特許第6427078号(P6427078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427078
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 9/06 20060101AFI20181112BHJP
   G01C 9/20 20060101ALI20181112BHJP
   G01F 23/60 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   G01C9/06 C
   G01C9/20
   G01F23/60 Z
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-155631(P2015-155631)
(22)【出願日】2015年8月6日
(65)【公開番号】特開2017-32519(P2017-32519A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2017年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛義
【審査官】 八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−174535(JP,A)
【文献】 特開2005−257280(JP,A)
【文献】 特開2015−83796(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/210979(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 9/06
G01C 9/20
G01F 23/30−23/76
H01H 35/18
H01M 8/04− 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が貯留されるタンクに装着され、前記タンクの状態を検知する検知装置であって、
前記タンクの内部に鉛直方向に延在して設けられるセンサ支持部材と、
前記センサ支持部材に支持されるとともに、前記液体の水位の変化に伴って昇降するセンサと、
前記センサ支持部材に設けられ、前記センサが下限水位よりも下方に移動することを規制する係止部と、
を備え、
前記センサは、互いに対向して上下に配置され、前記液体が接触可能な上側電極及び下側電極を有し、前記上側電極と前記下側電極との間の液体量と空気量との関係に基づく静電容量の変化から、前記タンクの傾斜角度及び該タンク内の水位が前記下限水位であるか否かを検知する検知部を備えることを特徴とする検知装置。
【請求項2】
請求項1記載の検知装置において、前記上側電極及び前記下側電極は、それぞれ平板円形状を有することを特徴とする検知装置。
【請求項3】
請求項2記載の検知装置において、前記上側電極及び前記下側電極は、それぞれ単一の平板で形成されることを特徴とする検知装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の検知装置において、前記センサは、円筒形状のケーシング部を備えることを特徴とする検知装置。
【請求項5】
請求項4記載の検知装置において、前記センサは、前記検知部及び浮力部を備え、
前記ケーシング部には、前記検知部内に前記液体を流通させる開口部が形成されるとともに、
前記浮力部は、前記タンクが非傾斜状態で、且つ前記センサが前記係止部よりも上方に配置された状態で、前記検知部の上端が液面と同一高さに位置するように、前記センサ全体の浮力を調整する浮力調整体を有することを特徴とする検知装置。
【請求項6】
請求項5記載の検知装置において、前記浮力調整体は、前記ケーシング部に形成される調整室に充填される気体、液体又は固体であることを特徴とする検知装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載の検知装置において、前記検知部が前記液体で満たされていることを検出した際、前記タンクが前記下限水位を超えて該液体を貯留し且つ非傾斜状態であると判断し、前記検知部が前記液体及び空気に満たされていることを検出した際、前記タンクが前記下限水位を超えて該液体を貯留し且つ傾斜状態であると判断し、さらに前記検知部が前記空気で満たされていることを検出した際、前記タンクが所望の量の前記液体を貯留していないと判断するタンク状態判断部を備えることを特徴とする検知装置。
【請求項8】
請求項7記載の検知装置において、前記タンクは、燃料電池システムに設けられ、前記燃料電池システムに供給される燃料ガスを水蒸気改質するための改質器に用いられる改質水タンクであり、
前記検知装置は、前記タンク状態判断部により、前記タンクが傾斜状態であると判断した際、又は、前記タンクが所望の量の前記液体を貯留していないと判断した際、前記燃料電池システムの稼働を停止させる制御部を備えることを特徴とする検知装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の検知装置において、前記センサ支持部材は、前記センサが前記タンクの中心に配置されるように位置決めされることを特徴とする検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体が貯留されるタンクに装着され、前記タンクの状態を検知する検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、静電容量の変化を用いて、被測定物の傾斜角を計測する傾斜センサが使用されている。例えば、特許文献1に開示されている傾斜センサでは、上部電極と、下部電極と、該上部電極と該下部電極との間に封入され、傾斜に応じて変位する流動体とを備えている。そして、流動体の変位による出力信号の変化を取り出すことにより、被測定物の傾斜角を計測している。
【0003】
その際、流動体として、その粘性が外力の周波数に依存する物質を用いている。このため、加速度や振動等の外力による不要な信号成分を除くための信号処理回路を必要とせず、測定すべき傾斜を表わす信号(傾斜成分)を正確に検出することができる、としている。
【0004】
また、特許文献2に開示されている傾斜角センサでは、導電材製の筒状のフレームを備え、前記フレームの両側開口部は、絶縁板により密封状態で覆われている。絶縁板により密封状態で覆われたフレーム内には、該フレーム内の容積の略半分の容積あるいは半分以下の容積の導電性液体と、前記導電性液体よりも比重の小さい絶縁性液体とが封入されている。
【0005】
絶縁板の表面には、導電性液体とで静電容量が得られるように半円形状あるいは円形状を複数個に分割した弧状の外部極板が設置されている。外部極板には、一方の端子が接続されるとともに、フレームには、他方の端子が接続されている。従って、機械的な可動部分がなく、経年変化による摩耗、衝撃等による狂いがなく、長期間使用することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−160458号公報
【特許文献2】特開平5−172571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、この種の傾斜角センサを用いて、液体が貯留されるタンクの傾斜を検知する場合がある。例えば、設置用タンクでは、地震等の発生時に該タンクの傾斜角度を検知するためであり、移動用タンクでは、移送中に該タンクの傾斜角度を検知するためである。
【0008】
一方、タンク内に貯留されている液体の水位を検出するために、水位センサが採用されている。タンク内に液体を供給(補充)するための信号を得るためである。従って、通常、タンクの傾斜を検知する傾斜センサと、前記タンク内の水位を検知する水位センサとが、個別に用意されており、経済的ではないという問題がある。
【0009】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、タンクの傾斜角度及び前記タンク内の下限水位を、単一のセンサで容易且つ確実に検知することができ、経済的に構成することが可能な検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、液体が貯留されるタンクに装着され、前記タンクの状態を検知する検知装置に関するものである。この検知装置は、タンクの内部に鉛直方向に延在して設けられるセンサ支持部材と、前記センサ支持部材に支持されるとともに、液体の水位の変化に伴って昇降するセンサと、を備えている。センサ支持部材には、センサが下限水位よりも下方に移動することを規制する係止部が設けられている。
【0011】
センサは、検知部を備えている。検知部は、互いに対向して上下に配置され、液体が接触可能な上側電極及び下側電極を有している。そして、上側電極と下側電極との間の液体量と空気量との関係に基づく静電容量の変化から、タンクの傾斜角度及び該タンク内の水位が下限水位であるか否かを検知している。
【0012】
また、この検知装置では、上側電極及び下側電極は、それぞれ平板円形状を有することが好ましい。このため、タンクの傾斜方向に制限が設けられることがなく、あらゆる角度(360゜)に亘って前記タンクの傾斜角度を均一に検出することができる。
【0013】
さらに、この検知装置では、上側電極及び下側電極は、それぞれ単一の平板で形成されることが好ましい。従って、検知装置全体の構成を簡素化することが可能になるとともに、製造コストの削減が容易に遂行される。
【0014】
さらにまた、この検知装置では、センサは、円筒形状のケーシング部を備えることが好ましい。これにより、センサは、あらゆる角度に亘ってタンクの傾斜角度を正確に検出することができる。
【0015】
また、この検知装置では、センサは、検知部及び浮力部を備え、ケーシング部には、前記検知部内に液体を流通させる開口部が形成されることが好ましい。その際、浮力部は、タンクが非傾斜状態で、且つセンサが係止部よりも上方に配置された状態で、検知部の上端が液面と同一高さに位置するように、前記センサ全体の浮力を調整する浮力調整体を有することが好ましい。
【0016】
このため、検知部によりタンクの傾斜角度を高精度に検出することができるとともに、浮力調整体の種類を選択するだけで、種々の液体を貯留する各種タンクの傾斜角度を容易且つ確実に検出することが可能になる。
【0017】
さらに、この検知装置では、浮力調整体は、ケーシング部に形成される調整室に充填される気体、液体又は固体であることが好ましい。従って、浮力部の構成の簡素化が図られるとともに、経済的である。
【0018】
さらにまた、この検知装置は、タンク状態判断部を備えることが好ましい。タンク状態判断部は、検知部が液体で満たされていることを検出した際、タンクが下限水位を超えて該液体を貯留し且つ非傾斜状態であると判断する。タンク状態判断部は、検知部が液体及び空気に満たされていることを検出した際、タンクが前記下限水位を超えて該液体を貯留し且つ傾斜状態であると判断する。タンク状態判断部は、検知部が空気で満たされていることを検出した際、タンクが所望の量の液体を貯留していないと判断する。
【0019】
これにより、単一のセンサを使用して、上記の3つの状態を容易且つ確実に検出することができ、極めて経済的である。
【0020】
また、タンクは、燃料電池システムに設けられ、前記燃料電池システムに供給される燃料ガスを水蒸気改質するための改質器に用いられる改質水タンクであることが好ましい。
【0021】
その際、検知装置は、タンク状態判断部により、タンクが傾斜状態であると判断した際、又は、前記タンクが所望の量の液体を貯留していないと判断した際、燃料電池システムの稼働を停止させる制御部を備えることが好ましい。このため、改質用水の枯渇を防止するとともに、安定した発電を良好に遂行することが可能になる。
【0022】
さらに、この検知装置では、センサ支持部材は、センサがタンクの中心に配置されるように位置決めされることが好ましい。従って、センサによるタンクの傾斜角度の検出精度を良好に向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、タンクが傾斜すると、センサ支持部材に支持されたセンサは、液面に対して傾斜する。このため、上側電極と下側電極との間の液体量と空気量との関係に基づく静電容量が変化し、タンクの傾斜角度を検知することができる。
【0024】
一方、センサが係止部に当接した状態で、水位が下がると、上側電極と下側電極との間の液体量が減少し、前記液体量と空気量との関係に基づく静電容量の変化から、タンク内の液体が下限水位であることを検知することが可能になる。
【0025】
これにより、タンクの傾斜角度及び前記タンク内の水位が下限水位であるか否かを、単一のセンサで容易且つ確実に検知することができ、経済的な検知装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る検知装置が組み込まれる燃料電池コージェネレーションシステムの概略構成説明図である。
図2】前記燃料電池コージェネレーションシステムを構成する水タンク及び前記検知装置の側面説明図である。
図3】前記水タンク及び前記検知装置の平面説明図である。
図4】前記検知装置の要部断面説明図である。
図5】前記水タンクが傾斜した際の説明図である。
図6】前記水タンクの貯留水が最低水位ラインまで減少した際の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る検知装置10は、例えば、燃料電池コージェネレーションシステム(燃料電池システム)12に組み込まれる。燃料電池コージェネレーションシステム12は、燃料電池モジュール14、熱交換器16、水タンク18、貯湯タンク20及び制御部22を備える。
【0028】
燃料電池モジュール14は、燃料電池スタック24、水蒸気改質器26及び蒸発器28を備える。燃料電池スタック24は、燃料ガス(水素ガスにメタン、一酸化炭素が混合した気体)と酸化剤ガス(空気)との電気化学反応により発電する。燃料電池スタック24は、図示しないが、例えば、平板状の固体酸化物形燃料電池を備え、複数の前記燃料電池が重力方向又は水平方向に積層される。
【0029】
燃料電池は、例えば、安定化ジルコニア等の酸化物イオン導電体で構成される電解質の両面に、カソード電極及びアノード電極が設けられた電解質・電極接合体(MEA)を備える。電解質・電極接合体の両側には、カソードセパレータとアノードセパレータとが配設される。カソードセパレータには、カソード電極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス流路が形成されるとともに、アノードセパレータには、アノード電極に燃料ガスを供給する燃料ガス流路が形成される。
【0030】
水蒸気改質器26は、炭化水素を主体とする原燃料(例えば、都市ガス)と水蒸気との混合ガスを水蒸気改質して燃料ガスを生成し、該燃料ガスを燃料電池スタック24に供給する。蒸発器28は、改質用水を蒸発させるとともに、水蒸気を水蒸気改質器26に供給する。
【0031】
熱交換器16は、燃料電池モジュール14から排ガス流路30を介して排出される排ガス(使用済みの燃料ガス及び酸化剤ガス)と、貯湯タンク20から水排出流路32を介して供給される熱交換用水との熱交換により、前記熱交換用水を昇温させる。
【0032】
水タンク18には、熱交換器16の熱交換により排ガスから生成された凝縮水が水流路34を流通して貯留される。水タンク18は、貯留されている凝縮水を、改質用水として水供給路36から蒸発器28に供給する。熱交換器16は、熱交換により昇温された熱交換用水である温水(湯)を、温水供給流路38を介して貯湯タンク20に供給する。
【0033】
貯湯タンク20には、温水を外部に排出する湯排出流路40が設けられる。湯排出流路40は、図示しない家庭内の給湯システムや暖房システムに温水を供給する。燃料電池モジュール14には、原燃料供給流路42を介して原燃料が供給されるとともに、空気供給流路43を介して空気が供給される。
【0034】
図2及び図3に示すように、水タンク18は、平面視で正方形状を有する。なお、水タンク18は、平面視で長方形状又は円形状を有してもよい。水タンク18内には、水(液体)が貯留されるとともに、検知装置10は、前記水タンク18の状態を検知する。水タンク18の内部には、鉛直方向に延在してセンサ支持部材44が設けられる。センサ支持部材44は、例えば、角棒状の支柱であり、前記センサ支持部材44には、センサ46が昇降自在に支持される。
【0035】
図2図4に示すように、センサ46は、円筒形状の樹脂製ケーシング部48を備える。ケーシング部48は、上下両端が閉塞されるとともに、図2に示すように、直径寸法Dが高さ寸法Hよりも大きく設定される(直径寸法D>高さ寸法H)。なお、直径寸法D=高さ寸法Hであってもよく、直径寸法D<高さ寸法Hであってもよい。
【0036】
ケーシング部48の側面には、ガイド部50が一体に設けられ、前記ガイド部50に鉛直方向に形成された角形の孔部50aにセンサ支持部材44が挿入される(図4参照)。図3に示すように、センサ46の中心Oが水タンク18の中心に配置されるように、センサ支持部材44が位置決めされる。中心Oは、水タンク18の各辺から距離S1ずつ離間する。センサ支持部材44は、センサ46が揺動(回転)することを阻止するために、断面四角形状を有する。センサ支持部材44は、回転防止機能を有すればよく、例えば、断面正方形状、断面長方形状又は断面半円形状等、種々の形状に設定可能である。
【0037】
図2に示すように、センサ支持部材44には、センサ46が最低水位ライン(下限水位)WL(low)よりも下方に移動することを規制する係止部44sが設けられる。係止部44sは、センサ支持部材44に一体成形された大径部であり、センサ46の下端位置を、水タンク18の最低水位ラインWL(low)に保持する。
【0038】
センサ46は、図4に示すように、検知部52及び浮力部54を備える。検知部52は、互いに対向して上下に配置され、液体が接触可能な上側電極56u及び下側電極56dを有する。上側電極56uと下側電極56dとには、電線58a、58bの一端が接続されるとともに、前記電線58a、58bの他端は、コネクタ60に接続される(図2参照)。コネクタ60は、水タンク18の上部に取り付けられており、制御部22に接続される。なお、上側電極56u及び下側電極56dは、無線により制御部22に信号を送ることもできる。
【0039】
図1に示すように、制御部22は、上側電極56uと下側電極56dとの間の水量(液体量)と空気量との関係に基づく静電容量の変化から、水タンク18の傾斜角度及び該水タンク18内の水位が最低水位ラインWL(low)であるか否かを検知する(後述する)。
【0040】
図4に示すように、上側電極56u及び下側電極56dは、それぞれ平板円形状を有する。好ましくは、上側電極56u及び下側電極56dは、それぞれ単一の平板(円板)で形成される。ケーシング部48には、検知部52内に水を流通させる複数の開口部62が形成される。開口部62は、長方形状を有し、上側電極56uと下側電極56dとの間に環状に配置される。
【0041】
浮力部54は、浮力調整体64を有する。浮力調整体64は、水タンク18が非傾斜状態で、且つセンサ46が係止部44sよりも上方に配置された状態で、検知部52の上端が水位ライン(液面)WLと同一高さに位置するように、前記センサ46全体の浮力を調整する。浮力調整体64は、ケーシング部48に形成された調整室66に充填される流体、例えば、空気(気体)である。なお、センサ46が浸漬される液体の種類によっては、調整室66には、液体や固体である浮力調整体64を充填することができる。水以外の比重に対応するためである。
【0042】
図1に示すように、検知装置10は、タンク状態判断部68を備える。タンク状態判断部68は、制御部22の機能として構成してもよく、又は、前記制御部22とは個別に構成してもよい。タンク状態判断部68は、検知部52が水で満たされていることを検出した際、水タンク18が最低水位ラインWL(low)を超えて該水を貯留し且つ非傾斜状態であると判断する。
【0043】
タンク状態判断部68は、検知部52が水及び空気に満たされていることを検出した際、水タンク18が最低水位ラインWL(low)を超えて該水を貯留し且つ傾斜状態であると判断する。タンク状態判断部68は、検知部52が空気で満たされていることを検出した際、水タンク18が所望の量の水を貯留していないと判断する。
【0044】
制御部22は、タンク状態判断部68により、水タンク18が傾斜状態であると判断した際、又は、前記水タンク18が所望の量の水を貯留していないと判断した際、燃料電池コージェネレーションシステム12の稼働を停止させる。
【0045】
このように構成される検知装置10を組み込む燃料電池コージェネレーションシステム12の動作について、以下に説明する。
【0046】
燃料電池コージェネレーションシステム12の運転時には、原燃料供給流路42に、例えば、都市ガス(CH4、C26、C38、C410を含む)等の原燃料が供給される。この原燃料は、燃料電池モジュール14に供給されるとともに、水タンク18から水供給路36を通って蒸発器28に改質用水が供給されて水蒸気が得られる。
【0047】
このため、水蒸気改質器26では、原燃料と水蒸気との混合燃料が水蒸気改質され、C2+の炭化水素が除去(改質)されてメタンを主成分とする改質ガス(燃料ガス)が得られる。この改質ガスは、燃料電池スタック24に供給される。従って、改質ガス中のメタンが改質されて水素ガスが得られ、この水素ガスを主成分とする燃料ガスは、アノード電極(図示せず)に供給される。
【0048】
一方、燃料電池モジュール14には、空気供給流路43を介して空気が供給される。空気は、必要に応じて加温された後、燃料電池スタック24に導入され、図示しないカソード電極に供給される。これにより、燃料ガスと空気との電気化学反応により発電が行われる。
【0049】
燃料電池モジュール14から排ガス流路30を介して排出される高温(数百℃)の排ガスは、熱交換器16に送られる。熱交換器16には、貯湯タンク20から水排出流路32を介して熱交換用水が供給されている。このため、熱交換器16では、高温の排ガスと熱交換用水とが熱交換を行い、前記熱交換用水が加温されて温水が得られる。温水は、温水供給流路38を介して貯湯タンク20に供給される。貯湯タンク20では、湯排出流路40を通って、図示しない家庭内の給湯システムや暖房システムに温水が供給されている。
【0050】
一方、熱交換器16での熱交換により排ガスから凝縮水が生成される。この凝縮水は、水流路34を流通して水タンク18に貯留されるとともに、改質用水として水供給路36から蒸発器28に供給される。
【0051】
この場合、本実施形態では、図2に示すように、検知装置10は、水タンク18の内部に鉛直方向に延在して設けられるセンサ支持部材44と、前記センサ支持部材44に支持され、水位ラインWLの変化に伴って昇降するセンサ46と、を備えている。センサ46は、互いに対向して上下に配置され、液体が接触可能な上側電極56u及び下側電極56dを有する検知部52を備えている(図4参照)。
【0052】
そして、制御部22は、上側電極56uと下側電極56dとの間の水量(液体量)と空気量との関係に基づく静電容量の変化から、水タンク18の傾斜角度及び該水タンク18内の水位が最低水位ラインWL(low)であるか否かを検知している。具体的には、それぞれ面積Aを有する上側電極56uと下側電極56dとが、距離Lだけ離間して配置されるとともに、前記上側電極56uと前記下側電極56dとの間には、誘電率εの誘電体が存在している。
【0053】
従って、上側電極56uと下側電極56dとの間の静電容量Cは、C=ε(A/L)から求められる。ここで、誘電体は、水のみの場合(第1状態)、水と空気とが混在する場合(第2状態)、及び空気のみの場合(第3状態)がある。水の比誘電率は、80.4である一方、空気の比誘電率は、1.0であり、第1状態での静電容量C1、第2状態での静電容量C2及び第3状態での静電容量C3は、C1>C2>C3となる。
【0054】
図2に示すように、水タンク18内に最低水位ラインWL(low)を上回る水位ラインWLの水が貯留されるとともに、前記水タンク18が傾斜していないと、検知部52は水に満たされている。このため、センサ46では、静電容量C1が得られ、タンク状態判断部68は、検知部52が水で満たされていることを検出する。
【0055】
一方、図5に示すように、例えば、地震等の外部からの衝撃により水タンク18が傾斜すると、検知部52は、水及び空気に満たされている。従って、センサ46では、静電容量C2が得られ、タンク状態判断部68は、水タンク18が最低水位ラインWL(low)を超えて水を貯留し且つ傾斜状態であることを検出する。制御部22は、水タンク18が所定の角度以上に傾斜していると判断すると、燃料電池コージェネレーションシステム12の稼働を停止させる。
【0056】
また、水タンク18内の貯留水が減少すると、水位ラインWLが低下するとともに、センサ46は、前記水位ラインWLに沿って下降する。そして、センサ46は、センサ支持部材44の係止部44sに当接して下降が抑制されるため、水位ラインWLが下降しても、前記センサ46が下降することがない。これにより、検知部52は、水に満たされた状態から、水及び空気に満たされた状態に移行した後、空気のみに満たされる状態に至る。
【0057】
このため、図6に示すように、最低水位ラインWL(low)まで液面が低下し、センサ46では、静電容量C3が得られ、タンク状態判断部68は、水タンク18が所望の量の液体を貯留していないことを検出する。制御部22は、水タンク18が所望の量の液体を貯留していないと判断すると、燃料電池コージェネレーションシステム12の稼働を停止させる。
【0058】
このように、本実施形態では、水タンク18が傾斜すると、センサ支持部材44に支持されたセンサ46は、前記水タンク18内の水面(液面)に対して傾斜する。従って、上側電極56uと下側電極56dとの間の水量と空気量との関係に基づく静電容量Cが静電容量C2に変化し、水タンク18の傾斜角度を検知することができる。
【0059】
一方、センサ46が係止部44sに当接した状態で、水位ラインWLが下がると、上側電極56uと下側電極56dとの間の液体量が減少する。これにより、水量と空気量との関係に基づく静電容量Cが静電容量C3に変化することから、水タンク18内の水位が最低水位ラインWL(low)であることを検知することが可能になる。
【0060】
このため、水タンク18の傾斜角度及び前記水タンク18内の水位が最低水位ラインWL(low)であるか否かを、単一のセンサ46で容易且つ確実に検知することができ、経済的な検知装置10を提供することが可能になるという効果が得られる。
【0061】
また、検知装置10では、上側電極56u及び下側電極56dは、それぞれ平板円形状を有している。従って、水タンク18の傾斜方向に制限が設けられることがなく、あらゆる角度(360゜)に亘って傾斜角度を均一に検出することができる。しかも、上側電極56uと下側電極56dとの距離(電極間距離)Lや前記上側電極56u及び前記下側電極56dの直径(電極面積)を調整することにより、水タンク18の傾斜角度の精度を変更させることが可能になる。
【0062】
さらに、検知装置10では、上側電極56u及び下側電極56dは、それぞれ単一の平板で形成されている。これにより、検知装置10全体の構成を簡素化することができるとともに、製造コストの削減が容易に遂行される。
【0063】
さらにまた、センサ46は、円筒形状のケーシング部48を備えている。このため、センサ46は、あらゆる角度に亘って水タンク18の傾斜角度を正確に検出することが可能になる。
【0064】
また、センサ46は、検知部52及び浮力部54を備え、ケーシング部48には、前記検知部52内に水を流通させる複数の開口部62が形成されている。開口部62は、長方形状を有し、上側電極56uと下側電極56dとの間に環状に配置されている。従って、検知部52内に水を確実に流通させることができ、ケーシング部48の傾斜角度をあらゆる角度に亘って高精度に検出することが可能になる。
【0065】
その際、浮力部54は、センサ46全体の浮力を調整する浮力調整体(空気)64を有している。浮力調整体64は、水タンク18が非傾斜状態で、且つセンサ46が係止部44sよりも上方に配置された状態で、検知部52の上端が水位ラインWLと同一高さに位置するように、調整している。これにより、検知部52により水タンク18の傾斜角度を高精度に検出することができるとともに、浮力調整体64の種類を選択するだけで、種々の液体を貯留する各種タンクの傾斜角度を容易且つ確実に検出することが可能になる。
【0066】
さらに、浮力調整体64は、ケーシング部48に形成される調整室66に充填される流体、例えば、空気である。このため、浮力部54の構成の簡素化が図られるとともに、経済的であるという利点がある。
【0067】
さらにまた、検知装置10は、タンク状態判断部68を備えている。タンク状態判断部68は、水タンク18が最低水位ラインWL(low)を超えて該水を貯留し且つ非傾斜状態である、前記水タンク18が最低水位ラインWL(low)を超えて該水を貯留し且つ傾斜状態である、及び前記水タンク18が所望の量の水を貯留していない状態である、ことを判断している。従って、単一のセンサ46を使用して、上記の3つの状態を容易且つ確実に検出することができ、極めて経済的である。
【0068】
また、水タンク18は、燃料電池コージェネレーションシステム12に設けられ、燃料電池スタック24に供給される燃料ガスを水蒸気改質するための水蒸気改質器26に用いられる改質水タンクである。その際、制御部22は、水タンク18が傾斜状態であると判断した際、又は、前記水タンク18が所望の量の水を貯留していないと判断した際、燃料電池コージェネレーションシステム12の稼働を停止させている。これにより、改質用水の枯渇を防止するとともに、安定した発電を良好に遂行することが可能になる。
【0069】
さらに、センサ支持部材44は、図3に示すように、センサ46の中心Oが水タンク18の中心に配置されるように、前記水タンク18に位置決めされている。このため、センサ46による水タンク18の傾斜角度の検出精度を良好に向上させることができる。
【符号の説明】
【0070】
12…燃料電池コージェネレーションシステム
14…燃料電池モジュール 16…熱交換器
18…水タンク 20…貯湯タンク
22…制御部 24…燃料電池スタック
26…水蒸気改質器 28…蒸発器
44…センサ支持部材 44s…係止部
46…センサ 48…ケーシング部
50…ガイド部 52…検知部
54…浮力部 56d…下側電極
56u…上側電極 60…コネクタ
62…開口部 64…浮力調整体
66…調整室 68…タンク状態判断部
図1
図2
図3
図4
図5
図6