特許第6426691号(P6426691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6426691
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】数値制御装置
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/14 20060101AFI20181112BHJP
   G05B 19/19 20060101ALI20181112BHJP
   B30B 15/28 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   B30B15/14 K
   G05B19/19 M
   B30B15/14 H
   B30B15/28 K
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-250027(P2016-250027)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-103201(P2018-103201A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2018年1月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大西 優輝
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−136060(JP,A)
【文献】 特表2009−505834(JP,A)
【文献】 特開2001−273037(JP,A)
【文献】 特開平10−249597(JP,A)
【文献】 特開2016−177513(JP,A)
【文献】 特開2008−049372(JP,A)
【文献】 特開2015−205474(JP,A)
【文献】 特開2009−226451(JP,A)
【文献】 特開2003−230996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/14
B30B 15/28
G05B 19/19
H02P 5/00−5/753
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力指令値に応じて制御される第1のモータ及び第2のモータと、少なくとも前記第1のモータ及び前記第2のモータにより駆動されるテーブルと、を備えた駆動装置を制御する数値制御装置であって、
前記第1のモータ及び前記第2のモータそれぞれの位置を検出する状態検出部と、
前記第1のモータ及び前記第2のモータそれぞれについて、圧力と位置との関係を示す補正ゲインを記憶する補正ゲイン記憶部と、
前記第1のモータ及び前記第2のモータの位置にズレがある場合に、前記補正ゲインに基づいて前記第1のモータ及び前記第2のモータに与えられる前記圧力指令値を補正する補正指令部と、を有し、
前記第1のモータ及び前記第2のモータに与えられる前記圧力指令値の総和と、前記第1のモータ及び前記第2のモータに与えられる前記補正後の前記圧力指令値の総和と、が等しいことを特徴とする
数値制御装置。
【請求項2】
前記補正ゲインを算出する補正ゲイン算出部をさらに有することを特徴とする
請求項1記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記補正指令部は、前記第1のモータの位置よりも前記第2のモータの位置のほうが駆動方向に進んでいる場合に、前記第1のモータの圧力指令値を増加させ、前記第2のモータの圧力指令値を減少させる補正を行うことを特徴とする
請求項1又は2記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記補正指令部は、前記第1のモータの位置よりも前記第2のモータの位置のほうが駆動方向に進んでいる場合に、前記第1のモータの圧力指令値のみを増加させ、前記第2のモータの圧力指令値を維持する補正を行うことを特徴とする
請求項1又は2記載の数値制御装置。
【請求項5】
前記補正指令部は、前記第1のモータの位置よりも前記第2のモータの位置のほうが駆動方向に進んでいる場合に、前記第1のモータの圧力指令値を維持し、前記第2のモータの圧力指令値のみを減少させる補正を行うことを特徴とする
請求項1又は2記載の数値制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は数値制御装置に関し、特に複数モータ駆動テーブルの平行を維持して圧力制御で駆動を行う数値制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のモータでテーブルを駆動する駆動装置が知られている。例えば、近年のプレス加工装置等においては、ワークをプレスするのに十分な圧力を発生させるため、複数のモータでテーブルを駆動してプレスする方式が主流となってきている。図1に、このようなプレス加工装置の一例を示す。ボールねじにより連結された上テーブルと下テーブルとの間に上金型及び下金型が備えられ、金型の間にワークが配置される。上テーブルは、複数のモータ(ここでは第1のモータ及び第2のモータとする)によりZ方向に駆動され、金型によってワークをプレスする。上テーブルの上に設置されたモータは、ベルトによりボールねじに連結されており、モータの駆動力とモータの自重とによりZ方向の荷重を発生させる。
【0003】
プレス加工装置をはじめとする駆動装置の制御方式として、位置制御と圧力制御とがある。位置制御は、テーブルの位置を検出し、位置をフィードバックすることでプレスを制御する。一方、圧力制御は、力センサによりテーブルにかかる外力を検出し、外力をフィードバックすることでプレスを制御する。図2に、これら2つの制御方式の特性を示す。図2左図に示すように、位置制御では、時間に対する位置の変位を指令することができるが、その間の圧力の変化を制御することができない。換言すれば、位置の再現性があるが、圧力の再現性にはバラツキがある。そのため、ワークにかかる圧力がオーバシュート、すなわち圧力がかかりすぎることがある。オーバシュートは、製造品の品質不良の原因となる。一方、図2右図に示すように、圧力制御では、時間に対する圧力の変化を指令することができるが、その間の位置の変化を制御することができない。換言すれば、圧力の再現性があるが、位置の再現性にはバラツキがある。圧力制御では、オーバシュートは発生しにくい。プレス加工はつまるところ外力による加工であるから、位置ではなく外力、つまり圧力を制御するほうが、製造品の品質は一定となる。つまり、一般に圧力制御のほうが製造品の品質が良い。
【0004】
一方、圧力制御では位置による制御を行わないため、複数のモータでテーブルを駆動する場合、それぞれのモータ間で位置のズレが発生し、上テーブルが傾くことがあるという問題がある。位置制御を行っている場合であれば、複数のモータでテーブルを駆動する場合であっても平行を維持しつつテーブルを押し下げることができる。しかしながら、圧力制御の場合は、モータの位置は圧力に依存するため、均等にテーブルが駆動するとは限らず、結果として上テーブルが傾くことがあり得る。もし上テーブルと下テーブルとが平行でないと、製造品の加工不良率が上がったり、金型寿命を縮めてしまったりといった悪影響が生じる。図3に、圧力制御において上テーブルが傾いてしまう典型的なケースを示す。図3左図のようにワークの設置位置がテーブルの端によっている場合や、図3右図のようにワーク上面が水平でないなど傾きが生じやすいワーク形状である場合には、テーブルの平行が維持できない可能性が高くなる。
【0005】
特許文献1には、移動金型と固定金型との間隔を測定する間隔センサをラム軸毎に設け、ラム軸に対する移動金型の傾斜を解消するようにサーボモータに位置指令を出して制御する装置が記載されている。特許文献2には、スライドの左右で荷重の差分を検出したときは、左右のサーボモータに位置指令を出して回転数を制御することでスライドの傾斜を解消する装置が記載されている。特許文献3には、複数のサーボ軸の位置偏差すなわち目標位置と位置フィードバック値との偏差を揃えるように位置指令を補正することによりテーブルの傾きを防止する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−205474号公報
【特許文献2】特開2009−226451号公報
【特許文献3】特開2003−230996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1乃至3記載の構成はいずれも位置制御を前提としており、圧力制御に適用できない。加えて、特許文献1の構成は、間隔センサを新たに設ける必要があるという問題がある。また、特許文献1及び2は、テーブルの傾きを解消するためのサーボモータに指令する移動量やゲインの算出方法を具体的に開示していない。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、複数モータ駆動テーブルの平行を維持した圧力制御による駆動を行うことができる数値制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施の形態にかかる数値制御装置は、圧力指令値に応じて制御される第1のモータ及び第2のモータと、少なくとも前記第1のモータ及び前記第2のモータにより駆動されるテーブルと、を備えた駆動装置を制御する数値制御装置であって、前記第1のモータ及び前記第2のモータそれぞれの位置を検出する状態検出部と、前記第1のモータ及び前記第2のモータそれぞれについて、圧力と位置との関係を示す補正ゲインを記憶する補正ゲイン記憶部と、前記第1のモータ及び前記第2のモータの位置にズレがある場合に、前記補正ゲインに基づいて前記第1のモータ及び前記第2のモータに与えられる前記圧力指令値を補正する補正指令部と、を有し、前記第1のモータ及び前記第2のモータに与えられる前記圧力指令値の総和と、前記第1のモータ及び前記第2のモータに与えられる前記補正後の前記圧力指令値の総和と、が等しいことを特徴とする。
【0010】
他の実施の形態にかかる数値制御装置では、前記補正ゲインを算出する補正ゲイン算出部をさらに有することを特徴とする。
【0011】
他の実施の形態にかかる数値制御装置では、前記補正指令部は、前記第1のモータの位置よりも前記第2のモータの位置のほうが駆動方向に進んでいる場合に、前記第1のモータの圧力指令値を増加させ、前記第2のモータの圧力指令値を減少させる補正を行うことを特徴とする。
【0012】
他の実施の形態にかかる数値制御装置では、前記補正指令部は、前記第1のモータの位置よりも前記第2のモータの位置のほうが駆動方向に進んでいる場合に、前記第1のモータの圧力指令値のみを増加させ、前記第2のモータの圧力指令値を維持する補正を行うことを特徴とする。
【0013】
他の実施の形態にかかる数値制御装置では、前記補正指令部は、前記第1のモータの位置よりも前記第2のモータの位置のほうが駆動方向に進んでいる場合に、前記第1のモータの圧力指令値を維持し、前記第2のモータの圧力指令値のみを減少させる補正を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数モータ駆動テーブルの平行を維持した圧力制御による駆動を行うことができる数値制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来のプレス加工装置の一例を示す図である。
図2】位置制御方式及び圧力制御方式を説明する図である。
図3】従来のプレス加工装置の動作の一例を示す図である。
図4】数値制御装置100による傾き補正処理の一例を示す図である。
図5】状態検出部110によるモータ位置の検出処理を示す図である。
図6】補正ゲイン算出部130による補正ゲインの算出処理を示す図である。
図7】補正指令部120による補正圧力の算出処理を示す図である。
図8】数値制御装置100の動作の一例を示す図である。
図9】数値制御装置100の動作の一例を示す図である。
図10】数値制御装置100の構成を示すブロック図である。
図11】数値制御装置100の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
図10は、本発明の実施の形態にかかる数値制御装置100の構成について説明する。数値制御装置100は、公知の駆動装置を制御する装置であって、圧力指令値に従って第1のモータ及び第2のモータそれぞれを駆動し、上テーブルを上下すなわちZ方向に移動させる。本実施の形態では、下向きすなわちZ方向を正の駆動方向とする。数値制御装置100は、状態検出部110、補正指令部120、補正ゲイン算出部130、補正ゲイン記憶部140を有する。数値制御装置100は、典型的には中央処理装置(CPU)、記憶装置及び入出力装置を備え、CPUが所定のプログラムを実行することにより状態検出部110及び補正指令部120、補正ゲイン算出部130、補正ゲイン記憶部140を論理的に実現する。
【0017】
状態検出部110は、複数のモータの位置のズレを検出する処理を行う。圧力制御においても、モータにパルスコーダが内蔵されているため、モータの位置情報を取得することは可能である。状態検出部110は、複数のモータの座標値を随時又は一定時間毎に取得し、それらの差をとることでズレを検出する。
【0018】
補正指令部120は、モータの圧力指令値を、テーブルの傾きを解消するよう補正する処理を行う。補正指令部120は、状態検出部110が検出したズレ量が所定のしきい値を超えた場合に上テーブルが傾いていると判断し、第1のモータ及び第2のモータの元々の圧力指令値を後述の補正ゲインで補正した新たな圧力指令値(補正圧力という)で各モータを駆動する。これにより、上テーブルの傾きを補正し上下テーブルの平行を回復する。具体的な補正圧力の算出方法は後述の実施例で説明する。
【0019】
補正ゲイン算出部130は、補正指令部120が圧力指令値を補正する際の係数すなわち補正ゲインを算出する処理を行う。補正ゲイン算出部130は、座標値と圧力との相関関係に基づいて補正ゲインを算出する。換言すれば、補正ゲインとは、どれだけ圧力をかければどれだけ位置が変化するかを表す係数である。本実施の形態では、補正ゲイン算出部130は、補正指令部120が圧力指令値を補正する直前のモータの動きを基に補正ゲインを算出する。
【0020】
補正ゲイン記憶部140は、補正ゲイン算出部130が算出した補正ゲインを記憶する。なお、補正ゲイン記憶部140は、補正ゲイン算出部130が算出した補正ゲインに代えて、図示しない入力手段等を介してマニュアル設定された補正ゲインを記憶していても良い。
【0021】
図5及び図6を用いて、補正ゲイン算出部130による補正ゲインの算出方法について具体的に説明する。図5は、ある時点で状態検出部110が検出した第1のモータの座標値がZ、第2のモータの座標値がZであったことを示している。図6は、この座標値に至るまでの座標値と圧力との関係を示している。直線は第1のモータ、一点鎖線は第2のモータにおける座標値と圧力との関係をそれぞれ示す。図6に見られるように、座標値と圧力との関係はリニアでないことが多いが、本実施の形態では、補正ゲイン算出部130は、座標値Z,Zの検出時の直前における座標値と圧力との関係を直線で近似し、当該直線により補正ゲインを求める。通常、修正しようとするズレが数mm程度の微小なものであれば、このような近似計算により求められた補正ゲインを使用しても実用上十分な補正を行うことができる。第1のモータの補正ゲインG及び第2のモータの補正ゲインG(単位:N/mm)は、以下の式により求められる。
=(ΔP/ΔZ) ・・・(1)
=(ΔP/ΔZ) ・・・(2)
ここで、ΔP及びΔPは、座標値Z及びZの検出直前における第1のモータ及び第2のモータの単位時間あたりの圧力変化、ΔZ及びΔZは、座標値Z及びZの検出直前における第1のモータ及び第2のモータの単位時間あたりの位置変化である。
【0022】
このように、数値制御装置100は、あくまでも圧力制御を基本としつつ、通常は複数のモータを同じパワーで駆動するが、テーブルが平行でないことを検知した場合には、補正ゲインにより複数のモータのパワーバランスを調整してテーブルの傾きを解消する。
【0023】
<実施例1>
図11のフローチャート及び図4の表を用いて、数値制御装置100の最も典型的な動作について説明する。
S1:各軸の座標値取得
状態検出部110は、一定時間毎に第1のモータ及び第2のモータの座標値を取得する。
好ましくは、状態検出部110は、第1のモータ及び第2のモータの座標値を取得するのと同時に、第1のモータ及び第2のモータに設けられた力センサから圧力値をそれぞれ取得する。そして、検出した第1のモータ及び第2のモータの座標値及び圧力値をそれぞれ直近2回分保存する。ここで保存した座標値及び圧力値はステップS5において使用される。なお、圧力値の検出及び保存は補正ゲイン算出部130が実施しても良い。
【0024】
S2:傾き判定
状態検出部110は、各モータの座標値の差分を計算し、差分が予め定められた閾値を超える場合、補正指令部120にS2以降の処理を実施させる。一方、閾値以下であれば処理を終了する。
いま、図4に示すように、第1のモータのZ方向の座標値が980mm、第2のモータのZ方向の座標値が1020mmであったとする。閾値を1mmとすると、両モータの座標値の差分40mmは閾値を超えているため、S2以降の処理を実施する。
【0025】
S3:平均位置を算出
補正指令部120は、第1のモータ及び第2のモータの座標値の平均を計算する。
図4の例では、平均位置は1000mmである。
【0026】
S4:平均とのズレを算出
補正指令部120は、第1のモータ及び第2のモータの座標値と、S2で計算した平均位置との差分を計算する。
図4の例では、第1のモータにおける平均位置とのズレは上方向に20mm(Z軸方向に−20mm)、第2のモータにおける平均位置とのズレは下方向に20mm(Z軸方向に+20mm)である。
【0027】
S5:補正圧力を算出
補正ゲイン算出部130は、ステップS1で保存された直近2回分の第1のモータ及び第2のモータの座標値及び圧力値を用い、式(1)及び(2)に従って、第1のモータの補正ゲインG及び第2のモータの補正ゲインGを算出する。
図4の例では、補正ゲインは10である。
補正ゲイン記憶部140は、補正ゲイン算出部130が算出した補正ゲインG及びGを記憶する。なお、補正ゲイン記憶部140が予め設定された補正ゲインを記憶している場合は、ステップS5は省略可能である。
【0028】
補正指令部120は、補正ゲイン記憶部140が記憶した補正ゲインを用いて補正圧力を算出する。本実施例では、第1のモータと第2のモータとで補正圧力を同じにする。すなわち、Z方向に進んでいるほうのモータ(図5では第2のモータ)の圧力をPだけ弱め、遅れている方のモータ(図5では第1のモータ)の圧力をPだけ高める。こうして、モータ間の圧力バランスを変化させながら、合計圧力は不変とする。
【0029】
図7を用いて、本実施例における補正圧力の算出方法を説明する。ズレを補正するために必要な第1のモータの移動量は以下の式で求められる。
第1のモータの移動量=ΔZ×(G÷(G+G))
第1のモータの移動量を実現するために必要な補正圧力は、第1のモータの補正ゲイン×第1のモータの移動量により求められる。
第1のモータの補正圧力=ΔZ×((G×G)÷(G+G))
なお、第2のモータの補正圧力も同様に求められるから、
補正圧力=ΔZ×((G×G)÷(G+G)) ・・・(3)
である。
【0030】
図4の例では、第1のモータの補正圧力は+200N、第2のモータの補正圧力は−200Nである。
他の例を用いてさらに説明する。いま、第1のモータの座標値ZLが985mm、第2のモータの座標値ZRが1015mmであるとする。また、第1のモータの補正ゲインGLが10N/mm、第2のモータの補正ゲインGRが5N/mmであるとする。このとき、補正圧力は式(3)により求められる。
補正圧力=(1015−985)×((10×5)÷(10+5))=100N
【0031】
S6:指令圧力を補正
補正指令部120は、圧力指令値を補正圧力で補正して、新たな圧力指令値(補正後圧力指令値という)を生成し、モータに補正後出力値を出力する。すなわち、Z方向に進んでいるほうのモータの圧力指令値から補正圧力を減じ、遅れている方のモータの圧力指令値に補正圧力を加える。
図4の例では、第1のモータの補正後圧力指令値は1000N+200N=1200N、第2のモータの補正後圧力指令値は1000N−200N=800Nである。
他の例についても説明する。いま、第1のモータの座標値ZLが985mm、第2のモータの座標値ZRが1015mm、第1のモータの圧力指令値及び第2のモータの圧力指令値がともに1000Nであり、補正圧力が100Nであるとする。このとき、第1のモータの補正後圧力指令値は1000N+100N=1100N、第2のモータの補正後圧力指令値は1000N−100N=900Nである。
【0032】
補正指令部120は、以上の処理が終了したならば再度ステップS2に遷移し、テーブルの傾きが解消されたか否か判定する。傾きが解消されていれば処理を終了し、以後一定時間毎に傾きチェックを継続する。傾きが解消されていなければ再度ステップS3以降の処理を実行し、さらに傾き補正を行う。このように、傾き補正処理を周期的又は連続的に繰り返すことにより、上テーブルの傾きが解消されて、速やかにテーブルの平行を回復できる。
【0033】
本実施例によれば、補正指令部120が複数のモータの位置情報の差に基づいてテーブルの傾きを検知したならば、補正ゲイン算出部130が算出した補正ゲイン又は予め設定された補正ゲインを用いて、補正指令部120が複数のモータの補正圧力を算出する。このとき、複数のモータの補正圧力の絶対値は同じ値とする。これにより、テーブルの傾きを解消し、プレス加工装置をはじめとする駆動装置における加工不良率を低減できる。また、プレス加工等に用いる金型の寿命低減を抑制できる。また、テーブルの傾きに起因する駆動時の異常音や異常振動を抑制し、機械の寿命低減を抑制できる。
【0034】
<実施例2>
実施例1では、補正指令部120は、第1のモータと第2のモータとの合計圧力が補正前後で同じになるような補正を行った。実施例2では、補正指令部120は、Z方向に先に進んでいる方のモータの圧力指令値はそのまま変更せず、遅れている方のモータの圧力指令値を増加させる補正を行う。かかる補正手法は、例えばスプリングバック(ワークが荷重から開放された際に元の形状に戻ろうとする現象)が強い材料や、完全に塑性変形する材料に好適である。このような材料においては、実施例1のように圧力を減じる補正を行うと、ワークが変形したり跳ねたりすることがあるが、本実施例によればかかる現象を抑制できる。
【0035】
図8を用いて、本実施例における数値制御装置100の動作を説明する。いま、図8左図のように、第2のモータがZ方向に先に進んでおり、第1のモータが遅れているものとする。第1のモータ及び第2の元の圧力指令値が1000Nであったとすると、本実施例の補正指令部120は、遅れている第1のモータの補正後圧力指令値のみを例えば1200Nに増加させる。ここで、補正ゲイン及び補正圧力は実施例1と同様に計算して良いが、補正指令部120は、全てのモータの補正圧力の絶対値を合計し、この合計値を第1のモータに対する補正圧力とすることができる。あるいは、補正指令部120は、第1のモータについてのみ補正後圧力指令値を出力することとしても良い。
【0036】
<実施例3>
実施例3では、補正指令部120は、Z方向に先に進んでいる方のモータの圧力指令値を減じ、遅れている方のモータの圧力指令値はそのまま維持する補正を行う。かかる補正手法は、例えば強い荷重による加工不良を生じやすいデリケートな材料に好適である。
【0037】
図9を用いて、本実施例における数値制御装置100の動作を説明する。いま、図9左図のように、第2のモータがZ方向に先に進んでおり、第1のモータが遅れているものとする。第1のモータ及び第2の元の圧力指令値が1000Nであったとすると、本実施例の補正指令部120は、第2のモータの補正後圧力指令値のみを例えば800Nに減少させる。ここで、補正ゲイン及び補正圧力は実施例1と同様に計算して良いが、補正指令部120は、全てのモータの補正圧力の絶対値を合計し、この合計値を第2のモータに対する補正圧力とすることができる。あるいは、の補正指令部120は、第2のモータについてのみ補正後圧力指令値を出力することとしても良い。
【0038】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。本発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。例えば、上述の実施の形態ではモータの数が2つである場合について主に説明したが、モータの数が3以上の場合にも本発明は適用可能である。すなわち、それぞれのモータについて平均位置とのズレを算出し、当該ズレに基づいて補正ゲイン及び補正圧力を算出することで、3つ以上のモータを有する駆動装置においても傾きを解消することができる。
【0039】
また、上述の実施例においては、補正指令部120は複数のモータの補正圧力を同じとするか、一方を0とするかであったが、複数のモータに補正圧力を傾斜的に分配しても良い。例えば、第1のモータがZ方向に進んでいる場合に、第1のモータの圧力指令値を減少させるための補正圧力の絶対値は、第2のモータの補正圧力を増加させるための補正圧力の絶対値よりも、小さな値であっても良い。この場合、実施例2及び3で説明した実施例1の問題点を抑制しつつ、実施例2及び3よりも短時間でテーブルの傾きを解消することができる。
【符号の説明】
【0040】
100 数値制御装置
110 状態検出部
120 補正指令部
130 補正ゲイン算出部
140 補正ゲイン記憶部
図1
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