特許第6427021号(P6427021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6427021-導電性ローラ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427021
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】導電性ローラ
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20181112BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   G03G15/08 235
   F16C13/00 B
   F16C13/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-20454(P2015-20454)
(22)【出願日】2015年2月4日
(65)【公開番号】特開2016-142990(P2016-142990A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(72)【発明者】
【氏名】▲配▼島 友則
【審査官】 山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−223869(JP,A)
【文献】 特開2006−011275(JP,A)
【文献】 特開2009−192748(JP,A)
【文献】 実開平3−014666(JP,U)
【文献】 実開平6−039208(JP,U)
【文献】 特開2013−202637(JP,A)
【文献】 特開2005−181805(JP,A)
【文献】 特開平06−202458(JP,A)
【文献】 特開2002−091158(JP,A)
【文献】 特開2007−248814(JP,A)
【文献】 特開2007−033692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08−15/09
F16C 13/00
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の軸部を有し、該軸部の両端に、フランジ軸を有するフランジ部材を装着して形成される導電性ローラにおいて、
前記フランジ部材に、前記軸部の内周面から離間させて、前記フランジ部材より前記軸部の内部に入り込んだ位置であって前記軸部の端部のみに配置され、前記軸部の回転軸から前記軸部の内周面に向かう空気の流れを形成する羽根を設けたことを特徴とする、導電性ローラ。
【請求項2】
前記羽根は、前記フランジ部材に設けられた前記軸部の軸方向に延在する羽根軸の外周面において、前記軸方向に見た場合に隣り合う羽根がなす角度が30〜180度となる位置に複数個、前記軸部の軸方向両端のそれぞれの前記フランジ部材の間で周方向位置をずらして配置されている、請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項3】
前記軸部の外表面に、トナーを付着させるトナー付着部材が形成された現像ローラである、請求項1または2に記載の導電性ローラ。
【請求項4】
前記羽根は、片持ち状に延在する羽根軸に取り付けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の導電性ローラ。
【請求項5】
前記羽根は、前記軸部の軸方向に沿って延在する板体である、請求項1から4のいずれか一項に記載の導電性ローラ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の導電性ローラと、
前記導電性ローラの両端部に圧接するシール部材と、を含む、現像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、現像ローラ等の導電性ローラを備えた、例えば、電子複写機等の画像形成装置が知られている。この画像形成装置には、通常、トナーが充填されたトナー収納容器から、トナー供給ローラを介して現像ローラに、更に現像ローラを介して感光ドラムに、トナーを供給して、感光ドラムに形成された静電潜像にトナーを付与する、トナー収納容器とトナー供給ローラと現像ローラとを含む、現像装置としてのカートリッジが設けられている。
ところで、トナーは熱による影響を受け易く、例えば、導電性ローラの回転や他部材との摩擦等で発生した熱によりカートリッジ内の温度が上昇すると、例えば、トナーが溶けてしまう等の不具合が発生し、その結果、画像不良等にも繋がる虞がある。
【0003】
そこで、この発明の目的は、温度上昇を十分に抑制することができる導電性ローラを提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、この発明に係る導電性ローラは、円筒状の軸部を有し、該軸部の両端に、フランジ軸を有するフランジ部材を装着して形成される導電性ローラにおいて、前記フランジ部材に、前記軸部の内周面から離間させて羽根を設けたことを特徴とする。この発明に係る導電性ローラによれば、発生した熱の放熱を十分に行うことができるので、導電性ローラにおける温度上昇を十分に抑制することができる。
【0005】
この発明の導電性ローラでは、前記羽根は、前記フランジ部材に設けられた、前記軸部の軸方向に延在する羽根軸の、外周面の羽根軸中心角が30〜180度となる位置に複数個、前記軸部の軸方向両端のそれぞれの前記フランジ部材の間で周方向位置をずらして配置されていることが好ましい。この構成によれば、より効率良く、導電性ローラにおける温度上昇を十分に抑制することができる。
【0006】
この発明の導電性ローラでは、前記羽根は、前記軸部の内周面が露出する、前記フランジ部材より前記軸部の内部に入り込んだ位置に配置されていることが好ましい。この構成によれば、軸部に発生した熱の放熱をより強く行うことができるので、より効率良く、導電性ローラにおける温度上昇を十分に抑制することができる。
【0007】
この発明の導電性ローラは、前記軸部の外表面に、トナーを付着させるトナー付着部材が形成された現像ローラであることが好ましい。この構成によれば、温度上昇によるトナー溶けは、特に現像ローラで起き易いので、導電性ローラが現像ローラである場合に、本発明を適用するのが、特に効果的だからである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、温度上昇を十分に抑制することができる導電性ローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の一実施の形態に係る導電性ローラの、一端側のみについて説明する、一部非断面部分を含む断面図である。
図2図1のフランジ部材を示し、(a)はフランジ軸側から見た外観図、(b)は羽根及び羽根軸の一部非断面部分を含む断面図、(c)は羽根側から見た外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための一形態について図面を参照して説明する。
この発明に係る導電性ローラは、例えば、電子複写機等の画像形成装置に用いられる導電性を有するローラであり、本実施形態では、例えば、現像ローラとして用いられる導電性ローラについて説明する。
【0011】
図1に示す現像ローラ10は、トナーが充填されたトナー収納容器(図示しない)の開口部に設けられて感光ドラム(図示しない)にトナーを供給するものであり、感光ドラムに形成された静電潜像にトナーを付与する現像装置としての、例えばカートリッジ(図示しない)に備えられている。図1に示すように、この現像ローラ10は、円筒状の軸部11と、軸部11の両端に取り付けられたフランジ部材12を有しており、軸部11の外表面には、トナーを付着させる、例えばウレタン等の樹脂層からなるトナー付着部材(図示省略)が形成されている。
【0012】
本実施形態の軸部11は、例えば、アルミニウム製の両端が開口する円筒体(スリーブ)からなり、各開口部には、フランジ部材12が嵌合状態で挿入又は圧入されている。フランジ部材12は、必要に応じ、接着剤を用いて軸部11に接着固定される。
本実施形態のフランジ部材12は、例えば、導電グレードの樹脂からなる円筒体状に形成されて、一端側に端面中心軸方向外側に突出するフランジ軸13を有すると共に他端側を開口としている。導電グレードの樹脂としては、例えば、ポリカーボネートやポリアセタールが用いられる。
【0013】
フランジ軸13は、現像装置に現像ローラ10を装着する際、現像ローラ10の軸方向一端側のフランジ軸13が、軸受け(図示しない)に回転自在に軸支されると共に、現像ローラ10の軸方向他端側のフランジ軸13から回転駆動部(図示しない)の駆動力が伝達されるように、配置される。フランジ軸13に駆動力が伝達されると、現像ローラ10は、その軸線周りに回転(自転)する。なお、図1は、現像ローラ10の軸方向の一方側のみを破断した図である。
本実施形態のフランジ軸13には、軸中心線に沿ってフランジ軸13を貫通する貫通孔13aが開けられており、この貫通孔13aを介して、フランジ部材12により両端開口が塞がれた軸部11の内部に、軸部11の外部の気体(通常は空気。以下、空気として説明する)を取り込むことができる。
【0014】
このフランジ部材12には、軸部11の内周面から離間させて羽根14が設けられており、図2に示すように、羽根14は、フランジ部材12に設けられた、軸部11の軸(回転軸)方向に延在する羽根軸14aの、外周面の、羽根軸中心角が30〜180度となる位置に複数個、図示はしないが、軸部11の軸方向両端のそれぞれのフランジ部材12の間で周方向位置をずらして、即ち、軸部11の軸方向から見て両端部の羽根14が重ならないように、配置されている。
【0015】
羽根14が配置される、30〜180度の羽根軸中心角は、羽根軸14aの周方向に隣り合う羽根14の成す角度であり、各羽根14が等間隔(各羽根14の羽根軸中心角が等角度)で隣接することが望ましいが、等間隔でなくても良い。本実施形態では、各羽根14の羽根軸中心角は、例えば、4枚の羽根14が等間隔(等角度)で隣接する90度である。なお、羽根軸中心角は、30度未満の場合、羽根14が多すぎ重くなって風が起き難く、180度を超える場合、効果的な風を殆ど起こすことができない。
【0016】
この羽根14は、現像ローラ10の回転(自転)時、フランジ部材12に設置された羽根軸14aの回転(自転)と共に羽根軸14a周りに回転し、それに伴って、軸部11の内部空間には、各羽根14による軸部11の軸方向への空気の流れと共に、各羽根14が軸部11の内周面から離間させて設けられていることから、各羽根14による羽根軸14aから軸部11の内周面側へと押し出されるような、軸部11の軸方向に垂直な方向への空気の流れa(図中、矢印a参照)ができる。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態の羽根軸14aは、フランジ部材12の他端側(フランジ軸13が設けられていない側)の内部に、フランジ部材12の開口面中心を通る軸部11の軸方向に延在して設置されており、羽根軸14aの外周面とフランジ部材12の内周面の間に架け渡された複数(本実施形態では、一例として4本)のリブ14bにより支持されている。フランジ部材12の内部にリブ14bに支持された羽根軸14aを設置したことにより、フランジ部材12の内部には、複数のリブ14bのリブ間隙間(周方向隣接リブ間空間)が形成されることになる。このリブ間隙間(周方向隣接リブ間空間)は、フランジ部材12に開けられた、フランジ部材12の外部と内部を連通する複数(本実施形態では、一例として4個)の連通孔12aを介して、フランジ部材12の外部と連通する。
【0018】
本実施形態の羽根14は、図1に示すように、矩形状(例えば、羽根軸14aの延在方向に長い長方形状)或いはその他の形状(例えば、半円形状や三角形状)の板体に形成されており、その板体の軸部11の内周面側に位置する、軸部11の径方向の先端部が、軸部11の内周面との間に隙間を有するように、即ち、軸部11の内周面から離間させて配置されている。
【0019】
羽根14を軸部11の内周面から離間させることで、軸部11のフランジ部材12が装着された両端部側には、羽根14の軸部11の径方向の先端部と軸部11の内周面との間に、内周面全周にわたる隙間(内周面空間)が確保される。この隙間が確保されることで、フランジ部材12の連通孔12aから、複数のリブ14bのリブ間隙間(隣接リブ間空間)を介して、内周面全周にわたる隙間(内周面空間)に繋がる、空気流通路b(図中、矢印b参照)が形成される。
【0020】
この空気流通路が形成されることにより、現像ローラ10の回転(自転)時に発生する、各羽根14によって軸部11の内周面側へと押し出されるような空気の流れが、更に、空気流通路を経て軸部11の内部を移動することになる。それに伴い、フランジ部材12の連通孔12aを介して、軸部11の内部へ、軸部11の外部の空気が導入されることになり、軸部11の内部へ導入された空気によって、現像ローラ10の回転(自転)に伴い上昇した軸部11の内部の温度を低下させることができ、或いは温度を上昇し難くさせることができる。
【0021】
つまり、現像ローラ10において、現像ローラ10の回転(自転)時に生じた空気の流れにより、現像ローラ10の回転(自転)によって発生した熱の放熱を十分に行って、現像ローラにおける温度上昇を確実且つ十分に抑制することができる。
なお、フランジ軸13を貫通する貫通孔13aの軸部11側開口から離間して、羽根軸14a及びリブ14bを設け、貫通孔13aの軸部11側開口を閉じることなく開口させた場合、貫通孔13aを介して、軸部11の内部へ軸部11の外部の空気が導入されることになるので、フランジ部材12に連通孔12aを設けなくても良いが、更に、連通孔12aを設けても良い。
【0022】
また、羽根14は、現像ローラ10の回転(自転)時に羽根14が発生させる空気の流れが軸部11に直接当たる位置に配置されている。本実施形態の羽根14は、その軸部11の軸方向の少なくとも一部(本実施形態では、全部)が、軸部11の軸方向両端に挿入されたフランジ部材12に掛からない位置、即ち、軸部11の内周面が露出する、フランジ部材12より軸部11の内部(軸方向内側)に入り込んだ位置に配置されている。これにより、各羽根14によって軸部11の内周面側へと押し出されるような空気の流れa(図1矢印a参照)を、フランジ部材12の上からでなく、直接、軸部11の内周面に吹き付けることができるので、熱を持ち易い軸部11の内周面を、より効率良く冷やすことができ、或いは温度を上昇し難くすることができる。
【0023】
羽根14の、軸部11の軸方向全部を、フランジ部材12より軸部11の軸方向内側へ配置する場合、フランジ部材12にできるだけ近い位置に羽根14を配置することが望ましい。
この羽根14の配置は、例えば、フランジ部材12が取り付けられる、軸部11の端部側の、軸部11の全長の15%の長さの範囲とすることが好ましいが、軸部11の端部近傍に限らず、軸部11の軸方向任意の位置、即ち、熱発生源に応じた位置とすることができる。これにより、現像ローラ10等の導電性ローラにおいて発生した熱に対し、導電性ローラの回転(自転)時に生じた空気の流れにより、温度上昇を十分に抑制することができる。
【0024】
本実施形態の現像ローラ10によれば、現像ローラ10の回転(自転)時、フランジ部材12が装着された軸部11の両端部近傍の内部温度を効率的に低下させ、或いは上昇し難くさせることができるので、前述の、現像ローラ10を備えたカートリッジ内に、現像ローラ10の両端部に圧接する状態でシール部材が設けられた構成において、特に、効果的な対応が可能になる。
即ち、例えば、トナーが充填されたトナー収納容器から、トナー供給ローラを介して現像ローラに、更に現像ローラを介して感光ドラムに、トナーを供給して、感光ドラムに形成された静電潜像にトナーを付与する現像装置においては、トナー収納容器と現像ローラの隙間からトナーが漏れてローラ軸方向へと拡散しないよう、隙間を防ぐように、現像ローラの両端部に圧接する状態でシール部材が設けられているものがある。
このように、現像ローラの両端部に圧接する状態でシール部材が設けられていると、現像ローラの回転(自転)時、シール部材と現像ローラが摺接して摩擦熱が発生してしまい、発生した熱によりトナーが溶けてしまう虞もあったが、本実施形態の現像ローラ10によれば、シール部材と現像ローラ10が摺接する部分、即ち、現像ローラの端部の熱を、効果的に放出し或いは低下させることができるので、たとえ、摩擦熱が発生したとしても、その熱によりトナーが溶けてしまうことを防ぐことができる。
【0025】
つまり、フランジ部材12に羽根14を設けたことにより、現像ローラ10の回転(自転)に伴って軸部11の内部における空気の流れを作ることができ、その結果、軸部11の内部の温度を低下させ或いは温度上昇し難くさせることができるので、軸部11が冷却され、それに伴い軸部11の外表面の例えばウレタン層も冷却されることになり、トナーへの熱負荷を軽減することができる。
【符号の説明】
【0026】
10:現像ローラ(導電性ローラ)、 11:軸部、 12:フランジ部材、 12a:連通孔、 13:フランジ軸、 13a:貫通孔、 14:羽根、 14a:羽根軸、 14b:リブ。
図1
図2