(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る内燃機関のバランサ装置を自動車用エンジンに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
内燃機関1のシリンダブロック2の下部2aには、
図1及び
図2に示すように、該下部2aの下面に形成された図外の軸受け溝と協働してクランクシャフト3を軸支する軸受部を有するラダーフレーム4が図外のボルトによって固定されていると共に、このラダーフレーム4の下部の外周縁には、内部に潤滑油であるオイルOを貯留するオイルパン5が被嵌されている。
【0013】
前記クランクシャフト3は、
図1及び
図2に示すように、前端部に一体に設けられた支持軸部3aに大径なクランクスプロケット6が取り付けられている。このクランクスプロケット6は、中央部に形成された挿通孔6aを介して前記支持軸部3aに組み付けられていると共に、外周にギア歯部6bを有している。
【0014】
なお、前記クランクシャフト3の前記クランクスプロケット6よりも先端側には、
図2に示すように、前記クランクシャフト3の回転力を図外のタイミングベルトによって外部へ伝達する駆動プーリ7が取り付けられている。
【0015】
そして、前記ラダーフレーム4の下面4aと前記オイルパン5とによって囲まれた空間内には、
図1及び
図2に示すように、内燃機関1の二次振動を抑制するバランサ装置10が収容配置されている。
【0016】
このバランサ装置10は、
図1〜
図8に示すように、前記ラダーフレーム4の下面4aに対して6つの取付ボルト8を介して固定されたハウジング11と、該ハウジング11の内部に回転自在に支持されると共に、機関前後方向に沿って平行配置された駆動側バランサシャフトであるドライブシャフト14及び従動側バランサシャフトであるドリブンシャフト15と、薄肉な円筒状に形成され、前記両シャフト14,15にそれぞれ圧入等により固定されると共に、各外周部に形成された歯部16a,17aが互いに噛合したヘリカル型の駆動側ギア16及び従動側ギア17と、を備えている。
【0017】
前記ハウジング11は、それぞれアルミダイキャストによって半割状に形成されたアッパハウジング12及びロアハウジング13から構成され、この両ハウジング12,13は、8つのボルト9によって上下方向から締結固定されている。
【0018】
前記アッパハウジング12とロアハウジング13は、
図3に示すように、平面矩形状の狭幅部及び拡幅部に形成されて、上下から互いに対向する合わせ個所の外周部に所定幅の枠状デッキ部12a,13aが形成されている。
【0019】
この各枠状デッキ部12a,13aの外周側の所定位置に、前記取付ボルト8を挿通させる6つの挿通孔12e,13eがそれぞれ形成されている。
【0020】
また、前記両ハウジング12,13は、
図3,
図5及び
図6に示すように、拡幅部に前記枠状デッキ部12a,13aを横断するかたちで結合する前後一対の平行な第1,第2横梁デッキ部12b,13b、12c,13cが一体に形成されていると共に、狭幅部の前端側に、前記各横梁デッキ部12b,13b、12c,13cと平行でかつ前記枠状デッキ部12a,13aと結合された短尺な第3横梁デッキ部12d,13dが一体に形成されている。
【0021】
これら第1〜第3横梁デッキ部12b,13b、12c,13c、12d,13dには、前記両ハウジング12,13を結合する前記各ボルト9が挿通する小径な8つのボルト挿通孔12f,13fがそれぞれ形成されている。
【0022】
また、前記ハウジング11には、
図2,
図5〜
図8に示すように、前記第1横梁デッキ部12b,13bと、第2横梁デッキ部12c,13cと、該両デッキ部12b,13b、12c,13cとの間に架設された周壁18とによってウエイト収容室19が隔成されている。
【0023】
このウエイト収容室19の内部には、後述する駆動側カウンターウエイト42及び従動側カウンターウエイト43がそれぞれ回転自在に収容されている。すなわち、前記ウエイト収容室19は、機関前後方向に沿って延びる2つの円筒形状の空間を隣接させたほぼ繭状の内部空間として形成されている。
【0024】
前記周壁18は、前記アッパハウジング12の第1,第2横梁デッキ部12b,12c間の上部壁20と、前記ロアハウジング13の第1,第2横梁デッキ部13b,13c間の下部壁21と、から構成されている。
【0025】
前記上部壁20は、
図4〜
図7に示すように、その上端部外周面に、前記内燃機関1から流下したオイルOを捕集する凹部22が形成されている。この凹部22は、前記上部壁20(前記周壁18)の前記ドライブシャフト14の軸方向のほぼ中央位置に配設されていると共に、前記ドライブシャフト14の上方位置から前記ドリブンシャフト15の上方位置に亘って長溝状に延設されている。
【0026】
そして、前記凹部22の前記両シャフト14,15の上方位置には、前記ウエイト収容室19の内外を連通し、該ウエイト収容室19の内部へ前記凹部22に流入したオイルOを導入する導入部である導入孔23,23がそれぞれ貫通形成されている。
【0027】
また、前記上部壁20は、
図3及び
図7に示すように、前記ドライブシャフト14の径方向の両側端縁に、前記ウエイト収容室19の内部に導入されたオイルOを外部へと導出する導出部である導出孔24,24が、前記上部壁20の前記ドライブシャフト14の軸方向のほぼ全域に亘って貫通形成されている。
【0028】
前記各導出孔24,24は、
図7に示すように、機関停止時における前記オイルパン5内の油面L0の位置よりも高くなるように設定されている。
【0029】
なお、前記上部壁20の内壁面と前記第1,第2デッキ部12b,13bとの結合部は、
図5及び
図6に示すように、それぞれ該各デッキ部12b,13bに向かってなだらかに下り傾斜する断面ほぼ円弧状の面取り部25,25に形成されている。
【0030】
前記下部壁21は、
図5〜
図7に示すように、内周面の前記ドライブシャフト14の軸方向のほぼ中間位置に前記各導入孔23,23を介して導入されたオイルOを捕集する捕集溝26が形成されている。この捕集溝26は、前記下部壁21(前記周壁18)の前記ドライブシャフト14の軸方向の中間位置に配置されていると共に、前記下部壁21の機関巾方向のほぼ全域に亘って一定の溝深さをもって凹設されている。
【0031】
すなわち、前記導入孔23,23と捕集溝26とは、
図5及び
図6に示すように、前記周壁18の前記ドライブシャフト14の軸方向において、ほぼ同一の位置に配設されている。
【0032】
前記ドライブシャフト14は、
図1及び
図2に示すように、前記ハウジング11から突出した前端部14aに、バランサスプロケット27が軸方向から螺着したボルト28によって固定されている。このバランサスプロケット27は、外周にギア歯部27aを有しており、該ギア歯部27aと前記クランクスプロケット6のギア歯部6bとの間には、駆動チェーン29が前記ラダーフレーム4及びバランサ装置10の前端面に設けられたテンショナ30によって張力が付与された状態で巻装されている。
【0033】
これによって、前記クランクシャフト3の回転力が前記駆動チェーン29を介して前記ドライブシャフト14に伝達されるのに伴って、該ドライブシャフト14と前記ドリブンシャフト15とが前記駆動側ギア16と前記従動側ギア17を介して互いに反対方向へ回転されるようになっている。
【0034】
なお、前記両シャフト14,15は、前記クランクシャフト3の1回転当たり2回転するように設定されている。
【0035】
以下、各実施形態においては、文中に特筆する場合を除き、
図1に示すように、前記ドライブシャフト14が図中の時計回りの方向に回転すると共に、前記ドリブンシャフト15が図中の反時計回りの方向に回転するものとして説明を行う。
【0036】
また、前記ドライブシャフト14は、
図3及び
図5に示すように、軸方向の前端側と中央部及び後端側にそれぞれ円柱状の第1〜第3ジャーナル部14b,14c,14dが形成されていると共に、該各ジャーナル部14b〜14dが前記アッパハウジング12とロアハウジング13の第1〜第3横梁デッキ部12b〜13dの対向する位置にそれぞれ形成された第1〜第3軸受凹溝31a,31b、32a,32b、33a,33b及び転がり軸受であるニードルベアリング34,35,36によって回転自在に支持されている。
【0037】
一方、前記ドリブンシャフト15は、
図3に示すように、前記ハウジング11から突出した後端部が二面幅部15aに形成されていると共に、該二面幅部15aを介してオイルポンプ37が連結されている。このオイルポンプ37は、前記オイルパン5の内部に貯留されたオイルOを、前記ドリブンシャフト15の回転力を利用することで吸引し、内燃機関の各摺動部や駆動部へと供給するようになっている。
【0038】
また、前記ドリブンシャフト15は、軸方向の前端側及び中央部に円柱状の第4及び第5ジャーナル部15c,15dが形成されていると共に、該各ジャーナル部15c,15dが前記アッパハウジング12とロアハウジング13の前記第2,第3横梁デッキ部12c〜13dの対向する位置にそれぞれ形成された第4,第5軸受凹溝38a,38b、39a,39b及び転がり軸受であるニードルベアリング40,41によって回転自在に支持されている。
【0039】
前記第1横梁デッキ部12b,13bに設けられた各ニードルベアリング35,40は、その軸方向後端側が前記ウエイト収容室19に臨んで配置される一方、前記第2横梁デッキ部12c,13cに設けられた各ニードルベアリング36,41は、その軸方向前端側が前記ウエイト収容室19に臨んで配置されるようになっている。
【0040】
また、前記ドライブシャフト14の前記ウエイト収容室19と対応する部位、つまり、前記第2ジャーナル部14cと第3ジャーナル部14dとの間の部位には、
図2,
図3,
図5〜
図8に示すように、バランサウエイトである前記駆動側カウンターウエイト42が一体に設けられている。一方、前記ドリブンシャフト15の前記ウエイト収容室19と対応する部位、つまり、前記第4ジャーナル部15cと第5ジャーナル部15dとの間の部位には、同じくバランサウエイトである前記従動側カウンターウエイト43が一体に設けられている。
【0041】
以下、前記駆動側カウンターウエイト42と従動側カウンターウエイト43は、基本構成が同一であるから、駆動側カウンターウエイト42について主として説明する。
【0042】
前記駆動側カウンターウエイト42は、
図3,
図5及び
図7に示すように、前記ドライブシャフト14の軸線を中心として拡径する半円柱状に形成され、その外周面に、前記ドライブシャフト14の軸心を挟んだ両側に形成された2つの平面部42a,42aと、該両平面部42a,42aから前記ドライブシャフト14の円周の片側方向へ張り出した横断面半円弧状のウエイト部42bと、を備えている。
【0043】
また、前記駆動側カウンターウエイト42は、前記ウエイト収容室19の軸方向ほぼ中央位置を基準として前後軸方向へほぼ均等に延出形成されていると共に、
図8に示すように、その軸方向巾W1が、前記ウエイト収容室19に形成された前記導出孔24の前記ドライブシャフト14の軸方向の巾長さW2よりも短尺となるように設定されている。
【0044】
そして、前記ウエイト部42b外周面の軸方向ほぼ中央位置、すなわち、前記ウエイト収容室19の前記捕集溝26と対応する位置には、該捕集溝26の凹形状に沿って突出した突出部44が一体に形成されている。
【0045】
この突出部44は、外周側が前記捕集溝26の内部に収容されてかつ、該捕集溝26の内周面と接触しないように形成されている。すなわち、前記突出部44は、その軸方向巾が、前記捕集溝26の溝巾よりも小さく設定されていると共に、その外径が、前記ドライブシャフト14の軸心から前記捕集溝26の溝底までの長さよりも僅かに短い所定の大きさとなるように設定されている。
【0046】
また、前記突出部44は、
図7及び
図8に示すように、前記ウエイト部42bの円周方向ほぼ全域に亘って延設されていると共に、その円周方向の両側端部に設けられた先端面44a,44aが前記両平面部42a,42aと面一となるように形成されている。
【0047】
前記従動側カウンターウエイト43は、前記ドリブンシャフト15の軸心を挟んだ両側に形成された2つの平面部43a,43aと、該両平面部43a,43aから前記ドリブンシャフト15の円周の片側方向へ張り出した横断面半円弧状のウエイト部43bと、を備えている。
【0048】
また、前記従動側カウンターウエイト43の前記ウエイト部43b外周面の軸方向ほぼ中央位置には、円周方向の両側端部に設けられた先端面45a,45aが前記両平面部43a,43aと面一となるように形成された横断面半円弧形状の突出部45が一体に設けられている。
〔本実施形態の作用〕
したがって、このバランサ装置10によれば、機関が始動されて前記クランクシャフト3が回転駆動すると、前記クランクスプロケット6と駆動チェーン29及びバランサスプロケット27を介して前記ドライブシャフト14が前記クランクシャフト3の2倍の速度で回転するのに伴って、前記ドリブンシャフト15が、前記駆動側ギア16と前記従動側ギア17の噛み合い回転伝達を経て前記ドライブシャフト14と反対方向へ同速度で回転する。
【0049】
これによって、駆動側、従動側のそれぞれのカウンターウエイト42,43も互いに反対方向へ回転しながら各シャフト14,15自体の左右の遠心力をキャンセルし、上下方向にのみ起振力を発生させる。このように、各シャフト14,15の回転に伴い、各カウンターウエイト42,43が回転して起振力を内燃機関に伝達することによって二次振動を抑制する。
【0050】
このとき、前記両シャフト14,15を軸支する各ニードルベアリング34〜36,40,41には、両シャフト14,15の回転を円滑に行うためにオイルOを供給する必要がある。
【0051】
一般に、この各ニードルベアリング34〜36,40,41へのオイルOの供給方法としては、一端部が前記オイルポンプ37に連係され、他端部が前記各ニードルベアリング34〜36,40,41に連係された潤滑油供給油路を形成し、前記オイルポンプ37によって該各ニードルベアリング34〜36,40,41内へオイルOを圧送して供給する、いわゆる強制潤滑が用いられている。
【0052】
しかしながら、この強制潤滑では、前記各ニードルベアリング34〜36,40,41に供給されるオイルOが過剰となり、ニードル間を通過するオイルOが攪拌し、該各ニードルベアリング34〜36,40,41と両シャフト14,15との間のフリクションを増大させてしまい、かえって両シャフト14,15の円滑な回転が抑制されてしまうおそれがあった。
【0053】
そこで、本実施形態では、前記ウエイト収容室19に臨んで配設されたニードルベアリング35,36、40,41に関しては、前記ウエイト収容室19内部に導入したオイルOを、前記両カウンターウエイト42,43によって攪拌することでミスト状や飛沫状とし、これを各ニードルベアリングに供給する、いわゆるミスト潤滑によって潤滑を行うこととした。
【0054】
以下、本実施形態による作用効果は前記バランサ装置10の駆動側と従動側のどちらにおいても同様に得られるものであることから、従動側に基づいて説明を行うものとする。
【0055】
具体的に説明すると、前記内燃機関1から滴下したオイルOは、大部分が前記オイルパン5の底部へ流下して貯留されるものの、前記バランサ装置10のアッパハウジング12上端面に形成された凹部22へ滴下したものにあっては、
図6に示すように、該凹部22に設けられた導入孔23を介してウエイト収容室19の内部へと自重によって導かれ、該ウエイト収容室19下部の捕集溝26に貯留される。
【0056】
そして、捕集溝26にオイルOが貯留された状態で前記従動側カウンターウエイト43が回転すると、該従動側カウンターウエイト43と一体に形成された突出部45の先端面45aがオイルOの油面L1を掻き込むことから、オイルOが攪拌されて発散する。
【0057】
これによって、前記ウエイト収容室19の内部は、ミスト状や飛沫状のオイルOが漂う雰囲気環境となることから、前記各ニードルベアリング40,41は、ミスト状や飛沫状のオイルOによって潤滑されることとなる。
【0058】
したがって、本実施形態における潤滑方法によれば、前記各ニードルベアリング40,41内への過剰なオイルOの供給が抑制されることから、ニードル間の攪拌による抵抗が低減して、フリクションが低減する。よって、前記各ニードルベアリング40,41に対する潤滑性能が向上して、信頼性が確保される。
【0059】
また、前記強制潤滑とは異なり、前記オイルポンプ37を用いることなく潤滑を行っていることから、前記バランサ装置10へ供給する油量を減らすことができ、前記オイルポンプ37の消費動力が下がる為、燃費の向上を図ることが可能となる。
【0060】
さらに、本実施形態では、前記従動側カウンターウエイト43が、前述したオイルOの攪拌機能だけでなく、前記ウエイト収容室19内に滞留した余剰なオイルOを前記オイルパン5へ導出して、前記ウエイト収容室19内の油量の適正化を図る機能をも有している。
【0061】
具体的に説明すると、油面L2に示すように、前記ウエイト収容室19内に滞留する油量が多い場合には、オイルOは、
図7の矢印で示すように、前記従動側カウンターウエイト43の平面部43a及び先端面45aからなる比較広域な面積をもって掻き上げられ、回転力によって前記導出孔24からウエイト収容室19外部のオイルパン5へと押し出される。
【0062】
このとき、前記導出孔24の前記ドライブシャフト14の軸方向の巾長さW2が、前記従動側カウンターウエイト43の平面部43aの軸方向巾W1よりも長尺であることから、平面部43aで掻き上げられたオイルOは、スムーズに導出孔24からオイルパン5内へと導出される。
【0063】
これにより、前記ウエイト収容室19内に多くのオイルOが滞留している場合には、比較的多量のオイルOを導出孔24から導出して少なくすることによって、前記従動側カウンターウエイト43とオイルOとの間に生じるフリクションを速やかに低減させることができる。
【0064】
一方、
図7に示す油面L1のように、前記ウエイト収容室19内に滞留する油量が少ない場合には、前記突出部45の先端面45aを主としてオイルOの攪拌及び導出が行われる。このとき、前記従動側カウンターウエイト43によるオイルOの掻き上げ量の減少に伴って前記各導出孔24からの導出量も少なくなることから、ウエイト収容室19内のオイルOのうち、僅かな余剰分のみがオイルパン5へと導出されることとなる。
【0065】
したがって、本実施形態によれば、前記ウエイト収容室19内の油量が少ない場合には、前記従動側カウンターウエイト43とオイルOとの接触領域が、主として前記突出部45の先端面45aとなることから、前記従動側カウンターウエイト43とオイルOとの間に生じるフリクションを低減することができる。
【0066】
また、前記ウエイト収容室19内のオイルOが過剰に導出されてミスト化や飛沫化に供するオイルOが不足するといった問題も生じにくいことから、前記ウエイト収容室19内にミスト状や飛沫状のオイルOが漂う雰囲気環境を常時形成することが可能となり、これによっても、前記各ニードルベアリング40,41の潤滑性能が向上して信頼性が確保される。
【0067】
なお、ウエイト収容室19内部に導入されるオイルOが常時多量となる場合等にあっては、前記従動側カウンターウエイト43の平面部43aによってオイルOの攪拌及び排出をすることが可能となる。
【0068】
また、本実施形態では、前記捕集溝26及び前記従動側カウンターウエイト43の突出部45を、共に前記ウエイト収容室19の前記ドライブシャフト14の軸方向のほぼ中央位置に配設した。これにより、ミスト状のオイルOが前記ウエイト収容室19の中央部から両側に広がるため、ミストの生成個所が一個所のみであっても各ニードルベアリング40,41の潤滑を均等に行うことができる。また、構造が比較的簡素化されるので、良好な生産性を確保でき、これに伴ってコストの削減を図ることができる。
【0069】
さらに、前記捕集溝26と前記導入孔23に関しても、前記ドライブシャフト14の軸方向においてほぼ同じ位置となるように設けたことから、前記導入孔23から導入されたオイルOの多くが、自重によってそのまま前記捕集溝26へ流下して貯留されることとなるため、ミスト状や飛沫状のオイルOの生成がより効率的となる。
【0070】
また、本実施形態では、前記各導入孔23を、前記アッパハウジング12の上端面の凹部22に形成したことから、ウエイト収容室19の内部へのオイルOの導入効率が向上するため、オイルOのミスト化によるニードルベアリングの潤滑をより確実に行うことができる。
【0071】
さらに、本実施形態では、前記バランサ装置10は、レイアウト性を考慮して前記オイルパン5の内部に収容されているが、前記導出孔24が、機関停止時における前記オイルパン5内の油面L0よりも高い位置となるように設けられている。これにより、前記オイルパン5内のオイルOが前記導出孔24から前記ウエイト収容室19内へ流入(逆流)することがなくなるため、前記ウエイト収容室19内の油量の増加を規制することができる。この結果、オイルOと前記従動側カウンターウエイト43との間に過度なフリクションが生じるのを抑制することができる。
〔第2実施形態〕
図9は第2の実施形態を示し、基本構成は第1の実施形態と同様であるが、前記ウエイト収容室19を構成する周壁18の下部壁21の底面46,46が、前記捕集溝26に向かって下り傾斜状のテーパ面に形成されている点において異なる。
【0072】
したがって、この実施形態によれば、ウエイト収容室19の内部に導入されたオイルOが前記各底面46,46によって前記捕集溝26へと案内されて捕集されることから、オイルOのミスト化がより効率的となり、各ニードルベアリング40,41の潤滑における信頼性が向上される。
〔第3実施形態〕
図10は第3の実施形態を示し、基本構成は第1の実施形態と同様であるが、前記捕集溝26を、前記各ニードルベアリング40,41の近傍位置、つまり前記ウエイト収容室19の前記従動側カウンターウエイト43の軸方向の前後端部にそれぞれ形成した点において異なる。これに伴い、前記従動側カウンターウエイト43の突出部45も、該従動側カウンターウエイト43の軸方向の前後端部にそれぞれ設けられている。
【0073】
したがって、この実施形態によれば、ミスト状や飛沫状のオイルOの生成位置と前記各ニードルベアリング40,41の配設位置とが近いことから、該各ニードルベアリング40,41へより効率的にオイルOを供給することができる。
【0074】
さらに、前記導入孔23に関しては、前記ドライブシャフト14の軸方向において、前記捕集溝26とほぼ同じ位置となるように設けたことから、前記導入孔23から導入されたオイルOの多くが、自重によってそのまま前記捕集溝26へ流下して貯留されることとなるため、ミスト状や飛沫状のオイルOの生成がより効率的となる。
〔第4実施形態〕
図11は第4の実施形態を示し、第3の実施形態の各突出部45,45の外周面を、前記各ニードルベアリング40,41へ向かって下り傾斜する傾斜面47,47に形成したものである。
【0075】
したがって、この実施形態によれば、前記突出部45,45によって攪拌され、ミスト状や飛沫状になったオイルOが、各傾斜面47,47に沿って案内されながら各ニードルベアリング40,41へと導かれることから、該各ニードルベアリング40,41へのオイルOの供給がさらに効率的となる。
〔第5実施形態〕
図12は第5の実施形態を示し、基本構成は第1の実施形態と同様であるが、前記従動側カウンターウエイト43の前記突出部45の外周面に、3つの凹部である攪拌用凹溝48を形成した点において異なる。この各攪拌用凹溝48は、断面矩形状に形成されていると共に、前記突出部45の円周方向ほぼ等間隔位置に配置されている。
【0076】
したがって、この実施形態によれば、前記突出部45の外周面が凹凸形状となり、この凹凸形状によって前記ウエイト収容室19内のオイルOをたたく回数が増え、攪拌回数が増加することから、オイルOのミスト化にかかる効率をより一層向上させることができる。
【0077】
なお、前記攪拌用凹溝48は、
図12では3つとしたが、複数個形成されていれば良い。
〔第6実施形態〕
図13に示す第6の実施形態は、第1の実施形態における前記凹部22を廃止し、前記上部壁20の平坦部へ直接的に前記導入孔23を形成したものである。このため、前記凹部22を設けることで積極的に前記内燃機関1から流下したオイルOを前記ウエイト収容室19内に導入する第1の実施形態に比べて、該ウエイト収容室19内へのオイルOの導入量が減少する。
【0078】
したがって、この実施形態によれば、前記内燃機関1から滴下するオイルOが多い場合であっても、前記ウエイト収容室19内に導入されるオイルOが適量となることから、前記従動側カウンターウエイト43とオイルOとの間に過度なフリクションが生じるのを抑制することができる。この結果、前記従動側カウンターウエイト43に生じる余分な仕事が低減され、燃費が良好なものとなる。
〔第7実施形態〕
図14に示す第7の実施形態は、第1の実施形態における前記凹部22とは逆に、前記上部壁20の上端部外周面から突出する凸部49を形成し、該凸部49に前記導入孔23を形成したものである。このため、前記凸部49が、前記上部壁20の上端面を流れるオイルOの前記導入孔23への到達を遮ることから、第6実施形態にも増して前記ウエイト収容室19内へのオイルOの導入量が減少する。
【0079】
したがって、この実施形態によれば、前記内燃機関1から滴下するオイルOが著しく多い場合であっても、前記ウエイト収容室19内に導入されるオイルOが適量となることから、前記従動側カウンターウエイト43とオイルOとの間に過度なフリクションが生じるのを抑制することができる。
〔第8実施形態〕
図15に示す第8実施形態では、前記導入孔23は、前記アッパハウジング12の前記第1,第2横梁デッキ部12b,12cの近傍、つまり、各ニードルベアリング40,41の近傍位置にそれぞれ形成されていると共に、重力方向下側の各開口縁23a,23aが、断面ほぼ円弧状の面取り部25,25とそれぞれ連接している。
【0080】
また、前記各ニードルベアリング40,41は、前記ウエイト収容室19側の端部が、前記アッパハウジング12の第1,第2横梁デッキ部12b,12cの対向する壁面12g,12hよりも前記ウエイト収容室19の中央寄りに突出するように配置されている。
【0081】
さらに、前記ロアハウジング13の各横梁デッキ部13b,13cは、前記各ニードルベアリング40,41の前記ウエイト収容室19側の端部よりも、該ウエイト収容室19の中央寄りに突出するように配置されている。
【0082】
したがって、この実施形態によれば、前記導入孔23,23から導入されたオイルOは、その多くが前記各実施形態と同様に、前記ウエイト収容室19の下部へと流下し、従動側カウンターウエイト43によって攪拌されることによって各ニードルベアリング40,41のミスト潤滑に供される。
【0083】
その一方で、一部のオイルOは、表面張力によって下流側の各開口縁23a,23aの周囲に残留することとなるが、前記第1,第2横梁デッキ部12b,12cの前記壁面12g,12hが近いことから、その多くが前記上部壁20の内面を伝って該壁面12g,12hへと流動する。
【0084】
特に、この実施形態では、前記各導入孔23,23を、下流側の開口縁23a,23aが前記面取り部25,25と連接するように形成したことから、該各面取り部25,25のなだらかな傾斜面を利用して、より多くのオイルOが前記アッパハウジング12の前記第1,第2横梁デッキ部12b,12cの前記壁面12g,12hへと流れる。
【0085】
そして、この壁面12g,12hに到達したオイルOは、自重によって壁伝いに流下して、前記各ニードルベアリング40,41へと到達し、該ニードルベアリング40,41内に供給されることとなる。
【0086】
すなわち、この実施形態は、前述したミスト潤滑と直接的なオイルの供給による潤滑(以下、直接潤滑と呼称する)とを併用することになるので、より確実に各ニードルベアリング40,41の潤滑を行うことができる。したがって、各ニードルベアリング40,41における潤滑性能の信頼性が一層向上する。
【0087】
また、本実施形態では、前記各ニードルベアリング40,41を、前記アッパハウジング12側の前記壁面12g,12hよりも前記ウエイト収容室19の中央寄りに突出するように配置したことから、前記壁面12g,12hを伝って来たオイルOが前記各ニードルベアリング40,41の周囲にオイルOが供給されやすくなるため、潤滑の信頼性がより向上する。
【0088】
さらに、前記ロアハウジング13の前記第1,第2横梁デッキ部13b,13cを、前記各ニードルベアリング40,41よりも前記ウエイト収容室19の中央寄りに突出するように配置したことから、前記各ニードルベアリング40,41の周囲に供給されたオイルOが流下しにくい。これにより、前記各ニードルベアリング40,41へオイルOが供給されやすくなるため、潤滑の信頼性がさらに向上する。
〔第9実施形態〕
図16及び
図17は第9実施形態を示し、第8実施形態に示す前記アッパハウジング12の前記第1,第2横梁デッキ部12b,12cの前記壁面12g,12hに、前記各導入孔23と連続して設けられ、前記各導入孔23から前記ウエイト収容室19内に導入したオイルOを前記各ニードルベアリング40,41へ案内する案内溝50をそれぞれ形成したものである。
【0089】
具体的に説明すると、この各案内溝50は、上下方向に延びた長溝状に形成され、一端部が前記導入孔23と連通している一方で、他端部が前記各ニードルベアリング40,41を支持する前記第4,第5軸受凹溝38a、39aと連通している。
【0090】
したがって、この実施形態によれば、より多くのオイルOを、前記案内溝50を介して各ニードルベアリング40,41へと直接的に供給することから、直接潤滑の効率が向上されるため、潤滑の信頼性がより一層向上する。
【0091】
なお、第8,第9実施形態では、前述した捕集溝26や突出部45などが廃止されているが、必要に応じて第1〜第7実施形態に示した構成を第8,第9実施形態に適用することも可能である。
〔第10実施形態〕
図18〜
図22は本発明の第10実施形態を示し、前記ハウジング11の前記第2横梁デッキ部12c,13cの後端側がさらに拡張され、該拡張された部位の内部に、第2ウエイト収容室51が設けられている。この第2ウエイト収容室51には、前記両シャフト14,15のそれぞれ後端部に設けられた第2駆動側カウンターウエイト52及び第2従動側カウンターウエイト53が回転自在に収容されている。
【0092】
前記第2駆動側カウンターウエイト52は、
図18に示すように、前記ニードルベアリング36及び第3ジャーナル部14dによって片持ち状態で軸受けされるもので、前記駆動側カウンターウエイト42と同一形状である。また、
図18の二点鎖線で示されるように、前記駆動側カウンターウエイト52は、前記ドライブシャフト14に締結ボルトで固定されている。
【0093】
同様に前記第2従動側カウンターウエイト53も、前記ニードルベアリング41及び第5ジャーナル部15dによって片持ち状態で軸受けされ、前記従動側カウンターウエイト43と同一形状である。また、前記駆動側カウンターウエイト52と同様に、前記従動側カウンターウエイト53も前記ドリブンシャフト15に締結ボルトで固定されている。
【0094】
また、この実施形態における前記各横梁デッキ部12b,13b、12c,13c、12d,13dは、前記ドライブシャフト14の軸方向の巾長さが、前記各ニードルベアリング34〜36,40,41の軸方向巾よりも長尺にそれぞれ形成されている。
【0095】
さらに、前記両シャフト14,15の前記第1,第3及び第5軸受凹溝31a,31b、33a,33b、39a,39bと対応する位置には、それぞれリング54が設けられている。このリング54は、
図19に示すように、鋼材をプレス成形することによって形成され、薄肉な円環状の円板部54aと、該円板部54aの内周部から軸方向に沿って突出したフランジ状の突出部54bとによって構成されている。
【0096】
前記円板部54aは、外径がそれぞれ前記各軸受凹溝31a,31b、33a,33b、39a,39bよりも僅かに小径に設定されており、該各軸受凹溝31a,31b、33a,33b、39a,39bと前記円板部54aとの間には僅かな隙間C1が形成されるようになっている。
【0097】
前記突出部54bは、内周面が前記両シャフト14,15の外周面に圧入固定されており、これによって、前記各リング54が前記両シャフト14,15と一体に回転するようになっている。
【0098】
また、前記円板部54aと前記突出部54bとの接続部位には、プレス成形に伴って1つのエア抜き用の小径貫通孔54cが軸方向に沿って打ち抜き形成されている。
【0099】
さらに、この実施形態における前記駆動側ギア16は、
図18に示すように、前記ニードルベアリング35側の端面に、円筒状のボス部16bが突出形成されている。このボス部16bは、外径が第2軸受凹溝32a,32bの内径よりも僅かに小径に形成されていると共に、先端部が該第2軸受凹溝32a,32b内に挿入されている。これにより、該第2軸受凹溝32a,32bとの間には、
図18に示すように、僅かな隙間C2が形成されるようになっている。
【0100】
また、前記駆動側ギア16には、前記ボス部16bの先端面から該ボス部16bとは反対側の端面に亘って細長く延びるエア抜き用の切欠溝部16cが形成されている。あるいは、図示しないが、前記ボス部16bの一部に切欠を設けても良い。
【0101】
なお、前記従動側ギア17に関しても前記駆動側ギア16と同様に構成され、ボス部17b及び切欠溝部17cが形成されている。
【0102】
また、この実施形態では、
図20及び
図21に示すように、前記アッパハウジング12の上端面に、前記内燃機関1から滴下したオイルOを貯留する4つのプール56が設けられている。この各プール56は、前記アッパハウジング12の上端面を部分的に窪ませることで形成されていると共に、前記各ニードルベアリング34〜36,40,41の上方位置に一部が重なり合うようにそれぞれ配設されている。
【0103】
そして、前記各プール56の底部には、該各プール56に貯留されたオイルOを、前記各ニードルベアリング34〜36,40,41へ直接的に導入する5つの導入部が設けられている。
【0104】
前記各導入部は、
図18及び
図22に示すように、前記アッパハウジング12の重力方向上側に開口形成され、上流端が前記各プール56に連結された5つの導入孔57と、該各導入孔57の下流端に連結されると共に、前記各軸受凹溝31a〜33b,38a〜39b及び各シャフト14,15によってそれぞれ円環状の空間に形成された5つのリザーバ室58と、を備えている。
【0105】
前記各導入孔57は、ドリル加工等によって断面ほぼ円形状に形成されているが、前記ニードルベアリング41に対応する導入孔57aは、
図20及び
図22に示すように、前記アッパハウジング12のダイキャスト成形に伴って、比較的多量のオイルOを前記リザーバ室58へと導入可能な長孔状に一体形成されている。なお、導入孔57aは、他の導入孔57と同様の断面ほぼ円形状に形成してもよい。
【0106】
ここで、前記導入孔57aを長孔状としたことで、前記リザーバ室58に滞留するエアを分離させ、上方へ浮上させることにより、きれいなオイルを前記ニードルベアリング41に供給できる効果がある。
【0107】
また、前記各導入孔57の上流側の開口縁周囲には、特に
図20に示すように、凸壁である円筒状の堰59がそれぞれ形成されている。この各堰59は、前記導入孔57を囲繞するように前記各プール56の底面から突出形成されていると共に、外周の一部が開口形成されており、各リザーバ室58に導入するオイルOの量を調節するようになっている。
【0108】
前記リザーバ室58のうち、前記ニードルベアリング34,36,41に対応するリザーバ室58aは、軸方向の一端側が、前記リング54によって閉塞されている一方で、他端側が前記各ニードルベアリング34,36,41と連通している。
【0109】
前記ニードルベアリング35(従動側にあっては前記ニードルベアリング40)と対応するリザーバ室58bは、軸方向の一端側が、前記駆動側ギア16のボス部16b(前記従動側ギア17のボス部17b)によって閉塞されている一方で、他端側が前記各ニードルベアリング35,40と連通している。
【0110】
したがって、この実施形態では、前記内燃機関1から前記各プール56へと滴下したオイルOは、前記各堰59や各導入孔57によって導入量の適正化が図られつつ、該各導入孔57を介して各リザーバ室58へと導入されることとなる。そして、この各リザーバ室58に導入されたオイルOは、前記各リザーバ室58が前記各ニードルベアリング34〜36,40,41の軸方向端部とそれぞれ面していることから、自由流動により該各ニードルベアリング34〜36,40,41の内部へと適宜供給されることとなる。
【0111】
したがって、この実施形態によれば、前記各ニードルベアリング34〜36,40,41内へ直接的にオイルOを供給することから、各ニードルベアリング34〜36,40,41の潤滑性能の信頼性が向上する。
【0112】
また、この実施形態では、前記内燃機関1から滴下したオイルOを、広い面積を有する各プール56に一度滞留させることで、エアをオイルOから分離するようにした。これにより、前記各ニードルベアリング34〜36,40,41に供給されるオイルO内のエアが減少することから、該各ニードルベアリング34〜36,40,41の潤滑が円滑となって、潤滑性能の信頼性がさらに向上する。
【0113】
さらに、この実施形態では、前記リザーバ室58aを隔成する各リング54に前記小径貫通孔54cを設け、さらに、前記リザーバ室58bを隔成する前記駆動側ギア16(従動側ギア17)に前記切欠溝部16d(切欠溝部17d)を設けたことから、前記リザーバ室58内に流入したオイルO内のエアを、前記小径貫通孔54cや切欠溝部16d,17dを介して排出することができる。このため、前記各ニードルベアリング34〜36,40,41へのオイルOの供給がより確実となることから、潤滑の信頼性がより一層向上される。
【0114】
また、この実施形態では、前記各ニードルベアリング34〜36,40,41と反対側の部位に前記隙間C1,C2を形成したので、前記各ニードルベアリング34〜36,40,41の作動によって発生した摩擦熱を受けてオイルOが高温となった場合等に、このオイルOを前記隙間C1,C2からリザーバ室58の外部へと排出することができる。
【0115】
したがって、前記各ニードルベアリング34〜36,40,41の高温化が抑制されることから、これらの耐久性や信頼性が向上される。
【0116】
また、前記リザーバ室58bを、前記駆動側ギア16の前記ボス部16b(従動側ギア17のボス部17b)を利用して隔成したことにより、部品点数を削減できることから、製造コストや組立コストの低減化を図ることが可能となる。
【0117】
なお、この実施形態では、前記駆動側ギア16の前記ボス部16b(従動側ギア17のボス部17b)を、前記第2軸受凹溝32a,32b(第4軸受凹溝38a,38b)に挿入することによって前記リザーバ室58bを隔成したが、前記ボス部16b(ボス部17b)を、外径が第2軸受凹溝32a,32b(第4軸受凹溝38a,38b)の内径よりも大きくなるように設定し、前記第2横梁デッキ部12b,13bの側端面と面合わせすることによって前記リザーバ室58bを隔成してもよい。
〔第11実施形態〕
図23及び
図24は第11実施形態を示し、第1実施形態等と同様に、一対の駆動側、従動側カウンターウエイト42,43のみによって二次振動の抑制を図るようになっていると共に、該各カウンターウエイト42,43の軸方向両端部には、それぞれ薄肉円盤状のフランジ壁60が形成されている。
【0118】
この各フランジ壁60は、
図24に示すように、外径が前記第2〜第4軸受凹溝32a〜33b,38a〜39bの内径よりも僅かに小径に形成されると共に、該各軸受凹溝32a〜33b,38a〜39bの内部へと挿入されている。これにより、前記各フランジ壁60と各軸受凹溝32a〜33b,38a〜39bとの間には僅かな隙間C3が形成されるようになっている。
【0119】
そして、この実施形態では、
図23に示すように、前記各フランジ壁60によって前記ウエイト収容室19近傍の前記各リザーバ室58の軸方向一端側が閉塞されていると共に、該各フランジ壁60の前記各カウンターウエイト42,43の形成位置と異なる位置に、それぞれエア抜き用の切欠溝部60aが軸方向に沿って貫通形成されている。
【0120】
したがって、本実施形態によれば、前記第10実施形態と同様な作用効果を得られるのみならず、前記両カウンターウエイト42,43の前記各フランジ壁60を前記リザーバ室58の隔壁として利用したことから、部品点数を削減できる。これにより、製造コストや組立コストのさらなる低減化を図ることが可能となる。
【0121】
なお、この実施形態では、前記各フランジ壁60を、該各軸受凹溝32a〜33b,38a〜39bに挿入することによって前記各リザーバ室58の軸方向一端部を閉塞したが、
図25に示すように、前記各フランジ壁60を、その外径が各軸受凹溝32a〜33b,38a〜39bの内径よりも大きくなるように設定し、該各軸受凹溝32a〜33b,38a〜39bと面合わせすることによって閉塞してもよい。この場合、前記リザーバ室58内の高温となったオイルO等は、前記面合わせをした部位の隙間C4から排出されることとなる。
【0122】
また、カウンターウエイトの一部を利用してリザーバ室58を隔成する構成は、前記第10実施形態のような片持ち状態で軸受されるタイプのカウンターウエイトにも適用することも可能である。
【0123】
さらに、前記第10実施形態及び第11実施形態は、前記ハウジング11をアッパハウジング12とロアハウジング13とを結合することで構成するものとして説明したが、
図26に示すように、ハウジング11が上下で分割されていない、いわゆる一体ハウジングに適用することも可能である。
〔第12実施形態〕
図27〜
図29は第12実施形態を示し、基本構成は第11実施形態と同じであるが、前記各ニードルベアリング34〜36,40,41毎に設けられていた前記導入孔57及びリザーバ室58を、駆動側、従動側それぞれ1つに統合した点において異なる。
【0124】
以下、導入部は、駆動側と従動側の基本構成が同一であるから、駆動側の導入部について主として説明する。
【0125】
すなわち、この実施形態の導入部は、前記ハウジング11の後端部に配設された前記導入孔57及びリザーバ室58に加え、
図27に示すように、前記リザーバ室58と連通し、該リザーバ室58に貯留されたオイルOを前記ニードルベアリング34〜36へ直接的に供給する供給油路61をさらに備えている。
【0126】
前記供給油路61は、前記ドライブシャフト14の軸心に沿って貫通形成されたメイン油路61aと、該メイン油路61aから外径方向に向かって延び、前記各ニードルベアリング34〜36の内周面と連通する分岐路61b〜61dと、から構成されている。
【0127】
ここで、本実施形態の場合、前記分岐路61b〜61dに供給されたオイルは、前記ドライブシャフト14の回転により遠心力が働くことで得られるポンプ作用により、前記ニードルベアリング34〜36へ確実にオイルを供給できる。したがって、前記ニードルベアリング34〜36の十分な潤滑により、冷却性も高まり、前記ニードルベアリング34〜36の耐久性及び信頼性も向上する。
【0128】
前記分岐路61b〜61dは、それぞれ流路面積が、前記ドライブシャフト14の後端部側の分岐路61bから中央部の分岐路61c及び先端部側の分岐路61dにしたがって順次広くなっている。これによって、各ニードルベアリング34〜36へのオイルOの導入量の均一化を図るようになっている。
【0129】
また、この実施形態における前記リザーバ室58は、
図28に示すように、前記ドライブシャフト14との間に僅かな隙間C5を有すると共に、該隙間C5を介してドレン孔62と連通している。このドレン孔62は、前記ハウジング11の外部と連通しており、前記リザーバ室58内に導いたオイルOに含まれるエアや不純物(コンタミ等)を外部へと排出するようになっている。
【0130】
さらに、この実施形態では、
図29に示すように、1つの導入部で複数のニードルベアリングへオイルOを供給する関係上、前記内燃機関1から流下したオイルOを多量に捕集して各導入部へと導入する必要がある。このため、前記アッパハウジング12上端面の後端側には、オイルOの捕集量を増大させるための捕集リブ63が前記プール56を取り囲むようにして形成されている。
【0131】
したがって、この実施形態によっても、前記各ニードルベアリング34〜36,40,41内へ直接的にオイルOを供給することから、各ニードルベアリング34〜36,40,41の潤滑における信頼性が向上される。
【0132】
ちなみに、本実施形態の場合、前記各ニードルベアリング34〜36,40,41の代わりに、滑り軸受けであるプレーンベアリングを用いることも可能である。
〔第13実施形態〕
図30は第13の実施形態を示し、基本構成は第1の実施形態と同様であるが、導入部である前記導入孔23に、フィルタ部材であるメッシュ状のオイルフィルタ64を取り付けたものである。なお、図示はしないが、従動側の導入孔23においても同様に前記オイルフィルタ64が取り付けられている。
【0133】
したがって、この実施形態によれば、前記ウエイト収容室19内に導入する際にオイルOを濾過して、コンタミ等の不純物を取り除くことができることから、前記各ニードルベアリング34〜36,40,41内部への不純物の侵入が抑制されるため、該各ニードルベアリング34〜36,40,41の耐久性を向上させることができる。
〔第14実施形態〕
図31は第14の実施形態を示し、基本構成は第1の実施形態と同様であるが、前記ドライブシャフト14及びドリブンシャフト15が、図中矢印で示すように、それぞれ第1の実施形態とは逆方向に回転するようになっている点において異なる。つまり、この構造では、前記両カウンターウエイト42,43によって互いに反対方向に掻き上げられたオイルOは回転力によって共に重力方向上側へ押し出されることとなる。
【0134】
そこで、本実施形態では、
図31に示すように、前記上部壁20の両側縁に、干渉壁65,65をそれぞれ設けた。この各干渉壁65,65は、前記上部壁20の両側縁からほぼ直線状に延設されると共に、前記各導出孔24,24の上部を覆うようにそれぞれ配置されている。
【0135】
また、前記各干渉壁65,65の下面には、それぞれ前記各導出孔24,24に向かって下り傾斜する断面ほぼ円弧状の案内面66,66が形成されている。この各案内面66,66は、前記各干渉壁65,65の図中前後方向全体に亘って形成されている。
【0136】
したがって、この実施形態によれば、前記両カウンターウエイト42,43の回転に伴って重力方向上側へ押し出されたオイルOは、前記各干渉壁65,65の案内面66,66に干渉し、ここで折り返し状に方向を変えられながら、前記各導出孔24,24方向へ案内される。これにより、各導出孔24,24から効率的に前記オイルパン5内へ排出されるようになっている。
【0137】
このように、前記干渉壁65,65及び案内面66,66の案内作用によって、前記ウエイト収容室19内のオイルOを効果的に導出できるため、前記両シャフト14,15がそれぞれ第1の実施形態とは逆方向に回転する場合においても、第1の実施形態とほぼ同等の導出性を得ることができる。この結果、前記ウエイト収容室19内のオイルOが適切に導出されて、オイルOを減少させることができるので、前記両カウンターウエイト42,43とオイルOとの間のフリクションが低減される。
【0138】
なお、第13,14実施形態の構成は、第1実施形態をはじめとするミスト潤滑タイプのみならず、第10実施形態のような直接潤滑タイプにも当然に適用することが可能である。
【0139】
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で構成を変更することも可能である。
【0140】
例えば、前記各実施形態では、前記バランサ装置10を、前記シリンダブロック2の下部2aに設けられた前記ラダーフレーム4を介して前記内燃機関1に取り付ける場合を示したが、前記ラダーフレーム4に代えて前記シリンダブロック2によって構成される前記内燃機関1の場合には、該シリンダブロック2の下部2aに直接取り付けることも当然に可能である。
【0141】
また、前記各実施形態では、前記内燃機関1から滴下したオイルOを導入部へ導くことで前記各ニードルベアリング34〜36,40,41の潤滑に利用しているが、前記オイルポンプ37と接続することによって導入することもできる。この場合、前記各ニードルベアリング34〜36,40,41へのオイルOの供給量が調整しやすくなると共に、各ニードルベアリング34〜36,40,41にコンタミ等の不純物が濾過されたオイルOが供給されることから、該各ニードルベアリング34〜36,40,41の耐久性が向上する。
【0142】
前記実施形態から把握される前記請求項以外の発明の技術的思想について以下に説明する。
〔請求項a〕
請求項4に記載の内燃機関のバランサ装置において、
前記周壁の内周面の重力方向下側を、前記捕集溝へ向かって下り傾斜状に形成したことを特徴とする内燃機関のバランサ装置。
〔請求項b〕
請求項aに記載の内燃機関のバランサ装置において、
前記両側壁に、それぞれ前記転がり軸受を配設すると共に、
前記捕集溝を、前記ウエイト収容室の前記バランサシャフト軸方向のほぼ中間位置に配置したことを特徴とする内燃機関のバランサ装置。
〔請求項c〕
請求項bに記載の内燃機関のバランサ装置において、
前記導入孔と捕集溝とを、前記ウエイト収容室の前記バランサシャフト軸方向のほぼ同じ位置に配設したことを特徴とする内燃機関のバランサ装置。
〔請求項d〕
請求項4に記載の内燃機関のバランサ装置において、
前記捕集溝を、前記周壁の前記転がり軸受の近傍位置に設けたことを特徴とする内燃機関のバランサ装置。
〔請求項e〕
請求項dに記載の内燃機関のバランサ装置において、
前記突出部の外周面を、前記転がり軸受へ向かって下り傾斜状に形成したことを特徴とする内燃機関のバランサ装置。
〔請求項f〕
請求項6に記載の内燃機関のバランサ装置において、
前記両側壁に、前記導入孔から前記転がり軸受の外周面に亘って延びる溝部を形成したことを特徴とする内燃機関のバランサ装置。
〔請求項g〕
請求項6に記載の内燃機関のバランサ装置において、
前記ハウジングは、それぞれ半割状に形成された重力方向上側のアッパハウジング及び重力方向下側のロアハウジングによって構成され、
前記転がり軸受の前記ウエイト収容室側の端部が、前記アッパハウジングの前記側壁よりも前記ウエイト収容室の中央寄りに突出していることを特徴とする内燃機関のバランサ装置。
〔請求項h〕
請求項6に記載の内燃機関のバランサ装置において、
前記ハウジングは、それぞれ半割状に形成された重力方向上側のアッパハウジング及び重力方向下側のロアハウジングによって構成され、
前記ロアハウジングの前記側壁が、前記転がり軸受の前記ウエイト収容室側の端部よりも該ウエイト収容室の中央寄りに突出していることを特徴とする内燃機関のバランサ装置。
〔請求項i〕
請求項3に記載の内燃機関のバランサ装置において、
前記導入孔は、前記周壁の上端面に形成された凸部に形成されていることを特徴とする内燃機関のバランサ装置。
〔請求項j〕
請求項3に記載の内燃機関のバランサ装置において、
前記導入孔は、前記周壁の上端面に形成された凹部に形成されていることを特徴とする内燃機関のバランサ装置。
〔請求項k〕
請求項3に記載の内燃機関のバランサ装置において、
前記ハウジングを、前記内燃機関の内部に循環させる油を貯留するオイルパン内に収容配置したことを特徴とする内燃機関のバランサ装置。
〔請求項l〕
請求項kに記載の内燃機関のバランサ装置において、
前記導出孔を、前記オイルパン内の油面よりも高い位置に設けたことを特徴とする内燃機関のバランサ装置。
〔請求項m〕
請求項10に記載の内燃機関のバランサ装置は、前記バランサシャフトと一体に回転するギアをさらに備え、
前記リザーバ室は、前記ギアの一部を利用して形成されていることを特徴とする内燃機関のバランサ装置。
〔請求項n〕
請求項mに記載の内燃機関のバランサ装置において、
前記ハウジングの上端面に、前記導入孔の開口縁を覆うように突出すると共に、一部が開口した凸壁を設けたことを特徴とする内燃機関のバランサ装置。
〔請求項o〕
請求項10に記載の内燃機関のバランサ装置において、
前記リザーバ室は、前記バランサウエイトの一部を利用して形成されていることを特徴とする内燃機関のバランサ装置。
〔請求項p〕
請求項1又は8に記載の内燃機関のバランサ装置において、
前記ハウジングに、前記導出部の重力方向の上端縁からほぼ直線状に延設され、前記導出部の重力方向上側を覆うように配置された干渉壁を設けると共に、
該干渉壁の重力方向下面を、前記導出部に向かって下り傾斜状に形成したことを特徴とする内燃機関のバランサ装置。
〔請求項q〕
請求項1又は8に記載の内燃機関のバランサ装置において、
前記導入部は、オイルポンプと接続されていることを特徴とする内燃機関のバランサ装置。