特許第6426579号(P6426579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6426579
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】車両用制動装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20181112BHJP
   B60T 13/128 20060101ALI20181112BHJP
   B60T 13/14 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   B60T8/17 Z
   B60T13/128
   B60T13/14
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-194832(P2015-194832)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-65564(P2017-65564A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2017年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】二之夕 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】岡野 隆宏
【審査官】 谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/111732(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/111440(WO,A1)
【文献】 特開2003−320872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/17
B60T 13/128
B60T 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された入力圧が作用して出力圧を出力する液圧発生装置であって、前記出力圧を増大または減少しようとしたとき、増圧開始当初または減圧開始当初において前記入力圧の変化に対して前記出力圧の変化が遅れる応答遅れが生じる液圧発生装置、を備えている車両用制動装置であって、
前記出力圧が、制動目標油圧を基準に設定されている第一領域内に収まるように、前記入力圧を制御する過応答抑制重視制御を行う第一制御部と、
前記過応答抑制重視制御より前記入力圧の増大速度または減少速度を大きくして、前記応答遅れをキャンセルする応答性重視制御を行う第二制御部と、
前記第一制御部による前記過応答抑制重視制御と、前記第二制御部による前記応答性重視制御と、を前記制動目標油圧の状態に基づいて切り替える切替部と、ブレーキ操作部材の操作状態または他システムの要求に応じて前記制動目標油圧を算出する制動目標油圧算出部と、を備え
前記切替部は、前記制動目標油圧が保持状態である場合に、前記第一制御部による前記過応答抑制重視制御に切り替え、前記制動目標油圧が増圧状態または減圧状態である場合に、前記第二制御部による前記応答性重視制御に切り替え、
前記切替部は、第一所定時間内における前記制動目標油圧の最大値および最小値が第一所定範囲内である場合、制動目標油圧勾配が第二所定範囲内である場合、および、第二所定時間内における前記制動目標油圧の増加回数と減少回数との差分が第三所定範囲内である場合のうち少なくとも1つ以上を満たせば、前記制動目標油圧が保持状態であり、一方それら以外である場合に、前記制動目標油圧が増圧状態または減圧状態であると判定する判定部を備えている車両用制動装置。
【請求項2】
入力された入力圧が作用して出力圧を出力する液圧発生装置であって、前記出力圧を増大または減少しようとしたとき、増圧開始当初または減圧開始当初において前記入力圧の変化に対して前記出力圧の変化が遅れる応答遅れが生じる液圧発生装置、を備えている車両用制動装置であって、
前記出力圧が、制動目標油圧を基準に設定されている第一領域内に収まるように、前記入力圧を制御する過応答抑制重視制御を行う第一制御部と、
前記過応答抑制重視制御より前記入力圧の増大速度または減少速度を大きくして、前記応答遅れをキャンセルする応答性重視制御を行う第二制御部と、
前記第一制御部による前記過応答抑制重視制御と、前記第二制御部による前記応答性重視制御と、を前記制動目標油圧の状態に基づいて切り替える切替部と、を備え
前記切替部は、前記制動目標油圧が保持状態である場合であって、前記制動目標油圧と実際の油圧である実油圧との差が判定閾値より大きい場合には、前記第二制御部による前記応答性重視制御に切り替える車両用制動装置。
【請求項3】
ブレーキ操作部材の操作状態または他システムの要求に応じて前記制動目標油圧を算出する制動目標油圧算出部を備え、
前記切替部は、前記制動目標油圧が保持状態である場合に、前記第一制御部による前記過応答抑制重視制御に切り替え、前記制動目標油圧が増圧状態または減圧状態である場合に、前記第二制御部による前記応答性重視制御に切り替える請求項2記載の車両用制動装置。
【請求項4】
前記切替部は、第一所定時間内における前記制動目標油圧の最大値および最小値が第一所定範囲内である場合、制動目標油圧勾配が第二所定範囲内である場合、および、第二所定時間内における前記制動目標油圧の増加回数と減少回数との差分が第三所定範囲内である場合のうち少なくとも1つ以上を満たせば、前記制動目標油圧が保持状態であり、一方それら以外である場合に、前記制動目標油圧が増圧状態または減圧状態であると判定する判定部を備えている請求項3記載の車両用制動装置。
【請求項5】
前記第二制御部による前記応答性重視制御は、前記制動目標油圧に応じて累進的に前記入力圧の制御量を増減させる制御である請求項1乃至請求項4の何れか一項記載の車両用制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用制動装置の一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図1に示されている車両用制動装置においては、各輪のホイールシリンダ圧である制御液圧Pwcが目標液圧Prefになるように、リニア弁に対してフィードフォワード制御およびフィードバック制御が行われている。特許文献1では、車両用制動装置において、制動制御の応答性向上と過応答抑制との両立を図ろうとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−035467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載されている車両用制動装置において、増圧開始当初または減圧開始当初において入力圧に対して出力圧の応答遅れが生じるヒステリシスを有する場合、応答性のさらなる向上と過応答抑制との両立を図りたいという要請がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、応答性のさらなる向上と過応答抑制との両立を図ることができる車両用制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る車両用制動装置の発明は、入力された入力圧が作用して出力圧を出力する液圧発生装置であって、出力圧を増大または減少しようとしたとき、増圧開始当初または減圧開始当初において入力圧の変化に対して出力圧の変化が遅れる応答遅れが生じる液圧発生装置、を備えている車両用制動装置であって、出力圧が制動目標油圧を基準に設定されている第一領域内に収まるように、入力圧を制御する過応答抑制重視制御を行う第一制御部と、過応答抑制重視制御より入力圧の増大速度または減少速度を大きくして、応答遅れをキャンセルする応答性重視制御を行う第二制御部と、第一制御部による過応答抑制重視制御と、第二制御部による応答性重視制御と、を制動目標油圧の状態に基づいて切り替える切替部と、ブレーキ操作部材の操作状態または他システムの要求に応じて制動目標油圧を算出する制動目標油圧算出部と、を備え、切替部は、制動目標油圧が保持状態である場合に、第一制御部による過応答抑制重視制御に切り替え、制動目標油圧が増圧状態または減圧状態である場合に、第二制御部による応答性重視制御に切り替え、切替部は、第一所定時間内における制動目標油圧の最大値および最小値が第一所定範囲内である場合、制動目標油圧勾配が第二所定範囲内である場合、および、第二所定時間内における制動目標油圧の増加回数と減少回数との差分が第三所定範囲内である場合のうち少なくとも1つ以上を満たせば、制動目標油圧が保持状態であり、一方それら以外である場合に、制動目標油圧が増圧状態または減圧状態であると判定する判定部を備えている。
また、請求項2に係る車両用制動装置の発明は、入力された入力圧が作用して出力圧を出力する液圧発生装置であって、出力圧を増大または減少しようとしたとき、増圧開始当初または減圧開始当初において入力圧の変化に対して出力圧の変化が遅れる応答遅れが生じる液圧発生装置、を備えている車両用制動装置であって、出力圧が制動目標油圧を基準に設定されている第一領域内に収まるように、入力圧を制御する過応答抑制重視制御を行う第一制御部と、過応答抑制重視制御より入力圧の増大速度または減少速度を大きくして、応答遅れをキャンセルする応答性重視制御を行う第二制御部と、第一制御部による過応答抑制重視制御と、第二制御部による応答性重視制御と、を制動目標油圧の状態に基づいて切り替える切替部と、を備え、切替部は、制動目標油圧が保持状態である場合であって、制動目標油圧と実際の油圧である実油圧との差が判定閾値より大きい場合には、第二制御部による応答性重視制御に切り替える。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の車両用制動装置によれば、液圧発生装置が、増圧開始当初または減圧開始当初において入力圧の変化に対して出力圧の変化が遅れる応答遅れが生じても、第二制御部による応答性重視制御が実行される。その結果、前記応答遅れをキャンセルすることが可能となり、増圧開始当初または減圧開始当初における応答性を向上させることが可能となる。また、切替部によって応答性重視制御と過応答抑制重視制御とを適切に切り替えることが可能となる。したがって、応答性のさらなる向上と過応答抑制との両立を図ることができる車両用制動装置を提供することができる。
さらに、制動目標油圧の状態に基づいて、過応答抑制重視制御と応答性重視制御とを確実かつ的確に切り替えることができる。
さらに、判定部が、制動目標油圧の状態を確実に判定することができる。
請求項2の車両用制動装置によれば、液圧発生装置が、増圧開始当初または減圧開始当初において入力圧の変化に対して出力圧の変化が遅れる応答遅れが生じても、第二制御部による応答性重視制御が実行される。その結果、前記応答遅れをキャンセルすることが可能となり、増圧開始当初または減圧開始当初における応答性を向上させることが可能となる。また、切替部によって応答性重視制御と過応答抑制重視制御とを適切に切り替えることが可能となる。したがって、応答性のさらなる向上と過応答抑制との両立を図ることができる車両用制動装置を提供することができる。
さらに、制動目標油圧が保持状態である場合であっても、実油圧が制動目標油圧から乖離した場合に、応答性よく実油圧を制動目標油圧に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明による車両用制動装置の一実施形態を示す概要図である。
図2図1に示すブレーキECUのブロック図である。
図3図1に示すブレーキECUにて実行される制御プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る車両用制動装置を車両に適用した一実施形態を図面を参照して説明する。車両は、直接各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに液圧制動力を付与して車両を制動させる液圧制動力発生装置A(車両用制動装置)を備えている。液圧制動力発生装置Aは、図1に示すように、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル11、マスタシリンダ12、ストロークシミュレータ部13、リザーバ14、倍力機構15(液圧発生装置)、アクチュエータ(制動液圧調整装置)16、ブレーキECU17、およびホイールシリンダWCを備えている。液圧制動力発生装置Aは、車両用制動装置である。
【0010】
ホイールシリンダWCは、車輪Wの回転をそれぞれ規制するものであり、キャリパCLに設けられている。ホイールシリンダWCは、アクチュエータ16からのブレーキ液の圧力(ブレーキ液圧)に基づいて車両の車輪Wに制動力を付与する制動力付与機構である。ホイールシリンダWCにブレーキ液圧が供給されると、ホイールシリンダWCの各ピストン(図示省略)が摩擦部材である一対のブレーキパッド(図示省略)を押圧して車輪Wと一体回転する回転部材であるディスクロータDRを両側から挟んでその回転を規制するようになっている。なお、本実施形態においては、ディスク式ブレーキを採用するようにしたが、ドラム式ブレーキを採用するようにしてもよい。車輪Wは左右前後輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrのいずれかである。
【0011】
ブレーキペダル11は、操作ロッド11aを介してストロークシミュレータ部13およびマスタシリンダ12に接続されている。
ブレーキペダル11の近傍には、ブレーキペダル11の踏み込みによるブレーキ操作状態であるブレーキペダルストローク(操作量:以下、ストロークという場合もある。)を検出するペダルストロークセンサ(以下、ストロークセンサという場合もある。)11cが設けられている。このストロークセンサ11cはブレーキECU17に接続されており、検出信号(検出結果)がブレーキECU17に出力されるようになっている。
【0012】
マスタシリンダ12は、ブレーキペダル11(ブレーキ操作部材)の操作量に応じてブレーキ液をアクチュエータ16に供給するものであり、シリンダボディー12a、入力ピストン12b、第一マスタピストン12c、および第二マスタピストン12d等により構成されている。
【0013】
シリンダボディー12aは、有底略円筒状に形成されている。シリンダボディー12aの内周部には、内向きフランジ状に突出する隔壁部12a2が設けられている。隔壁部12a2の中央には、前後方向に貫通する貫通孔12a3が形成されている。シリンダボディー12aの内周部には、隔壁部12a2より前方の部分に、軸方向に沿って液密かつ移動可能に第一マスタピストン12cおよび第二マスタピストン12dが配設されている。
【0014】
シリンダボディー12aの内周部には、隔壁部12a2より後方の部分に、軸方向に沿って液密かつ移動可能に入力ピストン12bが配設されている。入力ピストン12bは、ブレーキペダル11の操作に応じてシリンダボディー12a内を摺動するピストンである。
【0015】
入力ピストン12bには、ブレーキペダル11に連動する操作ロッド11aが接続されている。入力ピストン12bは、圧縮スプリング11bによって第一液圧室R3を拡張する方向すなわち後方(図面右方向)に付勢されている。ブレーキペダル11が踏み込み操作されたとき、操作ロッド11aは、圧縮スプリング11bの付勢力に抗して前進する。操作ロッド11aの前進に伴い、入力ピストン12bも連動して前進する。なお、ブレーキペダル11の踏み込み操作が解除されたとき、入力ピストン12bは、圧縮スプリング11bの付勢力によって後退し、規制凸部12a4に当接して位置決めされる。
【0016】
第一マスタピストン12cは、前方側から順番に加圧筒部12c1、フランジ部12c2、および突出部12c3が一体となって形成されている。加圧筒部12c1は、前方に開口を有する有底略円筒状に形成され、シリンダボディー12aの内周面との間に液密かつ摺動可能に配設されている。加圧筒部12c1の内部空間には、第二マスタピストン12dとの間に付勢部材であるコイルスプリング12c4が配設されている。コイルスプリング12c4により、第一マスタピストン12cは後方に付勢されている。換言すると、第一マスタピストン12cは、コイルスプリング12c4により後方に付勢され、最終的に規制凸部12a5に当接して位置決めされる。この位置が、ブレーキペダル11の踏み込み操作が解除されたときの原位置(予め設定されている)である。
【0017】
フランジ部12c2は、加圧筒部12c1よりも大径に形成されており、シリンダボディー12a内の大径部12a6の内周面に液密かつ摺動可能に配設されている。突出部12c3は、加圧筒部12c1よりも小径に形成されており、隔壁部12a2の貫通孔12a3に液密に摺動するように配置されている。突出部12c3の後端部は、貫通孔12a3を通り抜けてシリンダボディー12aの内部空間に突出し、シリンダボディー12aの内周面から離間している。突出部12c3の後端面は、入力ピストン12bの底面から離間し、その離間距離は変化し得るように構成されている。
【0018】
第二マスタピストン12dは、シリンダボディー12a内の第一マスタピストン12cの前方側に配置されている。第二マスタピストン12dは、前方に開口を有する有底略円筒状に形成されている。第二マスタピストン12dの内部空間には、シリンダボディー12aの内底面との間に、付勢部材であるコイルスプリング12d1が配設されている。コイルスプリング12d1により、第二マスタピストン12dは後方に付勢されている。換言すると、第二マスタピストン12dは、設定された原位置に向けてコイルスプリング12d1により付勢されている。
【0019】
また、マスタシリンダ12は、第一マスタ室R1、第二マスタ室R2、第一液圧室R3、第二液圧室R4、およびサーボ室(駆動液圧室)R5が形成されている。
第一マスタ室R1は、シリンダボディー12aの内周面、第一マスタピストン12c(加圧筒部12c1の前側)、および第二マスタピストン12dによって、区画形成されている。第一マスタ室R1は、ポートPT4に接続されている油路21を介してリザーバ14に接続されている。また、第一マスタ室R1は、ポートPT5に接続されている油路22を介して油路40a(アクチュエータ16)に接続されている。
【0020】
第二マスタ室R2は、シリンダボディー12aの内周面、および第二マスタピストン12dの前側によって、区画形成されている。第二マスタ室R2は、ポートPT6に接続されている油路23を介してリザーバ14に接続されている。また、第二マスタ室R2は、ポートPT7に接続されている油路24を介して油路50a(アクチュエータ16)に接続されている。
【0021】
第一液圧室R3は、隔壁部12a2と入力ピストン12bとの間に形成されており、シリンダボディー12aの内周面、隔壁部12a2、第一マスタピストン12cの突出部12c3、および入力ピストン12bによって区画形成されている。第二液圧室R4は、第一マスタピストン12cの加圧筒部12c1の側方に形成されており、シリンダボディー12aの内周面の大径部12a6、加圧筒部12c1、およびフランジ部12c2によって区画形成されている。第一液圧室R3は、ポートPT1に接続されている油路25およびポートPT3を介して第二液圧室R4に接続されている。
【0022】
サーボ室R5は、隔壁部12a2と第一マスタピストン12cの加圧筒部12c1との間に形成されており、シリンダボディー12aの内周面、隔壁部12a2、第一マスタピストン12cの突出部12c3、および加圧筒部12c1によって区画形成されている。サーボ室R5は、ポートPT2に接続されている油路26を介して出力室R12に接続されている。
【0023】
圧力センサ26aは、サーボ室R5に供給されるサーボ圧(駆動液圧)を検出するセンサであり、油路26に接続されている。圧力センサ26aは、検出信号(検出結果)をブレーキECU17に送信する。
【0024】
ストロークシミュレータ部13は、シリンダボディー12aと、入力ピストン12bと、第一液圧室R3と、第一液圧室R3と連通されているストロークシミュレータ13aとを備えている。
第一液圧室R3は、ポートPT1に接続された油路25,27を介してストロークシミュレータ13aに連通している。なお、第一液圧室R3は、図示しない接続油路を介してリザーバ14に連通している。
【0025】
ストロークシミュレータ13aは、ブレーキペダル11の操作状態に応じた大きさのストローク(反力)をブレーキペダル11に発生させるものである。ストロークシミュレータ13aは、シリンダ部13a1、ピストン部13a2、反力液圧室13a3、およびスプリング13a4を備えている。ピストン部13a2は、ブレーキペダル11を操作するブレーキ操作に伴ってシリンダ部13a1内を液密に摺動する。反力液圧室13a3は、シリンダ部13a1とピストン部13a2との間に区画されて形成されている。反力液圧室13a3は、接続された油路27,25を介して第一液圧室R3および第二液圧室R4に連通している。スプリング13a4は、ピストン部13a2を反力液圧室13a3の容積を減少させる方向に付勢する。
【0026】
なお、油路25には、ノーマルクローズタイプの電磁弁である第一制御弁25aが設けられている。油路25とリザーバ14とを接続する油路28には、ノーマルオープンタイプの電磁弁である第二制御弁28aが設けられている。第一制御弁25aが閉状態であるとき、第一液圧室R3と第二液圧室R4とが遮断される。これにより、入力ピストン12bと第一マスタピストン12cとが一定の離間距離を保って連動する。また、第一制御弁25aが開状態であるとき、第一液圧室R3と第二液圧室R4とが連通される。これにより、第一マスタピストン12cの進退に伴う第一液圧室R3および第二液圧室R4の容積変化が、ブレーキ液の移動により吸収される。
【0027】
圧力センサ25bは、第二液圧室R4および第一液圧室R3の反力液圧を検出するセンサであり、油路25に接続されている。圧力センサ25bは、第一制御弁25aが閉状態の場合には第二液圧室R4の圧力を検出し、第一制御弁25aが開状態の場合には連通された第一液圧室R3の圧力(または反力液圧)も検出することになる。圧力センサ25bは、検出信号(検出結果)をブレーキECU17に送信する。
【0028】
倍力機構15は、ブレーキペダル11の操作量に応じたサーボ圧を発生するものである。倍力機構15は、入力された入力圧(本実施形態ではパイロット圧)が作用して出力圧(本実施形態ではサーボ圧)を出力する液圧発生装置であって、出力圧を増大または減少しようとしたとき、増圧開始当初または減圧開始当初において入力圧の変化に対して出力圧の変化が遅れる応答遅れが生じる液圧発生装置である。倍力機構15は、レギュレータ15a、および圧力供給装置15bを備えている。
【0029】
レギュレータ15aは、シリンダボディー15a1と、シリンダボディー15a1内を摺動するスプール15a2とを有して構成されている。レギュレータ15aは、パイロット室R11、出力室R12、および液圧室R13が形成されている。
【0030】
パイロット室R11は、シリンダボディー15a1、およびスプール15a2の第二大径部15a2bの前端面によって区画形成されている。パイロット室R11は、ポートPT11に接続されている減圧弁15b6および増圧弁15b7に(油路31に)接続されている。また、シリンダボディー15a1の内周面には、スプール15a2の第二大径部15a2bの前端面が当接して位置決めされる規制凸部15a4が設けられている。パイロット室R11は、入力圧が入力される。
【0031】
出力室R12は、シリンダボディー15a1、およびスプール15a2の小径部15a2c、第二大径部15a2bの後端面、および第一大径部15a2aの前端面によって区画形成されている。出力室R12は、ポートPT12に接続されている油路26およびポートPT2を介してマスタシリンダ12のサーボ室R5に接続されている。また、出力室R12は、ポートPT13に接続されている油路32を介してアキュムレータ15b2に接続可能である。出力室R12は、入力圧が作用して出力圧が出力される。
【0032】
液圧室R13は、シリンダボディー15a1、およびスプール15a2の第一大径部15a2aの後端面によって区画形成されている。液圧室R13は、ポートPT14に接続されている油路33を介してリザーバ15b1に接続可能である。また、液圧室R13内には、液圧室R13を拡張する方向に付勢するスプリング15a3が配設されている。
【0033】
スプール15a2は、第一大径部15a2a、第二大径部15a2bおよび小径部15a2cを備えている。第一大径部15a2aおよび第二大径部15a2bは、シリンダボディー15a1内を液密に摺動するように構成されている。小径部15a2cは、第一大径部15a2aと第二大径部15a2bとの間に配設されるとともに、第一大径部15a2aと第二大径部15a2bとに一体的に形成されている。小径部15a2cは、第一大径部15a2aおよび第二大径部15a2bより小径に形成されている。
また、スプール15a2は、出力室R12と液圧室R13とを連通する連通路15a5が形成されている。
【0034】
圧力供給装置15bは、スプール15a2を駆動させる駆動部でもある。圧力供給装置15bは、低圧力源であるリザーバ15b1と、高圧力源でありブレーキ液を蓄圧するアキュムレータ15b2と、リザーバ15b1のブレーキ液を吸入しアキュムレータ15b2に圧送するポンプ15b3と、ポンプ15b3を駆動させる電動モータ15b4と、を備えている。リザーバ15b1は大気に開放されており、リザーバ15b1の液圧は大気圧と同じである。低圧力源は高圧力源よりも低圧である。圧力供給装置15bは、アキュムレータ15b2から供給されるブレーキ液の圧力を検出してブレーキECU17に出力する圧力センサ15b5を備えている。
【0035】
さらに、圧力供給装置15bは、減圧弁15b6と増圧弁15b7とを備えている。減圧弁15b6は、非通電状態で開く構造(ノーマルオープン型)の電磁弁であり、ブレーキECU17の指令により流量が制御されている。減圧弁15b6の一方は油路31を介してパイロット室R11に接続され、減圧弁15b6の他方は油路34を介してリザーバ15b1に接続されている。増圧弁15b7は、非通電状態で閉じる構造(ノーマルクローズ型)の電磁弁であり、ブレーキECU17の指令により流量が制御されている。増圧弁15b7の一方は油路31を介してパイロット室R11に接続され、増圧弁15b7の他方は、油路35より油路35が接続されている油路32を介してアキュムレータ15b2に接続されている。
【0036】
ここで、レギュレータ15aの作動について簡単に説明する。減圧弁15b6および増圧弁15b7からパイロット室R11にパイロット圧が供給されていない場合、スプール15a2はスプリング15a3によって付勢されて原位置にある(図1参照)。スプール15a2の原位置は、スプール15a2の前端面が規制凸部15a4に当接して位置決め固定される位置であり、スプール15a2の後端面がポートPT14を閉塞する直前の位置である。
このように、スプール15a2が原位置にある場合、ポートPT14とポートPT12とは連通路15a5を介して連通するとともに、ポートPT13はスプール15a2によって閉塞されている。
【0037】
減圧弁15b6および増圧弁15b7によってブレーキペダル11の操作量に応じて形成されるパイロット圧が増大される場合、スプール15a2は、スプリング15a3の付勢力に抗して後方(図1の右方)に向かって移動する。そうすると、スプール15a2は、これによって閉塞されていたポートPT13が開放される位置まで移動する。また、開放されていたポートPT14はスプール15a2によって閉塞される(増圧時)。
【0038】
そして、スプール15a2の第二大径部15a2bの前端面の押圧力とサーボ圧に対応する力とがつりあうことで、スプール15a2は位置決めされる。このとき、スプール15a2の位置を保持位置とする。ポートPT13とポートPT14とがスプール15a2によって閉塞される(保持時)。
【0039】
また、減圧弁15b6および増圧弁15b7によってブレーキペダル11の操作量に応じて形成されるパイロット圧が減少される場合、保持位置にあったスプール15a2は、スプリング15a3の付勢力によって前方に向かって移動する。そうすると、スプール15a2によって閉塞されていたポートPT13は、閉塞状態が維持される。また、閉塞されていたポートPT14は開放される。このとき、ポートPT14とポートPT12とは連通路15a5を介して連通する(減圧時)。
【0040】
アクチュエータ16は、各ホイールシリンダWCに付与する制動液圧を調整する装置であり、第一、第二配管系統40、50が設けられている。第一配管系統40は、左後輪Wrlと右後輪Wrrに加えられるブレーキ液圧を制御し、第二配管系統50は、右前輪Wfrと左前輪Wflに加えられるブレーキ液圧を制御する。つまり、前後配管の配管構成とされている。
【0041】
マスタシリンダ12から供給される液圧は、第一配管系統40と第二配管系統50を通じて各ホイールシリンダWCrl、WCrr、WCfr、WCflに伝えられる。第一配管系統40には、油路22とホイールシリンダWCrl、WCrrとを接続する油路40aが備えられている。第二配管系統50には、油路24とホイールシリンダWCfr、WCflとを接続する油路50aが備えられ、これら各油路40a、50aを通じてマスタシリンダ12から供給される液圧がホイールシリンダWCrl、WCrr、WCfr、WCflに伝えられる。
【0042】
油路40a、50aは、2つの油路40a1、40a2、50a1、50a2に分岐する。油路40a1、50a1にはホイールシリンダWCrl、WCfrへのブレーキ液圧の増圧を制御する第一増圧制御弁41、51が備えられている。油路40a2、50a2にはホイールシリンダWCrr、WCflへのブレーキ液圧の増圧を制御する第二増圧制御弁42、52が備えられている。
【0043】
これら第一、第二増圧制御弁41、42、51、52は、連通・遮断状態を制御できる2位置電磁弁により構成されている。第一、第二増圧制御弁41、42、51、52は、第一、第二増圧制御弁41、42、51、52に備えられるソレノイドコイルへの制御電流がゼロとされる時(非通電時)には連通状態となり、ソレノイドコイルに制御電流が流される時(通電時)に遮断状態に制御されるノーマルオープン型となっている。
【0044】
油路40a、50aにおける第一、第二増圧制御弁41、42、51、52と各ホイールシリンダWCrl、WCrr、WCfr、WCflとの間は、減圧油路としての油路40b、50bを通じてリザーバ43、53に接続されている。油路40b、50bには、連通・遮断状態を制御できる2位置電磁弁により構成される第一、第二減圧制御弁44、45、54、55がそれぞれ配設されている。これら第一、第二減圧制御弁44、45、54、55は、第一、第二減圧制御弁44、45、54、55に備えられるソレノイドコイルへの制御電流がゼロとされる時(非通電時)には遮断状態となり、ソレノイドコイルに制御電流が流される時(通電時)に連通状態に制御されるノーマルクローズ型となっている。
【0045】
リザーバ43、53と主油路である油路40a、50aとの間には還流油路となる油路40c、50cが配設されている。油路40c、50cにはリザーバ43、53からマスタシリンダ12側あるいはホイールシリンダWCrl、WCrr、WCfr、WCfl側に向けてブレーキ液を吸入吐出する、モータ47によって駆動されるポンプ46、56が設けられている。
【0046】
ポンプ46、56は、リザーバ43、53からブレーキ液を吸入し、油路40a、50aに吐出することで、ホイールシリンダWCrl、WCrr、WCfr、WCfl側にブレーキ液を供給する。
【0047】
また、ブレーキECU17には、車両の車輪Wfl、Wrr、Wfr、Wrl毎に備えられた車輪速度センサSfl、Srr、Sfr、Srlからの検出信号が入力されるようになっている。ブレーキECU17は、車輪速度センサSfl、Srr、Sfr、Srlの検出信号に基づいて、各車輪速度や推定車体速度およびスリップ率などを演算している。ブレーキECU17は、これらの演算結果に基づいてアンチスキッド制御などを実行している。
【0048】
アクチュエータ16を用いた各種制御は、ブレーキECU17にて実行される。例えば、ブレーキECU17は、アクチュエータ16に備えられる各種制御弁41,42,44,45,51,52,54,55や、ポンプ駆動用のモータ47を制御するための制御電流を出力することにより、アクチュエータ16に備えられる油圧回路を制御し、ホイールシリンダWCrl、WCrr、WCfr、WCflに伝えられるホイールシリンダ圧を個別に制御する。例えば、ブレーキECU17は、制動時の車輪スリップ時にホイールシリンダ圧の減圧、保持、増圧を行うことで車輪ロックを防止するアンチスキッド制御や、制御対象輪のホイールシリンダ圧を自動加圧することで横滑り傾向(アンダーステア傾向もしくはオーバステア傾向)を抑制して理想的軌跡での旋回が行えるようにする横滑り防止制御を行なうことができる。
【0049】
ブレーキECU17は、操作量取得部17a、制動目標油圧算出部17b、油圧取得部17c、スプール位置導出部17d、第一制御部17e、第二制御部17fおよび切替部17gを備えている。
【0050】
操作量取得部17aは、ブレーキペダル11の操作量(ブレーキ操作に係る操作量:ストローク)をストロークセンサ11cから取得する。なお、操作量取得部17aは、ブレーキペダル11の操作量の代わりに、ブレーキペダル11に直接作用する操作力(踏力)を検出するセンサからその検出された操作力を取得するようにしてもよい。
【0051】
制動目標油圧算出部17bは、操作量取得部17aからストロークを取得し、ブレーキ操作部材の操作状態(例えばストローク)または他のシステムの要求に応じて制動目標油圧を算出する。制動目標油圧は、例えばサーボ圧の制御目標である。また、制動目標油圧は、マスタシリンダ圧の制御目標でもよい(この場合、マスタシリンダ圧を検出する圧力センサを設けるのが好ましい)。また、制動目標油圧算出部17bは、例えば、ストロークと制動目標油圧との相関関係を示すマップを備え、そのマップから制動目標油圧を算出する。
他のシステムは、例えば、車両が衝突を検知した場合、自動的に制動力を発生させて衝突を防止するプリクラッシュシステムである。
【0052】
油圧取得部17cは、圧力センサ26aから出力室R12内のサーボ圧(実際の油圧である実油圧)を取得する。油圧取得部17cによって取得されたサーボ圧は、後述するスプール位置導出部17d、第一制御部17e、および切替部17gに出力される。
【0053】
スプール位置導出部17dは、スプール15a2のシリンダボディー15a1に対する相対位置(以下、スプール相対位置という場合もある。)を導出する。本実施形態において、スプール位置導出部17dは、スプール位置を推定するが、スプール位置を直接検出できる場合もあり、この場合も含めてスプール位置導出部と称している。なお、スプール位置導出部17dは、スプール位置を直接検出するセンサからスプール位置を取得する場合、スプール位置取得部として機能する。
【0054】
スプール位置導出部17dは、油圧取得部17cによって取得されているサーボ圧に基づいて、スプール相対位置を導出する。この導出方法は、サーボ圧が発生していること(特にサーボ圧の変動があること)が前提である。具体的には、スプール位置導出部17dは、下記数1によって導出できる。
(数1)
スプール相対位置=(サーボ圧変動量ΔPs/パイロット室R11の剛性Ka)/レギュレータ15aの面積S
【0055】
ここで、サーボ圧変動量ΔPs/パイロット室R11の剛性Kaは、サーボ圧の変動がある場合における、パイロット室R11内に流入出する液量(体積)を表している。サーボ圧変動量ΔPsの単位は、パスカルであり、パイロット室R11の剛性Kaの単位は、パスカル/cm(またはパスカル/cc)である。
【0056】
パイロット室R11内の液量が変動すると、パイロット室R11内の圧力が変動する。すなわちパイロット室R11の容積が変動する。スプール15a2は、液圧室R13内の圧力に対応する力がパイロット室R11内の圧力に対応する力とスプリング15a3の付勢力との合力と等しくなったところで保持される(保持位置)。このとき、液圧室R13すなわち出力室R12は、同じ圧力となる。換言すれば、サーボ圧とパイロット圧の変動量は同じである。よって、サーボ圧変動量ΔPs/パイロット室R11の剛性Kaは、サーボ圧の変動がある場合における、パイロット室R11内に流入出する液量(体積)を表すこととなる。
【0057】
なお、スプール15a2の絶対位置(以下、スプール相対位置という場合もある。)は、ある任意の基準位置P0に対して算出することは可能である。すなわち、スプール15a2の絶対位置は、基準位置P0に上述のように導出したスプール相対位置を加減算することにより算出することができる。基準位置P0としては、ブレーキペダル11の踏み込み当初の増圧時アイドル位置、制動制御途中の保持位置、減圧時アイドル位置などがある。
【0058】
また、レギュレータ15aの面積Sは、シリンダボディー15a1内の穴の断面積である。また、レギュレータ15aの面積Sは、シリンダボディー15a1内の穴の断面積と同一である、スプール15a2の第一大径部15a2aの後端面の受圧面積、および第二大径部15a2bの前端面の受圧面積である。
【0059】
スプール位置導出部17dは、パイロット室R11内の液量に基づいて、スプール相対位置を導出する。この導出方法は、サーボ圧が発生していない場合、またはサーボ圧が0以上の一定圧力である場合でも、スプール相対位置を導出することが可能である。具体的には、スプール位置導出部17dは、下記数2によって導出できる。
(数2)
スプール相対位置=パイロット室内液量V/レギュレータ15aの面積S
ここで、パイロット室内液量Vは、パイロット室R11内のブレーキ液の液量である。
このパイロット室内液量Vは、実際に検出しておらず、制動操作開始時点から現時点まで、パイロット流入出液量取得部によって取得されたパイロット流入出液量から演算することができる。
【0060】
なお、この場合も、スプール15a2の絶対位置は、ある任意の基準位置P0に対して算出することは可能である。すなわち、スプール15a2の絶対位置は、基準位置P0に上述のように導出したスプール相対位置を加減算することにより算出することができる。基準位置P0としては、ブレーキペダル11の踏み込み当初の増圧時アイドル位置、制動制御途中の保持位置、減圧時アイドル位置などがある。
【0061】
第一制御部17eは、サーボ圧(出力圧)が、制動目標油圧を基準に設定されている第一領域内に収まるように、パイロット圧(入力圧)を制御する過応答抑制重視制御を行う。なお、第一領域は、制動目標油圧を中心に第一判定閾値だけ離れた値により形成されている領域である。第一領域の下限は、制動目標油圧から第一判定閾値だけ減算した値であり、第一領域の上限は、制動目標油圧に第一判定閾値だけ加算した値である。
具体的には、第一制御部17eは、検出されているサーボ圧(実際のサーボ圧)が制動目標油圧となるように、圧力供給装置15bをフィードバック制御したりフィードフォワード制御したりしてパイロット圧を調整している。第一制御部17eは、制動目標油圧算出部17bから制動目標油圧を入力するとともに、油圧取得部17cから油圧(実サーボ圧)を入力する。
【0062】
例えば、第一制御部17eは、制動目標油圧と実サーボ圧との差分が減少するように減圧弁15b6および増圧弁15b7を調整している(フィードバック制御)。また、第一制御部17eは、制動目標油圧と実サーボ圧との差分を前もって生じさせないように減圧弁15b6および増圧弁15b7を調整するようにしてもよい(フィードフォワード制御)。また、第一制御部17eは、前述したフィードバック制御とフィードフォワード制御とを合わせて行うようにしてもよい。
【0063】
第二制御部17fは、過応答抑制重視制御よりパイロット圧(入力圧)の増大速度または減少速度を大きくして、倍力機構15の応答遅れをキャンセルする応答性重視制御を行う。
例えば、第二制御部17fは、スプール位置導出部17dによって導出されたスプール相対位置(またはスプール絶対位置)に基づいて、圧力供給装置15b(駆動部)を制御してスプール15a2を駆動させて、パイロット圧を制御する。具体的には、第二制御部17fは、スプール相対位置に対応した制御流量を算出し、その制御流量となるように圧力供給装置15b(特に増圧弁15b7および減圧弁15b6)を制御する。
【0064】
第二制御部17fは、レギュレータ15aを保持状態から増圧状態に遷移させるに際し、スプール位置導出部17dにより導出された相対位置が、保持状態における相対位置(たとえば保持位置)からスプール15a2が増圧ラップ距離だけ摺動した相対位置(増圧時アイドル位置)までの範囲内である場合に、その範囲外である場合(例えば相対位置が増圧時アイドル位置より増圧側の範囲)よりも、パイロット圧の単位時間あたりの変化幅を出力圧の増圧方向に大きくする。すなわち、第二制御部17fは、パイロット室R11への制御流量(単位時間あたりの流量)を大きくする。
【0065】
第二制御部17fは、レギュレータ15aを保持状態から減圧状態に遷移させるに際し、スプール位置導出部17dにより導出された相対位置が、保持状態における相対位置(たとえば保持位置)からスプール15a2が減圧ラップ距離だけ摺動した相対位置(減圧時アイドル位置)までの範囲内である場合に、その範囲外である場合よりも、パイロット圧の単位時間あたりの変化幅を前記出力圧の減圧方向に大きくする。すなわち、第二制御部17fは、パイロット室R11への制御流量(単位時間あたりの流量)を大きくする。
【0066】
なお、増圧ラップ距離は、スプール15a2がラップしており(ポートPT13およびポートPT14の両方を閉塞している)、保持位置から増圧時アイドル位置まで距離である。減圧ラップ距離は、スプール15a2がラップしており、保持位置から減圧時アイドル位置まで距離である。
【0067】
なお、第二制御部17fによる応答性重視制御は、制動目標油圧に応じて累進的にパイロット圧(入力圧)の制御量を増減させる制御でもよい。例えば、制御量は、制動目標油圧と実油圧との偏差が大きくなるにしたがって大きく設定されるゲインを、制動目標油圧に乗算して算出するようにすればよい。
【0068】
切替部17gは、第一制御部17eによる過応答抑制重視制御と、第二制御部17fによる応答性重視制御と、を制動目標油圧の状態に基づいて切り替える。すなわち、切替部17gは、制動目標油圧が保持状態である場合に、第一制御部17eによる過応答抑制重視制御に切り替え、制動目標油圧が増圧状態または減圧状態である場合に、第二制御部17fによる応答性重視制御に切り替える。
【0069】
切替部17gは、制動目標油圧が保持状態であるか、もしくは増圧状態または減圧状態であるかを判定する判定部17g1を備えている。判定部17g1は、第一所定時間内における制動目標油圧の最大値および最小値が第一所定範囲内であるか、制動目標油圧勾配が第二所定範囲内であるか、または、第二所定時間内における制動目標油圧の増加回数と減少回数との差分が第三所定範囲内である場合に、制動目標油圧が保持状態であると判定する。一方、判定部17g1は、これら以外である場合に、制動目標油圧が増圧状態または減圧状態であると判定する。
なお、切替部17gは、上記3つの条件のうち何れか2つ以上を満たせば、制動目標油圧が保持状態であると判定するようにしてもよい。
【0070】
なお、切替部17gは、判定部17g1によって制動目標油圧が保持状態であると判定された場合であって、制動目標油圧と実際の油圧である実油圧との差が第二判定閾値(判定閾値)より大きい場合には、第二制御部17fによる応答性重視制御に切り替える。これにより、過応答抑制重視制御による場合と比較して、実油圧を制動目標油圧に早期に近づけることができる。なお、第二判定閾値は、上述した第一判定閾値に設定してもよく、第一判定閾値より大きい値に設定してもよい。
【0071】
さらに、上述した車両用制動装置による作動について図3に示すフローチャートに沿って説明する。ブレーキECU17は、そのフローチャートに沿ったプログラムを所定の短時間毎に実行する。
ブレーキECU17は、ステップS102において、ストロークセンサ11cからブレーキペダル11の操作量を取得する。ステップS102は、上述した操作量取得部17aに相当するステップである。なお、ステップS102において、他のシステム(例えば、衝突を検知した場合、自動的に制動力を発生させて衝突を防止するプリクラッシュシステム)から要求制動力(または要求減速度)を取得するようにしてもよい。
【0072】
ブレーキECU17は、ステップS104において、操作量(ストローク)または他のシステムからの要求制動力に応じた制動目標油圧を算出する。ステップS104は、上述した制動目標油圧算出部17bに相当するステップである。
【0073】
ブレーキECU17は、ステップS106において、ステップS104によって算出された制動目標油圧から制動目標油圧の勾配である制動目標油圧勾配を算出する。例えば、制動目標油圧勾配は、前回算出した制動目標油圧と今回算出した制動目標油圧との差を制御サイクルで除して算出することができる。また、制動目標油圧勾配は、過去数回分の制動目標油圧勾配の平均値として算出することができる。
【0074】
ブレーキECU17は、ステップS108において、制動目標油圧が保持状態であるか、もしくは増圧状態または減圧状態(非保持状態)であるかを判定する。ステップS108は、上述した判定部17g1に相当するステップである。ブレーキECU17は、第一所定時間内(現時点から遡った第一所定時間内)における制動目標油圧の最大値および最小値が第一所定範囲内である場合、制動目標油圧が保持状態であると判定する。一方、ブレーキECU17は、そうでない場合、制動目標油圧が非保持状態であると判定する。なお、第一所定範囲は、上述した第一領域と同一に設定してもよい。
【0075】
また、ブレーキECU17は、制動目標油圧勾配が第二所定範囲内である場合、制動目標油圧が保持状態であると判定する。一方、ブレーキECU17は、そうでない場合、制動目標油圧が非保持状態であると判定する。なお、例えば、第二所定範囲は、ブレーキペダル11を緩やかに踏み込んだり解除したりする緩操作速度に相当する緩勾配により小さい範囲に設定されている。
【0076】
また、ブレーキECU17は、第二所定時間内(現時点から遡った第二所定時間内)における制動目標油圧の増加回数と減少回数との差分が第三所定範囲内である場合、制動目標油圧が保持状態であると判定する。一方、ブレーキECU17は、そうでない場合、制動目標油圧が非保持状態であると判定する。制動目標油圧の増加回数および減少回数は、前回算出した制動目標油圧に対して今回算出した制動目標油圧が増加した回数および減少した回数である。なお、第三所定範囲は、上述した第一領域に相当する値に設定するのが好ましい。
【0077】
ブレーキECU17は、ステップS108において、上述した三つの条件のうち一つでも満たせば、制動目標油圧が保持状態であると判定する。なお、ブレーキECU17は、ステップS108において、上述した三つの条件のうち何れか2つ以上を満たせば、制動目標油圧が保持状態であると判定するようにしてもよい。
【0078】
ブレーキECU17は、制動目標油圧が保持状態であると判定した場合、プログラムをステップS110以降に進める。ブレーキECU17は、ステップS110において、実油圧であるサーボ圧を圧力センサ26aから取得する。ステップS110は、上述した油圧取得部17cに相当するステップである。
【0079】
ブレーキECU17は、ステップS112において、ステップS104において算出された制動目標油圧と、ステップS110において取得された実油圧との差分が比較的大きく乖離しているか否かを判定する。具体的には、前記差分(絶対値)が判定閾値より大きいか否かを判定する。
【0080】
ブレーキECU17は、制動目標油圧が非保持状態であると判定した場合、ステップS108にて「NO」と判定し、ステップS114において応答性重視制御を実施する。
ブレーキECU17は、制動目標油圧が保持状態であり、かつ、実油圧が制動目標油圧より判定閾値以上乖離していない場合、ステップS112にて「YES」と判定し、ステップS116において過応答抑制重視制御を実施する。一方、ブレーキECU17は、制動目標油圧が保持状態であっても、実油圧が制動目標油圧より判定閾値以上乖離している場合、ステップS112にて「NO」と判定し、ステップS114において応答性重視制御を実施する。
このように、ステップS108およびステップS112は、上述した切替部17gに相当するステップである。
【0081】
ブレーキECU17は、ステップS116において、過応答抑制重視制御を実施する。ステップS116は、上述した第一制御部17eに相当するステップである。
ブレーキECU17は、ステップS114において、応答性重視制御を実施する。ステップS114は、上述した第二制御部17fに相当するステップである。
【0082】
上述した説明から明らかなように、本実施形態に係る車両用制動装置は、入力された入力圧が作用して出力圧を出力する液圧発生装置であって、出力圧を増大または減少しようとしたとき、増圧開始当初または減圧開始当初において入力圧の変化に対して出力圧の変化が遅れる応答遅れが生じる倍力機構15(液圧発生装置)、を備えている液圧制動力発生装置A(車両用制動装置)である。液圧制動力発生装置Aは、出力圧が制動目標油圧を基準に設定されている第一領域内に収まるように、入力圧を制御する過応答抑制重視制御を行う第一制御部17eと、過応答抑制重視制御より入力圧の増大速度または減少速度を大きくして、応答遅れをキャンセルする応答性重視制御を行う第二制御部17fと、第一制御部17eによる過応答抑制重視制御と、第二制御部17fによる応答性重視制御と、を制動目標油圧の状態に基づいて切り替える切替部17gと、を備えている。
【0083】
これによれば、倍力機構15が、増圧開始当初または減圧開始当初において入力圧の変化に対して出力圧の変化が遅れる応答遅れが生じても、第二制御部17fによる応答性重視制御が実行される。その結果、前記応答遅れをキャンセルすることが可能となり、増圧開始当初または減圧開始当初における応答性を向上させることが可能となる。また、切替部17gによって応答性重視制御と過応答抑制重視制御とを適切に切り替えることが可能となる。したがって、応答性のさらなる向上と過応答抑制との両立を図ることができる液圧制動力発生装置Aを提供することができる。
【0084】
また、液圧制動力発生装置Aは、ブレーキペダル11(ブレーキ操作部材)の操作状態または他システムの要求に応じて制動目標油圧を算出する制動目標油圧算出部17bを備え、切替部17gは、制動目標油圧が保持状態である場合に、第一制御部17eによる過応答抑制重視制御に切り替え、制動目標油圧が増圧状態または減圧状態である場合に、第二制御部17fによる応答性重視制御に切り替える。
これによれば、制動目標油圧の状態に基づいて、過応答抑制重視制御と応答性重視制御とを確実かつ的確に切り替えることができる。
【0085】
また、液圧制動力発生装置Aにおいて、切替部17gは、第一所定時間内における制動目標油圧の最大値および最小値が第一所定範囲内であり、または、制動目標油圧勾配が第二所定範囲内であり、または、第二所定時間内における制動目標油圧の増加回数と減少回数との差分が第三所定範囲内である場合に、制動目標油圧が保持状態であり、一方それら以外である場合に、制動目標油圧が増圧状態または減圧状態であると判定する判定部17g1を備えている。
これによれば、判定部17g1が、制動目標油圧の状態を確実に判定することができる。
【0086】
また、液圧制動力発生装置Aにおいて、切替部17gは、制動目標油圧が保持状態である場合であって、制動目標油圧と実際の油圧である実油圧との差が判定閾値より大きい場合には、第二制御部17fによる応答性重視制御に切り替える。
これによれば、制動目標油圧が保持状態である場合であっても、実油圧が制動目標油圧から乖離した場合に、応答性よく実油圧を制動目標油圧に近づけることができる。
【0087】
また、液圧制動力発生装置Aにおいて、第二制御部17fによる応答性重視制御は、制動目標油圧に応じて累進的に入力圧の制御量を増減させる制御である。
これによれば、制動目標油圧に基づいて入力圧を適切に制御することができ、ひいては、応答性重視制御を適切に実施することができる。
【符号の説明】
【0088】
11…ブレーキペダル、12…マスタシリンダ、13…ストロークシミュレータ部、14…リザーバ、15…倍力機構(液圧発生装置)、15a…レギュレータ、15b…圧力供給装置(駆動部)、15b1…リザーバ(低圧力源)、15b2…アキュムレータ(高圧力源)、15b6…減圧弁、15b7…増圧弁、16…アクチュエータ、17…ブレーキECU、17a…操作量取得部、17b…制動目標油圧算出部、17c…油圧取得部、17d…スプール位置導出部、17e…第一制御部、17f…第二制御部、17g…切替部、17g1…判定部、A…液圧制動力発生装置(車両用制動装置)、WC…ホイールシリンダ。
図1
図2
図3