72,73は、排出口53a,54aを撮像範囲とした画像(動画像又は静止画像)を撮像する。カメラ72,73によって撮像される画像は、操作盤30のモニタ30a又は操作盤31のモニタ31aや、モータ車両11に設けたモニタ78に表示される。
【0036】
モータ車両11は、制御部76、通信部77、モニタ78、緊急停止ボタン79などを有する。制御部77は、図示を省略した操作盤からの操作信号を受けて、モータ車両11の各部を制御する。通信部78は、砕石運搬散布車10との間で無線通信を行う。この無線通信により、砕石運搬散布車10に設置されたカメラ72,73からの映像信号を受信し、緊急停止ボタン79からの緊急停止信号を砕石運搬散布車10に向けて送信することが可能となる。モニタ78は、砕石運搬散布車10から送信された映像信号に基づく映像を表示する。緊急停止ボタン79は、散布されるバラストの散布状態が悪いと判断される場合に駆動モータ24,25を停止する際に操作される。緊急停止ボタンが操作されると、制御部は砕石運搬散布車10に向けて緊急停止信号を送信する。
【0037】
なお、図8においては、1台の砕石運搬散布車10とモータ車両11との間の信号の送受信を行う場合の構成を表しているが、砕石散布作業においては、モータ車両11は2〜4台の砕石運搬散布車10と連結されることが一般的である。したがって、各砕石運搬散布車10との間で行う無線通信を、各車両で異なる通信チャンネルを用いて実行する。
【0038】
以下、積載されたバラストを散布するときの砕石運搬散布車10の動作について説明する。砕石運搬散布車10に積載されるバラストは、砕石運搬散布車10を走行させて散布する場合と、砕石運搬散布車10を停止させて散布する場合とがある。以下、バラストに対して符号80を付して説明する。
【0039】
まず、砕石運搬散布車10を走行させてバラストを散布する場合について説明する。砕石運搬散布車10に乗った作業者は、操作盤30又は操作盤31を操作して駆動モータ24,25のいずれかを駆動させる。例えば砕石運搬散布車10を−Y方向に走行させる場合、操作盤30又は操作盤31を操作して駆動モータ24を駆動させる。駆動モータ24の駆動によりスクリューコンベヤ22が図9中K方向に回転する。ホッパーフレーム21に積載されるバラスト80のうち、ホッパーフレーム21の下部に積載されたバラスト80の一部はバラスト80自身の自重により樋53の内部に落下している。駆動モータ23が駆動してスクリューコンベヤ22が図9中K方向に回転すると、樋53に落下したバラスト80がスクリューコンベヤ22のスクリュー部22aに押圧され、樋53の内部を搬送される。スクリューコンベヤ22に樋53の内部を搬送されるバラスト80は、排出口53aからレール17の軌間内に落下する。
【0040】
樋53に落下したバラスト80がスクリューコンベヤ22の回転により排出口53aに向けて搬送される過程で、開口32付近に位置するバラスト80が開口32から樋53の内部に落下する。したがって、スクリューコンベヤ22が回転すると、ホッパーフレーム21の下層に積載されたバラスト80から順に、開口32から樋53の内部に落下し、回転するスクリューコンベヤ22によって排出口53aに搬送されていく。
【0041】
上述したように、XZ平面において、スタビライザ45に設けられる折曲部45aは、スクリューコンベヤ22の回転中心からX方向にずれている。つまり、ホッパーフレーム21に積載されたバラスト80のうち、スタビライザ45付近に位置するバラスト80は、スタビライザ45によりスタビライザ45の長片45b側に多く振り分けられる。
【0042】
また、開口32からスタビライザ45の長片45bの先端までの距離は、ホッパーフレーム21の下面に設けた開口32からスタビライザ45の短片45aの先端までの距離よりも短く設定されている。したがって、スタビライザ45の長片45bの先端とホッパーフレーム21の側壁21bとの間に形成された開口部分を通過するバラスト80は、スタビライザ45の短片45aの先端とホッパーフレーム21の側壁21aとの間に形成された開口部分を通過するバラスト80よりも早いタイミングで開口32に到達する。
【0043】
ここで、スクリューコンベヤ22は、図9中時計方向(K方向)に回転している。例えば開口32の幅方向の中心の位置と、スクリューコンベヤ22の回転中心の位置が一致している場合、スクリューコンベヤ22のスクリュー部22aの位置は、開口32の近傍において最も高い位置となる。したがって、開口32の幅方向の中心の位置と、スクリューコンベヤ22の回転中心の位置とを一致させた場合、ホッパーフレーム21の側壁21a側から開口32に落下するバラスト80及びホッパーフレーム21の側壁21b側から開口32に落下するバラスト80は、スクリューコンベヤ22のスクリュー部22aに弾かれやすい。したがって、樋53の内部に落下するバラスト80の量にばらつきが生じる。その結果、レール17の軌間内に散布されるバラスト80の散布量も砕石運搬散布車10が走行する位置によってばらつく事象が発生する。
【0044】
本実施形態では、開口32は、XY平面において、開口32の幅方向の中心の位置をスクリューコンベヤ22の回転中心の位置に対して−X方向にずらして配置している。開口32の幅方向における位置をスクリューコンベヤ22の回転中心の位置からずらした場合、ホッパーフレーム21の側壁21b側から落下するバラスト80は、上昇するスクリューコンベヤ22のスクリュー部22aに受け止められる。一方、ホッパーフレーム21の側壁21a側から落下するバラスト80は、下降するスクリューコンベヤ22のスクリュー部22aに弾かれやすい。また、スクリューコンベヤ22のスクリュー部22aは、ホッパーフレーム21の側壁21b側から落下したバラスト80を回転しながら押圧している場合もある。したがって、ホッパーフレーム21の側壁21a側から落下するバラスト80は、スクリューコンベヤ22のスクリュー部22aに押圧されるバラスト80に衝突して弾かれてしまう。
【0045】
上述したように、本実施形態ではスタビライザ45の長片45bとホッパーフレーム21の側壁21bとの間に形成された開口部分を通過するバラスト80の通過量を意図的に多くすることで、樋53に落下するバラスト80の落下量を調整している。つまり、スクリューコンベヤ22によって樋53の内部を搬送されるバラストの搬送量のばらつきを抑えることができる。その結果、レール17の軌間内にバラスト80を均一に散布することが可能となる。
【0046】
また、砕石運搬散布車10をY方向に走行させる場合には、駆動モータ25を駆動させてスクリューコンベヤ23を回転させる。スクリューコンベヤ23を回転させた場合と同様である。つまり、スタビライザ46の長片46bの先端とホッパーフレーム21の側壁21aとの間に形成された開口部分を通過するバラスト80の通過量を、スタビライザ46の短片46aの先端とホッパーフレーム21の側壁21bとの間に形成された開口部分を通過するバラスト80の通過量よりも意図的に多くすることで、樋54に落下するバラスト80の落下量を調整している。つまり、スクリューコンベヤ23によって樋53の内部を搬送されるバラストの搬送量のばらつきを抑えることができる。その結果、スクリューコンベヤ23を回転させた場合であっても、レール17の軌間内にバラスト80を均一に散布することが可能となる。
【0047】
ところで、走行する砕石運搬散布車10から散布されるバラストの散布量については詳細を省略しているが、例えばスクリューコンベヤ22,23のスクリュー部22a,23aの間隔(ピッチ)やスクリューコンベヤ22,23の回転速度、及び砕石運搬散布車10の走行速度から求めることができる。一例としては、砕石運搬散布車10が100m走行したときに、バラスト80の散布量が最大0.5mとなるように、砕石運搬散布車10の走行速度が0.5から10km/hの範囲で、走行速度にあわせてスクリューコンベヤ22の回転速度が設定される。
【0048】
なお、本実施形態では、砕石運搬散布車の走行方向に応じて、2個のスクリューコンベヤ22,23のいずれか一方のスクリューコンベヤを回転させているが、砕石運搬散布車10の走行方向に関係なく、2個のスクリューコンベヤ22,23を同時に回転させることも可能である。
【0049】
採石運搬散布車10を走行させながらバラスト80を散布するとき、カメラ72は樋53の排出口53aを、カメラ73は樋54の排出口54aをそれぞれ撮像している。カメラ72,73により取得された映像情報は、砕石運搬散布車10に設けられた操作盤30のモニタ30a又は操作盤31のモニタ31aに表示される他、モータ車両11のモニタ78に表示される。また、バラスト80の散布状態は散布量検知センサ74によって検知されており、散布量検知センサ74によるバラストの散布状態の検知結果は各モニタに表示される。したがって、モータ車両11を運転する作業者は、例えばモータ車両11のモニタ78により表示される映像や散布量検知センサ74による検知結果を確認しながら、モータ車両11を運転することが可能となる。そして、走行する砕石運搬散布車10によりレール17の軌間内へのバラスト80の散布を終了する場合、作業者は操作盤30,31を操作して駆動モータ24又は駆動モータ25の駆動を停止させる。駆動モータ23の駆動停止により、スクリューコンベヤ22又はスクリューコンベヤ23の回転が停止する。
【0050】
なお、各モニタにより表示される映像や散布量検知センサ74による検知結果の表示において、作業者が異常であると判断できる場合には、モータ車両11に設けられた緊急停止ボタン79を操作する。また、砕石運搬散布車10がバラストを散布する必要がない区間を走行している際に、駆動モータ23の駆動を停止し忘れる場合もある。バラストを散布する必要がない区間におけるレール17の軌間内にバラストを散布している場合には、モータ車両11を運転する作業者は、緊急停止ボタン79を操作する。緊急停止ボタン79が操作されると、制御部70は駆動モータ23の駆動を停止する。これにより、スクリューコンベヤ22又はスクリューコンベヤ23の回転が停止される。その結果、レール17の軌間内へのバラスト80の散布が終了する。
【0051】
このように、バラスト80の散布の様子カメラ72,73により撮像し、取得された映像を観察する。また、散布量検知センサ74により、散布されるバラスト80が異常に散布されているか否かを検知している。その際に異常であると判断できる場合には、緊急停止ボタン79を操作することで、スクリューコンベヤ22又はスクリューコンベヤ23の回転を停止させることができる。また、この他に、樋53及び樋54の内部でバラスト80の詰まりが発生しているか否かも判断できる。このように、カメラ72,73により得られる映像や、散布量検知センサ74による検知結果からバラスト80の散布状態を適切に判断できる。したがって、バラスト80の散布状態に基づいた処置を適切に行うことが可能となる。
【0052】
次に、バラスト80をレール17の軌間外に散布する場合について説明する。作業者が例えば操作レバー50を砕石運搬散布車10の外側に向けて回動させると、遮蔽板42がホッパーフレーム21の側壁21bに沿って図9中L方向にスライドする。遮蔽板42のスライドにより排出口40が開放され、ホッパーフレーム21の内部に積載されたバラスト80が排出口40を介して落下する。排出口40から落下したバラスト80は、シュート63に沿って移動する。ここで、シュート63の先端は、レール17の軌間外に位置している。したがって、シュート63の先端まで移動したバラスト80は、レール17の軌間外に散布される。
【0053】
そして、レール17の軌間外に散布されたバラスト80の散布量が目的の散布量となると、作業者は操作レバー50を砕石運搬散布車10の中心側に回動させる。これにより、遮蔽板42がホッパーフレーム21の側壁21bに沿って図10中M方向にスライドする。遮蔽板42のスライドにより排出口40が遮蔽される。排出口40が遮蔽板42により遮蔽されることで、ホッパーフレーム21に積載されるバラスト80が排出口40から落下することが停止される。つまり、レール17の軌間外への散布が終了する。なお、操作レバー49,51,52のいずれかを回動させた場合も同様である。
【0054】
このように、砕石運搬散布車10の操作レバー49,50,51,52を操作することで、レール17の軌間外にバラスト80を散布することができる。バラスト80の散布量を調整する場合には、回動させる操作レバーの操作量をそれぞれ調整して排出口の開放量を調整すればよい。
【0055】
本実施形態では、2つのスクリューコンベヤ22を、その回転軸をレールの延出方向に沿って、且つそれぞれのコンベヤの回転軸が同軸になるように配置した場合について説明しているが、2つのスクリューコンベヤ22を使用する必要はなく、1つのスクリューコンベヤ22を配置しても本発明を実施することが可能である。また、2つのスクリューコンベヤ22,23を、各々の回転軸が同軸になるように配置する他に、2つのスクリューコンベヤ22,23をレールの延出方向に沿って並列させることも可能である。
【符号の説明】
【0056】
10…砕石運搬散布車、17…レール,20…荷受台枠、21…ホッパーフレーム、22,23…スクリューコンベヤ、32,33…開口、45,46…スタビライザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10