(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6426517
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】開封検知用ICタグ付きヒンジキャップ
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20181112BHJP
B65D 51/24 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
G06K19/077 304
B65D51/24
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-69464(P2015-69464)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-189157(P2016-189157A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2018年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】李 虹辰
(72)【発明者】
【氏名】榎本 勝己
(72)【発明者】
【氏名】島田 知
(72)【発明者】
【氏名】清水 博長
(72)【発明者】
【氏名】川真田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 高博
【審査官】
梅沢 俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−114070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
B65D 51/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂板部及びスカート部から成るキャップ本体、及び該頂板部を覆い、スカート部上端とヒンジ連結されて成る上蓋、とから成り、前記頂板部にICチップ及びアンテナから成るICタグが設置されているICタグ付きキャップにおいて、
前記頂板部上面及び上蓋内面には、上蓋を閉じることにより互いに係止可能な係止手段がそれぞれ形成されており、
前記頂板部には、前記ヒンジの一方の端部から他方の端部に延びるスコアが形成されており、該スコアで区画される領域に前記係止手段が形成されていると共に、スコアがICタグのアンテナをまたいでおり、
閉蓋状態から前記上蓋を引き上げることにより、前記スコアが破断され、スコアで区画される領域が上蓋と一体にキャップ本体から離脱すると共に、前記ICタグのアンテナが破断されることを特徴とするICタグ付きキャップ。
【請求項2】
前記ICタグが、インサート成形により頂板部に埋設されている請求項1記載のICタグ付きキャップ。
【請求項3】
前記スコアがヒンジの両端部から更にスカート部下方に延びている請求項1又は2記載のICタグ付きキャップ。
【請求項4】
前記係止手段が、前記頂板部外面から垂直方向に延び、先端に外方に向くフラップ片を有する第一の係止手段と、前記上蓋内面から垂直方向に延び、先端に内方に向くフラップ片が形成されている第二の係止手段から成り、上蓋が閉じた状態で、第一の係止手段のフラップ片と第二の係止手段のフラップ片が係止する請求項1〜3の何れかに記載のICタグ付きキャップ。
【請求項5】
前記ICタグには、スコアで区画された領域及びスコアで区画された領域外の両方に、孔が形成されており、該孔が頂板部を構成する樹脂によって閉塞されてICタグが頂板部内で固定されている請求項1〜4の何れかに記載のICタグ付きキャップ。
【請求項6】
前記ICタグに弱化部が形成されている請求項1〜5の何れかに記載のICタグ付きキャップ。
【請求項7】
前記キャップ本体のスカート部下端には、可撓性連結部を介して筒状側壁が形成されており、該筒状側壁の下端には複数の係合部が形成されており、
前記筒状側壁を容器口部に嵌合させた後、上蓋が閉じた状態のキャップ本体を容器側に押圧することにより、前記可撓性連結部が反転して、キャップ本体スカート部内面と筒状側壁外面の間に位置することにより容器口部に固定される請求項1〜6の何れかに記載のヒンジキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開封検知用ICタグ付きヒンジキャップに関するものであり、より詳細には、開封時にICタグのアンテナが確実に破断されるワンピースタイプのICタグ付きヒンジキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、不正な詰め替えやいたずらを防止してその安全性や品質を確保するために、開封履歴を明示する機能を有するキャップが種々提案されている。
近年、製造年月日や製造・販売者等の製品情報を表示するためにICタグを用いた情報表示の技術が利用されるようになってきた。ICタグとは、RFID(Radio Frequency Identification)とも呼ばれるものであり、所定の情報が記憶されたICチップを無線アンテナと共に樹脂やガラス等の誘電体材料に埋め込んでタグ(荷札)状に形成した超小型の通信端末である。このようなICタグは、無線通信により、ICチップに記憶された製品情報を読取るものであり、例えばICチップのメモリには、数百バイトのデータを記録することができ、多くの製品情報を記録できるという利点があることから、かかるICタグを開封履歴明示に用いることも提案されている。
【0003】
このようなICタグを備えて成る容器蓋も既に提案されており、例えば下記特許文献1には、容器を密封可能な内蓋及び内蓋を外側から覆う外蓋、並びに外蓋の頂板部を覆い内面から下方に延びる突部を有する上蓋から成っている容器蓋において、上蓋に形成された突部先端が外蓋の頂板部に形成された開口部を覆うように設置されたICタグが、頂板部内面及び突部先端で固着されており、上蓋をキャップ本体から取外すことにより、ICチップの直近でアンテナが破断されることを特徴とする容器蓋が提案されている。
また下記特許文献2には、キャップ本体頂板部に形成されたICタグを上蓋に設けられた、上蓋の開蓋操作に伴って移動するカッターによってICタグの回路を切断するICタグ付きキャップが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−213378号公報
【特許文献2】特開2014−114066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されたICタグ付き容器蓋は、ICタグのアンテナを破壊しなければ開封することができず、しかもキャッピングの際にICタグが破断するおそれがなく、確実に開封されたことを検知することができる。しかしながら、このICタグ付き容器蓋は、ICタグが外蓋のキャップ本体頂板部内面及び上蓋の突部先端の両方に強固に固着または接着させる技術工程が必須であり、未だ十分満足するものではない。
また上記特許文献2に記載されたICタグ付キャップは、ワンピースタイプのキャップであり、成形性の点で優れている。しかしながら、このICタグ付きキャップは、上蓋に設けられたにカッターでICタグのアンテナを切断するものであることから、カッターの刃がアンテナを避けてしまうと、開封検知機能が発揮されないおそれがあり、カッターを使用しないでアンテナを破断する方法が望まれている。
【0006】
従って本発明の目的は、ワンピースタイプで成形性に優れていると共に、カッターなどの切断手段を用いることなく、開封と同時にアンテナが確実に切断可能なICタグ付きキャップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、頂板部及びスカート部から成るキャップ本体、及び該頂板部を覆い、スカート部上端とヒンジ連結されて成る上蓋、とから成り、前記頂板部にICチップ及びアンテナから成るICタグが設置されているICタグ付きキャップにおいて、
前記頂板部上面及び上蓋内面には、上蓋を閉じることにより互いに係止可能な係止手段がそれぞれ形成されており、前記頂板部には、前記ヒンジの一方の端部から他方の端部に延びるスコアが形成されており、該スコアで区画される領域に前記係止手段が形成されていると共に、スコアがICタグのアンテナをまたいでおり、閉蓋状態から前記上蓋を引き上げることにより、前記スコアが破断され、スコアで区画される領域が上蓋と一体にキャップ本体から離脱すると共に、前記ICタグのアンテナが破断されることを特徴とするICタグ付きキャップが提供される。
【0008】
本発明のICタグ付きキャップによれば、
1.前記ICタグが、インサート成形により頂板部に埋設されていること、
2.前記スコアがヒンジの両端部から更にスカート部下方に延びていること、
3.前記係止手段が、前記頂板部外面から垂直方向に延び、先端に外方に向くフラップ片を有する第一の係止手段と、前記上蓋内面から垂直方向に延び、先端に内方に向くフラップ片が形成されている第二の係止手段から成り、上蓋が閉じた状態で、第一の係止手段のフラップ片と第二の係止手段のフラップ片が係止すること、
4.前記ICタグには、スコアで区画された領域及びスコアで区画された領域外の両方に、孔が形成されており、該孔が頂板部を構成する樹脂によって閉塞されてICタグが頂板部内で固定されていること、
5.前記ICタグに弱化部が形成されていること、
6.前記キャップ本体のスカート部下端には、可撓性連結部を介して筒状側壁が形成されており、該筒状側壁の下端には複数の係合部が形成されており、前記筒状側壁を容器口部に嵌合させた後、上蓋が閉じた状態のキャップ本体を容器側に押圧することにより、前記可撓性連結部が反転して、キャップ本体スカート部内面と筒状側壁外面の間に位置することにより容器口部に固定されること、
が好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のICタグ付きキャップによれば、上蓋内面及び頂板部上面に形成された互いに係止可能な係止手段が形成されていることによって、上蓋を引き上げたときに、スコアで区画された頂板部の一部が上蓋に追従して上昇する。これにより、ICタグのアンテナをまたぐスコアが破断され、カッター等の切断手段を用いることなくICタグのアンテナを確実に切断することが可能になる。またかかるスコアがヒンジ両端部からスカート部下方に延びていることにより、上蓋の引き上げによるICタグのアンテナの破断と、キャップの容器口部からの取り外しを一連の動作で容易に行うことが可能であり、開封性及び分別廃棄性にも優れている。
更に本発明のキャップは、キャップ本体の頂板部にICタグが埋設されたワンピースタイプのキャップであることにより、複数の部品から成り、組み立てが必要な従来のICタグ付きキャップに比して成形が容易である。
【0010】
またICタグに、キャップ本体に形成されたスコアで区画される領域とこの領域外の両方の位置に孔が形成されていることによって、この孔を通じて頂板部を構成する樹脂が連通していることから、スコアで区画される領域が上蓋に追従して引き上げられても、スコアで区画される領域外の部分はキャップ本体に固定された状態を維持し、ICタグのアンテナの破断が確実に行われる。
更に本発明のより好適な態様によれば、キャップ本体のスカート部下端に、可撓性連結部を介して筒状側壁が形成されていることにより、打栓時に無理な嵌め込みの必要がなく、キャップを容器口部にスムーズに適用させることが可能になり、キャッピングの際に容器口部に傷をつけるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のICタグ付きヒンジキャップの一例を示す図であり、上蓋を閉じる前の状態を2方向から見た斜視図をそれぞれ表す。
【
図2】
図1に示したICタグ付きヒンジキャップを説明するための図であり、(A)は上蓋を閉じた状態の断面図であり、(B)は(A)の状態から上蓋を引き上げた状態の断面図であり、(C)は(A)のX部分の拡大図であり、(D)はICタグの一例の平面図である。
【
図3】
図1に示したICタグ付きキャップの係止手段を説明するための図である。
【
図4】本発明のICタグ付きヒンジキャップの他の一例を示す図であり、上蓋を閉じる前の状態を2方向から見た斜視図をそれぞれ表す。
【
図5】
図4に示した斜視図の断面斜視図をそれぞれ示す。
【
図6】
図4に示したICタグ付きキャップの上蓋を閉じた状態の断面斜視図をそれぞれ示す。
【
図7】
図4〜6に示した本発明のICタグ付きキャップの容器口部への適用を説明するための断面図であり、(A)は打栓前の状態、(B)は打栓後の状態、(C)は(A)のY部分の部分拡大図、(D)は(B)のZ部分の部分拡大図、をそれぞれ示す。
【
図8】
図4〜6に示した本発明のICタグ付きキャップの容器口部への適用を説明するための断面斜視図である。
【
図9】
図4〜6に示した本発明のICタグ付きキャップの開蓋操作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を添付図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すように、本発明のICタグ付きキャップ1は、概略的に言って、キャップ本体10、及びキャップ本体10とヒンジ11によって一体に成形されている上蓋20、並びにキャップ本体10の頂板部2に埋設されるICタグ30から成っている。
キャップ本体10は、頂板部2、頂板部2の外周縁からから垂下するスカート部3から成り、頂板部2の上面の中央付近には、後述する上蓋20の第二の係止手段23と上蓋20を閉じた状態で係止する第一の係止手段4が形成されている。また頂板部2には、この第一の係止手段4を取り囲み、且つヒンジ11の両端11a,11bに延びるスコア5a,5bが頂板部2の外面及び内面の両方から形成されている。
また頂板部2のヒンジ11の反対側の端部には、上蓋20を閉じたときに上蓋20を固定するための係合部6が形成されている。
またスカート部3の下端内面には、
図2から明らかなように、容器口部(図示せず)の係合用突起と係合し、キャップ本体がすっぽ抜けることを防止するための複数の係合用突片7,7・・・が形成されている。またスカート部3外面にはヒンジ11の両端部11a,11bから下方に延びるスコア8a,8bが形成されている。
【0013】
上蓋20は、天面21及び天面21の外周縁から延びる環状側壁22から成り、前述したとおり、キャップ本体頂板部2とヒンジ11により一体に成形されている。上蓋20の天面21の内面には、前述したキャップ本体10の頂板部2に設けられた第一の係止手段4と係止する第二の係止手段23が形成されている。また上蓋20の環状側壁22のヒンジ11の反対側の位置には、外面側に開蓋のための摘み24、内面側にはキャップ頂板部2に形成された係合部6と係合する係合突起25が形成されている。
【0014】
図2(A)〜(C)から明らかなように、本発明のICタグ付きキャップにおいては、キャップ本体頂板部2内にICタグ30が埋設されている。後述するように、このICタグ30は、キャップを成形する際に頂板部となるべき部分に埋め込まれ、ICタグ30は外部に露出していないので、上蓋を閉じる際等にICタグが破損してしまうことが有効に防止されている。
ICタグ30は、これに限定されるものではないが、
図2(D)に示す具体例においては、円形状の薄肉の基材31、記録媒体を有するICチップ32、ICチップ32に接続されている情報送受信用のアンテナ33から成っている。
図2(D)においては、参考のため、頂板部2に形成される第一の係止部材4の位置4’が表示されており、この第一の係止部材の位置4’を区画内に包含すると共に、アンテナ33をまたぐ形状の弱化部34が基材31に形成されている。またこの弱化部34よりも外側の領域に複数個の孔35a,35a・・・が形成され、弱化部34よりも内側の領域に2個の孔35bが形成されており、この孔35を通じて頂板部2を構成する樹脂が連通して、ICタグ30は頂板部2から分離できない固定された状態でインサート成形される。そのため、上蓋20を引き上げ、頂板部2に形成されたスコア5が破断されると同時に弱化部34も破断されると、ICタグ30の弱化部34の外側の領域が、弱化部34の内側の領域に追従して頂板部2から引き抜かれたりするようなことがなく、上蓋20の開蓋時の引き上げと同時に確実にICタグ30のアンテナ33が破断される。
【0015】
図3は、
図1に示した第一の係止部材及び第二の係止部材を説明するための図であり、キャップ本体10の頂板部2に形成された第一の係止部材4は、頂板部2の外面から垂直方向に延びる基部4aの先端に、上方にむかって外方に向く一対の可撓性の第一のフラップ片4b,4bが形成されている(
図3(A))。一方上蓋20に形成される第二の係止部材23は、上蓋20の天面21の内面から垂直方向に延びるコの字状の基部23aの先端に、下方にむかって内方に向く一対の可撓性の第二のフラップ片23b,23bが形成されている(
図3(A))。基部23aの内寸は、第二の係止部材4の基部4aの外寸よりも若干大きく、基部23aの内部に第一の係止部材4が収納されると共に、基部23a内で第一のフラップ片4b及び第二のフラップ片23bがそれぞれ折りたたまれて収納される大きさである。これにより、上蓋20が閉じて、基部23a内部に第一の係止部材4が収納されると共に、各々のフラップ片が反転し、第一の係止部材4の第一のフラップ片4b,4bの先端が下方に向き、同時に第二の係止部材23の第二のフラップ片23b,23bの先端が上方に向いた状態になる(
図3(B))。この状態から上蓋20を引き上げると、第二の係止部材23の第二のフラップ片23bが、第一の係止部材の第一のフラップ片4bと係止し、第一の係止部材4の第一のフラップ片4bは第二の係止部材23の基部23aによって、元の状態に戻ることが規制されていることから、第一フラップ片4bと第二のフラップ片23bの係止は解除されることがない。
そのため上蓋が閉じ、いったん第一の係止部材と第二の係止部材が係止すると、これらの係止は解除されることなく維持されるので、上蓋を引き上げると、キャップ本体に形成されたICタグのアンテナをまたぐスコアが破断されてICタグのアンテナが破断されると共に、スコアで区画された頂板部及びICタグの一部が上蓋と共にキャップ本体から離脱して、開封されたことを確実に示すことが可能になる。
【0016】
図4〜6は、本発明のICタグ付きキャップの他の態様を示す図であり、この態様においては、前述したキャップ本体10のスカート部3の下端に、複数個の短冊状の可撓性連結部40、40・・・を介して筒状側壁50が形成されている。
筒状側壁50の下端には、容器口部(図示せず)の係合用突起と係合可能な内方に突出する複数個の係合用突起51が形成されている。この係合用突起51は筒状側壁50の下端を軸に筒状側壁内方に移動可能であり、後述するように、
図4〜6に示した状態で容器口部に嵌合させる際には、外方に向いた状態で、容器口部にスムーズに嵌合できる一方、打栓後、キャップ本体が筒状側壁の外側に位置する状態では、キャップ本体スカート部によって内方に向いた状態となり、容器口部の係合用突起と係合して、キャップが容器口部からすっぽ抜けることを防止する。
また筒状側壁50の内面の上端には、打栓する際に、筒状側壁50を容器口部に固定して下方への移動を制御する、容器口部天面に載置可能な複数個の固定具52,52・・・が形成されている。
【0017】
図7及び
図8は、
図4〜6に示した本発明のICタグ付きキャップの容器口部への適用を説明するための図である。
図7(A)及び
図8(A)から明らかなように、容器口部60に筒状側壁50を嵌め込むと、容器口部60の天面61に筒状側壁50の固定具52が当接し、筒状側壁50が容器口部60に固定される。この際、
図7(A)のY部分の拡大図である
図7(C)から明らかなように、筒状側壁50下端に形成された係合用突起51は、外方に向いた状態なので、環状側壁50は容器口部60にスムーズに嵌合する。
次いで、上蓋20が閉じられた状態のキャップ本体10が上方から押圧されると、
図8(B)に示すように、可撓性連結部40が外方に座屈した状態になる(
図8(B))。更に押圧されてキャップ本体10のスカート部3の下端から筒状側壁50に重なっていくに従って、可撓性連結部40は、
図8(A)の状態から上端と下端が入れ替わり、表裏が反転するように移動し(
図8(C)及び(D))、最終的にはキャップ本体スカート部3と筒状側壁の間に位置する(
図7(B)及び
図8(E))。この状態において、
図7(D)に示すように、スカート部3の下端と係合用突起51の下端はほぼ一致する位置となり、係合用突起51はスカート部3及び可撓性連結部40によって外側からタガ締めされて、内方に移動し、容器口部の係合用突起62と係合する。これにより、ICタグ付きキャップが容器口部からすっぽ抜けることがない。
尚、この態様においては、キャップ本体10の頂板部2の内面側の外周には、打栓時に容器口部天面61と当接する部材9,9が形成されている。これによりICタグに打栓時の衝撃が直接作用することが防止され、ICタグの破損を防止することができる。
【0018】
次に、容器口部に適用された、
図4〜8に示した本発明のICタグ付きキャップの開蓋操作を
図9に従って説明する。
図9(A)は、ICタグ付きキャップ1が容器口部60に適用された状態を示す図であり、上蓋20の摘み24を上方に引き上げることにより、上蓋20はヒンジ11を軸に上昇する。
図6に示した通り、閉蓋状態において、キャップ本体頂板部に形成された第一の係止部材4と上蓋20に形成された第二の係止部材23は、解除不可能に係止していることから、上蓋20の上昇に伴い、
図4に示した通り、キャップ本体頂板部2に形成されたスコア5が破断されて、スコア5で区画される頂板部2a及びこの頂板部2a内に埋設されたICタグ(図示せず)が、スコア5で区画される領域外の頂板部2bから分離する(
図9(B))。更に上蓋20を引き上げると、スコア5と連続するようにヒンジ11の両側から下方に向かって延びる、スカート部3に形成されたスコア8が破断されて、スコア8で区画されるスカート部3bがスカート部3aと分離する(
図9(C))。更に上蓋20を引き上げると、可撓性連結部40が筒状側壁50外面から離脱する(
図9(D))。この状態において、可撓性連結部40が離脱した部分における筒状側壁50の係合用突起51は外側からのタガ締めから解放され、
図7(C)に示した状態になることから、容器口部60の係合用突起62との係合が解除され、キャップ1を容器口部60から容易に取り外すことが可能になる。
尚、上記説明において、容器口部とは、容器に内容物が充填され、金属キャップ等で密封された状態の容器口部を示す。
【0019】
本発明のICタグ付きキャップにおいては、図に示した具体例に限定されず、種々の変更が可能である。
例えば、キャップ本体頂板部上面及び上蓋内面に形成された第一の係止部材及び第二の係止部材は、上蓋を閉じた状態で係止し、係止後は係止を解除できないものであれば種々の形態のものを採用できる。
また図に示した具体例では、複数の短冊状の可撓性連結部材により、キャップ本体及び筒状側壁を連結していたが、座屈のさせやすさの点からは図に示す例が好適であるが、環状の可撓性連結部材であってもよい。更に、キャップ本体頂板部内面外周に形成されていた、容器天面と当接する複数個の部材は環状の部材であってもよいし、打栓に用いる装置によっては必ずしも必要ではなく、また筒状側壁の上端に形成されていた固定具も、筒状側壁下端を固定できれば、必ずしも設ける必要はない。
更に、頂板部に形成するスコアも、頂板部の内外面の両方から形成されていたが、上面のみから形成することもできる。
【0020】
更に、図に示した具体例では、ICタグにもスコアに対応する弱化部が形成されていたが、ICタグの基材の材質や厚み等によって切断されやすい基材である場合には必ずしも形成する必要はない。
またICタグに形成する孔も、図に示す具体例では、スコアで区画される領域の内外に形成されていたが、スコアで区画される領域外のみに形成してもよいし、或いはICタグにスコアに対応する弱化部が形成されている場合や、ICタグの基材の材質がキャップの材質との接着性に優れている場合などは、必ずしも形成しなくてもよい。
【0021】
本発明のICタグ付きキャップは、射出成形により好適に成形することができ、ICタグをインサート成形により頂板部に埋設することによって、ICタグが外部から視認することができず、破損のおそれもないICタグ付きキャップを容易に成形することができる。
キャップ本体を構成する樹脂としては、従来ヒンジキャップに使用されていたポリエチレン、ポリプロピレン等を使用することができる。
尚、本発明のICタグ付きキャップを、添付図面を用いて、ICタグが頂板部に埋設された好適態様で説明したが、ICタグが頂板部外面に強固に貼着され、頂板部に形成されるスコアの破断によってICタグのアンテナが破断可能であれば、ICタグが頂板部外面に貼着されたものであっても同様の作用効果を得ることができる。例えば、ICタグにも頂板部に形成されるスコアと同様のスコアを形成し、頂板部のスコアの破断と同時にICタグも破断されることよってアンテナを確実に破断することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のICタグ付きキャップは、開封と同時に確実にICタグが破壊されるため、内容物の詰め替えやいたずらを確実に防止でき、特に正規の内容品に対して廉価な内容品を詰め替え販売する犯罪が発生している高級アルコール類のキャップに好適に利用できる。
また本発明のICタグ付きキャップは、容器口部に直接適用することもできるし、容器口部に施されたキャップの上からオーバーキャップとして適用することもできる。
【符号の説明】
【0023】
1 ICタグ付きキャップ、2 頂板部、3 スカート部、4 第一の係止部材、5 スコア、8 スコア、10 キャップ本体、11 ヒンジ、20 上蓋、23 第二の係止部材、30 ICタグ、31 基材、32 ICチップ、33 アンテナ、40 可撓性連結部材、50 筒状側壁、51 係合用突起、60 容器口部 62 係合用突起。