特許第6427066号(P6427066)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427066
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/26 20060101AFI20181112BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20181112BHJP
   H02K 9/197 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   H02K9/26 Z
   H02K9/19 A
   H02K9/19 B
   H02K9/197
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-100757(P2015-100757)
(22)【出願日】2015年5月18日
(65)【公開番号】特開2016-220329(P2016-220329A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 伸矢
(72)【発明者】
【氏名】坪井 雄一
(72)【発明者】
【氏名】吉満 哲夫
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−174950(JP,U)
【文献】 特開昭57−052888(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3075563(JP,U)
【文献】 特開2003−164111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/00−9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中で駆動され、または駆動する回転電機であって、
回転軸まわりに回転可能に軸支されたロータシャフトと、そのロータシャフトに固定された回転子鉄心とを有する回転子と、
前記ロータシャフトの軸方向の前記回転子鉄心を挟んだ位置にそれぞれ配設され、前記ロータシャフトを支持する2つの軸受と、
前記回転子鉄心の径方向外側に配された固定子鉄心と、前記固定子鉄心に巻回された固定子巻線とを有する固定子と、
前記回転子鉄心および前記固定子を収納し、前記回転子鉄心および前記固定子の冷却用の冷却水を内包するフレームと、
前記フレームに固定支持され前記2つの軸受をそれぞれ支持する2つの軸受ブラケットと
オン除去装置と、
を備え、
前記イオン除去装置は、
前記冷却水中のイオンを除去するためのイオン交換樹脂としての陽イオン交換樹脂と、
前記イオン交換樹脂を収納し、前記冷却水が通過可能に形成された樹脂収納部と、
前記フレームの外側に設けられて前記樹脂収納部を収納し、前記フレームとの間に連通開口が形成されたケーシングと、
駆動対象であるポンプの出口側のポンプ出口配管と前記ケーシングとを接続する冷却水入口配管と、
前記ポンプの入口側のポンプ入口配管と前記フレームにおいて前記連通開口と前記固定子を挟んで軸方向に反対側の部分とを接続する冷却水出口配管と、
を具備することを特徴とする回転電機。
【請求項2】
水中で駆動され、または駆動する回転電機であって、
回転軸まわりに回転可能に軸支されたロータシャフトと、そのロータシャフトに固定された回転子鉄心とを有する回転子と、
前記ロータシャフトの軸方向の前記回転子鉄心を挟んだ位置にそれぞれ配設され、前記ロータシャフトを支持する2つの軸受と、
前記回転子鉄心の径方向外側に配された固定子鉄心と、前記固定子鉄心に巻回された固定子巻線とを有する固定子と、
前記回転子鉄心および前記固定子を収納し、前記回転子鉄心および前記固定子の冷却用の冷却水を内包するフレームと、
前記フレームに固定支持され前記2つの軸受をそれぞれ支持する2つの軸受ブラケットと、
前記冷却水中のイオンを除去するためのイオン交換樹脂としての陽イオン交換樹脂を有するイオン除去装置と、
前記イオン交換樹脂を収納し、前記冷却水が通過可能に形成された樹脂収納部と、
前記フレームの外側に設けられて前記樹脂収納部を収納し、前記フレームとの間に連通開口が形成されたケーシングと、
前記ロータシャフトに取り付けられた循環用プロペラと、
を備え、
前記ケーシングと前記フレームとは互いにあいまって密閉空間を形成し、前記冷却水が前記ケーシング内の前記イオン交換樹脂を通過した後に前記フレーム内に流入可能に連通しており、前記フレーム内に流入した冷却水が前記軸方向に前記固定子が配設された領域を通過後に再び前記ケーシング内に流入可能に連通していることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
前記ケーシングには、前記イオン交換樹脂を交換するための出し入れ口が形成され、前記出し入れ口を密閉して閉止する開閉蓋が取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中で駆動され、または駆動する回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
水中に配置され、直接に水に晒されながら使用されるケーブルは、通常、導電体である銅線が高分子材料等からなる絶縁部で覆われている。ここで、高分子材料には、例えばポリエチレンなどの熱可塑性樹脂や架橋ポリエチレン(Cross−Linked Polyethylene、以下、XLPEと呼ぶ。)等の熱硬化性樹脂が用いられることが多い。
【0003】
水中に配置されるこれら絶縁ケーブルでは、50Hzや60Hzの商用周波数の交流電圧を発生する電源装置あるいは各種周波数の交流電圧を発生する直流交流変換電源装置から発生する交流電圧が印加され、伝搬する。
【0004】
上記のような状態でこのような絶縁ケーブルを、交流電圧を作用させた状態のもとで、数年間水中において使用すると、XLPE等の絶縁部に水トリーが発生し進展する可能性がある。水トリーとは、長時間にわたって水が共存する状態で、絶縁部に電界が作用したときに、絶縁部の絶縁材料に生じるトリー(樹枝)状の絶縁劣化現象であることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3600062号公報
【特許文献2】特開昭58−172952号公報
【特許文献3】特公平4−16885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水中で駆動され、または駆動する電動機などの回転電機においては、以上のようにその絶縁部が水中環境内に置かれて使用される。このような条件のもとに、水トリーの進展による絶縁性能の劣化状態を監視することが重要であり、監視のための技術が知られている(特許文献1参照)。劣化状態の監視は重要ではあるが、劣化の進展を抑制しようとするものではない。
【0007】
劣化の進展を抑制する技術に関しては、たとえば、3相電動機の場合において、巻線の電源側部分と中性点側部分とでは、より高い電圧が付加される電源側部分での劣化の進展が速いため、巻線の電源側の端子と中性点側の端子とを交互に入れ替える技術が知られている(特許文献2参照)。しかしながら、この技術は、あくまで水トリーの進展環境が存在する条件の下において、巻線のそれぞれの部分への影響を平均化して、寿命を延ばそうとするものである。
【0008】
また、ケーブルの電気絶縁物中にイオン交換物質を混入させる技術が知られている(特許文献3参照)。しかしながら、イオン交換物質は、飽和するため、飽和した後の処置、たとえばイオン交換物質の交換などの対策が難しい。
【0009】
このため、特に水中で使用される回転電機の信頼性をさらに長期的に確保する技術が望まれる。本発明は、回転電機の絶縁部の水トリー現象の発生、進展を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明は、水中で駆動され、または駆動する回転電機であって、回転軸まわりに回転可能に軸支されたロータシャフトと、そのロータシャフトに固定された回転子鉄心とを有する回転子と、前記ロータシャフトの軸方向の前記回転子鉄心を挟んだ位置にそれぞれ配設され、前記ロータシャフトを支持する2つの軸受と、前記回転子鉄心の径方向外側に配された固定子鉄心と、前記固定子鉄心に巻回された固定子巻線とを有する固定子と、前記回転子鉄心および前記固定子を収納し、前記回転子鉄心および前記固定子の冷却用の冷却水を内包するフレームと、前記フレームに固定支持され前記2つの軸受をそれぞれ支持する2つの軸受ブラケットと、イオン除去装置と、を備え、前記イオン除去装置は、前記冷却水中のイオンを除去するためのイオン交換樹脂としての陽イオン交換樹脂と、前記イオン交換樹脂を収納し、前記冷却水が通過可能に形成された樹脂収納部と、前記フレームの外側に設けられて前記樹脂収納部を収納し、前記フレームとの間に連通開口が形成されたケーシングと、駆動対象であるポンプの出口側のポンプ出口配管と前記ケーシングとを接続する冷却水入口配管と、前記ポンプの入口側のポンプ入口配管と前記フレームにおいて前記連通開口と前記固定子を挟んで軸方向に反対側の部分とを接続する冷却水出口配管と、を具備することを特徴とする。
また、本発明は、水中で駆動され、または駆動する回転電機であって、回転軸まわりに回転可能に軸支されたロータシャフトと、そのロータシャフトに固定された回転子鉄心とを有する回転子と、前記ロータシャフトの軸方向の前記回転子鉄心を挟んだ位置にそれぞれ配設され、前記ロータシャフトを支持する2つの軸受と、前記回転子鉄心の径方向外側に配された固定子鉄心と、前記固定子鉄心に巻回された固定子巻線とを有する固定子と、前記回転子鉄心および前記固定子を収納し、前記回転子鉄心および前記固定子の冷却用の冷却水を内包するフレームと、前記フレームに固定支持され前記2つの軸受をそれぞれ支持する2つの軸受ブラケットと、前記冷却水中のイオンを除去するためのイオン交換樹脂としての陽イオン交換樹脂を有するイオン除去装置と、前記イオン交換樹脂を収納し、前記冷却水が通過可能に形成された樹脂収納部と、前記フレームの外側に設けられて前記樹脂収納部を収納し、前記フレームとの間に連通開口が形成されたケーシングと、前記ロータシャフトに取り付けられた循環用プロペラと、を備え、前記ケーシングと前記フレームとは互いにあいまって密閉空間を形成し、前記冷却水が前記ケーシング内の前記イオン交換樹脂を通過した後に前記フレーム内に流入可能に連通しており、前記フレーム内に流入した冷却水が前記軸方向に前記固定子が配設された領域を通過後に再び前記ケーシング内に流入可能に連通していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回転電機の絶縁部の水トリー現象の発生、進展を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係る回転電機の構成を示す立断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る回転電機の構成を示す立断面図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係る回転電機の構成を示す立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る回転電機について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る回転電機の構成を示す立断面図である。回転電機100は、水中で駆動する対象機器であるポンプ1を駆動する。すなわち、回転電機100は、ポンプ入口配管3内の水をポンプ出口配管4に送水するポンプ1を駆動する。本実施形態においては、回転電機100は、空気などの環境雰囲気202内に設置されており、回転子10、固定子20、イオン除去装置50を有する。
【0015】
回転子10は、軸を水平に設けられ可能に軸支されたロータシャフト11と、ロータシャフト11の径方向の外側に設けられた回転子鉄心12、およびロータシャフト11に取り付けられた循環用プロペラ13を有する。ロータシャフト11の回転子鉄心12を挟んだ両側は、それぞれ軸受31により支持されている。なお、循環用プロペラ13は、必ずしも設けられていなくともよい。
【0016】
固定子20は、回転子鉄心12の径方向外側に設けられた固定子鉄心21、固定子鉄心21の内周面に形成されて軸方向に延びた複数のスロット(図示せず)内を通るように設けられた固定子巻線22を有する。
【0017】
回転子鉄心12および固定子20は、フレーム35内に収納されている。フレーム35の水平方向の両端は開放されており、それぞれの開放部を閉止するように、それぞれ軸受ブラケット36が設けられている。それぞれの軸受ブラケット36は軸受31を支持している。
【0018】
フレーム35の外側には、イオン除去装置50が設けられている。イオン除去装置50は、ケーシング51、ケーシング51内に収納されたイオン交換樹脂52、冷却水入口配管57、冷却水出口配管58を有する。イオン交換樹脂52は、粒状であり樹脂収納部52a内に収納されている。イオン交換樹脂52は、少なくとも陽イオン交換樹脂を含む。
【0019】
陽イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂と弱酸性陽イオン交換樹脂がある。強酸性陽イオン交換樹脂は、たとえば、スルホン酸基(−SOH)を交換基として有する。強酸性陽イオン交換樹脂は、塩酸、硫酸などと同様に解離して強酸性を示し、陽イオンを交換することができる。強酸性陽イオン交換樹脂は、全てのpH領域で使用できる。
【0020】
弱酸性陽イオン交換樹脂は、たとえば、カルボン酸基(−COOH)を交換基として有する。使用できるpH範囲に制限がある。弱酸性陽イオン交換樹脂の各種イオンに対する吸着の強さ(選択性)は強酸性陽イオン交換樹脂と大体類似していて、価数が高いイオン程選択性が大きくなるが、水素イオンに対する選択性が非常に大きい。
【0021】
樹脂収納部52aは、イオン交換樹脂52内を収納するとともに、冷却水201が通過可能に形成されている。樹脂収納部52aは、たとえば、バスケット、多孔板で構成された容器、あるいは、冷却水の流路方向に延びたカラムでもよい。あるいは、金網製の容器でもよい。
【0022】
ケーシング51は、フレーム35の外側に取り付けられており、ケーシング51内の空間とフレーム35内の空間とは、連通開口35aで直接に連結されている。樹脂収納部52aは、ケーシング51に脱着可能に取り付けられている。ケーシング51には、樹脂収納部52aの取り外し、交換が可能なように開閉蓋54が設けられている。
【0023】
ケーシング51内の空間とポンプ出口配管4内の空間は、冷却水入口配管57により接続されている。冷却水入口配管57には、圧力調節弁57a、圧力調節弁57aのケーシング側に設けられた圧力発信器57b、および圧力調節弁57aのとポンプ出口配管4側に設けられた止め弁57cが設けられている。
【0024】
ポンプ出口配管4から冷却水入口配管57に流入した冷却水201は、ケーシング51内に流入して、連通開口53からフレーム35内に流入する。イオン交換樹脂52は、ケーシング51内の流路を塞ぐように配されており、ケーシング51内を通過する冷却水201の全量がイオン交換樹脂52を通過する。圧力調節弁57aは、ポンプ1の吐出圧が直接にイオン交換樹脂52以降に掛からないように、その下流側の圧力発信器57bからの圧力信号を、イオン交換樹脂52以降にとっての構造上の適正な値に調節する。
【0025】
フレーム35内の空間とポンプ入口配管3内の空間とは、冷却水出口配管58により接続されており、冷却水出口配管58は、フレーム35内に連通開口35bで開放されている。連通開口35aと連通開口35bとは、フレーム35の軸方向に回転子鉄心12および固定子20を挟んで互いに反対側に形成されている。
【0026】
冷却水出口配管58には、止め弁58aが設けられている。止め弁58aは、止め弁57cとともに、回転電機100を、ポンプ入口配管3およびポンプ出口配管4側から隔離することができる。このため、たとえば、イオン交換樹脂52のイオン交換能力が低下した場合、回転電機100の運転中でも、開閉蓋54を開いて、樹脂収納部52aを取り出し、イオン交換樹脂52を再生、あるいは新品と交換することができる。
【0027】
次に、以上のように構成されている本実施形態の作用について説明する。回転電機100が運転中で、ポンプ1が回転中は、ポンプ入口配管3内の圧力に比べてポンプ出口配管4内圧力がほぼポンプ揚程分高くなっている。ポンプ出口配管4内の水の一部は、冷却水201としてポンプ出口配管4から分岐した冷却水入口配管57に流入する。冷却水201は、ケーシング51に流入してイオン交換樹脂52を通過して、連通開口53から流出し、フレーム35の連通開口35aからフレーム35内に流入する。
【0028】
フレーム35内に流入した冷却水201は、回転子10および固定子20を冷却した後に、連通開口35bから冷却水出口配管58に流出してポンプ入口配管3に到達する。ポンプ出口配管4内の圧力がポンプ入口配管3内の圧力より高いことから、フレーム35内を通過する冷却水201の流路は、ポンプ1の流路から見て再循環流路を構成する。また、循環用プロペラ13によって、さらに再循環の流れの駆動力が増大する。
【0029】
フレーム35内における冷却能力は、冷却水201の流量が大きくなるほど、高くなる。一方、イオン交換樹脂52を通過後の冷却水201中のイオン濃度は、冷却水201の流量が大きくなるほど、高くなる。すなわち、イオン除去能力は低くなる。
【0030】
ここで、ポンプの揚程を与えられた条件として、冷却水201の流量の調整手段としては、再循環流路の流動抵抗、循環用プロペラ13の有無、および循環用プロペラ13の揚程がある。再循環流路の流動抵抗を増加させることは冷却水201の流量を低下させる。一方、循環用プロペラ13を設けること、揚程を増やすことは冷却水201の流量を増加させる。
【0031】
イオン除去能力は、冷却水201のイオン交換樹脂52の通過時間を増加させることにより向上させることができる。冷却水201のイオン交換樹脂52の通過時間を増加させることは、イオン交換樹脂52の冷却水201の通過断面を増大させること、および、冷却水201のイオン交換樹脂52中の通過長さを増大させることにより達成可能である。
【0032】
以上のことから、所定のレベルの冷却能力の確保と、所定のレベルのイオン交換能力の確保がそれぞれ可能である。
【0033】
以上のように、本実施形態による回転電機100は、冷却水201中の陽イオンを除去した上でフレーム35内に流入する。この結果、フレーム35内の固定子巻線22などの電圧が印加される部分の絶縁物は、陽イオンが所定のレベル以下まで除去された冷却水201の環境下にある。このため、水トリーの発生、進展は、大幅に抑制される。
【0034】
[第2の実施形態]
図2は、本発明の第2の実施形態に係る回転電機の構成を示す立断面図である。本実施形態は、第1の実施形態の変形である。本第2の実施形態は、たとえば、回転界磁が、回転子の永久磁石による回転電機など、回転子からの発熱が殆どなく、積極的に冷却水により回転子を冷却しなくとも、熱伝導により十分に熱が放散される場合の実施形態である。
【0035】
本第2の実施形態における回転電機100は、フレーム内仕切り筒40を有する。フレーム内仕切り筒40は、ロータシャフト11の回転軸を中心とした円筒状で、軸方向に延びており、両端が軸受ブラケット36に気密に結合している。また、フレーム内仕切り筒40は、径方向には、回転子鉄心12の外面の外側で、かつ、固定子鉄心21の内面の内側に設けられている。すなわち、フレーム内仕切り筒40は、フレーム36内を、径方向に、内側領域と外側領域の2つの区画に仕切っている。内側領域には回転子10が、外側領域には固定子20が、配されている。外側領域には、冷却水201が流れる。
【0036】
一方、内側領域には冷却水は流れない。また、循環用プロペラは、設けられていない。内側領域内の発熱量が低い場合は、循環用プロペラからに入熱も無視できなくなるためである。なお、発熱量の程度によっては、フレーム内仕切り筒40の表裏での熱交換を促進するために循環用プロペラを設ける方が得策である場合もあり、この場合は設けてもよい。
【0037】
回転電機100が運転中で、ポンプ1が回転中は、ポンプ出口配管4内の水の一部は、冷却水201としてポンプ出口配管4から分岐した冷却水入口配管57に流入する。冷却水201は、ケーシング51に流入してイオン交換樹脂52を通過して、連通開口53から流出し、フレーム35の連通開口35aからフレーム35内に流入する。
【0038】
フレーム35内に流入した冷却水201は、フレーム36内のフレーム内仕切り筒40の外側領域を通過し、固定子20を冷却した後に、連通開口35bから冷却水出口配管58に流出してポンプ入口配管3に到達する。
【0039】
以上のような本実施形態により、フレーム35内を通過する冷却水201の流量は、フレーム内仕切り筒40を設けない場合に比べて、少なくなる。この結果、イオン交換樹脂52を通過する冷却水201の流速は低くなる。あるいは、イオン交換樹脂52の冷却水201通過面積を減少させ、よりコンパクトにすることが可能となる。
【0040】
さらに、冷却水201の流量、すなわち再循環の流量が減少することから、ポンプ1のポンプ入口配管3およびポンプ出口配管4内の水の駆動の観点からも、ポンプ1による駆動の実質的な効率の向上を図ることができる。
【0041】
[第3の実施形態]
図3は、本発明の第3の実施形態に係る回転電機の構成を示す立断面図である。本実施形態における回転電機100は、水中に浸漬しており、ポンプ2を駆動する。すなわち、回転電機100は、環境水204の環境下にある。回転電機100は、回転子10、固定子20、軸受31、フレーム35、および軸受ブラケット36、およびイオン除去装置50を有する。
【0042】
回転子10、固定子20、軸受31、フレーム35、および軸受ブラケット36の構成は、第1の実施形態と同様である。また、ロータシャフト11には、循環用プロペラ13が取り付けられている。循環用プロペラ13は、回転子鉄心12および固定子20と反対方向に(図3で右方向)に、流体を駆動する。なお、方向はこの逆方向、すなわち、回転子鉄心12および固定子20を通過後に、イオン交換樹脂52に流入する方向でもよい。ただし、イオン交換樹脂52の保護上、温度上昇の程度が大きい場合は、温度上昇する前にイオン交換樹脂52に流入する方向が望ましい。
【0043】
イオン除去装置50は、ケーシング51、およびイオン交換樹脂52を有する。ケーシング51は、フレーム35の外側に設けられている。ケーシング51内の空間とフレーム35内の空間とは、連通開口55および連通開口56で互いに連通している。ケーシング51とフレーム35とは互いにあいまって密閉空間60を形成している。密閉空間60内には、冷却水203が充満している。
【0044】
連通開口55と連通開口56は、ロータシャフト11の軸方向について、回転子鉄心12および固定子20を挟んで互いに反対側に位置している。ケーシング51内には、イオン交換樹脂52を収納した樹脂収納部52aが設けられている。樹脂収納部52aは、イオン交換樹脂52を保持するとともに、冷却水203を通過可能に形成されている。
【0045】
樹脂収納部52aは、ロータシャフト11の軸方向について、連通開口55と連通開口56の間に設けられている。ケーシング51内を流れる冷却水203は、全量がイオン交換樹脂52を通過するように、樹脂収納部52aに収納されたイオン交換樹脂52は、流路の断面を塞ぐように設けられている。
【0046】
以上のように構成された本実施形態においては、回転電機100が運転中の状態においては、ロータシャフト11が回転する。この結果、循環用プロペラ13が回転し、密閉空間60内の冷却水203が駆動される。冷却水203は、循環用プロペラ13から、連通開口55を通じてケーシング51内に流入する。ケーシング51内に流入した冷却水203は、樹脂収納部52a内に充填されているイオン交換樹脂52を通過し、連通開口56から流出しフレーム35内に流入する。
【0047】
フレーム35内に流入した冷却水203は、回転子鉄心12、固定子20などフレーム35内を冷却する。すなわち、冷却水203は、回転子鉄心12、固定子20などから熱を受け取り自身の温度を上昇させながらフレーム35内を通過し、循環用プロペラ13側に流出する。冷却水203は、このように、密閉空間60内を循環する過程で、フレーム35およびケーシング51外の環境水204との間で熱交換し、冷却水203の熱は、環境水204に移動する。
【0048】
このように、回転子鉄心12、固定子20などから発生した熱は、冷却水203から環境水204に移行し、回転電機100の運転中の回転子鉄心12、固定子20などの冷却状態が維持される。
【0049】
回転電機100内部の水質に関しては、以上のように、回転電機100の運転中は、冷却水203は、イオン交換樹脂52を通過すること、冷却水203は密閉空間60内に収納された量のみであり外部から陽イオンレベルの高い水が流入することがないこと、などから、冷却水203中の陽イオン濃度は、低レベルで維持される。また、イオン交換樹脂52が飽和した場合は、ケーシング51に設けられた開閉蓋54からイオン交換樹脂52を収納した樹脂収納部52aを出し入れして、新しいイオン交換樹脂52に交換することが可能である。
【0050】
以上のように、本実施形態による回転電機100は、冷却水203中の陽イオンが低レベルに維持される。この結果、フレーム35内の固定子巻線22などの電圧が印加される部分の絶縁物は、陽イオンが所定のレベル以下まで除去された冷却水203の環境下にある。このため、水トリーの発生、進展は、大幅に抑制される。
【0051】
[その他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。たとえば、実施形態における回転電機100では、ポンプ1あるいはポンプ2と結合してこれらを駆動する電動機の例を示したがこれには限定されない。
【0052】
たとえば、駆動する機器、あるいは駆動される機器が水車であって、回転電機はこれに結合する発電機の場合であってもよい。また、回転電機が駆動される原動機、あるいは回転電機が駆動する負荷が水中にない場合でもよい。また、第1の実施形態では、回転電機100が、空気などの環境雰囲気202中に設けられている場合を示したが、水中に設けられている場合でもよい。
【0053】
さらに、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
1、2…ポンプ、3…ポンプ入口配管、4…ポンプ出口配管、10…回転子、11…ロータシャフト、12…回転子鉄心、13…循環用プロペラ、20…固定子、21…固定子鉄心、22…固定子巻線、31…軸受、35…フレーム、35a,35b…連通開口、36…軸受ブラケット、40…フレーム内仕切り筒、50…イオン除去装置、51…ケーシング、52…イオン交換樹脂、52a…樹脂収納部、53…連通開口、54…開閉蓋、55、56…連通開口、57…冷却水入口配管、57a…圧力調節弁、57b…圧力発信器、57c…止め弁、58…冷却水出口配管、58a…止め弁、60…密閉空間、100…回転電機、201…冷却水、202…環境雰囲気、203…冷却水、204…環境水
図1
図2
図3