特許第6427019号(P6427019)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6427019-鉄道車両用台車の軸箱支持装置 図000002
  • 特許6427019-鉄道車両用台車の軸箱支持装置 図000003
  • 特許6427019-鉄道車両用台車の軸箱支持装置 図000004
  • 特許6427019-鉄道車両用台車の軸箱支持装置 図000005
  • 特許6427019-鉄道車両用台車の軸箱支持装置 図000006
  • 特許6427019-鉄道車両用台車の軸箱支持装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427019
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】鉄道車両用台車の軸箱支持装置
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/30 20060101AFI20181112BHJP
   B61F 5/52 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   B61F5/30 E
   B61F5/52
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-18102(P2015-18102)
(22)【出願日】2015年2月2日
(65)【公開番号】特開2016-141234(P2016-141234A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年12月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 泰史
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0253004(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/109279(WO,A1)
【文献】 米国特許第3013808(US,A)
【文献】 特開平8−268276(JP,A)
【文献】 特開平10−278791(JP,A)
【文献】 中国実用新案第201193037(CN,Y)
【文献】 特開平8−324427(JP,A)
【文献】 米国特許第2740622(US,A)
【文献】 特開2002−211395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/26 − 5/36
B61F 5/50 − 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸を支持する軸受が収容された軸箱を台車枠に連結する鉄道車両用台車の軸箱支持装置であって、
前記軸箱から車両長手方向に延びる軸ばり本体部と、前記軸ばり本体部の先端に設けられ、車幅方向両側が開口する筒状部が形成された軸ばり端部とを有する軸ばりと、
前記筒状部の内部空間に車幅方向に挿通された心棒と、
前記筒状部と前記心棒との間に介装された弾性ブッシュと、
前記台車枠に設けられ、前記心棒の両端部が接続される受け座と、を備え、
前記筒状部は、前記軸ばり本体部に一体に形成された第1半筒部と、前記第1半筒部に対して上下方向に重ね合わされた第2半筒部とに分割されている、鉄道車両用台車の軸箱支持装置。
【請求項2】
前記第2半筒部は、前記第1半筒部に上下方向に対向する主対向面と、前記第1半筒部又は前記軸ばり本体部の少なくとも一方に車両長手方向に対向する副対向面とを有する、請求項1に記載の鉄道車両用台車の軸箱支持装置。
【請求項3】
前記副対向面は、前記第2半筒部が前記第1半筒部に対して車両長手方向の一方に変位することを規制する第1副対向面と、前記第2半筒部が前記第1半筒部に対して車両長手方向の他方に変位することを規制する第2副対向面とを有する、請求項2に記載の鉄道車両用台車の軸箱支持装置。
【請求項4】
車幅方向から見て、前記第1半筒部の半円筒状の内面の周方向長さは、前記第2半筒部の半円筒状の内面の周方向長さよりも長い、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車の軸箱支持装置。
【請求項5】
前記第1半筒部及び前記第2半筒部に上下方向に挿入されて、前記第1半筒部に対して前記第2半筒部を固定する締結部材を更に備え、
車幅方向から見て、前記第1半筒部は、前記筒状部の中心を通り且つ前記締結部材の挿入方向に直交する仮想線を越えて前記第2半筒部側に突出している、請求項4に記載の鉄道車両用台車の軸箱支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用台車の軸箱支持装置に関し、特に軸梁と台車枠との連結機構に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の台車では、輪軸を支持する軸受が収容された軸箱が台車枠に対して前後左右方向に変位可能に適切な剛性で軸箱支持装置により弾性支持される。軸箱支持装置には、様々な方式が存在する。軸ばり方式の軸箱支持装置では、軸箱と台車枠との間にコイルバネからなる軸バネが設けられると共に、軸箱から車両長手方向に延びる軸ばりが台車枠の受け座に弾性的に支持される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
軸ばりは、軸箱から車両長手方向に延びる軸ばり本体部と、軸ばり本体部の先端に設けられ、車幅方向両側が開口する筒状部が形成された軸ばり端部とを有する。筒状部には、ゴムブッシュを介して心棒が挿入され、心棒が台車枠の受け座に固定される。筒状部は、ゴムブッシュ及び心棒を挿入するために、上下方向に延びる分割線を境界として車両長手方向に分割される。具体的には、軸ばり本体部に一体に形成された第1半筒部と、第1半筒部に車両長手方向に重ね合わされた第2半筒部とに分割され、第1半筒部及び第2半筒部には車両長手方向にボルトが挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−278791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、踏面ブレーキを備えた台車では、ブレーキ時において制輪子が車輪の踏面に車両長手方向に押し付けられると、車輪に負荷される車両長手方向のブレーキ力が、車軸及び軸箱を介して軸ばりに伝達され、第1半筒部と第2半筒部とが互いに車両長手方向に引き離される向きに力が作用する。そのため、ボルトには、ブレーキ力がボルト軸方向(車両長手方向)の引張力として作用することになり、高強度のボルトを用いる等して強度設計に配慮が必要であった。
【0006】
そこで本発明は、台車枠に軸ばりを介して軸箱を連結する機構において、強度面において有利な構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る鉄道車両用台車の軸箱支持装置は、車軸を支持する軸受が収容された軸箱を台車枠に連結する鉄道車両用台車の軸箱支持装置であって、前記軸箱から車両長手方向に延びる軸ばり本体部と、前記軸ばり本体部の先端に設けられ、車幅方向両側が開口する筒状部が形成された軸ばり端部とを有する軸ばりと、前記筒状部の内部空間に車幅方向に挿通された心棒と、前記筒状部と前記心棒との間に介装された弾性ブッシュと、前記台車枠に設けられ、前記心棒の両端部が接続される受け座と、を備え、前記筒状部は、前記軸ばり本体部に一体に形成された第1半筒部と、前記第1半筒部に上下方向に重ね合わされた第2半筒部とに分割されている。
【0008】
前記構成によれば、軸ばりの筒状部は、軸ばり本体部に一体に形成された第1半筒部と、第1半筒部に上下方向に重ね合わされた第2半筒部とに分割されているので、第1半筒部は、心棒の中心から見て軸ばり本体部とは反対側まで延設される。そのため、第1半筒部は、軸箱を介して軸ばりに伝達される車両長手方向の両方向の荷重を受け止めることができる。よって、軸箱を介して軸ばりに伝達される車両長手方向の荷重が、第1半筒部から第2半筒部を引き離す向きに作用することが抑制され、第1半筒部に対する第2半筒部の取付強度の要求を緩和することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、台車枠に軸ばりを介して軸箱を連結する機構において、強度面において有利な構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る鉄道車両用台車の斜視図である。
図2図1に示す台車の側面図である。
図3図2に示す台車の要部の拡大図である。
図4図3に示す軸ばりの筒状部の分解図である。
図5図3に示す軸ばりの筒状部の底面図である。
図6図3のVI−VI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、以下の説明では、台車が走行する方向であって鉄道車両の車体が延びる方向を車両長手方向とし、それに直交する横方向を車幅方向として定義する。車両長手方向は前後方向とも称し、車幅方向は左右方向とも称しえる。
【0012】
図1は、実施形態に係る鉄道車両用台車1の斜視図である。図2は、図1に示す台車1の側面図である。図1及び2に示すように、台車1は、二次サスペンションとなる空気バネ2を介して車体50を支持するための台車枠3を備える。台車枠3は、台車1の長手方向中央において車幅方向に延びる横ばり4を備えるが、従来の台車枠の構成とは異なり、横ばり4の車幅方向両側の端部4aから車両長手方向に延びる側ばりを備えていない。横ばり4の車両長手方向両側には、車幅方向に沿って延びる車軸5が配置され、車軸5の車幅方向両側には車輪6が固定される。車軸5の車幅方向両側の端部には、車輪6よりも車幅方向外側にて車軸5を回転自在に支持する軸受7が設けられ、軸受7は軸箱8に収容される。
【0013】
軸箱8は、軸箱支持装置10によって横ばり4の車幅方向両側の端部4aに連結される。軸箱支持装置10は、軸箱8から車両長手方向の横ばり4側に向けて延びた軸ばり11を備える。即ち、台車1は、いわゆる軸ばり式台車である。軸ばり11の先端部には、車幅方向両側が開口する筒状部29が設けられる。筒状部29の内部空間には、弾性ブッシュとしてのゴムブッシュ13(図6参照)を介して心棒14が挿通される。横ばり4の車幅方向両側の端部4aには、軸箱支持装置10を構成する一対の受け座15,16が車両長手方向外方に突出して設けられる。受け座15,16には、下方に向けて開口する溝部17,18が形成される。溝部17,18には、心棒14の車幅方向両側の端部が下方から嵌合される。その状態で、溝部17,18の下側開口を閉鎖するように蓋部材19がボルト(図示せず)により下方から受け座15,16に固定され、心棒14が受け座15,16と蓋部材19とによって挟持される。このようにして、心棒14が受け座15,16に接続される。
【0014】
横ばり4には、車輪6を制動するためのブレーキ装置20が設けられる。ブレーキ装置20は、車輪6の踏面に車両長手方向の内側(横ばり4側)から対向させた制輪子20aを有する。ブレーキ装置20は、電気、空気圧又は油圧のアクチュエータ(図示せず)により制輪子20aを車輪6の踏面に対して接触又は離間させるように駆動する、踏面ブレーキである。即ち、ブレーキ装置20は、制輪子20aを車体長手方向外方(横ばり4側とは反対側)に向けて車輪6の踏面に押し付けることで車輪6を制動する。そのため、制動時の車輪6には、車両長手方向外方に向けた荷重(ブレーキ力)が作用する。
【0015】
横ばり4と軸箱8との間には、車両長手方向に延びた板バネ22が架け渡され、板バネ22の長手方向の中央部22aが横ばり4の車幅方向両側の端部4aを下方から支持し、板バネ22の長手方向両側の端部22bが軸箱8に支持される。即ち、板バネ22が、一次サスペンションの機能と従来の側ばりの機能とを兼ねている。板バネ22の長手方向の中央部22aは、横ばり4の下方に潜り込むように配置される。横ばり4の車幅方向両側の端部4aの下部には、円弧状の下面を有する押圧部材23が設けられ、その押圧部材23が板バネ22の長手方向の中央部22aに上方から載せられて板バネ22を離間可能に上方から押圧する。即ち、押圧部材23は、板バネ22を上下方向に固定しない状態で、横ばり4からの重力による下方荷重によって板バネ22の中央部22aに接触する。なお、押圧部材23は、板バネ22と対向するゴムシートを備えてもよい。
【0016】
軸箱8上には、板バネ22の端部22bを下方から支持する支持部材24が設けられる。即ち、板バネ22の車両長手方向両側の端部22bは、支持部材24の上面に離間可能に接触する。具体的には、支持部材24は、後述するように、上面傾斜部材25、ゴム積層体26及び受部材27を上下方向に積層してなる。支持部材24の上面は、車幅方向から見た側面視において、横ばり4に向けて斜め下方に傾斜している。即ち、支持部材24の上面は、車両長手方向外側よりも車両長手方向内側(横ばり4側)の方が低くなるように傾斜している。板バネ22のうち中央部22aと端部22bとの間の中間部22cの一部は、一対の受け座15,16で挟まれた空間を通過し、横ばり4の下方位置に至る。板バネ22の端部22b及び中間部22cは、側面視で中央部22aに向けて下方に傾斜しており、板バネ22の中央部22aは、板バネ22の端部22bよりも下方に位置する。即ち、板バネ22は、側面視で全体として下方に凸な弓形状に形成される。
【0017】
図3は、図2に示す台車1の要部の拡大図である。図4は、図3に示す軸ばり11の筒状部29の分解図である。図5は、図3に示す軸ばり11の筒状部29の底面図である。なお、図3では、見易さのため、ゴムブッシュ13、心棒14、受け座15,16及び蓋部材19の図示を省略している。図3に示すように、支持部材24は、下から順に、上面傾斜部材25、ゴム積層体26及び受部材27が積層されてなる。上面傾斜部材25は、軸箱8の上面8aに設置された状態で上面が車両長手方向外側よりも車両長手方向内側の方が低くなるように傾斜している。上面傾斜部材25の上面には、ゴム積層体26が取り付けられ、ゴム積層体26の上面には、受部材27が取り付けられる。上面傾斜部材25、ゴム積層体26及び受部材27は、互いに水平方向に相対変位しないように互いに位置決めする構造(例えば、嵌合構造)を有する。
【0018】
受部材27は、板バネ22が上方から載置される底壁部27aと、底壁部27aの車両長手方向外側より上方に突出する端壁部27bと、底壁部27aの車幅方向両側より上方に突出する一対の側壁部27cとを有する。底壁部27aは、その上面が車両長手方向外側よりも車両長手方向内側の方が低くなるように傾斜している。端壁部27bは、板バネ22の端部22bの長手方向端面に対向し、板バネ22の長手方向外方への移動を規制する。一対の側壁部27cは、板バネ22の端部22bの車幅方向両側面に対向し、板バネ22の車幅方向両側への移動を規制する。
【0019】
横ばり4(図2参照)から板バネ22に伝達される車体荷重は、板バネ22の端部22bから支持部材24に伝達される。その際、支持部材24の上面(受部材27の底壁部27aの上面)が傾斜しているので、板バネ22の端部22bから支持部材24に伝達される下向きの車体荷重Fは、鉛直方向に対して車両長手方向外方に傾く。そのため、車体荷重Fは、水平分力FHと鉛直分力FVとを有し、水平分力FHが軸箱8を車両長手方向外方(横ばり4から離れる方向)に変位させる向きに作用することになる。
【0020】
図3及び4に示すように、軸ばり11は、軸箱8から車両長手方向に延びる軸ばり本体部11aと、軸ばり本体部11aの先端に設けられ、車幅方向両側が開口する内周面が円筒形状の筒状部29が形成された軸ばり端部11bとを有する。筒状部29は、軸ばり本体部11aに連続して一体に形成された第1半筒部30と、第1半筒部30に上下方向に重ね合わされた第2半筒部31とに分割されている。
【0021】
第1半筒部30は、軸ばり本体部11aの先端の上部から連続して車両長手方向内側に突出する。軸ばり本体部11aの先端の下部は、車両長手方向内方に向いた端面28を有する。第1半筒部30は、下方に向けて開放された半円筒状である。第1半筒部30の下端面は、第1半筒部30の半円筒状の内面30aの両端にそれぞれ隣接する第1主対向面30b,30cと、第1主対向面30b,30cの径方向外側にそれぞれ設けられた第2主対向面30d,30eとを有する。第1主対向面30b,30cは、第2主対向面30d,30eよりも下方に位置する。但し、第1主対向面30b,30cは、軸ばり本体部11aの下端よりも上方に位置する。第1主対向面30b,30cは、第2主対向面30d,30eよりも大きい。
【0022】
筒状部29の中心よりも車両長手方向内側では、第1主対向面30bと第2主対向面30dとの間に、鉛直方向に延びて車両長手方向内方に向いた第1副対向面30fが形成されている。即ち、第1主対向面30b、第1副対向面30f、及び第2主対向面30dによって、第1半筒部30の下端面には、鉛直方向にオフセットされた第1段差が形成される。筒状部29の中心よりも車両長手方向外側では、第1主対向面30cと第2主対向面30eとの間に、鉛直方向に延びて車両長手方向外方に向いた第2副対向面30gが形成されている。即ち、第1主対向面30c、第2副対向面30g及び第2主対向面30eによって、第1半筒部30の下端面には、鉛直方向にオフセットされた段差が形成される。第1副対向面30f及び第2副対向面30gの各々は、第1主対向面30b,30c及び第2主対向面30d,30eの各々よりも小さい。筒状部29の中心よりも車両長手方向外側に位置する第2主対向面30eは、軸ばり本体部11aの端面28に連続する。
【0023】
第2半筒部31は、上方に向けて開放された半円筒状である。第2半筒部31の上端面は、第2半筒部31の半円筒状の内面31aの両端にそれぞれ隣接する第1主対向面31b,31cと、第1主対向面31b,31cの径方向外側にそれぞれ設けられた第2主対向面31d,31eとを有する。第1主対向面31b,31cは、第2主対向面31d,31eよりも下方に位置する。筒状部29の中心よりも車両長手方向内側では、第1主対向面31bと第2主対向面31dとの間に、鉛直方向に延びて車両長手方向外方に向いた第1副対向面31fが形成されている。筒状部29の中心よりも車両長手方向外側では、第1主対向面31cと第2主対向面31eとの間に、鉛直方向に延びて車両長手方向内方に向いた第2副対向面31gが形成されている。即ち、第1主対向面31b,31c、第1副対向面31f,31g及び第2主対向面31d,31eによって、第2半筒部31の上端面には、鉛直方向にオフセットされた段差がそれぞれ形成される。
【0024】
図3〜5に示すように、第1半筒部30の第1主対向面30b,30cには、上方に延びるように凹設されて内周面に雌ネジが形成されたボルト穴30h,30iが形成されている。第2半筒部31の底面には、上方に窪んだ窪み部31h,31iが形成されている。窪み部31h,31iの上面には、第1主対向面31b,31cまで到達するように上方に延びるスルーホールであるボルト穴31j,31kが形成されている。第2半筒部31が第1半筒部30に対して下方から重ね合わせられた状態で、ボルトB(締結部材)が下方からボルト穴30h,30i,31j,31kに挿入されることで、第1半筒部30に第2半筒部31が固定される。ボルトBの頭部Baは、第2半筒部31の窪み部31h,31iに収容される。
【0025】
第1半筒部30の第1主対向面30b,30cと第2半筒部31の第1主対向面31b,31cとは、互いに上下方向に対向して接触する。第1半筒部30の第2主対向面30d,30eと第2半筒部31の第2主対向面31d,31eとは、互いに上下方向に対向して接触する。第1半筒部30の第1副対向面30fと第2半筒部31の第1副対向面31fとは、互いに車両長手方向に対向して接触する。第1半筒部30の第2副対向面30gと第2半筒部31の第2副対向面31gとは、互いに車両長手方向に対向して接触する。第2半筒部31の車両長手方向外側の端面である第3副対向面31mは、軸ばり本体部11aの端面28に対向して接触する。
【0026】
第1副対向面30f,31fは、第2半筒部31が第1半筒部30に対して車両長手方向外方に変位するのを規制する。第2半筒部31の第3副対向面31m及び軸ばり本体部11aの端面28も、第2半筒部31が第1半筒部30に対して車両長手方向外方に変位するのを規制する。他方、第2副対向面30g,31gは、第2半筒部31が第1半筒部30に対して車両長手方向内方に変位するのを規制する。
【0027】
車幅方向から見た側面視では、第1半筒部30の半円筒状の内面30aの周方向長さL1は、第2半筒部31の半円筒状の内面31aの周方向長さL2よりも長い。具体的には、車幅方向から見た側面視において、第1半筒部30の径方向内側の部分(即ち、第1主対向面30b,30cを有する部分)が、筒状部29の中心Pを通り且つボルトBの挿入方向に直交する仮想線Hを越えて第2半筒部31側に突出している。これにより、第1半筒部30の第1主対向面30b,30cは、仮想線Hよりも下方に位置している。なお、仮想線Hは、側面視において軸箱8の上面8a(支持部材24が載せられる面)に平行な線でもある。
【0028】
図6は、図3のVI−VI線断面図である。図6に示すように、心棒14は、筒状部29の内部空間に車幅方向に挿通される。心棒14は、円柱部14aと、円柱部14aの車幅方向の両側に設けられた一対の円錐状のフランジ部14bと、一対のフランジ部14bの両側面から車幅方向外側に向けて突出した突起状の端部14cとを有する。ゴムブッシュ13は、筒状部29と心棒14との間に介在する。ゴムブッシュ13は、円筒部13aと、円筒部13aの車幅方向の両側から径方向外方に突出した一対のフランジ部13bとを有し、心棒14に外嵌される。即ち、ゴムブッシュ13の円筒部13aが心棒14の円柱部14aに接触し、ゴムブッシュ13のフランジ部13bが心棒14のフランジ部14bに接触する。
【0029】
第1半筒部30の内面30a及び第2半筒部31の内面31aにより形成される筒状部29の内周面は、ゴムブッシュ13の円筒部13a及びフランジ部13bの外周面に接触する。心棒14の端部14cは、受け座15,16の下方に開口する溝部17,18に嵌合された状態で、蓋部材19が受け座15,16に下方からボルト固定されることで、心棒14が受け座15,16を介して台車枠3に接続される。筒状部29は、ゴムブッシュ13の弾性により、心棒14に対して車両長手方向、車幅方向及び鉛直方向への相対的な変位が許容される。
【0030】
以上に説明した構成によれば、軸ばり11の筒状部29は、軸ばり本体部11aに連続して一体に形成された第1半筒部30と、第1半筒部30に上下方向に重ね合わされた第2半筒部31とに分割されているので、第1半筒部31は、心棒14の中心Pから見て軸ばり本体部11aとは反対側(横ばり4側)まで設けられる。そのため、第1半筒部30は、軸箱8を介して軸ばり11に伝達される車両長手方向の両方向の荷重を受け止めることができる。よって、軸箱8を介して軸ばり11に伝達される車両長手方向の荷重が、第1半筒部30から第2半筒部31を引き離す向きに作用することが抑制され、第1半筒部30に対する第2半筒部31の取付強度の要求を緩和することができる。即ち、ボルトBに負荷される荷重が低減されるため、ボルトBの取付強度の要求が緩和され、設計負担が軽減される。
【0031】
本実施形態では、板バネ22を介して伝達される車体荷重Fの水平分力FHが、車両長手方向外方に向かう荷重として常に軸ばり11に負荷される。更に、車輪6の制動時には、車輪6に付与されるブレーキ力が、車両長手方向の外方に向かう荷重として軸ばり11に負荷される。よって、本実施形態の台車1の軸ばり11には車両長手方向外方に向かう大きな荷重が負荷されやすく、前述した筒状部29の構成が強度面において特に有利となる。
【0032】
また、第1半筒部30及び第2半筒部31は、互いに車両長手方向に対向する第1副対向面30f,31f及び第2副対向面30g,31gを有するので、これら副対向面30f,31f,30g,31gにより、第2半筒部31が第1半筒部30に対して車両長手方向に相対変位する方向の荷重を受け止めることできる。特に、第1副対向面30f,31fが、第2半筒部31が第1半筒部30に対して車両長手方向外方に変位することを規制し、第2副対向面30g,31gが、第2半筒部31が第1半筒部30に対して車両長手方向内方に変位することを規制するので、ボルトBに作用する剪断力を十分に抑制することができる。
【0033】
また、第1半筒部30の径方向内側の内面30aの周方向長さL1は、第2半筒部31の径方向内側の内面31aの周方向長さL2よりも長いので、第1半筒部30は、第2半筒部31に比べて、ゴムブッシュ13を介して心棒14から受ける力を多く受け止めることができる。更に、軸箱8を介して軸ばり11に伝達される車両長手方向の荷重は、筒状部29とゴムブッシュ13との間の界面では、筒状部29の中心Pを通る水平線上において最も大きく作用するが、第1半筒部30が水平な仮想線Hを越えて第2半筒部31側に突出することで仮想線H上には第1半筒部30の内面30aが存在するため、当該荷重は、第1半筒部30により受け止められやすくなる。
【0034】
よって、第1半筒部30に比べて第2半筒部31に掛かる負荷を好適に低減することができる。その結果、軸箱8を介して軸ばり11に伝達される車両長手方向の荷重が、第1半筒部30から第2半筒部31を引き離す向きに作用することが更に抑制され、第1半筒部30に対する第2半筒部31の取付強度の要求を更に好適に緩和することができる。
【0035】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。本実施形態では、第1半筒部30及び第2半筒部31の主対向面は、軸箱8の上面8aに平行であるが、当該上面8aに対して傾斜してもよい。即ち、図3において、主対向面が仮想線Hに対して傾斜してもよい。その場合、主対向面の法線ベクトルが車両長手方向成分よりも上下方向成分の方が大きくなるような角度範囲で主対向面が傾斜することで、第1半筒部30に対して第2半筒部31が主に上下方向に重ね合わされていればよい。また、本実施形態では、筒状部29の上側部分を軸ばり本体部11aと一体に形成された第1半筒部30とし、筒状部29の下側部分を別体の第2半筒部31としたが、筒状部の下側部分を軸ばり本体部と一体に形成された第1半筒部とし、筒状部の上側部分を別体の第2半筒部としてもよい。
【0036】
本実施の形態では、板バネ22が載置される支持部材24の上面が傾斜する構成としたが、水平面であってもよく、ブレーキ制動時に軸ばりに負荷される車両長手方向の荷重が第1半筒部から第2半筒部を引き離す向きに作用することが抑制され、台車枠と軸はりとの連結部分の荷重負担を軽減できればよい。
【0037】
本実施形態では、第1副対向面30fに対する第1副対向面31fの接触と、軸ばり本体部11aの端面28に対する第3副対向面31mの接触との両方によって、第2半筒部31が第1半筒部30に対して車両長手方向外方に変位することが規制されるが、いずれか一方の接触のみを設けてもよい。また、各対向面は、平面に限られず、曲面でもよい。互いに対向する対向面同士は、面接触せずに線接触又は点接触してもよい。また、ゴムブッシュ13は、ゴム以外の弾性材料により形成されてもよい。また、本実施形態の軸箱支持装置10は、板バネ22を用いた台車1に適用したが、軸箱に車両長手方向の力が発生しやすい操舵台車に適用しても好適である。また、本実施の形態の軸箱支持装置10は、板バネを用いた台車や操舵台車に限られず、一般的な軸ばり式の軸箱支持装置を備えた台車に適用してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 台車
3 台車枠
5 車軸
7 軸受
8 軸箱
10 軸箱支持装置
11 軸ばり
11a 軸ばり本体部
11b 軸ばり端部
13 ゴムブッシュ(弾性ブッシュ)
14 心棒
15,16 受け座
29 筒状部
30 第1半筒部
30a 内面
30b,30c 第1主対向面
30d,30e 第2主対向面
30f 第1副対向面
30g 第2副対向面
31 第2半筒部
31a 内面
31b,31c 第1主対向面
31d,31e 第2主対向面
31f 第1副対向面
31g 第2副対向面
31m 第3副対向面
50 車体
B ボルト(締結部材)
H 仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6