特許第6427134号(P6427134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427134
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】可変動弁装置
(51)【国際特許分類】
   F01L 13/00 20060101AFI20181112BHJP
【FI】
   F01L13/00 301U
【請求項の数】5
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-71899(P2016-71899)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-180399(P2017-180399A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2017年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【弁理士】
【氏名又は名称】神澤 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100067840
【弁理士】
【氏名又は名称】江原 望
(74)【代理人】
【識別番号】100098176
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 訓
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 美博
(72)【発明者】
【氏名】片岡 大
【審査官】 小笠原 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−132225(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102013017882(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(E)のシリンダヘッド(3)に回転自在に軸支されたカムシャフト(42)と、
前記カムシャフト(42)の外周に相対回転を禁止され軸方向に摺動可能に嵌合する円筒状部材であって、外周面にカムプロファイルの異なる複数のカムロブ(43A,43B)が軸方向に隣接して形成されたカムキャリア(43)と、
前記カムキャリア(43)を軸方向に移動してバルブ(41)に作動するカムロブ(43A,43B)を切替えるカム切替機構(70)と、
を備えた可変動弁装置において、
前記カムキャリア(43,143)には、同カムキャリア(43,143)を軸方向で摺動させるため切替ピン(73,74)が係合・離脱されるリード溝(44)が形成されるリード溝円筒部(43D)が設けられ、
前記カムシャフト(42)における前記カムキャリア(43)の端部が軸方向で当接する拡径部(42C)の端面に、前記カムキャリア(43)の前記リード溝円筒部(43D)の端部が挿入可能な凹部(42Ch)が形成されることを特徴とする可変動弁装置。
【請求項2】
内燃機関(E)のシリンダヘッド(103)に回転自在に軸支されたカムシャフト(142)と、
前記カムシャフト(142)の外周に、相対回転を禁止され軸方向に摺動可能に嵌合する円筒状部材であって、外周面にカムプロファイルの異なる複数のカムロブが軸方向に隣接して形成されたカムキャリア(143)と、
前記カムキャリア(143)を軸方向に移動してバルブに作動するカムロブを切替えるカム切替機構と、
を備えた可変動弁装置において、
前記カムキャリア(143)には、同カムキャリア(143)を軸方向で摺動させるため切替ピンが係合・離脱されるリード溝が形成されるリード溝円筒部が設けられ、
前記カムシャフト(142)を回転自在に軸支する軸受部(133,103UA)に、前記カムキャリア(143)の前記リード溝円筒部の端部が挿入可能な凹部(133h,103UAh)が形成されることを特徴とする可変動弁装置。
【請求項3】
前記カム切替機構(70)は、
前記カムキャリア(43)の前記リード溝円筒部(43D)の外周面に周回するように前記リード溝(44)が形成され、
前記リード溝(44)に係合・離脱可能に進退する前記切替ピン(73,74)と、
前記切替ピン(73,74)にカム機構(Ca)を構成して係合する切替駆動シャフト(71)とを備え、
前記切替駆動シャフト(71,81)の駆動が前記カム機構(Ca)を介して前記切替ピン(73,74)を進退させ、
前記切替ピン(73,74)が進行して係合した前記リード溝(44)により、前記カムキャリア(43)が回転しながら軸方向に案内されて移動し、バルブ(41)に作動するカムロブ(43A,53A)を切替えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の可変動弁装置。
【請求項4】
前記リード溝(44)は、前記カムキャリア(43)の端面に近接して形成されることを特徴とする請求項3記載の可変動弁装置。
【請求項5】
前記カムキャリア(43)の前記リード溝(44)が形成される前記リード溝円筒部(43D)の外径は、複数の前記カムロブ(43A,43B)の同径の基礎円の外径より小さいことを特徴とする請求項3または請求項4記載の可変動弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関におけるバルブの作動特性を切替える可変動弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バルブ作動特性を決めるカムプロファイルが異なる複数のカムロブが外周面に形成されたカムキャリアが、カムシャフトに相対回転を禁止され軸方向に摺動可能に嵌合され、このカムキャリアを軸方向に移動することで、異なるカムロブをバルブに作動してバルブ作動特性を変える可変動弁装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5253575号公報
【0004】
特許文献1に開示された可変動弁装置は、回転軸受けに回転自在に軸支されたカムシャフトに摺動可能に嵌合するカムキャリアには、周回するように螺旋溝(リード溝)が形成されており、同螺旋溝にアクチュエータ(切替ピン)が係合することで、カムキャリアが回転しながら軸方向に案内されて移動し、バルブを作動するカムロブを切替えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カムキャリアはカムシャフト上を移動するので、カムシャフトにカムキャリアが移動するためのスペースを確保しておかなければならず、よって内燃機関がカムシャフトの軸方向に大型化する傾向にある。
【0006】
特許文献1の可変動弁装置においては、カムキャリアは、同カムキャリアの両側でカムシャフトを軸支する一対の回転軸受けの間を移動する。
カムキャリアは複数のカムロブと螺旋溝を有して一定の軸方向幅を有し、軸方向の移動に必要な距離も所定距離に設定されているので、カムキャリアの移動を規制する両側の回転軸受け間は、少なくともカムキャリアの軸方向幅に移動で必要な所定距離を加えた距離が必要とされ、これ以上狭く両側の回転軸受けを配設することができず、内燃機関の更なる小型化を難しくしている。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、カムキャリアの必要な移動スペースは確保しつつ内燃機関の軸方向幅をより小さく抑えて更なる小型化を図ることができる可変動弁装置を供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る可変動弁装置は、
内燃機関のシリンダヘッドに回転自在に軸支されたカムシャフトと、
前記カムシャフトの外周に相対回転を禁止され軸方向に摺動可能に嵌合する円筒状部材であって、外周面にカムプロファイルの異なる複数のカムロブが軸方向に隣接して形成されたカムキャリアと、
前記カムキャリアを軸方向に移動してバルブに作動するカムロブを切替えるカム切替機構と、
を備えた可変動弁装置において、
前記カムキャリアには、同カムキャリアを軸方向で摺動させるため切替ピンが係合・離脱されるリード溝が形成されるリード溝円筒部が設けられ、
前記カムシャフトにおける前記カムキャリアの前記リード溝円筒部の端部が軸方向で当接する拡径部の端面に、前記カムキャリアの端部が挿入可能な凹部が形成されることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、カムシャフトにおけるカムキャリアの端部が軸方向で当接する拡径部の端面に、カムキャリアのリード溝円筒部の端部が挿入可能な凹部が形成されるので、カムシャフトの拡径部の凹部によりカムキャリアの必要な移動スペースを確保しながら、カムシャフトの拡径部をカムキャリア側に寄せてカムシャフトの軸方向幅を小さくし、簡単な構造で内燃機関の軸方向幅をより小さく抑えて更なる小型化を図ることができる。
【0010】
本別の発明に係る可変動弁装置は、
内燃機関のシリンダヘッドに回転自在に軸支されたカムシャフトと、
前記カムシャフトの外周に、相対回転を禁止され軸方向に摺動可能に嵌合する円筒状部材であって、外周面にカムプロファイルの異なる複数のカムロブが軸方向に隣接して形成されたカムキャリアと、
前記カムキャリアを軸方向に移動してバルブに作動するカムロブを切替えるカム切替機構と、
を備えた可変動弁装置において、
前記カムキャリアには、同カムキャリアを軸方向で摺動させるため切替ピンが係合・離脱されるリード溝が形成されるリード溝円筒部が設けられ、
前記カムシャフトを回転自在に軸支する軸受部に、前記カムキャリアのリード溝円筒部の端部が挿入可能な凹部が形成されるようにしてもよい。
【0011】
この構成によれば、カムシャフトを回転自在に軸支する軸受部に、カムキャリアのリード溝円筒部の端部が挿入可能な凹部が形成されるので、軸受部の凹部によりカムキャリアの必要な移動スペースを確保しながら、軸受部をカムキャリア側に寄せて配設して、簡単な構造で内燃機関の軸方向幅をより小さく抑えて更なる小型化を図ることができる。
【0012】
前記構成において、
前記カム切替機構は、
前記カムキャリアの前記リード溝円筒部の外周面に周回するように前記リード溝が形成され、
前記リード溝に係合・離脱可能に進退する切替ピンと、
前記切替ピンにカム機構を構成して係合する切替駆動シャフトとを備え、
前記切替駆動シャフトの駆動が前記カム機構を介して前記切替ピンを進退させ、
前記切替ピンが進行して係合した前記リード溝により、前記カムキャリアが回転しながら軸方向に案内されて移動し、バルブに作動するカムロブを切替えるようにしてもよい。
【0013】
この構成によれば、カムキャリアの外周面に周回するようにリード溝が形成されるので、カムキャリアには複数のカムロブのほかにリード溝が形成され、カムキャリアの軸方向幅が大きくなり内燃機関が大型化し易いので、前記したように、カムシャフトの拡径部またはカムシャフトの軸受部にカムキャリアのリード溝円筒部の端部が挿入可能な凹部を設けることにより内燃機関の大型化を可及的に抑制することができる。
【0014】
前記構成において、
前記リード溝は、前記カムキャリアの端面に近接して形成されるようにしてもよい。
【0015】
この構成によれば、リード溝がカムキャリアの端面に近接して形成されるので、カムキャリアの軸方向幅を小さくすることができ、ひいてはカムシャフト42の軸方向幅を可及的に小さくすることが可能で、益々内燃機関Eの大型化を抑制することができる。
なお、カムシャフトの拡径部またはカムシャフトの軸受部の凹部にカムキャリアの端部が挿入されたとき、リード溝の軸方向最外側部が凹部に入るが、その他の部分は凹部に入らずに露出しているので、切替ピンのリード溝への係合・離脱ができカム切替えが可能である。
【0016】
前記構成において、
前記カムキャリアの前記リード溝が形成される前記リード溝円筒部の外径は、前記第1カムロブと前記第2カムロブの同径の基礎円の外径より小さいようにしてもよい。
【0017】
この構成によれば、カムキャリアのリード溝が形成されるリード溝円筒部の外径が、第1カムロブと第2カムロブの同径の基礎円の外径より小さいので、リード溝に係合する切替ピンをカムキャリアに近づけることができ、ひいては切替駆動シャフトをカムシャフトに近づけて、内燃機関の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、カムシャフトにおけるカムキャリアの端部が軸方向で当接する拡径部の端面に、カムキャリアのリード溝円筒部の端部が挿入可能な凹部が形成されるので、カムシャフトの拡径部の凹部によりカムキャリアの必要な移動スペースを確保しながら、カムシャフトの拡径部を軸方向内側に配設して、簡単な構造で内燃機関の軸方向幅をより小さく抑えて更なる小型化を図ることができる。



【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る可変動弁装置を備えた内燃機関の右側面図である。
図2】同内燃機関の一部カバーを外した左側面図である。
図3】同内燃機関の一部省略し一部バルブの処で断面とした左側面図である。
図4】シリンダヘッドカバーを外しシリンダヘッドを上方から視た上面図である。
図5】さらにカムシャフトホルダを外し同シリンダヘッドを上方から視た上面図である。
図6】さらにカムキャリアとともにカムシャフトを外し同シリンダヘッドを上方から視た上面図である。
図7図4におけるVII-VII線矢視断面図である。
図8】シリンダヘッドカバーを加えた図4におけるVIII-VIII線矢視断面図である。
図9】シリンダヘッドカバーを加えた図4におけるIX-IX線矢視断面図である。
図10図2におけるX−X矢視断面図である。
図11】吸気側カム切替機構と排気側カム切替機構の主要な要素のみを示す斜視図である。
図12】切替ピンの斜視図である。
図13】吸気側切替駆動シャフトと第1切替ピンの分解斜視図である。
図14】吸気側切替駆動シャフトに第1切替ピンと第2切替ピンを組付けた斜視図である。
図15】排気側切替駆動シャフトに第1切替ピンを組付けた斜視図である。
図16】吸気側カム切替機構の主要部材の動作過程を経時的に順に示した説明図である。
図17】排気側カム切替機構の主要部材の動作過程を経時的に順に示した説明図である。
図18】第2の実施の形態に係る可変動弁装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る第1の実施の形態について図1ないし図17に基づいて説明する。
本実施の形態に係る可変動弁装置40を備えた内燃機関Eは、水冷式の単気筒4ストローク内燃機関であり、4バルブ方式のDOHC構造の動弁機構を備えている図示しない自動二輪車に搭載される。
なお、本明細書の説明において、前後左右の向きは、自動二輪車の直進方向を前方とする通常の基準に従うものとし、図面において、FRは前方を,RRは後方を、LHは左方を,RHは右方を示すものとする。
【0021】
内燃機関Eは、クランクシャフト10を車両の車幅方向(左右方向)に指向させて横置きに車両に搭載される。
この左右方向に指向したクランクシャフト10を軸支するクランクケース1は、図3を参照して、クランクシャフト10が配置されるクランク室1cを形成するとともに、クランク室1cの後方には変速機Mを収容するミッション室1mが形成され、クランク室1cの下方には略水平な仕切壁1hで仕切られてオイルを貯留するオイルパン室1oが一体に形成される構造をしている。
【0022】
図1ないし図3を参照して、内燃機関Eは、上記クランクケース1のクランク室1cの上に、1本のシリンダ2aを有するシリンダブロック2と、シリンダブロック2の上部にガスケットを介して結合されるシリンダヘッド3と、シリンダヘッド3の上部に被せられるシリンダヘッドカバー4とから構成される機関本体を備える。
【0023】
シリンダブロック2のシリンダ2aの中心軸線であるシリンダ軸線Lcは、若干後方に傾いており、クランクケース1の上に重ねられるシリンダブロック2,シリンダヘッド3,シリンダヘッドカバー4は、クランクケース1から若干後傾した姿勢で上方に延出している。
また、クランクケース1の下方には、前記オイルパン室1oを形成するオイルパン5が延出している。
【0024】
クランクケース1のミッション室1mには、変速機Mのメインシャフト11とカウンタシャフト12とが、クランクシャフト10と平行に左右水平方向に指向して配設されており(図3参照)、カウンタシャフト12はクランクケース1を左方に貫通して外部に突出して出力シャフトとなっている。
【0025】
クランク室1cの後方のミッション室1mに配設される変速機Mは、メインギヤ群11gおよびカウンタギヤ群12gがそれぞれ設けられた前記メインシャフト11およびカウンタシャフト12と、変速操作機構により操作されるシフトドラム16およびシフトフォーク17a,17b,17cを有する変速切換え機構15とを備える(図3参照)。
【0026】
図3を参照して、シリンダブロック2のシリンダ2a内を往復動するピストン20とクランクシャフト10は、各々のピストンピン20pとクランクピン10pとに両端を支承されたコネクティングロッド21により連結されてクランク機構を構成している。
【0027】
本内燃機関Eは、4バルブ方式でDOHC構造の可変動弁装置40を備えている。
図3を参照して、シリンダヘッド3には、シリンダ2aに対応して、シリンダ軸線方向でピストン20の頂面に対向して燃焼室30が構成され、燃焼室30からは、吸気ポート31iが2本前方に湾曲し斜め上方に延出するとともに、排気ポート31eが2本後方に湾曲して延出している。
【0028】
2本の吸気ポート31i,31iは、上流側で合流し、その延長である吸気通路にはスロットルボディ22が介装され、スロットルボディ22の吸気通路上流側は開放されている。
燃焼室30の天井壁中央には点火プラグ23が先端を燃焼室30に臨ませて取り付けられる。
【0029】
シリンダヘッド3に一体に嵌着されたバルブガイド32i,32eにそれぞれ摺動可能に支持される吸気バルブ41および排気バルブ51は、内燃機関Eに備えられる可変動弁装置40により駆動されて、吸気ポート31iの吸気開口および排気ポート31eの排気開口をクランクシャフト10の回転に同期して開閉する。
【0030】
可変動弁装置40は、シリンダヘッド3とシリンダヘッドカバー4により形成される動弁室3c内に設けられる。
可変動弁装置40の一部を外しシリンダヘッド3を上方から視た上面図である図6を参照して、シリンダヘッド3は、前後の前側壁3Fr,後側壁3Rrと左右の左側壁3L,右側壁3Rにより矩形状をなし、左側壁3Lに寄って平行に形成された軸受壁3Uにより動弁室3cを仕切って左側にギア室3gを形成している。
また、動弁室3cは燃焼室30の上方に位置し、軸受壁3Vにより左右の室に仕切られている。
【0031】
ギア室3gを仕切る軸受壁3Uの上端面には、前後に半円弧面をなす軸受凹面3Ui,3Ueが形成され、動弁室3c内を仕切る軸受壁3Vの上端面には、前後に半円弧面をなす軸受凹面3Vi,3Veが形成されるとともに、中央に点火プラグ23を嵌挿するプラグ嵌挿筒部3Vpが形成されている。
【0032】
左右1対の吸気バルブ41,41の上を左右方向に指向して配設された吸気側カムシャフト42と左右1対の排気バルブ51,51の上を左右方向に指向して配設された排気側カムシャフト52が、シリンダヘッド3の軸方向(左右方向)に垂直な軸受壁3U,3Vとカムシャフトホルダ33,34に挟まれるようにして回転自在に軸支される(図4図10参照)。
【0033】
図5および図10を参照して、吸気側カムシャフト42は、左端部が拡径した被軸受部42Bを有し、被軸受部42Bの左右にフランジ部42A,42Cが形成されている。
右側フランジ部42Cの右側に外周面にスプライン外歯を形成したスプライン軸部42Dが延出している。
【0034】
吸気側カムシャフト42には、右端面からスプライン軸部42Dの内部を経て被軸受部42Bの内部まで中心軸に沿って給油路42hが穿穴されており、給油路42hの左端部からは放射方向に被軸受部42Bの外周面まで給油連通孔42haが形成されるとともに、スプライン軸部42Dでは軸方向に3か所ほど給油路42hから放射方向にカム連通油孔42hb,軸受連通油孔42hc,カム連通油孔42hbが穿孔されている。
左側のカム連通油孔42hb,中央の軸受連通油孔42hc,右側のカム連通油孔42hbは、スプライン軸部42Dの外周面に周回するように形成された3条のカム外周溝42bv,軸受外周溝42cv,カム外周溝42bvにそれぞれ開口している(図10参照)。
給油路42hの右端は栓部材45が圧入されて閉塞されている。
【0035】
シリンダヘッド3の軸受部3UAにおける吸気側カムシャフト42と排気側カムシャフト52を軸受する軸受凹面3Ui,3Ueには、図6および図7に示されるように、内周油溝3Uiv,3Uevが形成されている。
一方、カムシャフトホルダ33には、図7を参照して、ホルダ上面に沿って前後方向に穿孔して共通油路33sが形成されており、共通油路33sは吸気側カムシャフト42と排気側カムシャフト52を軸受する各軸受凹面33i,33eの上方を共通に通っている。
なお、共通油路33sは、後記する締結ボルト38dのボルト孔を途中経由している。
【0036】
この共通油路33sから分岐した枝油路33it,33etが、シリンダヘッド3の軸受部3UAとの合せ面に向けて穿設されている(図7参照)。
図7に示されるように、枝油路33itは、シリンダヘッド3側の軸受凹面3Uiの後部側に開口した内周油溝3Uivに連通し、枝油路33etは、シリンダヘッド3側の軸受凹面3Ueの前部側に開口した内周油溝3Uevに連通する。
共通油路33sは、後端で垂直油路33rと連通し、垂直油路33rはシリンダヘッド3の軸受壁3U側の垂直油路3Urに連通する。
【0037】
したがって、シリンダヘッド3の垂直油路3Urを通ったオイルは、カムシャフトホルダ33側の垂直油路33rを介して共通油路33sに流入し、共通油路33sから枝油路33it,33etに分配されて、前後の内周油溝3Uiv,3Uevに供給されて、吸気側カムシャフト42と排気側カムシャフト52の軸受を潤滑する。
【0038】
さらに、吸気側カムシャフト42の被軸受部42Bの給油連通孔42haは内周油溝3Uivに開口しており(図7図10参照)、オイルは内周油溝3Uivから給油連通孔42haを通って吸気側カムシャフト42の給油路42hに供給される。
同様に、排気側カムシャフト52の被軸受部52Bの給油連通孔52haは内周油溝3Uevに開口しており(図7参照)、オイルは内周油溝3Uevから給油連通孔52haを通って排気側カムシャフト52の給油路52hに供給される。
【0039】
そして、図10を参照して、吸気側カムシャフト42の被軸受部42Bの給油連通孔42haから給油路42hに供給されたオイルは、カム連通油孔42hb,軸受連通油孔42hc,カム連通油孔42hbからスプライン軸部42Dの外周面に排出される。
排気側カムシャフト52の被軸受部52Bの給油連通孔52haから給油路52hに供給されたオイルは、図示しない同様の連通油孔からスプライン軸部52Dの外周面に排出される。
【0040】
吸気側カムシャフト42のスプライン軸部42Dには、円筒状部材である吸気側カムキャリア43がスプライン嵌合する。
したがって、吸気側カムキャリア43は、吸気側カムシャフト42に対して相対回転を禁止されて軸方向に摺動可能に嵌合する。
このスプライン嵌合部にカム連通油孔42hb,軸受連通油孔42hc,カム連通油孔42hbから排出されたオイルが供給される(図10参照)。
【0041】
図10に示されるように、吸気側カムシャフト42の拡径部である被軸受部42Bの右側フランジ部42Cの吸気側カムキャリア43の左端部が当接する右側面に、吸気側カムキャリア43の左端部が挿入可能な凹部42Chが形成されている。
吸気側カムシャフト42の被軸受部42Bの右側面に形成された凹部42Chにより吸気側カムキャリア43の必要な移動スペースを確保しながら、吸気側カムシャフト42の被軸受部42Bを吸気側カムキャリア43側に寄せて吸気側カムシャフト42を短く設定できる。
【0042】
吸気側カムキャリア43は、外周面にカムプロファイルの異なる一対の第1カムロブ43Aと第2カムロブ43Bが軸方向左右に隣接したものが、軸方向で所定幅の被軸受円筒部43Cを間に挟んで左右に1組ずつそれぞれ形成されている。
隣接する第1カムロブ43Aと第2カムロブ43Bは、カムプロファイルの基礎円の外径は互いに等しく同じ周方向位置にある(図8参照)。
【0043】
図5および図10を参照して、吸気側カムキャリア43は、左側の第1カムロブ43Aと第2カムロブ43Bの組のうち左側の第1カムロブ43Aより左側に、リード溝44が周回するように形成されたリード溝円筒部43Dを有し、右側の第1カムロブ43Aと第2カムロブ43Bの組のうち右側の第2カムロブ43Bより右側に、右端円筒部43Eを有する。
リード溝円筒部43Dの外径は、第1カムロブ43Aと第2カムロブ43Bの同径の基礎円の外径より小さい(図10参照)。
【0044】
リード溝円筒部43Dのリード溝44は、軸方向所定位置で円環状に周方向に一周する環状リード溝44cが形成されるとともに、環状リード溝44cから左右に枝分かれして軸方向左右に所定距離離れた位置まで螺旋状に左シフトリード溝44lと右シフトリード溝44rが形成されている(図4図10参照)。
【0045】
左シフトリード溝44lは、吸気側カムキャリア43の左端面に近接して形成されている。
したがって、吸気側カムキャリア43の端部をできるだけ短くして吸気側カムキャリア43自体の軸方向幅を小さく抑えることができる。
【0046】
図10に示されるように、吸気側カムシャフト42の被軸受部42Bの右側面に形成された凹部42Chに吸気側カムキャリア43の左端部が挿入されたとき、吸気側カムキャリア43の左端面に近接して形成された左シフトリード溝44lの一部も凹部42Chに挿入されるが、左シフトリード溝44lのその他の部分は凹部42Chに入らずに露出しているので、後記する第1切替ピン73の係合には支障はなく、カム切替えが可能である。
【0047】
図10を参照して、吸気側カムキャリア43の被軸受円筒部43Cには、軸方向2カ所に円筒の内外を連通する軸受給油孔43Ca,43Cbが形成されている。
また、第1カムロブ43Aおよび第2カムロブ43Bにも内側から基礎円のカム面の外側に連通するカム給油孔43Ah,43Bhがそれぞれ形成されている(図9図10参照)。
【0048】
吸気側カムキャリア43および排気側カムキャリア53は、図9に示す側面視で時計回りに回転し、回転する吸気側カムキャリア43の図9に示される第2カムロブ43Bのカム面は、後記する吸気ロッカアーム72に摺接して吸気ロッカアーム72を揺動し吸気バルブ41を作動する。
第2カムロブ43Bのカム山のカム面には、先に吸気ロッカアーム72に摺接してカム面圧が上昇する側とその後で吸気ロッカアーム72に摺接してカム面圧が下降する側とがあるが、第2カムロブ43Bのカム給油孔43Bhは、第2カムロブ43Bの基礎円のカム面のうちカム山のカム面圧が下降する側よりカム面圧が上昇する側に近い位置に開口するように穿設されている。
【0049】
第1カムロブ43Aのカム給油孔43Ahも同様に、第1カムロブ43Aの基礎円のカム面のうちカム面圧が上昇する側に近い位置に開口するように穿設されている。
また排気側カムキャリア53の第1カムロブ53Aおよび第2カムロブ53Bにおけるカム給油孔も同様である。
【0050】
吸気側カムキャリア43の右端円筒部43Eには、有底円筒状をしたキャップ部材46が嵌合して被せられる。
また、吸気側カムシャフト42の左側フランジ部42Aには、吸気側被動ギア47が同軸に左側から嵌合して2本のねじ48,48により一体に締結される(図10参照)。
【0051】
図10を参照して、吸気側カムシャフト42のスプライン軸部42Dに吸気側カムキャリア43をスプライン嵌合し、吸気側カムキャリア43の右端円筒部43Eにキャップ部材46を被せた状態で、吸気側カムシャフト42の被軸受部42Bがシリンダヘッド3の軸受壁3Uに形成された軸受凹面3Uiとカムシャフトホルダ33の半円弧面の軸受凹面33iに挟まれて回転自在に軸支されるとともに、吸気側カムキャリア43の被軸受円筒部43Cがシリンダヘッド3の軸受壁3Vに形成された軸受凹面3Viとカムシャフトホルダ34の半円弧面の軸受凹面34iに挟まれて回転自在に軸支される。
【0052】
吸気側カムシャフト42は、被軸受部42Bの左右のフランジ部42A,42Cがシリンダヘッド3の軸受壁3Uとカムシャフトホルダ33を挟むようにして軸方向の位置決めがなされており、左側フランジ部42Aに取り付けられた吸気側被動ギア47はギア室3g内に位置する。
このように軸方向の位置決めがなされて回転する吸気側カムシャフト42のスプライン軸部42Dにスプライン嵌合された吸気側カムキャリア43は、吸気側カムシャフト42とともに回転しながら軸方向に移動可能である。
【0053】
吸気側カムキャリア43は、軸方向で所定幅の被軸受円筒部43Cがシリンダヘッド3の軸受壁3Vとカムシャフトホルダ34により軸受されるので、軸受壁3Vとカムシャフトホルダ34を挟んで左側に対向する第2カムロブ43Bと右側に対向する第1カムロブ43Aが、軸受壁3Vとカムシャフトホルダ34に当接することにより吸気側カムキャリア43の軸方向の移動が規制される(図10参照)。
【0054】
図10を参照して、吸気側カムシャフト42の給油路42h内のオイルは、カム連通油孔42hb,軸受連通油孔42hc,カム連通油孔42hbから各カム外周溝42bv,軸受外周溝42cv,カム外周溝42bvにそれぞれ吐出されてスプライン軸部42Dの外周の吸気側カムキャリア43とのスプライン嵌合部を潤滑するとともに、吸気側カムシャフト42の被軸受部42Bの軸受連通油孔42hcは、軸受壁3Vとカムシャフトホルダ34と同じ軸方向位置にあり、同軸受連通油孔42hcに対応して軸方向に移動する吸気側カムキャリア43の被軸受円筒部43Cには2つの軸受給油孔43Ca,43Cbがあり、吸気側カムキャリア43の左シフト時は図5に示すように一方の軸受給油孔43Cbが軸受連通油孔42hcに対向し、右シフト時は他方の軸受給油孔43Caが軸受連通油孔42hcに対向するので、いずれのシフト時も軸受給油孔43Caまたは軸受給油孔43Cbのいずれかを介して軸受凹面3Vi,34iにオイルが供給され潤滑することができる。
【0055】
なお、吸気側カムキャリア43の軸方向移動を規制して位置決めするのに、吸気側カムキャリア43の内周面における軸受給油孔43Ca,43Cbの軸方向位置にそれぞれ球面状の係合凹部を形成し、吸気側カムシャフト42内の軸受連通油孔42hcの軸方向位置に内装されたコイルばねにより付勢された係合ボールが、吸気側カムシャフト42の外周面から出没自在に突出して2つの係合凹部のいずれかに係合して位置決めされるようにしてもよい。
2つの係合凹部と係合ボールは、上記位置関係を保てば、吸気側カムキャリア43と吸気側カムシャフト42の軸方向のどの位置にでも設けることができる。
【0056】
また、吸気側カムシャフト42の軸受連通油孔42hcの両側のカム連通油孔42hb,42hbは、それぞれ吸気バルブ41,41(および後記する吸気ロッカアーム72,72)と同じ軸方向位置にあって、吸気側カムキャリア43の左シフト時には、第2カムロブ43B,43Bが同じ軸方向位置となり(図5参照)、吸気側カムキャリア43の右シフト時には、第1カムロブ43A,43Aが同じ軸方向位置となる。
【0057】
したがって、吸気側カムキャリア43が左シフトしたときは、図10に示されるように、第2カムロブ43B,43Bのカム給油孔43Bh,43Bhが吸気側カムシャフト42のカム連通油孔42hb,42hbに対向して、第2カムロブ43B,43Bのカム面にオイルが供給され吸気ロッカアーム72,72との摺接部を潤滑する。
【0058】
吸気側カムキャリア43が右シフトしたときは、第1カムロブ43A,43Aのカム給油孔43Ah,43Ahが吸気側カムシャフト42のカム連通油孔42hb,42hbに対向して第1カムロブ43A,43Aのカム面にオイルが供給され吸気ロッカアーム72,72との摺接部を潤滑する。
このように、左右いずれのシフト時もカムロブ43A,43Bと吸気ロッカアーム72との摺接部にオイルを供給して潤滑することができる。
【0059】
一方で、排気側カムシャフト52は、吸気側カムシャフト42と同じ形状をしており、左側フランジ部52A,被軸受部52B,右側フランジ部52C,スプライン軸部52Dが順に形成されている(図5参照)。
【0060】
そして、排気側カムシャフト52のスプライン軸部52Dにスプライン嵌合される排気側カムキャリア53は、吸気側カムキャリア43と同じように、外周面にカムプロファイルの異なる一対の第1カムロブ53Aと第2カムロブ53Bが軸方向左右に隣接したものが、軸方向で所定幅の被軸受円筒部53Cを間に挟んで左右に1組ずつそれぞれ形成されている。
隣接する第1カムロブ53Aと第2カムロブ53Bは、カムプロファイルの基礎円の外径は互いに等しい。
【0061】
しかし、図11を参照して、排気側カムキャリア53は、吸気側カムキャリア43と異なり、リード溝が2カ所に分かれて形成されており、左側の組の第1カムロブ53Aの左側に、左側リード溝54が周回するように形成されたリード溝円筒部53Dを有し、右側の組の第2カムロブ53Bの右側に右側リード溝55が周回するように形成されたリード溝円筒部53Eを有し、このリード溝円筒部53Eの右側に右端円筒部53Fを有する。
リード溝円筒部53D,53Eの外径は、第1カムロブ53Aと第2カムロブ53Bの同径の基礎円の外径より小さい。
【0062】
図4および図5を参照して、左側のリード溝円筒部53Dのリード溝54は、排気側カムキャリア53の左端面に近接する軸方向所定位置で周方向に一周する環状リード溝54cが形成され、環状リード溝54cから右に枝分かれして軸方向右に所定距離離れた位置まで螺旋状に右シフトリード溝54rが形成されている。
右側のリード溝円筒部53Eのリード溝55は、軸方向所定位置で周方向に一周する環状リード溝55cが形成され、環状リード溝55cから左に枝分かれして軸方向左に所定距離離れた位置まで螺旋状に左シフトリード溝55lが形成されている。
【0063】
排気側カムキャリア53の右端円筒部53F(図11参照)には、有底円筒状をしたキャップ部材56が嵌合して被せられる(図5参照)。
また、排気側カムシャフト52の左側フランジ部52Aには、排気側被動ギア57が同軸に左側から嵌合して2本のねじ58,58により一体に締結される(図4図5参照)。
【0064】
図5を参照して、排気側カムシャフト52のスプライン軸部52Dに排気側カムキャリア53をスプライン嵌合し、排気側カムキャリア53の右端円筒部53Fにキャップ部材56を被せた状態で、図6に示される排気側カムシャフト52の被軸受部52Bをシリンダヘッド3の軸受壁3Uに形成された軸受凹面3Ueとカムシャフトホルダ33の半円弧面の軸受凹面に挟まれて回転自在に軸支されるとともに、排気側カムキャリア53の被軸受円筒部53Cをシリンダヘッド3の軸受壁3Vに形成された軸受凹面3Veとカムシャフトホルダ34の半円弧面の軸受凹面に挟まれて回転自在に軸支される(図4参照)。
【0065】
排気側カムシャフト52は、被軸受部52Bの左右のフランジ部52A,52Cがシリンダヘッド3の軸受壁3Uとカムシャフトホルダ33を挟むようにして軸方向の位置決めがなされており、左側フランジ部52Aに取り付けられた排気側被動ギア57はギア室3g内に位置する。
このように軸方向の位置決めがなされて回転する排気側カムシャフト52のスプライン軸部52Dにスプライン嵌合された排気側カムキャリア53は、排気側カムシャフト52とともに回転しながら軸方向に移動可能である。
【0066】
排気側カムキャリア53は、軸方向で所定幅の被軸受円筒部53Cがシリンダヘッド3の軸受壁3Vとカムシャフトホルダ34により軸受されるので、軸受壁3Vとカムシャフトホルダ34を挟んで左側に対向する第2カムロブ53Bと右側に対向する第1カムロブ53Aが、軸受壁3Vとカムシャフトホルダ34に当接することにより排気側カムキャリア53の軸方向の移動が規制される。
【0067】
なお、排気側カムシャフト52と排気側カムキャリア53のスプライン嵌合部やその他の軸受を潤滑するオイルの供給経路は、吸気側カムシャフト42と吸気側カムキャリア43の構造と略同じである。
【0068】
吸気側カムシャフト42の左側フランジ部42Aに取り付けられた吸気側被動ギア47と排気側カムシャフト52の左側フランジ部52Aに取り付けられた排気側被動ギア57は、ギア室3gに前後に並んで配設されている。
【0069】
図2に示されるように、この前後の同径の吸気側被動ギア47と排気側被動ギア57の双方に噛合するアイドルギア61が、両者の間の下方に設けられる。
アイドルギア61は、吸気側被動ギア47および排気側被動ギア57より大径のギアであり、図10に示されるように、シリンダヘッド3の左側壁3Lと軸受壁3Uとの間にギア室3gを貫通して架設される円筒状支軸65にベアリング63を介して回転自在に軸支されている。
【0070】
円筒状支軸65は左側壁3Lを貫通してボルト64により軸受壁3Uに固定される。
円筒状支軸65は、大径部端面がベアリング63のインナレースをカラー部材65aを介して軸受壁3Uとの間に挟み、ボルト64により締付けて固定される。
【0071】
図10を参照して、アイドルギア61は、ベアリング63のアウタレースに嵌合する円筒ボス部61bが右側に突出して形成されており、この円筒ボス部61bの外周にアイドルチェーンスプロケット62が嵌着されている。
アイドルチェーンスプロケット62は、アイドルギア61と略同径の大きな外径を有する。
【0072】
この大径のアイドルチェーンスプロケット62は、図7および図10に示されるように、吸気側カムシャフト42の被軸受部42Bおよび排気側カムシャフト52の被軸受部52Bを支持する軸受壁3Uの上端の軸受凹面3Ui,3Ueを形成する軸受部3UAと同じ軸方向(左右方向)位置にあって、軸受部3UAの下方に位置する。
【0073】
図4を参照して、シリンダヘッド3の軸受部3UAの軸受凹面3Ui,3Ueに吸気側カムシャフト42の被軸受部42Bと排気側カムシャフト52の被軸受部52Bを、軸受凹面33i,33eで挟んで軸支するカムシャフトホルダ33は、吸気側カムシャフト42を挟んで前後両側のボルト孔を有する締結部位33a,33bが締結ボルト38a,38bにより締結され、排気側カムシャフト52を挟んで前後両側のボルト孔を有する締結部位33c,33dが締結ボルト38c,38dにより締結される。
【0074】
シリンダヘッド3の軸受部3UAの下方に大径のアイドルチェーンスプロケット62が配置されるので、4本の締結ボルト38a,38b,38c,38dのうち前後外側2本の締結ボルト38a,38dは、アイドルチェーンスプロケット62を間に挟んで両側の締結部位33a,33dを締結する(図4図7参照)。
【0075】
また、シリンダヘッド3の軸受壁3Uとカムシャフトホルダ33には、図4および図5に示されるように、吸気側カムシャフト42と排気側カムシャフト52との間に軸方向内側(右側)に膨出した膨出部3UB,33Bが形成されている。
【0076】
この膨出部3UB,33Bは、下方のアイドルチェーンスプロケット62を軸方向内側(右側)に避けた位置まで膨出しており、図4および図5に示されるように、吸気側カムキャリア43のリード溝円筒部43Dと軸方向位置を同じくして互いに前後に近接して設けられている。
前記4本の締結ボルト38a,38b,38c,38dのうち内側2本の締結ボルト38b,38cは、この膨出部33Bに設けられた締結部位33b,33cを締結する(図4図7参照)。
【0077】
図4を参照して、吸気側カムキャリア43の被軸受円筒部43Cと排気側カムキャリア53の被軸受円筒部53Cを軸受壁3Vとの間に挟んで軸支するカムシャフトホルダ34は、被軸受円筒部43Cを挟んで前後両側を締結ボルト39a,39bにより締結され、被軸受円筒部53Cを挟んで前後両側を締結ボルト39c,39dにより締結される。
カムシャフトホルダ34の中央には、軸受壁3Vのプラグ嵌挿筒部3Vpに連結するプラグ嵌挿筒部34pが形成されている(図4参照)。
【0078】
図2を参照して、大径のアイドルチェーンスプロケット62にはカムチェーン66が巻き掛けられ、同カムチェーン66は、一方で、下方のクランクシャフト10に嵌着された小径の駆動チェーンスプロケット67に巻き掛けられている。
アイドルチェーンスプロケット62と駆動チェーンスプロケット67に巻き掛けられたカムチェーン66は、カムチェーンテンショナガイド68により張力を与えられ、カムチェーンガイド69にガイドされて回動する(図2参照)。
【0079】
したがって、クランクシャフト10の回転が、カムチェーン66を介してアイドルチェーンスプロケット62に伝達されて、アイドルチェーンスプロケット62をアイドルギア61とともに回転し、アイドルギア61の回転がアイドルギア61と噛合する吸気側被動ギア47と排気側被動ギア57を回転させるので、吸気側被動ギア47が吸気側カムシャフト42と一体に回転し、排気側被動ギア57が排気側カムシャフト52と一体に回転する。
【0080】
図11は、可変動弁装置40の吸気側カム切替機構70と排気側カム切替機構80の主要な要素のみを示す斜視図である。
クランクシャフト10に同期して回転する吸気側カムシャフト42と排気側カムシャフト52に、それぞれ吸気側カムキャリア43と排気側カムキャリア53がスプライン嵌合している。
【0081】
吸気側カムシャフト42の後斜め下方に吸気側カム切替機構70の吸気側切替駆動シャフト71が吸気側カムシャフト42と平行に配設されるとともに、排気側カムシャフト52の後斜め下方に排気側カム切替機構80の排気側切替駆動シャフト81が排気側カムシャフト52と平行に配設される。
【0082】
吸気側切替駆動シャフト71および排気側切替駆動シャフト81は、シリンダヘッド3に支持される。
図6を参照して、シリンダヘッド3の動弁室3cに左右方向に指向した筒状部3Aが、中央より若干前寄り位置に軸受壁3Uから軸受壁3Vを貫いて右側壁3Rまで一直線に形成されている。
【0083】
また、シリンダヘッド3の動弁室3cに左右方向に指向した筒状部3Bが、後側壁3Rrの内面に軸受壁3Uから軸受壁3Vを貫いて右側壁3Rまで一直線に形成されている。
筒状部3Aの軸孔に吸気側切替駆動シャフト71が軸方向に摺動自在に嵌挿され、筒状部3Bの軸孔に排気側切替駆動シャフト81が軸方向に摺動自在に嵌挿される。
【0084】
筒状部3Aにおける軸受壁3Vを挟んだ両側位置で、左右の吸気バルブ41,41にそれぞれ対応する2カ所が欠損して吸気側切替駆動シャフト71が露出しており、この吸気側切替駆動シャフト71の露出した部分に吸気ロッカアーム72,72が揺動自在に軸支される(図7図8参照)。
すなわち、吸気側切替駆動シャフト71はロッカアームシャフトを兼ねる。
【0085】
図11を参照して、吸気ロッカアーム72の先端部は、吸気バルブ41の上端部に当接し、吸気ロッカアーム72の湾曲した上端面には吸気側カムキャリア43の移動により第1カムロブ43Aまたは第2カムロブ43Bのいずれかが摺接する。
したがって、吸気側カムキャリア43が回転すると、第1カムロブ43Aまたは第2カムロブ43Bのいずれかが、そのプロファイルに従って吸気ロッカアーム72を揺動し、吸気バルブ41を押圧して燃焼室30の吸気弁口を開く。
【0086】
同様に、筒状部3Bにおける軸受壁3Vを挟んだ両側位置で、左右の排気バルブ51,51にそれぞれ対応する2カ所が欠損して排気側切替駆動シャフト81が露出しており、この排気側切替駆動シャフト81の露出した部分に,排気ロッカアーム82が揺動自在に軸支される(図6参照)。
すなわち、排気側切替駆動シャフト81はロッカアームシャフトを兼ねる。
【0087】
図11を参照して、排気ロッカアーム82の先端部は、排気バルブ51の上端部に当接し、排気ロッカアーム82の湾曲した上端面には排気側カムキャリア53の移動により第1カムロブ53Aまたは第2カムロブ53Bのいずれかが摺接する。
したがって、排気側カムキャリア53が回転すると、第1カムロブ53Aまたは第2カムロブ53Bのいずれかが、そのプロファイルに従って排気ロッカアーム82を揺動し、排気バルブ51を押圧して燃焼室30の排気弁口を開く。
【0088】
図5および図6を参照して、筒状部3Aの軸受壁3U寄りの位置で、吸気側カムキャリア43のリード溝円筒部43Dに対応する箇所に、左右に隣接して2つの円筒ボス部3As,3Asがリード溝円筒部43Dに向けて突出して形成されている。
円筒ボス部3Asの内側の孔は、筒状部3Aを貫通している。
この左右の円筒ボス部3As,3Asの各内側の孔には、それぞれ第1切替ピン73と第2切替ピン74が摺動自在に嵌挿される。
【0089】
図8を参照して、円筒ボス部3Asの第1切替ピン73(および第2切替ピン74)が突出する先端開口部は、第1カムロブ43Aおよび第2カムロブ43Bのカム山の最大径の円と軸方向視(図8)で重なる。
【0090】
すなわち、カム山の小さい第1カムロブ43Aの最大径の円が円筒ボス部3Asの先端開口部と重なる。
よって、吸気側カムシャフト42に吸気側切替駆動シャフト71をできるだけ近づけて配設することができ、内燃機関Eの小型化を図ることができる。
【0091】
図12を参照して、第1切替ピン73は、先端円柱部73aと基端円柱部73bとを中間連結棒部73cが一直線に連結している。
先端円柱部73aより基端円柱部73bは外径が小さい。
【0092】
また、先端円柱部73aには縮径した係合端73aeがさらに突出している。
基端円柱部73bの中間連結棒部73c側の端面は円錐状をした円錐端面73btを形成している。
なお、基端円柱部73bの中間連結棒部73c側の端面は、球面状をしていてもよい。
第2切替ピン74も第1切替ピン73と同じ形状を有している。
【0093】
一方で、吸気側切替駆動シャフト71は、図13に示されるように、左側に軸中心を貫通する長孔71aが形成され、同長孔71aの左端に軸中心を貫通する円孔71bが形成されている。
長孔71aの幅は、第1切替ピン73の中間連結棒部73cの径より若干大きく、円孔71bの内径は、基端円柱部73bの外径より若干大きいが、先端円柱部73aの外径よりは小さい。
【0094】
図13を参照して、吸気側切替駆動シャフト71の長孔71aの一方の開口端面は、縁取りされて傾斜して直線的に延びる平坦面71Cpと、その途中所定位置に所定の形状に凹んで形成された凹曲面71Cvとからなるカム面71Cを構成している。
【0095】
第1切替ピン73は、吸気側切替駆動シャフト71の長孔71aに中間連結棒部73cが貫通して摺動可能に係合する(図14参照)。
吸気側切替駆動シャフト71に第1切替ピン73を組付けるには、次のようにする。
【0096】
図13に示されるように、第1切替ピン73にコイルばね75を周設するが、コイルばね75は、内径が基端円柱部73bの外径より大きく、外径が先端円柱部73aの外径より小さいので、コイルばね75に第1切替ピン73を基端円柱部73b側から挿入すると、先端円柱部73aの中間連結棒部73c側の端面がコイルばね75の端部に当接する。
【0097】
そして、シリンダヘッド3の筒状部3Aの軸孔に吸気側切替駆動シャフト71を挿入し、その円孔71bが筒状部3Aに形成された円筒ボス部3Asの内側の孔と同軸になるようにしておき、コイルばね75が周設された第1切替ピン73を円筒ボス部3Asの内側の孔に基端円柱部73b側から挿入すると、円筒ボス部3Asの内側の孔にコイルばね75ごと第1切替ピン73が摺動可能に嵌挿され(図8参照)、さらに筒状部3Aの軸孔に挿入された吸気側切替駆動シャフト71の円孔71bを基端円柱部73bが貫通する(図13参照)。
【0098】
第1切替ピン73の基端円柱部73bが吸気側切替駆動シャフト71の円孔71bを貫通しても、コイルばね75は貫通できず、コイルばね75は端部が円孔71bの開口端面に当接して先端円柱部73aの端面との間で圧縮される。
【0099】
この基端円柱部73bが円孔71bを貫通した状態で、第1切替ピン73の中間連結棒部73cが吸気側切替駆動シャフト71の長孔71aに対応する位置にあるので、吸気側切替駆動シャフト71を左方に移動すると、コイルばね75が圧縮された状態で中間連結棒部73cが長孔71aに入っていく。
すると、図14に示されるように、第1切替ピン73はコイルばね75の付勢力により基端円柱部73bの円錐端面73btが、吸気側切替駆動シャフト71の長孔71aの開口端面であるカム面71Cに押圧されて係合することで、第1切替ピン73が組付けられる。
【0100】
このように、第1切替ピン73は、中間連結棒部73cが吸気側切替駆動シャフト71の長孔71aを貫通し、コイルばね75により付勢されて基端円柱部73bの円錐端面73btが吸気側切替駆動シャフト71の長孔71aの開口端面であるカム面71Cに押圧され係合された状態に組付けられるので、吸気側切替駆動シャフト71が軸方向に移動すると、軸方向定位置にあって摺動する第1切替ピン73の基端円柱部73bの円錐端面73btが当接するカム面71Cが摺動し、カム面71Cの形状に案内されて第1切替ピン73が軸方向と直角方向に進退する直動カム機構Caが構成されている。
【0101】
直動カム機構Caは、第1切替ピン73の円錐端面73btが、吸気側切替駆動シャフト71のカム面71Cのうち平坦面71Cpに当接するときは、第1切替ピン73は後退位置にあり、吸気側切替駆動シャフト71が移動してカム面71Cのうち凹曲面71Cvに円錐端面73btが当接するようになると、コイルばね75の付勢力により第1切替ピン73は進行するものである。
【0102】
第2切替ピン74も第1切替ピン73と同じ形状を有して、同じように吸気側切替駆動シャフト71の同じ長孔71aを貫通し、コイルばね75の付勢力により基端円柱部74bの円錐端面74btがカム面71Cに押圧されて係合し、直動カム機構Caを構成して組付けられる(図14参照)。
なお、第1切替ピン73と第2切替ピン74を吸気側切替駆動シャフト71に係合して組付けるときは、第2切替ピン74の方を先に組付ける。
【0103】
なお、吸気側切替駆動シャフト71の右側の吸気ロッカアーム72が軸支される部位の右側に軸方向に所定長さの長孔である移動規制孔71zが形成されており(図11参照)、シリンダヘッド3の筒状部3Aに穿孔された小孔3Ahに嵌挿された移動規制ピン76が移動規制孔71zを貫通することで、吸気側切替駆動シャフト71の軸方向の移動が所定位置間の移動に規制される(図4参照)。
【0104】
図14に示されるように、第1切替ピン73と第2切替ピン74は、吸気側切替駆動シャフト71の共通の長孔71aを貫通して互いに平行に並んで配設される。
図14は、吸気側切替駆動シャフト71のカム面71Cのうち凹曲面71Cvの中央が、第1切替ピン73の位置にある状態を示しており、第1切替ピン73が凹曲面71Cvに円錐端面73btを当接して進行した位置にあり、第2切替ピン74はカム面71Cのうち平坦面71Cpに当接して退行した位置にある。
【0105】
この状態から吸気側切替駆動シャフト71が右方に移動すると、第1切替ピン73は円錐端面73btが凹曲面71Cvの中央から凹曲面71Cvの傾斜面を上り退行して平坦面71Cpに当接し、第2切替ピン74は円錐端面74btが平坦面71Cpから凹曲面71Cvの傾斜面を下り進行して凹曲面71Cvの中央に当接する。
このように、吸気側切替駆動シャフト71の軸方向の移動により第1切替ピン73と第2切替ピン74を交互に進退させることができる。
なお、第1,第2切替ピン73,74を進行方向に付勢するのに、先端円柱部73a,74aと吸気側切替駆動シャフト71との間にコイルばね75が介装されたが、基端円柱部73b,74bの端面(円錐端面73b,74btと反対側の端面)と筒状部3Aに形成された穴の底面との間にコイルばねを介装してもよい。
【0106】
図4ないし図6を参照して、シリンダヘッド3における軸受壁3Vの左側の筒状部3Bの中央で排気ロッカアーム82の左側に、排気側カムキャリア53のリード溝円筒部53Dに対応する箇所に、円筒ボス部3Bsがリード溝円筒部53Dに向けて突出して形成されるとともに、軸受壁3Vの右側の筒状部3Bの中央で排気ロッカアーム82の右側に、排気側カムキャリア53のリード溝円筒部53Eに対応する箇所に、円筒ボス部3Bsがリード溝円筒部53Eに向けて突出して形成されている。
【0107】
排気側切替駆動シャフト81は、図11に示すように、左側端部と右側に離れた部位に、それぞれ軸中心を貫通する長孔81a,81aが形成され、同長孔81a,81aの左端に軸中心を貫通する円孔81b,81bが形成されている。
長孔81a,81aの幅および円孔81b,81bの内径は、前記吸気側切替駆動シャフト71の長孔71aおよび円孔71bと同じである。
【0108】
排気側切替駆動シャフト81の左側の長孔81aの一方の開口端面は、縁取りされて傾斜して直線的に延びる平坦面81Cpと、その左寄りに所定の形状に凹んで形成された凹曲面81Cvとからなるカム面81Cを構成している。
【0109】
また、排気側切替駆動シャフト81の右側の長孔81aの一方の開口端面は、縁取りされて傾斜して直線的に延びる平坦面81Cpと、その右寄りに所定の形状に凹んで形成された凹曲面81Cvとからなるカム面81Cを構成している。
排気側切替駆動シャフト81の左右の長孔81a,81aおよび左右のカム面81C,81Cは、左右対称に形成されている。
【0110】
図15を参照して、排気側切替駆動シャフト81の左側の長孔81aには、第1切替ピン83が、中間連結棒部83cが貫通して摺動可能に係合し、カム面81Cにより直動カム機構Cbが構成される。
同様に、排気側切替駆動シャフト81の右側の長孔81aには、第2切替ピン84が、摺動可能に係合し、カム面81Cにより直動カム機構Ccが構成される(図6図11参照)。
【0111】
組付け手順は、円孔81b,81bを利用して、前記吸気側切替駆動シャフト71と第1切替ピン73の組付けときと同じように行われる。
第1切替ピン83と第2切替ピン84は同時に組付けられる。
【0112】
なお、排気側切替駆動シャフト81の右側の長孔81aの右隣りに軸方向に所定長さの長孔である移動規制孔81zが形成されており、シリンダヘッド3の筒状部3Bに穿孔された小孔3Bhに嵌挿された移動規制ピン86が移動規制孔81zを貫通することで、排気側切替駆動シャフト81の軸方向の移動が所定位置間の移動に規制される(図6参照)。
【0113】
図15は、排気側切替駆動シャフト81の左側のカム面81Cのうち右側の平坦面81Cpが、第1切替ピン83の位置にある状態を示しており、第1切替ピン83が平坦面81Cpに円錐端面83btを当接して退行した位置にあり、このとき第2切替ピン84は、右側のカム面81Cのうち凹曲面81Cvに円錐端面83btを当接して進行した位置にある(図6参照)。
【0114】
この状態から排気側切替駆動シャフト81が右方に移動すると、第1切替ピン83は円錐端面83btが平坦面81Cpから凹曲面81Cvの傾斜面を下り凹曲面81Cvの中央に当接して進行し、第2切替ピン84は円錐端面84btが凹曲面81Cvの中央から凹曲面81Cvの傾斜面を上り平坦面81Cpに当接して退行する。
このように、排気側切替駆動シャフト81の軸方向の移動により第1切替ピン83と第2切替ピン84を交互に進退させることができる。
【0115】
以上の吸気側カム切替機構70と排気側カム切替機構80は、図8に示されるように、吸気側カムシャフト42の中心軸線Ciおよび排気側カムシャフト52の中心軸線Ceよりクランクシャフト10側に配設されるとともに、一方の吸気側カム切替機構70は、吸気側カムシャフト42の中心軸線Ciを含みシリンダ軸線Lcに平行な吸気側平面Siと排気側カムシャフト52の中心軸線Ceを含みシリンダ軸線Lcに平行な排気側平面Seとの間に配設されている。
【0116】
シリンダヘッド3の右側壁3Rには、吸気側切替駆動シャフト71を軸方向に移動する吸気側油圧アクチュエータ77が突設されるとともに、排気側切替駆動シャフト81を軸方向に移動する排気側油圧アクチュエータ87が吸気側油圧アクチュエータ77の後方に並んで突設されている(図1図4参照)。
【0117】
吸気側カム切替機構70により吸気側カムキャリア43を移動して、第1カムロブ43Aと第2カムロブ43Bを切替えて吸気ロッカアーム72に作用させるときの吸気側カム切替機構70の動きを、図16の説明図に基づいて説明する。
図16は、吸気側カム切替機構70の主要部材の動作過程を経時的に順に示している。
【0118】
図16の(1)に示す状態は、吸気側カムキャリア43が左側位置にあって、第2カムロブ43Bが吸気ロッカアーム72に作用して、第2カムロブ43Bのカムプロファイルに設定されたバルブ作動特性に従って吸気バルブ41が動作している。
【0119】
このとき、吸気側切替駆動シャフト71も左側位置にあって、カム面71Cのうち凹曲面71Cvが第1切替ピン73の位置にあって、第1切替ピン73が凹曲面71Cvに当接して進行し吸気側カムキャリア43のリード溝円筒部43Dの環状リード溝44cに係合している。
第2切替ピン74は、カム面71Cの平坦面71Cpに当接して退行しリード溝44から離れている。
したがって、吸気側カムシャフト42にスプライン嵌合して回転する吸気側カムキャリア43は、周方向に一周に亘って形成された環状リード溝44cに第1切替ピン73が係合しているので、軸方向に移動せず所定位置に維持されている。
【0120】
この状態から吸気側油圧アクチュエータ77により吸気側切替駆動シャフト71が右方向に移動すると、第1切替ピン73は凹曲面71Cvの傾斜面に案内されて退行し、第2切替ピン74は平坦面71Cpから凹曲面71Cvの傾斜面に案内されて進行し(図16の(2)参照)、第1切替ピン73と第2切替ピン74がリード溝44から略同じ距離離れ(図16の(3)参照)、次いで、第1切替ピン73が平坦面71Cpに当接してさらに退行する代わりに、第2切替ピン74が凹曲面71Cvに当接してさらに進行してリード溝円筒部53Dの右シフトリード溝44rに係合する(図16の(4)参照)。
【0121】
第2切替ピン74が右シフトリード溝44rに係合すると、吸気側カムキャリア43は、右シフトリード溝44rに案内されて回転しながら軸方向右側に移動する(図16の(4),(5)参照)。
吸気側カムキャリア43が右方に移動すると、第2切替ピン74は環状リード溝44cに係合することになるので、吸気側カムキャリア43は右方に移動した所定位置で維持され(図16の(5)参照)、このとき、第2カムロブ43Bに代わって第1カムロブ43Aが吸気ロッカアーム72に作用して、第1カムロブ43Aのカムプロファイルに設定されたバルブ作動特性に従って吸気バルブ41が動作する。
【0122】
このように、吸気側切替駆動シャフト71を右方に移動することで、吸気バルブ41に作用するカムロブを、第2カムロブ43Bから第1カムロブ43Aに切り替えることができる。
また、この状態から、逆に吸気側切替駆動シャフト71を左方に移動することで、第2切替ピン74が退行して環状リード溝44cから離れ、第1切替ピン73が進行して左シフトリード溝44lに係合して、左シフトリード溝44lに案内されて吸気側カムキャリア43は左方に移動し、吸気バルブ41に作用するカムロブを、第1カムロブ43Aから第2カムロブ43Bに切り替えることができる。
【0123】
次に、排気側カム切替機構80の動きを、図17の説明図に基づいて説明する。
図17の(1)に示す状態は、排気側カムキャリア53が左側位置にあって、第2カムロブ53Bが吸気ロッカアーム72に作用して、第2カムロブ53Bのカムプロファイルに設定されたバルブ作動特性に従って吸気バルブ41が動作している。
【0124】
このとき、排気側切替駆動シャフト81も左側位置にあって、第1切替ピン83は左側のカム面81C1の平坦面81Cpに当接して退行して左側リード溝54から離れており、右側のカム面81Cのうち凹曲面81Cvが第2切替ピン84の位置にあって、第2切替ピン84が凹曲面81Cvに当接して進行し排気側カムキャリア53の右側リード溝55の環状リード溝55cに係合して、排気側カムキャリア53は軸方向に移動せず所定位置に維持されている。
【0125】
この状態から排気側油圧アクチュエータ87により排気側切替駆動シャフト81が右方向に移動すると、第2切替ピン84は凹曲面81Cvの傾斜面に案内されて退行し、第1切替ピン83は平坦面81Cpから凹曲面81Cvの傾斜面に案内されて進行し(図17の(2)参照)、第1切替ピン83と第2切替ピン84がリード溝54,55から略同じ距離離れ(図17の(3)参照)、次いで、第2切替ピン84が平坦面81Cpに当接してさらに退行する代わりに、第1切替ピン83が凹曲面81Cvに当接してさらに進行して左側リード溝54の右シフトリード溝54rに係合する(図17の(4)参照)。
【0126】
第1切替ピン83が右シフトリード溝54rに係合すると、排気側カムキャリア53は、右シフトリード溝54rに案内されて回転しながら軸方向右側に移動する(図17の(4),(5)参照)。
排気側カムキャリア53が右方に移動すると、第1切替ピン83は環状リード溝54cに係合することになるので、排気側カムキャリア53は右方に移動した所定位置で維持され(図17の(5)参照)、このとき、第2カムロブ53Bに代わって第1カムロブ53Aが排気ロッカアーム82に作用して、第1カムロブ53Aのカムプロファイルに設定されたバルブ作動特性に従って排気バルブ51が動作する。
【0127】
このように、排気側切替駆動シャフト81を右方に移動することで、排気バルブ51に作用するカムロブを、第2カムロブ53Bから第1カムロブ53Aに切り替えることができる。
また、この状態から、逆に排気側切替駆動シャフト81を左方に移動することで、第1切替ピン83第2切替ピン84が退行して環状リード溝54cから離れ、第2切替ピン84が進行して左シフトリード溝55lに係合して、左シフトリード溝55lに案内されて排気側カムキャリア53は左方に移動し、排気バルブ51に作用するカムロブを、第1カムロブ43Aから第2カムロブ43Bに切り替えることができる。
【0128】
以上、詳細に説明した本発明に係る可変動弁装置の一実施の形態では、以下に記す効果を奏する。
図10に示されるように、吸気カムシャフト42における吸気側カムキャリア43の端部が軸方向で当接する被軸受部42B(拡径部)の右側フランジ部42Cの端面に、吸気側カムキャリア43の端部が挿入可能な凹部42Chが形成されるので、吸気カムシャフト42の右側フランジ部42Cの凹部42Chにより吸気側カムキャリア43の必要な移動スペースを確保しながら、吸気カムシャフト42の被軸受部42Bを吸気側カムキャリア43側に寄せて吸気カムシャフト42を短くし、簡単な構造で内燃機関Eの軸方向幅をより小さく抑えて更なる小型化を図ることができる。
【0129】
吸気側カムキャリア43の外周面に周回するようにリード溝44が形成され、吸気側切替駆動シャフト71の駆動がカム機構Caを介して第1切替ピン73および第2切替ピン74を進退させ、第1切替ピン73または第2切替ピン74が進行して係合したリード溝44により、吸気側カムキャリア43が回転しながら軸方向に案内されて移動し、第1カムロブ43Aと第2カムロブ43Bを切替えて一方を吸気バルブ41に作動させるカム切替機構70にあっては、吸気側カムキャリア43の外周面に第1カムロブ43Aと第2カムロブ43Bのほかにリード溝44が形成されるため、吸気側カムキャリア43の軸方向幅が大きくなり内燃機関が大型化し易いのであるが、吸気側カムシャフト42の右側フランジ部42Cに吸気側カムキャリア43の端部が挿入可能な凹部42Chを設けることにより内燃機関Eの大型化を可及的に抑制することができる。
【0130】
図10に示されるように、リード溝44が吸気側カムキャリア43の端面に近接して形成されるので、吸気側カムキャリア43の軸方向幅を小さくすることができ、ひいては吸気側カムシャフト42の軸方向幅を可及的に小さくすることが可能で、益々内燃機関Eの大型化を抑制することができる。
なお、吸気側カムキャリア43の端面に近接してリード溝44が形成されても、吸気側カムシャフト42の右側フランジ部42Cの凹部42Chに吸気側カムキャリア43の端部が挿入されたとき、図10に示されるように、リード溝44の左シフトリード溝44lの軸方向最外側部が凹部42Chに入るが、その他の部分は凹部42Chに入らずに露出しているので、第1切替ピン73が左シフトリード溝44lに係合することに支障はなく、カム切替えが可能である。
【0131】
図10に示されるように、吸気側カムキャリア43のリード溝44が形成されるリード溝円筒部43Dの外径が、第1カムロブ43Aと第2カムロブ43Bの同径の基礎円の外径より小さいので、リード溝44に係合する第1切替ピン73および第2切替ピン74を吸気側カムキャリア43に近づけることができ、ひいては吸気側切替駆動シャフト71を吸気側カムシャフト42に近づけて、内燃機関の小型化を図ることができる。
【0132】
同様に、排気側カムキャリア53のリード溝54,55が形成されるリード溝円筒部53D,53Eの外径も、第1カムロブ53Aと第2カムロブ53Bの同径の基礎円の外径より小さいので、リード溝54,55に係合する第1切替ピン83および第2切替ピン84を排気側カムキャリア53に近づけることができ、ひいては排気側切替駆動シャフト81を排気側カムシャフト52に近づけて、内燃機関の小型化を図ることができる。
【0133】
次に、第2の実施の形態に係る可変動弁装置について図18に図示し説明する。
図18を参照して、吸気側カムシャフト142は、前記実施の形態の吸気側カムシャフト42と近似した形状をしており、左端部が拡径した被軸受部142Bを有し、被軸受部142Bの左右にフランジ部142A,142Cが形成され、右側フランジ部142Cの右側にスプライン軸部142Dが延出している。
吸気側カムシャフト142のスプライン軸部142Dにスプライン嵌合する吸気側カムキャリア143は、前記実施の形態の吸気側カムキャリア43と同じ形状をしている。
【0134】
そして、吸気側カムシャフト142の被軸受部142Bは、シリンダヘッド103の内側壁103Uの軸受部103UAとカムホルダ133に挟まれて回転自在に軸支される。
吸気側カムキャリア143の被軸受円筒部143Cをシリンダヘッド103の内側壁103Vとカムホルダ134に挟まれて回転自在に軸支される。
なお、シリンダヘッド103の上にはシリンダヘッドカバー104が被せられる。
【0135】
図18に示されるように、軸受部103UAとカムホルダ133には、吸気側カムシャフト142の右側フランジ部142Cとともに吸気側カムキャリア143の左端部が挿入可能な凹部103UAh,133hが形成されている。
【0136】
吸気側カムシャフト142を回転自在に軸支する軸受部である軸受部103UAとカムホルダ133に吸気側カムキャリア143の左端部が挿入可能な凹部103UAh,133hが形成されるので、軸受部の凹部103UAh,133hにより吸気側カムキャリア143の必要な移動スペースを確保しながら、軸受部を吸気側カムキャリア143側に寄せて、簡単な構造で内燃機関Eの軸方向幅をより小さく抑えて更なる小型化を図ることができる。
【0137】
以上、本発明に係る実施の形態に係る可変動弁装置について説明したが、本発明の態様は、上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨の範囲で、多様な態様で実施されるものを含むものである。
【0138】
例えば、本実施の形態では、カム切替機構において、切替駆動シャフトを軸方向に移動することで、直動カム機構により切替ピンを進退させていたが、切替駆動シャフトを回動することで、カム面の回動により切替ピンを軸方向と直角な方向に進退させるようにしてもよい。
また、切替駆動シャフトを駆動するのに、油圧アクチュエータを用いたが、電磁ソレノイドや電動モータ等を使用してもよい。
【符号の説明】
【0139】
E…内燃機関、M…変速機、
1…クランクケース、3…シリンダヘッド、3U…軸受壁、3UA…軸受部、
10…クランクシャフト、11…メインシャフト、12…カウンタシャフト、
40…可変動弁装置、
41…吸気バルブ、42…吸気側カムシャフト、42A…左側フランジ部,42B…被軸受部、42C…右側フランジ部、42Ch…凹部、
43…吸気側カムキャリア、43A…第1カムロブ、43B…第2カムロブ、43C…被軸受円筒部、43D…リード溝円筒部、44…リード溝、
51…排気バルブ、52…排気側カムシャフト、
53…排気側カムキャリア、53A…第1カムロブ、53B…第2カムロブ、53C…被軸受円筒部、53D…リード溝円筒部、53E…リード溝円筒部、54…左側リード溝、55…右側リード溝、
70…吸気側カム切替機構、71…吸気側切替駆動シャフト、72…吸気ロッカアーム、73…第1切替ピン、74…第2切替ピン、75…コイルばね、Ca…直動カム機構、
80…排気側カム切替機構、81…排気側切替駆動シャフト、82…排気ロッカアーム、83…第1切替ピン、84…第2切替ピン、85…コイルばね、Cb,Cc…直動カム機構、
103…シリンダヘッド、103UAh…凹部、133…カムシャフトホルダ、133h…凹部、134…カムシャフトホルダ、142…吸気側カムシャフト、143…吸気側カムキャリア。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18