(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0022】
図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の分解上面図、
図1(b)は、
図1(a)のA−A間の断面図である。
図1(a)及び
図1(b)のように、実施例1の弾性波デバイス100は、基板10の下面が支持基板40の上面に接合され、基板10と支持基板40の間に内部配線50が設けられている。内部配線50は、支持基板40の上面に形成された凹部に埋め込まれ、上面が基板10の下面に接合されている。内部配線50は、基板10及び支持基板40の側面よりも内側に位置し、基板10と支持基板40とが接合した領域に囲まれている。基板10は、例えばタンタル酸リチウム基板、ニオブ酸リチウム基板、又は水晶基板などの圧電基板である。支持基板40は、例えばサファイア基板、スピネル基板、又はシリコン基板など絶縁基板である。内部配線50は、例えば銅膜などの金属膜である。
【0023】
基板10上に、弾性波素子12〜16、配線18、及びパッド電極20が形成されている。弾性波素子12は、弾性表面波共振子である。弾性波素子12は、1ポート共振子R1であり、IDT(Interdigital Transducer)とその両側に設けられた反射器Rとを有する。IDTは、一対の櫛型電極を備える。IDTは、基板10内又は表面に弾性波を励振する。反射器Rは、弾性波を反射する。弾性波素子14、16は、多重モード型弾性波フィルタである。弾性波素子14、16は、二重モード型弾性表面波フィルタDMS1、DMS2である。DMS1は、IDT11からIDT13とそれらの両側に設けられた反射器Rとを有する。IDT11からIDT13は、基板10内又は表面に弾性波を励振し、弾性波の伝搬方向に配列されている。DMS2は、IDT21からIDT23とそれらの両側に設けられた反射器Rとを有する。IDT21からIDT23は、基板10内又は表面に弾性波を励振し、弾性波の伝搬方向に配列されている。IDT及び反射器は、例えばアルミニウム膜、銅膜、又は銅が添加されたアルミニウム膜などの金属膜である。
【0024】
配線18は、入力電極INから入力された高周波信号を伝搬する信号配線18aとグランドに接続するグランド配線18bとを含む。パッド電極20は、入力電極IN、出力電極OUT、及びグランド電極GNDを形成する。配線18及びパッド電極20は、例えば銅膜又は金膜などの金属膜である。
【0025】
基板10を貫通し、グランド配線18bと内部配線50とに接続された複数のビア配線22が形成されている。内部配線50は、複数のビア配線22の全てと基板10の厚さ方向で重なって設けられた、べた膜である。内部配線50は、DMS1とDMS2の間に位置して設けられていて、DMS1、2とは基板10の厚さ方向で重なっていない。ビア配線22は、例えば銅膜、銀膜、金膜、又はアルミニウム膜などの金属膜である。
【0026】
パッド電極20上には、バンプ24が形成されている。バンプ24は、例えば金バンプ又は銅バンプなどであり、例えばスタッドバンプ又はめっきバンプである。共振子R1とDMS1とDMS2は、入力電極INと出力電極OUTとの間に直列に接続されている。
【0027】
共振子R1のIDTの一端は信号配線18aを介して入力電極INに接続されている。共振子R1のIDTの他端は信号配線18aを介してDMS1のIDT12の一端に接続されている。IDT12の他端並びにIDT11及びIDT13の一端はグランド配線18bとビア配線22と内部配線50とを介してグランド電極GNDに接続されている。IDT11及びIDT13の他端は信号配線18aを介してDMS2のIDT21及びIDT23の一端にそれぞれ接続されている。IDT21及びIDT23の他端はグランド配線18bを介してグランド電極GNDに接続されている。IDT22の一端はグランド配線18bとビア配線22と内部配線50とを介してグランド電極GNDに接続されている。IDT22の他端は信号配線18aを介して出力電極OUTに接続されている。
【0028】
次に、実施例1の弾性波デバイス100の製造方法について説明する。
図2(a)から
図2(e)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の製造方法を示す断面図である。なお、
図2(a)から
図2(e)は、
図1のB−B間に相当する断面を示している。
【0029】
図2(a)のように、支持基板40の上面に、例えばエッチング法又はブラスト法を用いて、凹部42を形成する。支持基板40の厚さは、例えば130μm程度であり、凹部42の深さは、例えば4μm〜5μm程度である。支持基板40の上面全面に、例えばスパッタ法を用いて、シード層44を形成する。シード層44は、例えば下側からチタン膜と銅膜が順に形成された金属膜である。シード層44は、凹部42の内面にも形成される。支持基板40の上面のうち凹部42以外の領域のシード層44上に、レジスト膜46を形成する。
【0030】
図2(b)のように、レジスト膜46をマスクとして、例えばめっき法を用いて、支持基板40の上面に形成された凹部42に内部配線50を埋め込む。レジスト膜46とシード層44を除去した後、支持基板40の上面に対して平坦化処理(例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)研磨)を行う。これにより、支持基板40の上面と内部配線50の上面とが面一になる。平坦化処理後の内部配線50の厚さは、例えば2μm〜3μm程度である。
【0031】
図2(c)のように、支持基板40の上面に基板10を接合させる。基板10の接合は、直接接合で行ってもよいし、接着剤などを用いて行ってもよい。直接接合で行う場合は、例えば常温での表面活性化接合によって行ってもよい。その後、基板10の上面に対して研磨(例えばCMP研磨)を施して、基板10を薄層化させる。薄層化後の基板10の厚さは、例えば20μm程度である。
【0032】
図2(d)のように、基板10を貫通して内部配線50が露出した孔を形成する。孔の直径は、例えば10μm〜50μm程度である。この孔は、例えばレーザを用いて形成することができる。レーザを用いることで、孔の側面に改質領域26が形成される。なお、孔は、レーザ以外の方法で形成してもよく、例えばイオンミリング法、ブラスト法、又はエッチング法によって形成してもよい。その後、孔に金属膜を埋め込んでビア配線22を形成する。ビア配線22は、例えばめっき法を用いて形成してもよいし、メタルペーストの印刷によって形成してもよい。
【0033】
図2(e)のように、基板10上に、IDT、配線18、及びパッド電極20を形成する。これらは、一般的な方法を用いて形成することができる。その後、パッド電極20上にバンプ24を形成する。これにより、実施例1の弾性波デバイス100が形成される。
【0034】
ここで、実施例1の弾性波デバイス100の効果を説明するにあたり、まず比較例1の弾性波デバイスについて説明する。
図3(a)は、比較例1に係る弾性波デバイス500の上面図、
図3(b)は、
図3(a)のA−A間の断面図である。
図3(a)及び
図3(b)のように、比較例1の弾性波デバイス500は、基板10の下面に支持基板40が接合されてなく、内部配線50は設けられていない。DMS1のIDT12及びDMS2のIDT22がグランド電極GNDに電気的に接続するために、基板10上でグランド配線18bと信号配線18aとが立体交差している。すなわち、グランド配線18bは、樹脂などの絶縁膜90を介して、信号配線18a上を跨いでいる。
【0035】
比較例1によれば、グランド配線18bは、基板10上で信号配線18aと立体交差している。このような立体配線構造は、例えばIDT上には形成できないなど、形成できる場所に制約がある。したがって、配線の引き回しに制約が課されてしまう。
【0036】
一方、実施例1によれば、基板10と支持基板40との間に、ビア配線22とグランド配線18bを介してDMS1、2に電気的に接続する内部配線50が形成されている。内部配線50は様々な形状にできるため、配線の取り回しの自由度を向上させることができる。
【0037】
また、実施例1によれば、IDTで発生した熱が、ビア配線22と内部配線50を経由し支持基板40を介して放熱するようになるため、放熱効果を向上させることができる。例えば、バンプ24から離れた位置にビア配線22を形成することで、効果的な放熱効果が得られる。
【0038】
また、実施例1によれば、内部配線50は、支持基板40の上面に形成された凹部に埋め込まれている。これにより、基板10と支持基板40との間の接合力を確保しつつ、内部配線50を厚くすることができる。内部配線50を厚くすることで、例えば上述した放熱の効果が大きくなる。
【0039】
また、実施例1によれば、複数のビア配線22のうちの2つのビア配線の間の基板10上に、内部配線50と基板10の厚み方向で重なる信号配線18aが設けられている。信号配線18aは、内部配線50とは電気的に分離され且つDMS1、2に電気的に接続されている。すなわち、内部配線50と信号配線18aとは立体配線構造となっている。比較例1のように、信号配線18aとグランド配線18bとがその間に絶縁膜90を介した立体配線構造をしている場合、信号配線18aとグランド配線18bとが近接して形成されるために大きな容量が形成されて、特性が劣化する恐れがある。しかしながら、実施例1では、信号配線18aと内部配線50とは、その間に基板10を介していることから、比較的離れて形成される。このため、信号配線18aと内部配線50との間の容量を小さくでき、特性の劣化を抑制することができる。
【0040】
また、実施例1によれば、内部配線50は、共振子R1及びDMS1、2と基板10の厚み方向で重なっていない。これにより、内部配線50と弾性波素子との間で形成される容量を低減でき、特性の劣化を抑制することができる。
【0041】
また、実施例1によれば、支持基板40及び内部配線50の上面と基板10の下面とが接合しているため、ボイド等の発生による信頼性の低下を抑制できる。
【0042】
図4は、実施例1に係る弾性波デバイス100が配線基板52上に実装された断面図である。
図4のように、配線基板52上に、1又は複数の弾性波デバイス100がフリップチップ実装されている。弾性波デバイス100に形成されたIDTと配線基板52との間には空隙53が形成されている。弾性波デバイス100は、配線基板52上に形成された封止部54によって封止されている。封止部54は、例えば弾性波デバイス100の周りを囲んで設けられた半田55と、半田55上に設けられた金属リッド56と、を含む。なお、封止部54の表面にめっき膜からなる保護膜57が形成されていてもよい。
【0043】
図5は、実施例1の変形例1に係る弾性波デバイス110の分解上面図である。
図5のように、実施例1の変形例1の弾性波デバイス110では、実施例1の弾性波デバイス100と比べて、共振子R1とDMS1との間にもビア配線22が形成されている。内部配線50は、複数のビア配線22の全てと基板10の厚さ方向で重なるように大きく設けられた、べた膜となっている。
【0044】
実施例1及び実施例1の変形例1によれば、内部配線50は、複数のビア配線22の全てと基板10の厚さ方向で重なって設けられている。これにより、ビア配線22の形成位置の自由度を向上させることができる。また、パッド電極20の形成位置を、DMS1、2のパターン等の影響を受けずに統一化することができる。
【0045】
図6は、実施例1の変形例2に係る弾性波デバイス120の分解上面図である。
図6のように、実施例1の変形例2の弾性波デバイス120では、実施例1の弾性波デバイス100と比べて、ビア配線22は、グランド配線18bに接続されずに、信号配線18aに接続されている。これにより、DMS1のIDT11及びIDT13は、信号配線18aとビア配線22と内部配線50とを介して、DMS2のIDT21及びIDT23にそれぞれ接続されている。
【0046】
実施例1及び実施例1の変形例1のように、内部配線50はビア配線22を介してグランド配線18bに接続されていてもよいし、実施例1の変形例2のように、ビア配線22を介して信号配線18aに接続されていてもよい。
【実施例2】
【0047】
実施例2は、基板10上にラダー型フィルタが形成された場合の例である。
図7は、実施例2に係る弾性波デバイス130の分解上面図である。
図7のように、実施例2の弾性波デバイス130は、実施例1の弾性波デバイス100と比べて、入力電極INと出力電極OUTとの間に、1又は複数の直列共振子S1からS4が直列に接続され、1又は複数の並列共振子P1からP3が並列に接続されている。直列共振子S1からS4及び並列共振子P1からP3は、弾性表面波共振子である。直列共振子S1からS4及び並列共振子P1からP3は、1ポート共振子であり、IDTとIDTの両側に設けられた反射器Rとを備える。
【0048】
直列共振子S1のIDTの一端は信号配線18aを介して入力電極INに接続されている。直列共振子S1のIDTの他端は信号配線18aを介して直列共振子S2及び並列共振子P1のIDTの一端に接続されている。直列共振子S2のIDTの他端は信号配線18aを介して直列共振子S3及び並列共振子P2のIDTの一端に接続されている。並列共振子P1、P2のIDTの他端はグランド配線18bとビア配線22と内部配線50とを介してグランド電極GNDに接続されている。直列共振子S3のIDTの他端は信号配線18aを介して直列共振子S4及び並列共振子P3のIDTの一端に接続されている。並列共振子P3のIDTの他端はグランド配線18bとビア配線22と内部配線50とを介してグランド電極GNDに接続されている。直列共振子S4のIDTの他端は信号配線18aを介して出力電極OUTに接続されている。
【0049】
図8(a)は、実施例2の変形例1に係る弾性波デバイス140の分解上面図、
図8(b)は、
図8(a)のA−A間の断面図である。
図8(a)のように、実施例2の変形例1の弾性波デバイス140は、直列共振子S1からS4及び並列共振子P1からP3が圧電薄膜共振子である点で、実施例2の弾性波デバイス130と異なる。圧電薄膜共振子は、
図8(b)のように、基板10上に下部電極28、圧電膜30、上部電極32がこの順に積層されている。圧電膜30を挟んで下部電極28と上部電極32とが対向する領域が共振領域34となる。共振領域34における基板10の上面に凹部が形成されていて空隙36となっている。共振領域34は、例えば楕円形形状を有し、厚み縦振動モードの弾性波が共振する領域である。なお、共振領域34は、多角形形状等、楕円形形状以外の形状であってもよい。なお、空隙36の代わりに音響反射膜が設けられていてもよい。
【0050】
基板10は、例えばシリコン基板、サファイア基板、又はアルミナ基板である。支持基板40は、例えばシリコン基板、サファイア基板、又はアルミナ基板である。下部電極28及び上部電極32は、例えばクロム、ルテニウム、アルミニウム、チタン、銅、モリブデン、タングステン、タンタル、白金、ロジウム、又はイリジウムなどの金属単層膜又はこれらの積層膜である。圧電膜30は、例えば窒化アルミニウム膜、酸化亜鉛膜、チタン酸ジルコン酸鉛膜、又はチタン酸鉛膜などである。
【0051】
実施例1では、弾性波素子は多重モード型フィルタを形成する場合を例に示したが、実施例2のように、弾性波素子はラダー型フィルタを形成してもよい。また、弾性波素子は、基板10内又は表面に弾性波を励振するIDTを含む弾性表面波素子、ラブ波素子、弾性境界波素子の場合でもよいし、圧電薄膜共振子の場合でもよい。
【実施例3】
【0052】
図9(a)は、実施例3に係る弾性波デバイス150の分解上面図、
図9(b)は、
図9(a)のA−A間の断面図である。
図9(a)及び
図9(b)のように、実施例3の弾性波デバイス150は、実施例1の弾性波デバイス100と比べて、支持基板40の上面の凹部に埋め込まれた内部配線50の上面と基板10の下面との間に空隙48が形成されている。空隙48の高さは、例えば2μm程度である。
【0053】
実施例3によれば、内部配線50と基板10との間に空隙48が形成されている。内部配線50と基板10とが接合している場合は互いの線膨張係数の差による応力が発生するが、内部配線50と基板10との間に空隙48が形成されることで、このような応力の発生を抑制することができる。なお、内部配線50が銅膜である場合の線膨張係数は17ppm/℃である。基板10が42°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板である場合の線膨張係数は弾性波の伝搬方向で16.1ppm/℃、弾性波の伝搬方向に垂直な方向で9.5ppm/℃である。基板10が128°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である場合の線膨張係数は弾性波の伝搬方向で15.4ppm/℃、弾性波の伝搬方向に垂直な方向で12.4ppm/℃である。
【0054】
また、内部配線50と基板10との間に空隙48が形成されていることで、信号配線18aと内部配線50との間の容量を低減でき、特性の劣化を抑制することができる。
【0055】
なお、実施例3において、内部配線50と基板10との間全体に空隙48が形成され、内部配線50と基板10とが全く接合していない場合が好ましいが、内部配線50と基板10との間の一部に空隙48が形成されてなく、内部配線50と基板10とが一部で接合している場合でもよい。
【0056】
なお、実施例1の変形例1から実施例2の変形例1においても、内部配線50と基板10との間に空隙48が形成されていてもよい。
【実施例4】
【0057】
図10(a)は、実施例4に係る弾性波デバイス160の上面図、
図10(b)は、
図10(a)のA−A間の断面図である。なお、
図10(a)では、金属封止部60を透視して、共振子R1などを図示している。また、
図10(a)及び
図10(b)では、グランドに関する記載は省略している。
【0058】
図10(a)及び
図10(b)のように、実施例4の弾性波デバイス160は、実施例1の弾性波デバイス100と比べて、DMS2の代わりに弾性表面波共振子R2、R3が形成されている。共振子R2、R3は、共振子R1と同じく、1ポート共振子であり、IDTとその両側に設けられた反射器Rとを有する。支持基板40と基板10との間に設けられた内部配線50の上面と基板10の下面との間には、実施例3と同じく、空隙48が形成されている。
【0059】
共振子R1のIDTの一端は信号配線18aとビア配線22と内部配線50とを介して入力電極INである端子電極38に接続されている。共振子R1のIDTの他端は信号配線18aを介してDMS1のIDT12の一端に接続されている。DMS1のIDT11及びIDT13の一端は信号配線18aを介して共振子R2のIDT及び共振子R3のIDTの一端にそれぞれ接続されている、共振子R2のIDT及び共振子R3のIDTの他端は信号配線18aとビア配線22と内部配線50とを介して出力電極OUTである端子電極38に接続されている。
【0060】
基板10上に、共振子R1からR3、DMS1、及び信号配線18aを気密封止し、端子電極38は封止しない、金属封止部60が形成されている。複数のビア配線22のうちの1つは金属封止部60の内側に設けられた信号配線18aに接続され、他の1つは金属封止部60の外側に設けられた端子電極38に接続されている。金属封止部60は、共振子R1からR3、DMS1、及び信号配線18aをまとめて囲んで基板10上に設けられた枠体62と、IDT上に空隙39が形成されるように枠体62上に設けられたリッド64と、を含む。
【0061】
次に、実施例4の弾性波デバイス160の製造方法について説明する。
図11(a)から
図11(e)は、実施例4に係る弾性波デバイス160の製造方法を示す断面図である。
図11(a)のように、支持基板40の上面に凹部42を形成する。その後、支持基板40の上面全面にシード層44を形成する。支持基板40の上面のうち凹部42以外の領域のシード層44上に、レジスト膜46を形成する。レジスト膜46をマスクにして、支持基板40の上面の凹部42に内部配線50を形成する。この際、内部配線50の膜厚を制御して、内部配線50の上面が支持基板40の上面よりも低くなるようにする。内部配線50は、めっき法で形成してもよいし、スパッタ法で形成してもよい。内部配線50の厚さは、めっき法で形成する場合は2μm〜3μm程度とすることができ、スパッタ法で形成する場合は400nm程度とすることができる。
【0062】
図11(b)のように、レジスト膜46とシード層44を除去した後、支持基板40の上面に基板10を接合させる。これにより、内部配線50と基板10との間に空隙48が形成される。その後、基板10の上面に対して研磨を施して、基板10を薄層化させる。なお、内部配線50が支持基板40の上面よりも低く形成されているため、基板10を接合させる前に、支持基板40の上面に対する平坦化処理は行わなくてもよい。
【0063】
図11(c)のように、基板10を貫通する孔を形成した後、当該孔に金属膜を埋め込んで、内部配線50に接続するビア配線22を形成する。
【0064】
図11(d)のように、基板10上に、IDT、信号配線18a、及び不図示のグランド配線を形成する。また、これらと同時に、金属封止部60の枠体62及び端子電極38を形成する領域に金属パターンを形成する。その後、例えばめっき法を用いて、金属パターン上に金属膜を形成する。これにより、金属封止部60の枠体62の下側部分62aと端子電極38の下側部分38aとが形成される。
【0065】
図11(e)のように、金属封止部60のリッド64、枠体62の上側部分62b、及び端子電極38の上側部分38bが形成された基板92を予め準備しておく。リッド64、枠体62の上側部分62b、及び端子電極38の上側部分38bは、例えばめっき法を用いて形成される。金属封止部60の枠体62の上側部分62bを下側部分62aに接合させ、且つ端子電極38の上側部分38bを下側部分38aに接合させる。これにより、IDT及び信号配線18aは、金属封止部60で気密封止される。その後、基板92を除去することで、実施例4の弾性波デバイス160が形成される。
【0066】
図12(a)は、比較例2に係る弾性波デバイス510の断面図、
図12(b)は、比較例3に係る弾性波デバイス520の断面図である。
図12(a)のように、比較例2の弾性波デバイス510では、基板10と支持基板40の間に内部配線50が設けられてなく、基板10上を信号配線18aが端子電極38まで延在することで、信号配線18aと端子電極38とが互いに接続している。信号配線18aと金属封止部60の枠体62とが交差する領域には、信号配線18aと金属封止部60とが電気的に接続されないように、信号配線18aと枠体62との間に樹脂等の絶縁膜94が形成されている。
【0067】
比較例2では、信号配線18aと金属封止部60の枠体62との間に樹脂等の絶縁膜94が形成されている。樹脂等の絶縁膜94は気密性があまり良くないため、水分などが金属封止部60内に侵入し、IDTなどが腐食することが生じてしまう。
【0068】
一方、実施例4によれば、複数のビア配線22のうちの1つは金属封止部60内の信号配線18aに接続し、他の1つは金属封止部60外の端子電極38に接続していて、信号配線18aと端子電極38とはビア配線22と内部配線50とを介して接続されている。このため、金属封止部60の枠体62下に絶縁膜を設けずに済むため、気密性を向上させることができ、IDTなどの腐食を抑制することができる。
【0069】
また、比較例2では、信号配線18aと金属封止部60の枠体62とが近接して形成されるため、信号配線18aと金属封止部60との間で大きな容量が形成されてしまい、特性が劣化してしまう。一方、実施例4では、金属封止部60の枠体62と内部配線50との間に基板10が介在しているので、金属封止部60の枠体62と内部配線50とが離れて形成される。このため、金属封止部60と内部配線50との間で形成される容量を小さく抑えることができ、特性の劣化を抑制することができる。
【0070】
図12(b)のように、比較例3の弾性波デバイス520では、端子電極38が支持基板40の下面に設けられていて、基板10と支持基板40とを貫通するビア配線96によって、信号配線18aと端子電極38とが接続されている。
【0071】
比較例3によれば、金属封止部60の枠体62下に絶縁膜が設けられていないため、気密性を向上させることができる。しかしながら、基板10と支持基板40とを貫通するビア配線96は、アスペクト比の関係から大きくなり、デバイスサイズが大きくなってしまう。また、基板10と支持基板40とに大きな孔を開けることになるため、デバイスの強度が低下してしまう。
【0072】
一方、実施例4によれば、ビア配線22は基板10だけを貫通し、支持基板40は貫通していないため、デバイスサイズの大型化や強度低下を抑制することができる。
【0073】
なお、実施例4において、金属封止部60はグランドに接続されていることが好ましい。これにより、電磁波などからIDTを保護する効果が得られる。金属封止部60をグランドに接続させる構成として、グランド配線を基板10上でグランド電極GNDまで引き延ばすことで、グランド配線を金属封止部に接続させるようにしてもよい。なお、グランド配線を、信号配線18aと同様に、ビア配線22と内部配線50とを介してグランド電極GNDに接続させてもよい。
【0074】
なお、実施例4において、共振子R1〜R3及びDMS1は、圧電薄膜共振子であってもよい。
【実施例5】
【0075】
図13は、実施例5に係る弾性波デバイス170を示す図である。
図13のように、実施例5の弾性波デバイス170は、1又は複数の直列共振子S1からS3、1又は複数の並列共振子P1からP4、及びインダクタ66を備えるラダー型フィルタである。1又は複数の直列共振子S1からS3は、入力端子INと出力端子OUTとの間に直列に接続されている。直列共振子S3は、互いに直列に接続された共振子S3aとS3bを含む。1又は複数の並列共振子P1からP4は、入力端子INと出力端子OUTとの間に並列に接続されている。インダクタ66は、直列共振子S2に対して並列に接続されている。
【0076】
図14(a)は、実施例5に係る弾性波デバイス170の上面図、
図14(b)は、
図14(a)のA−A間の断面図である。
図14(a)及び
図14(b)のように、基板10上に、直列共振子S1からS3、並列共振子P1からP4、配線18、及びパッド電極20が形成されている。直列共振子S1からS3及び並列共振子P1からP4は、基板10と支持基板40の間に設けられた内部配線50を介さずに、基板10上に設けられた配線18だけを介して、パッド電極20に接続されている。基板10と支持基板40の間に設けられた内部配線50は、直列共振子S2に並列に接続されたインダクタ66を形成していて、ビア配線22を介して信号配線18aに接続されている。
【0077】
実施例5によれば、特性を改善するために、直列共振子S2に並列にインダクタ66が接続されている。このようなインダクタが、例えば弾性波デバイスを実装するパッケージに形成される場合、弾性波デバイスとパッケージの間を配線が行き来するため配線が長くなってしまい、特性の劣化が懸念される。一方、実施例4によれば、インダクタ66は、基板10と支持基板40の間に設けられた内部配線50によって形成されているので、インダクタ66に接続する配線を短くすることができ、特性の劣化を抑制することができる。
【0078】
なお、実施例5において、インダクタ66を形成する内部配線50は、直線状、ミアンダ状、又はコイル状のいずれの形状をしていてもよい。
【0079】
図15は、実施例5の変形例1に係る弾性波デバイス180を示す図である。
図15のように、実施例5の変形例1の弾性波デバイス180は、実施例5の弾性波デバイス170と比べて、直列共振子S2に並列にインダクタ66が接続されてなく、並列共振子P1からP4とグランドとの間にインダクタ66が直列に接続されている。
【0080】
図16(a)は、実施例5の変形例1に係る弾性波デバイス180の上面図、
図16(b)は、
図16(a)のA−A間の断面図である。
図16(a)及び
図16(b)のように、基板10と支持基板40の間に設けられた内部配線50は、並列共振子P1からP4とグランド電極GNDとの間に接続されたインダクタ66を形成していて、ビア配線22を介してグランド配線18bとグランド電極GNDとに接続されている。
【0081】
実施例5の変形例1によれば、通過帯域幅を広くするために、並列共振子P1からP4とグランドとの間に、並列共振子P1からP4に直列にインダクタ66が接続されている。インダクタ66は、基板10と支持基板40の間に設けられた内部配線50によって形成されている。このように、並列共振子P1からP4とグランドとの間に接続されたインダクタ66を内部配線50によって形成することで、例えばワイヤ配線によって形成する場合などと比べて、信頼性を向上させることができる。また、実施例5と同様に、インダクタ66に接続する配線を短くすることができ、特性の劣化を抑制することができる。
【0082】
また、実施例5の変形例1によれば、インダクタ66を形成する内部配線50は、直列共振子S1からS4及び並列共振子P1からP3と基板10の厚み方向で重なっていない。これにより、内部配線50と共振子との間に形成される容量を低減させることができ、特性の劣化を抑制することができる。
【0083】
図17は、実施例5の変形例2に係る弾性波デバイス190を示す図である。
図17のように、実施例5の変形例2の弾性波デバイス190は、出力端子OUTと直列共振子S3との間のノードと、並列共振子P2とグランドとの間のノードとの間に、インダクタ66が接続されている。
【0084】
図18は、実施例5の変形例2に係る弾性波デバイス190の分解上面図である。
図18のように、基板10と支持基板40の間に設けられた内部配線50は、出力電極OUTと直列共振子S3との間の信号配線18aと、並列共振子P2とグランド電極GNDとの間のグランド配線18bと、の間に接続されたインダクタ66を形成していて、ビア配線22を介して信号配線18a及びグランド配線18bに接続されている。
【0085】
図19は、実施例5の変形例3に係る弾性波デバイス200を示す図である。
図19のように、実施例5の変形例3の弾性波デバイス200は、直列共振子S3と出力端子OUTとの間にインダクタ66が直列に接続されている。
【0086】
図20は、実施例5の変形例3に係る弾性波デバイス200の分解上面図である。
図20のように、基板10と支持基板40の間に設けられた内部配線50は、直列共振子S3と出力電極OUTとの間に接続されたインダクタ66を形成していて、ビア配線22を介して信号配線18aに接続されている。
【0087】
実施例5の変形例2及び変形例3のように、基板10と支持基板40の間に設けられた内部配線50によって、出力端子OUTに直列又は並列に接続されたインダクタ66が形成されていてもよい。このインダクタ66は、出力の位相をシフトさせる機能を有してもよい。
【0088】
なお、実施例5の変形例2及び変形例3では、出力端子OUTにインダクタ66が接続されている場合を例に示したが、入力端子INに直列又は並列にインダクタ66が接続されていてもよい。
【0089】
実施例5から実施例5の変形例3のように、基板10と支持基板40の間に設けられた内部配線50は、ラダー型フィルタの直列共振子及び並列共振子の少なくとも一方に直列及び/又は並列に接続されたインダクタ66を形成してもよい。
【0090】
なお、実施例5から実施例5の変形例3において、各共振子は圧電薄膜共振子であってもよい。
【実施例6】
【0091】
図21は、実施例6に係る弾性波デバイス210を示す図である。
図21のように、実施例6の弾性波デバイス210は、直列共振子S1からS3に対して並列に回路68が接続されている。回路68は、入力端子INと直列共振子S1の間のノードN1と出力端子OUTと直列共振子S3の間のノードN2との間の経路上のノードN3とグランドとの間に接続された弾性表面波共振子R4を含む。また、回路68は、ノードN1とN3の間に直列に接続されたキャパシタC1と、ノードN2とN3の間に直列に接続されたキャパシタC2と、を含む。
【0092】
図22(a)は、実施例6に係る弾性波デバイス210の上面図、
図22(b)は、
図22(a)のA−A間の断面図である。
図22(a)及び
図22(b)のように、回路68を構成する共振子R4とキャパシタC1、C2は、基板10上に形成されている。共振子R4とキャパシタC1、C2とは、内部配線50とビア配線22とを介して互いに接続されている。
【0093】
実施例6によれば、共振子R4を含む回路68が、直列共振子S1からS3に並列に接続されている。これにより、阻止帯域の抑圧度を向上させることができる。また、回路68は、ビア配線22と内部配線50とを介して直列共振子S1からS3に並列に接続されているため、基板10上に形成された配線を介して直列共振子S1からS3に並列に接続されている場合に比べて、配線を短くでき、デバイスを小型化できる。配線を短くできることで、損失の劣化も抑制できる。
【0094】
なお、実施例6においては、回路68に含まれる弾性波素子として、1ポート共振子の場合を例に示したが、多重モード型弾性波フィルタ(例えば二重モード型弾性波フィルタ)の場合でもよい。また、弾性波素子は、ノードN1とN2との間に直列に接続されている場合でもよい。
【0095】
なお、実施例6では、基板10上にラダー型フィルタが形成されている場合を例に示したが、多重モード型フィルタが形成されている場合でもよい。
【0096】
なお、実施例6において、各共振子は圧電薄膜共振子であってもよい。
【実施例7】
【0097】
図23は、実施例7に係るデュプレクサ220を示すブロック図である。
図23のように、実施例7のデュプレクサ220は、送信フィルタ70と受信フィルタ72を備える。送信フィルタ70は、アンテナ端子Antと送信端子Txの間に接続されている。受信フィルタ72は、送信フィルタ70と共通のアンテナ端子Antと受信端子Rxの間に接続されている。
【0098】
送信フィルタ70は、送信端子Txから入力された信号のうち送信帯域の信号を送信信号としてアンテナ端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ72は、アンテナ端子Antから入力された信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信帯域と受信帯域は周波数が異なっている。
【0099】
実施例7のデュプレクサ220に備わる送信フィルタ70及び受信フィルタ72の少なくとも一方を、実施例1から実施例6で説明した弾性波デバイスとすることができる。また、送信フィルタ70及び受信フィルタ72の少なくとも一方に実施例6で説明した弾性波デバイスを用いることで、アイソレーション信号(受信端子に漏洩する送信信号及び/又は送信端子に漏洩する受信信号)の少なくとも一部を回路68を通過して信号によってキャンセルすることができる。
【実施例8】
【0100】
図24は、実施例8に係るモジュール230を含む移動体通信機を示すブロック図である。
図24のように、移動体通信機は、送受信デバイスであるモジュール230、集積回路74、及びアンテナ76を備える。モジュール230は、ダイプレクサ78、スイッチ80、デュプレクサ82、及びパワーアンプ84を備える。ダイプレクサ78は、ローパスフィルタ(LPF)78aとハイパスフィルタ(HPF)78bを備える。LPF78aは、端子77と79の間に接続されている。HPF78bは、端子77と81の間に接続されている。端子77は、アンテナ76に接続されている。LPF78aは、アンテナ76から送受信される信号のうち低周波数信号を通過させ、高周波数信号を抑圧する。HPF78bは、アンテナ76から送受信される信号のうち高周波数信号を通過させ、低周波数信号を抑圧する。
【0101】
スイッチ80は、端子79、81を複数の端子83のうちの1つの端子に接続する。デュプレクサ82は、送信フィルタ82a及び受信フィルタ82bを備える。送信フィルタ82aは、端子83と85の間に接続されている。受信フィルタ82bは、端子83と87の間に接続されている。送信フィルタ82aは、送信帯域の信号を通過させ、他の信号を抑圧する。受信フィルタ82bは、受信帯域の信号を通過させ、他の信号を抑圧する。パワーアンプ84は、送信信号を増幅し、端子85に出力する。ローノイズアンプ86は、端子87に出力された受信信号を増幅する。
【0102】
送受信デバイスであるモジュール230は、デュプレクサ82の送信フィルタ82a又は受信フィルタ82bとして、実施例1から実施例6で説明した弾性波デバイスを用いることができる。弾性波デバイスは、モジュール基板の表面に実装されてもよいし、モジュール基板内に内蔵されてもよい。
図25(a)は、実施例4の弾性波デバイス160がモジュール基板88の表面に実装された場合の断面図を示し、
図25(b)は、モジュール基板88内に内蔵された場合の断面図を示している。
【0103】
このように、実施例1から実施例6の弾性波デバイスは、アンテナ76に接続され、パワーアンプ84などと共にマザーボードに実装されて通信信号を送信及び受信する送受信デバイスを構成することができる。
【0104】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。