特許第6427043号(P6427043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427043
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/14 20060101AFI20181112BHJP
【FI】
   H01L23/14 S
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-47500(P2015-47500)
(22)【出願日】2015年3月10日
(65)【公開番号】特開2016-167564(P2016-167564A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2017年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】511265154
【氏名又は名称】SPPテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】野沢 善幸
【審査官】 豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5490949(JP,B2)
【文献】 特開2011−129918(JP,A)
【文献】 特開2013−118312(JP,A)
【文献】 特開2002−043468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/12−23/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、絶縁層と、柱状導体とを備える配線基板の製造方法であって、
前記半導体基板に形成された有底孔と、前記有底孔に立設される半導体柱と、前記半導体柱よりも低い有底孔の縁領域とを備える中間基板をエッチングにより製造する工程と、
前記中間基板の前記有底孔に絶縁材料を充填して前記絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層を形成した後、エッチングして前記半導体柱を除去する工程と、
前記半導体柱が除去されて形成された孔に導電材料を充填して前記柱状導体を形成する工程とを備える、配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板の製造方法であって、
前記中間基板を製造する工程は、
前記半導体基板のうち前記縁領域が形成される領域以外の領域上に配置される第1エッチングマスクを形成する工程と、
前記第1エッチングマスク上であって前記半導体柱が形成される領域上と、前記半導体基板のうち前記縁領域が形成される領域上に配置され、前記有底孔が形成される領域に開口を有する第2エッチングマスクを形成する工程と、
前記第2エッチングマスクを形成後、異方性エッチングを実施して、前記第1エッチングマスクにマスクパターンを形成し、前記半導体基板のうち前記有底孔が形成される領域上に開口を有する前記第1エッチングマスクを形成する工程と、
前記有底孔が形成される領域上に前記開口を有する前記第1エッチングマスクを形成した後、異方性エッチングを実施して前記第1及び第2エッチングマスクの開口位置の前記半導体基板の一部を除去して、前記有底孔と前記半導体柱とを形成する柱形成工程と、
前記柱形成工程後、前記第2エッチングマスクを除去する工程と、
前記第2エッチングマスクを除去した後、前記半導体基板上に残った前記第1エッチングマスクを利用して前記縁領域に対して異方性エッチングを実施して、前記縁領域を前記半導体柱よりも低く形成する段差形成工程と、
前記段差形成工程後、前記第1エッチングマスクを除去する工程とを備える、配線基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配線基板の製造方法であって、
前記絶縁層を形成する工程では、前記絶縁層が形成されたときに前記半導体柱の上端が前記絶縁層から露出している、配線基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の配線基板の製造方法であってさらに、
前記絶縁層を形成した後、前記絶縁層の表層を除去して前記半導体柱の上端を前記絶縁層から露出させる露出工程を備え、
前記露出工程後、前記半導体柱を除去する工程を実施する、配線基板の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の配線基板の製造方法であって、
前記露出工程では、エッチバックにより、前記半導体柱の上端を前記絶縁層から露出させる、配線基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法であって、
前記半導体柱を除去する工程では、プラズマエッチング、ガスエッチング及びウェットエッチングのいずれかを実施する、配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、高性能化に対応して、配線基板の構造として、二次元構造に代えて三次元構造が採用されるケースが増加している。三次元構造は、複数の基板が積層される。そして、積層された基板同士の接続に貫通電極(Through silicon via TSV)に代表される柱状導体が利用される。
【0003】
柱状導体は、柱状導体が形成されている半導体基板から絶縁されている必要がある。特開2008−251964号公報(特許文献1)では、半導体基板に、貫通電極を取り囲むリング状の分離溝が形成される。分離溝には絶縁膜が形成される。この場合、分離溝内の絶縁膜により、貫通電極が半導体基板から絶縁される。しかしながら、特許文献1では、十分な厚さの絶縁膜を形成しにくい。そのため、絶縁機能が十分でない場合があり得る。
【0004】
特許第5225479号(特許文献2)は、絶縁層の絶縁機能を維持できる配線基板の製造方法を開示する。具体的には、特許文献2の製造方法は、絶縁層形成工程と導体形成工程とを備える。絶縁層形成工程は、半導体基板の厚さ方向に、孔又は溝を形成し、形成された孔又は溝に絶縁層を形成する。導体形成工程では、絶縁層に孔又は溝を形成し、孔又は溝内に金属成分等からなる導体成分を充填して導体を形成する。この製造方法により、絶縁層に欠陥(隙間、空洞及びクラック等)が形成されるのが抑制され、絶縁層の十分な絶縁機能を維持できる、と特許文献2には記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献2は、狭ピッチで多数併設された狭ピッチTSV形成技術を開示していない。狭ピッチTSVを形成する場合、導体用の孔又は溝の形成位置がわずかにずれれば、貫通電極に不良(たとえば接触不良等)が生じ得る。
【0006】
特許第5490949号(特許文献3)は、特許文献2の問題を解決する技術を開示する。特許文献3では、半導体基板の一面からその厚み方向に形成された絶縁部内に、半導体基板による柱状体を、互いに間隔をおいて存在させる。その後、柱状体を除去し、除去跡に柱状導体を充填する。
【0007】
特許文献3では、複数の柱状導体の各々は、共通化された1つの絶縁部によって、相互に絶縁されるとともに、半導体基板からも絶縁される。そのため、特許文献2に開示された配線基板と比較して、柱状導体のピッチを縮小でき、狭ピッチTSV構造を有する配線基板を実現できる、と特許文献3には記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−251964号公報
【特許文献2】特許第5225479号
【特許文献3】特許第5490949号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3の製造方法では、次の問題が生じ得る。特許文献3の製造方法では、半導体基板に、複数の半導体柱が底面から立設された有底孔が形成され、有底孔に流動性絶縁物を充填して絶縁層を形成する。このとき、半導体柱と、有底孔の周縁部とは同じ高さを有する。流動性の絶縁材料を有底孔に十分に充填する必要があるため、余剰な絶縁材料が充填される。余剰な絶縁材料は有底孔から溢れ、半導体柱の上端を覆う。したがって、絶縁層が形成されると、半導体柱の上端は絶縁層内に埋まる。半導体柱をエッチングで除去するために、初めに、半導体柱の配置位置に開口を有するエッチングマスクを用いて、エッチングにより半導体柱上の絶縁物を除去しなければならない。この場合、マスクの開口位置を、半導体柱の配置位置に正確に合わせなければならない。半導体柱の断面が非常に小さい場合、エッチングマスクの位置合わせは非常に困難である。そのため、エッチングの精度が低く、接触不良等の不良が配線基板に生じる場合がある。
【0010】
本発明の目的は、不良が生じにくい配線基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態の配線基板の製造方法は、配線基板を製造する。配線基板は、半導体基板と、絶縁層と、柱状導体とを備える。上記製造方法は、中間基板製造工程と、絶縁層形成工程と、柱除去工程と、導体形成工程とを備える。中間基板製造工程では、半導体基板に形成された有底孔と、有底孔に立設される1又は複数の半導体柱と、半導体柱よりも低い有底孔の縁領域とを備える中間基板をエッチングにより製造する。絶縁層形成工程では、製造された中間基板の有底孔に絶縁材料を充填して、絶縁層を形成する。柱除去工程では、絶縁層形成工程後、エッチングして半導体柱を除去する。導体形成工程では、半導体が除去されて形成された孔に導電材料を充填して柱状導体を形成する。
【発明の効果】
【0012】
本実施形態の配線基板の製造方法は、不良が生じにくい配線基板を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1の実施形態の製造方法で製造される配線基板の斜視図である。
図2図2は、図1中に二点鎖線領域でしめされた断面図である。
図3図3は、公知の配線基板の製造工程中の一工程を示す斜視図である。
図4図4は、図3の次工程を説明するための、配線基板の断面図である。
図5図5は、本実施形態による中間基板の断面図である。
図6図6は、図5に示す中間基板に絶縁材料を充填した後の、中間基板の断面図である。
図7図7は、本実施形態の配線基板の製造工程中の一工程を示す、半導体基板の断面図である。
図8図8は、図7の次工程を説明するための、半導体基板の断面図である。
図9図9は、図8の次工程を説明するための、半導体基板の断面図である。
図10図10は、図9の次工程を説明するための、半導体基板の断面図である。
図11図11は、図10の次工程を説明するための、半導体基板の断面図である。
図12図12は、図11の次工程を説明するための、半導体基板の断面図である。
図13図13は、図12の次工程を説明するための、半導体基板の断面図である。
図14図14は、図13の次工程を説明するための、半導体基板の断面図である。
図15図15は、図14の半導体基板に絶縁材料を充填し、さらに、半導体柱を除去した後の、半導体基板の断面図である。
図16図16は、図15の次工程を説明するための、半導体基板の断面図である。
図17図17は、第2の実施形態を説明するための、半導体基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態の配線基板の製造方法は、配線基板を製造する。配線基板は、半導体基板と、半導体基板に形成された孔に充填された絶縁層と、絶縁層に形成され、上端が絶縁層の表面から露出した1又は複数の柱状導体とを備える。上記製造方法は、中間基板製造工程と、絶縁層形成工程と、柱除去工程と、導体形成工程とを備える。中間基板製造工程では、半導体基板に形成された有底孔と、有底孔に立設される1又は複数の半導体柱と、半導体基板のうち有底孔の縁近傍部分であって、半導体柱よりも低い縁領域とを備える中間基板をエッチングにより製造する。絶縁層形成工程では、製造された前記中間基板の前記有底孔に絶縁材料を充填して、前記絶縁層を形成する。柱除去工程では、絶縁層形成工程後、エッチングすることにより半導体柱を除去して柱状導体用孔を形成する。導体形成工程では、柱状導体用孔に導電材料を充填して柱状導体を形成する。
【0015】
本実施形態では、製造された中間基板において、半導体柱と縁領域とで段差が形成される。具体的には、縁領域は、半導体柱よりも低く形成される。そのため、絶縁層形成工程において、有底孔に流動性の絶縁材料を充填するときに絶縁材料が有底孔から溢れても、絶縁材料が縁領域上を覆うものの、半導体柱の上端を覆うのを抑制できる。そのため、半導体柱の上端を絶縁層の表面から露出させるために、エッチングマスクを使用しなくてもよい。そのため、エッチングマスクを使用する際の位置ずれに基づき、配線基板に接触不良等が発生するのを抑制できる。
【0016】
上記中間基板製造工程はたとえば、第1エッチングマスクを形成する工程と、第2エッチングマスクを形成する工程と、柱形成工程と、第2エッチングマスクを除去する工程と、段差形成工程と、第1エッチングマスクを除去する工程とを備える。第1エッチングマスクを形成する工程では、半導体基板の半導体柱が形成される領域上に配置され、有底孔及び縁領域が形成される領域上に開口を有する第1エッチングマスクを形成する。第2エッチングマスクを形成する工程では、第1エッチングマスク上に形成され、半導体柱が形成される領域上及び縁領域が形成される領域上に配置され、有底孔が形成される領域上に開口を有する第2エッチングマスクを形成する。柱形成工程では、第2エッチングマスクを形成後、異方性エッチングを実施して第1及び第2エッチングマスクの開口位置の半導体基板の一部を除去して、有底孔と半導体柱とを形成する。孔形成工程後、第2エッチングマスクを除去する。段差形成工程では、第2エッチングマスクを除去した後、半導体基板上に残った第1エッチングマスクを利用して縁領域に対して異方性エッチングを実施して、縁領域を半導体柱よりも低く形成する。段差形成工程後、第1エッチングマスクを除去する。
【0017】
上述の中間基板製造工程では、積層された第1及び第2エッチングマスクを用いて2段階のエッチングを実施する。これにより、半導体柱と縁領域との間に段差を容易に形成できる。
【0018】
上述の配線基板の製造方法において、絶縁層形成工程では、絶縁層が形成されたときに半導体柱の上端が絶縁層から露出している。
【0019】
上述の配線基板の製造方法において、絶縁層形成工程後、絶縁層の表層を除去して半導体柱の上端を絶縁層から露出させてもよい。
【0020】
この場合であっても、半導体柱と縁領域とでは上述の段差が設けられている。したがって、有底孔からあふれた絶縁層の多くは縁領域に流れる。そのため、半導体柱の上端を覆う絶縁材料は少ない。そのため、エッチバック等で絶縁層を除去する場合であっても、少ない除去量で半導体柱の上端を絶縁層の表面から露出させることができる。
【0021】
上述の柱除去工程では、プラズマエッチング、ガスエッチング及びウェットエッチングのいずれかを実施してもよい。
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0023】
[第1の実施の形態]
[配線基板の構成]
図1は、本実施形態の製造方法で製造される配線基板の斜視図である。図1を参照して、配線基板1は、半導体基板2と、絶縁層3と、複数の柱状導体4とを備える。
【0024】
半導体基板2はたとえば、シリコン(Si)半導体基板である。図2は、図1中の二点鎖線で示す領域の断面図である。図2に示すとおり、半導体基板2は貫通孔21を有する。そのため、半導体基板2の表面及び裏面には貫通孔21の開口が形成されている。
【0025】
絶縁層3は、貫通孔21内に充填されている。絶縁層3はたとえば、周知の絶縁樹脂である。絶縁樹脂はたとえば、熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂はたとえば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フェノール樹脂等を1種又は2種以上含有した組成物である。絶縁樹脂は酸化粒子(酸化珪素、酸化チタン等)を含有してもよい。
【0026】
絶縁層3には、複数の貫通孔が形成されている。柱状導体4は、各貫通孔内に充填されて形成されている。柱状導体4はたとえば、貫通電極として機能する。柱状導体4は周知の素材からなり、たとえば金属、合金等からなる。柱状導体4は、金属、合金等に他の導電性物質を含有してもよい。より具体的には、柱状導体4はたとえば、Au、Ag、Pt、Cu、Ti、Zn、Al、Fe、B、Si、Ni、In、Sn、Bi、Ga等を含有する。
【0027】
図1では、柱状導体4の横断面は円形である。しかしながら、柱状導体4の横断面形状は特に限定されない。柱状導体4の横断面は多角形であってもよい。図1では、複数の柱状導体4は行列状に配置されている。しかしながら、柱状導体4の配置は行列状に限定されない。
【0028】
[配線基板の製造方法の概要]
従前の配線基板の製造方法の一例は、次のとおりである。初めに、エッチングにより、図3に示すとおり、半導体基板2に有底孔22を形成して中間基板を製造する(中間基板製造工程)。有底孔22の底には、行列状に配列された複数の半導体柱10が立設される。有底孔22及び半導体柱10は、図示しないマスクを用いて深掘りエッチング(異方性エッチング)することにより形成される。有底孔22及び半導体柱10を形成した後、有底孔22に絶縁材料を充填して、絶縁層を形成する(絶縁層形成工程)。絶縁層を形成した後、周知の方法(エッチング等)により半導体柱10を除去して、複数の柱状導体用孔を形成する(柱除去工程)。柱状導体用孔に導体材料を充填して柱状導体4を形成する(導体形成工程)。以上の工程により、配線基板が製造される。
【0029】
上述の絶縁層形成工程では、有底孔22に流動性の絶縁材料を十分に充填しなければならない。図4に示すとおり、半導体柱10の高さと、半導体基板2のうち、有底孔22の縁領域23の高さとは同じである。この場合、有底孔22に絶縁材料を十分に充填しようとすれば、絶縁材料が有底孔22から溢れて、絶縁材料が半導体柱10及び縁領域23を覆う。その結果、絶縁層3が半導体柱10及び縁領域23を覆う。
【0030】
図4のように絶縁層3が半導体柱10及び縁領域23を覆った後、エッチングマスクを用いて、エッチングにより半導体柱10上の絶縁層部分を除去して半導体柱10の上端を露出させる。この場合、エッチングマスクの開口位置を半導体柱10の配置位置と正確に合わせる必要がある。しかしながら、半導体柱10は絶縁層3内に埋まっている。そのため、エッチングマスクの開口位置を半導体柱10の配置位置と正確に合わせるのは困難である。エッチングマスクの開口位置と半導体柱10の配置位置とがずれれば、半導体柱10の上端が十分に露出しない。この場合、除去工程において半導体柱10が十分に除去されない。この場合、柱状導体に接触不良等が生じて、配線基板に不良が発生する場合がある。
【0031】
本実施形態では、図5に示すとおり、中間基板20において、縁領域23を、半導体柱10よりも低く形成する。この場合、絶縁層形成工程にて絶縁材料を有底孔22に十分充填することにより有底孔22から絶縁材料が溢れても、余剰な絶縁材料は主として縁領域23上に流れ出る。そのため、図6に示すとおり、半導体柱10の上端が絶縁層3内に埋まらず、絶縁層3の表面から露出しやすい。半導体柱10の上端が絶縁層3から露出している場合、半導体柱10の上端が絶縁層3から露出していない場合と比較して、エッチングマスクの開口位置を半導体柱10の配置位置と正確に合わやすい。さらにこの場合、半導体柱10の上端が既に露出しているため、エッチングマスクを用いなくても、半導体柱10をエッチングにより除去できる。そのため、上述のエッチングマスクを用いる場合に生じる不具合が発生しない。その結果、配線基板において、接触不良等の不良が発生するのを抑制できる。以下、本実施形態の配線基板の製造方法について詳述する。
【0032】
[配線基板の製造方法]
本実施形態の配線基板の製造方法は、中間基板製造工程と、絶縁層形成工程と、柱除去工程と、導体形成工程とを備える。以下、各工程について説明する。
【0033】
[中間基板製造工程]
中間基板製造工程では、図5に示す中間基板20を製造する。上述のとおり、中間基板20は、半導体基板2に形成された有底孔22と、複数の半導体柱10と、縁領域23とを備える。
【0034】
有底孔22の底には、複数の半導体柱10が立設される。半導体柱10は互いに離間して配置される。半導体柱10は柱状である。半導体柱10の横断形状は特に限定されない。半導体柱10の横断形状は円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。
【0035】
縁領域23は、半導体基板2のうち、有底孔22の縁近傍の領域である。縁領域23は、半導体柱10よりも低く形成される。より具体的には、縁領域23の上端は、半導体柱10の上端よりも低い。
【0036】
以上のとおり、中間基板20は、半導体柱10と縁領域23との間に段差を有する。この段差により、絶縁材料を有底孔22に充填するときに半導体柱10の上端が絶縁材料に覆われるのを抑制できる。
【0037】
中間基板20の製造方法は特に限定されない。本実施形態では、中間基板製造工程の一例として、2重にエッチングマスクを形成して2段階にエッチングすることにより、中間基板20を製造する方法について説明する。
【0038】
中間基板製造工程は、第1マスク形成工程と、第2マスク形成工程と、柱形成工程と、第2マスク除去工程と、段差形成工程と、第1マスク除去工程とを含む。以下、各工程について説明する。
【0039】
[第1マスク形成工程]
図7に示すとおり、初めに、半導体基板2上に第1エッチングマスク50を形成する。第1エッチングマスク50はたとえば、二酸化珪素からなる。第1エッチングマスク50は、ニッケル等の金属であってもよい。この時点では、第1エッチングマスクはマスクパターン(開口)を有さない。
【0040】
第1エッチングマスク50を形成した後、第1エッチングマスク50上にさらに、レジスト層51を形成する。レジスト層51は、半導体基板2のうち、半導体柱10及び有底孔22となる領域上に形成され、縁領域23となる領域上には形成されない。レジスト層51を形成後、周知の方法でエッチングを実施する。その結果、図8に示すとおり、第1エッチングマスク50の一部が除去され、半導体基板2のうち、縁領域23が形成される領域が露出する。その後、図9に示すとおり、レジスト層51を除去する。
【0041】
[第2マスク形成工程]
続いて、第1エッチングマスク50にマスクパターンを形成する。具体的には、図10に示すとおり、第1エッチングマスク50上に第2エッチングマスク52を形成する。第2エッチングマスク52は、周知のレジスト(感光材料)からなり、縁領域23となる領域上、及び、半導体柱10となる領域上に形成される。したがって、第2エッチングマスクは、有底孔22が形成される領域上に開口を有する。
【0042】
第2エッチングマスク52を形成した後、異方性エッチングを実施して、図11に示すとおり、第1エッチングマスク50にマスクパターンを形成する。このとき、第1エッチングマスク50は、半導体柱10が形成される領域上に配置され、有底孔22及び縁領域23が形成される領域上に開口を有する。
【0043】
以上のとおり、本実施形態では、第1及び第2エッチングマスク50及び52を形成する。上述のとおり、第1エッチングマスク50は有底孔22となる領域及び縁領域23となる領域に開口を有する。一方、第2エッチングマスク50は、第1エッチングマスク上に積層される部分と、縁領域23に相当する領域に積層される部分とを含む。そのため、第2エッチングマスク50は、有底孔22となる領域に開口を有するものの、縁領域23に相当する領域には開口を有さない。このような積層された2つのエッチングマスクを用いて2段階のエッチングを実施することで、段差を有する中間基板20を製造できる。
【0044】
[柱形成工程(2段エッチング中の第1のエッチング)]
続いて、第1及び第2エッチングマスク50及び52を用いて、半導体基板2に対して異方性エッチングを実施する。異方性エッチングの代表例はボッシュプロセスである。ボッシュプロセスは、エッチング工程と、保護膜形成工程とを含む。
【0045】
エッチング工程では、エッチングガスを用いて等方性エッチングを実施する。エッチングガスはたとえば、フッ素ガスである。フッ素ガスはたとえば、六フッ化硫黄(SF6)ガスである。
【0046】
保護膜形成工程は、エッチング工程により形成された孔の側壁に保護膜を形成する。保護膜の形成により側壁を保護することで、エッチング工程において側壁へのエッチングが抑制される。その結果、異方性エッチングを実現できる。保護膜形成ガスはたとえば、フルオロカーボンガス及び/又は2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)である。フルオロカーボンガスはたとえば、C48である。
【0047】
ボッシュプロセスでは、エッチング工程及び保護膜形成工程を交互に実施する。この場合、保護膜形成ガス及びエッチングガスの流量及びエッチング工程及び保護膜形成工程の切り替えタイミングを調整することにより、形成された孔の側壁へのエッチングを調整しながら異方性エッチングを制御することができる。
【0048】
上述の異方性エッチングを実施した結果、図12に示すとおり、半導体基板2に、有底孔22、複数の半導体柱10、及び縁領域23が形成される。
【0049】
[段差形成工程(2段エッチング中の第2のエッチング)]
続いて、第1エッチングマスク50を用いて、半導体基板2に段差を形成する。具体的には、初めに、図13に示すとおり、周知の方法により、第2エッチングマスク52を除去する。このとき、半導体柱10上には第1エッチングマスク50が形成されているものの、縁領域23は露出する。そこで、第1エッチングマスク50を用いて、異方性エッチングを実施する。このエッチングにより、縁領域23はエッチングされる。その結果、図14に示すとおり、縁領域23は、半導体柱10よりも低くなる。なお、このエッチング時に、縁領域だけでなく、有底孔22もエッチングされ、有底孔22がさらに深くなる。第1エッチングマスク50を周知の方法で除去して、図5に示す中間基板20を製造する。
【0050】
[絶縁層形成工程]
絶縁層形成工程では、中間基板20の有底孔22に流動性の絶縁材料を充填する。絶縁材料はたとえば、上述の熱硬化性樹脂である。
【0051】
上述のとおり、中間基板20では、縁領域23が半導体柱10よりも低く形成される。そのため、有底孔22内に絶縁材料を十分に充填することにより、有底孔22から絶縁材料が溢れても、図6に示すとおり、絶縁材料は縁領域23に流れ出て縁領域23を覆うものの、半導体柱10を覆いにくい。したがって、絶縁材料が硬化して絶縁層3が形成された後であっても、半導体柱10の上端は、絶縁層3から露出しやすい。
【0052】
このように、本実施形態では、半導体柱10と縁領域23とで段差を設けることにより、絶縁層3を形成するときに、半導体柱10の上端を絶縁材料で覆いにくくする。半導体柱10の上端が絶縁層3から露出していれば、エッチングマスクを用いて半導体柱10の上端を絶縁層から露出させる必要がなくなる。そのため、エッチングマスク位置のずれに起因いた配線基板の接触不良等の不良が発生するのを抑制できる。
【0053】
[柱除去工程]
柱除去工程では、図6を参照して、絶縁層3から露出された半導体柱10を除去する。具体的には、周知のエッチング技術により、半導体柱10を除去する。好ましくは、エッチング技術として、プラズマエッチング、ガスエッチング及びウェットエッチングのいずれかを実施する。半導体柱10に対する絶縁層3の選択比は高い。したがって、この場合、半導体柱10を十分に除去できる。このとき、エッチングマスクの使用は不要である。エッチングの結果、図15に示すとおり、半導体柱10が除去され、柱状導体4を形成するための導体用孔24(有底孔)が形成される。好ましくは、柱除去工程では、CIF3を用いたガスエッチング、XeF2(二弗化キセノン)を用いたガスエッチングを行う。これらのガスエッチングでは、上記選択比を高くすることができる。そのためこの場合、エッチングマスクを用いることなく、半導体柱10をエッチングして除去できる。
【0054】
[導体形成工程]
導体形成工程では、図16に示すように、導体用孔24に導体材料を充填して、柱状導体4を形成する。柱状導体4は上述のとおり周知の素材からなる。導体材料の充填方法は周知の方法を適用すれば足りる。充填方法はたとえば、めっき法、溶融金属充填法及び導電ペースト法である。
【0055】
必要に応じて、半導体基板2の裏面25の表層部分を除去する。除去方法はとえば、グラインド加工である。これにより、図1及び図2に示す配線基板1が製造される。用途によっては、裏面25を除去せずに、配線基板1として使用してもよい。
【0056】
以上のとおり、本実施形態の製造方法では、積層された2つのエッチングマスク50及び52を用いて2段エッチングを実施して、半導体柱10と縁領域23との間に段差を形成する。これにより、絶縁層3を形成するときに、半導体柱10の上端が絶縁材料で覆われにくい。つまり、半導体柱10の上端が絶縁層3から露出しやすい。半導体柱10が絶縁層3から露出していれば、エッチングマスクを用いることなく半導体柱10を除去できる。そのため、エッチングマスク位置のずれに起因して配線基板において接触不良等の不良が発生するのを抑制できる。
【0057】
[第2の実施の形態]
上述のとおり、段差を有する中間基板20を用いれば、絶縁層形成工程において、半導体柱10が絶縁材料で覆われるのを抑制できる。しかしながら、図17に示すとおり、縁領域23上に絶縁材料が流れても、半導体柱10の上端を絶縁材料を覆う場合があり得る。この場合、図17に示すとおり、半導体柱10上にも絶縁層3が形成されてしまう。
【0058】
このような場合、絶縁層3の表層全体を除去して、図6に示すように、半導体柱10の上面を絶縁層3から露出させる。絶縁層3の表層全体を除去する方法はたとえば、エッチバックである。エッチバックにより絶縁層3の表層全体をエッチングすれば、エッチングマスクを用いなくても半導体柱10の上端が絶縁層3から露出する。
【0059】
絶縁層3の表層全体を除去する方法は、エッチバックに限定されない。たとえば、グラインド加工により絶縁層3を除去してもよい。この場合、半導体柱10の上端の一部も絶縁層3とともに除去される。
【0060】
以上のとおり、仮に、図17のように半導体柱10上を絶縁材料が覆っても、エッチバック等により絶縁層3の表層全体を除去することにより、エッチングマスクを用いることなく半導体柱10の上端を絶縁層3から露出させることができる。したがって、エッチングマスクに起因した位置ずれ等が発生せず、製造された配線基板において、接触不良等の不良の発生が抑制される。
【0061】
上述の実施形態では、半導体柱10は複数立設される。しかしながら、半導体柱10が1つ立設されるだけでもよい。
【0062】
図1及び図2に示す柱状導体4は半導体基板2を貫通しており、貫通電極として機能する。しかしながら、上述のとおり、柱状導体4の2つの端のうちの一方のみが半導体基板2の表面に露出していてもよい。
図2では、柱状導体4と段差を有する領域23が形成されている。領域23は、図2の断面と垂直な断面(図1中の配線基板の手前から奥に向かう方向の断面)において形成されていてもよい。要するに、領域23は、有底孔の縁のいずれに形成されてもよい。
【0063】
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 配線基板
2 半導体基板
3 絶縁層
4 柱状導体
10 半導体柱
20 中間基板
23 縁領域
24 導体用孔
50 第1エッチングマスク
52 第2エッチングマスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
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図16
図17