(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されたような表示装置は、フレネルミラーを車両のウインドシールドまたはコンバイナと一体化し、あるいは貼り付けた状態で使用する。HUDユニットから出射した光の大部分は、前記フレネルミラーの面で反射して拡大され、表示像として運転者の視点の位置で視認される。しかし、実際にはフレネルミラーの面の手前に存在する封止材の表面や、フレネルミラーの後方に存在する基材等の面においても光の反射が発生し、これらの反射光が前記表示像の近傍に結像される。
【0007】
しかも、フレネルミラーの面で反射して結像される表示像は拡大されるのに対し、フレネルミラー以外の面で反射した光は等倍で結像されるので、前者の表示像と後者の像との間に明らかな違いが発生する。そのため、例えば特許文献1の
図5(a)のような表示像を表示する場合に、特許文献1の
図5(b)のように等倍二重像ゴーストが正規の表示像の近傍に現れる。したがって、表示像の視認性の低下や表示品質の低下が懸念される。
【0008】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、フレネルミラーの面で反射して結像される正規の表示像以外の等倍二重像ゴーストの発生を防止若しくは抑制することが可能な表示光投影用光学システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係る表示光投影用光学システムは、下記(1)〜(
4)を特徴としている。
(1) 表示光を出射する表示ユニットと、
前記表示ユニットから入射した表示光を拡大して反射し、外来光を透過するフレネルミラーと、を備え、
前記フレネルミラーは、
フレネル形状の複数の溝が形成されたフレネル形状面および前記外来光が入射される第1の面を有する第1部材と、
前記フレネル形状面に沿って形成されるハーフミラー層と、
前記表示ユニットからの表示光が入射される第2の面を有し、前記第1部材との間に前記ハーフミラー層を封止する第2部材と、
によって構成され、
前記第1の面及び前記第2の面は、互いに平行な平面であり、且つ、共に空気層と接しており、
前記第1部材及び前記第2部材の屈折率がほぼ同じ値であり、且つ、前記空気層側から前記第2の面に対してP偏光の表示光がブリュースター角の入射角で入射したときに前記第2の面及び前記フレネルミラー内部を透過した光がブリュースター角の入射角で前記第1の面に入射するように、前記第1部材及び前記第2部材の屈折率と前記空気層の屈折率との関係が設定されており、
前記表示ユニットは、前記第2の面に対し入射角がブリュースター角の近傍の角度となるP偏光の表示光を出射する、
表示光投影用光学システム。
【0010】
上記(1)の構成の表示光投影用光学システムによれば、「P偏光」の表示光を投影して表示像を形成するので、入射した表示光が前記ハーフミラー層以外の面で反射するのを抑制し、等倍二重像ゴーストの発生を抑制できる。偏光については、異なる物質間の境界面で光が反射するときの「入射面」と「電場または磁場の振動方向」との関係に基づき、「S偏光」と「P偏光」とに区別することができる。後述するように「P偏光」成分は「S偏光」に比べて反射率が小さくなる傾向があるので、「P偏光」のみを利用することにより、等倍二重像ゴーストの抑制が可能になる。
【0012】
更に、上記(
1)の構成の表示光投影用光学システムによれば、等倍二重像ゴーストの発生をより効果的に抑制できる。すなわち、「P偏光」の表示光を入射角がブリュースター角の近傍になる状態で第2の面に入射させることにより、第2の面における反射率がほぼ0になり、不要な反射光の発生を防止できる。
【0013】
(
2) 前記表示ユニットは、前記表示光を出射する光源と、
前記光源から出射された表示光を前記第2の面に対しP偏光に偏光させる偏光部材と、
を備える、
前記(1)
に記載の表示光投影用光学システム。
【0014】
上記(
2)の構成の表示光投影用光学システムによれば、「P偏光」以外の表示光を出射する光源を用いる場合であっても、偏光部材の働きにより、「S偏光」成分の光が第2の面に入射するのを防止して、不要な反射光の発生を抑制できる。
【0015】
(
3) 前記光源は、直線偏光の表示光を出射し、
前記偏光部材は、前記直線偏光の表示光を前記第2の面に対しP偏光に偏光させる半波長板である、
前記(
2)に記載の表示光投影用光学システム。
【0016】
上記(
3)の構成の表示光投影用光学システムによれば、半波長板の働きにより、光源が出射する直線偏光の表示光から「P偏光」を生成できるので、「S偏光」成分の光が第2の面に入射するのを防止して、不要な反射光の発生を抑制できる。
【0017】
(
4) 前記光源は、無偏光の表示光を出射し、
前記偏光部材は、前記無偏光の表示光を前記第2の面に対しP偏光に偏光させる偏光板である、
前記(
2)に記載の表示光投影用光学システム。
【0018】
上記(
4)の構成の表示光投影用光学システムによれば、偏光板の働きにより、光源が出射する無偏光の表示光から「P偏光」を生成できるので、「S偏光」成分の光が第2の面に入射するのを防止して、不要な反射光の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の表示光投影用光学システムによれば、フレネルミラーの面で反射して結像される正規の表示像以外の等倍二重像ゴーストの発生を防止若しくは抑制することが可能になる。すなわち、「P偏光」の表示光を投影して表示像を形成するので、入射した表示光が前記ハーフミラー層以外の面で反射するのを抑制し、前記等倍二重像ゴーストの発生を抑制できる。
【0020】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0023】
<表示光投影用光学システムの使用環境の具体例>
実施形態の表示光投影用光学システムを搭載した車両のダッシュボードおよびウインドシールドWS近傍の構成例を
図1に示す。また、
図1と同じ車両を側方側から視た縦断面における各部の配置状態を
図2に示す。
【0024】
図1及び
図2に示した例では、合わせガラスとして構成されている車両のウインドシールドWS(窓ガラス)に、中間層としてフレネルミラー封止体10が組み込まれている。また、このフレネルミラー封止体10にはフレネルミラー領域FMが形成されている。このフレネルミラー領域FMは、基本的にはハーフミラーの機能を有し、車室内側からフレネルミラー領域FMに入射した光は反射し、車外から
図2における右方向に向かってフレネルミラー領域FMに入射する光は透過する特性を有している。また、フレネルミラー領域FMはフレネルレンズにより拡大光学系を形成する。フレネルミラー封止体10の具体的な構成については、後で詳細に説明する。
【0025】
尚、
図1及び
図2の例では、フレネルミラー封止体10を車両のウインドシールドWSに組み込む場合を想定しているが、ウインドシールドWSから独立したHUD(ヘッドアップディスプレイ)装置用のコンバイナとして、ウインドシールドWSの近傍にフレネルミラー封止体10を設置しても良い。
【0026】
図1に示す車両においては、メータユニット21の前方のダッシュボード22の下方にHUDユニット20が配置されている。このHUDユニット20は、透過型液晶パネルおよび偏光板で構成されるフラットパネルディスプレイと、照明用の光源(バックライト)とを内蔵している。フラットパネルディスプレイの画面には、必要に応じて、例えば車速など運転に役立つ様々な情報が、文字、数字、記号などの可視情報として表示される。また、バックライトで画面を照明することにより、表示された可視情報の像を含む表示光をHUDユニット20から出射することができる。
【0027】
また、フラットパネルディスプレイが偏光板を内蔵しているので、HUDユニット20が出射する表示光は直線偏光になっている。更に、直線偏光からP偏光を得るために、HUDユニット20とフレネルミラー封止体10との間には後述する半波長板25が配置されている。
【0028】
HUDユニット20の上方のダッシュボード22の箇所には矩形形状の開口部22aが形成してある。HUDユニット20から出射された表示光は、開口部22aを経由して上方のウインドシールドWSに向かう。ウインドシールドWSのHUDユニット20からの表示光が入射する箇所に、上述のフレネルミラー領域FMが配置されている。
【0029】
したがって、HUDユニット20から出射された表示光は、ウインドシールドWSの面に入射し、フレネルミラー領域FMで反射して、想定される運転者の目の位置に相当するアイポイントEPに到達する。この表示光はフレネルミラー領域FMで反射するので、運転者が視認する表示像については、ウインドシールドWSよりも前方(例えば10m前方)の虚像結像面24に表示されているかのように虚像として結像される。また、フレネルミラー領域FMはウインドシールドWSと同様に車両の前方から車室内に向かって入射する光を透過するので、運転者はフレネルミラー領域FMを透かして車両前方の情景も視認することができる。つまり、車両前方の情景とHUDユニット20が表示する表示像とを重ねた状態で同時に視認することができる。
【0030】
フレネルミラー領域FMについては、フレネルミラーを採用することにより、厚みが小さくなりウインドシールドWSに組み込むことが可能になる。また、フレネルミラー領域FMが拡大光学系を形成しているので、HUDユニット20に拡大光学系を内蔵する必要がなくなる。また、HUDユニット20に拡大光学系を内蔵する場合と比べて、開口部22aの開口面積を小さくすることが可能になる。
【0031】
また、開口部22aの近傍にはルーバー23が配置されている。このルーバー23は、不要な外光が開口部22aの近傍で反射してアイポイントEPに向かうのを抑制する機能を有し、これによりHUD表示の視認性が向上する。
【0032】
<フレネルミラー封止体10の説明>
表示光投影用光学システムに含まれるフレネルミラー封止体10の構成および光路の例を
図3に示す。
図3に示したフレネルミラー封止体10は、HUDユニット20の表示光を投影するためのコンバイナとして構成されている。このコンバイナは、
図4(A)に示したフレネルレンズ11と同様の矩形形状を有し、
図1に示したフレネルミラー領域FMよりも大きいサイズに形成されている。
【0033】
図3に示すように、フレネルミラー封止体10は、その厚み方向に積層された複数の層で構成されている。具体的には、フレネルミラー封止体10は基板としてのフレネルレンズ11の他に、ハーフミラー層12、封止剤層13、透明プレート14、ARコート層15及び16を備えている。
【0034】
フレネルレンズ11のフレネル形状部11aの表面に、ハーフミラー層12が形成されている。具体的には、金属又は誘電体多層膜を表面に蒸着してハーフミラー層12を形成してある。本実施形態では、ハーフミラー層12における光の反射率が20%になるように構成している。形成するハーフミラー層12の厚みについては、100[nm]未満とする。
【0035】
また、本実施形態ではハーフミラー層12を形成する際に、フレネル形状部11aのフレネル立壁11bの箇所を蒸着対象から除外している。つまり、ハーフミラー層12は、フレネル形状部11aの複数の溝の各境界で厚み方向と平行な向きに延びるフレネル立壁11bの領域を除く面の全体に形成されている。この場合、フレネル立壁11bの箇所にハーフミラー層12が存在しないので、通常の透過や1回反射以外の光路を取るフレネル立壁11bでの反射が抑制され、この反射に起因する意図しない光線の発生が最小化される。これにより、フレア像の発生も低減される。
【0036】
封止剤層13は、フレネルレンズ11のフレネル形状部11aの凹凸を覆って平坦な面にするために設けてある。この封止剤層13は、例えば紫外線(UV)硬化樹脂のような透明な材料を充填して硬化させることにより形成される。また、封止剤層13を形成する材料については、屈折率(n3)がフレネルレンズ11とほぼ同じもののみに限定して使用する。
【0037】
封止剤層13の厚み方向の一方の面13aは平坦であり、フレネル形状部11a及びハーフミラー層12と密着した面13bは、フレネル形状部11aの凹凸を補完する表面形状に形成される。
【0038】
透明プレート14は、フレネルミラー封止体10の表面を保護するために設けてある。透明プレート14は、屈折率(n2)がフレネルレンズ11とほぼ同じ透明な材料を用いて構成してあり、薄板状に形成してある。
【0039】
図3に示すように、フレネルミラー封止体10の厚み方向の外側の2つの面には、それぞれ、AR(Anti Reflection)コート層15及び16が形成されている。したがって、外側からフレネルミラー封止体10に入射する光及びHUDユニット20から出射する光がこれらの表面で反射するのを抑制することができる。これにより、具体的には、等倍率のゴースト像発生や、内部乱反射によるハレーションを防止することができる。
【0040】
ARコート層15、16については、例えば誘電体多層膜を形成することにより反射防止処理を施すことができる。また、誘電体多層膜以外の方法として、ナノインプリントにより、例えばモスアイ構造の様な微細な凹凸を形成して反射防止機能を持たせることもできる。
【0041】
図4に示したフレネルミラー封止体10は、
図1及び
図2に示した例では、ウインドシールドWSに中間層として組み込まれ一体化されている。つまり、フレネルミラー封止体10のハーフミラー層12が、
図1及び
図2に示したフレネルミラー領域FMを形成している。また、ハーフミラー層12はフレネル形状部11aの形状により光学的な倍率を有するフレネルレンズと同等の光学特性を形成するので、HUDユニット20から入射する光に対して拡大光学系を形成する。これにより、ウインドシールドWSの前方の距離が離れた位置(虚像結像面24)に虚像を結像することができる。
【0042】
なお、
図1及び
図2に示した例では、フレネルミラー封止体10をウインドシールドWSと一体化しているが、ウインドシールドWSとは別の位置、例えばダッシュボード22上に独立したコンバイナを傾斜した状態で配置しても良い。
【0043】
<透過特性の説明>
図3には、フレネルレンズ11の材料の屈折率(n1)と、透明プレート14の材料の屈折率(n2)と、封止剤層13の材料の屈折率(n3)とを全て同等にした場合におけるフレネルミラー封止体10を示している。このように形成すると、フレネルレンズ11と封止剤層13との境界、並びに封止剤層13と透明プレート14との境界において、屈折率の違いに起因する光の屈折を抑制できる。なお、ウインドシールドWSにその中間層としてフレネルミラー封止体10を実装する場合には、ウインドシールドWSの材料の屈折率とフレネルレンズ11の材料の屈折率(n1)とを同等とすることにより、透明プレート14を用いず、ウインドシールドWSを透明プレート14として機能させることができる。
【0044】
このように屈折率を調節した場合、
図2に示すアイポイントEPで運転者が視認する車両前方の情景については、入射光がフレネルミラー領域FMを透過する場合であっても、光学的な倍率が発生せず、等倍の像として視認される。つまり、フレネルミラー領域FMを介して車両前方の情景を視認する場合と、それ以外のウインドシールドWS上の領域を介して視認する場合とで、視認される情景の像の大きさ、位置、形状などに違いが生じることがない。そのため、フレネルミラー領域FMを使用する場合でも、運転に必要な良好な視界を確保することができる。また、ARコート層15及び16がフレネルミラー封止体10の表面及び裏面における光の反射を抑制するので、等倍率のゴースト像の発生や、内部乱反射によるハレーションを防止できる。
【0045】
また、フレネルレンズ11を用いた拡大光学系を有するフレネルミラー封止体10をウインドシールドWS上又はその近傍に配置することにより、広い視野角度の虚像をHUDユニット20で表示可能になる。しかも、HUDユニット20側に拡大光学系を装備する必要がないので、HUDユニット20の小型化が可能になり、開口部22aの面積を減らすこともできる。
【0046】
<フレネルレンズ11の構成例>
フレネルミラー封止体10に含まれるフレネルレンズ11の構成例を
図4(A)、
図4(B)、および
図4(C)に示す。
図4(A)は平面図、
図4(B)は
図4(A)中のA−A線から視た断面図、
図4(C)は
図4(A)中のB−B線から視た断面図である。
【0047】
基板本体を構成するフレネルレンズ11は、屈折率(n1)が既知の透明な樹脂、ガラスなどの材料で薄板状に形成されている。また、フレネルレンズ11は厚み方向の一方の面にフレネル形状部11aが形成され、他方の面は平坦面11cになっている。
【0048】
本実施形態においては、
図4(A)に示すように、フレネルレンズ11の輪郭及び円周(31a、32a、33a、34a、35a、36a)が楕円形又はそれに近い形状の多数のフレネル溝31、32、33、34、35、及び36を有している場合について説明するが、フレネル溝31〜36が円形であっても、後述する反射面31b〜36bの傾斜角度(サグ角度)を溝の円周方向の位置の違いに応じて変化させることにより、光学系に存在する歪を抑制できる。
【0049】
フレネル溝の数や配置ピッチ等については必要とされる光学特性等の条件に応じて増減する必要がある。これらのフレネル溝31〜36は、フレネルレンズ11の中央部30を中心として同心円状に配置されている。
【0050】
図4(B)、及び
図4(C)に示すように、互いに隣接するフレネル溝31〜36の間は突出している。つまり、断面におけるフレネル形状部11aは鋸歯状の表面形状を呈し、反射面31b、32b、33b、34b、35b、及び36bは、フレネルレンズ11の厚み方向と直交する方向に対して傾斜した斜面として形成されている。また、互いに隣接するフレネル溝の反射面の境界にはフレネルレンズ11の厚み方向に延びるフレネル立壁11bがあるが、厚み方向と直交する方向の面ができないように、傾斜した反射面31b〜36bがほぼ連続的に形成されている。このような表面形状により、光学的にレンズを形成する。
【0051】
フレネル溝31〜36には、フレネル形状部11aの光反射特性に自由曲面特性が付与されるようになっている。また、フレネル溝31〜36の各々の反射面31b〜36bの傾斜角度(サグ角度)については、溝の円周方向の位置の違いに応じて、連続的に変化するように形成されている。
【0052】
なお、フレネル溝31〜36の各溝の深さ(VH、VV)を一定にする場合には、円周方向の位置の違いに応じた反射面31b〜36bの傾斜角度を連続的に変化させることにより、互いに隣接する溝の円周間のピッチ(PH、PV)が円周方向の位置に応じて変化し、結果的にフレネル溝31〜36の円周の形状が楕円形のような形状になる。
【0053】
図4(A)、
図4(B)、
図4(C)の例では、Y軸方向の寸法よりもX軸方向の寸法が大きい楕円形パターンであるため、A−A線断面における円周35a−36a間ピッチPVは、B−B線断面における円周35a−36a間ピッチPHよりも小さい。また、ピッチPHに相当する反射面36bの傾斜角度は、ピッチPVに相当する反射面36bの傾斜角度よりも小さい。尚、フレネルレンズ11が設置される位置やアイポイントEPとの相対的な位置関係などによっては、X軸方向の寸法よりもY軸方向の寸法が大きい楕円形パターンとなり得ることはもちろんである。
【0054】
また、反射面31b〜36bの傾斜角度(サグ角度)の変化に合わせて各溝の深さ(VH、VV)を可変にする場合には、互いに隣接する溝の円周間のピッチ(PH、PV)を一定にすることも可能である。この場合は、フレネル溝31〜36の形状を真円、もしくはそれに近い形状にした場合であっても、光反射特性に自由曲面特性を付与することができる。
【0055】
また、フレネル溝31〜36の円周の輪郭形状については、
図4(A)に示したような楕円形や円形に限らず、必要とされる自由曲面特性に合わせて、例えば等高線のような曲線形状を採用しても良い。
【0056】
例えば、HUD表示システムにおいて結像される表示像に像の縦方向サイズと横方向サイズとが異なるような歪みが生じる場合に、縦横の比率が調整された楕円形パターンのフレネルレンズ11を採用することにより、像の歪みや両眼視差を抑制し、高品位の表示を実現することができる。しかも、フレネルレンズ11が薄板状であるため小型化が可能である。
【0057】
図4(A)、
図4(B)、
図4(C)に示したように、フレネルレンズ11のフレネル形状部11aを特殊な形状に形成することにより、光の反射特性に自由曲面特性を付与することができ、多項式非球面の理想的なレンズ特性を実現できる。これにより、大型のレンズやミラーを採用しなくても、HUDシステムにおける結像性能、両眼視差、表示歪み等の改善を行い、表示品位を向上することができる。
【0058】
<等倍二重像ゴーストの説明>
図3に示したように、HUDユニット20から出射された表示光がフレネルミラー封止体10で反射してアイポイントEPに向かう場合に、アイポイントEPの位置で視認される像の例を
図5に示す。
【0059】
図3に示したように、HUDユニット20から出射された表示光は、互いに異なる複数の経路を経由してそれぞれアイポイントEPに到達する可能性がある。基本的には、HUDユニット20から出射された表示光は、透明プレート14、および封止剤層13を透過し、ハーフミラー層12の面で反射し、反射の際にフレネル形状部11aの形状により倍率が付与され拡大された状態でアイポイントEPに到達する。
【0060】
一方、透明プレート14の外側の面14aは屈折率が異なる空気層と接しているので、この境界で光の反射が発生する。したがって、HUDユニット20から出射された表示光の一部分は、透明プレート14の面14aで反射して拡大されることなくアイポイントEPに向かう。また、フレネルレンズ11の外側の面11cも屈折率が異なる空気層と接しているので、この境界でも光の反射が発生する。したがって、HUDユニット20から出射された表示光の一部分は、透明プレート14、封止剤層13、ハーフミラー層12、およびフレネルレンズ11を透過し、面11cで反射して、再びフレネルレンズ11、ハーフミラー層12、封止剤層13、および透明プレート14を透過して、拡大されることなくアイポイントEPに到達する。
【0061】
つまり、ハーフミラー層12で反射した表示光の像と、面14aで反射した表示光の像と、面11cで反射した表示光の像とがそれぞれ異なる光路を通って異なる位置に
図5に示すように結像する。また、ハーフミラー層12で反射した表示光は拡大した状態で結像するのに対し、面14aの反射光および面11cの反射光は等倍のまま結像するので、アイポイントEPで視認される像の中には、本来の拡大された表示光の像と、その近傍に等倍の大きさで影のように映り込む等倍二重像ゴーストとが
図5のように現れる。
【0062】
<等倍二重像ゴーストを低減する方法>
図3に示した表示光投影用光学システムにおいては、HUDユニット20が液晶表示パネルであり、その内部に偏光板が含まれているので、HUDユニット20から出射される表示光は直線偏光になっている。また、
図3に示すように、HUDユニット20の出射口とフレネルミラー封止体10との間に半波長板25が配置してある。そして、半波長板25から出射される表示光がP偏光になるように半波長板25と入射光との角度が調整されている。
【0063】
半波長(λ/2)板25は、公知のように、直交する偏光成分の間に位相差π(180度)を生じさせる複屈折素子であり、直線偏光の偏光方向を変えるために用いる。直線偏光が半波長板25に入射する際に、その振動方向が半波長板25の光軸方向に対して角度θで入射すると、振動方向が2θ回転させられた直線偏光として射出される。例えば、光軸方向に対して45度の角度で直線偏光が半波長板25に入射すると、半波長板25から射出される光はその振動方向が90度回転した直線偏光になる。
【0064】
偏光に関しては、異なる物質間の境界面で光が反射するときの「入射面」と「電場または磁場の振動方向」によって、S偏光とP偏光とに区別することができる。S偏光は電界成分が入射面に垂直な電磁波であり、P偏光は電界成分が入射面に平行(parallel)な電磁波である。
【0065】
図3に示した表示光投影用光学システムにおいては、HUDユニット20および半波長板25を用いてP偏光の表示光をフレネルミラー封止体10に入射させると共に、フレネルミラー封止体10に入射する際の表示光の入射角度、およびフレネルミラー封止体10から出射する際の表示光の出射角度がブリュースター角(Brewster's angle)とほぼ一致するように角度を調整してある。これにより、透明プレート14の面14aでの反射をほぼ0にすることができ、フレネルレンズ11の面11cでの反射もほぼ0にすることができる。したがって、上記の等倍二重像ゴーストを防止または低減できる。
【0066】
<偏光反射特性の具体例>
フレネルミラー封止体10の偏光反射特性の具体例を
図6に示す。
図6(A)はフレネルミラー封止体10における光路の例を示し、
図6(B)はこのフレネルミラー封止体の表側の面(14a)における反射特性を示し、
図6(C)フレネルミラー封止体の裏側の面(11c)における反射特性を示している。
図6(B)、
図6(C)の各グラフにおいて、横軸は入射角度(Angle of Incidence)を表し、縦軸は反射率(Reflective Ratio)を表す。
【0067】
図6の例では、フレネルミラー封止体10を構成する透明な材料がPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂:Polymethyl methacrylate)であり、フレネルミラー封止体10の周囲が空気層(Air)である場合を想定している。PMMAの屈折率nは1.49であり、空気層の屈折率nは1である。
【0068】
ブリュースター角は、屈折率の異なる物質の界面においてP偏光の反射率が0となる入射角を表す。例えば、
図6(B)に示したグラフにおいて、P偏光は約60度の入射角度で0になるので、この場合のブリュースター角BAは60度である。また、
図6(C)に示したグラフにおいて、P偏光は約35.5度の入射角度で0になるので、この場合のブリュースター角BAは35.5度である。
【0069】
例えば、
図6(A)に示したように、フレネルミラー封止体10の外側から面14aに入射角60度でP偏光が入射する場合には、面14aでの反射は0になる。また、フレネルミラー封止体10の内部を透過して面11cに到達したP偏光が35.5度の入射角で入射する場合には、面11cでの反射は0になる。
【0070】
また、
図6(B)、
図6(C)からも明らかなように、どのような入射角であっても、S偏光よりもP偏光の方が反射が少なくなる傾向がある。したがって、
図3に示した表示光投影用光学システムのように、HUDユニット20および半波長板25を用いてP偏光の表示光をフレネルミラー封止体10に入射させる場合には、S偏光を入射させる場合と比べて面14a、および11cにおける反射を抑制できる。また、P偏光の表示光が面14aに入射する角度、および面11c入射する角度をそれぞれブリュースター角に近づけることにより、不要な反射をほぼ0にすることができるので上記の等倍二重像ゴーストを防止できる。
【0071】
<変形例の説明>
図3に示した表示光投影用光学システムにおいては、HUDユニット20が偏光板を含むフラットパネルディスプレイを内蔵する場合を想定しているので、P偏光の表示光を得るために半波長板25を用いている。HUDユニット20が偏光板を含まない構成の場合には、様々な偏光成分を含む無偏光の表示光から不要反射の低減が容易なP偏光のみを抽出するために、特別な偏光板を用いる。例えば、
図3に示した半波長板25の代わりに偏光板を設置することにより、P偏光の表示光をフレネルミラー封止体10に入射させることができる。
【0072】
ここで、上述した本発明に係る表示光投影用光学システムの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 表示光を出射する表示ユニット(HUDユニット20)と、
前記表示ユニットから入射した表示光を拡大して反射し、外来光を透過するフレネルミラー(フレネルミラー封止体10)と、を備え、
前記フレネルミラーは、
フレネル形状の複数の溝が形成されたフレネル形状面(フレネル形状部11a)および前記外来光が入射される第1の面(平坦面11c)を有する第1部材(フレネルレンズ11)と、
前記フレネル形状面に沿って形成されるハーフミラー層(12)と、
前記表示ユニットからの表示光が入射される第2の面(13aまたは14a)を有し、前記第1部材との間に前記ハーフミラー層を封止する第2部材(封止剤層13)と、
によって構成され、前記第2の面にP偏光の表示光が入射される、
表示光投影用光学システム。
【0073】
[2] 前記表示ユニットは、前記第2の面に対し入射角がブリュースター角の近傍の角度となるP偏光の表示光を出射する、
上記[1]に記載の表示光投影用光学システム。
【0074】
[3] 前記表示ユニットは、前記表示光を出射する光源(HUDユニット20)と、
前記光源から出射された表示光を前記第2の面に対しP偏光に偏光させる偏光部材(半波長板25)と、を備える、
上記[1]又は[2]に記載の表示光投影用光学システム。
【0075】
[4] 前記光源は、直線偏光の表示光を出射し、
前記偏光部材は、前記直線偏光の表示光を前記第2の面に対しP偏光に偏光させる半波長板(25)である、
上記[3]に記載の表示光投影用光学システム。
【0076】
[5] 前記光源は、無偏光の表示光を出射し、
前記偏光部材は、前記無偏光の表示光を前記第2の面に対しP偏光に偏光させる偏光板である、
上記[3]に記載の表示光投影用光学システム。