特許第6427105号(P6427105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6427105-自動車の始動方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427105
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】自動車の始動方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 11/18 20060101AFI20181119BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20181119BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20181119BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20181119BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20181119BHJP
【FI】
   B60L11/18 G
   H01M8/04302
   H01M8/0432
   H01M8/00 Z
   H01M8/10
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-545684(P2015-545684)
(86)(22)【出願日】2013年11月9日
(65)【公表番号】特表2016-506225(P2016-506225A)
(43)【公表日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】EP2013003380
(87)【国際公開番号】WO2014090359
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2015年6月12日
(31)【優先権主張番号】102012024140.2
(32)【優先日】2012年12月11日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】ハンス‐ヨルク・ハイドリヒ
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−158333(JP,A)
【文献】 特開2005−073464(JP,A)
【文献】 特開2006−275520(JP,A)
【文献】 特開2004−206587(JP,A)
【文献】 特開2004−022365(JP,A)
【文献】 特開2003−042046(JP,A)
【文献】 特開2012−038618(JP,A)
【文献】 特開2006−044491(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0146757(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0092690(US,A1)
【文献】 特開2006−298027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
H01M 8/00 − 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)内で電気的駆動力を提供するための燃料電池システム(2)を備えた自動車(1)の始動方法であって、ユーザー(8)が、前記自動車(1)の真近にいるかどうかとは無関係に、リモートスタート装置(9)によって前記燃料電池システム(2)の始動プロセスが開始されることができる方法において、
前記自動車(1)の駐車時に、前記自動車の駐車位置が前記リモートスタート装置(9)によって検出され、かつ記録されること、
前記リモートスタート装置(9)の位置が前記リモートスタート装置(9)によって連続的に監視され、前記リモートスタート装置(9)と前記記録された前記自動車の駐車位置との位置比較によって、前記自動車(1)と前記リモートスタート装置(9)との間の距離が算出されること、
予め決められた条件が整った場合、特に前記自動車(1)から前記リモートスタート装置(9)までの距離が、予め決められた距離を下回った場合、前記リモートスタート装置(9)が始動信号を自動的に送信すること
前記リモートスタート装置(9)からの前記始動信号が存在し、そして同時に、前記自動車(1)、前記燃料電池システム(2)、および/または前記自動車(1)の周辺で検出された温度が、予め決められた温度閾値を下回っている場合にのみ、前記始動プロセスが、前記リモートスタート装置(9)によって行われること、および
移動通信装置上で実行されるプログラムが、前記リモートスタート装置(9)として使用されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記予め決められた温度閾値が、約0〜5℃に、好ましくは約2℃に予め決められることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リモートスタート装置(9)は、ユーザー(8)による能動的確認ののち、前記始動信号を送信することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記条件が、前記リモートスタート装置(9)から前記自動車(1)までの予め決められた距離を含み、前記距離が特に約100mに予め決められることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記予め決められた条件が整っていても、前記リモートスタート装置(9)からの前記始動信号の送信は、前記送信がユーザー(8)によって能動的に確認された場合にのみ行われることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記距離が、約2〜5mのような予め決められた最小距離を下回る場合、前記始動信号が能動的確認なしに送信されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に詳しく規定されたタイプの燃料電池システムを備えた自動車の始動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムを備えた自動車を始動させるための装置と方法は、この分野の特許文献1によって既知である。その明細書で記述されているシステムでは、リモートスタート装置を通じて燃料電池システムの始動プロセスが開始されるが、その際、特に無線通信または遠距離通信網またはインターネットが使われることができる。これにより、携帯電話またはインターネット接続を通じて始動が開始されることができ、もしくは始動時間がプログラミングされることができる。この出願の背景にある問題は、燃料電池システムが、始動され得るようになるまでに比較的長い時間を必要とするという当時支配的な事実であった。この問題は上記発明によって大幅に取り除かれた。今日の燃料電池システムにおいては、この問題はほとんどのケースでもはや発生しない。今日の燃料電池システムは、燃料電池内での万一の着氷によって始動が遅延されるということのない温度領域に燃料電池システムが入るや否や、ほぼ即座に始動され得る。
【0003】
一般的な従来技術に関する、自動車の始動のリモートスタートというテーマに光を当てるこのほかの出願には、例えば特許文献2や特許文献3がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1211120号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0197677号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2011/0086668号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、燃料電池システムを備えた自動車のユーザーがより快適になるように、氷点下条件における、すなわち燃料電池システム内の水が場合によっては凍結している可能性のある温度における燃料電池システムの始動特性を最適化して構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この課題は、請求項1の特徴部にあげた特徴によって解決される。有利な形態と発展形態とは、請求項1に依存する従属請求項に明らかである。
自動車内で電気的駆動力を提供するための燃料電池システムを備えた自動車を始動させるための本発明による方法は、この分野の従来技術と同様に、リモートスタート装置を使用するが、このリモートスタート装置は、始動プロセスを、ユーザーが自動車の直近にいるかどうかとは無関係に、開始させることができる。本発明によれば、リモートスタート装置からの始動信号が存在し、そして同時に、自動車、燃料電池システム、および/または自動車の周辺で検出された温度が、予め決められた温度閾値を下回っている場合にのみ、リモートスタート装置によって始動が行われることが企図されている。すなわち、リモートスタート装置によって開始される始動は、本発明による方法では、氷点下始動条件が生じていて、始動が、燃料電池システム内の液状水が凍結している危険がある燃料電池システムの状態において行われる蓋然性が高い場合にのみ、成立する。この条件下では、燃料電池システムの始動は、今日の燃料電池システムにおいてもなお比較的長い時間がかかる。なぜなら例えば弁装置などが、場合によってはまず温められて解凍されなければならないからである。本発明による方法により、自動車のユーザーにとって感じられる始動時間は相応に短縮される。なぜなら、例えばユーザーが自分の自動車に接近することをもって、すでに燃料電池システムの氷点下始動プロセスが始まり、それにより燃料電池システムは自動車のユーザーにとって、乗車しスタートボタンを押した後、非常に迅速に利用可能だからである。
【0007】
さらに、本発明による方法の特に有利な形態では、予め決められた温度閾値が約0〜5℃に、好ましくは約2℃に予め決められることが企図されている。理想的にも0℃をわずかに上回るそのような予め決められた値は、測定された温度が、燃料電池システムの中の凍結という観点からして危険な箇所の温度と万一相違しているときでも、原理的に燃料電池システム内の水が凍結しているかもしれない危険がある場合には、リモートスタート装置によって要求された氷点下始動の安全で信頼のおける開始が行われることを確実にする。
【0008】
さらに、本発明による方法のもう1つの非常に有利な形態では、リモートスタート装置が始動信号を、能動的な操作を経て送信することが企図されている。能動的な操作を経た、始動信号のこのような送信は、自動車ユーザーの能動的な影響力行使を可能にする。それは例えば、自動車の解錠の際と同様に、ユーザーが自動車に接近するとき、集中ドアロックシステムの遠隔操作を通じて始動が能動的に開始され得るということである。
【0009】
補足的または択一的に、本発明による方法のもう1つの形態では、予め決められた条件が整った場合、特に、リモートスタート装置から自動車までの距離が予め決められた距離を下回った場合、リモートスタート装置が始動信号を自動的に送信することが企図されてもよい。能動的起動と並んで、例えば、リモートスタート装置を携帯した自動車ユーザーが自動車に接近するとき、例えば好ましくは自動車の周囲約100mより近い範囲に入ったときには、常に始動信号の送信を自動的に開始することも可能である。この着想のもう1つの形態は、リモートスタート装置からの始動信号の送信が、予め決められた条件が整っていても、送信が能動的に確認されてから、はじめて行われることを企図している。このことはユーザーにとって、例えばユーザーが自動車を家の前に駐車してから、自動車のそばを通り過ぎて例えば徒歩で買い物に行く場合などにおいて、能動的な影響力を行使することを可能にする。この場合には、比較的エネルギー消費量の大きい始動プロセスの開始は、始動が開始される旨をユーザーがリモートスタート装置からしかるべく報告されることによって、阻止されることができる。ユーザーが始動開始の確認を行わなければ、始動は行われない。
【0010】
この着想のもう1つの非常に有利な形態では、自動車との間の予め決められた最小距離、特に約2〜5mを下回ったときには、始動信号が能動的操作なしに送信されることが企図されてもよい。ユーザーが、予め決められた最小距離を下回るまでに自動車に接近する場合は、ユーザーがその自動車を始動させる意思があることを、高い蓋然性をもって想定することができる。この状況においては、この有利な発展形態により、能動的確認は行わずに済まされること、そして始動信号がいかなる場合でも送信されることが可能である。
【0011】
本発明による方法の非常に有利な発展形態によれば、リモートスタート装置として移動通信装置が、例えば携帯電話またはタブレット型パソコン統合型携帯電話、特に携帯電話上で実行されるプログラムが、使用されることができる。そのような携帯電話の使用、ないしは携帯電話上でのプログラム、いわゆるアプリケーションソフトの使用は、ほぼすべての携帯電話を用いた適用を可能にするため、追加的な部品がリモートスタート装置として携行される必要がない。こうすれば、携帯電話の無線網ないしはGSM網またはUMTS網またはインターネット接続を通じて、リモートスタート装置からの、この場合には携帯電話からの、始動信号が、自動車に送信されることができる。
【0012】
携帯電話をリモートスタート装置として使用する場合にも、特にリモートスタート装置ないしは携帯電話と自動車との間の距離が、既述の様式による始動の開始のための条件として利用されることができる。本発明の1つの有利な形態によれば、自動車の駐車時に自動車の駐車位置が携帯電話によって検出され、そして記録され、これにしたがって、携帯電話と記録された駐車位置との間の位置比較を通じて、自動車と携帯電話との間の距離が算出されることが企図され得る。
典型的には今日の携帯電話は、GPSまたは無線LANデータ利用または携帯電話基地局位置情報分析を通じて携帯電話の位置を比較的正確に特定する可能性を有している。この位置特定が、特に自動車の駐車時に行われることができ、その際、この駐車位置が記録される。その後、ユーザーがリモートスタート装置としての自分の携帯電話を持って自動車から離れると、自動車はそれに応じて登録される。後にユーザーが再び自動車に接近すると、携帯電話の位置を連続的に監視し、また先に記録された自動車の駐車位置との比較によって、自動車と携帯電話との間の正確な距離が算出されることができる。この算出された距離が予め決められた値を下回ったときには、始動信号の開始のための既述のプロセスが、例えば全自動で、またはユーザーによるしかるべき確認をもって、または距離に応じたオプションの確認をもってでも、進行可能である。
【0013】
本発明によるこのほかの有利な諸形態は、残りの従属請求項から明らかであり、以下で図に関連づけて詳述される実施例によって明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】添付された唯一の図は、燃料電池システムを備え、原理的に概略だけが示された自動車と、リモートスタート装置を持ち、自動車から縮尺通りではない異なる3つの距離をおいている自動車ユーザーとを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図において、燃料電池システム2を備え、原理的に概略だけが示された自動車1を見ることができる。燃料電池システム2は、それ自体は既知の様式で、例えばPEM型燃料電池システム2として構成されていてよい。このシステムは相応に複合的であり、当業者にとってはその詳細な構成は既知である。したがって描写の簡略化のため、図2においては燃料電池3のみが原理的に概略だけで示されている。燃料電池3により電力がパワーエレクトロニクス装置4に到達し、パワーエレクトロニクス装置4が例えば概略だけで示された走行用モーター5に、それ自体既知の様式で、電気的駆動力を供給する。そのほかの構成要素としては、水素用圧縮ガス容器6、および空気運搬装置7のみが示されており、空気運搬装置7は燃料電池3への空気供給ないしは酸素供給を確保している。燃料電池システムのさらなる構成要素、例えばケーブル、タービン、弁などの構成要素は、当業者にとっては一般的な従来技術により既知である。それらの構成要素はここでは明確には描写されていないが、もちろん専門分野における通常の形態で燃料電池システム2内に存在している。
【0016】
燃料電池システム2の始動は、今日の技術において典型的に問題はなく、自動車1のユーザー8が自動車に乗車し、スタートボタンを押した後、非常に迅速に行われることが可能である。温度が非常に低く、そのため燃料電池システム2の領域において水の凍結が予測可能な場合にのみ、始動プロセスに多少時間とエネルギーが集中される。このような特殊な場合に、ユーザー8が、例えば、携帯電話のプログラムというような形式で実現可能な、リモートスタート装置9を携帯することが企図されている。自動車1を駐車する場合、例えばスマートフォンとしての形態がとられ、そして既知の様式で正確な位置の伝達の可能性をもたらすリモートスタート装置9を通し、自動車1の駐車位置が記録される。リモートスタート装置9を携帯したユーザー8が、自動車から離れると、リモートスタート装置9自体がそれ自体の位置を常に把握する。ユーザー8の、自動車1までの距離が比較的大きい限り、ユーザー8が自動車1をただちに使用し、始動させる意思があることが前提とされていない。このことは、自動車まで距離A1上にいる、点線で表されたユーザー8によって示されている。リモートスタート装置9を携帯したユーザー8が、A2と表示された、自動車1まで、例えば約100mの距離に接近する場合、このシステムは、自動車1の始動がまもなく迫っていることを前提としている。リモートスタート装置9は、そのために、始動信号を発し、そして、これを自動車1の制御装置10に送信することができる。制御装置10の領域において、さらに温度センサー11の温度値が分析される。この温度値が、予め決められた限度温度、例えば2℃を下回り、同時に始動信号が制御装置10の領域内に示されれば、燃料電池システム2の氷点下始動が開始され、そして、構成部品が温められ、場合によっては解凍される間に、燃料電池システム2が、真近に迫っている始動に応じて準備される。閾値温度以下の場合に不必要な始動準備を回避するために、自動車1までの距離A2を下回る場合、リモートスタート装置9が、始動信号を送るようユーザー8に注意を喚起し、ユーザー8が、たとえば暗証番号、パスワード、あるいはまたOKキーによる単なる確認の入力によって、これを確認したとき、この信号を送信するだけということが企図されている。
【0017】
リモートスタート装置9を携帯している、点線で表されているユーザー8が、A3と表示された距離を下回ると、始動信号がリモートスタート装置9によって制御装置10に送信され、その際、確認の必要がない。というのは、距離が相応に小さく、例えば自動車1までの距離が2mを下回り、ユーザー8が自動車を始動するために、自動車1に接近することが前提とされているからである。自動車1に乗車した後、燃料電池システム2は、閾値温度および始動信号によって開始させられる始動準備のため、氷点下始動条件下においても直接的に始動準備態勢にあり、その結果、ユーザー8が遅滞なく燃料電池システム2および自動車1を起動し、そして運転を開始することができる。これによって、氷点下始動の場合、燃料電池自動車1のユーザー8にとって著しい快適性が生み出される。
図1