特許第6426900号(P6426900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6426900
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】洗浄組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C23G 5/028 20060101AFI20181112BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20181112BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20181112BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   C23G5/028
   C11D7/50
   F01D25/00 R
   F01D25/00 X
   F02C7/00 D
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-51340(P2014-51340)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2014-181405(P2014-181405A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2017年3月7日
(31)【優先権主張番号】61/798,672
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/193,972
(32)【優先日】2014年2月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・ハルス
(72)【発明者】
【氏名】ケーン・クック
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−506944(JP,A)
【文献】 特開平09−003489(JP,A)
【文献】 特表2012−512319(JP,A)
【文献】 特表2013−518140(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/089344(WO,A1)
【文献】 特表2011−520028(JP,A)
【文献】 特開2001−123237(JP,A)
【文献】 特表2008−504478(JP,A)
【文献】 特開2008−297621(JP,A)
【文献】 特開2009−137574(JP,A)
【文献】 特開平04−080386(JP,A)
【文献】 特開2002−030463(JP,A)
【文献】 特表2015−508435(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/096742(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23G 1/00−5/06
C23F 1/00−4/04
C11D 1/00−19/00
F01D 13/00−15/12
F01D 23/00−25/36
F02C 1/00−9/58
F23R 3/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも約50重量%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む溶媒組成物を与え;
(b)チタン及びチタン合金から選択される金属又は金属合金を含む航空機において用いる金属部品を、かかる溶媒組成物と接触させる;
ことを含む、航空機において用いる金属部品を洗浄する方法。
【請求項2】
接触工程がかかる溶媒組成物をかかる金属部品に噴霧することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
接触工程がかかる金属部品をかかる溶媒組成物中に浸漬することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
金属部品が接触工程の前に切削油で汚染されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
金属部品が接触工程の後に切削油を実質的に含まない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
溶媒組成物がエタノール又はメタノールの少なくとも1つを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
エタノール及び/又はメタノールが、組成物の約1〜約10重量%の量で組成物中に存在する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
チタン及びチタン合金から選択される金属及び金属合金を含む金属部品を、少なくとも約50重量%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む溶媒組成物と接触させることを含む工程によって航空機エンジンの金属部品を洗浄することを含む、金属部品を含む航空機エンジンを補修又はメンテナンスする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2013年3月15日出願の米国仮出願61/798,672(その全部を参照として本明細書中に包含する)に関連し、その優先権の利益を主張する。
[0002]本発明は、チタンを含む金属部品、並びに幾つかの他の金属及びその合金を含む部品から汚れを除去するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]幾つかの金属部品、特に高応力及び/又は重要性の高い用途において用いられる金属部品に関して用いるために有効な洗浄組成物及び洗浄方法は、しばしば突き止めることが困難である。例えば、航空機のエンジンにおいて用いられる幾つかの重要な金属部品は、チタン又はチタンを含む合金から形成されている。かかる部品は高いレベルの応力及び/又は歪みに通常的に曝されるだけでなく、それらはまた航空機の安全性及び/又は信頼性に対して潜在的に直接的な影響を与えるという意味で重要な部品でもある。下記において記載するもののような他の金属及び金属合金は、しばしば同様の状況において用いられ、これも有効且つ安全に洗浄するのが困難である。
【0003】
[0004]洗浄組成物及び洗浄方法の安全性に関し、かかる組成物及び方法を突き止めることに関連する懸念の1つは、金属の重要な特性の1以上の許容できない変化を引き起こす可能性である。例えば、航空機、特に航空機のジェットエンジンにおいて用いられているチタン部品から汚れを除去するために用いる洗浄組成物及び方法は、洗浄組成物又は洗浄方法に曝す結果として脆性の実質的な増加を起こしてはならない。これまで用いられているハロゲン化化合物がチタンの脆性の増加を引き起こす許容できない傾向のために、かかる金属部品から汚れを除去するためにハロゲン化溶媒を用いてはならないということがこれまで一般的に認められていた。これらの金属部品の重要な用途のために、金属の脆性の比較的小さな増加であっても許容できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0005]したがって、本出願人らは、金属の重要な特性の1以上に悪影響を与えないで、例えば特に金属の脆性に悪影響を与えないで、金属及び金属合金から形成されている幾つかの部品から残渣を除去するのに有効な新規な洗浄溶媒及び洗浄方法に対する必要性を認識するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0006]一形態においては、本発明は、3つの炭素原子を有する少なくとも1種類のHCFOを含む溶媒組成物を与え、金属部品を、その上に含まれる汚れの1以上を除去するのに有効な条件下で溶媒組成物と接触させることを含む、金属又は金属合金から形成されている金属部品を洗浄する方法に関する。本明細書において用いるHFCOという用語は、少なくとも1つの水素、少なくとも1つの塩素、及び少なくとも1つのフッ素置換基を有する化合物を指す。
【0006】
[0007]幾つかの態様においては、このHCFOは、式(I):
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H、F、Cl、及び置換又は非置換のCアルキルからなる群から選択される)
の構造を有する。幾つかの非常に好ましい態様においては、溶媒組成物は、HCFO−1233、更により好ましくは1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)を含み、更により好ましくは少なくとも約50重量%、更により好ましくは少なくとも約75重量%のHCFO−1233、更により好ましくは1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)を含む。溶媒組成物には、HCFOに加えて、好ましくは使用条件下でそれと混和性の共溶媒などの1種類以上の共薬剤を含ませることができる。幾つかの好ましい態様においては、かかる共薬剤が存在し、それとしては、1種類以上のアルコール、更により好ましくは1種類以上のC又はCアルコールが挙げられる。
【0009】
[0008]本発明の一形態においては、本溶媒組成物は、金属部品の少なくとも一部又は表面を、汚染物質を溶媒和し、溶媒組成物の少なくとも一部を金属部品から除去することによってそれを除去することなどによって金属部品から所望の量及びタイプの汚染物質を除去するのに有効な量の本発明による溶媒組成物と接触させる工程を含む金属部品を洗浄する方法において用いる。
【0010】
[0009]本発明の方法及び組成物を用いて好ましく洗浄される部品は、少なくとも部分的に、チタン及びチタン合金;亜鉛及び亜鉛合金、例えば好ましくはアルミニウムのような高亜鉛合金;タングステン及びタングステン合金、例えば好ましくは炭化タングステン;銅及び銅合金、例えば好ましくはアルミニウムのような高銅合金;インコネル−Ni合金;銀及び銀合金、例えば銀ロウ合金;カドミウム及びカドミウム合金、例えば好ましくはカドミウムメッキ構成材及び部品;ステンレススチール、例えば好ましくは440Cステンレススチール;から選択される金属又は金属合金を含む。
【0011】
[0010]幾つかの好ましい態様によれば、本発明にしたがって処理することができる金属合金の代表例である1つのアルミニウム合金は2024−T3の名称によって知られており、その組成を下記に記載する。
【0012】
【表1-1】
【0013】
[0011]幾つかの好ましい態様によれば、本発明にしたがって処理することができる金属合金の代表例である1つのアルミニウム合金は、7075−T6の名称によって知られており、その組成を下記に記載する。
【0014】
【表1-2】
【0015】
[0012]幾つかの好ましい態様によれば、本発明にしたがって処理することができる金属合金の代表例である1つのチタン合金は、6A1−4Vの名称によって知られており、その組成を下記に記載する。
【0016】
【表1-3】
【0017】
[0013]幾つかの好ましい態様によれば、本発明にしたがって処理することができる金属合金の代表例である1つのマグネシウム合金は、AZ31B−H24の名称によって知られており、その組成を下記に記載する。
【0018】
【表1-4】
【0019】
[0014]
[0015]更なる有利性及び態様は、本明細書に与える開示に基づいて当業者に容易に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0016]本発明の目的のためには、HCFOは、任意の炭素に結合している塩素及びフッ素原子を有し、炭素−炭素結合のいずれか1つが二重結合である任意のヒドロハロカーボンであってよい。同様に、HFOは、任意の炭素に結合しているフッ素原子を有し、炭素−炭素結合のいずれか1つが二重結合である任意のヒドロハロカーボンである。
【0021】
[0017]幾つかの形態においては、本発明のHCFO及びHFO溶媒としては、下記の式(B):
XCF3−z (B)
(式中、Xは、C、C、C、又はCの不飽和で置換又は非置換の基であり、それぞれのRは、独立してCl、F、Br、I、又はHであり、zは1〜3である)
によって一般的に表すことができる1種類以上のC〜Cフルオロアルケン又は1種類以上のC、C、又はCフルオロアルケンが挙げられる。幾つかの態様においては、本発明のフルオロアルケンは少なくとも4つのハロゲン置換基を有し、その少なくとも3つはFであり、更により好ましくはそのいずれもBrではない。更なる態様においては、式Bの化合物は、それぞれの非末端不飽和炭素がフッ素置換基を有する化合物、好ましくは3炭素の化合物を含む。
【0022】
[0018]好適なHCFO及びHFOはまた、式(I):
【0023】
【化2】
【0024】
(式中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、及びC〜Cアルキル、少なくともCのアリール、特にC〜C15アリール、少なくともCのシクロアルキル、特にC〜C12シクロアルキル、並びにC〜C15アルキルアリールからなる群から選択され、場合によっては少なくとも1つのF又はClで置換されている)
の構造を有する1種類以上の化合物で表すこともでき、ここで式(I)は少なくとも1つのF、及び好ましくは少なくとも1つのClを含む。
【0025】
[0019]好適なアルキルとしては、メチル、エチル、及びプロピルが挙げられるが、これらに限定されない。好適なアリールとしては、フェニルが挙げられるがこれに限定されない。好適なアルキルアリールとしては、メチル、エチル、又はプロピルフェニル;ベンジル;メチル、エチル、又はプロピルベンジル;エチルベンジルが挙げられるが、これらに限定されない。好適なシクロアルキルとしては、メチル、エチル、又はプロピルシクロヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。アリールに(オルト、パラ、又はメタ位において)結合している代表的なアルキル基は、C〜Cアルキル鎖を有していてよい。式(I)の化合物は、好ましくは線状化合物であるが、分岐化合物は排除されない。
【0026】
[0020]かかる溶媒化合物の非限定的な例としては、式:CCl(HCFO−1233)、C(HFO−1336)、CFCF=CFCFCFCl、及びCFCCl=CFCFCFを有する化合物、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
[0021]「HCFO−1233」又は「1233」という用語は、本明細書においては全てのモノクロロトリフルオロプロペンを指すように用いる。モノクロロトリフルオロプロペンの中には、2−クロロ−1,1,1−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、及び1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)が含まれる。HCFO−1233zdという用語は、本明細書においては、それがシス形態であるか又はトランス形態であるかに関係なく1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを指すように包括的に用いる。「シス−HCFO−1233zd」及び「トランス−HCFO−1233zd」という用語は、本明細書においては、それぞれ1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのシス及びトランス形態を示すように用いる。したがって、「HCFO−1233zd」という用語は、シス−HCFO−1233zd(HCFO−1233zd(Z)とも呼ばれる)、トランス−HCFO−1233zd(HCFO−1233zd(E)とも呼ばれる)、並びにこれらの全ての組み合わせ及び混合物をその範囲内に包含する。
【0028】
[0022]詳細な研究、試験、及び分析を行った結果、本出願人らは、1233zd(E)及び1233zd(Z)の性能は、本明細書に記載する溶媒洗浄方法に関して用いると、及び溶媒組成物中で用いると予期しなかったが非常に有利な特性を与えることを見出した。したがって、本発明の方法及び組成物は、広い形態においては、ハロゲン化オレフィンが、1233zd(E)又は1233zd(Z)のいずれかから実質的に構成され、又は好ましくは幾つかの態様においてはこれらから構成され、これらの2つの異性体の全ての割合及び配合は互いに対するものである組成物を包含する。
【0029】
[0023]本発明による部品の洗浄が、金属部品内に含まれるか、又はその中に埋封されているか、或いは他の形態でそれと関係している比較的小さい間隙又は空間を洗浄することを含み、したがってかかる洗浄は比較的低い表面張力の溶媒組成物が必要であるものなどの幾つかの好ましい態様においては、組成物は少なくとも多少の割合の1233zd(E)を含むことが好ましく、これは、この材料は12.7ダイン/cmの非常に低い表面張力及び25のカウリ・ブタノール値を有するからである。その結果、これは、狭い空間に浸透させる必要がある用途において用いるために優れており、印刷回路基板の表面実装下などを洗浄することができるであろう。他方において、1233zd(Z)は、それを多くの用途において魅力的にする沸点及び気化熱など(しかしながらこれらに限定されない)のような他の特性を有する。したがって、本出願人らは、1233zd(Z)及び1233zd(E)の両方を含む幾つかの溶媒組成物が有益である可能性があると考える。例として、下表1における濃度範囲(1233zdの全量を基準とする)は、本発明の種々の溶媒洗浄の形態において有用性を有すると考えられる。
【0030】
【表1-5】
【0031】
[0024]
[0025]本発明の幾つかの形態によれば、溶媒組成物にはまた、本明細書に規定する用途の1以上に関して特に適合させることができる1種類以上の共薬剤又は共溶媒を含ませることもできる。一形態においては、共薬剤/共溶媒はアルコールであり、これは本明細書で議論する洗浄用途を促進するのに有効か又は十分な任意の量で与えることができる。本明細書において用いる「アルコール」又は「アルコール共溶媒」という用語には、HFO/HCFO溶媒中に可溶のアルコール含有化合物の任意の1つ又は組み合わせが含まれる。かかるアルコールは、幾つかの非限定的な態様においては、1〜5個の間の炭素を有する1以上の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭素部分を含んでいてよい。更なる態様においては、アルコールは1〜3個の間の炭素を含んでいてよい。更なる態様においては、アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、これらの異性体若しくは組み合わせが挙げられる。
【0032】
[0026]アルコールの有効量とは、本発明の溶媒−アルコール組成物によって広範囲の基材から汚れを洗浄及び/又は排除する上記のような任意の量を含んでいてよい。この目的のために、有効量は用途によって広く変化する可能性があり、これは当業者に容易に明らかになるであろう。一形態においては、用いる溶媒及び共溶媒のアルコールの有効量は、洗浄する基材の表面から汚れ又はデブリスを除去する任意の量であってよい。アルコールの有効量は、HCFO又はHFOの撥汚能力を任意の程度に得るために必要な任意の量である。非限定的な例の目的で、用いるアルコールの量は、溶媒組成物の全重量を基準として約0.1〜約50重量%又は約1〜約30重量%の間の任意の量であってよい。
【0033】
[0027]本溶媒組成物及び方法にしたがって洗浄する部品を接触させる方法は広く変化させることができ、広範にはかかる部品を洗浄するための当業者に公知の全てのかかる接触方法及びメカニズムを、本明細書に含まれる教示を考慮して本発明にしたがって用いるように適合させることができる。例として、金属部品は、組成物の容器内に浸漬するか、組成物を含む蒸気空間内に浸漬するか、エアゾール又は他の噴霧形態で組成物を噴霧するか、及びこれらの任意の組み合わせを行うことができる。洗浄組成物を噴霧することを含む接触工程を用いる幾つかの好ましい態様においては、噴射剤として溶媒組成物の蒸気圧を用いて噴霧洗浄を行うことができ、或いは別の更なる態様においては、好ましくはトランス−1234zeのような別の噴射剤組成物又は化合物を加えて噴霧プロセスを支援することができる。窒素又は二酸化炭素のような他の加圧ガスを用いて本発明による溶媒組成物の噴霧を支援することもできることが認められるであろう。
【0034】
[0028]液相の本組成物中に基材を完全に浸漬することは、金属部品の全露出表面と組成物との間の密な接触のための機会を最大にするので、多くの態様において好ましい。幾つかの態様においては、接触時間は約10分間〜30分間であるが、特定の用途に応じてより長い時間又はより短い時間を用いることができることが理解されるであろう。
【0035】
[0029]接触温度も、本発明による溶媒組成物の沸点など(しかしながらこれに限定されない)の特定の用途に関連する多くのファクターによって広く変化させることができる。一般に、温度はほぼかかる沸点以下である。本発明による方法の好ましい形態においては、接触工程に続いて、洗浄する部品を溶媒組成物組成物との接触から外して、それによって本方法によって除去することを意図している汚れ、残渣、又は汚染物質の少なくとも部分的な除去に影響を与える。
【0036】
[0030]一般に、組成物の除去又は蒸発は、約30秒間未満、好ましくは約10秒間未満行う。大気圧又は大気圧以下の圧力を用いることができ、HCFO又はHFOの沸点より高い温度及び低い温度を用いることができる。場合によっては、更なる界面活性剤を組成物全体の中に所望に応じて含ませることができる。
【0037】
[0031]汚染物質に関しては、一般に、本組成物及び方法は、除去することが望ましい少なくとも1種類の汚染物質の少なくとも一部、幾つかの好ましい態様においては実質的に全部を除去するように適合させることができると意図される。かかる汚染物質としては、以下のもの:塩酸、トリクロロエチレン、四塩化炭素、塩素化切削油、塩化物、フレオン、及びメチルアルコールの1以上を挙げることができ、これらは本発明の溶媒組成物及び/又は方法を用いて少なくとも部分的に除去することができる。幾つかの好ましい態様においては、本発明の組成物及び/又は方法を用いて、切削油及び/又は鉱油のような他のオイルなどを少なくとも部分的に、好ましくは実質的な部分で、更により好ましくは実質的に完全に除去する。
【実施例】
【0038】
[0032]下記は本発明の例であり、限定するようには解釈されない。
[0033]実施例1〜21:
[0034]下表2に示す幾つかの金属についてASTM−F1110サンドイッチ腐食試験にしたがって上表1に開示する1233zdから構成される溶媒組成物を試験することによって、本溶媒組成物及び洗浄方法の、アルミニウム合金をその有利な特性の少なくとも幾つかに悪影響を与えることなく処理する能力を明らかにし、結果を示す。ASTM−F1110にしたがって、複数の金属パネルを、パネルの間に試験材料で飽和した濾紙を配して一緒にサンドイッチした。サンドイッチしたパネルを、暖かい大気空気と暖かい高湿度空気との間に7日間巡回配置した。次に試験片を検査して、試薬水によって引き起こされたものよりもより激しい腐食が試験材料に曝した表面の上で起こったかどうかを求めた。この試験法は、乾燥粒状材料の溶液又は液体材料に関して用いることができる。
【0039】
[0035]
【0040】
【表2-1】
【0041】
【表2-2】
【0042】
[0036]実施例22〜42:
[0037]下表3に示す幾つかの金属についてASTM−F483浸漬腐食試験にしたがって上表1に開示するその組み合わせにしたがって1233zdから構成した溶媒組成物を試験することによって、本溶媒組成物及び洗浄方法の、種々の材料をその有利な特性の少なくとも幾つかに悪影響を与えることなく処理する能力を明らかにし、結果は示す。ASTM−F483によって規定される試験にしたがって、試験する金属/合金を溶媒中に完全に沈めた。次に、合金を溶媒から取り出し、重量損失に関してチェックし、腐食に関して視認検査した。
【0043】
[0038]
[0039]
【0044】
【表3-1】
【0045】
【表3-2】
【0046】
[0040]実施例43〜63:
[0041]ASTM−F945(チタンの応力腐食)にしたがって上表1に開示するその組み合わせにしたがって1233zdから構成した溶媒組成物を試験することによって、本溶媒組成物及び洗浄方法の、チタンをその有利な特性の少なくとも幾つかに悪影響を与えることなく処理する能力を明らかにし、結果を下表4に示す。ASTM−F945の試験法にしたがって、チタンシートに応力をかけて溶媒に曝した。チタンシートを乾燥した後、ASTM−F945に記載される手順にしたがって亀裂に関して検査した。
【0047】
[0042]
【0048】
【表4-1】
【0049】
【表4-2】
【0050】
[0043]実施例64〜84:
[0044]ここに示すように汚染されている表5に示すアルミニウム合金のそれぞれの試験片を与えることによって、航空機エンジン及び/又は航空機の他の部分に関する部品の製造及び/又は補修及び/又はメンテナンスにおいて用いられる金属部品の上に見られる通常の汚染量の切削油を有効に除去する、本溶媒組成物及び洗浄方法の幾つかの態様の能力を明らかにした。上表1に開示する1233zdから構成される溶媒組成物のそれぞれを試験片に噴霧することによって、汚染されている試験片をそれぞれの組成物と接触させ、下表5に報告する結果が達成された。
【0051】
[0045]
【0052】
【表5-1】
【0053】
【表5-2】
【0054】
[0046]実施例85〜105:
[0047]ここに示すように汚染されている表6に示す金属及び金属合金のそれぞれの試験片を与えることによって、航空機エンジン及び/又は航空機の他の部分に関する部品の製造及び/又は補修及び/又はメンテナンスにおいて用いられる金属部品の上に見られる通常の汚染量の切削油を有効に除去する、本溶媒組成物及び洗浄方法の幾つかの態様の能力を明らかにした。上表1に開示する1233zdから構成される溶媒組成物のそれぞれを試験片に噴霧することによって、汚染されている試験片をそれぞれの組成物と接触させ、下表6に報告する結果が達成された。
【0055】
[0048]
【0056】
【表6-1】
【0057】
【表6-2】
【0058】
[0049]実施例106〜126:
[0050]ここに示すように汚染されている表7に示すアルミニウム合金のそれぞれの試験片を与えることによって、航空機エンジン及び/又は航空機の他の部分に関する部品の製造及び/又は補修及び/又はメンテナンスにおいて用いられる金属部品の上に見られる通常の汚染量の切削油を有効に除去する、本溶媒組成物及び洗浄方法の幾つかの態様の能力を明らかにした。上表1に開示する1233zdから構成される溶媒組成物のそれぞれを試験片に含侵させることによって、汚染されている試験片をそれぞれの組成物と接触させ、下表7に報告する結果が達成された。
【0059】
[0051]
【0060】
【表7-1】
【0061】
【表7-2】
【0062】
[0052]実施例127〜147:
[0053]ここに示すように汚染されている表8に示す金属及び金属合金のそれぞれの試験片を与えることによって、航空機エンジン及び/又は航空機の他の部分に関する部品の製造及び/又は補修及び/又はメンテナンスにおいて用いられる金属部品の上に見られる通常の汚染量の切削油を有効に除去する、本溶媒組成物及び洗浄方法の幾つかの態様の能力を明らかにした。上表1に開示する1233zdから構成される溶媒組成物のそれぞれの中に試験片に浸漬することによって、汚染されている試験片をそれぞれの組成物と接触させ、下表8に報告する結果が達成された。
【0063】
[0054]
【0064】
【表8-1】
【0065】
【表8-2】
【0066】
[0055]実施例148:
洗浄組成物が、共溶媒として2.5重量%のメタノール、及び97.5重量%の表1に記載する1233zd組成物のそれぞれを含んでいた他は、実施例1〜148のそれぞれを繰り返した。全てのASTM試験及び溶媒洗浄試験の結果は許容できるものであった。
【0067】
[0056]実施例150:
洗浄組成物が、共溶媒として5重量%のメタノール、及び95重量%の表1に記載する1233zd組成物のそれぞれを含んでいた他は、実施例1〜148のそれぞれを繰り返した。全てのASTM試験及び溶媒洗浄試験の結果は許容できるものであった。
【0068】
[0057]実施例151:
洗浄組成物が、共溶媒として7.5重量%のメタノール、及び92.5重量%の表1に記載する1233zd組成物のそれぞれを含んでいた他は、実施例1〜148のそれぞれを繰り返した。全てのASTM試験及び溶媒洗浄試験の結果は許容できるものであった。
【0069】
[0058]実施例152:
洗浄組成物が、共溶媒として10重量%のメタノール、及び90重量%の表1に記載する1233zd組成物のそれぞれを含んでいた他は、実施例1〜148のそれぞれを繰り返した。全てのASTM試験及び溶媒洗浄試験の結果は許容できるものであった。
【0070】
[0059]実施例153:
洗浄組成物が、共溶媒として2.5重量%のエタノール、及び97.5重量%の表1に記載する1233zd組成物のそれぞれを含んでいた他は、実施例1〜148のそれぞれを繰り返した。全てのASTM試験及び溶媒洗浄試験の結果は許容できるものであった。
【0071】
[0060]実施例154:
[0060]洗浄組成物が、共溶媒として5重量%のエタノール、及び95重量%の表1に記載する1233zd組成物のそれぞれを含んでいた他は、実施例1〜148のそれぞれを繰り返した。全てのASTM試験及び溶媒洗浄試験の結果は許容できるものであった。
【0072】
[0061]実施例155:
[0062]洗浄組成物が、共溶媒として7.5重量%のエタノール、及び92.5重量%の表1に記載する1233zd組成物のそれぞれを含んでいた他は、実施例1〜148のそれぞれを繰り返した。全てのASTM試験及び溶媒洗浄試験の結果は許容できるものであった。
【0073】
[0063]実施例156:
[0064]洗浄組成物が、共溶媒として10重量%のエタノール、及び90重量%の表1に記載する1233zd組成物のそれぞれを含んでいた他は、実施例1〜148のそれぞれを繰り返した。全てのASTM試験及び溶媒洗浄試験の結果は許容できるものであった。
【0074】
[0065]実施例157:
[0066]RMAフラックスを用いて組み立てた、その露出表面上に金を含む構成部品を有する電子基板を用いて電子部品に関する洗浄試験を行った。次に、基板を表1に示す組成物のそれぞれの中に10分間完全に浸漬した。次に基板を取り出し、25倍の倍率で視認検査した。金接点の視認される腐食、又はアセンブリの層間剥離はなかった。
【0075】
[0067]実施例158:
[0068]洗浄組成物が、共溶媒として5重量%のメタノール、及び95重量%の表1に記載する1233zd組成物のそれぞれを含んでいた他は、実施例157を繰り返した。全ての溶媒洗浄試験の結果は許容できるものであった。
【0076】
[0069]実施例159:
[0070]洗浄組成物が、共溶媒として10重量%のメタノール、及び90重量%の表1に記載する1233zd組成物のそれぞれを含んでいた他は、実施例157を繰り返した。全ての溶媒洗浄試験の結果は許容できるものであった。
【0077】
[0071]実施例160:
[0072]洗浄組成物が、共溶媒として5重量%のエタノール、及び95重量%の表1に記載する1233zd組成物のそれぞれを含んでいた他は、実施例157を繰り返した。全ての溶媒洗浄試験の結果は許容できるものであった。
【0078】
[0073]実施例161:
[0074]洗浄組成物が、共溶媒として10重量%のエタノール、及び95重量%の表1に記載する1233zd組成物のそれぞれを含んでいた他は、実施例157を繰り返した。全ての溶媒洗浄試験の結果は許容できるものであった。
【0079】
[0075]実施例162:
[0076]RMAフラックスを用いて組み立てた、その露出表面上に金を含む構成部品を有する電子基板を用いて電子部品に関する洗浄試験を行った。次に、基板を、4重量%のメタノール及び96重量%のトランス−1233zdの混合物で示される組成物のそれぞれの中に10分間完全に浸漬した。次に基板を取り出し、25倍の倍率で視認検査した。金接点の視認される腐食、又はアセンブリの層間剥離はなかった。
【0080】
[0077]かくして本発明の少数の特定の態様を記載したが、種々の変更、修正、及び改良は当業者が容易に想到するであろう。かかる変更、修正、及び改良は、この開示によって明らかとなるように、本明細書には明白に示していないが本記載の一部であると意図され、本発明の精神及び範囲内であると意図される。したがって、上記の記載は例示のみの目的であり、限定するものではない。本発明は特許請求の範囲及びそれに対する均等物において規定されているようにのみ限定される。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
(a)少なくとも約50重量%の1233zdを含む溶媒組成物を与え;
(b)チタン及びチタン合金;亜鉛及び亜鉛合金;タングステン及びタングステン合金;銅及び銅合金;インコネル−Ni合金;銀及び銀合金;カドミウム及びカドミウム合金;ステンレススチール;金及び金合金;並びに銀及び銀合金;から選択される金属又は金属合金を含む航空機において用いる金属部品を、かかる溶媒組成物と接触させる;
ことを含む、航空機において用いる金属部品を洗浄する方法。
[2]
接触工程がかかる溶媒組成物をかかる金属部品に噴霧することを含む、[1]に記載の方法。
[3]
接触工程がかかる金属部品をかかる溶媒組成物中に浸漬することを含む、[1]に記載の方法。
[4]
金属部品が接触工程の前に切削油で汚染されている、[1]に記載の方法。
[5]
金属部品が接触工程の後に切削油を実質的に含まない、[4]に記載の方法。
[6]
溶媒組成物がエタノール又はメタノールの少なくとも1つを更に含む、[2]に記載の方法。
[7]
エタノール及び/又はメタノールが、組成物の約1〜約10重量%の量で組成物中に存在する、[6]に記載の方法。
[8]
金属部品が、アルミニウム、炭化タングステン、銀ロウ合金、及び440Cステンレススチールから選択される金属又は金属合金を含む、[1]に記載の方法。
[9]
金属部品がカドミウムメッキした構成材又は部品を含む、[1]に記載の方法。
[10]
チタン及びチタン合金;亜鉛及び亜鉛合金;タングステン及びタングステン合金;銅及び銅合金;インコネル−Ni合金;銀及び銀合金;カドミウム及びカドミウム合金;ステンレススチール;金及び金合金;並びに銀及び銀合金;から選択される金属及び金属合金を含む金属部品を、少なくとも約50重量%の1233zdを含む溶媒組成物と接触させることを含む工程によって航空機エンジンの金属部品を洗浄することを含む、金属部品を含む航空機エンジンを補修又はメンテナンスする方法。