【文献】
Recent Advances in Food and Flavor Chemistry,,Special publication No.326, P.139-149,,P.139-149,
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C)バニリン、エチルバニリン、イソバニリン及びメチルバニリンからなる群より選ばれる1種又は2種以上をさらに含有するものである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフレグランス組成物。
【背景技術】
【0002】
バニラの香気特性は香料分野において非常に価値が高いものである。この香気特性を香料組成物または製品に付与するために、バニリン、エチルバニリンまたはこれらの二種の組み合わせが一般的に使用されており、例えば、香水、コロン及びエアーフレッシュナー等のフレグランス製品の賦香に好んで用いられてきた。
【0003】
近年、消費者ニーズの高まりから、バニラの香気特性を衣類用洗剤、家庭用洗剤、シャンプー、ボディーソープ、石鹸、歯磨き粉、整髪料等の多様な製品に賦香することが求められている。
しかしながら、バニリン及びエチルバニリンは、香りの劣化及び望ましくない着色を起こすことが知られており、アルカリ性条件、酸素の存在する条件、温度条件または光の当たる条件等において分解、変質、変色または重合等が起こり、結果として賦香したバニラ様の香気が変化してしまうため、媒体によっては使用できないという問題があった。特に石鹸、シャンプー、アルコール性組成物などの媒体においてバニリン及びエチルバニリンは不安定であり、バニリン、エチルバニリンまたはこれらの二種の組み合わせを含有するフレグランス組成物をこれらの媒体中で使用した場合、短時間で香りの劣化及び褐色への変色が生じ、バニラの香気特性は消えてしまう。
このような状況において、バニラの香気特性を有しており、石鹸、シャンプー、アルコール性組成物などの媒体を含む製品中に配合しても化学的に安定であるフレグランス組成物の開発が望まれていた。
【0004】
これまでにもバニリンの変質及び変色を防ごうとする技術は多数提案されている。
例えば、バニリンの変色を防止するためにバニリンを含む薬剤にヨウ化物塩を添加する方法(特許文献1:特表2010−526199号公報)及びバニリンを含むアルデヒド系香料成分の劣化を抑制するためにブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)等の酸化防止剤を添加する方法(特許文献2:特開2011−256392号公報)が提案されている。
また、繊維製品の保存中における木材または段ボールとの接触による変色も、木材または段ボールに含まれるリグニンの分解により生じるバニリンが原因とされている。これを防止する技術として、繊維をリン酸エステルアンモニウム塩型アニオン界面活性剤、硫酸エステルアンモニウム型アニオン界面活性剤、スルホン酸アンモニウム型アニオン界面活性剤またはフッ素系撥水撥油剤で処理し、着色原因であるバニリンを吸収する方法が提案されている(特許文献3:特開2001−279576号公報、特許文献4:特開2001−89970号公報及び特許文献5:特開平10−273878号公報)。
しかしながら、これらの方法はバニリンによる変質に対して持続性が無い。また、添加物は製品基剤によっては配合することが許されない場合がある。さらに繊維用の加工技術は、香料に応用することができないといった問題もある。
【0005】
これに対して、添加物を使用するのではなく、バニリン自体を誘導体化して変質または変色し難いバニリン様の香料とすることが提案されている。
例えば、4−ホルミル−2−メトキシフェニル 2−メチルプロパノエート(「ISOBUTAVAN」:Givaudan社製)(特許文献6:米国特許第4473588号明細書参照)、2−エトキシ−4−メチルフェノール(「Ultravanil」:Givaudan社製)(特許文献7:特開昭61−103819号公報参照)、2−エトキシ−4−(メトキシメチル)フェノール(「METHYLDIANTILIS」:Givaudan社製)(特許文献8:米国特許第4657700号明細書参照)などの化合物は、不安定なバニリンまたはエチルバニリンの代替品として主にバニリンまたはエチルバニリンと併用される形で使用されている。
しかしながら、それぞれ特徴的な欠点を抱えている。例えば、4−ホルミル−2−メトキシフェニル 2−メチルプロパノエートはバニリンがもつフェノール基をエステル化した化合物であるが、媒体中で加水分解を受けやすく、該化合物が加水分解することによりバニリンが遊離してイソ酪酸が生成し、強い不快な脂肪酸臭を発生することとなる。2−エトキシ−4−メチルフェノールなどのo−アルコキシフェノール類は、化学的に安定ではあるが、バニリン様の香気特性に加えて不快なフェノール臭を併せ持つ。2−エトキシ−4−(メトキシメチル)フェノールも化学的安定性に欠け、非常に着色しやすい性質を有している。また香気特性もバニリンまたはエチルバニリンの香質及び強度を満足するものではない。したがって、これらの化合物をバニリンの代替化合物として単独で使用することは難しい。
【0006】
特表2013−525535号公報(特許文献9)には、バニリン様の香気特性を有する化合物としてアルキルアリールカルボナート類、例えば、2−メトキシ−p−クレゾール メチル カルボナートが記載されている。この化合物は化学的に安定であるが、バニリン様の香気強度は弱く、バニリンの代替化合物として単独で使用することは難しい。
【0007】
また、印藤元一著「合成香料 化学と商品知識<増補改定版>」化学工業日報社 146〜147頁、2005年3月22日 増補改定版発行(非特許文献2)には、2−エトキシ−5−(1−プロペニル)フェノール(別名「バニトロープ」)が記載されている。この化合物は化学的に安定であるが、香質はバニリンに比べて甘みが少なく、不快なフェノール臭を持ちバニリンの代替化合物として単独で使用することは難しい。
【0008】
一方、奥田治著「香料化学総覧[II]」廣川書店、昭和43年1月15日発行、680頁(非特許文献1)には、各種のバニリルアルコール誘導体、例えば、バニリルアルコール、エチルバニリルアルコール、イソバニリルアルコール及びベラトリルアルコールが記載されている。この文献には、これらの化合物を香料の保留剤または合成原料として使用可能であることが記載されている。しかしながら、これらの化合物を香気成分として使用することについては記載されていない。また、これらの化合物が具体的にどのような香気特性を有しているのかについても記載されていない。
【0009】
Steffen Arctander著「Perfume and Flavor Chemicals (Aroma Chemicals) II」Allured Publishing Corporation、1994年発行、3073頁(非特許文献3)には、バニリルアルコールがバニラ様の香気特性を有することが記載されている。しかし、その香気強度はバニリンと比べてはるかに低いことが記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のフレグランス組成物及びそれを配合してなる製品について具体的に説明する。
【0017】
本発明のフレグランス組成物は、
A)バニリルアルコール、エチルバニリルアルコール、イソバニリルアルコール及びベラトリルアルコールからなる群より選ばれる1種又は2種以上と、
B)2−エトキシ−4−メチルフェノール、2−メトキシ−4−メチルフェノール、2−エトキシ−5−メチルフェノール、2−エトキシ−4−エチルフェノール、2−エトキシ−5−エチルフェノール、2−メトキシ−p−クレゾールメチルカルボナート及び2−エトキシ−5−(1−プロペニル)−フェノール(別名:バニトロープ)からなる群より選ばれる1種又は2種以上とを含有し、
フレグランス組成物中の成分A及び成分Bの合計含有量が、0.01〜90質量%であり、成分Aと成分Bとの混合比(質量基準)が、99:1〜70:30の範囲であることを特徴としている。
【0018】
本発明のフレグランス組成物は、上記のとおり特定のバニリルアルコール類(すなわち、バニリルアルコール、エチルバニリルアルコール、イソバニリルアルコール及びベラトリルアルコールからなる群より選ばれる1種又は2種以上、「成分A」ともいう。)とアルコキシフェノール類及びそれらのメチル炭酸エステル類(すなわち、2−エトキシ−4−メチルフェノール、2−メトキシ−4−メチルフェノール、2−エトキシ−5−メチルフェノール、2−エトキシ−4−エチルフェノール、2−エトキシ−5−エチルフェノール、2−メトキシ−p−クレゾールメチルカルボナート及び2−エトキシ−5−(1−プロペニル)−フェノール(別名:バニトロープ)からなる群より選ばれる1種又は2種以上、「成分B」ともいう。)とを特定の比率で混合してなるものである。本発明のフレグランス組成物は、上記の組成を有することにより、バニリン様の香気特性が得られ、その強度も十分であることから、バニリンまたはエチルバニリンの代替材料として好適に利用することができる。また、本発明のフレグランス組成物は、成分Aと成分Bとを特定の比率で混合することにより、一部のアルコキシフェノール類及びそれらのメチル炭酸エステル類が本来有する不快なフェノール臭がマスキングされ、ナチュラルなバニラ感を付与することができる。
本発明のフレグランス組成物は、アルカリ性条件、酸素の存在する条件、温度条件または光の当たる条件等においても化学的に安定な化合物である成分A及び成分Bを用いるものであり、石鹸、シャンプー、アルコール性組成物などの媒体中においても香りの劣化や変色が抑制されるため、多様な製品中にバニラの香気特性を付与することができる。
また、本発明のフレグランス組成物は、バニリン類(すなわち、バニリン、エチルバニリン、イソバニリン及びメチルバニリンからなる群より選ばれる1種又は2種以上)と併用しても何ら問題なく使用することができる。例えば、別の香粧品の香気改善など、使用目的または用途に応じて、本発明のフレグランス組成物にバニリン類を配合することにより、バニラ感をさらに増強することもできる。
【0019】
上記のとおり、本発明のフレグランス組成物はバニリルアルコール類(成分A)及びアルコキシフェノール類及びそれらのメチル炭酸エステル類(成分B)を含有する。
バニリルアルコール類は、対応するバニリン類を公知の方法、例えば水素化ホウ素ナトリウムを作用させたり、適当な溶媒中でニッケル触媒の存在下で水素化するなどして還元することにより得られる。バニリルアルコール類は物質としては公知であり、一部の化合物(バニリルアルコール)についてはその香気特性が知られていながらも、香料としての使用実績はほとんど無く、これまで注目されることは無かった。今回、本発明者らは、これらの化合物について、バニリンまたはエチルバニリンと比較して安定性試験を行った結果、熱または光、さらには各種製品基剤中においても安定であり、これらの代替材料になり得る可能性を見出した。
バニリルアルコール類は、バニリンよりも強度が若干弱いがバニリン様の香気特性を有している。この香気強度の弱さを補うため、本発明者らは、様々な化合物を添加して実験を行った結果、アルコキシフェノール類及びそれらのメチル炭酸エステル類、中でも2−エトキシ−4−メチルフェノールを添加することにより、有効に香気強度が補強され、バニリンまたはエチルバニリンの強度に匹敵する、甘いイソオイゲノール様のバニリン様組成物となることを見出した。
【0020】
本発明において「バニリルアルコール類」としては、バニリルアルコール、エチルバニリルアルコール、イソバニリルアルコール及びベラトリルアルコールからなる群より選ばれる1種または2種以上が用いられる。これらの中でも、バニリンに近い香質と香気強度を有することから、エチルバニリルアルコールが特に好ましい。
【0021】
また「アルコキシフェノール類及びそれらのメチル炭酸エステル類」としては、2−エトキシ−4−メチルフェノール、2−メトキシ−4−メチルフェノール、2−エトキシ−5−メチルフェノール、2−エトキシ−4−エチルフェノール、2−エトキシ−5−エチルフェノール、2−メトキシ−p−クレゾール メチル カルボナート及び2−エトキシ−5−(1−プロペニル)−フェノール(別名:バニトロープ)からなる群より選ばれる1種または2種以上が用いられる。これらの中でも、トップノートにくる香気強度と甘いイソオイゲノール様の香気特性を付与できることから、2−エトキシ−4−メチルフェノールが特に好ましい。
【0022】
本発明のフレグランス組成物は、成分A及び成分Bの合計含有量ならびに成分Aと成分Bの混合比を適宜調整することにより所望の香気持続特性を得ることができ、残香性の作用効果をより高めることができる。
すなわち、本発明のフレグランス組成物において、成分A及び成分Bの合計含有量は、香質及び香気強度の観点から、0.01〜90質量%であり、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、また、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
また、成分Aと成分Bの混合比(質量基準)は、香質の観点から、99:1〜70:30の範囲であり、95:5〜75:25の範囲が好ましく、92.5:7.5〜87.5:12:5の範囲がより好ましい。成分Bの割合が30質量%を超えると、一部の成分Bが本来持つ不快なフェノール臭が感じられるようになり、バニリンまたはエチルバニリンの代替材料として適したものとならない。
【0023】
本発明の好ましい態様によれば、本発明のフレグランス組成物は、香気パフォーマンス及び香気強度において極めて良好なものである。また、本発明のフレグランス組成物は嗜好性の高い優れたバニラ様の特有の香気特性を有し、その香気強度も高く、さらには顕著な香気持続特性を有している。
【0024】
本発明のフレグランス組成物は、それ自体嗜好性の高い優れたバニラ様の香気特性を有するフレグランス組成物として利用できるが、例えば、本発明のフレグランス組成物を別の香粧品の香気改善に使用することもできる。
【0025】
本発明のフレグランス組成物は、使用目的または用途に応じて、必要に応じてバニリン類(「成分C」ともいう。)を含有することができる。
本発明において「バニリン類」としては、バニリン、エチルバニリン、イソバニリン及びメチルバニリンからなる群より選ばれる1種又は2種以上が用いられる。これらの中でも、香気強度と経済的観点から、バニリン及びエチルバニリンが好ましい。
本発明のフレグランス組成物において、バニリン類(成分C)の含有量は、0.001〜30質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましく、0.1〜10質量%がさらに好ましい。
【0026】
また本発明のフレグランス組成物には、フレグランス組成物の変色または香りの劣化をより効果的に抑制する目的で、必要に応じて酸化防止剤(「成分D」ともいう。)をさらに配合してもよい。酸化防止剤としては、一般に酸化防止効果が知られている化合物であれば特に制限なく使用することができる。具体例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、β−ナフトール、フェニル−α−ナフチルアミン、テトラメチルジアミノジフェニルメタン、ビタミンE(α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール)、ビタミンC(L−アスコルビン酸)、クェルセチン等を挙げることができる。これらの中でも、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)及びトコフェロールを好ましく使用することができる。酸化防止剤は1種でも2種以上を併用してもよい。
本発明のフレグランス組成物において、酸化防止剤(成分D)の含有量は、0.0001〜10質量%が好ましく、0.001〜5質量%がより好ましく、0.01〜3質量%がさらに好ましい。
【0027】
本発明のフレグランス組成物においては、成分A及び成分Bのほか、使用目的または用途に応じて当業者に通常使用されている香料成分をさらに配合してもよい。他の香料成分としては、各種の合成香料、天然精油、合成精油、柑橘油、動物性香料などが挙げられる。例えば、Arctander S. "Perfume and Flavor Chemicals“published By the author, Montclair, N. J. (U.S.A.) 1969年に記載されているような広い範囲の香料成分を使用することができる。
それら香料成分の中で代表的なものとしては、α−ピネン、リモネン、cis−3−ヘキセノール、フェニルエチルアルコール、スチラリルアセテート、オイゲノール、ロ−ズオキサイド、リナロール、ベンズアルデヒド、ジヒドロジヤスモン酸メチル、テサロン(高砂香料工業株式会社製)などが挙げられる。
【0028】
例えば、成分A及び成分Bの混合物に、ベルガモツト油、ガルバナム油、レモン油、ゼラニウム油、ラベンダー油またはマンダリン油等の天然精油を配合すると、天然精油が本来有する香気香味に、マイルドでこくがあり、新鮮な嗜好性の高く、且つ、拡散性及び保留性を高めて持続性のある新規なフレグランス組成物を調製することができる。
【0029】
また、本発明のフレグランス組成物には、通常使用される香料保留剤を1種又は2種以上配合しても良い。そのような香料保留剤の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシルグリコール、べンジルべンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン(アビエチン酸メチル)、中鎖脂肪酸トリグリセライド等を挙げることができる。
【0030】
本発明のフレグランス組成物を用いて賦香することができる製品は、そのような香りづけが求められている製品であれば特に制限されない。例えば、フレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品などの香粧品;薬用化粧品などの医薬部外品;ヘアーケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤などのトイレタリー製品;洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、衛生用品、文房具などの雑貨などが好ましく挙げられる。
【0031】
フレグランス製品としては、香水、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロンなどが挙げられる。
基礎化粧品としては、洗顔クリーム、バニシングクリーム、クレンジングクリーム、コールドクリーム、マッサージクリーム、乳液、化粧水、美容液、パック、メイク落としなどが挙げられる。
仕上げ化粧品としては、ファンデーシヨン、粉おしろい、固形おしろい、タルカムパウダー、口紅、リップクリーム、頬紅、アイライナー、マスカラ、アイシャドゥ、眉墨、アイパック、ネイルエナメル、エナメルリムバーなどが挙げられる。
頭髪化粧品としては、ポマード、ブリランチン、セットロ−ション、ヘアーステック、ヘアーソリッド、ヘアーオイル、ヘアートリートメント、ヘアークリーム、ヘアートニック、ヘアーリキッド、ヘアースプレー、バンドリン、養毛剤、染毛剤などが挙げられる。
日焼け化粧品としては、サンタン製品、サンスクリーン製品などが挙げられる。
薬用化粧品としては、制汗剤、アフターシェービングローション及びびジェル、パーマネン卜ウェーブ剤、薬用石鹸、薬用シャンプー、薬用皮膚化粧料などが挙げられる。
ヘアーケア製品としては、シャンプー、リンス、リンスインシャンプー、コンディショナー、トリートメン卜、ヘアーパックなどが挙げられる。
石鹸としては、化粧石鹸、浴用石鹸、香水石鹸、透明石鹸、合成石鹸などが挙げられる。
身体洗浄剤としては、ボディソープ、ボディシャンプー、ハンドソープ、フェースクリームなどが挙げられる。
浴用剤としては、入浴剤(バスソルト、バスタブレット、バスリキッド等)、フォームバス(バブルバス等)、バスオイル(バスパューム、バスカプセル等)、ミルクバス、バスジエリー、バスキユーブなどが挙げられる。
洗剤としては、衣料用重質洗剤、衣料用軽質洗剤、液体洗剤、洗濯石鹸、コンパクト洗剤、粉石鹸などが挙げられる。
柔軟仕上げ剤としては、ソフナー、ファーニチァケアーなどが挙げられる。
洗浄剤としては、クレンザー、ハウスクリーナー、トイレ洗浄剤、浴室用洗浄剤、ガラスクリーナー、カピ取り剤、排水管用洗浄剤などが挙げられる。
台所用洗剤としては、台所用石鹸、台所用合成石鹸、食器用洗剤などが挙げられる。
漂白剤としては、酸化型漂白剤(塩素系漂白剤、酸素系漂白剤等)、還元型漂白剤(硫黄系漂白剤等)、光学的漂白剤などが挙げられる。
エアゾール剤としては、スプレータイプ、パウダースプレーなどが挙げられる。
消臭・芳香剤としては、固形状タイプ、ゲル状タイプ、リキッドタイプ(水性、油性)などが挙げられる。
衛生用品としては、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどが挙げられる。
文房具としては、消しゴム、鉛筆、ノート、シールなどが挙げられる。
【0032】
本発明のフレグランス組成物の剤形は特に制限されなく、例えば成分A、成分B及び各種任意成分の混合物自体の形態をとることができる。
その他の剤形としては、例えば、アルコール類、プロピレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類またはトリエチルシトレート、ベンジルベンゾエート、ジエチルフタレートなどのエステル類に溶解した液体状;
グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤で乳化した乳化状;
天然ガム質類(アラビアガム、トラガントガムなど)、ゼラチン、デキストリンなどの賦形剤を用いて被膜させた粉末状;
界面活性剤(例えば非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤など)を用いて可溶化または分散化した可溶化状または分散化状;
あるいはカプセル化剤で処理して得られるマイクロカプセル状など、その目的に応じて任意の剤形を選択して用いることができる。
【0033】
また、サイクロデキストリンなどの包接剤を用いて包接して、本発明のフレグランス組成物を安定化且つ徐放性にして用いることもできる。これは、最終製品の形態、例えば液体状、固体状、粉末状、ゲル状、ミス卜状、エアゾール状などに適したものであり、最終製品の形態に応じて適宜選択して用いられる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらにより何ら限定されるものではなく、また、本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更及び修正を加えてもよい。なお、下記に記載する処方の単位は特に言及しない限り、“%”は“質量%”を意味し、組成比は質量比を表すものとする。
【0035】
[実施例1]
成分A及び成分Bの配合比ならびにその香質及び強度
成分Aとしてエチルバニリルアルコール、成分Bとして2−エトキシ−4−メチルフェノールを用い、エチルバニリルアルコール(「Ethylvanillyl alcohol」)と2−エトキシ−4−メチルフェノール(「2-Ethoxy-4-methylphenol」)の配合比(質量比)が100:0乃至75:25である10%エタノール溶液を5%刻みで調製し、これをブロッターに賦香して5年以上の経験を有する10人のパネラーで評価した。評価結果を表1に示す。
【表1】
【0036】
表1から明らかなように、エチルバニリルアルコールと2−エトキシ−4−メチルフェノールとを所定の配合比で混合することにより、甘いイソオイゲノール的なバニリン様の香気を発現できることがわかった。中でも90:10の混合物が最も甘くイソオイゲノール的な強いバニリン様香気を発現できることがわかった。エチルバニリルアルコールは単独(100:0)では強度が弱いが、少量の2−エトキシ−4−メチルフェノールを配合することで香気強度を補強し、香質に甘みを持たせることができた。
また2−エトキシ−4−メチルフェノールの持つ不快なフェノール臭は15質量%までは感じられず、20質量%から若干感じられたが、エチルバニリルアルコールと配合することでマスキングされることがわかった。
これらの結果に示されるとおり、エチルバニリルアルコールと2−エトキシ−4−メチルフェノールは互いに香質及び強度の異なる化合物であるが、配合比を精査することで、香質、強度共にこれらの長所を引き出すことに成功した。
【0037】
[実施例2]
製品中における成分A及びBの単品としての熱及び光による色やけ試験
成分Aとしてバニリルアルコール(vanillyl alcohol)、エチルバニリルアルコール(ethylvanillyl alcohol)、イソバニリルアルコール(isovanillyl alcohol)、及び、成分Bとして2−エトキシ−4−メチルフェノール(2-ethoxy-4-methylphenol)、2−メトキシ−p−クレゾールメチルカルボナート(2-methoxy-p-cresol methyl carbonate)、2−エトキシ−5−(1−プロペニル)−フェノール(vanitrope)を用いてそれぞれ1%ジプロピレングリコール溶液を調製し、これをシャンプー、液体洗剤または石鹸の基剤にそれぞれ配合した。得られた配合物を、5℃、45℃または日光照射(室温)の環境下に置き、4週間後の色調の変化について観察した。各条件のバニリン(vanillin)及びエチルバニリン(ethyl vanillin)をベンチマークとして評価した結果を表2に示す。
【表2】
【0038】
この結果、上記成分A及びBのいずれも、バニリン及びエチルバニリンと比較して有意性が認められた。中でも、エチルバニリルアルコールはシャンプー中、日光照射の条件、液体洗剤中45℃の条件及びアルカリの強い石鹸中において評価がBとなったが、バニリン及びエチルバニリンより有意性が高いと認められた。2−エトキシ−4−メチルフェノールもシャンプー中、日光照射の条件、液体洗剤中45℃の条件で評価がBとなったが、それ以外は評価Aとなり、バニリン及びエチルバニリンより有意性が高いと認められた。なお、ベラトリルアルコールは、バニリルアルコールのフェノールをメトキシ化したものであるため、エチルバニリルアルコールよりもさらに安定な結果が得られるものと考えられる。2−メトキシ−4−メチルフェノール、2−エトキシ−5−メチルフェノール、2−エトキシ−4−エチルフェノール及び2−エトキシ−5−エチルフェノールについても、2−エトキシ−4−メチルフェノールと化学構造が類似するため、2−エトキシ−4−メチルフェノールと同様の結果が得られるものと考えられる。
【0039】
[実施例3]
製品中における成分A及びBの単品としての熱及び光による色やけ試験ならびにその香質の変化
エチルバニリルアルコール、2−エトキシ−4−メチルフェノール、バニリン、エチルバニリンの10%エタノール溶液をそれぞれ調製し、5℃、室温、45℃または日光照射(室温)の環境下に置き、2週間後の色調の変化及び香質の変化について観察した。5℃におけるサンプルを基準として比較した。結果を表3に示す。
【表3】
【0040】
この結果、2−エトキシ−4−メチルフェノールは室温、45℃及び日光照射(室温)のいずれにおいても色調及び香質に変化が見られなかった。エチルバニリルアルコールは、室温において色調及び香質に変化が見られなかったものの、45℃の条件下で若干の変色が認められ、45℃及び日光照射(室温)の条件下で匂い強度がやや弱くなる結果となった。一方、バニリンは、45℃の条件下で淡黄色に変化し、バニリン及びエチルバニリンの双方とも日光照射(室温)の条件下で褐色に変化した。エチルバニリンは、45℃及び日光照射(室温)の条件下で香質の変化も観測された。
なお、成分Aに関して、バニリルアルコール及びイソバニリルアルコールはエチルバニリルアルコールと類似構造を持つため同等の結果が得られるものと推察される。また、ベラトリルアルコールはバニリルアルコールのフェノールをメトキシ化しているため、エチルバニリルアルコールよりもさらに安定な結果が得られると推察される。成分Bに関しては、2−エトキシ−5−メチルフェノール、2−エトキシ−4−エチルフェノール及び2−エトキシ−5−エチルフェノールは、2−エトキシ−4−メチルフェノールと類似構造を持つため、安定性において同等であると考えられ、色調の変化及び香質の変化について同等の結果が得られると推察される。また、2−メトキシ−p−クレゾールメチルカルボナート及び2−エトキシ−5−(1−プロペニル)−フェノールについても、実施例2で得られた実験結果により2−エトキシ−4−メチルフェノールと同等の結果が得られるものと考えられる。
【0041】
[実施例4]
混合物としての熱及び光による色やけ試験ならびにその香質の変化(その1)
エチルバニリルアルコール(EVA)と2−エトキシ−4−メチルフェノールの混合物の比率を95:5〜70:30まで5%刻みで変えた10%エタノール溶液をそれぞれ調製し、5℃、室温、45℃または日光照射(室温)の環境下に置き、2週間後の色調の変化及び香質の変化について観察した。5℃におけるサンプルを基準として比較した。結果を表4に示す。
【表4】
【0042】
この結果、全てのサンプルで概ね香質の変化は見られなかったが、45℃の条件下で淡黄色への変化が認められた。
【0043】
溶媒を、非プロトン性溶媒であるBB(Benzyl benzoate)に代えて、さらに同様の実験を行った。結果を表5に示す。
【表5】
【0044】
この結果、全てのサンプルで色調及び香質の変化は見られなかった。
【0045】
[実施例5]
製品中における混合物としての熱及び光による色やけ試験ならびに香質の変化
バニリン、エチルバニリン、エチルバニリルアルコール、2−エトキシ−4−メチルフェノール、バニリンと2−エトキシ−4−メチルフェノールの90:10の混合物、エチルバニリン(EV)と2−エトキシ−4−メチルフェノールの90:10の混合物、エチルバニリルアルコール(EVA)と2−エトキシ−4−メチルフェノールの90:10の混合物のそれぞれ5%ジプロピレングリコール(DPG)溶液を調製した。調製したDPG溶液をそれぞれアルコール溶液、シャンプー、ボディーソープ、柔軟剤及びバスソルトの5種類の各基剤に配合した。得られた配合物を、それぞれ5℃、室温(遮光)、45℃または日光照射(室温)の環境下に置き、4週間後の色調の変化及び香質の変化について観察した。各条件におけるバニリン及びエチルバニリンをベンチマークとして評価した結果を表6、7、9、11及び13に示す。なお、色調及び香質はそれぞれ下記の5段階で評価した。
色調の変化
C1:変化しなかった
C2:ごく僅かに変化した
C3:僅かに変化した
C4:変化した
C5:大きく変化した
香質の変化
P1:変化しなかった
P2:ごく僅かに変化した
P3:僅かに変化した
P4:変化した
P5:大きく変化した
【0046】
アルコール溶液(95%エタノールの10%溶液)
【表6】
【0047】
アルコール溶液においては、2−エトキシ−4−メチルフェノールは色調及び香調に変化がないが、エチルバニリルアルコールは45℃及び光照射の条件下で若干の変化が見られる。
本発明のフレグランス組成物であるエチルバニリルアルコールと2−エトキシ−4−メチルフェノールの90:10の混合物(EVA:2−エトキシ−4−メチルフェノールの5%ジプロピレングリコール溶液)では、45℃及び光照射の条件下において香質に若干の変化が認められ、光照射の条件下において色調にごく僅かな変化が認められたが、その変化は許容範囲内のものである。
なお、アルコール溶液は、95%エタノールに上記で調製した各DPG溶液を10%の割合になるように希釈した溶液である。
【0048】
シャンプー(0.5%溶液)
【表7】
【0049】
シャンプーにおいては、バニリンまたはエチルバニリンが入っているものと、入らないものとで色調及び香質の変化に明らかな差異が認められた。C3及びP3までが許容範囲内である。本発明のフレグランス組成物であるエチルバニリルアルコールと2−エトキシ−4−メチルフェノールの90:10の混合物(EVA:2−エトキシ−4−メチルフェノールの5%ジプロピレングリコール溶液)では、45℃及び光照射の条件下において香質に若干の変化が認められ、光照射の条件下において色調にごく僅かな変化が認められたが、その変化は許容範囲内のものである。
【0050】
なお、検体であるシャンプーの処方は以下に示したとおりである。このシャンプーに上記で調製した各DPG溶液を0.5%の割合になるように配合してサンプルを得た。
【表8】
【0051】
ボディーソープ(1.0%溶液)
【表9】
【0052】
シャンプーと同様にバニリンまたはエチルバニリンが入っているものと、入らないものとで色調及び香質の変化に明らかな差異が認められた。C3及びP3までが許容範囲内である。本発明のフレグランス組成物であるエチルバニリルアルコールと2−エトキシ−4−メチルフェノールの90:10の混合物(EVA:2−エトキシ−4−メチルフェノールの5%ジプロピレングリコール溶液)では、45℃及び光照射の条件下において香質に若干の変化が認められ、光照射の条件下において色調に僅かな変化が認められたが、その変化は許容範囲内のものである。
なお、検体であるボディーソープの処方は以下のとおりである。このボディーソープに上記で調製した各DPG溶液を1.0%の割合になるように配合してサンプルを得た。
【表10】
【0053】
柔軟剤(0.4%溶液)
【表11】
【0054】
柔軟剤では、各条件下において色調の変化は全く見られなかった。ただし、光照射の条件下では、バニリンまたはエチルバニリンが入っているものに香質の劣化が認められた。P3までが許容範囲内である。本発明のフレグランス組成物であるエチルバニリルアルコールと2−エトキシ−4−メチルフェノールの90:10の混合物(EVA:2−エトキシ−4−メチルフェノールの5%ジプロピレングリコール溶液)では、45℃及び光照射の条件下において香質に若干の変化が認められたが、その変化は許容範囲内のものである。
なお、検体である柔軟剤の処方は以下のとおりである。この柔軟剤に上記で調製した各DPG溶液を0.4%の割合になるように配合してサンプルを得た。
【0055】
【表12】
【0056】
バスソルト(ぼう硝ベース)(1.0%配合)
【表13】
【0057】
バスソルトでは、各条件下において色調の変化は全く見られなかった。ただし、光照射の条件下では、バニリンまたはエチルバニリンが入っているものに香質の劣化が認められた。2−エトキシ−4−メチルフェノールも光照射の条件下で香質の劣化が認められたが、本発明のフレグランス組成物であるエチルバニリルアルコールと2−エトキシ−4−メチルフェノールの90:10の混合物(EVA:2−エトキシ−4−メチルフェノールの5%ジプロピレングリコール溶液)では、香質の変化は僅かであり、許容範囲内のものであった。
【0058】
なお、検体であるバスソルトの処方は以下のとおりである。このバスソルトに上記で調製した各DPG溶液を1.0%の割合になるように配合してサンプルを得た。
【表14】
【0059】
[実施例6]
フレグランス処方中におけるバニリン類の代替の可否
以下に示したフレグランス処方により香料組成物を調合し、バニリン(Vanillin)及びエチルバニリン(Eth Vanillin)の代替が、エチルバニリルアルコール(EVA)及びエチルバニリルアルコールと2−エトキシ−4−メチルフェノールの90:10の混合物(EVA+UV)に可能であるかどうか、5年以上の経験をもつ専門パネラー10人で比較した。その結果、エチルバニリルアルコールはバニリン類無配合のジプロピレングリコール(DPG)より甘みを感じるものの、バニリン及びエチルバニリンよりも甘みは弱かった。一方、エチルバニリルアルコールと2−エトキシ−4−メチルフェノールの90:10の混合物は香質としてはエチルバニリンよりもバニリンに近く、香質の強度はバニリンとほぼ同等であることがわかった。
【0060】
以下にフレグランスの処方を示す。
【表15】