特許第6427092号(P6427092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427092
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】静電塗装設備
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/08 20060101AFI20181112BHJP
   B05B 5/025 20060101ALI20181112BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20181112BHJP
【FI】
   B05B5/08 H
   B05B5/025 F
   B05B12/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-239237(P2015-239237)
(22)【出願日】2015年12月8日
(65)【公開番号】特開2017-104786(P2017-104786A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中山 玄二
(72)【発明者】
【氏名】石田 浩三
【審査官】 高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−221418(JP,A)
【文献】 特開2015−100761(JP,A)
【文献】 特開2011−104535(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0368022(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B5/00−5/16;12/00−16/80
B05C7/00−21/00
B05D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行塗装ロボットのアーム先端部に保持具を介し被塗物を連結して前記先行塗装ロボットにより前記被塗物と前記保持具との連結体を保持した状態で、先行静電塗装機により前記被塗物に先行静電塗装を施し、
この先行静電塗装に続き、前記被塗物と前記保持具との連結は保ったままの状態で前記保持具を前記先行塗装ロボットのアーム先端部に対する連結状態から後行塗装ロボットのアーム先端部に対する連結状態に移行させて前記被塗物と前記保持具との連結体を前記後行塗装ロボットにより保持した状態で、後行静電塗装機により前記被塗物に後行静電塗装を施す静電塗装設備であって、
前記保持具に連結した前記被塗物に対して被塗物側接続部を電気的に接続する被塗物アース用導電手段を前記保持具に設け、
被塗物連結状態の前記保持具が前記先行塗装ロボットのアーム先端部に対する連結状態から前記後行塗装ロボットのアーム先端部に対する連結状態に移行するのに伴い、前記被塗物アース用導電手段のロボット側接続部が前記先行塗装ロボットのアース状態箇所に対する電気的接続状態から前記後行塗装ロボットのアース状態箇所に対する電気的接続状態に切り換わる構成にしてある静電塗装設備。
【請求項2】
前記被塗物に対する前記保持具の連結部を、前記被塗物アース用導電手段の前記被塗物側接続部にしてある請求項1記載の静電塗装設備。
【請求項3】
前記被塗物に対する前記保持具の連結部として、前記被塗物に対して吸着させる吸盤を前記保持具に設け、
前記被塗物アース用導電手段の前記被塗物側接続部として、前記吸盤が前記被塗物に吸着して収縮側に弾性変形するのに伴い前記被塗物に対し電気的に接触した状態で圧縮側に弾性変形する導電性のバネを前記吸盤に設けてある請求項2記載の静電塗装設備。
【請求項4】
前記被塗物に対する前記保持具の連結部として、前記被塗物に対して吸着させる導電性の吸盤を前記保持具に設け、
この導電性の吸盤を、前記被塗物アース用導電手段の前記被塗物側接続部にしてある請求項2記載の静電塗装設備。
【請求項5】
前記保持具に連結する前記先行塗装ロボット及び前記後行塗装ロボット夫々のアーム先端部をそれら塗装ロボット夫々の前記アース状態箇所にし、
前記先行塗装ロボット及び前記後行塗装ロボット夫々のアーム先端部に対する前記保持具の連結部を、前記被塗物アース用導電手段の前記ロボット側接続部にしてある請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電塗装設備。
【請求項6】
前記保持具において前記被塗物に対する連結部と前記先行塗装ロボット及び前記後行塗装ロボット夫々のアーム先端部に対する連結部との間の途中に位置する保持具形成部材を導電材で形成し、
この保持具形成部材を、前記被塗物アース用導電手段において前記被塗物側接続部と前記ロボット側接続部とを電気的接続状態にする中継導電部にしてある請求項1〜5のいずれか1項に記載の静電塗装設備。
【請求項7】
前記被塗物において前記被塗物アース用導電手段の前記被塗物側接続部を接続する箇所から前記被塗物の塗装対象面にわたるアース用補助導電手段を設け、
前記被塗物アース用導電手段の前記被塗物側接続部は、前記被塗物に対する電気的接続として、前記被塗物に設けた前記アース用補助導電手段に対して電気的に接続する構成にしてある請求項1〜6のいずれか1項に記載の静電塗装設備。
【請求項8】
前記アース用補助導電手段が、前記被塗物の表面に対して貼り付けた導電性粘着テープ、又は、前記被塗物の表面に塗布した導電剤の塗布層、又は、粘着テープにより前記被塗物の表面に固定した導電性線材である請求項7記載の静電塗装設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行塗装ロボットのアーム先端部に保持具を介し被塗物を連結して先行塗装ロボットにより被塗物と保持具との連結体を保持した状態で、先行静電塗装機により被塗物に先行静電塗装を施し、この先行静電塗装に続き、被塗物と保持具との連結は保ったままの状態で保持具を先行塗装ロボットのアーム先端部に対する連結状態から後行塗装ロボットのアーム先端部に対する連結状態に移行させて被塗物と保持具との連結体を後行塗装ロボットにより保持した状態で、後行静電塗装機により被塗物に後行静電塗装を施す静電塗装設備に関し、特に樹脂製品などの非導電性の被塗物を静電塗装する場合に好適な静電塗装設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来一般に、樹脂製品などの非導電性の被塗物を搬送用台車などの搬送用キャリアに載置した状態で搬送用キャリアとともに搬送する静電塗装設備において、被塗物に対し複数の静電塗装機により静電塗装を順次に施す場合には、下記の特許文献1に示されるように、搬送移動にかかわらずレールなどを通じてアース状態(電気的接地状態)が保たれる搬送用キャリアと、それに載置した被塗物とをアース線により電気的に接続し、このアース線の接続により、被塗物(特にその塗装対象面)を帯電塗料粒子に対する電気的な引き付け作用が生じるアース状態にしていた。
【0003】
そして、この従来法によれば、静電塗装に先立ち被塗物と搬送用キャリアとをアース線により電気的に接続しておくだけで、複数の静電塗装機による順次静電塗装の夫々において、各静電塗装機と被塗物との間での静電効果(即ち、静電塗装機から噴霧される帯電塗料粒子を電気的に被塗物に引き付ける効果)を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−4475号公報
【特許文献2】特開2005−103446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年、上記特許文献2の図17に示されるように、複数の噴霧塗装機の夫々に対応させて被塗物保持用の塗装ロボットを各別に設置し、これら塗装ロボットどうしの間で被塗物を順次に受け渡す搬送形態を採りながら、被塗物を複数の噴霧塗装機により順次に塗装することが提案されている。
【0006】
しかし、樹脂製品などの非導電性の被塗物を複数の静電塗装機により順次に静電塗装する場合において、上記の如く被塗物を被塗物保持用の塗装ロボットどうしの間で受け渡す搬送形態を採ると、アース状態を保って被塗物とともに移動する搬送用台車などの搬送用キャリアが無いことから、各静電塗装機による静電塗装ごとに被塗物と最寄のアース状態箇所とをアース線により接続することが必要になって、隣り合う塗装ロボットどうしの間での被塗物の受け渡しの度に被塗物に対するアース線の接続替え操作を行うことが必要になり、このため、被塗物を搬送用キャリアにより搬送する場合に比べ、付帯作業が煩雑になるとともに塗装作業能率も大きく低下する問題が生じる。
【0007】
また、塗装ロボットどうしの間で被塗物を受け渡す搬送形態を採ることで塗装作業域を無人化する場合には、被塗物に対するアース線の接続替え操作のために作業員が塗装作業域に入ること自体が難しい問題も生じる。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、静電塗装設備において塗装ロボットどうしの間で被塗物を受け渡す搬送形態を採る場合に生じる上記の如き問題を効果的に解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は静電塗装設備に係り、その特徴は、
先行塗装ロボットのアーム先端部に保持具を介し被塗物を連結して前記先行塗装ロボットにより前記被塗物と前記保持具との連結体を保持した状態で、先行静電塗装機により前記被塗物に先行静電塗装を施し、
この先行静電塗装に続き、前記被塗物と前記保持具との連結は保ったままの状態で前記保持具を前記先行塗装ロボットのアーム先端部に対する連結状態から後行塗装ロボットのアーム先端部に対する連結状態に移行させて前記被塗物と前記保持具との連結体を前記後行塗装ロボットにより保持した状態で、後行静電塗装機により前記被塗物に後行静電塗装を施す静電塗装設備であって、
前記保持具に連結した前記被塗物に対して被塗物側接続部を電気的に接続する被塗物アース用導電手段を前記保持具に設け、
被塗物連結状態の前記保持具が前記先行塗装ロボットのアーム先端部に対する連結状態から前記後行塗装ロボットのアーム先端部に対する連結状態に移行するのに伴い、前記被塗物アース用導電手段のロボット側接続部が前記先行塗装ロボットのアース状態箇所に対する電気的接続状態から前記後行塗装ロボットのアース状態箇所に対する電気的接続状態に切り換わる構成にしてある点にある。
【0010】
この構成によれば、被塗物連結状態の保持具が先行塗装ロボットのアーム先端部に対する連結状態から後行塗装ロボットのアーム先端部に対する連結状態に移行する(即ち、塗装ロボットどうしの間での被塗物の受け渡しが行われる)のに伴い、保持具における被塗物アース用導電手段のロボット側接続部が先行塗装ロボットのアース状態箇所に対する電気的接続状態から後行塗装ロボットのアース状態箇所に対する電気的接続状態に切り換わる。
【0011】
したがって、先行静電塗装に先立ち、被塗物に対する保持具の連結操作などとともに、保持具における被塗物アース用導電手段の被塗物側接続部を被塗物に対して電気的に接続しておくだけで、塗装ロボットどうしの間での被塗物の受け渡しにかかわらず、被塗物(特にその塗装対象面)を保持具における被塗物アース用導電手段、及び、保持具に対して連結状態にある塗装ロボットのアース状態箇所を通じてアース状態(電気的接地状態)にすることができる。
【0012】
そして、このことにより、塗装ロボットどうしの間での被塗物の受け渡しの度に被塗物に対するアース線の接続替え操作を行うことを不要にすることができて、付帯作業を軽微にするとともに塗装作業能率も高く確保することができ、また、塗装作業域の無人化に対して被塗物に対するアース線の接続替え操作のために作業員が塗装作業域に入ることも不要にすることができる。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記被塗物に対する前記保持具の連結部を、前記被塗物アース用導電手段の前記被塗物側接続部にしてある点にある。
【0014】
この構成によれば、先行静電塗装に先立ち被塗物に保持具を連結するのに伴い、被塗物アース用導電手段の被塗物側接続部を被塗物に対して電気的に接続することも完了することができ、これにより、被塗物に対する保持具の連結操作とは別に被塗物アース用導電手段の被塗物側接続部を被塗物に対して電気的に接続するのに比べ、付帯作業を一層軽微にすることができる。
【0015】
また、被塗物と保持具との連結箇所とは別の箇所で被塗物アース用導電手段の被塗物側接続部をワニクリップなどにより被塗物に対して電気的に接続するのに比べ、被塗物と保持具との間の部分を外観的に簡素にすることができて、その間部分における余剰噴霧塗料(オーバースプレー塗料)の付着を抑止することができ、これにより、その付着塗料が乾燥した後に剥離飛散して被塗物に再付着することによる被塗物塗装品質の低下も効果的に抑止することができる。
【0016】
さらに、被塗物と保持具との連結箇所とは別の箇所で、被塗物アース用導電手段の被塗物側接続部をワニクリップなどにより被塗物に対して電気的に接続するのでは、塗装ロボットのアーム動作により被塗物と保持具との連結体を静電塗装機に対して移動させたり姿勢変更させたりすることが原因で、被塗物アース用導電手段の被塗物側接続部と被塗物との電気的接続が不測に破断してしまう虞もあるが、上記構成によれば、そのような不測の破断事故も効果的に回避することができる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記被塗物に対する前記保持具の連結部として、前記被塗物に対して吸着させる吸盤を前記保持具に設け、
前記被塗物アース用導電手段の前記被塗物側接続部として、前記吸盤が前記被塗物に吸着して収縮側に弾性変形するのに伴い前記被塗物に対し電気的に接触した状態で圧縮側に弾性変形する導電性のバネを前記吸盤に設けてある点にある。
【0018】
この構成では、保持具に設けた上記吸盤を被塗物に対して吸着させることで、保持具を被塗物に対して連結するが、この吸盤吸着による被塗物と保持具との連結に伴い、被塗物アース用導電手段の被塗物側接続部として吸盤に設けた導電性のバネが被塗物に対して電気的に接触した状態で圧縮側に弾性変形することで、そのバネの被塗物に対する電気的接触をバネの伸長側への復元弾性力により確実にすることができ、これにより、被塗物(特にその塗装対象面)を一層確実かつ安定的にアース状態にすることができる。
【0019】
本発明の第4特徴構成は、第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記被塗物に対する前記保持具の連結部として、前記被塗物に対して吸着させる導電性の吸盤を前記保持具に設け、
この導電性の吸盤を、前記被塗物アース用導電手段の前記被塗物側接続部にしてある点にある。
【0020】
この構成では、保持具に設けた上記導電性の吸盤を被塗物に対して吸着させることで、保持具を被塗物に対して連結するとともに、この導電性吸盤を被塗物アース用導電手段の被塗物側接続部として被塗物に対し電気的に接続する。
【0021】
そして、この構成によれば、導電性吸盤の被塗物に対する吸着により、その導電性吸盤の被塗物に対する電気的接続を確実にすることができ、これにより、被塗物(特にその塗装対象面)を確実かつ安定的にアース状態にすることができる。
【0022】
また、被塗物に対する保持具連結部としての吸盤に導電性の別部材を被塗物アース用導電手段の被塗物側接続部として取り付けるのに比べ、吸盤構造を簡素にして、その製造も容易にすることができる。
【0023】
本発明の第5特徴構成は、第1〜第4特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記保持具に連結する前記先行塗装ロボット及び前記後行塗装ロボット夫々のアーム先端部をそれら塗装ロボット夫々の前記アース状態箇所にし、
前記先行塗装ロボット及び前記後行塗装ロボット夫々のアーム先端部に対する前記保持具の連結部を、前記被塗物アース用導電手段の前記ロボット側接続部にしてある点にある。
【0024】
この構成によれば、先行塗装ロボット及び後行塗装ロボット夫々のアーム先端部と保持具との連結箇所とは別の箇所で、保持具における被塗物アース用導電手段のロボット側接続部を先行塗装ロボット及び後行塗装ロボット夫々のアース状態箇所に対して電気的に接続するのに比べ、保持具と塗装ロボットとの間の部分を外観的に簡素にすることができる。
【0025】
そして、この簡素化より、保持具と塗装ロボットとの間の部分における余剰噴霧塗料の付着を抑止することができ、これにより、その付着塗料が乾燥した後に剥離飛散して被塗物に再付着することによる被塗物塗装品質の低下を効果的に抑止することができる。
【0026】
また、先行塗装ロボット及び後行塗装ロボット夫々のアーム先端部と保持具との連結箇所とは別の箇所で、保持具における被塗物アース用導電手段のロボット側接続部を先行塗装ロボット及び後行塗装ロボット夫々のアース状態箇所に対して電気的に接続するのでは、塗装ロボットのアーム動作により被塗物と保持具との連結体を静電塗装機に対して移動させたり姿勢変更させたりすることが原因で、被塗物アース用導電手段のロボット側接続部と先行塗装ロボット及び後行塗装ロボット夫々のアース状態箇所との電気的接続が不測に破断してしまう虞もあるが、上記構成によれば、そのような不測の破断事故も効果的に回避することができる。
【0027】
本発明の第6特徴構成は、第1〜第5特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記保持具において前記被塗物に対する連結部と前記先行塗装ロボット及び前記後行塗装ロボット夫々のアーム先端部に対する連結部との間の途中に位置する保持具形成部材を導電材で形成し、
この保持具形成部材を、前記被塗物アース用導電手段において前記被塗物側接続部と前記ロボット側接続部とを電気的接続状態にする中継導電部にしてある点にある。
【0028】
この構成によれば、保持具における上記保持具形成部材を、被塗物アース用導電手段において被塗物側接続部とロボット側接続部とを電気的接続状態にする中継導電部として兼用するから、換言すれば、上記保持具形成部材を利用して被塗物アース用導電手段の被塗物側接続部とロボット側接続部との間での電気的導通を可能にするから、被塗物アース用導電手段の被塗物側接続部とロボット側接続部との間での電気的導通を保持具形成部材とは別の専用導電部材により形成するのに比べ、被塗物アース用導電手段を含めた保持具の構造を簡素にすることができる。
【0029】
本発明の第7特徴構成は、第1〜第6特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記被塗物において前記被塗物アース用導電手段の前記被塗物側接続部を接続する箇所から前記被塗物の塗装対象面にわたるアース用補助導電手段を設け、
前記被塗物アース用導電手段の前記被塗物側接続部は、前記被塗物に対する電気的接続として、前記被塗物に設けた前記アース用補助導電手段に対して電気的に接続する構成にしてある点にある。
【0030】
この構成では、被塗物の塗装対象面を、被塗物に設けた上記アース用補助導電手段、及び、保持具における被塗物アース用導電手段を通じて、保持具連結状態の塗装ロボットにおけるアース状態箇所に対し電気的に接続する。
【0031】
したがって、この構成によれば、被塗物において被塗物アース用導電手段の被塗物側接続部を接続する箇所を塗装対象面から離れた任意の箇所に設定することができ、これにより、被塗物の塗装対象面に対する静電塗装において、被塗物に接続した被塗物アース用導電手段が障害にならないようにする等のことが可能になる。
【0032】
本発明の第8特徴構成は、第7特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記アース用補助導電手段が、前記被塗物の表面に対して貼り付けた導電性粘着テープ、又は、前記被塗物の表面に塗布した導電剤の塗布層、又は、粘着テープにより前記被塗物の表面に固定した導電性線材である点にある。
【0033】
即ち、これら導電性粘着テープや導電剤の塗布層あるいは粘着テープにより固定する導電性線材であれば、被塗物において前記アース用補助導電手段を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】静電塗装設備における塗装ブースの正面図
図2図1におけるII−II線矢視図
図3図1におけるIII−III線矢視図
図4】保持具の拡大図
図5】アーム先端部と保持具との連結構造を示す拡大断面図
図6】被塗物と保持具との連結状態を示す斜視図
図7】別実施形態のアース用補助導電手段を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1図3は、被塗物W(本例では自動車部品である樹脂製バンパ)を塗装する静電塗装設備の塗装ブース1を示し、この塗装ブース1では、被塗物Wを4つの塗装域2(第1〜第4塗装域2a〜2d)に対して順次に搬入することで各塗装域2の上部に装備の塗装機4(噴霧塗装機4a、静電塗装機4b〜4d)により被塗物Wの塗装対象面(本例では樹脂性ダンパの前面部)を順次に塗装する。
【0036】
具体的には、第1塗装域2aでは、噴霧塗装機4aによる導電性プライマの噴霧により搬入被塗物Wの塗装対象面にプライマ塗装を施す。
【0037】
続いて、第2塗装域2bでは、プライマ塗装した後の搬入被塗物Wの塗装対象面に対して静電塗装機4bにより第1ベース塗料の静電塗装を施す。
【0038】
続いて、第3塗装域2cでは、第1ベース塗料を塗装した被塗物Wの塗装対象面に対して静電塗装機4cにより第2ベース塗料の静電塗装を施す。
【0039】
続いて、第4塗装域2dでは、第2ベース塗料を塗装した被塗物Wの塗装対象面に対し静電塗装機4cによりクリア塗料の静電塗装を施す。
【0040】
そして、これら塗装が終了した被塗物Wは乾燥炉3に送って焼付乾燥処理する。
【0041】
なお、各塗装域2の塗装機4は、ほぼ鉛直な下向き姿勢で塗装域2の上部に配置してある。
【0042】
塗装域列の横一側には、各塗装域2に対して各別に隣接させたロボット設置域5を塗装域並び方向に並べて配置してあり、これらロボット設置域5の夫々には隣接する対応塗装域2において被塗物Wを保持する塗装ロボット6(第1〜第4塗装ロボット6a〜6d)を設置してある。
【0043】
これら塗装ロボット6の夫々にはアース線35を接続してあり、このアース線35の接続により各塗装ロボット6のアーム先端部7aはアース状態(電気的接地状態)になる。
【0044】
互いに隣り合う2つの塗装域2は夫々、被塗物Wの進行方向において上手側に位置する先行塗装域と被塗物Wの進行方向において下手側に位置する後行塗装域との関係にある。
【0045】
具体的には、第1塗装域2aが先行塗装域であるのに対して第2塗装域2bが後行塗装域となり、第2塗装域2bが先行塗装域であるのに対して第3塗装域2cが後行塗装域となり、第3塗装域2cが先行塗装域2であるのに対して第4塗装域2dが後行塗装域となる。
【0046】
この先行・後行の関係は、塗装機4、ロボット設置域5、塗装ロボット6の夫々についても同様である。
【0047】
各塗装域2において、被塗物Wは塗装ロボット6におけるアーム7の先端部7aに枝状の保持具8を介して連結することで保持する。
【0048】
この保持具8には、図4に示すように、被塗物Wに対する連結部として被塗物Wに吸着させる複数の吸盤9を設けてある。
【0049】
これら吸盤9は、被塗物Wにおける複数の連結対象箇所(本例ではバンパ前部における両端部位夫々の背面側箇所、及び、バンパ両側部夫々における背面側箇所の計4か所)に対応させた配置で保持具8に設けてある。
【0050】
保持具8は金属製パイプ材で形成してあり、このパイプ材の内部孔(パイプ穴)は、吸盤9の内部空気を吸引手段(図示省略)により吸引する吸引路10にしてある。
【0051】
即ち、この吸引路10を通じて吸盤9の内部空気を吸引手段により吸引することで、吸盤9を被塗物Wに吸着させ、これにより、被塗物Wに保持具8を連結する。
【0052】
吸引路10は、吸引手段を接続する吸引口10aと、その吸引口10aに連なる主吸引路10bと、その主吸引路10bから分岐して各吸盤9の内部に開口する分岐吸引路10cとからなる。
【0053】
主吸引路10bには、各吸盤9の内部から吸引口10aに向かう空気流(即ち、吸引口10aに接続した吸引手段による空気吸引)を許容するのに対して、逆向きの空気流(即ち、吸引口10aから各吸盤9の内部に向かう空気流)を遮断するボール式等の逆止弁11を設けてある。
【0054】
つまり、吸引手段による空気吸引により各吸盤9を被塗物Wに吸着させた後は、吸引手段を吸引口10aから離脱させた状態においても、この逆止弁11により空気の逆流(換言すれば、各吸盤9の大気開放)を阻止することで、各吸盤9の被塗物Wに対する吸着状態を保って保持具8と被塗物Wとの連結状態を保つ。
【0055】
保持具8には各吸盤9に対するカバー12を設けてあり、このカバー12は、吸盤9が非吸着状態で伸長した状態にあるときには、吸盤9の先端吸着部がカバー12の囲い領域から突出し、吸盤9が吸着状態で収縮した状態にあるときには、吸盤9の先端吸着部がカバー12の囲い領域内方側に引退する構成にしてある。
【0056】
つまり、このカバー12を設けることで、被塗物Wに対する吸盤9の吸着を許しながらも、塗装機4からの余剰噴霧塗料(オーバースプレー塗料)が吸盤9に付着することを防止する。
【0057】
一方、各塗装ロボット6のアーム先端部7aを保持具8に連結するアーム・保持具連結構造としては、図5に示すように、各塗装ロボット6のアーム先端部7aに連結用孔13を設け、そして、この連結用孔13に対して差し込み嵌合させる連結用凸部14を保持具8に形成してある。
【0058】
各アーム先端部7aの連結用孔13には、円筒状の内周面を有する直孔部13aと、孔入口側ほど拡径する円錐状のテーパ状内周面を有するテーパ状入口部13bとを同芯配置で形成してある。
【0059】
これに対し、保持具8の連結用凸部14には、連結用孔13の直孔部13aに嵌合する柱状先端部14aと、連結用孔13のテーパ状入口部13bに嵌合するテーパ状段部14bとを同芯配置で形成してある。
【0060】
つまり、各アーム先端部7aの連結用孔13に対して保持具8の連結用凸部14を差し込み嵌合させる際には、連結用凸部14の柱状先端部14aを連結用孔13のテーパ状入口部13bにおけるテーパ状内周面に摺接させることで連結用凸部14を円滑に連結用孔13の中心に案内する。
【0061】
そして、この差し込み嵌合が完了した状態においては、連結用孔13の直孔部13aにおける円筒状内周面に対して連結用凸部14の柱状先端部14aにおける円柱状外周面を面接触させるとともに、連結用孔13のテーパ状入口部13bにおけるテーパ状内周面に対して連結用凸部14のテーパ状段部14bにおけるテーパ状外周面を面接触させ、これにより、各塗装ロボット6のアーム先端部7aを保持具8に対して高い連結精度で確実に連結する。
【0062】
なお、保持具8における吸引路10の吸引口10aは、アーム先端部7aと保持具8との連結接合面(具体的には連結用凸部14の先端面部)に開口させてある。
【0063】
各アーム先端部7aの連結用孔13には、その連結用孔13に差し込み嵌合させた保持具8の連結用凸部14に対して吸着作用させる永久磁石15を設けるとともに、その連結用孔13とそれに差し込み嵌合させた連結用凸部14との間に対して空気吸引力を及ぼすアーム側吸引路16を開口させてある。
【0064】
つまり、これら永久磁石15による磁気力、及び、アーム側吸引路16を通じて付与される空気吸引力により、連結用孔13と連結用凸部14との差し込み嵌合状態を保持し、これにより、各塗装ロボット6のアーム先端部7aと保持具8との連結状態を保持する。
【0065】
各アーム先端部7aの連結用孔13には、保持具連結用のアーム側吸引路16とは別に、それらアーム先端部7aと保持具8との連結接合面である連結用孔13の内面に開口して、アーム先端部7aと保持具8との連結(即ち、連結用孔13に対する連結用凸部14の差し込み嵌合)により閉塞状態となる検出用空気路17を形成してある。
【0066】
また、各塗装ロボット6には、アーム先端部7aと保持具8との連結で閉塞状態となった検出用空気路17に対し圧縮空気の供給により所定の正圧を印加する圧力印加手段(図示省略)、及び、この検出用空気路17における空気圧力を検出する圧力検出手段18を装備してある。
【0067】
つまり、被塗物Wと保持具8との連結体が他物と接触するなどして、各塗装ロボット6の各アーム先端部7aと保持具8との連結状態に異常が生じたり、保持具8に異常外力が作用したときには、それに伴う検出用空気路17の開放で検出用空気路17の印加正圧が低下するようにし、この印加正圧の低下を圧力検出手段18により検知することで、上記の連結異常や異常外力を検出する。
【0068】
そして、この圧力検出手段18により異常が検出されたときには、制御手段19が各塗装ロボット6の動作を緊急停止したり、警報を発するなどの所定の保安処理を実行する。
【0069】
連結用孔13の内面において検出用空気路17の開口部には、その開口部を囲うリング状のシール材(図示省略)を取り付けてあり、このシール材により、アーム側吸引路16を通じて空気吸引力が付与される領域と、検出用空気路17を通じて正圧が印加される領域とを仕切ってある。
【0070】
上記制御手段19は、各塗装ロボット6を予め設定された動作プログラムに従って自動動作させるものであり、各塗装域2では、上記の如く各塗装ロボット6のアーム先端部7aに保持具8を介して被塗物Wを連結した状態で、それら塗装ロボット6の自動動作により被塗物Wを塗装機4に対して変位させながら、それら塗装機4からの下向き塗料噴霧により被塗物Wを塗装する。
【0071】
また、この塗装において、制御手段19は、被塗物Wにおける各時点の塗装箇所を塗装機4の下向き姿勢に対して垂直な水平姿勢を保つ状態に被塗物Wを姿勢変化させながら、被塗物Wを塗装機4に対して変位させる構成にしてある。
【0072】
隣り合うロボット設置域5の境界部で各塗装ロボット6の間には、隣り合う塗装ロボット6どうしが被塗物Wの受け渡しを行う受渡部20を設けてあり、先行塗装域2での塗装が終了した被塗物Wは、この受渡部20を経て後行塗装域2に送られる。
【0073】
具体的には、制御手段19は、先行塗装域2での先行塗装の終了後、被塗物Wと保持具8との連結体を先行塗装ロボット6の動作により先行塗装ロボット6と後行塗装ロボット6との間の受渡部20に保持させて、被塗物Wと保持具8との連結は保ったままの状態で、先行塗装ロボット6のアーム先端部7aと保持具8との連結を解除する。
【0074】
そして、先行塗装ロボット6のアーム先端部7aを受渡部20から退避移動させた後、後行塗装ロボット6の動作により後行塗装ロボット6のアーム先端部7aを、被塗物Wとの連結が保たれたままの状態で受渡部20に保持されている保持具8に連結させ、これに続き後行塗装域2での後行塗装に移行する。
【0075】
なお、各塗装ロボット6のアーム先端部7aには、保持具連結用のアーム側吸引路16を通じた空気吸引を停止した状態で、永久磁石15の磁気力に抗し連結用孔13から連結用凸部14を離脱させてアーム先端部7aと保持具8との連結を解除する連結解除手段(図示省略)を装備してある。
【0076】
即ち、制御手段19は、アーム側吸引路16を通じた空気吸引を停止するとともに、この連結解除手段を自動操作することで、受渡部20において先行塗装ロボット6のアーム先端部7aと保持具8との連結を解除する。
【0077】
第1塗装域2aに搬入する被塗物Wは、作業者や他のロボットにより、予め保持具8を連結した状態で第1塗装域2a近傍の搬入部21に保持させ、これに対し、第1塗装域2a用の第1塗装ロボット6aの動作により、その第1塗装ロボット6aのアーム先端部7aを、被塗物Wとの連結が保たれた状態で搬入部21に保持されている保持具8に連結し、これに続き、第1塗装域2aでのプライマ塗装に移行する。
【0078】
また、最終の第4塗装域2dでのクリア塗装を終了した被塗物Wは保持具8とともに第4塗装域2d用の第4塗装ロボット6dの動作により、第4塗装域2dの近傍で搬送台車22に載置して、第4塗装ロボット6dのアーム先端部7aと保持具8との連結を解除し、その後、保持具8及び搬送台車22とともに乾燥炉3に送る。
【0079】
そして、この際、乾燥炉3での熱環境により樹脂性の被塗物Wが軟化するのに対し、保持具8における各吸盤9の内部負圧を大気開放することで被塗物Wにおける吸盤吸着部位の変形を防止する。
【0080】
樹脂製の被塗物Wを第1塗装域2aに続く第2〜第4塗装域2b〜2dにおいて静電塗装機4b〜4dにより順次に静電塗装することに対し、保持具8には、それに連結した被塗物Wをアース状態(電気的接地状態)にするための被塗物アース用導電手段36を装備してあり、この被塗物アース用導電手段36を樹脂製の被塗物Wに対して電気的に接続することで、第2〜第4塗装域2b〜2dの夫々において被塗物Wの塗装対象面を、静電塗装機4b〜4dからの噴霧帯電塗料粒子に対する電気的な引き付け作用が生じるアース状態にする。
【0081】
具体的には、被塗物Wに対する連結部として保持具8に取り付けた複数の吸盤9のうちの1つの吸盤9aの内部に、その吸盤9aが被塗物Wに吸着して収縮側に弾性変形するのに伴い、被塗物Wに対して電気的に接触した状態で圧縮側に弾性変形する導電材製の円錐状つるまきバネ37を装備してあり、このバネ37を保持具8における被塗物アース用導電手段36の被塗物側接続部にしてある。
【0082】
また、各塗装ロボット6のアーム先端部7aが、その塗装ロボット6に対するアース線35の接続によりアース状態箇所となるのに対し、各アーム先端部7aに対する保持具8の連結部である導電材製の連結用凸部14を、保持具8における被塗物アース用導電手段36のロボット側接続部にしてある。
【0083】
そして、バネ37を装備する吸盤9aの奥部において導電材製のバネ37は保持具8の形成材である金属製パイプ材に対し金属ボルトなどにより連結して電気的に接続し、また、保持部8における導電材製の連結用凸部14は保持具8の形成材である金属製パイプ材に対し溶接等により連結して電気的に接続してある。
【0084】
つまり、保持具8において吸盤9a(即ち、被塗物Wに対する連結部)と連結用凸部14(即ち、アーム先端部7aに対する連結部)との間の途中に位置する保持具形成部材を、被塗物アース用導電手段36において被塗物側接続部(即ち、吸盤9aにおけるバネ37)とロボット側接続部(即ち、連結用凸部14)とを電気的に接続する中継導電部にしてある。
【0085】
換言すれば、保持具8を形成する金属製パイプ材を利用して被塗物アース用導電手段36の被塗物側接続部(吸盤9aにおけるバネ37)とロボット側接続部(連結用凸部14)との間での電気的導通を可能にしてある。
【0086】
一方、第1塗装域2aでの噴霧塗装機4aによるプライマ塗装に先立ち、樹脂性の被塗物Wには、図6に示すように、アース用補助導電手段としての導電性粘着テープ38を、被塗物Wの塗装対象面a(本例では樹脂性バンパの前面)における縁部から被塗物Wの背面(即ち、塗装対象面に対する裏面)におけるバネ37付き吸盤9aの吸着対象箇所にわたらせて貼付けてある。
【0087】
これにより、保持具8における4つの吸盤9を被塗物Wに吸着させて保持具8を被塗物Wに連結した状態では、吸盤9aにおけるバネ37が被塗物アース用導電手段36の被塗物側接続部として吸盤9aの吸着対象箇所で被塗物Wにおける導電性粘着テープ38の一端部に対して電気的に接続される。
【0088】
続いて、第1塗装域2a近傍の搬入部21に保持させた被塗物連結状態の保持具8に対して、第1塗装域2a用の第1塗装ロボット6aの動作により、その第1塗装ロボット6aのアーム先端部7aを連結した状態では、保持具8における連結用凸部14が被塗物アース用導電手段36のロボット側接続部として第1塗装ロボット6aのアース状態箇所であるアーム先端部7aに対して電気的に接続されることで、被塗物Wにおける導電性粘着テープ38が、保持具8における被塗物アース用導電手段36を通じてアース状態(電気的接地状態)になる。
【0089】
そして、この状態において被塗物Wと保持具8との連結体を第1塗装ロボット6aにより保持した状態で、第1塗装域2aの噴霧塗装機4aにより被塗物Wの塗装対象面aに導電性プライマが塗装されると、被塗物Wの塗装対象面aに形成される導電性プライマの塗布層が、被塗物Wにおける導電性粘着テープ38及び保持具8における被塗物アース用導電手段36を通じてアース状態になる。
【0090】
その後、被塗物Wと保持具8との連結体が受渡部20を経て第1塗装ロボット6aから第2塗装域2b用の第2塗装ロボット6bに受け渡された状態では、先に被塗物Wの塗装対象面aに形成された導電性プライマの塗布層は、被塗物Wにおける導電性粘着テープ38、及び、保持具8における被塗物アース用導電手段36を通じ第2塗装ロボット6bのアース状態箇所であるアーム先端部7aに対して電気的に接続されることでアース状態になる。
【0091】
即ち、このことにより、第2塗装域2bでは被塗物Wに対する先行静電塗装として、被塗物Wと保持具8との連結体を第2塗装ロボット6bにより保持した状態で、先行静電塗装機としての静電塗装機4bにより被塗物Wの塗装対象面aにおける導電性プライマの塗装面上に第1ベース塗料を静電塗装することが可能になる。
【0092】
これと同様して、被塗物Wと保持具8との連結体が受渡部20を経て第2塗装ロボット6bから第3塗装域2c用の第3塗装ロボット6cに受け渡された状態や、第3塗装ロボット6cから第4塗装域2d用の第4塗装ロボット6dに受け渡された状態では、被塗物Wの塗装対象面aに形成された導電性プライマの塗布層が被塗物Wにおける導電性粘着テープ38及び保持具8における被塗物アース用導電手段36を通じ第3塗装ロボット6cや第4塗装ロボット6dのアース状態箇所であるアーム先端部7aに対して電気的に接続されることでアース状態になる。
【0093】
そして、このことにより、第3塗装域2cでは、第2塗装域2bでの先行静電塗装に続く後行静電塗装として、被塗物Wと保持具8との連結体を第3塗装ロボット6cにより保持した状態で、後行静電塗装機としての静電塗装機4cにより被塗物Wの塗装対象面aにおける第1ベース塗料の塗装面上に第2ベース塗料を静電塗装することが可能になる。
【0094】
また、第4塗装域2dでは、第2,第3塗装域2b,2cでの先行静電塗装に続く後行静電塗装として、被塗物Wと保持具8との連結体を第4塗装ロボット6dにより保持した状態で、後行静電塗装機としての静電塗装機4dにより被塗物Wの塗装対象面aにおける第2ベース塗料の塗装面上にクリア塗料を静電塗装することが可能になる。
【0095】
要するに、本例の静電塗装設備では、被塗物Wに保持具8を連結するのに伴い、保持具8における被塗物アース用導電手段36の被塗物側接続部が被塗物Wに対して電気的に接続される。
【0096】
これに続いて、被塗物連結状態の保持具8が先行塗装ロボット6のアーム先端部7aに連結されると、保持具8における被塗物アース用導電手段36のロボット側接続部が先行塗装ロボット6のアース状態箇所に対し電気的に接続されて、被塗物Wがアース状態になり、この状態で先行静電塗装機4による先行静電塗装が可能になる。
【0097】
そして、この先行静電塗装に続き、被塗物連結状態の保持具8が先行塗装ロボット6のアーム先端部7aに対する連結状態から後行塗装ロボット6のアーム先端部7aに対する連結状態に移行するのに伴い、保持具8における被塗物アース用導電手段36のロボット側接続部が先行塗装ロボット6のアース状態箇所に対する電気的接続状態から後行塗装ロボット6のアース状態箇所に対する電気的接続状態に切り換わり、これにより、被塗物Wが再びアース状態になって、後行静電塗装機4による後行静電塗装が可能になるようにしてある。
【0098】
即ち、このようにすることで、塗装ロボット6どうしの間での被塗物Wの受け渡しの度に作業員が塗装ブース1に入って被塗物Wに対するアース線の接続替え操作を行うことを不要にしてある。
【0099】
次に各塗装域2及び各ロボット設置域5に対する換気設備について説明すると、各塗装域2とそれに隣接する各ロボット設置域5との間には仕切り壁24を設け、この仕切り壁24には、ロボット設置域5に設置した塗装ロボット6のアーム7を対応塗装域2へ延出させる作業用開口24aを形成してある。
【0100】
また、各ロボット設置域5の天井懐部には、空調機(図示省略)からロボット設置域用の給気路25aを通じて供給される換気用空気saを受け入れるロボット設置域用の給気チャンバ26を設けてある。
【0101】
そして、この給気チャンバ26の下壁を兼ねる各ロボット設置域5の天井部には、ロボット設置域用の給気チャンバ26に受け入れた換気用空気saを各ロボット設置域5に吹き出す給気口27を設けてある。
【0102】
一方、各ロボット設置域5における天井懐部の塗装域側部分には、同空調機から塗装域用の給気路25bを通じて供給される換気用空気sbを受け入れる塗装域用の給気チャンバ28を設けてある。
【0103】
また、この塗装域用の給気チャンバ28から各塗装域2の一側壁2wまで伸びる2本のソックフィルタ29(円筒状フィルタ)を設け、これらソックフィルタ29は、平面視において両ソックフィルタ29どうしの間の中央部に噴霧手段4が位置する状態に配置してある。
【0104】
つまり、各塗装域2については、塗装域用の給気チャンバ28に受け入れた換気用空気sbを、これら2本のソックフィルタ29から各塗装域2の上部に供給する。
【0105】
各塗装域2の上部において2本のソックフィルタ29の上側には、平面視において各塗装域2のほぼ全域にわたるダクト幅で、塗装域用の給気チャンバ28から各塗装域2の一側壁2wまで伸びる渡りダクト30を設けてある。
【0106】
この渡りダクト30の先端部における下面には、各塗装域2の一側壁2wに沿って下向きに流れるエアカーテンfaを形成するエアカーテン用の給気口31を形成してある。
【0107】
つまり、塗装域用の給気チャンバ28に受け入れた換気用空気sbの一部は渡りダクト30を通じエアカーテン用の給気口31から下向きに吐出させることで、各塗装域2の一側壁2wに沿って下向きに流れるエアカーテンfaを形成する。
【0108】
エアカーテン用給気口31は各塗装域2の幅方向において噴霧手段4と同軸上に配置し、また、エアカーテン用給気口31の幅寸法d(換言すれば、エアカーテンfaの幅寸法)は、塗装域一側壁2wの幅寸法より小さくて、2本のソックフィルタ29どうしの離間寸法よりも小さい寸法にしてある。
【0109】
各塗装域2の下方には、その塗装域2への空気供給及び対応するロボット設置域5への空気供給に伴い塗装域2から下向きに排出される空気eaを受け入れて、その排出空気eaに含まれる余剰噴霧塗料を分離捕集する捕集部32を設けてある。
【0110】
この捕集部32で余剰噴霧塗料が分離されて浄化した排出空気eaは排気路33を通じて排気ファン(図示省略)により排出される。
【0111】
したがって、各ロボット設置域5は隣接する塗装域2よりも高圧に保たれて、これらロボット設置域5からは、対応塗装域2との間の仕切り壁24に形成された作業用開口24aを通じて対応塗装域2に流入する横向きないし斜め下向きの空気流raが形成され、この空気流raにより各塗装域2においてロボット設置域5の側への余剰噴霧塗料の飛散を抑止する。
【0112】
つまり、噴霧手段4による下向き塗料噴霧により塗料飛散が抑制されることとも相俟って、上記空気流raによりロボット設置域5の側への余剰噴霧塗料の飛散を抑止することで、塗装ロボット6の本体部に対する余剰噴霧塗料の付着はもとより塗装ロボット6のアーム7に対する余剰噴霧塗料の付着も効果的に防止する。
【0113】
また、各塗装域2の一側壁2wに沿って下向きに流れるエアカーテンfaを形成することで、塗装域2の一側壁2wに向かう余剰噴霧塗料はエアカーテンfaにより捕捉し、これにより、各塗装域2の一側壁2wに対する余剰噴霧塗料の付着も確実に防止する。
【0114】
即ち、上記の如く噴霧手段4による下向き塗料噴霧により塗料飛散が抑制されることで、塗装域2の一側壁2wに向かう余剰噴霧塗料の拡がり幅も小さく抑制され、このことから、エアカーテンfaが幅寸法dの小さいものであっても、各塗装域2の一側壁2wに対する塗料付着は効果的に防止することができる。
【0115】
なお、隣り合う塗装域2どうしは隔壁34又はエアカーテンにより仕切ってあり、これにより、隣り合う塗装域2どうしの間(即ち、先行塗装域と後行塗装域との間)での余剰噴霧塗料の相互移動を防止する。
【0116】
また、隣り合うロボット設置域5どうしはそれらの並び方向において互いに開放させ、あるいは、仕切るにしてもエアカーテンにより仕切るに止め、これにより隣り合う塗装ロボット6どうしの間(即ち、先行塗装ロボットと後行塗装ロボットとの間)での受渡部20を介した被塗物Wの受渡しを容易にする。
【0117】
〔別実施形態〕
前述の実施形態では、被塗物Wにおいて被塗物アース用導電手段36の被塗物側接続部を接続する箇所から被塗物Wの塗装対象面aにわたらせるアース用補助導電手段として、導電性粘着テープ38を被塗物Wに貼設したが、これに代え、アース用補助導電手段として導電性塗料などの導電剤の塗布層を被塗物Wに設けるようにしてもよい。
【0118】
また、図7に示すように、アース用補助導電手段としてワイヤなどの導電性線材39を用い、この導電性線材39の一端部を、被塗物Wにおいて被塗物アース用導電手段36の被塗物側接続部を接続する箇所に対して電気的に接続する状態で導電性粘着テープ40aなどにより被塗物Wの表面に固定するとともに、その導電性線材39の他端部を被塗物Wの塗装対象面aに対して電気的に接続する状態で導電性粘着テープ40bなどにより被塗物Wの表面に固定するようにしてもよい。
【0119】
被塗物Wと保持具8との間の連結構造には、前述の実施形態で示した吸盤9による連結構造に限らず、例えば、保持具8に設けた挟持具により被塗物Wを挟持する連結構造や、嵌合又は係合により被塗物Wと保持具8とを連結する連結構造、あるいは、磁気力又は吸引力により被塗物Wと保持具8との連結状態を保持する連結構造など、種々の形態の連結構造を採用することができる。
【0120】
また、塗装ロボット6のアーム先端部7aと保持具8との間の連結構造にも、前述の実施形態で示した連結構造に限らず、例えば、アーム先端部7aに設けた挟持具により保持具8を挟持する連結構造など、種々の形態の連結構造を採用することができる。
【0121】
前述の実施形態では、被塗物Wに対する連結部として保持具8に設ける吸盤9aに導電性バネ37を装備し、この導電性バネ37を被塗物アース用導電手段36の被塗物側接続部にする例を示したが、これに代え、被塗物Wに対する連結部として導電性の吸盤を保持具8に設け、この導電性の吸盤そのものを被塗物アース用導電手段36の被塗物側接続部にするなど、被塗物アース用導電手段36の被塗物側接続部は、被塗物Wに対する電気的接続構造について種々の構造変更が可能である。
【0122】
また、前述の実施形態では、塗装ロボット6のアーム先端部7aに対する連結部として保持具8に設ける連結用凸部14を被塗物アース用導電手段36のロボット側接続部にする例を示したが、これに限らず、被塗物アース用導電手段36のロボット側接続部も、塗装ロボット6のアース状態箇所に対する電気的接続構造について種々の構造変更が可能である。
【0123】
さらに、前述の実施形態では、被塗物Wに対する保持具8の連結部を被塗物アース用導電手段36の被塗物側接続部にするとともに、塗装ロボット6のアーム先端部7aに対する保持具8の連結部を被塗物アース用導電手段36のロボット側接続部にする例を示したが、これに代え、保持具8において被塗物Wに対する連結部以外の部分を被塗物アース用導電手段36の被塗物側接続部にしてもよい。
【0124】
なお、その場合、被塗物アース用導電手段36の被塗物側接続部は、人為操作により被塗物Wに対して接続する構造、あるいは、被塗物Wに対する保持具8の連結に伴い自動的に被塗物Wに対して接続される構造のいずれの構造にしてもよい。
【0125】
同様に、保持具8において塗装ロボット6のアース先端部7aに対する連結部以外の部分を、被塗物連結状態の保持具8が先行塗装ロボット6のアーム先端部7aに対する連結状態から後行塗装ロボット6のアーム先端部7aに対する連結状態に移行するのに伴い、先行塗装ロボット7のアース状態箇所に対する電気的接続状態から後行塗装ロボット6のアース状態箇所に対する電気的接続状態に切り換わる被塗物アース用導電手段36のロボット側接続部にしてもよい。
【0126】
被塗物アース用導電手段36のロボット側接続部を電気的に接続する塗装ロボット6のアース状態箇所は、塗装ロボット6のアーム先端部7aに限られるものではなく、塗装ロボット6におけるアーム先端部7a以外の箇所であってもよい。
【0127】
前述の実施形態では、保持具8において被塗物Wに対する連結部と塗装ロボット6のアーム先端部7aに対する連結部との間の途中に位置する保持具形成部材としての金属製パイプ材を、保持具8に装備する被塗物アース用導電手段36において被塗物側連結部とロボット側連結部とを電気的接続状態にする中間導電部として利用する例を示したが、これに代え、被塗物アース用導電手段36において被塗物側連結部とロボット側連結部とを電気的接続状態にする中間導電部を保持具形成部材とは別の専用導電材により形成してもよい。
【0128】
前述の実施形態では、被塗物Wと保持具8との連結体を塗装ロボット6どうしの間で受け渡すのに、その受け渡しの途中過程で被塗物Wと保持具8との連結体を受渡部20に保持させる例を示したが、これに代え、受渡部20を省略して被塗物Wと保持具8との連結体を先行塗装ロボット6から後行塗装ロボット6へ手渡し状態で直接に受け渡すようにしてもよい。
【0129】
本発明による静電塗装設備は、自動車部品の樹脂性バンパに限らず種々の被塗物Wに対する静電塗装に適用することができ、また、塗装ロボットどうしの間で受け渡す被塗物を確実にアース状態にするためには、被塗物が非導電性である場合に限らず被塗物が導電性である場合にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、塗装ロボットどうしの間で被塗物を受け渡す搬送形態を採りながら被塗物に対して複数の静電塗装を順次に施す静電塗装設備であれば、どのような被塗物に対する静電塗装設備にも適用することができる。
【符号の説明】
【0131】
6 塗装ロボット
7a アーム先端部,アース状態箇所
8 保持具
W 被塗物
4b〜4d 静電塗装機
36 被塗物アース用導電手段
14 アーム先端部に対する連結部、連結用凸部,ロボット側接続部
9a 被塗物に対する連結部、吸盤、被塗物側接続部
37 バネ、被塗物側接続部
38 アース用補助導電手段、導電性粘着テープ
39 アース用補助導電手段、導電性線材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7