(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
脚部の両端部に互いに対向するように曲げられた一対のヨーク形成部を有するほぼU字状をなす脚鉄心を3組備え、これら3組の脚鉄心を、所定の点を中心として前記脚部がほぼ120度間隔となるように配置するとともに、前記ヨーク形成部同士を突き合わせることにより構成される静止誘導機器用鉄心であって、
前記3組の各脚鉄心は周方向に2分割されるとともに、分割された各分割脚鉄心は、ほぼU字状をなす積層用鉄心を複数層重ねて形成され、前記積層用鉄心の各ヨーク形成部の先端部は、当該ヨーク形成部の側面に対して斜めとなる切断面にて切断されていて、
前記分割脚鉄心における内側から2層目以降の前記積層用鉄心のヨーク形成部の一部が、当該分割脚鉄心と同じ磁路を形成する隣の分割脚鉄心の前層の前記積層用鉄心のヨーク形成部の一部に重なるように構成されたラップ構造を有するとともに、前記3組の脚鉄心における前記ヨーク形成部の中心部分に軸方向に開通した開口部を形成した構成の静止誘導機器用鉄心。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、複数の実施形態による静止誘導機器用鉄心を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について
図1から
図4を参照して説明する。第1実施形態の静止誘導機器用鉄心としては、三相の変圧器用鉄心である。
図1から
図3において、変圧器用鉄心1は、第1、第2および第3の3組の脚鉄心2,3,4を備えている。これら3組の脚鉄心2,3,4は同一の構成であるので、主に第1の脚鉄心2を代表して説明する。
【0009】
第1の脚鉄心2は、横向きのほぼU字状をなす第1および第2の2個の分割脚鉄心5,6を組み合わせて構成されている。2個の各分割脚鉄心5,6は、それぞれほぼU字状をなす積層用鉄心を複数層、この場合4層積み重ねて構成されている。この場合、第1の分割脚鉄心5については、
図1および
図3に示すように、内側から一層目の積層用鉄心を5−1、二層目の積層用鉄心を5−2、三層目の積層用鉄心を5−3、四層目の積層用鉄心を5−4の符号で示す。第2の分割脚鉄心6については、
図1および
図3における左側の第3の脚鉄心4における第2の分割脚鉄心6で示すように、内側から一層目の積層用鉄心を6−1、二層目の積層用鉄心を6−2、三層目の積層用鉄心を6−3、四層目の積層用鉄心を6−4の符号で示す。各積層用鉄心5−1〜5−4、6−1〜6−4は、例えば電磁鋼板により形成されている。
【0010】
第1の分割脚鉄心5における一層目の積層用鉄心5−1は、
図4(a)に示すように、軸方向(上下方向)に延びる脚形成部5a−1と、この脚形成部5a−1の上下両端部に互いに対向するように曲げられたヨーク形成部5b−1を一体に有していて、横向きのほぼU字状をなしている。上側のヨーク形成部5b−1の先端部と下側のヨーク形成部ヨーク形成部5b−1の先端部には、それぞれヨーク形成部5b−1の側面に対して斜めとなる切断面5c−1が形成されている。上下の両切断面5c−1は、同じ向きに形成されている。各切断面5c−1は、対応するヨーク形成部5b−1の側面に対して60°と120°の角度をなしている。上側のヨーク形成部5b−1の突出長さと、下側のヨーク形成部5b−1の突出長さは、同じ長さに設定されている。
【0011】
第1の分割脚鉄心5における二層目の積層用鉄心5−2は、
図4(b)に示すように、一層目の積層用鉄心5−1の外側に積層され、脚形成部5a−2と一対のヨーク形成部5b−2を一体に有していて、横向きのほぼU字状をなしている。上側のヨーク形成部5b−2の先端部と下側のヨーク形成部5b−2の先端部には、それぞれヨーク形成部5b−2の側面に対して斜めとなる切断面5c−2が形成されている。上下の両切断面5c−2は、一層目の切断面5c−1と同じ向きに形成されているが、一層目の切断面5c−1より所定寸法後退している(
図3参照)。
【0012】
第1の分割脚鉄心5における三層目の積層用鉄心5−3は、
図4(c)に示すように、二層目の積層用鉄心5−2の外側に積層され、脚形成部5a−3と一対のヨーク形成部5b−3を一体に有していて、横向きのほぼU字状をなしている。上側のヨーク形成部5b−3の先端部と下側のヨーク形成部5b−3の先端部には、それぞれヨーク形成部5b−3の側面に対して斜めとなる切断面5c−3が形成されている。上下の両切断面5c−3は、二層目の切断面5c−2と同じ向きに形成されているが、二層目の切断面5c−2より所定寸法後退している。
【0013】
第1の分割脚鉄心5における四層目の積層用鉄心5−4は、
図4(d)に示すように、三層目の積層用鉄心5−3の外側に積層され、脚形成部5a−4と一対のヨーク形成部5b−4を一体に有していて、横向きのほぼU字状をなしている。上側のヨーク形成部5b−4の先端部と下側のヨーク形成部5b−4の先端部には、それぞれヨーク形成部5b−4の側面に対して斜めとなる切断面5c−4が形成されている。上下の両切断面5c−4は、三層目の切断面5c−3と同じ向きに形成されているが、三層目の切断面5c−3より所定寸法後退している。
【0014】
したがってこの場合、第1の分割脚鉄心5における四層の積層用鉄心5−1〜5−4のヨーク形成部5b−1〜5b−4の切断面5c−1〜5c−4は、
図3に示すように階段状に順にずれている。
【0015】
また、第2の分割脚鉄心6における一層目の積層用鉄心6−1は、
図4(a)に示すように、軸方向(上下方向)に延びる脚形成部6a−1と、この脚形成部6a−1の上下両端部に互いに対向するように曲げられたヨーク形成部6b−1を一体に有していて(
図4(a)において、左側の第3の脚鉄心4の第2の分割脚鉄心6の一層目の積層用鉄心6−1参照)、横向きのほぼU字状をなしている。上側のヨーク形成部6b−1の先端部と下側のヨーク形成部6b−1の先端部には、それぞれヨーク形成部6b−1の側面に対して斜めとなる切断面6c−1が形成されている。上下の両切断面6c−1は、同じ向きに形成されているが、第1の分割脚鉄心5における一層目の積層用鉄心5−1の切断面5c−1とは向きが異なっている。また、上側のヨーク形成部6b−1の突出長さと、下側のヨーク形成部6b−1の突出長さは、同じ長さに設定されているが、第1の分割脚鉄心5における一層目の積層用鉄心5−1のヨーク形成部5b−1よりも短く設定されている。
【0016】
第2の分割脚鉄心6における二層目の積層用鉄心6−2は、
図4(b)に示すように、一層目の積層用鉄心6−1の外側に積層され、脚形成部6a−2と一対のヨーク形成部6b−2を一体に有していて、横向きのほぼU字状をなしている。上側のヨーク形成部6b−2の先端部と下側のヨーク形成部6b−2の先端部には、それぞれヨーク形成部6b−2の側面に対して斜めとなる切断面6c−2が形成されている。上下の両切断面6c−2は、一層目の切断面6c−1と同じ向きに形成されているが、一層目の切断面6c−1より所定寸法突出している(
図3参照)。
【0017】
第2の分割脚鉄心6における三層目の積層用鉄心6−3は、
図4(c)に示すように、二層目の積層用鉄心6−2の外側に積層され、脚形成部6a−3と一対のヨーク形成部6b−3を一体に有していて、横向きのほぼU字状をなしている。上側のヨーク形成部6b−3の先端部と下側のヨーク形成部6b−3の先端部には、それぞれヨーク形成部6b−3の側面に対して斜めとなる切断面6c−3が形成されている。上下の両切断面6c−3は、二層目の切断面6c−2と同じ向きに形成されているが、二層目の切断面6c−2より所定寸法突出している。
【0018】
第2の分割脚鉄心6における四層目の積層用鉄心6−4は、
図4(d)に示すように、三層目の積層用鉄心6−3の外側に積層され、脚形成部6a−4と一対のヨーク形成部6b−4を一体に有していて、横向きのほぼU字状をなしている。上側のヨーク形成部6b−4の先端部と下側のヨーク形成部6b−4の先端部には、それぞれヨーク形成部6b−4の側面に対して斜めとなる切断面6c−4が形成されている。上下の両切断面6c−4は、三層目の切断面6c−3と同じ向きに形成されているが、三層目の切断面6c−3より所定寸法突出している。
【0019】
したがってこの場合、第2の分割脚鉄心6における四層の積層用鉄心6−1〜6−4のヨーク形成部6b−1〜6b−4の切断面6c−1〜6c−4は、
図3に示すように階段状に順にずれている(
図3において、第3の脚鉄心4における第2の分割脚鉄心6参照)。
【0020】
第1の脚鉄心2は、
図3に示すように、それぞれ四層の第1の分割脚鉄心5と第2の分割脚鉄心6を、これらの側面同士を合わせて組み合わせることで、軸方向に延びる脚部2aの両端部に互いに対向するように曲げられた一対のヨーク形成部2bを有する、横向きのほぼU字状をなすように構成される。第1の脚鉄心2の脚部2aは、第1の分割脚鉄心5の脚形成部5aと第2の分割脚鉄心6の脚形成部6aで構成され、第1の脚鉄心2のヨーク形成部2bは、第1の分割脚鉄心5のヨーク形成部5bと第2の分割脚鉄心6のヨーク形成部6bで構成される。第2の脚鉄心3および第3の脚鉄心4も、第1の脚鉄心2と同様に構成されている。
【0021】
そして、変圧器用鉄心1は、
図2に示すように、3組の脚鉄心2,3,4を、所定の点を中心として脚部2a,3a,4aがほぼ120度間隔となるように配置するとともに、ヨーク形成部2b,3b,4bの先端部同士を突き合わせることにより構成される。また、3組の脚鉄心2,3,4は、それぞれ周方向に2分割された第1の分割脚鉄心5と第2の分割脚鉄心6により構成されている。
【0022】
この場合、第1の脚鉄心2の第1の分割脚鉄心5における一層目から四層目の積層用鉄心5−1〜5−4の上下の切断面5c−1〜5c−4は、第3の脚鉄心4の第2の分割脚鉄心6における一層目から四層目の積層用鉄心6−1〜6−4の上下の切断面6c−1〜6c−4にそれぞれ突き合わせられる。このとき、第1の脚鉄心2の第1の分割脚鉄心5における一層目から四層目の積層用鉄心5−1〜5−4の上下のヨーク形成部5b−1〜5b−4の先端部、および第3の脚鉄心4の第2の分割脚鉄心6における一層目から四層目の積層用鉄心6−1〜6−4の上下のヨーク形成部6b−1〜6b−4の先端部は、それぞれ階段状に順にずれているから、第3の脚鉄心4の第2の分割脚鉄心6における二層目から四層目の積層用鉄心6−2〜6−4の上下のヨーク形成部6b−2〜6b−4の先端部が、同じ磁路を形成する第1の脚鉄心2の第1の分割脚鉄心5における一層目から三層目の積層用鉄心5−1〜5−3の上下のヨーク形成部5b−1〜5b−3の先端部にそれぞれ重なるようになる。その重なった部分をステップラップ構造7(
図1および
図2参照)と称する。
【0023】
また同様に、第1の脚鉄心2の第2の分割脚鉄心6における一層目から四層目の積層用鉄心6−1〜6−4の上下の切断面6c−1〜6c−4は、第2の脚鉄心3の第1の分割脚鉄心5における一層目から四層目の積層用鉄心5−1〜5−4の上下の切断面5c−1〜5c−4にそれぞれ突き合わせられる。このときも、第1の脚鉄心2の第2の分割脚鉄心6における一層目から四層目の積層用鉄心6−1〜6−4の上下のヨーク形成部6b−1〜6b−4の先端部、および第2の脚鉄心3の第1の分割脚鉄心5における一層目から四層目の積層用鉄心5−1〜5−4の上下のヨーク形成部5b−1〜5b−4の先端部は、それぞれ階段状に順にずれているから、第1の脚鉄心2の第2の分割脚鉄心6における二層目から四層目の積層用鉄心6−2〜6−4の上下のヨーク形成部6b−2〜6b−4の先端部が、同じ磁路を形成する第2の脚鉄心3の第1の分割脚鉄心5における一層目から三層目の積層用鉄心5−1〜5−3の上下のヨーク形成部5b−1〜5b−3の先端部にそれぞれ重なるようになる。その重なった部分もステップラップ構造7(
図1および
図2参照)となっている。
【0024】
さらに、第2の脚鉄心3の第2の分割脚鉄心6における一層目から四層目の積層用鉄心6−1〜6−4の上下の切断面6c−1〜6c−4は、第3の脚鉄心4の第1の分割脚鉄心5における一層目から四層目の積層用鉄心5−1〜5−4の上下の切断面5c−1〜5c−4にそれぞれ突き合わせられる。このときも、第2の脚鉄心3の第2の分割脚鉄心6における一層目から四層目の積層用鉄心6−1〜6−4の上下のヨーク形成部6b−1〜6b−4の先端部、および第3の脚鉄心4の第1の分割脚鉄心5における一層目から四層目の積層用鉄心5−1〜5−4の上下のヨーク形成部5b−1〜5b−4の先端部は、それぞれ階段状に順にずれているから、第2の脚鉄心3の第2の分割脚鉄心6における二層目から四層目の積層用鉄心6−2〜6−4の上下のヨーク形成部6b−2〜6b−4の先端部が、同じ磁路を形成する第3の脚鉄心4の第1の分割脚鉄心5における一層目から三層目の積層用鉄心5−1〜5−3の上下のヨーク形成部5b−1〜5b−3の先端部にそれぞれ重なるようになる。その重なった部分もステップラップ構造7(
図1および
図2参照)となっている。
【0025】
図1および
図2に示すように、3組の脚鉄心2,3,4を組み合わせた状態では、これら3組の脚鉄心2,3,4の上下の各ヨーク形成部2b,3b,4bの中心部に、軸方向(上下方向)に開通した開口部8が形成されている。そして、3組の脚鉄心2,3,4の各脚部2a,3a,4aにコイル9(
図2参照)を巻装することにより、変圧器が構成される。
【0026】
この場合、各脚部2a,3a,4aにコイル9を巻装する場合には、
図3に示すように、それぞれ第1の分割脚鉄心5と第2の分割脚鉄心6を組み合わせることで3組の脚鉄心2,3,4を別々に形成し、各脚部2a,3a,4aにコイル9を巻装した状態とし、この後、それぞれコイル9を巻装した3組の脚鉄心2,3,4を組み合わせることで、脚鉄心1を構成するようにする。このように組み立てることで、変圧器を良好に組み立てることが可能となる。
【0027】
上記構成において、変圧器として使用した場合、第1の脚鉄心2における第1の分割脚鉄心5を流れる磁束は、隣接する第3の脚鉄心4における第2の分割脚鉄心6を通して流れる。このとき、第1の分割脚鉄心5を構成する四層の積層用鉄心5−1〜5−4のヨーク形成部5b−1〜5b−4の先端部と、第2の分割脚鉄心6を構成する四層の積層用鉄心6−1〜6−4のヨーク形成部6b−1〜6b−4の先端部は、ステップラップ構造7で積層方向に重なっているから、磁束は突き合わされた切断面5c−1〜5c−4、6c−1〜6c−4だけではなく、積層方向にも流れ易くなるので、磁束の損失を極力防止することができる。
【0028】
また、第1の脚鉄心2における第2の分割脚鉄心6を流れる磁束は、隣接する第2の脚鉄心3における第1の分割脚鉄心5を通して流れる。このときも、第2の分割脚鉄心6を構成する四層の積層用鉄心6−1〜6−4のヨーク形成部6b−1〜6b−4の先端部と、第1の分割脚鉄心5を構成する四層の積層用鉄心5−1〜5−4のヨーク形成部5b−1〜5b−4の先端部は、ステップラップ構造7で積層方向に重なっているから、磁束は突き合わされた切断面6c−1〜6c−4、5c−1〜5c−4だけではなく、積層方向にも流れ易くなるので、磁束の損失を極力防止することができる。
【0029】
さらに、第2の脚鉄心3における第2の分割脚鉄心6を流れる磁束は、隣接する第3の脚鉄心4における第1の分割脚鉄心5を通して流れる。このときも、第2の分割脚鉄心6を構成する四層の積層用鉄心6−1〜6−4のヨーク形成部6b−1〜6b−4の先端部と、第1の分割脚鉄心5を構成する四層の積層用鉄心5−1〜5−4のヨーク形成部5b−1〜5b−4の先端部は、ステップラップ構造7で積層方向に重なっているから、磁束は突き合わされた切断面6c−1〜6c−4、5c−1〜5c−4だけではなく、積層方向にも流れ易くなるので、磁束の損失を極力防止することができる。
【0030】
また、変圧器の運転時において、コイル9や各脚鉄心2,3,4において発生する熱が、特に上部のヨーク形成部2b,3b,4bの裏面付近にこもり勝ちとなるが、本実施形態においては、ヨーク形成部2b,3b,4bの中心部分に開口部8を形成しているので、熱をその開口部8を通して外部へ逃がすことが可能となる。これにより、温度が異常に上昇することを防止でき、性能の向上を図ることが可能となる。
【0031】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について
図5から
図8を参照して説明する。この実施形態の誘導機器用鉄心も、三相の変圧器用鉄心である。
図5から
図7において、変圧器用鉄心11は、第1、第2および第3の3組の脚鉄心12,13,14を備えている。これら3組の脚鉄心12,13,14は同一の構成であるので、主に第1の脚鉄心12を代表して説明する。
【0032】
第1の脚鉄心12は、横向きのほぼU字状をなす第1および第2の2個の分割脚鉄心15,16を組み合わせて構成されている。2個の各分割脚鉄心15,16は、それぞれほぼU字状をなす積層用鉄心を複数層、この場合4層積み重ねて構成されている。この場合、第1の分割脚鉄心15については、
図5および
図7に示すように、内側から一層目の積層用鉄心を15−1、二層目の積層用鉄心を15−2、三層目の積層用鉄心を15−3、四層目の積層用鉄心を15−4の符号で示す。第2の分割脚鉄心16については、
図5および
図7における左側の第3の脚鉄心14における第2の分割脚鉄心16で示すように、内側から一層目の積層用鉄心を16−1、二層目の積層用鉄心を16−2、三層目の積層用鉄心を16−3、四層目の積層用鉄心を16−4の符号で示す。各積層用鉄心15−1〜15−4、16−1〜16−4も、例えば電磁鋼板により形成されている。
【0033】
第1の分割脚鉄心15における一層目の積層用鉄心15−1は、
図8(a)に示すように、軸方向(上下方向)に延びる脚形成部15a−1と、この脚形成部15a−1の上下両端部に互いに対向するように曲げられたヨーク形成部15b−1を一体に有していて、横向きのほぼU字状をなしている。上側のヨーク形成部15b−1の先端部と下側のヨーク形成部ヨーク形成部15b−1の先端部には、それぞれヨーク形成部15b−1の側面に対して斜めとなる切断面15c−1が形成されている。上下の両切断面15c−1は、同じ向きに形成されている。各切断面15c−1は、対応するヨーク形成部15b−1の側面に対して60°と120°の角度をなしている。上側のヨーク形成部15b−1の突出長さと、下側のヨーク形成部15b−1の突出長さは、同じ長さに設定されている。
【0034】
第1の分割脚鉄心15における二層目の積層用鉄心15−2は、
図8(b)に示すように、一層目の積層用鉄心15−1の外側に積層され、脚形成部15a−2と一対のヨーク形成部15b−2を一体に有していて、横向きのほぼU字状をなしている。上側のヨーク形成部15b−2の先端部と下側のヨーク形成部15b−2の先端部には、それぞれヨーク形成部15b−2の側面に対して斜めとなる切断面15c−2が形成されている。上下の両切断面15c−2は、一層目の切断面5c−1と同じ向きに形成されているが、一層目の切断面5c−1より所定寸法後退している(
図7参照)。
【0035】
第1の分割脚鉄心15における三層目の積層用鉄心15−3は、
図8(c)に示すように、二層目の積層用鉄心15−2の外側に積層され、脚形成部15a−3と一対のヨーク形成部15b−3を一体に有していて、横向きのほぼU字状をなしている。上側のヨーク形成部15b−3の先端部と下側のヨーク形成部15b−3の先端部には、それぞれヨーク形成部15b−3の側面に対して斜めとなる切断面15c−3が形成されている。上下の両切断面15c−3は、二層目の切断面15c−2と同じ向きに形成されているが、二層目の切断面15c−2より所定寸法突出していて、一層目の切断面15c−1と同じ位置まで突出している(
図7参照)。
【0036】
第1の分割脚鉄心15における四層目の積層用鉄心15−4は、
図8(d)に示すように、三層目の積層用鉄心15−3の外側に積層され、脚形成部15a−4と一対のヨーク形成部15b−4を一体に有していて、横向きのほぼU字状をなしている。上側のヨーク形成部15b−4の先端部と下側のヨーク形成部15b−4の先端部には、それぞれヨーク形成部15b−4の側面に対して斜めとなる切断面15c−4が形成されている。上下の両切断面15c−4は、三層目の切断面15c−3と同じ向きに形成されているが、三層目の切断面15c−3より所定寸法後退していて、二層目の切断面15c−2と同じ位置まで後退している。
【0037】
したがってこの場合、第1の分割脚鉄心15における四層の積層用鉄心15−1〜15−4のヨーク形成部15b−1〜15b−4の切断面15c−1〜15c−4は、
図7に示すように交互に突出、後退した状態となっている。
【0038】
また、第2の分割脚鉄心16における一層目の積層用鉄心16−1は、
図8(a)に示すように、軸方向(上下方向)に延びる脚形成部16a−1と、この脚形成部16a−1の上下両端部に互いに対向するように曲げられたヨーク形成部16b−1を一体に有していて(
図8(a)において、左側の第3の脚鉄心14の第2の分割脚鉄心16の一層目の積層用鉄心16−1参照)、横向きのほぼU字状をなしている。上側のヨーク形成部16b−1の先端部と下側のヨーク形成部16b−1の先端部には、それぞれヨーク形成部16b−1の側面に対して斜めとなる切断面16c−1が形成されている。上下の両切断面16c−1は、同じ向きに形成されているが、第1の分割脚鉄心15における一層目の積層用鉄心15−1の切断面15c−1とは向きが異なっている。また、上側のヨーク形成部16b−1の突出長さと、下側のヨーク形成部16b−1の突出長さは、同じ長さに設定されているが、第1の分割脚鉄心15における一層目の積層用鉄心15−1のヨーク形成部15b−1よりも短く設定されている。
【0039】
第2の分割脚鉄心16における二層目の積層用鉄心16−2は、
図8(b)に示すように、一層目の積層用鉄心16−1の外側に積層され、脚形成部16a−2と一対のヨーク形成部16b−2を一体に有していて、横向きのほぼU字状をなしている。上側のヨーク形成部16b−2の先端部と下側のヨーク形成部16b−2の先端部には、それぞれヨーク形成部16b−2の側面に対して斜めとなる切断面16c−2が形成されている。上下の両切断面16c−2は、一層目の切断面16c−1と同じ向きに形成されているが、一層目の切断面16c−1より所定寸法突出している(
図7参照)。
【0040】
第2の分割脚鉄心16における三層目の積層用鉄心16−3は、
図8(c)に示すように、二層目の積層用鉄心16−2の外側に積層され、脚形成部16a−3と一対のヨーク形成部16b−3を一体に有していて、横向きのほぼU字状をなしている。上側のヨーク形成部16b−3の先端部と下側のヨーク形成部16b−3の先端部には、それぞれヨーク形成部16b−3の側面に対して斜めとなる切断面16c−3が形成されている。上下の両切断面16c−3は、二層目の切断面16c−2と同じ向きに形成されているが、二層目の切断面16c−2より所定寸法後退していて、一層目の切断面16c−1と同じ位置まで後退している。
【0041】
第2の分割脚鉄心16における四層目の積層用鉄心16−4は、
図8(d)に示すように、三層目の積層用鉄心16−3の外側に積層され、脚形成部16a−4と一対のヨーク形成部16b−4を一体に有していて、横向きのほぼU字状をなしている。上側のヨーク形成部16b−4の先端部と下側のヨーク形成部16b−4の先端部には、それぞれヨーク形成部16b−4の側面に対して斜めとなる切断面16c−4が形成されている。上下の両切断面16c−4は、三層目の切断面16c−3と同じ向きに形成されているが、三層目の切断面16c−3より所定寸法突出していて、二層目の切断面16c−2と同じ位置まで突出している。
【0042】
したがってこの場合、第2の分割脚鉄心16における四層の積層用鉄心16−1〜16−4のヨーク形成部16b−1〜16b−4の切断面16c−1〜16c−4は、
図7に示すように交互に突出、後退した状態となっている(
図7において、第3の脚鉄心14における第2の分割脚鉄心16参照)。
【0043】
第1の脚鉄心12は、
図7に示すように、それぞれ四層の第1の分割脚鉄心15と第2の分割脚鉄心16を、これらの側面同士を合わせて組み合わせることで、軸方向に延びる脚部12aの両端部に互いに対向するように曲げられた一対のヨーク形成部12bを有する、横向きのほぼU字状をなすように構成される。第1の脚鉄心12の脚部12aは、第1の分割脚鉄心15の脚形成部15aと第2の分割脚鉄心16の脚形成部16aで構成され、第1の脚鉄心12のヨーク形成部12bは、第1の分割脚鉄心15のヨーク形成部15bと第2の分割脚鉄心16のヨーク形成部16bで構成される。第2の脚鉄心13および第3の脚鉄心14も、第1の脚鉄心12と同様に構成されている。
【0044】
そして、変圧器用鉄心11は、
図6に示すように、3組の脚鉄心12,13,14を、所定の点を中心として脚部12a,13a,14aがほぼ120度間隔となるように配置するとともに、ヨーク形成部12b,13b,14bの先端部同士を突き合わせることにより構成される。また、3組の脚鉄心12,13,14は、それぞれ周方向に2分割された第1の分割脚鉄心15と第2の分割脚鉄心16により構成されている。
【0045】
この場合も、第1の脚鉄心12の第1の分割脚鉄心15における一層目から四層目の積層用鉄心15−1〜15−4の上下の切断面15c−1〜15c−4は、第3の脚鉄心14の第2の分割脚鉄心16における一層目から四層目の積層用鉄心16−1〜16−4の上下の切断面16c−1〜16c−4にそれぞれ突き合わせられる。このとき、第1の脚鉄心12の第1の分割脚鉄心15における一層目から四層目の積層用鉄心15−1〜15−4の上下のヨーク形成部15b−1〜15b−4の先端部、および第3の脚鉄心14の第2の分割脚鉄心16における一層目から四層目の積層用鉄心16−1〜16−4の上下のヨーク形成部16b−1〜16b−4の先端部は、それぞれ交互に突出および後退しているから、第3の脚鉄心14の第2の分割脚鉄心16における二層目と四層目の積層用鉄心16−2、16−4の上下のヨーク形成部16b−2、16b−4の先端部が、同じ磁路を形成する第1の脚鉄心12の第1の分割脚鉄心15における一層目と三層目の積層用鉄心15−1、15−3の上下のヨーク形成部15b−1、15b−3の先端部にそれぞれ重なるようになる。その重なった部分を交互ラップ構造17(
図5および
図6参照)と称する。
【0046】
また同様に、第1の脚鉄心12の第2の分割脚鉄心16における一層目から四層目の積層用鉄心16−1〜16−4の上下の切断面16c−1〜16c−4は、第2の脚鉄心13の第1の分割脚鉄心15における一層目から四層目の積層用鉄心15−1〜15−4の上下の切断面15c−1〜15c−4にそれぞれ突き合わせられる。このときも、第1の脚鉄心12の第2の分割脚鉄心16における一層目から四層目の積層用鉄心16−1〜16−4の上下のヨーク形成部16b−1〜16b−4の先端部、および第2の脚鉄心13の第1の分割脚鉄心15における一層目から四層目の積層用鉄心15−1〜15−4の上下のヨーク形成部15b−1〜15b−4の先端部は、それぞれ交互に突出および後退しているから、第1の脚鉄心13の第2の分割脚鉄心16における二層目と四層目の積層用鉄心16−2、16−4の上下のヨーク形成部16b−2、16b−4の先端部が、同じ磁路を形成する第2の脚鉄心13の第1の分割脚鉄心15における一層目と三層目の積層用鉄心15−1、15−3の上下のヨーク形成部15b−1、15b−3の先端部にそれぞれ重なるようになる。その重なった部分も交互ラップ構造17(
図5および
図6参照)となる。
【0047】
さらに、第2の脚鉄心13の第2の分割脚鉄心16における一層目から四層目の積層用鉄心16−1〜16−4の上下の切断面16c−1〜16c−4は、第3の脚鉄心14の第1の分割脚鉄心15における一層目から四層目の積層用鉄心15−1〜15−4の上下の切断面15c−1〜15c−4にそれぞれ突き合わせられる。このときも、第2の脚鉄心13の第2の分割脚鉄心16における一層目から四層目の積層用鉄心16−1〜16−4の上下のヨーク形成部16b−1〜16b−4の先端部、および第3の脚鉄心14の第1の分割脚鉄心15における一層目から四層目の積層用鉄心15−1〜15−4の上下のヨーク形成部15b−1〜15b−4の先端部は、それぞれ交互に突出および後退しているから、第2の脚鉄心14の第2の分割脚鉄心16における二層目と四層目の積層用鉄心16−2、16−4の上下のヨーク形成部16b−2、16b−4の先端部が、同じ磁路を形成する第3の脚鉄心14の第1の分割脚鉄心15における一層目と三層目の積層用鉄心15−1、15−3の上下のヨーク形成部15b−1、15b−3の先端部にそれぞれ重なるようになる。その重なった部分も交互ラップ構造17(
図5および
図6参照)となる。
【0048】
図5および
図6に示すように、3組の脚鉄心12,13,14を組み合わせた状態では、これら3組の脚鉄心12,13,14の上下の各ヨーク形成部12b,13b,14bの中心部に、軸方向(上下方向)に開通した開口部18が形成されている。そして、3組の脚鉄心12,13,14の各脚部12a,13a,14aにコイル19(
図6参照)を巻装することにより、変圧器が構成される。
【0049】
この場合も、各脚部12a,13a,14aにコイル19を巻装する場合には、
図7に示すように、それぞれ第1の分割脚鉄心15と第2の分割脚鉄心16を組み合わせることで3組の脚鉄心12,13,14を別々に形成し、各脚部12a,13a,14aにコイル19を巻装した状態とし、この後、それぞれコイル19を巻装した3組の脚鉄心12,13,14を組み合わせることで、脚鉄心11を構成するようにする。このように組み立てることで、変圧器を良好に組み立てることが可能となる。
【0050】
上記構成において、変圧器として使用した場合、第1の脚鉄心12における第1の分割脚鉄心15を流れる磁束は、隣接する第3の脚鉄心14における第2の分割脚鉄心16を通して流れる。このとき、第1の分割脚鉄心15を構成する四層の積層用鉄心15−1〜15−4のヨーク形成部15b−1〜15b−4の先端部と、第2の分割脚鉄心16を構成する四層の積層用鉄心16−1〜16−4のヨーク形成部16b−1〜16b−4の先端部は、交互ラップ構造17で積層方向に重なっているから、磁束は突き合わされた切断面15c−1〜15c−4、16c−1〜16c−4だけではなく、積層方向にも流れ易くなるので、磁束の損失を極力防止することができる。
【0051】
また、第1の脚鉄心12における第2の分割脚鉄心16を流れる磁束は、隣接する第2の脚鉄心13における第1の分割脚鉄心15を通して流れる。このときも、第2の分割脚鉄心16を構成する四層の積層用鉄心16−1〜16−4のヨーク形成部16b−1〜16b−4の先端部と、第1の分割脚鉄心15を構成する四層の積層用鉄心15−1〜15−4のヨーク形成部15b−1〜15b−4の先端部は、交互ラップ構造17で積層方向に重なっているから、磁束は突き合わされた切断面16c−1〜16c−4、15c−1〜15c−4だけではなく、積層方向にも流れ易くなるので、磁束の損失を極力防止することができる。
【0052】
さらに、第2の脚鉄心13における第2の分割脚鉄心16を流れる磁束は、隣接する第3の脚鉄心14における第1の分割脚鉄心15を通して流れる。このときも、前述の場合と同様に、磁束は突き合わされた切断面16c−1〜16c−4、15c−1〜15c−4だけではなく、積層方向にも流れ易くなるので、磁束の損失を極力防止することができる。
【0053】
また、変圧器の運転時において、コイル19や各脚鉄心12,13,14において発生する熱が、特に上部のヨーク形成部12b,13b,14bの裏面付近にこもり勝ちとなるが、本実施形態においても、ヨーク形成部12b,13b,14bの中心部分に開口部18を形成しているので、熱をその開口部18を通して外部へ逃がすことが可能となる。これにより、温度が異常に上昇することを防止でき、性能の向上を図ることが可能となる。
【0054】
(その他の実施形態)
第1および第2実施形態において、各分割脚鉄心を形成する積層用鉄心の積層枚数は、4枚に限られず、2枚以上の複数枚であればよい。
静止誘導機器用鉄心としては、変圧器用鉄心に限られず、リアクトル用鉄心にも適用できる。
【0055】
以上説明したように、少なくとも一つの実施形態によれば、ほぼU字状をなす脚鉄心を3組備え、これら3組の脚鉄心を組み合わせて構成されるものにあって、脚鉄心の上部に熱がこもり勝ちとなることを防止できるとともに、磁束の損失を極力防止でき、性能の向上を図ることが可能となる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。