(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のオムニホイール式の車輪の芯体は、切削加工による削り出し品あるいは鋳造品であるため、製造コストが高く、しかも中実構造であるため重いという欠点があった。また、芯体は、フリーローラの組み付けのために、C形をした開口を有する主体と開口を塞ぐ補完部材とに構成され、主体と補完部材とが相欠けほぞ継手のような構造をもって接続されているため、構造が複雑で製造コストが高く、十分な強度および剛性を得るために芯体を太くする必要があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、オムニホイール式の車輪において、簡素な構造で製造コストの削減を図ると共に、芯体を太くすることなく十分な強度および剛性を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による車輪は、少なくとも一つの継ぎ目(A)を有して円環状をなす芯体(32)と、中空部(38)に前記芯体(32)を挿入された複数のインナースリーブ(36)と、前記インナースリーブ(36)の外周面に回転可能に取り付けられたフリーローラ(60)とを有し、前記インナースリーブ(36)は前記継ぎ目(A)を跨って延在して前記継ぎ目(A)の両側を前記芯体(32)に固定されるものを含んでいる。
【0007】
この構成によれば、継ぎ目(A)の接合がフリーローラ(60)を装着されるインナースリーブ(36)によって管継手式に行われるので、継ぎ目(A)の接合が専用部品を必要とすることなく行われ、簡便な構造で、製造コストを削減できる。また、相欠けほぞ構造の継手ではないので、継手部の強度低下がなく、芯体(32)を太くすることなく十分な強度および剛性が得られる。
【0008】
本発明による車輪は、好ましくは、前記インナースリーブ(36)は、前記円筒部(40)の軸線方向の両側に且つ互いに180度反転した周方向位置に半円筒部(42)を有し、隣接する前記インナースリーブ(36)の前記半円筒部(42)同士が補完し合って円筒状をなし、前記インナースリーブ(36)は前記半円筒部(42)を貫通して前記芯体(32)に係止される固定部材(48、54)によって前記芯体(32)に固定されている。
【0009】
この構成によれば、固定部材(48、54)によるインナースリーブ(36)の芯体(32)の固定作業がフリーローラ(60)によって阻害されることがない。また、インナースリーブ(36)が芯体(32)に固定されているので、インナースリーブ(36)およびフリーローラ(60)が芯体(32)の周方向にがた付くことがなく、主輪(30)の回転による走行時にがた付きによる異音が発生することがない。
【0010】
本発明による車輪は、好ましくは、更に、隣接する前記フリーローラ(60)間にスペーサ(66)が配置され、前記スペーサ(66)は、中間部(68A)を当該スペーサ(66)に係止され、且つ両先端部(68C)が前記半円筒部(42)に形成された凹部
(56)に嵌合した門形の板ばね(68)によって前記半円筒部(42)に固定されている。
【0011】
この構成によれば、スペーサ(66)によってフリーローラ(60)間の空隙に異物が侵入することが防止される。スペーサ(66)は板ばね(68)によって半円筒部(42)に装着されるので、インナースリーブ(36)に対するスペーサ(66)の着脱を、工具を必要とすることなく簡便に行えるようになる。
【0012】
本発明による車輪は、好ましくは、前記芯体(32)が金属パイプからなる。
【0013】
この構成によれば、芯体(32)を曲げ加工によって製造できるので、製造コストを低減でき、併せて芯体(32)の軽量化が図られる。
【0014】
本発明による車輪は、好ましくは、芯体(32)は、少なくとも2個に分割された分割部品(34)の組み合わせることにより、少なくとも2個の前記継ぎ目(A)ができる。
【0015】
この構成によれば、芯体(32)に対するインナースリーブ(36)およびフリーローラ(60)の組み付けが、分割部材(34)の組み合わせ前の状態下で、容易に行われるようになる。
【0016】
本発明による摩擦式駆動装置は、上述の発明による車輪(30)と、前記車輪(30)の両側に回転自在に配置されたドライブディスク(70)と、前記ドライブディスク(70)の各々に、当該ドライブディスク(70)の回転中心と同心の円周上に複数個配置され、各々、前記ドライブディスク(70)の回転軸線に対してねじれの関係をなす回転軸線周りに回転可能で、外周面をもって前記フリーローラ(60)の外周面に接触するドライブローラ(78)とを有する。
【0017】
この構成によれば、ドライブディスク(70)の回転がドライブローラ(78)によってフリーローラ(60)に伝達される。
【0018】
本発明による全方向移動装置は、上述の発明による摩擦式駆動装置と、前記車輪(30)の両側に配置された前記ドライブディスク(70)を各々個別に回転駆動する駆動装置(84)とを含み、前記車輪(30)によって走行する。
【発明の効果】
【0019】
本発明による車輪によれば、簡素な構造によって製造コストを削減できると共に、芯体を太くすることなく十分な強度および剛性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明による車輪および摩擦式駆動装置が用いられた倒立振子型車両の一つの実施形態を、
図1〜
図9を参照して説明する。
【0022】
図1に示されているように、本実施形態の倒立振子型車両(全方向移動装置)は、車体骨格をなす車体フレーム10を有する。車体フレーム10は、前後2個の上部部材12と、上部部材12の左右両端より各々垂下し且つ前後2個の上部部材12を互いに接続する左右の脚部材14と、脚部材14の下部に取り付けられた左右の下部支持プレート16とを含む。上部部材12の上部には乗員の臀部を支持するサドル18が取り付けられている。下部支持プレート16には乗員の足裏を支持する左右のフットステップ20が取り付けられている。
【0023】
左右の脚部材14および下部支持プレート16間には主輪(車輪)30および左右のドライブディスク70が配置されている。左右のドライブディスク70は、主輪30の左右両側に対称の配置で、ハブ72と、ホイール74と、ハブ72およびホイール74の周方向に等間隔に配置されて両端をハブ72、ホイール74に固定された複数のホルダ76との組立体によって構成され、下部支持プレート16に取り付けられた共通の支持軸22によって車体フレーム10に左右方向に延在する略水平な中心軸線周りに回転可能に支持されている。換言すると、車体フレーム10は一つの支持軸22によって左右のドライブディスク70を各々左右方向に延在する略水平な同一軸線上に回転可能に支持している。
【0024】
左右のドライブディスク70には、各々、ホルダ76によって複数のドライブローラ78がドライブディスク70の周方向に等間隔に配置されている。ドライブローラ78は各々ドライブディスク70の回転軸線(中心軸線)に対してねじれの関係をなす回転軸線周りに回転可能である。左右のドライブローラ78は下側に位置するもののみが外周面をもって後述する主輪30の接地側(下側)に位置するフリーローラ(ドリブンローラ)60の外周面(主輪30の径方向内方の外周面)に左右対称に摺接している。
【0025】
接地側に位置するドライブローラ78は、サドル18に着座した乗員の荷重が車体フレーム10を介して支持軸22に作用することにより、接地している主輪30のフリーローラ60に押し付けられる。
【0026】
車体フレーム10には鼓形状の規制ローラ102が支持軸22の中心軸線と平行な軸線周りに回転可能に取り付けられている。規制ローラ102は、主輪30内の上部を左右方向に貫通して延在し、円弧状の括れ部が主輪30の上側に位置するフリーローラ60の外周面(主輪30の径方向内方の外周面)に摺接することにより、主輪30が車体フレーム10に対して左右方向に傾斜することを規制、つまりロール運動することを阻止する。
【0027】
また、規制ローラ102は、車体フレーム10が持ち上げられた場合、主輪30が車体フレーム10より路面(地面)側にぶら下がることを防止する。これにより、車体フレーム10が持ち上げられて主輪30が路面より離れても、主輪30が車体フレーム10に対して降下(落下)することが回避される。
【0028】
また、接地しているフリーローラ60の前後に位置するフリーローラ60を左右から挟むようにしてフリーローラ60の外周面(主輪30の径方向内方の外周面)に摺接する規制ローラ110が支持軸22を中心として回動可能に支持部材108に取り付けられている。規制ローラ110は、接地点を通る鉛直線より前後方向に離れた位置にあるフリーローラ60に接触していることにより、主輪30が接地点を通る鉛直線周りに回転することを規制、つまり車体フレーム10に対する主輪30のヨー運動を規制する。また、規制ローラ110は、主輪30が車体フレーム10に対してロール運動することも、ピッチ運動することも規制する。
【0029】
上述のように、主輪30は、下側を左右のドライブローラ78および規制ローラ110によって軸線方向に挟まれ、上側を規制ローラ102によって支持されることにより、中心軸線が略水平になる起立姿勢を維持する。
【0030】
ドライブディスク70にはドリブンプーリ80が同心に固定されている。車体フレーム10は主輪30の上方にギヤボックス82を取り付けられている。ギヤボックス82の外壁には左右の電動モータ84(
図1では右側のドライブディスク70用の電動モータのみを図示)および左右のドライブプーリ86(
図1では左側のドライブディスク70用のドライブプーリのみを図示)が取り付けられている。ギヤボックス82は減速歯車装置(不図示)を内蔵しており、当該減速歯車装置は左右の電動モータ84の回転を減速して左右のドライブプーリ86に個別に伝達する。ドライブプーリ86とドリブンプーリ80とには左右で対応するもの同士間に無端のコグドベルト88(
図1では左側のドライブディスク70用のコグドベルトのみを図示)が掛け渡されている。これにより、左右のドライブディスク70が個別に回転駆動される。
【0031】
下部支持プレート16には支持軸90によって尾輪支持アーム92の基端が回動可能に連結されている。尾輪支持アーム92は、基端より主輪30の後方に向けて延在し、支持軸90の中心軸線周りに車体フレーム10に対して略上下方向に回動可能になっている。尾輪支持アーム92は遊端にオムニホイール式の尾輪(副輪)94をドライブディスク70の回転軸線に直交する略水平な中心軸線周りに回転可能に支持している。尾輪94は尾輪支持アーム92に取り付けられた電動モータ96によって回転駆動される。
【0032】
ギヤボックス82の前部には電気ボックス98が取り付けられている。電気ボックス98は、電子制御装置、ジャイロセンサ、モータドライブユニット等を内蔵している。電子制御装置は、倒立振子制御則に従った制御処理に基づいて車体フレーム10が略直立姿勢を維持すべく左右の電動モータ84を制御すると共に、旋回のために電動モータ96を制御する。なお、車体フレーム10には、図示されていないが、これらの電装品の電源をなすバッテリが搭載されている。
【0033】
左右の電動モータ84が同一方向に且つ同一速度で駆動されている場合には、左右のドライブディスク70が同一速度で同一方向に回転し、主輪30が円環中心を回転軸線として回転する。このとき、左右のドライブディスク70に回転速度差が生じないため、主輪30のフリーローラ60が自転せず、倒立振子型車両は真っ直ぐに前進あるいは後進する。
【0034】
左右の電動モータ84が互いに異なった回転方向及び又は回転速度に駆動されている場合には、左右のドライブディスク70間に回転速度差が生じ、左右のドライブディスク70の回転力による円周(接線)方向の力に対し、この力に直交する向きの分力が左右のドライブローラ78と主輪30のフリーローラ60との接触面に作用する。この分力によってフリーローラ60が自身の中心軸線回りに回転(自転)することになる。
【0035】
フリーローラ60の回転は、左右のドライブディスク70の回転速度差によって定まるから、例えば、左右のドライブディスク70を互いに同一速度で逆向きに回転させると、主輪30は全く公転せず、フリーローラ60の自転だけが生じる。これにより、主輪30には左右方向の走行力が加わることになり、倒立振子型車両は、左右方向に走行(真横移動)する。左右のドライブディスク70を同一方向に相違した速度で回転させると、主輪30の公転と共にフリーローラ60の自転が生じ、倒立振子型車両は斜め前方あるいは斜め後方に走行する。
【0036】
電動モータ96によって尾輪94が回転駆動されると、倒立振子型車両は主輪30の接地点を中心として旋回する。なお、主輪30及び尾輪94が同時に回転駆動されると、その回転駆動の状態に応じて、旋回中心は変化する。
【0037】
つぎに、本実施形態による主輪30の詳細を、
図2〜
図9を参照して説明する。
【0038】
主輪30は、
図2〜
図4に示されているように、芯体32を有する。芯体32は、
図5(A)に示されている半円形の2個の分割部材34の組み合わせによって
図5(B)に示されているような所定輪径による円環状をなしている。詳細には、芯体32は、2個の分割部材34の端部同士の突き合わせによって端面35同士が互いに対向して接合することにより2個の継ぎ目A(
図2参照)を形成し、各継ぎ目Aにおいて分割部材34同士が接合されることによって連続した円環状をなしている。継ぎ目Aにおける分割部材34の接合は後述するインナースリーブ36によって行われる。
【0039】
分割部材34はステンレス鋼(例えば、機械構造用炭素鋼鋼管STKM)やアルミニウム等の金属製の円環状横断面のパイプを180度の曲げ加工によって半円形に成形したものである。
【0040】
芯体32には複数のインナースリーブ36が嵌装されている。インナースリーブ36は、アルミニウム等の金属の削り出し品(パイプ材を原材料として切削加工したものも含む)、鋳造品、鍛造品あるいは樹脂成形品等であり、
図6〜
図8に示されているように、芯体32の曲率と同じ曲率による円弧軸線による中空部38と、中空部38の接線方向に延在する軸線を中心軸線とする外周面による円筒部40と、円筒部40の軸線方向の両側に且つ互いに180度反転した周方向位置に設けられた半円筒部42とを有する。円弧軸線による中空部38は、円筒部40と、その両側の半円筒部42とを同一曲率をもって連続しており、中空部38を芯体32が挿通している。
【0041】
円筒部40の外周にはアウタレース62Aにゴム製のフリーローラ60を加硫接着されたボールベアリング62のインナレース62Bがスナップリング64によって装着されている。
【0042】
芯体32に対するインナースリーブ36の装着は、既にフリーローラ60を装着されているインナースリーブ36を、
図5(A)に示されているように、分割部材34が円環状に組み合わせられていない2個の半円状の分割部材34の各々に、分割部材34の端部より所定個数挿入することにより行う。
【0043】
インナースリーブ36は、各々、周方向に隣接するインナースリーブ36の半円筒部42が互いに180度異なった周方向位置にある状態で、中空部38に芯体32を通されることにより、隣接する半円筒部42同士が補完し合って円筒状をなし、
図2に示されているように、芯体32の周方向の全体に実質的に隙間なく配置される。
【0044】
なお、分割部材34の端部の外輪側(芯体32の輪径方向外方)が面取り状の切除によって緩傾斜面34A(
図5(A)参照)になっていることにより、分割部材34に対するインナースリーブ36の挿入が容易に行われるようになる。
【0045】
半円筒部42にはリベット孔44が貫通形成されていると共に、芯体32には各インナースリーブ36のリベット孔44に整合するリベット孔46が貫通形成されている。リベット孔44および46には、
図9に示されているように、インナースリーブ36の外側からブラインドリベット48が挿入される。ブラインドリベット48は、先端が芯体32の中空部内において膨径変形することによって芯体32に係止され、各インナースリーブ36を芯体32に固定する。
【0046】
リベット孔44および46は芯体32の中心軸線方向に延在している。このことにより、ブラインドリベット48の打ち込みが芯体32の中心軸線方向側からフリーローラ60と干渉することなく行われる。
【0047】
半円筒部42にはもう一つのリベット孔50が貫通形成されていると共に、芯体32には継ぎ目Aに位置するインナースリーブ36のリベット孔50に整合するリベット孔52が貫通形成されている。インナースリーブ36のうち、継ぎ目Aに位置するインナースリーブ36は、継ぎ目Aを芯体32の周方向を跨って延在している。換言すると、フリーローラ60毎の複数のインナースリーブ36は継ぎ目Aを跨って延在して継ぎ目Aの両側を芯体32に固定されるもの2個を含んでいる。
【0048】
リベット孔50および52には、
図9に示されているように、インナースリーブ36の外側からブラインドリベット54が挿入される。ブラインドリベット54は、先端が芯体32の中空部内において膨径変形するによって芯体32に係止される。これにより、継ぎ目Aに位置するインナースリーブ36はブラインドリベット48に加えてブラインドリベット54によって継ぎ目Aの両側に固定される。つまり、継ぎ目Aに位置するインナースリーブ36は、円筒部40の一方の側の半円筒部42を、継ぎ目Aを隔てて突き合わせられている2個の分割部材34のうちの一方の分割部材34に固定され、円筒部40の他方の側の半円筒部42を他方の分割部材34に固定され、継手を兼ねるようにして2個の分割部材34を接合している。
【0049】
リベット孔50および52はリベット孔44および46より芯体32の輪外側に形成されていることにより、ブラインドリベット54の打ち込みも芯体32の輪外側からフリーローラ60と干渉することなく行われる。
【0050】
隣接するフリーローラ60間には、
図2、
図3に示されているように、スペーサ66が配置されている。スペーサ66は、隣接するフリーローラ60間にできる楔形状(芯体32の軸線方向で見て楔形状)の空間、特に芯体32の輪外側の空間を埋めるように、芯体32の軸線方向で見て、つまり側面形状が楔形をしており、且つ
図9に示されているように、正面形状がインナースリーブ36を芯体32の輪外側に跨ぐ門形(ステープル形)をしており、板ばね68によってインナースリーブ36に固定されている。
【0051】
板ばね68は、スペーサ66の門形の中間部に形成されたスリット66Aに係合してスペーサ66に固定される中間部68Aと、中間部68Aの両端よりインナースリーブ36の側に折曲された脚片部68Bとを有し、両脚片部68Bの先端部68Cが各々半円筒部42に形成された長円形状の係止孔(凹部)56に嵌合している。なお、一つの板ばね68の一方の先端部68Cは、隣接するインナースリーブ36のうちの一方のインナースリーブ36の半円筒部42の係止孔56に嵌合し、他方の先端部68Cは、隣接するインナースリーブ36のうちの他方のインナースリーブ36の半円筒部42の係止孔56に嵌合する。これらの嵌合は、脚片部68Bの弾性変形のもとに、工具を必要とすることなく弾圧的に行われる。
【0052】
なお、先端部68Cは、
図10に示されているように、内側に半円形に曲げられたカール加工をされたものであってもよい。
【0053】
上述したように、本実施形態の主輪30は、芯体32が2個の分割部材34の組み合わせによって構成され、2個の分割部材34の接合がフリーローラ60を保持するインナースリーブ36によって管継手式に行われるので、分割部材34の接合に専用部品を必要とすることがなく、簡便な構造で、製造コストを削減できる。しかも、主輪30は相欠けによる接合部を含まないから、継手部(接合部)の強度低下がなく、芯体32を太くすることなく十分な強度および剛性を得ることができる。
【0054】
更には、分割部材34が金属パイプ製であることにより、曲げ加工によって芯体32を製造でき、削り出しや鋳造による場合に比して製造コストを大幅に削減できる。しかも、分割部材34が金属パイプ製であることにより、芯体32の軽量化が図られる。
【0055】
また、芯体32が2個の分割部材34の組み合わせによって構成されていることにより、芯体32に対するインナースリーブ36およびフリーローラ60の組み付けが、分割部材34の組み合わせ前の状態下で、容易に行われ得る。
【0056】
また、フリーローラ60を保持するインナースリーブ36の全てが芯体32に固定されるので、インナースリーブ36およびフリーローラ60が芯体32の周方向にがた付くことがなく、主輪30の回転による走行時にがた付きによる異音が発生することがない。しかも、インナースリーブ36は、フリーローラ60を装着される円筒部40の両側に形成されている半円筒部42を径方向に貫通するブラインドリベット48、54によって芯体32に固定されるので、フリーローラ60がこの固定作業を阻害することがない。半円筒部42は、隣接するもの同士で補完し合って円筒状をなす組み合わせであることにより、突き合わせによる場合に比して半円筒部42が隣接するフリーローラ60間に大きい空隙を作ることがなく、フリーローラ60の設置個数を大幅に減らす原因になることがない。
【0057】
スペーサ66は、フリーローラ60間の空隙に異物が侵入することを防止する。これにより、フリーローラ60の回転が異物の噛み込みによって阻害されることが防止される。スペーサ66は板ばね68によってインナースリーブ36に装着されるので、インナースリーブ36に対するスペーサ66の着脱を、工具を必要とすることなく簡便に行えるようになる。また、スペーサ66の交換作業も簡単に作業性よく行えるようになる。
【0058】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0059】
例えば、芯体32は、半円形の2個の分割部材34の組み合わせに限られることはなく、3分割や4分割等の複数個の分割部材の組み合わせによるものや、インナースリーブ36およびフリーローラ60の組み付けのために1箇所に切断による継ぎ目があるものであってもよい。芯体32は、中空パイプに限られることなく、中実のものであってもよく、また、断面形状が楕円や多角形であってもよい。芯体32に対するインナースリーブ36の固定は、ブラインドリベット54に限られることなく、ねじやクリップ等の固定部材によって行われてもよい。
【0060】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。