特許第6426650号(P6426650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6426650
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20181112BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20181112BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20181112BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20181112BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   B01J23/63 AZAB
   B01J37/04 102
   B01J37/02 301C
   B01D53/94 222
   B01D53/94 245
   B01D53/94 280
   B01D53/94 241
   F01N3/10 A
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-79849(P2016-79849)
(22)【出願日】2016年4月12日
(65)【公開番号】特開2017-189735(P2017-189735A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2017年11月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 良典
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真秀
(72)【発明者】
【氏名】平尾 哲大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正尚
(72)【発明者】
【氏名】小里 浩隆
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/002667(WO,A1)
【文献】 特開2005−246216(JP,A)
【文献】 特開2012−240027(JP,A)
【文献】 特開2013−180235(JP,A)
【文献】 特開2009−131839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/86
B01D 53/94
F01N 3/00 − 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に設けられた触媒コート層を有する排ガス浄化用触媒であって、
前記触媒コート層は、
含有する全材料粒子の二次粒子径D50が2〜12μmの範囲であり、
触媒金属を担持した第1の金属酸化物粒子と触媒金属を担持しない第2の金属酸化物粒子を含み、
前記第2の金属酸化物粒子は、
二次粒子径D50が3μm以下であり、かつ
前記触媒コート層の全材料粒子に対する含有比率が5〜55重量%の範囲であり、
さらに、第1の金属酸化物粒子の二次粒子径は第2の金属酸化物粒子の二次粒子径より大きい、
前記排ガス浄化用触媒(ただし、前記第2の金属酸化物粒子が前記第1の金属酸化物粒子に担持されている排ガス浄化用触媒を除く)
【請求項2】
触媒コート層の被覆量が、基材の単位体積当たり50〜300g/Lの範囲内である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
触媒コート層の空隙率が、水中重量法により測定した空隙率で50〜80容量%の範囲内であり、
触媒コート層が有する細孔のうち、基材の排ガスの流れ方向に垂直な触媒コート層断面の断面画像における細孔の円相当径が2〜50μmの範囲内であり、かつ、5以上のアスペクト比を有する高アスペクト比細孔が、触媒コート層が有する空隙全体に対して0.5〜50容量%を占め、かつ、その平均アスペクト比が10〜50の範囲内である、請求項1または2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
排ガス浄化用触媒の製造方法であって、
触媒金属を担持した第1の金属酸化物粒子と触媒金属を担持しない第2の金属酸化物粒子を用意する工程、
前記第2の金属酸化物粒子を、二次粒子径D50が3μm以下となるようミリングする工程、
前記第1の金属酸化物粒子と、ミリングした前記第2の金属酸化物粒子を混合して、全材料粒子の二次粒子径D50が2〜12μmの範囲であり、かつ全材料粒子に対して前記第2の金属酸化物粒子を5〜55重量%の範囲で含有するスラリーを調製する工程、および
基材に前記スラリーを塗布して触媒コート層を形成する工程
を含む、前記方法。
【請求項5】
前記スラリーに繊維状有機物をさらに加えることを含む、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排ガス浄化用触媒に関する。より詳しくは触媒コート層に含まれる金属酸化物粒子のサイズおよび組成に特徴を有する排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの内燃機関から排出される排ガスには、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、未燃の炭化水素(HC)などの有害ガスが含まれている。そのような有害ガスを分解する排ガス浄化用触媒は三元触媒とも称され、コージェライトなどからなるハニカム状のモノリス基材に、触媒活性を有する貴金属が担持された金属酸化物の粒子と、その他の金属酸化物の粒子とを含むスラリーをウォッシュコートして触媒コート層を設けたものが知られている。排ガス浄化用触媒に用いられる金属酸化物としては、酸素貯蔵能を有するセリア−ジルコニア複合酸化物およびアルミナ−セリア−ジルコニア複合酸化物、ならびにアルミナなどが一般的である。
【0003】
従来の排ガス浄化用触媒では、触媒担持層が比較的緻密な状態となっており、熱および被毒成分によって担持層内の細孔が閉塞されて担持層内部へのガス拡散が不十分となることが原因となって、高温域での使用中に触媒性能が低下することが問題となっていた。それに対し、特許文献1では、触媒コート層を平均粒径1〜5μmの酸化物多孔質粒子から形成された下層と、平均粒径10〜20μmの酸化物多孔質粒子から形成された上層との二層構造とすることによりその問題を解決することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−253454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排ガス浄化用触媒は、触媒コート層のコート量が多いほど耐久性が向上することが知られている。しかし、触媒コート層が厚くなるほど、コート層におけるガス拡散性が低下し、貴金属などの触媒金属の利用効率が低下してしまう。特に、加速時などの吸入空気量が多い条件(高吸入空気量または高Ga条件:高空間速度または高SV条件と同義)のもとでは、触媒の浄化性能はガス拡散律速となるため、高負荷条件下であっても十分な触媒性能を発揮するためには、触媒コート層におけるガス拡散性を確保することが必要となる。触媒コート層の厚さを抑えるために、材料全体の粒径を低減させることも考えられるが、触媒活性を有する貴金属のシンタリング等を招き、耐久性の低下に繋がり好ましくない。このように背反である触媒コート層の耐久性の向上と触媒性能の向上を両立させる手段が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上述の問題を検討した結果、触媒コート層に含まれる金属酸化物粒子について、触媒金属を担持するものについては粒径を比較的大きなままで維持する一方、触媒金属を担持しないものについては粒径を抑えることで、耐久性を維持したまま触媒コート層の厚さを低減し、コート層のガス拡散性を向上できることを見出した。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0007】
(1)基材上に設けられた触媒コート層を有する排ガス浄化用触媒であって、
前記触媒コート層は、
含有する全材料粒子の二次粒子径D50が2〜12μmの範囲であり、
触媒金属を担持した第1の金属酸化物粒子と触媒金属を担持しない第2の金属酸化物粒子を含み、
前記第2の金属酸化物粒子は、
二次粒子径D50が3μm以下であり、かつ
前記触媒コート層の全材料粒子に対する含有比率が5〜55重量%の範囲であり、
さらに、第1の金属酸化物粒子の二次粒子径は第2の金属酸化物粒子の二次粒子径より大きい、
前記排ガス浄化用触媒。
(2)触媒コート層の被覆量が、基材の単位体積当たり50〜300g/Lの範囲内である、(1)に記載の排ガス浄化用触媒。
(3)触媒コート層の空隙率が、水中重量法により測定した空隙率で50〜80容量%の範囲内であり、
触媒コート層が有する細孔のうち、基材の排ガスの流れ方向に垂直な触媒コート層断面の断面画像における細孔の円相当径が2〜50μmの範囲内であり、かつ、5以上のアスペクト比を有する高アスペクト比細孔が、触媒コート層が有する空隙全体に対して0.5〜50容量%を占め、かつ、その平均アスペクト比が10〜50の範囲内である、(1)または(2)に記載の排ガス浄化用触媒。
(4)排ガス浄化用触媒の製造方法であって、
触媒金属を担持した第1の金属酸化物粒子と触媒金属を担持しない第2の金属酸化物粒子を用意する工程、
前記第2の金属酸化物粒子を、二次粒子径D50が3μm以下となるようミリングする工程、
前記第1の金属酸化物粒子と、ミリングした前記第2の金属酸化物粒子を混合して、全材料粒子の二次粒子径D50が2〜12μmの範囲であり、かつ全材料粒子に対して前記第2の金属酸化物粒子を5〜55重量%の範囲で含有するスラリーを調製する工程、および
基材に前記スラリーを塗布して触媒コート層を形成する工程
を含む、前記方法。
(5)前記スラリーに繊維状有機物をさらに加えることを含む、(4)に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の排ガス浄化用触媒は、触媒コート層を構成する材料の粒径および含有比率を上記のとおり設計することにより、耐久性を低減させることなく触媒コートの厚さを低減させることができ、高負荷条件下でも高い排ガス浄化性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】比較例1で得られた触媒(a)および実施例1で得られた触媒(b)の触媒コート層断面のSEM像である。
図2】実施例1〜2および比較例1〜3の各触媒のAl材二次粒子径D50と、T50−NOxの関係を示すグラフである。
図3】実施例1〜2および比較例1〜3の各触媒のAl材二次粒子径D50と、高負荷時NOx浄化率の関係を示すグラフである。
図4】実施例1〜2および比較例1〜3の各触媒のAl材二次粒子径D50と、圧力損失の関係を示すグラフである。
図5】実施例3〜7および比較例4〜7の各触媒の全材料二次粒子径D50と、T50−NOxの関係を示すグラフである。
図6】実施例3〜7および比較例4〜7の各触媒の全材料二次粒子径D50と、高負荷時NOx浄化率の関係を示すグラフである。
図7】実施例3〜7および比較例4〜7の各触媒の全材料二次粒子径D50と、圧力損失の関係を示すグラフである。
図8】実施例4および8〜11ならびに比較例7および9〜12の各触媒のコート層全体に対するAl材の割合(重量%)と、T50−NOxの関係を示すグラフである。
図9】実施例4および8〜11ならびに比較例7および9〜12の各触媒のコート層全体に対するAl材の割合(重量%)と、高負荷時NOx浄化率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の排ガス浄化用触媒は、基材上に設けられた触媒コート層を有し、触媒コート層が含有する全材料粒子の二次粒子径D50は2〜12μmの範囲である。触媒コート層は、触媒金属を担持した第1の金属酸化物粒子と触媒金属を担持しない第2の金属酸化物粒子を含み、第2の金属酸化物粒子は、二次粒子径D50が3μm以下であり、かつ触媒コート層の全材料粒子に対する含有比率が5〜55重量%の範囲である。さらに、第1の金属酸化物粒子の二次粒子径が第2の金属酸化物粒子の二次粒子径より大きい。
【0011】
(基材)
基材としては、例えば公知のハニカム形状を有する基材を使用することができ、具体的には、ハニカム形状のモノリス基材(ハニカムフィルタ、高密度ハニカム等)等が好適に採用される。また、このような基材の材質も特に制限されず、コージェライト、炭化ケイ素、シリカ、アルミナ、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用される。これらの中でも、コストの観点から、コージェライトであることが好ましい。
【0012】
(触媒コート層)
触媒コート層は上記の基材の表面に形成されており、一層のみからなっていても、あるいは二層以上の多層からなっていてもよい。触媒コート層が多層からなるものである場合、本発明で言及する触媒コート層はそのいずれの層であってもよい。また、触媒コート層は必ずしも排ガス浄化用触媒の基材全体に渡って均一でなくてもよく、基材の部分ごと、例えば排ガス流れ方向に対して上流側と下流側で、ゾーンごとに異なる組成を有していてもよい。その場合、本発明で言及する触媒コート層は、いずれの部分にあってもよい。
【0013】
本発明で言及する触媒コート層は、少なくとも触媒金属を担持した第1の金属酸化物粒子と、触媒金属を担持しない第2の金属酸化物粒子とを含有する。触媒金属とは、CO、NOxまたはHCの浄化において主触媒として機能する金属を意味し、その具体例としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)およびルテニウム(Ru)などの貴金属が挙げられる。これらの中でも、触媒性能の観点から、Pt、Rh、Pd、Ir及びRuからなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、Pt、Rh及びPdからなる群から選択される少なくとも一種が特に好ましい。触媒金属は、第1の金属酸化物粒子の一次粒子または二次粒子の表面に担持されている。
【0014】
第1の金属酸化物および第2の金属酸化物としては、具体的には、酸化アルミニウム(Al、アルミナ)、酸化セリウム(CeO、セリア)、酸化ジルコニウム(ZrO、ジルコニア)、酸化珪素(SiO、シリカ)、酸化イットリウム(Y、イットリア)および酸化ネオジム(Nd)、ならびにこれらからなる複合酸化物、例えばセリア−ジルコニア複合酸化物やセリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物が挙げられる。触媒金属を担持する第1の金属酸化物粒子は、好ましくはセリア−ジルコニア複合酸化物やセリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物のような、酸素貯蔵能を有する金属酸化物であることが好ましい。また、上記の金属酸化物のうち、特にアルミナは触媒コート層の耐熱性を向上させることができるため有用である。本発明において、触媒金属を担持する第1の金属酸化物は好ましくはセリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物である。また、本発明において、触媒金属を担持しない第2の金属酸化物は、好ましくはアルミナ、またはアルミナを50重量%以上、特に60重量%以上、とりわけ70重量%以上、または80重量%以上含む金属酸化物である。
【0015】
触媒コート層は、好ましくは、触媒金属を担持した第1の金属酸化物粒子および触媒金属を担持しない第2の金属酸化物粒子から主として構成されるが、それら以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、この種の用途の触媒コート層に用いられる他の金属酸化物や添加剤、あるいは触媒コート形成用スラリーの調製時に用いたバインダーに由来するもの、具体的には、上述したような金属酸化物、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)等のアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、ランタン(La)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)等の希土類元素、鉄(Fe)等の遷移金属等の一種以上が挙げられる。触媒コート層には、例えば触媒コート形成用スラリーに用いたアルミナ系バインダーに由来するアルミナ粒子が含まれていてもよい。
【0016】
触媒コート層に含まれる全材料粒子の二次粒子径D50は、2μm以上、好ましくは3μm以上であって、12μm以下、好ましくは11μm以下、より好ましくは10μm以下である。そのような範囲であれば、コート層の耐久性に問題が生じることがなく、コート層の剥離なども生じにくく、かつコート層内のガス拡散性も十分確保できる。ここで、触媒コート層に含まれる「全材料粒子」とは、触媒金属を担持した第1の金属酸化物粒子および触媒金属を担持しない第2の金属酸化物粒子を少なくとも含み、存在する場合には、さらに上述したようなそれら以外の成分の粒子を含む概念である。なお、本明細書において「二次粒子」とは、外見上の形態から一単位を構成していると判断される粒子(一次粒子)が複数集まって形成された凝集体または集合体を意味し、「二次粒子径D50」とは、そのような二次粒子の、体積基準の累積粒度分布における累積50%径を意味する。二次粒子径D50は、水分を含んだスラリーをそのまま、または希釈して、レーザー回折粒度分布測定装置により測定して求めることができる。
【0017】
触媒金属を担持しない第2の金属酸化物粒子は、二次粒子径D50が3μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下である。さらに、第1の金属酸化物粒子の二次粒子径は第2の金属酸化物粒子の二次粒子径より大きい。すなわち、第2の金属酸化物粒子の粒径は、触媒コート層に含まれる他の材料、特に触媒金属を担持した第1の金属酸化物粒子の粒径よりも相対的に小さい。第2の金属酸化物粒子の粒径のみを小さくすることにより、触媒コート層における第2の金属酸化物粒子の分布が密となり、その結果触媒コート層の厚さが低減し、ガス拡散性が向上する効果が得られる。ただし、第2の金属酸化物粒子の粒径が小さすぎると、触媒コート層が過度に密となりガス拡散性に劣る結果となるため、第2の金属酸化物粒子の粒径は0.1μm以上であることが好ましい。
【0018】
上述のような第2の金属酸化物粒子の一方で、触媒金属を担持した第1の金属酸化物粒子は、従来の排ガス浄化触媒における触媒金属担持粒子と同等あるいはそれより大きな粒径を有するため、触媒金属のシンタリングなどは発生しにくく、耐熱性に劣るようなことはない。第1の金属酸化物粒子の粒径が過度に大きい場合には、第2の金属酸化物粒子の粒径を小さくしたことによるコート層の厚みの低減効果が表れにくくなることも考えられるが、全材料粒子の二次粒子径D50が上述の範囲内となるように調整されていればそのような問題が生じることはない。触媒コート層が含有する全材料粒子のうち、第2の金属酸化物粒子の比率は5〜55重量%の範囲、好ましくは10〜55重量%の範囲、より好ましくは10〜50重量%の範囲である。第2の金属酸化物粒子の含有比率がそのような範囲であれば、粒径の低減によるコート層の厚みの低減効果が得られ、かつ粒径の低減による耐久性低下の影響が触媒全体に及ぶようなこともない。
【0019】
本発明で言及する触媒コート層は、触媒全体の平均値として、25〜160μmの範囲内の厚さを有することが好ましい。触媒コート層が薄すぎると、十分な触媒性能が得られなくなる一方、厚すぎても、排ガス等が通過する際の圧力損失が大きくなりNOx浄化性能等の十分な触媒性能が得られないが、上記範囲ではそのような問題は生じない。なお、圧力損失と触媒性能と耐久性のバランスの観点から、30〜96μm、特に32〜92μmの範囲内であることがより好ましい。ここで、触媒コート層の「厚さ」とは、触媒コート層の基材の平坦部の中心に対して垂直な方向の長さ、すなわち触媒コート層の表面と基材表面(基材との間に別の触媒コート層が存在する場合は、その触媒コートとの間の界面)の間の最短距離を意味する。触媒コート層の平均厚さは、例えば、触媒コート層を、走査型電子顕微鏡(SEM)や光学顕微鏡を用いて観察して、任意の10個以上の部分について厚さを測定し、その厚さの平均値を算出することにより算出することができる。
【0020】
触媒コート層の一層あたりの被覆量は、基材の単位体積当たり50〜300g/Lの範囲内であることが好ましい。被覆量が少なすぎると、触媒粒子の触媒活性性能が十分に得られないためNOx浄化性能等の十分な触媒性能が得られない一方、多すぎても、圧力損失が増大し燃費が悪化する原因となるが、上記範囲ではそのような問題は生じない。なお、圧力損失と触媒性能と耐久性のバランスの観点から、触媒コート層の一層あたりの被覆量は、基材の単位体積当たり50〜250g/L、特に100〜250g/Lの範囲内であることがより好ましい。
【0021】
(ガス拡散性に優れた触媒コート層構造)
触媒コート層がガス拡散性に優れた多孔構造を有している場合、触媒金属を担持しない第2の金属酸化物粒子の粒径を低減することとの相乗効果により、高Ga条件下での触媒性能をさらに向上させることができる。従って、本発明の一実施形態において、触媒コート層は空隙を多く有し、その空隙率は、JIS R 2205に規定される方法に準じて水中重量法により測定した空隙率で50〜80容量%の範囲内であることが好ましい。空隙率が高すぎると、拡散性が高すぎることにより触媒活性点と接触せずにコート層を素通りするガスの割合が増え十分な触媒性能が得られないが、上記範囲ではそのような問題は生じない。
【0022】
上記の空隙のうち、全体の0.5〜50容量%が、5以上のアスペクト比を有する高アスペクト比細孔からなると、空隙間の連通性に優れるため好ましい。そのような高アスペクト比細孔は、排ガスの流れ方向に垂直な触媒コート層断面の断面画像における細孔の円相当径が2〜50μmの範囲内であり、かつ平均アスペクト比が10以上であって特に50以下の範囲内であることが好ましい。なお、高アスペクト比細孔の空隙全体に占める割合は、ガス拡散性と触媒性能と触媒コート層の強度のバランスの観点から、0.6〜40.9容量%、特に1〜31容量%の範囲内であることがより好ましい。触媒コート層における高アスペクト比細孔の空隙全体に占める割合は、触媒コート層の基材平坦部に対して水平方向に500μm以上、かつ、基材平坦部に対して垂直方向に25μm以上、軸方向に1000μm以上の範囲、又はこれに相当する範囲における高アスペクト比細孔の空隙率を、水中重量法により測定して得られる触媒コート層の空隙率で割って求めることができる。
【0023】
高アスペクト比細孔の平均アスペクト比は、低すぎると細孔の連通性が十分得られない一方、高すぎるとガス拡散性が高すぎることにより、触媒活性点と接触せずにコート層を素通りするガスの割合が増えて十分な触媒性能が得られないが、平均アスペクト比が10〜50の範囲内であればそのような問題は生じない。ガス拡散性と触媒性能の両立という観点から、高アスペクト比細孔の平均アスペクト比は、10〜35、特に10〜30の範囲内であることがより好ましい。
【0024】
触媒コート層における高アスペクト比細孔の平均アスペクト比は、FIB−SEM(Focused Ion Beam-Scanning Electron Microscope)またはX線CT等で得られる触媒コート層の細孔の三次元情報から、基材の排ガスの流れ方向(ハニカム状の基材の軸方向)に垂直な触媒コート層断面の断面画像を解析することにより測定することができる。
【0025】
さらに、高アスペクト比細孔は、当該細孔の長径方向ベクトルと基材の排ガスの流れ方向ベクトルとがなす角(円錐角)の角度基準の累積角度分布における累積80%角度の値で0〜45度の範囲内に配向していることが好ましい。そのようにすると、排ガスの流れ方向におけるガス拡散性が特に向上し、触媒活性点の利用効率を向上させることができる。累積80%角度の値が大きすぎると、ガス拡散性の軸方向の成分が不十分となり活性点の利用効率が低下する傾向にあるが、上記範囲ではそのような問題は生じない。なお。前記累積80%角度の値は、触媒性能の観点から、15〜45度、特に30〜45度の範囲内であることが好ましい。
【0026】
本発明者らは、以前より触媒コート層のガス拡散性を向上させることにより触媒性能を向上させる研究を行っており、それにより下記の条件を満たす触媒コート層が顕著にガス拡散性に優れており、高Ga条件下でも優れた触媒性能を発揮できることを確認している。その条件とは、触媒コート層の被覆量が、基材の単位体積当たり50〜300g/Lの範囲内であり、触媒コート層の平均厚さが25〜160μmの範囲内であり、触媒粒子の粒径が、触媒コート層の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察による触媒粒子の断面積基準の累積粒度分布における累積15%径の値で3〜10μmの範囲内であり、触媒コート層の空隙率が、水中重量法により測定した空隙率で50〜80容量%の範囲内であり、かつ、触媒コート層中の細孔のうち、基材の排ガスの流れ方向に垂直な触媒コート層断面の断面画像における細孔の円相当径が2〜50μmの範囲内であり、かつ、5以上のアスペクト比を有する高アスペクト比細孔の平均アスペクト比が10〜50の範囲内であり、かつ当該高アスペクト比細孔が空隙全体に対する占有率が0.5〜50容量%の範囲内である、というものである。
【0027】
空隙を多く有することによりガス拡散性を向上させた触媒コート層は、空隙を有する分、コート量に対してコート層の厚さが増大してしまう。これまで述べたように、コート層の厚さの増大はガス拡散性の低下をもたらす要因となり得るため好ましくない。しかし、そのような触媒コート層において、本発明を適用し、触媒金属を担持しない第2の金属酸化物粒子を低減すると、そのコート層の厚さの増大を抑制することができ、相乗的に触媒性能、特に高負荷条件下での触媒性能を向上させることができる。
【0028】
(排ガス浄化用触媒の製造方法)
本発明の排ガス浄化用触媒は、まず触媒金属を担持した第1の金属酸化物粒子と触媒金属を担持しない第2の金属酸化物粒子を用意し、第2の金属酸化物粒子を二次粒子径D50が3μm以下となるようミリングする工程、第1の金属酸化物粒子とミリングした第2の金属酸化物粒子を、必要に応じてバインダーなどと共に混合して、全材料粒子の二次粒子径D50が2〜12μmの範囲であり、かつ全材料粒子に対して前記第2の金属酸化物粒子を5〜55重量%の範囲で含有するスラリーを調製する工程、および基材に前記スラリーを塗布して触媒コート層を形成する工程を含む方法により製造することができる。
【0029】
触媒金属を担持した第1の金属酸化物粒子は、従来公知な方法、例えば含浸法、析出沈殿法、およびスパッタリング法などの任意の方法により調製することができる。含浸法であれば、例えば蒸留水に触媒金属の前駆体を溶解させ、そこに担体となる金属酸化物粒子加えて撹拌し、得られた混合物を乾燥させて焼成することにより調製することができる。
【0030】
金属酸化物粒子のミリングは、湿式粉砕により行うことができ、あるいは金属酸化物粒子の微細化が可能であれば乾式粉砕によっても行うことができる。第2の金属酸化物粒子のミリングは、ミリング後に二次粒子径D50が3μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下となるように行う。
【0031】
第1の金属酸化物粒子とミリングした第2の金属酸化物粒子を混合して調製するスラリーにおける全材料粒子の二次粒子径D50の調整は、混合前に予め第1の金属酸化物粒子のみ、または第1の金属酸化物粒子とバインダーの混合物をミリングすることにより行ってもよく、あるいは第1の金属酸化物粒子とミリングした第2の金属酸化物粒子を先に混合し、その混合物をミリングすることにより行ってもよい。全材料粒子の二次粒子径D50が2μm以上、好ましくは3μm以上であって、12μm以下、好ましくは11μm以下、より好ましくは10μm以下の範囲であるスラリーが得られれば、いずれの方法でもよい。第1の金属酸化物粒子と第2の金属酸化物粒子の混合は、全材料粒子に対して第2の金属酸化物粒子の含有量が5〜55重量%の範囲、好ましくは10〜55重量%の範囲、より好ましくは10〜50重量%の範囲となるように行う。
【0032】
触媒コート層をガス拡散性に優れた多孔構造とする場合、スラリーにさらに繊維状有機物を加える。繊維状有機物の量は、触媒コート層を前述したような空隙率とするためには、スラリー中に含まれる金属酸化物100重量部に対して0.5〜9.0重量部の範囲の量で加えることが好ましい。繊維状有機物としては、スラリーを基材に塗布した後の加熱工程により除去可能な物質であれば特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、セルロース繊維が挙げられる。その中でも、加工性と焼成温度のバランスの観点から、PET繊維及びナイロン繊維からなる群から選択される少なくとも1種のものを用いることが好ましい。触媒スラリーにこのような繊維状有機物を含有させ、その後の工程において繊維状有機物の少なくとも一部を除去することにより、繊維状有機物の形状と同等形状の空隙を触媒コート層内に形成することが可能となる。このようにして調製した空隙は排ガスの拡散流路となり、高ガス流量の高負荷領域においても優れた触媒性能を発揮させることができる。
【0033】
繊維状有機物は、平均繊維径が1.7〜8.0μmの範囲内であることが好ましい。平均繊維径が小さすぎると、有効な高アスペクト比細孔が得られないため触媒性能が不十分となり、他方、大きすぎると、触媒コート層の厚さが増大することで圧力損失が増大し燃費悪化の原因となるが、上記範囲ではそのような問題は生じない。触媒性能とコート厚さのバランスの観点から、繊維状有機物の平均繊維径は、2.0〜6.0μm、特に2.0〜5.0μmの範囲内であることが好ましい。
【0034】
また、繊維状有機物は、平均アスペクト比が9〜40の範囲内であることが好ましい。平均アスペクト比が小さすぎると、細孔の連通性が不十分なためガス拡散性が不足し、他方、大きすぎると、拡散性が大きすぎることにより触媒活性点と接触せずにコート層を素通りするガスの割合が増え十分な触媒性能が得られないが、上記範囲ではそのような問題は生じない。繊維状有機物の平均アスペクト比は、ガス拡散性と触媒性能のバランスの観点から、9〜30、特に9〜28の範囲内であることが好ましい。なお、繊維状有機物の平均アスペクト比は「平均繊維長/平均繊維径」と定義する。ここで、繊維長とは繊維の始点と終点を結ぶ直線距離とする。平均繊維長は、無作為に50以上の繊維状有機物を抽出し、これら繊維状有機物の繊維長を測定して平均することによって求めることができる。また、平均繊維径は、無作為に50以上の繊維状有機物を抽出し、これら繊維状有機物の繊維径を測定して平均することによって求めることができる。
【0035】
上述のようにして調製したスラリーは、従来公知の方法に従って基材に塗布する。塗布方法としては、基材を触媒スラリーに浸漬させて塗布する方法(浸漬法)、ウォッシュコート法、触媒スラリーを圧入手段により圧入する方法などが挙げられる。スラリーを塗布した基材を乾燥および焼成することにより、排ガス浄化用触媒が得られる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
1.触媒の調製
(1)比較例1:Rh(0.2)/ACZ+Al
硝酸ロジウム水溶液を用い、含浸法により、Rhをアルミナ−セリア−ジルコニア複合酸化物材(30重量%のAl、20重量%のCeO、44重量%のZrO、2重量%のNd、2重量%のLaおよび2重量%のYからなる複合酸化物材;以下「ACZ材」と称する:第一稀元素化学工業製)に担持させたRh/ACZ材を調製した。担持後の粒子径は約200μmであった。なお、本明細書の各実施例および比較例に記載の粒径の測定には、いずれもレーザー回折粒度分布測定装置LA920(HORIBA製)を用いた。
【0038】
次に、そのRh/ACZ材と、1重量%のLaを含有する複合化Al材(初期二次粒子径D50=30μm;以下、単に「Al材」と称する:サソール製)およびAl系バインダーを蒸留水に撹拌しながら加えて懸濁し、スラリーを調製した。得られたスラリーについて、全材料粒径D50が所定の値となるよう、湿式ミリングを行った。
【0039】
容量875ccのコージェライト製のハニカム構造基材(600セル、六角状、壁厚2mil)に得られたスラリーを流し込み、次いでブロアーで不要分を吹き払い、基材壁面をコーティングした。コーティングには、基材容量に対してRhが0.2g/L、Al材が50g/L、およびRh/ACZ材が130g/L含まれるようにした。コーティング後、120℃の乾燥機で2時間水分を除去した後、500℃の電気炉で2時間の焼成を行って触媒を得た。
【0040】
(2)比較例2:Rh(0.2)/ACZ+Al
比較例1と同様にしてRh/ACZ材を調製した。担持後の粒子径は約200μmであった。別途、Al材とAl系バインダーを蒸留水に撹拌しながら加えて懸濁し、スラリーを調製した。得られたスラリーについて、最終的に得られるスラリーの全材料粒径D50が所定の値となるよう、湿式ミリングを行った。そこに、予め湿式ミリングにより二次粒子径D50が所定の値となるようにしたRh/ACZ材を加えた。
【0041】
比較例1と同じ基材に得られたスラリーを流し込み、次いでブロアーで不要分を吹き払い、基材壁面をコーティングした。コーティングに含まれる各材料の量は比較例1と同一になるようにした。コーティング後、120℃の乾燥機で2時間水分を除去した後、500℃の電気炉で2時間の焼成を行って触媒を得た。
【0042】
(3)実施例1〜2および比較例3:Rh(0.2)/ACZ+Al
比較例1と同様にしてRh/ACZ材を調製した。担持後の粒子径は約200μmであった。次に、そのRh/ACZ材とAl系バインダーを蒸留水に撹拌しながら加えて懸濁し、スラリーを調製した。得られたスラリーについて、最終的に得られるスラリーの全材料粒径D50が所定の値となるよう、湿式ミリングを行った。そこに、予め湿式ミリングにより二次粒子径D50が所定の値となるようにしたAl材を加えた。
【0043】
比較例1と同じ基材に得られたスラリーを流し込み、次いでブロアーで不要分を吹き払い、基材壁面をコーティングした。コーティングに含まれる各材料の量は比較例1と同一になるようにした。コーティング後、120℃の乾燥機で2時間水分を除去した後、500℃の電気炉で2時間の焼成を行って触媒を得た。
【0044】
(4)比較例4〜7および9〜11:Rh(0.15)/ACZ+Al[造孔材使用]
比較例1と同様にしてスラリーを調製し、得られたスラリーについて、全材料粒径D50が所定の値となるよう、湿式ミリングを行った。そこに、断面の直径3μm、長さ50μmのPET製繊維である造孔材3重量%を添加した。
【0045】
比較例1と同じ基材に得られたスラリーを流し込み、次いでブロアーで不要分を吹き払い、基材壁面をコーティングした。コーティングには、基材容量に対してRhが0.15g/L、複合化Al材およびRh/ACZ材が下記の表1に示される量で含まれるようにした。コーティング後、120℃の乾燥機で2時間水分を除去した後、500℃の電気炉で2時間の焼成を行って触媒を得た。
【0046】
(5)比較例8:Rh(0.15)/ACZ+Al
スラリーに造孔材を添加しない以外は、比較例4〜7および9〜11と同様の工程により触媒を得た。
【0047】
(6)実施例3〜10および比較例12〜13:Rh(0.15)/ACZ+Al[造孔材使用]
比較例1と同様にしてRh/ACZ材を調製した。担持後の粒子径は約200μmであった。そのRh/ACZ材とAl系バインダーを蒸留水に撹拌しながら加えて懸濁し、スラリーを調製した。得られたスラリーについて、最終的に得られるスラリーの全材料粒径D50が所定の値となるよう、湿式ミリングを行った。そこに、予め湿式ミリングにより二次粒子径D50が所定の値となるようにしたAl材と、断面の直径3μm、長さ50μmのPET製繊維である造孔材3重量%を添加した。
【0048】
比較例1と同じ基材に得られたスラリーを流し込み、次いでブロアーで不要分を吹き払い、基材壁面をコーティングした。コーティングには、基材容量に対してRhが0.15g/L、複合化Al材およびRh/ACZ材が下記の表1に示される量で含まれるようにした。コーティング後、120℃の乾燥機で2時間水分を除去した後、500℃の電気炉で2時間の焼成を行って触媒を得た。
【0049】
【表1】
【0050】
2.評価
(1)耐久試験
各排ガス浄化用触媒をV型8気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、触媒床温1000℃で50時間にわたり、リッチ、ストイキおよびリーンの各雰囲気の排ガスを一定時間ずつ繰り返して流すことにより行った。
【0051】
(2)高Ga条件下での浄化性能評価
耐久試験後の各排ガス浄化用触媒に空燃比(A/F)14.4の排ガスを供給し、高Ga条件(吸入空気量Ga=35g/s)での昇温特性(〜500℃)を評価し、NOx浄化率が50%となった温度(T50−NOx)を測定し、触媒活性の指標として評価した。また、450℃定常状態でのNOx浄化率(高負荷時NOx浄化率)を算出し、ガス拡散律速域での浄化性能の指標として評価した。
【0052】
(3)圧力損失の測定
各触媒に、室温下、7m/分の流速で空気を流し、背圧から圧力損失を算出してコート層の厚さの指標とした。
【0053】
3.結果
(1)触媒コート層のSEM観察
図1に、比較例1および実施例1で得られた触媒の触媒コート層断面のSEM像を示す。比較例1のコート層(a)ではRh/ACZ材とAl材が同様の粒径を有しているのに対し、実施例1のコート層(b)ではAl材の粒径が小さくなっている一方でRh/ACZ材の粒径は大きく微粉が少ないこと、および比較例1と比べてコート層が薄くなっていることを確認することができた。
【0054】
(2)触媒評価結果
表2に各触媒の評価結果を示す。
【0055】
【表2】
【0056】
図2〜4は、実施例1〜2および比較例1〜3の各触媒のAl材二次粒子径D50と、T50−NOx、高負荷時NOx浄化率および圧力損失の関係をそれぞれ示すグラフである。Al材二次粒子径D50を3μm以下とした実施例1および2の触媒は、比較例1〜3の触媒と比較して耐久性能に優れていた。また、圧力損失が低いことから、コート層の厚さが低減されていることが推察された。
【0057】
なお、比較例2の触媒ではAl材の粒径が比較的大きい一方で全材料粒径は他の比較例および実施例と同等であり、ACZ材の粒径が他よりも小さくなっている。比較例2の触媒では、コート層の厚さは低減されていることが低い圧力損失から確認することができるが、耐久性能については他よりも劣っているとの結果が得られた。このことは、触媒金属であるRhを担持したACZ材の粒径の低減が耐久性能の低下を招いたことを示唆している。
【0058】
図5〜7は、実施例3〜7および比較例4〜7の各触媒の全材料二次粒子径D50と、T50−NOx、高負荷時NOx浄化率および圧力損失の関係をそれぞれ示すグラフである。Al材二次粒子径D50が3μm以下である実施例3〜7の触媒は、同等の全材料二次粒子径D50を有する比較例4〜7の触媒よりも耐久性能に優れており、圧力損失も低かった。実施例3〜7の触媒の優位性は全材料二次粒子径D50が少なくとも2μm以上、特に3μm以上であって、12μm以下、特に11μm以下の領域で確認することができた。なお、造孔材の使用の有無のみで相違する比較例7および8について高負荷時NOx浄化率を比較すると、造孔材の使用が高負荷時の浄化性能に大きな影響を与えていることがわかる。
【0059】
図8および9は、実施例4および8〜11ならびに比較例7および9〜12の各触媒のコート層全体に対するAl材の割合(重量%)と、T50−NOxおよび高負荷時NOx浄化率の関係をそれぞれ示すグラフである。Al材の割合は、コート層全体に対して5重量%未満であると剥離などが生じるためコーティングを適切に行うことができないが、それより多い5重量%、特に10重量%から、55重量%以下の範囲において、耐久性能の向上を確認することができた。なお、Al材の割合が55重量%より高い領域では、Al材の粒径を小さくしたことによる耐熱性低下の影響が触媒全体に及んだことにより耐久性が低下したことが推察された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9