特許第6426557号(P6426557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6426557被加工物の振動を抑制する振動抑制方法及び機械加工システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6426557
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】被加工物の振動を抑制する振動抑制方法及び機械加工システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20181112BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   B23Q11/00 A
   B25J13/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-158309(P2015-158309)
(22)【出願日】2015年8月10日
(65)【公開番号】特開2017-35752(P2017-35752A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2016年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】内藤 正博
【審査官】 宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−112680(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/098126(WO,A1)
【文献】 特開2006−192570(JP,A)
【文献】 特開2010−214389(JP,A)
【文献】 特開昭52−051660(JP,A)
【文献】 特開2008−087138(JP,A)
【文献】 特開2007−044770(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0039765(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B23Q 1/76
B23C 9/00
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定治具により保持された被加工物を工作機械で機械加工しているときに発生する前記被加工物の振動を抑制する振動抑制方法であって、
前記ロボットに、把持部及び嵌合部のいずれか一方のみを設け、
前記機械加工中に、前記被加工物の、前記固定治具により保持された部分とは異なる部位をロボットに設けた把持部により把持するか、前記ロボットに設けた嵌合部を前記被加工物の被嵌合部に嵌合させることにより、前記被加工物の振動を抑制することを特徴とする、振動抑制方法。
【請求項2】
固定治具により保持された被加工物を機械加工する工作機械と、
前記機械加工中に、前記被加工物の、前記固定治具により保持された部分とは異なる部位を保持するロボットと、
を有し、
前記ロボットは、前記部位を把持することによって前記被加工物を保持する把持部、及び前記被加工物の被嵌合部に嵌合することによって前記被加工物を保持する嵌合部のいずれか一方のみを備えることにより、前記被加工物の振動を抑制するように構成されていることを特徴とする、機械加工システム。
【請求項3】
前記ロボットは、前記被加工物の保持以外に、前記工作機械と協働作業を行うように構成されている、請求項2に記載の機械加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工中に発生する被加工物の振動を抑制する方法、及び該振動を抑制する機能を備えた機械加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械における機械加工処理においては、加工時間の短縮のため、切削工具の回転数や送り速度を大きくすることが望まれる。しかし、それらの加工条件が適切でないと、機械要素や被加工物に振動が発生することがあり、この振動は被加工物の機械加工の質を低下させる。
【0003】
機械加工処理中に発生する振動の抑制方法としては、工作機械の主軸の回転数や送り速度を下げる等、加工条件を緩和することが一般的である。また、被加工物を固定する治具において、被加工物の剛性を補助する部材を設ける方法もしばしば用いられる。これに関連する従来技術として、例えば特許文献1には、機械要素及び加工物の少なくとも一方に付加物質を自動化式に取り付け、機械要素や加工物の固有振動数を変化させることで、振動を低下させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−517228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加工条件を緩和することは一般に、加工時間の延長に繋がる。また、被加工物の固定治具に剛性を補助する部材を追加することは、加工治具が煩雑になり、加工治具と切削工具とが干渉しやすくなる等の不都合が発生する。特許文献1に記載されるような付加物質の追加については、付加物質による機械要素や被加工物の変形が加工精度に影響することが懸念される。また、付加物質を機械要素や加工物に固定するための部材が別途必要となりコストアップの要因となる。
【0006】
そこで本発明は、被加工物の固定治具に特別な装置を設ける必要がなく、加工中の被加工物の振動を好適に抑制できる振動抑制方法及び機械加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願第1の発明は、固定治具により保持された被加工物を工作機械で機械加工しているときに発生する前記被加工物の振動を抑制する振動抑制方法であって、前記ロボットに、把持部及び嵌合部のいずれか一方のみを設け、前記機械加工中に、前記被加工物の、前記固定治具により保持された部分とは異なる部位をロボットに設けた把持部により把持するか、前記ロボットに設けた嵌合部を前記被加工物の被嵌合部に嵌合させることにより、前記被加工物の振動を抑制することを特徴とする、振動抑制方法を提供する。
【0008】
第2の発明は、固定治具により保持された被加工物を機械加工する工作機械と、前記機械加工中に、前記被加工物の、前記固定治具により保持された部分とは異なる部位を保持するロボットと、を有し、前記ロボットは、前記部位を把持することによって前記被加工物を保持する把持部、及び前記被加工物の被嵌合部に嵌合することによって前記被加工物を保持する嵌合部のいずれか一方のみを備えることにより、前記被加工物の振動を抑制するように構成されていることを特徴とする、機械加工システムを提供する。
【0009】
第3の発明は、第の発明において、前記ロボットは、前記被加工物の保持以外に、前記工作機械と協働作業を行うように構成されている、機械加工システムを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被加工物の振動を抑制するために、被加工物やその固定治具に対して特別な部材や装置を設ける必要がない。また被加工物の保持にロボットを用いるので、被加工物の形状や種類に応じて保持すべき箇所が異なる場合でも容易に対応できる。さらにロボットは、被加工物の加工中にのみ該被加工物を保持し、加工時以外は工作機械から退避するという柔軟な運転も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る機械加工システムの第1の実施形態を示す概略図である。
図2】本発明に係る機械加工システムの第2の実施形態を示す概略図である。
図3】本発明に係る機械加工システムの第3の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る機械加工システム10を示す概略図である。機械加工システム10は、NC工作機械等の工作機械12と、ロボット14とを有し、工作機械12については、該工作機械12にて機械加工される被加工物(ワーク16)を固定する固定治具18のみ図示している。図示例では、ワーク16は側面視で略コの字形を有する部材であり、工作機械12の工具でワーク16を加工する際は、ワーク16の下部20が、固定治具18によって保持される。
【0019】
ロボット14は、例えば6軸の多関節ロボットであり、可動部(ロボットアーム)22と、可動部の先端に取り付けられたハンド等の把持部(把持部材)24とを有する。把持部24は、ワーク16のうち固定治具18に保持された被保持部(ここでは下部20)とは異なる部位(ここでは上部26)を、工作機械12によるワーク16の機械加工中に、把持するように構成されている。このように、ロボット14を用いて加工中のワーク16を保持することにより、ワーク16の加工反力に対する変形を防ぎ、加工時に発生する振動を抑制することができる。
【0020】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る機械加工システム10aを示す概略図である。第2の実施形態は、第1の実施形態におけるロボット14の把持部24が突き当て部28に置換されている点で第1の実施形態と相違し、他の構成要素については第1の実施形態と同様でよい。従って第2の実施形態では、突き当て部28に関連する説明のみ行い、他については第1の実施形態と同様の参照符号を付与し、詳細な説明は省略する。
【0021】
ロボット14は、例えば6軸の多関節ロボットであり、可動部(ロボットアーム)22と、可動部の先端に取り付けられた突き当て部(突き当て部材)28とを有する。突き当て部28は、ワーク16のうち固定治具18に保持された被保持部(ここでは下部20)とは異なる部位(ここでは上部26)に、工作機械12によるワーク16の機械加工中に、所定方向(ここでは右側方向)に当接してワーク16を保持するように構成されている。
【0022】
また固定治具18は、少なくとも突き当て部28の突き当て方向(ここでは右側方向)については、ワーク16が移動しないようにワーク16を保持するように構成されている。このように、ロボット14を用いて加工中のワーク16を保持することにより、第1の実施形態と同様に、ワーク16の加工反力に対する変形を防ぎ、加工時に発生する振動を抑制することができる。
【0023】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る機械加工システム10bを示す概略図である。第3の実施形態は、第1の実施形態におけるロボット14の把持部24が嵌合部30に置換されている点で第1の実施形態と相違し、他の構成要素については第1の実施形態と同様でよい。従って第3の実施形態では、嵌合部30に関連する説明のみ行い、他については第1の実施形態と同様の参照符号を付与し、詳細な説明は省略する。
【0024】
ロボット14は、例えば6軸の多関節ロボットであり、可動部(ロボットアーム)22と、可動部の先端に取り付けられた嵌合部(嵌合部材)30とを有する。嵌合部30は、工作機械12によるワーク16の機械加工中に、ワーク16のうち固定治具18に保持された被保持部(ここでは下部20)とは異なる部位(ここでは上部26)に嵌合して、ワーク16を保持するように構成されている。
【0025】
より具体的には、ワーク16の上部26には予め被嵌合部(嵌合穴)32が形成されており、一方、嵌合部30は、ワーク16の嵌合穴32に係合可能な形状(凸部)を有する。或いは、ワーク16の上部26に被嵌合部として凸部を形成しておき、嵌合部30に、該凸部に係合可能な嵌合穴を嵌合部として設けてもよい。このように、ロボット14を用いて加工中のワーク16を保持することにより、第1の実施形態と同様に、ワーク16の加工反力に対する変形を防ぎ、加工時に発生する振動を抑制することができる。
【0026】
上述の実施形態では、ロボット14は、加工中のワーク16を保持する目的にのみ使用されてもよいが、工作機械12と協働作業を行う等、ワークの保持以外の作業も行うように構成されてもよく、例えば、工作機械12において加工すべきワークの供給と、工作機械12において加工されたワークの排出とを行うことができるように構成されてもよい。このように、本来的にワークの保持以外の目的に用意されたロボットを加工中のワーク保持にも使用できるようにすることにより、より低コストで効率的な機械加工システムを構築することができる。
【0027】
上述の実施形態はいずれも、工作機械の固定治具に保持されている部分以外のワークの部分に、ロボットの可動部を当接させて該ワークを保持することにより、加工時の加工反力に対する被加工物の変形を防止し、さらに加工中に生じ得る被加工物の振動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0028】
10、10a、10b 機械加工システム
12 工作機械
14 ロボット
16 ワーク
18 固定治具
22 ロボットアーム
24 把持部
28 突き当て部
30 嵌合部
図1
図2
図3