(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427017
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】合成樹脂製ボトル
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20181112BHJP
B65D 1/46 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
B65D1/02 221
B65D1/02 250
B65D1/46
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-14605(P2015-14605)
(22)【出願日】2015年1月28日
(65)【公開番号】特開2016-137928(P2016-137928A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】505440295
【氏名又は名称】北海製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】久保 徳晃
【審査官】
新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】
実開平07−011516(JP,U)
【文献】
特開2009−298485(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0054257(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の口部と、該口部の下端から下方に連続して次第に拡開する肩部と、該肩部の下端から下方に連続する胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを備え、前記口部に装着したキャップにより前記胴部の内部が封止される合成樹脂製ボトルであって、
前記胴部は、コーナー部を介して周方向に連設された4つの平坦壁部を備えて四角筒状に形成され、前記コーナー部は、互いに隣り合う平坦壁部の周方向端縁同士を湾曲して繋ぐ面で構成され、前記胴部の各平坦壁部に、該胴部の内圧変化に対応して膨出変形と没入変形とを許容するパネル部が設けられているものにおいて、
前記パネル部の上方位置であって前記胴部の上縁から下方に所定距離を存した位置に、前記胴部の全周にわたって連続する溝状の環状ビードを備え、
前記環状ビードにおける前記コーナー部に位置する部分は、その深さ及び上側内面の外側端縁と下側内面の外側端縁との間の距離が、当該環状ビードにおける前記平坦壁部に位置する部分よりも大とされ、下側内面の外側端縁が、当該環状ビードにおける前記平坦壁部に位置する部分よりも下方に位置するように形成され、上側内面の外側端縁が、当該環状ビードにおける前記平坦壁部に位置する部分と同一高さ位置に形成されていることを特徴とする合成樹脂製ボトル。
【請求項2】
前記平坦壁部における前記パネル部の上方と下方との少なくとも一方に、横方向に直線状に延びる溝状の横ビードを備え、
前記横ビードは、両端部が当該平坦壁部の両側に隣接する夫々の前記コーナー部で開放されていることを特徴とする請求項1記載の合成樹脂製ボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の口部と、口部の下端から下方に連続して次第に拡開する肩部と、肩部の下端から下方に連続する胴部と、胴部の下端を閉塞する底部とを備え、胴部の内部には飲料等の内容物が充填され、口部に装着したキャップにより胴部の内部が封止される合成樹脂製ボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料用の合成樹脂製ボトルとして、4つの平坦壁部がコーナー部を介して周方向に連設された四角筒状の胴部を備える所謂角型ボトルが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
この種の合成樹脂製ボトルに充填された飲料は、製品として自動販売機を用いて販売することが行われている。自動販売機は、横倒姿勢でコラムに積み重ねたボトルを払い出し部から1本ずつ払い出す。このとき、払い出されたボトルに後続するボトルのコーナー部には、自動販売機の払い出し部に設けられているストッパーが当接する。これにより、自動販売機は、払い出し部内でボトルを係止して不用意な払い出しを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−102316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、角型ボトルの胴部はその対角線方向への変形が比較的大きい。このため、自動販売機のコラムで多数積み重ね状態となっている場合、払い出されたボトルに後続する最下位置の角型ボトルに対角線方向への変形が生じ、払い出し部のストッパーをすり抜けて不用意に払い出される所謂多本出が生じるおそれがある。
【0006】
このような多本出を防止するために、角型ボトルの胴部においては、当該胴部の対角線方向への変形を抑制するための強度(以下対角強度という)を大とする必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、高い対角強度を有して自動販売機による販売時の多本出を確実に防止することができる合成樹脂製ボトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するために、本発明は、円筒状の口部と、該口部の下端から下方に連続して次第に拡開する肩部と、該肩部の下端から下方に連続する胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを備え、前記口部に装着したキャップにより前記胴部の内部が封止される合成樹脂製ボトルであって、前記胴部は、コーナー部を介して周方向に連設された4つの平坦壁部を備えて四角筒状に形成され、前記コーナー部は、互いに隣り合う平坦壁部の周方向端縁同士を湾曲して繋ぐ面で構成され、前記胴部の各平坦壁部に、該胴部の内圧変化に対応して膨出変形と没入変形とを許容するパネル部が設けられているものにおいて、前記パネル部の上方位置であって前記胴部の上縁から下方に所定距離を存した位置に、前記胴部の全周にわたって連続する溝状の環状ビードを備え、前記環状ビードにおける前記コーナー部に位置する部分は、その深さ及び上側内面の外側端縁と下側内面の外側端縁との間の距離が、当該環状ビードにおける前記平坦壁部に位置する部分よりも大とされてい
る。
【0014】
胴部の全周にわたって連続する溝状の環状ビードを設けることにより、胴部の対角強度が向上する。そして、環状ビードは、その深さを比較的深く形成することによって胴部の対角強度が一層向上する。
【0015】
しかし、環状ビードをその全周にわたって深く形成しようとすると、ボトルのブロー成形時に環状ビードの周囲の肉厚が均一に伸展せず、良好な賦形性が得られない場合がある。
【0016】
そこで、第2の発明においては、前記環状ビードにおける前記コーナー部に位置する部分の深さを、前記環状ビードにおける前記平坦壁部に位置する部分よりも大とした。これにより、前記環状ビードにおける前記平坦壁部に位置する部分の深さを然程深くすることなく、胴部の対角強度を確実に向上させることができる。
【0017】
しかも、前記環状ビードにおける前記コーナー部に位置する部分の上側内面の外側端縁と下側内面の外側端縁との間の距離が、前記環状ビードにおける前記平坦壁部に位置する部分よりも大とされていることにより、賦形性を低下させることなくコーナー部の環状ビードをコーナ部以外の環状ビードよりも深く形成することができる。
【0018】
よって、胴部の対角強度を確実に向上させることができ、自動販売機による販売時の多本出を確実に防止することができる。
【0019】
更に、前記環状ビードにおける前記コーナー部に位置する部分は、下側内面の外側端縁が、当該環状ビードにおける前記平坦壁部に位置する部分よりも下方に位置するように形成され、上側内面の外側端縁が、当該環状ビードにおける前記平坦壁部に位置する部分と同一高さ位置に形成されてい
る。
【0020】
これによれば、前記環状ビードの上側内面の外側端縁の高さ位置が全周にわたって揃うので、胴部のコーナー部に荷重を受けた際の胴部の変形を良好に抑制することができ、胴部の対角強度を確実に向上させることができる。
【0021】
また、
本発明においては、前記平坦壁部における前記パネル部の上方と下方との少なくとも一方に、横方向に直線状に延びる溝状の横ビードを備え、前記横ビードは、両端部が当該平坦壁部の両側に隣接する夫々の前記コーナー部で開放されていることが好ましい。
【0022】
前記環状ビードと前記横ビードとを共に設けることにより、胴部の対角強度を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態の合成樹脂製ボトルを示す側面図。
【
図3】Aは平坦壁部に位置する環状ビードの断面図、Bはコーナー部に位置する環状ビードの断面図。
【
図4】自動販売機の払い出し機構を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の合成樹脂製ボトル1(以下、ボトル1という)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなるプリフォーム(図示せず)をブロー成形により二軸延伸してなる略円筒状のPETボトルであり、
図1に示すように、キャップ2(仮想線)を螺着することにより封止される口部3と、該口部3から下方に向かって次第に拡径する肩部4を介して更にその下方に連設された胴部5と、該胴部5の下部を閉塞する底部6とを備えている。
【0025】
図1に示すように示す形状に形成されたボトル1には、内部に飲料が充填され、次いで、口部3にキャップ2を螺着して封止し、続いて、胴部5に図示しないロールラベルが装着されて製品として販売される。ロールラベルは、帯状に形成された薄手の合成樹脂シートであり、内容物の表示等の印刷が施されている。そして、後述するように、ボトル1に飲料を収容した製品は、自動販売機を用いて販売される。
【0026】
胴部5は、
図2に示すように、コーナー部8を介して周方向に連設された4つの平坦壁部9を備えて四角筒状に形成されている。
【0027】
図1に示すように、各平坦壁部9には、胴部5の内圧変化に対応して膨出変形と没入変形とを許容するパネル部10が形成されている。各コーナー部8は、互いに隣り合う平坦壁部9の周方向端縁同士を繋ぐ湾曲面で構成されている。
【0028】
各平坦壁部9と各コーナー部8との境界位置には、上下方向に延びる溝状の縦ビード11が形成されている。縦ビード11は、パネル部10の上下方向の長さと略同等の長さに形成されている。
【0029】
また、
図1に示すように、胴部5の各平坦壁部9には、パネル部10の上方と下方とに夫々位置して横方向に直線状に延びる溝状の横ビード12が形成されている。横ビード12は、パネル部10の横方向の長さよりも長く、その横方向両端の夫々が、各コーナー部8で開放されている。
【0030】
また、
図1に示すように、胴部5には、その全周にわたって連続する溝状の上部環状ビード13と下部環状ビード14とが形成されている。
【0031】
上部環状ビード13は本発明の環状ビードに相当するものであり、胴部5の上縁(肩部4との境界)から下方に所定距離を存した位置に形成されている。この位置に配置された上部環状ビード13は、各平坦壁部9の横ビード12とパネル部10との間を通って周方向に延びる。
【0032】
更に、上部環状ビード13は、全周にわたって同じ形状とされておらず、
図3Aに示した上部環状ビード13における平坦壁部9に位置する部分の深さD1及び外側上下幅W1(上側内面の外側端縁と下側内面の外側端縁との間の距離)よりも、
図3Bに示した上部環状ビード13におけるコーナー部8に位置する部分の深さD2及び外側上下幅W2が大とされている。このとき、上部環状ビード13は、その下側内面の外側端縁が、平坦壁部9に位置する部分よりも下方に位置し、その上側内面の外側端縁の位置は、平坦壁部9に位置する部分と同じに形成されている。
【0033】
以上の構成による本実施形態のボトル1は、次の効果を有している。即ち、各平坦壁部9に横ビード12を形成したことにより、胴部5の対角強度(対角線方向の圧縮変形強度)が向上し、胴部5が横方向からの荷重を受けた場合に対角線方向の変形を抑制することができる。
【0034】
ボトル1の胴部5の対角強度が向上することにより、例えば、
図4に示すように、複数のボトル1を自動販売機のコラム15内に横倒姿勢で複数段に積み上げ際、最下位置のボトル1が払い出し部のストッパー16のすり抜けが防止できる。
【0035】
自動販売機の払い出し部のストッパー16は、ボトル1の胴部5のコーナー部8に当接することにより、ボトル1を係止する。ストッパー16がコーナー部8に当接しているボトル1に対してその上方から荷重がかかると、この荷重によりボトル1の胴部5が変形してボトル1がストッパー16とコラム15の内壁との間を通過しようとするが、この時の変形は胴部5の横ビード12により抑制されるから、ボトル1はストッパー16とコラム15の内壁との間を通過することはなく、自動販売機における多本出が防止される。
【0036】
更に、
図1に示すように、横ビード12は、その長手方向両端部が夫々コーナー部8で開放する形状とされていることにより、ブロー成形の際に胴部5の肉厚を均一として良好な胴部5が形成される。よって、ボトル1のブロー成形時の賦形性を低下させることなく比較的長い横ビード12を設けることができる。
【0037】
なお、横ビード12はパネル部10の上方と下方との何れか一方のみに設けておけばよい。
【0038】
また、ボトル1は、上部環状ビード13が形成されていることによって胴部5の対角強度が一層向上している。そして、上部環状ビード13は、
図3Bに示すように、コーナー部8に位置する部分の深さD2を大としたので、平坦壁部9に位置する部分の深さD1(
図3B参照)が比較的浅くても対角強度を大きくすることができる。そして、上部環状ビード13のコーナー部8に位置する部分の外側上下幅W2を平坦壁部9に位置する部分より大きくしたことにより、良好な賦形性を維持して、上部環状ビード13のコーナー部8に位置する部分の深さD2を大とすることができる。
【0039】
なお、本実施形態のように、横ビード12と上部環状ビード13とは、ボトル1に両方を設けて対角強度を飛躍的に向上させることができるが、
横ビード12を設けずに上部環状ビード13を設けただけでも上記対角強度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0040】
1…合成樹脂製ボトル、2…キャップ、3…口部、4…肩部、5…胴部、6…底部、8…コーナー部、9…平坦壁部、10…パネル部、12…横ビード、13…上部環状ビード(環状ビード)。