特許第6427074号(P6427074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427074
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】電極ユニットの超音波溶接方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/84 20130101AFI20181112BHJP
   H01G 11/76 20130101ALI20181112BHJP
【FI】
   H01G11/84
   H01G11/76
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-129572(P2015-129572)
(22)【出願日】2015年6月29日
(65)【公開番号】特開2017-17085(P2017-17085A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2017年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐太郎
【審査官】 多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/118565(WO,A1)
【文献】 特開2015−118926(JP,A)
【文献】 特開2012−138408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/84
H01G 11/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔が形成され、端部からタブ溶接口出し部が突出した集電体を有する正極及び負極がセパレータを介して複数積層された電極ユニットの前記タブ溶接口出し部と、前記電極ユニットで蓄電された電気を外部に取り出すためのタブとを超音波溶接させる電極ユニットの超音波溶接方法であって、
前記タブ溶接口出し部の前記貫通孔が形成されていない領域を少なくとも一部含む部位を非弾性素材からなる一対の第1固定手段によって挟持固定するとともに、前記タブ溶接口出し部の前記タブが超音波溶接される部位と前記第1固定手段によって挟持固定される部位との間の領域を弾性素材からなる一対の第2固定手段によって挟持固定した状態で、前記超音波溶接を行うことを特徴とする電極ユニットの超音波溶接方法。
【請求項2】
前記タブ溶接口出し部は、銅(Cu)又はステンレス鋼(SUS)からなることを特徴とする請求項1記載の溶接方法。
【請求項3】
前記弾性素材はゴムであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタや二次電池等の蓄電デバイスを製造する際に、正極と負極とがセパレータを介して交互に積層された電極ユニットと蓄電された電気を外部に取り出すためのタブとを超音波溶接により接続させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然エネルギーを用いた発電(太陽光発電や風力発電等)の際に、余剰電力を一時的に蓄電して発電量が減ったときに放電可能であったり、電気自動車の電源として使用できたりするような大容量の蓄電デバイスの開発が進められている。
【0003】
かかる蓄電デバイスとしては、特にリチウムイオンキャパシタが注目されている。リチウムイオンキャパシタは、電気二重層キャパシタという蓄電部品とリチウムイオン二次電池とを組み合わせたハイブリッド構造の蓄電部品である。具体的には、電気二重層キャパシタの正極と、リチウムイオン二次電池の負極を組み合わせたものである。
【0004】
リチウムイオンキャパシタにおいては、あらかじめ負極にリチウムイオンをドープするプレドープを行う必要がある。このプレドープは、負極と短絡させた金属リチウムを用いて行われる。プレドープの際リチウムイオンを拡散させるために、正極の集電体及び負極の集電体には貫通孔が多数形成されている。また、この貫通孔は、プレドープを均一に行うために集電体の全域に形成されている。
【0005】
リチウムイオンキャパシタとしては、例えば特許文献1に記載されているように、負極用の集電体の電極として使用する電極材層形成領域上に難黒鉛化活性炭素材料等の活物質とカーボンブラック等の導電助材とを含む負極用合材を設けた負極と、正極用の集電体上に活性炭等の活物質を設けた正極とを積層させた構造のものが提案されている。
【0006】
上記の特許文献1に記載されたようなリチウムイオンキャパシタにおいては、負極及び正極がセパレータを介して複数積層させ、その外側にリチウム極を配置して電極ユニットを形成した後、負極用の集電体及び正極用の集電体のそれぞれに設けられたタブ溶接口出し部と外部に電気を取り出すためのタブとが溶接される。この溶接の際、溶接面積が広く、また消費電力が小さいという利点があることから超音波溶接が用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5563705号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の溶接技術においては、集電体とタブとを超音波溶接した場合、集電体の電極材層形成領域とタブ溶接口出し部との境界において、集電体が破断してしまうことがある。
【0009】
特に、融点が高く、溶接に際し高いエネルギーが要求される銅やステンレス鋼(SUS)を集電体の材料として使用した場合この現象が顕著である。これは、通常タブ溶接口出し部が電極材層形成領域に比べて細く、さらに電極材層形成領域とタブ溶接口出し領域との境界近傍には貫通孔が形成されており、集電体のなかでも特にタブ溶接口出し部の強度が低いことに起因している。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑み、電極ユニットとタブとを超音波溶接した場合でも、集電体の電極材層形成領域とタブ溶接口出し部との境界において、集電体が破断しない超音波溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る超音波溶接方法は、複数の貫通孔が形成され、端部からタブ溶接口出し部が突出した集電体を有する正極及び負極がセパレータを介して複数積層された電極ユニットのタブ溶接口出し部と、電極ユニットで蓄電された電気を外部に取り出すためのタブとを超音波溶接させる電極ユニットの超音波溶接方法である。この超音波溶接方法は、タブ溶接口出し部の貫通孔が形成されていない領域を少なくとも一部含む部位を非弾性素材からなる一対の第1固定手段によって挟持固定するとともに、タブ溶接口出し部のタブが超音波溶接される部位と第1固定手段によって挟持固定される部位との間の領域を弾性素材からなる一対の第2固定手段によって挟持固定した状態で、超音波溶接を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明の超音波溶接方法によれば、超音波溶接によってタブ溶接口出し部に伝わる振動が、第2固定手段が弾性変形することによって抑制され、さらに、その抑制された振動が第1固定手段によって確実に抑制される。その結果タブ溶接口出し部と集電体の電極材層形成領域との境界部には振動が伝達されず、強い振動により破断することを防止できる。
【0013】
また、タブ溶接口出し部は、銅(Cu)又はステンレス鋼(SUS)から構成することが好ましい。
【0014】
また、第2固定手段を構成する弾性素材としては、ゴムを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電極ユニットとタブとを超音波溶接した場合でも、集電体の電極材層形成領域とタブ溶接口出し部との境界において、集電体が破断しない超音波溶接方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一つの実施形態に係る超音波溶接を用いた蓄電デバイスの全体構成を示す概略斜視図である。
図2】同蓄電デバイスに含まれる正極又は負極の構成の一例を示す概略平面図である。
図3】同超音波溶接の方法を説明するための概略側面図である。
図4】実施例及び比較例の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して、この発明の実施の形態に係る超音波溶接方法を詳細に説明する。まず、本実施の形態に係る超音波溶接方法によって超音波溶接された蓄電デバイスの構成の概略を説明し、その後超音波溶接方法について説明する。
【0018】
本発明の一つの実施形態に係る超音波溶接によって超音波溶接される蓄電デバイス1は、図1及び図3に示すように、正極と負極とをセパレータを介して複数積層され、その最外層にリチウム極が配置された電極ユニットと、電極ユニットを封入するアルミニウム製ラミネートフィルム2と、を備えている。電極ユニットの最外層に配置されるリチウム極は、電極ユニットの片側の最外層のみに設けられていても良いし、両側の最外層に設けられていても良い。また、アルミニウム製ラミネートフィルム2に複数の電極ユニットが封入されていても良い。
【0019】
電極ユニットを構成する正極及び負極、即ち各電極4は、図2に示すように、その片面又は両面に電極材が塗工されて電極として機能を果たす電極材層形成領域5と、電極材層形成領域5の端部から突出し、電極ユニットで蓄電した電気を外部に取り出すためのタブと溶接されるためのタブ溶接口出し部7とから構成されている。
【0020】
電極材層形成領域5は、長方形状に形成されている。そして、その表面全域に亘って複数の貫通孔6が形成されている。リチウムイオンのプレドープを均一にするため、貫通孔6は電極として使用する電極材層形成領域5の全域に形成させる必要がある。そのため、電極材を集電体上に塗工して電極を形成する際には、予め平面サイズの大きい金属箔からなる集電体を用意し、電極材層形成領域5よりも大きい領域に貫通孔6を形成する。そして、電極材を電極材層形成領域5のみに塗工し、電極材を塗工した領域の外側に貫通孔が残るようにする。形成される電極材層の厚みは、10〜150μmであることが好ましい。
【0021】
集電体に形成する貫通孔の径は、1〜500μmであることが好ましく、30〜400μmであることが更に好ましい。集電体に形成する貫通孔の開口率(電極材層形成領域5における貫通孔の面積の割合)は、20〜60%であることが好ましい。集電体を構成する材料は、正極としてはアルミニウム、ステンレス鋼などを用いることが好ましい。負極としては、銅、アルミニウム、ステンレス鋼などを用いることが好ましい。集電体の厚みは、体積及び重量削減のために集電体はできるだけ薄くすることが好ましい。具体的には、通常2〜100μm程度であれば良く、好ましくは5〜80μmであり、更に好ましくは10〜50μmである。
【0022】
また、集電体に塗工する電極材は、正極活物質または負極活物質、導電助材、バインダー、及び分散剤から構成される。正極の活物質として、リチウムイオン及び1種のアニオンを可逆的に吸着・脱着可能な物質、例えば活性炭を用いることが好ましい。活性炭を用いる場合、活性炭の粒径については、そのメディアン径(d50)の値が2〜20μmであることが望ましく、2〜15μmであることがより好ましい。負極の活物質として、リチウムイオンを可逆的にドープ・脱ドープ可能である物質、例えばハードカーボンや黒鉛を用いることが好ましい。負極活物質の粒径は1〜20μmであることが好ましい。
【0023】
導電助材としては、例えばアセチレンブラックやケッチェンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、金属粉末を用いることが好ましい。導電助材の添加量は、通常活物質に対して2〜40重量%であることが好ましい。
【0024】
バインダーとしては、例えばSBR等のゴム系バインダー、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、ポリプロピレン等の熱可塑系樹脂、アクリル系樹脂などを用いることが好ましい。バインダーの添加量は活物質に対して2〜40重量%であることが好ましい。
【0025】
分散剤としてはカルボキシメチルセルロース塩などを用いることが好ましい。分散剤の添加量は活物質に対して1〜40%であることが好ましい。
【0026】
タブ溶接口出し部7は、図2に示すように、電極4の端部から、外側に突出する帯状に形成されている。タブ溶接口出し部7は、電極4の何れの端部から外側に突出されていてもよい。タブ溶接口出し部7は、上記の電極材の塗工後に、タブ溶接口出し部7の分だけ残して集電体を切断することによって形成される。このとき、上記のように貫通孔6は電極材層形成領域5の外側にも形成されていることから、集電体を切断してタブ溶接口出し部7が形成されると、タブ溶接口出し部7の電極材層形成領域5側の端部近傍にも貫通孔が形成されることになる(図2中の符号8で示した領域)。
【0027】
また、電極ユニット内で各電極間に配置されるセパレータは、セルロース、ポリエチレンなどから形成される不織布や微多孔膜を用いることが好ましい。セパレータの厚みは5〜50μmが好ましい。
【0028】
一方、タブ溶接口出し部7と溶接され、電極ユニットで蓄電した電気を外部に取り出すためのタブとしては、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、又はこれらがニッケルめっき、またはスズめっきされた金属板に、シーラントフィルムが形成されているものを用いることが好ましい。
【0029】
(超音波溶接方法)
次に、本実施の形態に係る超音波溶接方法について図3を用いて説明する。本実施の形態においては負極に対して超音波溶接を行う場合を説明する。
図3に示すように、本実施の形態に係る超音波溶接方法は、上記で説明した電極ユニットに対して、固定治具13を用いて行う。固定治具13は、対向する一対の固定治具上板部13a及び固定治具下板部13bから構成されている。これら固定治具上板部13a及び固定治具下板部13bは、電極ユニット12を挟持するのに十分な面積を有している。
【0030】
固定治具上板部13a及び固定治具下板部13bは、電極ユニット12を挟持した際に、挟持された電極ユニット12のタブ溶接口出し部7bの一部を覆うように平面方向に延在する延在部が形成されている。固定治具上板部13aの延在部の先端には、垂直下方に立設する上方第2固定部材15aが形成され、上方第2固定部材15aよりも内側には、垂直下方に立設する上方第1固定部材14aが形成されている。固定治具下板部13bの先端には、垂直上方に立設する下方第2固定部材15bが形成され、下方第2固定部材15bよりも内側には、垂直上方に立設する下方第1固定部材14bが形成されている。
【0031】
これら上方第1固定部材14aと下方第1固定部材14bとによって、タブ溶接口出し部7bの貫通孔が形成されていない領域を少なくとも一部含む部位を挟持し、上方第2固定部材15aと下方第2固定部材15bとによって、タブ溶接口出し部7bの溶接される部位と第1固定部材14によって挟持される部位との間の領域を挟持するよう構成されている。すなわち、第1固定部材14がタブ溶接口出し部7bを挟持固定する箇所は、少なくともタブ溶接口出し部7bの貫通孔が形成されていない領域を含んでいればよく、例えば図2の符号9で示した領域である。しかし、貫通孔が形成されている領域8を含んでいてもよい。そして、第2固定部材15がタブ溶接口出し部7bを挟持固定する箇所は、第1固定部材14が挟持固定している箇所とタブと溶接される部位との間の領域であり、例えば図2の符号10で示した領域である。
【0032】
また、上方第1固定部材14a及び下方第1固定部材14bは、先端まで同一素材で構成されている。その材料としては、振動を確実に抑制するために剛性が高い非弾性素材が好ましく、例えば固定治具13と同じステンレス鋼等の金属素材を用いることが好ましい。一方、上方第2固定部材15a及び下方第2固定部材15bの先端はゴムによって構成されている。このゴムは、各種ゴムを好適に使用できるが、超音波振動による振動は強力であるため、耐久性及びゴム硬度が高いものを用いることが好ましい。
【0033】
そして、本実施の形態に係る超音波溶接を行うには、固定治具上板部13a及び固定治具下板部13bで電極ユニット12を挟持固定し、さらに上記の2つの固定部材(14及び15)で負極用タブ溶接口出し部7bを挟持固定した状態で負極用タブ3bと負極用タブ溶接口出し部7bとを重ねてアンビル16上に載置する。そして、タブ3bをアンビル16上に固定する。
【0034】
そして、ホーン17によって加圧しながら水平方向に超音波振動を加えることで、超音波溶接を行う。このとき、タブ3bはアンビル16上に固定され、タブ溶接口出し部7bはホーン17による超音波振動に同調して振動する。その結果、超音波振動により接合界面の酸化被膜や汚れが取り除かれ、結晶粒同士が原子間距離になるまで接近することでタブ3bとタブ溶接口出し部7bとの間で強力な引力が働き、冶金結合が生成される。
【0035】
この超音波溶接の際の条件については集電体の厚みや積層数により異なるが、溶接後に一定の条件を満たすことが必要である。一定の条件としては例えば、溶接後の溶接部に集電体の一部が破断するほどの応力を加えた際でも、溶接部であるタブとタブ溶接口出し部との界面が剥離しない程度に強固に溶接されているような溶接条件が挙げられる。
【0036】
上記のように、タブ溶接口出し部7bはホーン17による超音波振動に同調するため、通常は前述のようにその振動による応力によってタブ溶接口出し部7bと集電体の電極材層形成領域との境界において、集電体の破断が生じる虞があった。しかし、本実施の形態においては集電体の電極材層形成領域とタブ溶接口出し部7bのタブと溶接される部位との間を2つの固定部材(14及び15)によって固定している。これにより、破断の虞を防止することが可能になっている。
【0037】
具体的には、まず、超音波振動によってタブ溶接口出し部7bに生じる振動が、弾性素材からなる第2固定部材15の弾性変形によって抑制される。さらに、第2固定部材15よりも電極ユニット12側に配置されている第1固定部材14によって振動が確実に抑制される。その結果タブ溶接口出し部7bと集電体の電極材層形成領域との境界部には振動が伝達されず、強い振動により破断することを防止できる。
【0038】
しかも、本実施の形態においては、タブ溶接口出し部7bの、タブと溶接される部位と第1固定部材14によって固定される部位との間に弾性素材からなる第2固定部材15を設け、超音波溶接による振動を抑制している。このため、第1固定部材14に伝達される振動が緩和され、タブ溶接口出し部7bの第1固定部材14で挟持固定されている箇所近傍に負荷が集中して破断することが防止される。
【0039】
なお、超音波溶接による冶金結合は固相結合であり、溶接対象の金属が溶融する温度までは上昇しないため比較的低温で行うことができる。しかし、電極ユニット12に含まれる負極の枚数が多くタブ溶接口出し部7bの厚さが厚くなり、超音波溶接を行う時間が長くなる場合等では、ゴム等の弾性素材からなる第2固定部材15が熱融解してしまう場合がある。そこで、第2固定部材15の融解を防ぐため、超音波溶接を行う箇所と第2固定部材15との間の間隔Wは例えば5mm以上確保することが好ましい。また、第2固定部材15を構成するゴムを、シリコーンゴム等の耐熱性の高いゴムとしてもよい。
【0040】
(実施例)
以下、上記の実施の形態で述べた超音波溶接方法について実施例及び比較例によりその有効性を説明する。これらの実施例は例示であり、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0041】
(実施例1)
カルボキシルメチルセルロースナトリウム塩を水に溶解し、3重量%の水溶液を得た。この水溶液にハードカーボン:アセチレンブラック:スチレンーブタジエンゴム:カルボキシメチルセルロースナトリウムナトリウム塩=90:4:3の割合の負極スラリーを得た。この負極スラリーを厚さ15μmの銅多孔箔集電体の両面に乾燥後の目付量が60g/mになるように塗工・乾燥させ、負極を得た。形成された電極材層の厚みは片面につき30μmであった。
【0042】
3重量%のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩水溶液に、活性炭、アセチレンブラック、スチレンーブタジエンゴムと水を十分に混合し、活性炭:アセチレンブラック:スチレンーブタジエンゴム:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩=84:6:6:4の正極スラリーを得た。この正極スラリーを厚さ30μmのアルミ多孔箔集電体の両面に塗工・乾燥させ、正極を得た。形成された電極材層の厚みは片面につき60μmであった。
【0043】
得られた電極(正極及び負極)をタブ溶接口出し部が幅4mm×長さ10mm、電極材層形成領域が幅26mm×長さ40mmになるように切断した。また、厚さ25μmのセルロース製セパレータを幅30mm×長さ44mmに切断した。切断した電極とセパレータとをセパレータ・負極・セパレータ・正極・の順に積層させ、負極6枚、正極5枚、セパレータ12枚で構成される電極ユニットを得た。電極と同じ形に切断した銅箔に幅26mm×長さ40mmの金属リチウム箔を張り合わせ、リチウム極とした。金属リチウム面がユニットの最も外側のセパレータと対向すると共に金属リチウム箔が電極材層形成領域と重なるように配置し、幅70mm×44mmのセパレータで固定した。このようにして電極ユニットを得た。
【0044】
電極ユニットを、タブ溶接口出し部の貫通孔が形成されていない領域を少なくとも含む部位を挟持固定する第1固定部材と、第1固定部材とタブと溶接される部位との間を弾性素材で挟持固定する第2固定部材と、を有する固定用治具で固定した。幅5mmのアルミからなる正極用タブと、幅5mmの銅からなる負極用タブをそれぞれ正極及び負極に超音波溶接した、溶接後、集電体とタブ溶接口出し部との境界部に破断は確認されなかった。
【0045】
(実施例2)
実施例1と同一条件で電極ユニットを作成した。そして、実施例1では幅5mmの銅からなっていた負極用タブを、幅5mmのニッケルめっき銅からなる負極用タブに変更した点以外は実施例1と同じ条件で超音波溶接した。溶接後、集電体に破断は確認されなかった。
【0046】
(比較例1)
超音波溶接する際に第1固定部材及び第2固定部材を有しない治具を使用すること以外は実施例1と同一の条件で電極ユニットを作製し、超音波溶接を行った。溶接後、負極のタブ溶接口出し部と集電体との境界部が破断していることが確認された。
【0047】
(比較例2)
この比較例では、超音波溶接する際に用いた固定用治具以外は実施例1と同一の条件で行った。この比較例で用いた固定用治具は、実施例1で用いた固定用治具の第2固定部材に相当する構成は有しているが、第1固定部材に相当する構成を有していない。すなわち、この比較例で用いた固定用治具は、タブ溶接口出し部の貫通孔が形成されている領域とタブと溶接される部位との間の領域であってタブと溶接される部位近傍の領域を挟持固定するとともにゴム等の弾性素材からなっている固定部材を有している。しかし、少なくとも貫通孔が形成されていない領域を挟持固定する固定部材は有していない。この固定用治具を用いて超音波溶接を行った後、負極のタブ溶接口出し部と集電体との境界において、集電体が破断していることが確認された。
【0048】
(比較例3)
この比較例では、超音波溶接する際に用いた固定用治具以外は実施例1と同一の条件で行った。この比較例で用いた固定用治具は、実施例1で用いた固定用治具の第1固定部材に相当する構成は有しているが、第2固定部材に相当する構成を有していない。即ち、この比較例で用いた固定用治具は、タブ溶接口出し部の少なくとも貫通孔が形成されていない領域を挟持固定する固定部材を有している。しかし、この固定部材と、タブと溶接される部位との間の領域を挟持固定するとともに弾性素材からなる固定部材は有していない。この固定用治具を用いて超音波溶接を行った後、負極のタブ溶接口出し部の、上記固定部材で挟持固定していた箇所のタブと溶接される部位側の縁で破断していることが確認された。
【0049】
上記の実施例及び比較例の結果をまとめたものが図4である。第1固定部材及び第2固定部材の両者を用いることで、タブ溶接口出し部の破断を防止できることが確認される。
【0050】
以上、実施例に基づいて本発明について具体的に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、その発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記の実施の形態及び実施例においては負極に対して本発明の超音波溶接方法を行う場合を説明したが、正極が銅やステンレス鋼で構成される場合には正極に対しても適用できる。また、タブ溶接口出し部の配置について、図1及び図3のように正極用タブ溶接口出し部7aと負極用タブ溶接口出し部7bとが電極ユニットに対して反対側に配置されるように構成されている例を説明したが、正極用タブ溶接口出し部7aと負極用タブ溶接口出し部7bとが電極ユニットに対して同じ側に配置されるように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…蓄電デバイス 2…外装材 3…タブ 4…電極 5…電極材層形成領域 6…貫通孔 7…タブ溶接口出し部 8 貫通孔が形成されている領域 9…第1固定部材により固定される領域 10…第2固定部材により固定される領域 11…タブと溶接される部位 12…電極ユニット 13…固定治具 13a…固定治具上板部 13b…固定治具下板部 14…第1固定部材 14a上方第1固定部材 14b…下方第1固定部材 15…第2固定部材 15a…上方第2固定部材 15b…下方第2固定部材 16…アンビル 17…ホーン
図1
図2
図3
図4