特許第6426986号(P6426986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6426986
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】棒鋼材束本数分離装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/29 20060101AFI20181112BHJP
   B65B 27/10 20060101ALI20181112BHJP
   B65B 13/18 20060101ALI20181112BHJP
   B65B 35/22 20060101ALI20181112BHJP
   B65G 25/02 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   B65G47/29 J
   B65G47/29 D
   B65B27/10 A
   B65B13/18 B
   B65B13/18 G
   B65B35/22
   B65G25/02 G
   B65G25/02 C
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-237780(P2014-237780)
(22)【出願日】2014年11月25日
(65)【公開番号】特開2016-98097(P2016-98097A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】391029624
【氏名又は名称】滝川工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595131374
【氏名又は名称】大阪製鐵株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大前 彰久
(72)【発明者】
【氏名】吉井 將博
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利文
(72)【発明者】
【氏名】宮本 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】白井 竜治
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−144657(JP,A)
【文献】 実開昭53−58939(JP,U)
【文献】 実開昭60−43609(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/22 − 47/32
B65B 13/00 − 13/34
B65B 35/00 − 35/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の棒鋼材を当該棒鋼材の長手方向に直交する方向に一列に並べた状態で搬送可能であるコンベアと、
前記コンベアによって搬送される前記棒鋼材を計数する計数機と、
計数済みであって前記コンベアによって搬送される所定数の前記棒鋼材が搬送方向下流側へ移動するのを規制するストッパと、
前記ストッパにより移動が規制されている所定数の前記棒鋼材を搬送方向に一列に並べた整列状態で載せる載置部材と、当該載置部材を移動させる移動機構と、を有している分離機と、
を備え、
前記移動機構は前記載置部材を移動させることで、所定数の前記棒鋼材を前記整列状態のまま搬送方向下流側へ前記ストッパを越えて移動させると共に、当該棒鋼材を前記整列状態のまま前記コンベア上に戻し、
前記分離機は、
前記棒鋼材の一端部側に設けられ前記計数機により計数済みである所定数の前記棒鋼材を先行して前記移動機構により移動させる先行分離機と、
前記棒鋼材の長手方向に前記先行分離機と並んで複数設けられ、当該先行分離機により前記棒鋼材の移動が開始されると、当該棒鋼材の他端部側に向かって順番に前記移動機構による当該棒鋼材の移動を開始する順次分離機と、を有し、
前記順次分離機それぞれと共に設けられ、上昇することで前記棒鋼材を持ち上げて前記コンベアから離反させ搬送を一旦停止可能であり降下することで前記コンベアによる前記棒鋼材の搬送を再開可能とするスキッドを更に備え、
前記スキッドの上面は平坦であり、前記載置部材を移動させることで計数済みである所定数の前記棒鋼材と計数前の前記棒鋼材とを分離する際に、当該棒鋼材を前記スキッドの上面を滑らせることを特徴とする棒鋼材束本数分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋棒鋼や丸棒鋼等の棒鋼材を結束する前に、上流側から搬送される棒鋼材を所定数毎に分ける棒鋼材束本数分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋棒鋼や丸棒鋼等の棒鋼材の製造及び出荷は、次のようにして行われる。鋼片(ビレット)を熱間圧延することにより全長80〜120m程度の長尺素材を形成し、この長尺素材を、冷却した後、所定の長さ(例えば8m)毎に切断し、複数の棒鋼材とする。そして、これら棒鋼材は所定数毎に束ねられて出荷される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
棒鋼材を結束する装置の上流側には、棒鋼材束本数分離装置(以下、分離装置という)が設置されており、この分離装置は、上流側から搬送される棒鋼材を所定数毎に分ける機能を有している。
図11は、分離装置が備えている先行分離機81の側面図であり、図12は、この分離装置が備えている順次分離機82の側面図である。先行分離機81は、コンベア80によって搬送される棒鋼材Wの長手方向一端部側に1台のみ設置されており、順次分離機82は、棒鋼材Wの長手方向に先行分離機81と並んで複数台設けられている。
【0004】
図11において、コンベア80が棒鋼材Wを搬送しながら、スプロケット83の溝に嵌る各棒鋼材Wの一端部をセンサ84が検出することで、棒鋼材Wを計数することができる。スプロケット83の搬送方向下流側には、凸曲面を有する規制板85が設けられており、コンベア80により搬送され計数済みである棒鋼材Wは、規制板85を乗り越えることができず、コンベア80上で滞留する。そして、棒鋼材Wが所定数について計数されると、先行分離機81が備えている第1の先行爪部材86が作動して(図11の矢印G1)、この先行爪部材86が、計数済みでかつ滞留している棒鋼材Wを掬い上げ、規制板85の頂部へ搬送する。搬送された棒鋼材Wは第2の先行爪部材87に受け止められ、この先行爪部材87が動作することで(図11の矢印G2)、これら棒鋼材Wは規制板85を滑り落ち、コンベア80上に復帰する。
【0005】
図12に示す順次分離機82では、第1の順次爪部材88が作動して、計数済みでかつ滞留している前記棒鋼材Wを、先行分離機81(図11参照)の先行爪部材86と共に掬い上げ(図12の矢印G3)、これら棒鋼材Wを規制板89の頂部へ搬送する。搬送された棒鋼材Wは第2の順次爪部材90に受け止められ、この順次爪部材90が動作することで(図12の矢印G4)、これら棒鋼材Wは規制板89を滑り落ち、コンベア80上に復帰する。
【0006】
このようにして、計数された所定数の棒鋼材Wは、上流側に在る計数前の棒鋼材Wと分離される。この分離動作が繰り返し行われることで、棒鋼材Wは所定数毎に分けられ、所定数の棒鋼材Wは、下流側の結束機によって一つの束に結束される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−187128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のとおり、先行分離機81及び順次分離機82によれば、棒鋼材Wを所定数毎に分離可能であるが、計数済みでかつ滞留している棒鋼材Wを、爪部材86,88が規制板85,89に沿って掬い上げる際、及び、規制板85,89を越えてコンベア80上に落とす際に、棒鋼材W同士が交叉して綾が発生する場合がある。
【0009】
棒鋼材Wに綾が発生していると、そのままの状態で結束され、倉庫に保管後、出荷される。このように綾が発生している状態のまま棒鋼材が結束され、その束に他の束が積み重ねられたり、その束を搬送したりしていると、棒鋼材が曲がってしまい直伸性が悪くなり、商品価値が低下してしまう。
また、出荷先においては、束が解かれて棒鋼材を一本ずつ取り出す作業が行われるが、棒鋼材に綾が発生していると、その棒鋼材及びその棒鋼材と交叉している他の棒鋼材を取り出す作業が難しくなり、手間を要し作業効率が悪くなる。
【0010】
そこで、本発明は、棒鋼材を結束する前に、所定数毎に棒鋼材を分ける際、棒鋼材同士が交叉するのを抑制する棒鋼材束本数分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数本の棒鋼材を当該棒鋼材の長手方向に直交する方向に一列に並べた状態で搬送可能であるコンベアと、前記コンベアによって搬送される前記棒鋼材を計数する計数機と、計数済みであって前記コンベアによって搬送される所定数の前記棒鋼材が搬送方向下流側へ移動するのを規制するストッパと、前記ストッパにより移動が規制されている所定数の前記棒鋼材を搬送方向に一列に並べた整列状態で載せる載置部材と、当該載置部材を移動させる移動機構とを有している分離機とを備え、前記移動機構は前記載置部材を移動させることで、所定数の前記棒鋼材を前記整列状態のまま搬送方向下流側へ前記ストッパを越えて移動させると共に、当該棒鋼材を前記整列状態のまま前記コンベア上に戻すことを特徴とする。
【0012】
この棒鋼材束本数分離装置によれば、移動機構が載置部材を移動させることで、計数済みである所定数の棒鋼材と計数前の棒鋼材とを搬送方向の下流側と上流側とに分離させることができる。更に、この分離の際に、所定数の棒鋼材を搬送方向に一列に並べた整列状態で載置部材に載せ、これら棒鋼材を整列状態のままコンベア上に戻すため、分離する際に棒鋼材同士が交叉するのを抑制することができる。
【0013】
また、前記分離機は、前記棒鋼材の一端部側に設けられ前記計数機により計数済みである所定数の前記棒鋼材を先行して前記移動機構により移動させる先行分離機と、前記棒鋼材の長手方向に前記先行分離機と並んで複数設けられ、当該先行分離機により前記棒鋼材の移動が開始されると、当該棒鋼材の他端部側に向かって順番に前記移動機構による当該棒鋼材の移動を開始する順次分離機とを有しているのが好ましい。
この構成によれば、先行分離機が、計数済みである所定数の棒鋼材の一端部側を計数前の棒鋼材と分離すると、その棒鋼材を、複数の順次分離機が当該棒鋼材の他端部側に向かって順に、計数前の棒鋼材と分離することができる。このため、計数済みの棒鋼材と、計数前の棒鋼材との分離が確実に行われる。なお、この場合、所定数の棒鋼材を一端部側から他端部側に向かって順に、計数前の棒鋼材と分離する動作が行われる。
【0014】
また、前記棒鋼材束本数分離装置は、前記順次分離機それぞれと共に設けられ、上昇することで前記棒鋼材を持ち上げて前記コンベアから離反させ搬送を一旦停止可能であり降下することで前記コンベアによる前記棒鋼材の搬送を再開可能とするスキッドを更に備え、前記スキッドの上面は平坦であり、前記載置部材を移動させることで計数済みである所定数の前記棒鋼材と計数前の前記棒鋼材とを分離する際に、当該棒鋼材を前記スキッドの上面を滑らせる構成であるのが好ましい。
前記のとおり、所定数の棒鋼材を一端部側から他端部側に向かって順に、計数前の棒鋼材と分離する動作が行われるが、この際、計数済みである棒鋼材の一端部側が搬送方向の下流側へ強制的に移動させられると、その他端部側は反動で上流側へ移動しようとする。そこで、前記スキッドによれば、上流側へ移動しようとする計数済みの棒鋼材の他端部側、更には、その上流側にある計測前の棒鋼材は、スキッドの上面に沿って滑ることができ、計数済みである棒鋼材の一部と計数前の棒鋼材とが重なるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、計数済みであって所定数の棒鋼材と計数前の棒鋼材とを分離する際に、棒鋼材同士が交叉するのを抑制することができる。この結果、分離した所定数の棒鋼材を結束した場合に、綾が発生しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】棒鋼材束本数分離装置の概略構成を示す平面図である。
図2】先行機構部の側面図である。
図3】先行機構部の側面図である。
図4】先行機構部の側面図である。
図5】先行機構部の側面図である。
図6】順次機構部の側面図である。
図7】順次機構部の側面図である。
図8】順次機構部の側面図である。
図9】順次機構部の側面図である。
図10】大径の棒鋼材を分離する場合における順次機構部の側面図である。
図11】従来の分離装置が備えている先行機構部の側面図である。
図12】従来の分離装置が備えている順次機構部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、棒鋼材束本数分離装置1の概略構成を示す平面図である。この棒鋼材束本数分離装置1(以下、分離装置1という。)は、複数本の棒鋼材Wを一つの束に結束する図外の結束機の上流側に設置されており、分離装置1は、これら棒鋼材Wを所定数毎に分ける機能を備えている。なお、棒鋼材Wは、鉄筋棒鋼や丸棒鋼等である。
【0018】
分離装置1は、複数本の棒鋼材Wをコンベア11,71により搬送しながら、これら棒鋼材Wを所定数毎に分ける。なお、各図において、棒鋼材Wの搬送方向を矢印Xで示す。なお、以下において、コンベア11による棒鋼材Wの搬送方向を、単に「搬送方向」と記載する。
【0019】
分離装置1は、単一の先行機構部2と、複数の順次機構部3とを備えている。図1に示す分離装置1は、10台の順次機構部3−1〜3−10を備えており、これら順次機構部3−1〜3−10はどれも同じ構成である。図1に示す分離装置1では、搬送される棒鋼材Wの長手方向一端部Wa側(図1の左側)に、先行機構部2が1台のみ設置されており、この先行機構部2を先頭として棒鋼材Wの長手方向に10台の順次機構部3−1〜3−10が並んで設けられている。
【0020】
図2は、先行機構部2の側面図である。先行機構部2は、コンベア11、計数機12、ストッパ13、先行分離機20を備えている。
コンベア11は、図1に示すように、上流側の第1コンベア11aと、下流側の第2コンベア11bとを含む。コンベア11は、後述する順次機構部3(3−1〜3−10)のコンベア71と協働して、複数本の棒鋼材Wを棒鋼材Wの長手方向に直交する方向(矢印X方向)に一列に並べた状態で搬送可能である。
【0021】
図2において、計数機12は、図外の前記結束機によって結束する棒鋼材Wの束に含ませる数を、計数する。本実施形態の計数機12は、スプロケット15とセンサ16とを備えており、コンベア11aが棒鋼材Wを搬送しながら、スプロケット15の溝に嵌る各棒鋼材Wの一端部Waをセンサ16により計数する。これにより、計数機12は、コンベア11aによって搬送される棒鋼材Wを計数することができる。棒鋼材Wの一部(一端部Wa)がスプロケット15の溝に嵌ることで、隣り合う棒鋼材Wは間隔をあけて搬送される。このため、センサ16により正確に棒鋼材Wを検知することができ、計数の精度を高めることができる。
【0022】
ストッパ13は、スプロケット15の下流側であって、コンベア11bに沿って設けられている。ストッパ13は、図2に示すように、コンベア11の搬送面(上面)よりも低い位置から徐々に当該搬送面よりも高くなっている傾斜部14aと、この傾斜部14aから更に棒鋼材Wの直径よりも高くなっている凸部14bとを有している。このストッパ13によれば、計数機12によって計数済みであってコンベア11bによって搬送される所定数の棒鋼材Wは、傾斜部14aに載り上がりかつ先頭の棒鋼材Wが凸部14bに当たることで、これら所定数の棒鋼材Wの搬送方向下流側への移動が規制される。更に、このストッパ13によれば、所定数の棒鋼材Wを、搬送方向に一列に並べた整列状態として、下流側へ移動するのを規制することができる。
【0023】
先行分離機20は、棒鋼材Wを載せる載置部材21と、この載置部材21を移動させる移動機構22とを有している。載置部材21は、上面23aが水平であって搬送方向に長い本体部23と、この本体部23の搬送方向上流側端部に設けられている第1爪部24と、この本体部23の搬送方向下流側端部に設けられている第2爪部25とを有している。第1爪部24と第2爪部25との間であって本体部23の上面23aに、計数済みであってストッパ13により移動が規制されている所定数の棒鋼材Wが、搬送方向に一列に並んだ整列状態となって載ることができる。
【0024】
移動機構22は、第1の移動ベース41と、この移動ベース41に取り付けられている一対のアーム43とを有し、載置部材21とこれら移動ベース41及び一対のアーム43とにより平行四辺形リンク機構が構成されている。このため、載置部材21の上面(本体部23の上面23a)を水平な姿勢に維持したまま、載置部材21は昇降可能となる。そして、一対のアーム43の一方には、伸縮アクチュエータ44の可動ヘッド44aが取り付けられており、伸縮アクチュエータ44の本体部44bが第2の移動ベース42に取り付けられている。また、移動機構22は、第2の移動ベース42を水平方向に往復動作可能としてガイドする固定ベース40と、第2の移動ベース42を往復移動させるリニアモータを含む駆動部45とを備えている。これにより、載置部材21の上面(本体部23の上面23a)を水平な姿勢に維持したまま、載置部材21は水平移動可能となる。
【0025】
図2に示す状態では、載置部材21の本体部23(爪部24,25及び上面23a)は、コンベア11の搬送面(上面)よりも低い位置にあり、更に、ストッパ13により移動が規制されている所定数の棒鋼材Wの下方に位置している。
この図2に示す状態から、伸縮アクチュエータ44が短縮動作することで、図3及び図4に示すように、載置部材21の本体部23の上面23aは、コンベア11の搬送面(上面)よりも高い位置に到達する。更に、伸縮アクチュエータ44が伸長動作(復帰動作)すると共に、第2の移動ベース42を搬送方向下流側へ平行移動させることで、図5に示すように、載置部材21は、ストッパ13を搬送方向の下流側へ越した位置に到達することができ、本体部23の上面23aがコンベア11の搬送面よりも低い位置に達することで、載置部材21上の棒鋼材Wはコンベア11b上に渡される。
【0026】
以上のように、移動機構22が載置部材21を移動させることで、ストッパ13により移動が規制されている所定数の棒鋼材Wを、搬送方向に一列に並べた整列状態のまま搬送方向の下流側へストッパ13を越えて移動させ、更に、これら棒鋼材Wを前記整列状態のままコンベア11b上に戻すことができる。
なお、所定数の棒鋼材W全体の搬送方向下流側への移動は、後述するが、この先行分離機20よりも遅れて動作を開始する順次機構部3の順次分離機30との協働によって行われる。
【0027】
図6は、順次機構部3の側面図である。順次機構部3は、コンベア71、ストッパ73、順次分離機30を備えている。更に、順次機構部3は、スキッド77を備えている。前記のとおり、10台の順次機構部3(3−1〜3−10)はどれも同じ構成である。
コンベア71は、図1に示すように、上流側の第1コンベア71aと、下流側の第2コンベア71bとを含み、先行機構部2のコンベア11と同じものである。コンベア71は、前記先行機構部2のコンベア11と協働して、複数本の棒鋼材Wを棒鋼材Wの長手方向に直交する方向(矢印X方向)に一列に並べた状態で搬送可能である。
【0028】
ストッパ73は、先行機構部2のストッパ13と搬送方向について同じ位置に、コンベア71bに沿って設けられている。ストッパ73は、図6に示すように、コンベア71の搬送面(上面)よりも低い位置から徐々に当該搬送面よりも高くなっている傾斜部74aと、この傾斜部74aから更に棒鋼材Wの直径よりも高くなっている凸部74bとを有している。このストッパ73によれば、先行機構部2(図2参照)の計数機12によって計数済みであってコンベア71bによって搬送される所定数の棒鋼材Wは、傾斜部74aに載り上がりかつ先頭の棒鋼材Wが凸部74bに当たることで、これら所定数の棒鋼材Wの搬送方向下流側への移動が規制される。更に、このストッパ73によれば、所定数の棒鋼材Wを、搬送方向に一列に並べた整列状態として、下流側へ移動するのを規制することができる。
【0029】
順次分離機30は、棒鋼材Wを載せる載置部材31と、この載置部材31を移動させる移動機構32とを有している。載置部材31は、上面33aが水平であって搬送方向に長い本体部33と、この本体部33の搬送方向の上流側端部に設けられている爪部34を有している。爪部34よりも搬送方向の下流側あって本体部33の上面33aに、計数済みであってストッパ73により移動が規制されている所定数の棒鋼材Wが、搬送方向に一列に並んだ整列状態となって載ることができる。
【0030】
移動機構32は、先行機構部2(図2参照)の移動機構22と同じ構成であり、第1の移動ベース41と、この移動ベース41に取り付けられている一対のアーム43とを有し、載置部材31とこれら移動ベース41及び一対のアーム43とにより平行四辺形リンク機構が構成されている。このため、載置部材31の上面(本体部33の上面33a)を水平な姿勢に維持したまま、載置部材21は昇降可能となる。そして、一対のアーム43の一方には、伸縮アクチュエータ44の可動ヘッド44aが取り付けられており、伸縮アクチュエータ44の本体部44bが第2の移動ベース42に取り付けられている。
また、移動機構32は、第2の移動ベース42を水平方向に往復動作可能として誘導する固定ベース40と、第2の移動ベース42を往復移動させるリニアモータを含む駆動部45とを備えている。これにより、載置部材31の上面(本体部33の上面33a)を水平な姿勢に維持したまま、載置部材31は水平移動可能となる。
【0031】
図6に示す状態では、載置部材31の本体部33(爪部34及び上面33a)は、コンベア71の搬送面(上面)よりも低い位置にあり、更に、ストッパ73により移動が規制されている所定数の棒鋼材Wの下方に位置している。
この図6に示す状態から、伸縮アクチュエータ44が短縮動作することで、図7及び図8に示すように、載置部材31の本体部33の上面33aは、コンベア71の搬送面(上面)よりも高い位置に到達する。更に、伸縮アクチュエータ44が伸長動作(復帰動作)すると共に、第2の移動ベース42を搬送方向下流側へ更に平行移動させることで、図9に示すように、載置部材31は、ストッパ73を搬送方向の下流側へ越した位置に到達することができ、本体部33の上面33bがコンベア71の搬送面よりも低い位置に達することで、載置部材31上の棒鋼材Wはコンベア71b上に渡される。
【0032】
以上のように、移動機構32が載置部材31を移動させることで、ストッパ73により移動が規制されている所定数の棒鋼材Wを、搬送方向に一列に並べた整列状態のまま搬送方向の下流側へストッパ73を越えて移動させると共に、これら棒鋼材Wを前記整列状態のままコンベア71b上に戻すことができる。
なお、所定数の棒鋼材Wの移動は、先に移動動作を開始する先行機構部2の先行分離機20との協働によって行われる。
【0033】
スキッド77は、順次分離機30それぞれと共に設けられ、上昇することで棒鋼材Wを持ち上げてコンベア71aから離反させ搬送を一旦停止可能である。また、スキッド77は、降下することでコンベア71aによる棒鋼材Wの搬送を再開可能とする。スキッド77の機能については、後に説明する。
【0034】
以上のように構成された分離装置1によって行われる、棒鋼材Wの分離工程について説明する。
図1に示すように、所定の長さ(例えば8m)に切断された複数本の棒鋼材Wが、先行機構部2のコンベア11a及び順次機構部3−1〜3−10のコンベア71aにより搬送される。
【0035】
図2に示すように、先行機構部2では、コンベア11aが棒鋼材Wを搬送しながら、回転するスプロケット15の溝に嵌る各棒鋼材Wの一端部Waをセンサ16が検出することで、計数機12は棒鋼材Wを計数する。スプロケット15の下流側には、ストッパ13が設けられており、コンベア11a,11bにより搬送され計数済みである棒鋼材Wは、ストッパ13の凸部14bを乗り越えることができず、コンベア11a,11b上で一列状態のまま滞留する。
【0036】
そして、計数機12によって棒鋼材Wが所定数(設定値)について計数されると、先行分離機20において、移動機構22のアクチュエータ44が伸長して載置部材21を上昇させ、所定数番目(n番目)の棒鋼材Wと、その上流側に隣り(n+1番目)の棒鋼材Wとの間に、第1爪部24を割り込ませる(図3参照)。更に、移動機構22が動作して、計数開始の先頭にあった棒鋼材Wから前記所定数番目(n番目)の棒鋼材Wまでを、水平一列の整列状態として載置部材31が持ち上げる(図4参照)。これにより、所定数(n本)の棒鋼材Wの群と、その上流側に隣り(n+1番目)の棒鋼材Wを含む上流側の群とを、水平方向に分離開始することができる。
【0037】
先行分離機20が前記分離の動作を開始すると、この先行分離機20による分離の動作の開始のタイミングに遅れて、その隣りに位置する順次機構部3−1(図1参照)の順次分離機30が動作する。
なお、この順次分離機30(図6参照)が動作する前の状態で、コンベア71a,71bにより搬送され計数済みである棒鋼材Wは、ストッパ73の凸部74bを乗り越えることができず、コンベア71a,71b上で一列となって滞留している。また、計数前の棒鋼材Wが下流側(先行機構部2のスプロケット15に)搬送されるのを防ぐために、スキッド77を上昇させる(図7参照)。
【0038】
そして、順次機構部3−1の順次分離機30において、移動機構32のアクチュエータ44が伸長して載置部材31を上昇させ、前記所定数番目(n番目)の棒鋼材Wと、その上流側に隣り(n+1番目)の棒鋼材Wとの間に、爪部34を割り込ませる(図7参照)。この際、先行分離機20(図3図4及び図5参照)によって、所定数(n本)の棒鋼材Wの群と、その上流側に隣りの棒鋼材Wを含む上流側の群とを、一端部Wa側において、水平方向に分離していることから、図7に示す順次機構部3−1の順次分離機30では、容易に爪部34を割り込ませることができる。
更に、移動機構32が動作して、所定数の棒鋼材Wを水平一列の整列状態として載置部材31が持ち上げ(図8参照)、順次分離機30においても、所定数(n本)の棒鋼材Wの群と、その上流側に隣りの棒鋼材Wを含む上流側の群とを、水平方向に分離することができる。
【0039】
更に、順次機構部3−1が前記分離の動作を開始すると、この順次機構部3−1による分離の動作の開始のタイミングに遅れて、その隣りに位置する順次機構部3−2(図1参照)の順次分離機30が同様の動作を開始し、これと同様に、次は、三番目の順次機構部3−3の順次分離機30が同様の動作を開始し、以下、同様に四番目から十番目までの順次機構部3(3−3〜3−10)の順次分離機30が、動作開始タイミングをそれぞれ順に遅らせなら同様の動作を開始する。これにより、棒鋼材Wは、一端部Wa側から他端部Wb側に向かって順に、計数前の棒鋼材Wとの間隔を広げることができる。
【0040】
そして、図5に示すように、先行機構部2では、更に移動機構22が載置部材21を動作させ、載置部材21上の棒鋼材Wがコンベア11b上に載り、所定数の棒鋼材Wは、下流側の結束機側へと搬送される。
また、図9に示すように、順次機構部3(3−1〜3−10)では、それぞれ、移動機構32が載置部材31を動作させ、載置部材31上の棒鋼材Wがコンベア71b上に載り、所定数の棒鋼材Wは、下流側の結束機側へと搬送される。
なお、先行機構部2が所定数の棒鋼材Wをコンベア11b上に載せる動作と、順次機構部3−1〜3−10それぞれが所定数の棒鋼材Wをコンベア71b上に載せる動作とは、同期して行われる。
【0041】
このようにして、計数された所定数の棒鋼材Wは、上流側に在る計数前の棒鋼材Wと分離される。この分離動作が繰り返し行われることで、棒鋼材Wは所定数毎に分けられ、所定数の棒鋼材Wは、下流側の結束機によって一つの束に結束される。
【0042】
本実施形態では、所定数の棒鋼材Wを分離するための動作として、先行機構部2及び順次機構部3それぞれにおいて、ストッパ13,73によって、所定数の棒鋼材Wを搬送方向に一列に並べた整列状態のままで、これら棒鋼材Wが搬送方向下流側へ移動することを規制し、また、先行分離機20及び順次分離機30それぞれにおいて、載置部材21,31は、ストッパ13,73により移動が規制されている所定数の棒鋼材Wを、搬送方向に一列に並べた整列状態で上面23a,33aに載せ、更に、これら棒鋼材Wを前記整列状態のまま搬送方向下流側へストッパ13,73を越えて移動させると共に、これら棒鋼材Wを前記整列状態のままコンベア11b,71b上に戻している。
【0043】
このため、計数済みである所定数の棒鋼材Wと計数前の棒鋼材Wとを搬送方向の下流側と上流側とに分離することができ、しかも、この分離の際に、所定数の棒鋼材Wを整列状態のままコンベア11b,71b上に戻すため、棒鋼材W同士が交叉するのを抑制することができる。この結果、分離した所定数の棒鋼材Wを結束した場合に、綾が発生しにくくなる。
【0044】
また、本実施形態では、棒鋼材Wを前記のように分離する分離機として、図1に示すように、搬送される棒鋼材Wの一端部Wa側に設けられている1台の先行分離機20と、この棒鋼材Wの長手方向に、棒鋼材Wの他端部Wb側に向かって先行分離機20と並んで(先行分離機20を先頭として)設けられている10台の順次分離機30とを有している。
先行分離機20は、計数機12により計数済みである所定数の棒鋼材Wを先行して移動機構22(図2図5参照)により移動させる。そして、各順次分離機30は、この先行分離機20により棒鋼材Wの移動が開始されると、その後、棒鋼材Wの他端部Wb側に向かって順番に移動機構32(図6図9参照)による棒鋼材Wの移動を開始する。
【0045】
この構成によれば、先行分離機20が、計数済みである所定数の棒鋼材Wの一端部Wa側を、計数前の棒鋼材Wと分離すると、その所定数の棒鋼材Wを、複数の順次分離機30が棒鋼材Wの他端部Wb側に向かって順に、計数前の棒鋼材Wと分離することができる。このため、計数済みの棒鋼材Wと、計数前の棒鋼材Wとの分離が確実に行われる。
【0046】
そして、この構成によれば、所定数の棒鋼材Wを、一端部Wa側から他端部Wb側に向かって順に、計数前の棒鋼材Wと分離する動作が行われる。なお、この分離の際、計数済みである棒鋼材Wの一端部Wa側が搬送方向の下流側へ強制的に移動させられることから、その反動で、他端部Wb側は上流側へ移動しようとする。
そこで、各順次機構部3において、順次分離機30が分離の動作を行う前の状態では、スキッド77の上面78は、コンベア11aの搬送面よりも下に位置しているが、順次分離機30が分離の動作を行うのに併せて、スキッド77(図6参照)が上昇する。
【0047】
このスキッド77の上面78は平坦であることから、載置部材31を移動させることで計数済みである所定数の棒鋼材Wと計数前の棒鋼材Wとを分離する際に、前記反動により上流側へ移動しようとする棒鋼材W(他端部Wb側)を、スキッド77の上面78を滑らせることができる。
このスキッド77によれば、上流側へ移動しようとする計数済みの棒鋼材Wの他端部wb側、更には、その上流側にある計測前の棒鋼材Wは、スキッド77の上面78に沿って滑ることができ、計数済みである棒鋼材Wの一部と、計数前の棒鋼材Wとが重なるのを防ぐことができる。
【0048】
また、スキッド77(図6参照)は、前記の機能の他に、次に説明する機能も有している。
スキッド77は、前記のとおり、上昇することで棒鋼材Wを持ち上げてコンベア71aから離反させ搬送を一旦停止可能であり、降下することでコンベア71aによる棒鋼材Wの搬送を再開可能とする。そこで、先行機構部2において計数機12が所定数の棒鋼材Wの計数を終えると、この先行機構部2に近い側である順次機構部3−1から順次機構部3−10の順に、順次分離機30による分離動作を開始して図4の状態となった後でスキッド77を降下させる。これにより、一旦停止していた棒鋼材Wの搬送が再開され、次の棒鋼材Wの計数を開始することができる。なお、順次機構部3−1のスキッド77の降下の開始は、先行機構部2に遠い側の順次機構部3−10の順次分離機30による分離動作の開始前に行うことができる。これにより、先行機構部2に遠い側の順次機構部(3−10)において分離動作を行っている間に、次の棒鋼材Wの計数を開始することが可能となり、分離動作のサイクルタイムを短縮することができる。
【0049】
前記実施形態では、比較的小径(D10〜D13)である棒鋼材W(異形棒鋼)を分離する場合について説明したが、前記分離装置1は、大径(D16〜D51)の棒鋼材W(異形棒鋼)を分離することも可能である。
図10は、大径の棒鋼材Wを分離する場合における順次機構部3の側面図である。図示しないが、先行機構部2の計数機12により棒鋼材Wを計数し、所定数が計数されると、順次機構部3において載置部材31を上昇させかつ下流側へ移動させ、上流側に在る計数前の棒鋼材Wと、下流側に在り計数済みである所定数の棒鋼材Wとを分離することができる。
【0050】
なお、大径の棒鋼材Wの場合、順次機構部3において、ストッパ73を不要とすることができる。このために、例えば、ストッパ73をコンベア71の搬送面よりも下方に降下させておけばよい。このため、載置部材31の上昇量は小さくて済む。
【0051】
また、本発明の分離装置1は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。図1に示す実施形態では、順次機構部3が10台設置されている場合について説明したが、棒鋼材Wの長さに応じてこの数は変更自在である。
【符号の説明】
【0052】
1:棒鋼材束本数分離装置 11:コンベア 12:計数機
13:ストッパ 20:先行分離機(分離機) 21:載置部材
22:移動機構 30:順次分離機(分離機) 31:載置部材
32:移動機構 71:コンベア 73:ストッパ
77:スキッド 78:上面 W:棒鋼材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12