特許第6427137号(P6427137)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427137
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】前立腺癌を診断する手段と方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20181112BHJP
   G01N 33/92 20060101ALI20181112BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20181112BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   G01N33/50 D
   G01N33/92 Z
   G01N33/68
   G01N27/62 V
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2016-92246(P2016-92246)
(22)【出願日】2016年5月2日
(62)【分割の表示】特願2012-513606(P2012-513606)の分割
【原出願日】2010年6月2日
(65)【公開番号】特開2016-153808(P2016-153808A)
(43)【公開日】2016年8月25日
【審査請求日】2016年5月30日
(31)【優先権主張番号】09161956.9
(32)【優先日】2009年6月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511012983
【氏名又は名称】メタノミクス ヘルス ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】511293755
【氏名又は名称】シャリテ ウニヴェルジテイトメディツィン ベルリン
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】カムラゲ,ビーテ
(72)【発明者】
【氏名】ベタン,ビアンカ
(72)【発明者】
【氏名】レスカ,レジーナ
(72)【発明者】
【氏名】ライボルト,エドガー
(72)【発明者】
【氏名】ユング,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ライン,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアンゼン,グレン
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/036691(WO,A2)
【文献】 国際公開第2007/109881(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/110357(WO,A2)
【文献】 国際公開第2006/098192(WO,A1)
【文献】 三尾隆弥 他,肺癌組織のα−ヒドロキシ脂肪酸,日本医用マススペクトル学会講演集,1988年,Vol.13,pp.201-206
【文献】 Osl M et al.,A new rule-based algorithm for identifying metabolic markers in prostate cancer using tandem mass spectrometry.,Bioinformatics,2008年,vol.24 (24),pp.2908-2914
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 − 33/98
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺癌またはその素因の診断を補助する方法であって、
(a) 前立腺癌を患うかまたはその素因を有すると疑われる被験体の試験サンプル中の2-ヒドロキシベヘン酸(C22:0)を測定するステップ;ならびに
(b) ステップ(a)の測定の試験結果を参照と比較するステップ、
を含み、それにより前立腺癌またはその素因の診断が補助される、上記方法。
【請求項2】
さらに、
(a) 前記被験体の前記試験サンプル中の少なくとも1つの代謝物質を測定するステップであって、該少なくとも1つの代謝物質がセレブロン酸(2-OH-C24:0)、イソペンテニルピロリン酸(IPP)、14-メチルヘキサデカン酸、2-アミノアジピン酸、セラミド(d18:1、C24:1)、エイコセン酸(C20:cis[11]1)、トリコサン酸(C23:0)、グリセロホスホエタノールアミン、極性画分、エイコサジエン酸(C20:2)No 02、アルギニン、ベヘン酸(C22:0)、β-カロテン、コレステノールNo 02、シトシン、DAG(C18:1、C18:2)、ジヒドロコレステロール、エリスロ-ジヒドロスフィンゴシン、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、ドデカノール、エイコサン酸(C20:0)、エイコサペンタエン酸(C20:cis[5,8,11,14,17]5)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:cis[8,11,14]3)、エリスロ-C16-スフィンゴシン、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、γ-トコフェロール、グルコン酸、グルクロン酸、グリセロール-2-リン酸エステル、リグノセリン酸(C24:0)、リソホスファチジルコリン(C18:2)、リソホスファチジルコリン(C20:4)、マルトトリオース、myo-イノシトール、脂質画分、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分、ネルボン酸(C24:cis[15]1)、ニコチンアミド、ペンタデカノール、ホスファチジルコリン(C18:0、C22:6)、植物スフィンゴシン、プソイドウリジン、ピルビン酸、3-O-メチルスフィンゴシン、スレオ-スフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴシン-1-リン酸エステル、トレオン酸、スフィンゴシン異性体No 01、コリンプラスマロゲン(C18,C20:4)、2-オキソイソカプロン酸、MetID(68300015)、MetID(68300047)、エリトロン酸、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分(myo-イノシトールホスホリピド類)、MetID(38300600)、1,5-アンヒドロソルビトール、3-ヒドロキシ酪酸エステル、3-メトキシチロシン、4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニルグリコール(HMPG)、5-ヒドロキシ-3-インドール酢酸(5-HIAA)、β-シトステロール、カンタキサンチン、セラミド(d18:1、C24:0)、MetID(68300017)、補酵素Q10、共役リノール酸(C18:trans[9,11]2)、クリプトキサンチン、ジヒドロテストステロン、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、グリセリン酸エステル、乳酸エステル、リコペン、リソホスファチジルコリン(16:0)、リソホスファチジルコリン(C17:0)、ホスファチジルコリン(C16:0, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0、C18:2)、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、MetID(68300048)、ホスファチジルコリン、MetID(68300020)、scyllo-イノシトール、3-O-メチルスフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴミエリン(d18:1, C16:0)、MetID(68300045)、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン硫酸塩および7-メチルグアニンから選択される上記ステップ;ならびに
(b) ステップ(a)の測定の試験結果を参照と比較するステップ、
を含み、それにより前立腺癌またはその素因の診断が補助される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記参照が前立腺癌を患うことがわかっているかまたはその素因を有することがわかっている被験体から誘導される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
試験サンプルと参照が同一または類似の結果は前立腺癌またはその素因に対する指標となる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記参照が前立腺癌を患わないことがわかっているかまたはその素因を有しないことがわかっている被験体から誘導される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記参照が被験体の集団中の前記少なくとも1つの代謝物質に対して計算された参照である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの代謝物質の不在または参照サンプルと比較して試験サンプルにおいて異なるその量は前立腺癌またはその素因の指標である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
ビオチン、ウリジン、ヒポキサンチン、イノシン、グリシン、システイン、シスチン、ウラシル、アスパラギン酸、イソロイシン、trans-4-ヒドロキシプロリン、プロリン、メチオニン、グリセロール-3-リン酸エステル、5-オキソプロリン、葉酸、グルタミン酸、グルタミン、ロイシン、ミリスチン酸(C14:0)、フェニルアラニン、ヘプタデカン酸(C17:0)、シトルリン、トレオニン、myo-イノシトール-1-リン酸エステル、myo-イノシトールホスホリピド、リボース、フマル酸塩、トリプトファン、グリセロール、チロシン、ホモセリン、ヒスチジン、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、キサンチン、オルニチン、アルギニン、シトルリン、パントテン酸、パルミトレイン酸(C16:cis[9]1)、コハク酸塩、フルクトース、α-トコフェロール、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、マルトース、バリン、アデニン、リシン、リンゴ酸塩、アラニン、スペルミジン、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、オレイン酸(C18:cis[9]1)、グリセロールリン酸エステル、N-アセチルノイラミン酸、キシリトール、セリン、N-アセチルノイラミン酸、S-アデノシルメチオニン、リン酸エステル、グルコース、コレステロール、スペルミン、プトレシン、cis-アコニット酸塩、クエン酸塩、リブロース-5-リン酸エステル、ピロリン酸(PPi)、エライジン酸(C18:trans[9]1)、アデニン、2-ヒドロキシ酪酸エステル、サルコシン、イソクエン酸塩、クレアチン、グルタチオンジスルフィド(GSSG)、3-ヒドロキシ酪酸エステル、およびタウリンから成る群より選択される少なくとも1つのさらなる代謝物質を測定する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの代謝物質を前記測定する手段が質量分析(MS)を含むものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記質量分析が液体クロマトグラフィ(LC)MSおよび/またはガスクロマトグラフィ(GC)MSである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルが前記被験体の体液である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記被験体がヒトである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前立腺癌またはその素因を診断するためのシステムであって、
(a)少なくとも2-ヒドロキシベヘン酸(C22:0)を測定する手段、
(b)前立腺癌を患うかまたはその素因を有すると疑われる被験体の試験サンプル中の少なくとも2-ヒドロキシベヘン酸(C22:0)を含む代謝物質の特徴的な値を比較する手段、並びに
(c)前記(b)のサンプルの代謝物質の特徴的な値を比較する手段と作動しうる形で連結された、前立腺癌またはその素因の指標である2-ヒドロキシベヘン酸(C22:0)の特徴的な値を含むデータ収集を含むデータ記憶媒体、
を含む、前立腺癌またはその素因を診断するためのシステム
【請求項14】
サンプルの代謝物質の特徴的な値を測定する手段をさらに含むものである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
さらに、
(i)次のさらなる代謝物質:セレブロン酸(2-OH-C24:0)、イソペンテニルピロリン酸(IPP)、14-メチルヘキサデカン酸、2-アミノアジピン酸、セラミド(d18:1、C24:1)、エイコセン酸(C20:cis[11]1)、トリコサン酸(C23:0)、グリセロホスホエタノールアミン、極性画分、エイコサジエン酸(C20:2)No 02、アルギニン、ベヘン酸(C22:0)、β-カロテン、コレステノールNo 02、シトシン、DAG(C18:1、C18:2)、ジヒドロコレステロール、エリスロ-ジヒドロスフィンゴシン、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、ドデカノール、エイコサン酸(C20:0)、エイコサペンタエン酸(C20:cis[5,8,11,14,17]5)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:cis[8,11,14]3)、エリスロ-C16-スフィンゴシン、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、γ-トコフェロール、グルコン酸、グルクロン酸、グリセロール-2-リン酸エステル、リグノセリン酸(C24:0)、リソホスファチジルコリン(C18:2)、リソホスファチジルコリン(C20:4)、マルトトリオース、myo-イノシトール、脂質画分、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分、ネルボン酸(C24:cis[15]1)、ニコチンアミド、ペンタデカノール、ホスファチジルコリン(C18:0、C22:6)、植物スフィンゴシン、プソイドウリジン、ピルビン酸、3-O-メチルスフィンゴシン、スレオ-スフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴシン-1-リン酸エステル、トレオン酸、スフィンゴシン異性体No 01、コリンプラスマロゲン(C18,C20:4)、2-オキソイソカプロン酸、MetID(68300015)、MetID(68300047)、エリトロン酸、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分(myo-イノシトールホスホリピド類)、MetID(38300600)、1,5-アンヒドロソルビトール、3-ヒドロキシ酪酸エステル、3-メトキシチロシン、4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニルグリコール(HMPG)、5-ヒドロキシ-3-インドール酢酸(5-HIAA)、β-シトステロール、カンタキサンチン、セラミド(d18:1、C24:0)、MetID(68300017)、補酵素Q10、共役リノール酸(C18:trans[9,11]2)、クリプトキサンチン、ジヒドロテストステロン、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、グリセリン酸エステル、乳酸エステル、リコペン、リソホスファチジルコリン(16:0)、リソホスファチジルコリン(C17:0)、ホスファチジルコリン(C16:0, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0、C18:2)、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、MetID(68300048)、ホスファチジルコリン、MetID(68300020)、scyllo-イノシトール、3-O-メチルスフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴミエリン(d18:1, C16:0)、MetID(68300045)、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン硫酸塩および7-メチルグアニンの少なくとも1つを測定する手段を含
前記データ収集が、前立腺癌またはその素因の指標となる、前記少なくとも1つのさらなる代謝物質の特徴的な値をさらに含む、請求項13または14に記載のシステム
【請求項16】
(i)2-ヒドロキシベヘン酸(C22:0)を含む、前立腺癌またはその素因を診断するための診断組成物。
【請求項17】
(i)次の代謝物質:セレブロン酸(2-OH-C24:0)、イソペンテニルピロリン酸(IPP)、14-メチルヘキサデカン酸、2-アミノアジピン酸、セラミド(d18:1、C24:1)、エイコセン酸(C20:cis[11]1)、トリコサン酸(C23:0)、グリセロホスホエタノールアミン、極性画分、エイコサジエン酸(C20:2)No 02、アルギニン、ベヘン酸(C22:0)、β-カロテン、コレステノールNo 02、シトシン、DAG(C18:1、C18:2)、ジヒドロコレステロール、エリスロ-ジヒドロスフィンゴシン、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、ドデカノール、エイコサン酸(C20:0)、エイコサペンタエン酸(C20:cis[5,8,11,14,17]5)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:cis[8,11,14]3)、エリスロ-C16-スフィンゴシン、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、γ-トコフェロール、グルコン酸、グルクロン酸、グリセロール-2-リン酸エステル、リグノセリン酸(C24:0)、リソホスファチジルコリン(C18:2)、リソホスファチジルコリン(C20:4)、マルトトリオース、myo-イノシトール、脂質画分、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分、ネルボン酸(C24:cis[15]1)、ニコチンアミド、ペンタデカノール、ホスファチジルコリン(C18:0、C22:6)、植物スフィンゴシン、プソイドウリジン、ピルビン酸、3-O-メチルスフィンゴシン、スレオ-スフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴシン-1-リン酸エステル、トレオン酸、スフィンゴシン異性体No 01、コリンプラスマロゲン(C18,C20:4)、2-オキソイソカプロン酸、MetID(68300015)、MetID(68300047)、エリトロン酸、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分(myo-イノシトールホスホリピド類)、MetID(38300600)、1,5-アンヒドロソルビトール、3-ヒドロキシ酪酸エステル、3-メトキシチロシン、4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニルグリコール(HMPG)、5-ヒドロキシ-3-インドール酢酸(5-HIAA)、β-シトステロール、カンタキサンチン、セラミド(d18:1、C24:0)、MetID(68300017)、補酵素Q10、共役リノール酸(C18:trans[9,11]2)、クリプトキサンチン、ジヒドロテストステロン、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、グリセリン酸エステル、乳酸エステル、リコペン、リソホスファチジルコリン(16:0)、リソホスファチジルコリン(C17:0)、ホスファチジルコリン(C16:0, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0、C18:2)、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、MetID(68300048)、ホスファチジルコリン、MetID(68300020)、scyllo-イノシトール、3-O-メチルスフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴミエリン(d18:1, C16:0)、MetID(68300045)、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン硫酸塩および7-メチルグアニンの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の診断組成物。
【請求項18】
被験体のサンプル中の前立腺癌またはその素因の診断を補助するための、2-ヒドロキシベヘン酸(C22:0)またはその測定用手段の使用。
【請求項19】
さらに、
被験体のサンプル中の前立腺癌またはその素因の診断を補助するための、少なくとも1つの代謝物質またはその測定用手段の使用であって、該少なくとも1つの代謝物質がセレブロン酸(2-OH-C24:0)、イソペンテニルピロリン酸(IPP)、14-メチルヘキサデカン酸、2-アミノアジピン酸、セラミド(d18:1、C24:1)、エイコセン酸(C20:cis[11]1)、トリコサン酸(C23:0)、グリセロホスホエタノールアミン、極性画分、エイコサジエン酸(C20:2)No 02、アルギニン、ベヘン酸(C22:0)、β-カロテン、コレステノールNo 02、シトシン、DAG(C18:1、C18:2)、ジヒドロコレステロール、エリスロ-ジヒドロスフィンゴシン、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、ドデカノール、エイコサン酸(C20:0)、エイコサペンタエン酸(C20:cis[5,8,11,14,17]5)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:cis[8,11,14]3)、エリスロ-C16-スフィンゴシン、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、γ-トコフェロール、グルコン酸、グルクロン酸、グリセロール-2-リン酸エステル、リグノセリン酸(C24:0)、リソホスファチジルコリン(C18:2)、リソホスファチジルコリン(C20:4)、マルトトリオース、myo-イノシトール、脂質画分、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分、ネルボン酸(C24:cis[15]1)、ニコチンアミド、ペンタデカノール、ホスファチジルコリン(C18:0、C22:6)、植物スフィンゴシン、プソイドウリジン、ピルビン酸、3-O-メチルスフィンゴシン、スレオ-スフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴシン-1-リン酸エステル、トレオン酸、スフィンゴシン異性体No 01、コリンプラスマロゲン(C18,C20:4)、2-オキソイソカプロン酸、MetID(68300015)、MetID(68300047)、エリトロン酸、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分(myo-イノシトールホスホリピド類)、MetID(38300600)、1,5-アンヒドロソルビトール、3-ヒドロキシ酪酸エステル、3-メトキシチロシン、4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニルグリコール(HMPG)、5-ヒドロキシ-3-インドール酢酸(5-HIAA)、β-シトステロール、カンタキサンチン、セラミド(d18:1、C24:0)、MetID(68300017)、補酵素Q10、共役リノール酸(C18:trans[9,11]2)、クリプトキサンチン、ジヒドロテストステロン、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、グリセリン酸エステル、乳酸エステル、リコペン、リソホスファチジルコリン(16:0)、リソホスファチジルコリン(C17:0)、ホスファチジルコリン(C16:0, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0、C18:2)、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、MetID(68300048)、ホスファチジルコリン、MetID(68300020)、scyllo-イノシトール、3-O-メチルスフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴミエリン(d18:1, C16:0)、MetID(68300045)、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン硫酸塩および7-メチルグアニンから成る群より選択される、請求項18に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは、前立腺癌またはその素因を診断するex vivoの方法であって、前立腺癌を患うかまたはその素因を有すると疑われる被験体の試験サンプル中の少なくとも1つの代謝物質を測定するステップおよび前記少なくとも1つの代謝物質をそれにより前立腺癌またはその素因を診断する参照と比較するステップを含むものである前記方法に関する。さらに、本発明は代謝物質の収集、代謝物質の特性値を含むデータ収集、および前記データ収集を含む記憶媒体を包含する。さらに、本発明はまた、データ記憶媒体と作動しうる形で連結された、サンプルの代謝物質の特性値を比較する手段を含むシステムに関する。さらに、本発明は、少なくとも1つの代謝物質を含む診断手段、および、前立腺癌を診断する診断手段を製造するための前記少なくとも1つの代謝物質の使用を包含する。最後に、本発明は前立腺癌に関係する代謝物質を同定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌(PCA)は前立腺における細胞の無制御な(悪性)増殖であって、西洋社会における最も一般的な悪性腫瘍である。前立腺癌の原因は現在のところ完全に理解されてはいない。180,000人を超える新しいPCA患者の症例が2008年に米国で診断された。米国の予想患者数は2010年に前立腺癌患者で2,175,699人となろう。前立腺癌を診断するためにいくつかの試験が使われ、それには直腸診(DRE)、経直腸超音波検査(TRUS)、前立腺特異抗原(PSA):遊離型(free)および全(total)、%遊離型PSA(%fPSA)としてのPSA誘導体、加齢特異的PSA値、PSA密度、PSA速度、前立腺酸ホスファターゼ(PAP)試験、前立腺バイオプシー、コンピューター断層撮影(CTスキャン)、骨スキャンおよび/またはMRIが含まれる。
【0003】
前立腺特異抗原(PSA)血漿試験はPCAの認識とより優れた患者管理における主要因子となっている、しかしこの試験は特異性に欠け、そのため、診断における使用は限られ、PCAの早期検出に適するとされている。PSAは器官特異的であるが癌特異的ではない。これが高い偽陽性検出の数字をもたらす。PCAの診断はバイオプシーによってだけ確証することができる。800,000件を越えるこの侵襲性で費用のかかる手法が毎年米国で行われた。しかしPCAスクリーニングについての論争は続いている(Wilson SS, Crawford ED 2004, Clin. Prostate Cancer 3: 21-25, Crawford ED 2005, Lancet 365: 1447-1449))。PCAの早期検出(Schroeder FH et al、2009; N Engl J Med. Mar 26;360(13):1320-1328;Andriole GL et al . 2009 N Engl J Med Mar 26;360(13):1310-1319)はおそらく疾患の早い段階での介入、従って治療成功の増加をもたらす。しかしPCAの早期検出と疾患進行は決定的な疾患マーカーを欠いている。
【0004】
癌診断または予後判定および治療評価のためのバイオマーカーを作製するのに代謝学を利用することは現在明確である(Spratlin 2009, Clin Cancer Res 15(2): 431-440)。Serkovaら(Serkova et al 2008, The Prostate 68: 620-628)はヒト発現性前立腺分泌物(EPS)中の代謝物質であるクエン酸、myo-イノシトールおよびスペルミンの絶対濃度を加齢非依存性PCAのマーカーとして発表した。最近、バイオプシー陽性PCA患者とバイオプシー陰性対照個体の組織血漿および直腸指診後の尿サンプルから得た代謝学プロファイルが試験された(Sreekumar 2009, Nature 457(12): 910-914)。サルコシンが前立腺癌進行に対する1つの潜在的バイオマーカーとして示唆された。
【0005】
それにも関わらず、前立腺癌の偽陽性または偽陰性診断の高い数字を考慮すると、信頼できるかつ効率的な前立腺癌の診断または予後判定を可能にするバイオマーカーに対する高い必要性は今なお存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Wilson SS, Crawford ED 2004, Clin. Prostate Cancer 3: 21-25, Crawford ED 2005, Lancet 365: 1447-1449
【非特許文献2】Schroeder FH et al、2009; N Engl J Med. Mar 26;360(13):1320-1328
【非特許文献3】Andriole GL et al . 2009 N Engl J Med Mar 26;360(13):1310-1319
【非特許文献4】Spratlin 2009, Clin Cancer Res 15(2): 431-440
【非特許文献5】Serkova et al 2008, The Prostate 68: 620-628
【非特許文献6】Sreekumar 2009, Nature 457(12): 910-914
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は前立腺癌またはその素因を診断する方法であって、
(a) 前立腺癌を患うかまたはその素因を有すると疑われる被験体の試験サンプル中の少なくとも1つの代謝物質を測定するステップであって、前記少なくとも1つの代謝物質が7-メチルグアニン、2-ヒドロキシベヘン酸(C22:0)、セレブロン酸(2-OH-C24:0)、イソペンテニルピロリン酸(IPP)、14-メチルヘキサデカン酸、2-アミノアジピン酸、セラミド(d18:1、C24:1)、エイコセン酸(C20:cis[11]1)、トリコサン酸(C23:0)、グリセロホスホエタノールアミン、極性画分、エイコサジエン酸(C20:2)No 02、アルギニン、ベヘン酸(C22:0)、β-カロテン、コレステノールNo 02、シトシン、DAG(C18:1、C18:2)、ジヒドロコレステロール、エリスロ-ジヒドロスフィンゴシン、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、ドデカノール、エイコサン酸(C20:0)、エイコサペンタエン酸(C20:cis[5,8,11,14,17]5)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:cis[8,11,14]3)、エリスロ-C16-スフィンゴシン、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、γ-トコフェロール、グルコン酸、グルクロン酸、グリセロール-2-リン酸エステル、リグノセリン酸(C24:0)、リソホスファチジルコリン(C18:2)、リソホスファチジルコリン(C20:4)、マルトトリオース、myo-イノシトール、脂質画分、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分、ネルボン酸(C24:cis[15]1)、ニコチンアミド、ペンタデカノール、ホスファチジルコリン(C18:0, C22:6)、植物スフィンゴシン、プソイドウリジン、ピルビン酸、3-O-メチルスフィンゴシン、スレオ-スフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴシン-1-リン酸エステル、トレオン酸、スフィンゴシン異性体No 01、コリンプラスマロゲン(C18, C20:4)、2-オキソイソカプロン酸、MetID(68300015)、MetID(68300047)、エリトロン酸、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分(myo-イノシトールホスホリピド類)、MetID(38300600)、1,5-アンヒドロソルビトール、3-ヒドロキシ酪酸エステル、3-メトキシチロシン、4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニルグリコール(HMPG)、5-ヒドロキシ-3-インドール酢酸(5-HIAA)、β-シトステロール、カンタキサンチン、セラミド(d18:1, C24:0)、MetID(68300017)、補酵素Q10、共役リノール酸(C18:trans[9,11]2)、クリプトキサンチン、ジヒドロテストステロン、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、グリセリン酸エステル、乳酸エステル、リコペン、リソホスファチジルコリン(16:0)、リソホスファチジルコリン(C17:0)、ホスファチジルコリン(C16:0, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0, C18:2)、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、MetID(68300048)、ホスファチジルコリン、MetID(68300020)、scyllo-イノシトール、3-O-メチルスフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴミエリン(d18:1, C16:0)、MetID(68300045)、テストステロン、およびデヒドロエピアンドロステロン硫酸塩から選択される前記ステップ;および
(b) ステップ(a)の測定の試験結果をそれにより前記前立腺癌またはその素因を診断する参照と比較するステップ
を含むものである前記方法に関する。
【0008】
前記代謝物質はそれぞれ、本明細書で言及する疾患に対してそれ自体が好適なバイオマーカーである。しかし、最も好ましくは、バイオマーカーのグループを本発明の方法により測定することである。バイオマーカーのグループは、好ましくは、上述のバイオマーカーの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つそして、好ましくは、全てを含むかまたは全てから成るものである。
【0009】
より好ましくは、前記少なくとも1つの代謝物質は、7-メチルグアニン、2-ヒドロキシベヘン酸(C22:0)、セレブロン酸(2-OH-C24:0)、イソペンテニルピロリン酸(IPP)、14-メチルヘキサデカン酸、2-アミノアジピン酸、セラミド(d18:1、C24:1)、セラミド(d18:2、C24:0)、エイコセン酸(C20:cis[11]1)、トリコサン酸(C23:0)、グリセロホスホエタノールアミン、極性画分、エイコサジエン酸(C20:2)No 02から成るグループより選択される。
【0010】
本発明により言及する表現「診断する方法」は、この方法が本質的に上述のステップから成ってもよく、またはさらなるステップを含んでもよいことを意味する。しかし、前記方法は、好ましい実施形態においては、in vitroで行う方法であって、ヒトまたは動物の身体で行うものでないことを理解されたい。本明細書で使用する「診断」は被験体が疾患を患う確率を評価することを意味する。当業者はかかる評価は診断する被験体の100%について正しいことが好ましいものの、通常そうでないことを理解するであろう。この用語「診断」は、しかし、被験体の統計的に有意な部分が疾患を患うかまたはその素因を有すると同定できる必要がある。当業者はある部分が統計的に有意であるかどうかを、様々な周知の統計的評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値決定、スチューデントのt検定、マン・ホイットニーの検定などを用いて手間をかけずに決定することができる。詳しくは、Dowdy and Wearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983を参照されたい。好ましい信頼区間は少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%である。p-値は好ましくは、0.2、0.1、0.05である。さらに、本発明の方法は本質的に診断の手助けを提供し、そして他の診断手段に含まれうるかまたは他の診断手段を補充しうることは理解されるであろう。
【0011】
本発明による診断には、関係する疾患またはその症候群のモニタリング、確認、および分類が含まれる。モニタリングは、既に診断した疾患、または複合症の病歴を保持して、例えば、疾患の進行もしくは退行、疾患期間中にまたは疾患治療の成功後に生じる疾患または複合症の進行に対する特定の治療の影響を分析することに関する。確認は、既に実施した診断を、他の指示薬またはマーカーを用いて強化もしくは実証することに関する。分類は、診断を症候群の強度と種類によっていろいろなクラス、例えば、本明細書で随所に記載した前立腺癌の段階に割り当てることに関する。
【0012】
本明細書で使用する用語「前立腺癌」は前立腺癌細胞から発生した悪性腫瘍を意味する。前記細胞は前立腺から他の組織または器官、とりわけ骨およびリンパ節へ転移しうる。初期前立腺癌は通常、症候群を生じない。前立腺癌は、進行した段階で疼痛、排尿困難、性交時の問題、および勃起機能障害を生じうる。さらなる前立腺癌の症候群は当技術分野では周知であり、それには頻尿、夜間排尿増加、尿定常流の開始と維持の困難、血尿、および 排尿痛が含まれ、これらは標準の医学教科書、例えば、ステッドマン(Stedman)またはシレンベル(Pschyrembl)に記載されている。前立腺癌は分類されている。グリーソンスコア系を用いて、前立腺癌腫瘍を2〜10に格付けし、ここで10のグリーソンスコアは最高の異常を示す。腫瘍の適当な段階付けと格付けは、効率的かつ適当な治療介入のために重要である。
【0013】
本明細書で使用する用語「素因」は、被験体がまだ疾患または上記疾患症候群または他の診断判定基準のいずれをも発症していないが、それにも関わらず、将来、ある特定の可能性で疾患を発症しうることを意味する。前記可能性は、前立腺癌の統計的出現の可能性とは有意に異なるであろう。好ましくは、前立腺癌を発症する可能性は素因が診断されることの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または100%である。素因の診断は、時には、被験体がこの疾患を発症しうる可能性の予測を意味しうる。
【0014】
本明細書で使用する用語「少なくとも1つの代謝物質」は単一の代謝物質または複数の代謝物質、すなわち、好ましくは少なくとも2、3、4、5、10、50、100、500、1,000、2,000、3,000、5,000または10,000種の代謝物質を意味する。本明細書で使用する「代謝物質」は前記代謝物質の少なくとも1つの分子から複数の代謝物質の分子であってもよく、そして複数の代謝物質は複数の化学的に異なる分子を意味し、ここで各代謝物質に対して少なくとも1つの分子から複数の分子まで存在しうると理解すべきである。本発明による代謝物質は全てのクラスの有機または無機化合物を包含し、生物などの生物学的材料に含まれるものを含む。好ましくは、本発明による代謝物質は小分子化合物である。さらに好ましくは、複数の代謝物質を想定する場合、前記複数の代謝物質はメタボローム、すなわち、特定の時間にかつ特定の条件のもとで生物、器官、組織または細胞により含まれる代謝物質の収集を表す。
【0015】
代謝物質は小分子化合物、例えば、代謝経路の酵素に対する基質、かかる経路の中間体または代謝経路により得た産物である。代謝経路は当技術分野で周知であり、種の間で変わりうる。好ましくは、前記経路には、少なくともクエン酸サイクル、呼吸鎖、光合成、光呼吸、解糖、糖新生、ヘキソース一リン酸経路、酸化的ペントースリン酸経路、脂肪酸産生およびβ酸化、尿素サイクル、アミノ酸生合成経路、タンパク質分解経路、例えばプロテアソーム分解、アミノ酸分解経路、ならびに各種分子の生合成または分解[ここで前記各種分子は脂質、ポリケチド(例えばフラボノイドおよびイソフラボノイドを含む)、イソプレノイド(例えばテルペン、ステロール、ステロイド、カロテノイド、キサントフィルを含む)、糖、フェニルプロパノイドおよび誘導体、アルカノイド、ベンゼノイド、インドール、インドール-硫黄化合物、ポルフィリン、アントシアン、ホルモン、ビタミン、補因子、例えば補欠分子族または電子担体、リグニン、グルコシノレート、プリン、ピリミジン、ヌクレオシド、ヌクレオチド、および関係分子、例えばtRNA、マイクロRNA(miRNA)またはmRNAを含む]が含まれる。従って、小分子化合物代謝物質は、好ましくは、次のクラスの化合物:アルコール、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族化合物、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、エステル、アミン類、イミン、アミド、シアニド、アミノ酸、ペプチド、チオール、チオエステル、リン酸エステル、硫酸エステル、チオエーテル、スルホキシド、エーテル、または上述した化合物の組み合わせまたは誘導体から構成される。代謝物質の中の小分子は、正常な細胞機能、器官機能または動物成長、発生または健康にとって必要とされる一次代謝物質であってもよい。さらに小分子代謝物質はさらに、必須な生態学的機能を有する二次代謝物質、例えば、生物がその環境に適合できるようにする代謝物質を含む。さらに、代謝物質は前記一次および二次代謝物質に限定されるものでなく、さらに人工の小分子化合物を包含する。前記人工の小分子化合物は外因的に与えられた小分子から誘導されたものであって、これは投与されるかまたは生物が摂取したものであり、前記一次または二次代謝物質ではない。例えば、人工の小分子化合物は薬物から動物の代謝経路によって得た代謝産生物であってもよい。加えて、代謝物質にはさらに、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチド、例えばRNAまたはDNAが含まれる。より好ましくは、代謝物質は50Da(ダルトン)〜30,000Da、最も好ましくは30,000Da未満、20,000Da未満、15,000Da未満、10,000Da未満、8,000Da未満、7,000Da未満、6,000Da未満、5,000Da未満、4,000Da未満、3,000Da未満、2,000Da未満、1,000Da未満、500Da未満、300Da未満、200Da未満、100Da未満の分子量を有する。しかし、好ましくは、代謝物質は少なくとも50Daの分子量を有する。最も好ましくは、本発明による代謝物質は50Da〜1,500Daの分子量を有する。
【0016】
上述の代謝物質または代謝物質のグループだけでなく、さらなるバイオマーカーまたはさらなるバイオマーカーのグループを本発明の方法により同様に確認できることは理解されよう。前記さらなるバイオマーカーには、前立腺癌またはその素因と関連することが公知である核酸、ペプチド、ポリペプチドまたは他の臨床パラメーターが含まれる。好ましくは、前記さらなるバイオマーカーの試験は、直腸診(DRE)、経直腸超音波検査(TRUS)、PSAおよびPAP試験、前立腺特異抗原(PSA)、遊離型および全PSA(PSAIIとしても知られる)、加齢特異PSA値、前立腺酸ホスファターゼ(PAP)試験、腫瘍バイオプシー、コンピューター断層撮影(CTスキャン)、骨スキャンおよびMRIから成る群より選択される。
【0017】
バイオマーカーとして、上述の代謝物質または代謝物質のグループと一緒に、すなわち、同時にまたは続いて測定するのが好ましい代謝物質は、ビオチン、ウリジン、ヒポキサンチン、イノシン、グリシン、システイン、シスチン、ウラシル、アスパラギン酸、イソロイシン、trans-4-ヒドロキシプロリン、プロリン、メチオニン、グリセロール-3-リン酸エステル、5-オキソプロリン、葉酸、グルタミン酸、グルタミン、ロイシン、ミリスチン酸(C14:0)、フェニルアラニン、ヘプタデカン酸(C17:0)、シトルリン、トレオニン、myo-イノシトール-1-リン酸エステル、myo-イノシトールホスホリピド、リボース、フマル酸塩、トリプトファン、グリセロール、チロシン、ホモセリン、ヒスチジン、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、キサンチン、オルニチン、アルギニン、シトルリン、パントテン酸、パルミトレイン酸(C16:cis[9]1)、コハク酸塩、フルクトース、α-トコフェロール、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、マルトース、バリン、アデニン、リシン、リンゴ酸塩、アラニン、スペルミジン、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、オレイン酸(C18:cis[9]1)、グリセロールリン酸エステル、N-アセチルノイラミン酸、キシリトール、セリン、N-アセチルノイラミン酸、S-アデノシルメチオニン、リン酸エステル、グルコース、コレステロール、スペルミン、プトレシン、cis-アコニット酸塩、クエン酸塩、リブロース-5-リン酸エステル、ピロリン酸(PPi)、エライジン酸(C18:trans[9]1)、アデニン、2-ヒドロキシ酪酸エステル、サルコシン、イソクエン酸塩、クレアチン、グルタチオンジスルフィド(GSSG)、3-ヒドロキシ酪酸エステル、およびタウリンから成る群より選択される少なくとも1つの代謝物質である。
【0018】
前記の支援代謝物質も本明細書の随所に記載した好適な参照結果と比較するのが好ましいであろう。前記比較の結果はさらに、被験体が前立腺癌を患うかどうかまたはその素因を有するかどうかについての知見を支援するであろう。好ましい参照結果、相対量の変化に対する値およびレギュレーションの種類に対する指示は、以下に付随する実施例に見出されるであろう。
【0019】
本明細書で使用する用語「試験サンプル」は本発明の方法による前立腺癌またはその素因の診断に用いるサンプルを意味する。前記試験サンプルは生体サンプルである。生物学的供給源(すなわち、生体サンプル)は通常、複数の代謝物質を含む。本発明の方法に用いる好ましい生体サンプルは、体液、好ましくは、血液、血漿、血清、リンパ液、または尿、または、例えば、バイオプシーにより細胞、組織または器官から誘導されたサンプル、好ましくは、前立腺癌細胞を含むかまたはそれから本質的に成ると思われる前立腺組織から得たサンプルである。これはまた、細胞成分のコンパートメントまたは細胞小器官、例えばミトコンドリア、ゴルジのネットワークまたはペルオキシソームを含むサンプルを包含する。生体サンプルは本明細書の随所で記載した被験体由来であってもよい。上述の色々な型の生体サンプルを得る技法は当技術分野で周知である。例えば、血液サンプルは採血により得てもよく、また、組織または器官サンプルは、例えば、バイオプシーにより得てもよい。
【0020】
上述のサンプルは、好ましくは、前処理の後に本発明の方法に用いる。以下にさらに詳しく記載するように、前記の前処理は化合物を遊離しかつ分離するためにまたは過剰の材料または廃棄物を除去するために必要な処理を含みうる。好適な技法は、化合物の遠心分離、抽出、分画、精製および/または濃縮を含む。さらに、化合物分析に好適な形態または濃度の化合物を得るために、他の前処理を行う。例えば、ガスクロマトグラフィと連結した質量分析を本発明の方法に用いる場合、前記ガスクロマトグラフィの前に、化合物を誘導体化する必要がある。好適かつ必要な前処理は本発明の方法を行うために用いる手段に応じたものであり、当業者は周知している。上述した前処理サンプルも、本発明で使用する用語「サンプル」に含まれる。
【0021】
本明細書で使用する用語「被験体」は動物、好ましくは哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、サル、またはウシ、そして、好ましくは、ヒトにも関する。本発明の方法を応用して診断しうる他の動物は鳥類または爬虫類である。本明細書で使用する、前立腺癌を患うかまたはその素因を有すると疑われる被験体は、好ましくは、前立腺癌を示す症候群または臨床徴候またはパラメーターを示す被験体を意味する。しかし、この用語はまた、明らかに健康な被験体、すなわち、上述の症候群、臨床徴候またはパラメーターのいずれも示さない被験体にも関する。明らかに健康な被験体を予防看護の尺度としてまたは集団スクリーニングの目的で本発明の方法により研究することができる。
【0022】
本明細書で使用する用語「前記少なくとも1つの代謝物質を測定する」は、本明細書で言及するサンプルに含まれる少なくとも1つの代謝物質の少なくとも1つの特徴的特性を測定することを意味する。本発明による特徴的特性は、生化学的特性を含む物理的および/または化学的特性を特徴付ける特性である。かかる特性には、例えば、 分子量、粘度、密度、電荷、スピン、光学活性、色、蛍光、化学発光、元素組成、化学構造、他化合物との反応性、生物学的読取り系で応答を引き起こす能力(例えば、レポーター遺伝子の誘導)などが含まれる。前記特性の値は特徴的特性として役立ち得るものであり、当技術分野で周知の技法により測定することができる。さらに、特徴的特性は、標準的操作、たとえば、乗算、除算、または対数計算などの数学的計算により代謝物質の物理的および/または化学的特性の値から導かれる特性であってもよい。最も好ましくは、少なくとも1つの特徴的特性が、少なくとも1つの代謝物質の測定および/または化学的同定を可能にすることである。
【0023】
試験サンプルに含まれる少なくとも1つの代謝物質は本発明により定量的にまたは定性的に測定することができる。定性的測定については、代謝物質の存在または不在を好適な技法により測定しうる。さらに、定性的測定には、好ましくは、化学構造または代謝物質の組成の測定が含まれる。定量的測定については、サンプル中に存在する少なくとも1つの代謝物質の正確な量を測定しうるかまたは少なくとも1つの代謝物質の相対的な量を、好ましくは、本明細書で先に言及した特徴的特性について測定した値に基づいて測定しうる。バイオマーカーの正確な量を測定できないかまたは測定しない場合、相対量を測定してもよい。前記の場合、前記代謝物質を第2の量で含む第2のサンプルと対比して、代謝物質の存在量が増大または低減したかどうかを測定してもよい。代謝物質の定量分析は、従って、時折、代謝物質の半定量分析と呼ぶものも含む。
【0024】
さらに、本発明による方法に使用する測定は、好ましくは、先に記載した分析ステップの前に化合物分離ステップの使用を含む。好ましくは、前記化合物分離ステップはサンプルに含まれる代謝物質の時間分割された分離をもたらすものである。好ましくは本発明により使用する分離の好適な技法は、従って、全てのクロマトグラフィ分離技法、すなわち、液体クロマトグラフィ(LC)、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、ガスクロマトグラフィ(GC)、薄層クロマトグラフィ、サイズ排除またはアフィニティクロマトグラフィを含む。これらの技法は当技術分野において周知であり、当業者は容易に応用することができる。最も好ましくは、LCおよび/またはGCが本発明の方法で想定するクロマトグラフィ技法である。代謝物質のかかる測定のための好適な装置は当技術分野で周知である。好ましくは、質量分析、特にガスクロマトグラフィ質量分析(GC-MS)、液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)、直接注入質量分析またはフーリエ変換-イオンサイクロトロン共鳴-質量分析(FT-ICR-MS)、キャピラリー電気泳動質量分析(CE-MS)、高速液体クロマトグラフィ連結質量分析(HPLC-MS)、四重極質量分析、任意の逐次連結質量分析、たとえばMS-MSもしくはMS-MS-MSなど、誘導結合プラズマ質量分析(IPC-MS)、熱分解質量分析(Py-MS)、イオン移動度質量分析、または飛行時間質量分析(TOF)を使用する。最も好ましくは、以下に詳しく記載した、LC-MS および/または GC-MSを使用する。前記技法は、例えば、Nissen, Journal of Chromatography A, 703, 1995: 37-57、米国特許第4,540,884号、または米国特許第5,397,894号(その開示内容は本明細書に参照により組み入れられる)に開示されている。質量分析技術の代わりの選択肢としてまたはそれに加えて、次の技法を化合物測定に用いることができる:核磁気共鳴(NMR)、磁気共鳴イメージング(MRI)、フーリエ変換赤外分析(FT-IR)、紫外(UV)分光、屈折率(RI)、蛍光検出、放射化学的検出、電気化学的検出、光散乱(LS)、分散ラマン分光、またはフレームイオン化検出(FID)。これらの技術は、当業者に周知であり、容易に適用することができる。好ましくは、本発明の方法を自動化により支援する。たとえば、サンプル処理または前処理をロボット工学により自動化することができる。好ましくは、データ処理および比較を好適なコンピュータプログラムおよびデータベースにより支援する。本明細書に先に記載した自動化により、本発明の方法をハイスループット方式で使用できるようになる。
【0025】
さらに、少なくとも1つの代謝物質を、特異的な化学的アッセイまたは生物学的アッセイにより測定することもできる。前記アッセイは、サンプル中の少なくとも1つの代謝物質を特異的に検出できるようにする手段を含む。好ましくは、前記手段は、他の化合物と反応する能力もしくは生物学的読取り系で応答を誘発する能力(たとえば、レポーター遺伝子の誘導)に基づいて、代謝物質の化学構造を特異的に認識できるか、または代謝物質を特異的に同定可能である。代謝物質の化学構造を特異的に認識できる手段は、好ましくは、化学構造、例えば受容体または酵素と特異的に相互作用する抗体または他のタンパク質である。例えば、特異的抗体は、例えば、代謝物質を抗原として用いて当技術分野で周知の方法により得ることができる。本明細書で意味する抗体は、ポリクロナール抗体とモノクロナール抗体の両方、さらにはそれらのフラグメント、たとえば、抗原またはハプテンと結合することができるFv、Fab、およびF(ab)2フラグメントを包含する。本発明はまた、所望の抗原特異性を示す非ヒトドナー抗体のアミノ酸配列とヒトアクセプター抗体の配列とを組み合わせたヒト化ハイブリッド抗体を含む。さらに、一本鎖抗体が包含される。ドナー配列は、通常、ドナーの少なくとも抗原結合性アミノ酸残基を含みうるが、ドナー抗体の他の構造上および/または機能上関係するアミノ酸残基も含みうる。かかるハイブリッドは、当技術分野で周知のいくつかの方法により調製することができる。代謝物質を特異的に認識できる好適なタンパク質は、好ましくは、前記代謝物質の代謝変換に関わる酵素である。前記酵素は代謝物質を基質として用いてもよくまたは基質を代謝物質に変換してもよい。さらに、前記抗体は代謝物質を特異的に認識するオリゴペプチドを作製するベースとして用いてもよい。これらのオリゴペプチドは、例えば、前記代謝物質に対する酵素の結合ドメインまたはポケットを含むものである。好適な抗体および/または酵素に基づくアッセイはRIA(ラジオイムノアッセイ)、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、サンドイッチ酵素免疫試験、電気化学発光サンドイッチイムノアッセイ(ECLIA)、解離促進ランタニド蛍光イムノアッセイ(DELFIA)または固相免疫試験であってもよい。さらに、代謝物質はまた、他の化合物と反応する能力に基づいて、すなわち、特異的な化学反応により同定することができる。好適な反応は当技術分野で周知であり、そして、好ましくは酵素反応(例えばマンノースについては、 Pitkanen E, Pitkanen O, Uotila L.; Eur J Clin Chem Clin Biochem. 1997 Oct;35(10):761-6;またはアスコルビン酸については、Winnie Lee, Susan M. Roberts and Robert F. Labbe; Clinical Chemistry 43: 154-157、1997)、酵素分光分析法(BN La Du, RR Howell, PJ Michael and EK Sober; Pediatrics, Jan 1963, 39-46, Vol 31, No. 1)、分光蛍光分析法(Sumi T, Umeda Y, Kishi Y, Takahashi K, Kakimoto F.; Clin Chim Acta. 1976 Dec 1;73(2):233-9)および蛍光;化学発光(J.J. Thiele, H.J. Freisleben, J. Fuchs and F.R. Ochsendorf; Human Reproduction, Vol. 10, No. 1, pp. 110-115, 1995)を包含する。さらなる検出法、例えば、キャピラリー電気泳動(Hubert A. Carchon and Jaak Jaeken; Clinical Chemistry 47: 1319-1321、2001)および比色法(Kyaw A; Clin Chim Acta. 1978 Jun;86(2):153-7)を用いることができる。さらに、サンプル中の代謝物質を生物学的読取り系における応答を誘発する能力によって測定することができる。生物学的応答は、サンプルに含まれる代謝物質の存在および/または量を示す読取り値として検出される。生物学的応答は、例えば、細胞または生物の遺伝子発現または表現型応答の誘導でありうる。
【0026】
さらに、前記少なくとも1つの代謝物質を測定する技法に応じて、検出しうる分析質は生体に存在する代謝物質、すなわち被験体内に存在する代謝物質の誘導体でありうることは理解されたい。かかる分析質はサンプル調製または検出手段の結果として作製されうる。本明細書で言及する化合物は分析質であるとみなされる。しかし、先に述べたように、これらの分析質は定性的および定量的な方式で代謝物質を表現しうる。さらに、複数の代謝物質について、代謝物質は分析質と同一でありうることを理解されたい。
【0027】
本発明により言及する代謝物質または分析質は、本明細書で言及した疾患または効果に対する指標として役立つ分子種を意味する。前記分子種はそれ自体、被験体のサンプル中に見出される代謝物質でありうる。さらに、バイオマーカーもまた、前記代謝物質から誘導される分子種である。かかる場合、実際の代謝物質はサンプル中でまたは測定プロセスの間に化学的に改変されうるのであって、前記改変の結果、化学的に異なる分子種、すなわち分析質が測定される分子種でありうる。かかる場合、分析質は実際の代謝物質を表し、そしてそれぞれの医学的症状に対する指標として同じ潜在能力を有する。さらに、本発明によるバイオマーカーは必ずしも一分子種に対応するものではない。むしろ、バイオマーカーは化合物の立体異性体またはエナンチオマーを含みうる。さらに、バイオマーカーはまた、異性体分子の生物学的クラスの異性体の和を表しうる。前記異性体はいくつかの場合、同一の分析的特徴を示すであろう、そしてそれ故に、以下に記載した付随する実施例に応用したものを含む様々な分析法により識別することができない。しかし、異性体は少なくとも同一の式パラメーター和、従って、例えば、脂質の場合、脂肪酸および/またはスフィンゴ塩基部分において同一の鎖長および同一の二重結合数を共有しうる。
【0028】
用語「参照」は結果、すなわち前立腺癌またはその素因と関係付けることができる少なくとも1つの代謝物質の特徴的特性のデータを意味する。かかる参照結果は、好ましくは、前立腺癌を患うことがわかっている被験体かまたはその素因を有することがわかっている被験体由来のサンプルから得る。参照はまた、かかるサンプルのグループから得た平均もしくは平均値(average or mean)であってもよい。もし参照をバイオプシー組織サンプルから得るのであれば、前記サンプルは前立腺癌組織を含むかまたは本質的にそれから成るものである。参照結果は本発明の方法を応用することにより得ることができる。あるいは、それに関わらず、参照結果を前立腺癌を患わないことがわかっている被験体またはその素因を有しないことがわかっている被験体、すなわち前立腺癌および、より好ましくは、他の疾患、特に癌疾患についても健康な被験体のサンプルから得ることも好ましい。同様に、もし参照をバイオプシー組織サンプルから得るのであれば、前記サンプルは明らかに健康な前立腺組織から本質的に成るものである。参照はまた、かかるサンプルのグループから得た平均もしくは平均値であってもよい。好ましくは、もしバイオプシー組織サンプルを想定するのであれば、参照の根拠になるサンプルと試験サンプルは同じ被験体から、すなわち、明らかに前立腺癌を患う領域からおよび前立腺癌を患うと疑われる領域から得ることができる。さらに、参照はまた、好ましくは、明らかに健康であるかまたは前立腺癌を患う個体の代表集団の代謝物質の相対的または絶対的な量について計算した参照、最も好ましくは平均もしくはメジアンでありうる(ここで、前立腺癌を患う被験体は所与の集団、好ましくは、米国、アジアまたは欧州集団内で罹患したものである)。前記集団の個体の代謝物質の絶対的または相対的な量は本明細書において随所に記載したように測定することができる。好適な参照値、好ましくは、平均もしくはメジアンの計算方法は当技術分野では周知である。先に言及した被験体の集団は複数の被験体、好ましくは少なくとも5、10、50、100、1,000または10,000の被験体を含む。本発明の方法により診断する被験体と前記複数の被験体の被験体は同じ種であると理解されたい。
【0029】
より好ましくは、「参照」は参照被験体のグループ(すなわち、前立腺癌を患うことがわかっている被験体のグループおよび前立腺癌を患わないことがわかっている被験体のグループ);研究すべき被験体を含む集団;または(前立腺癌組織または明らかに健康な組織の)組織バイオプシーサンプルのグループに対する、少なくとも1つの特徴的特性の値を測定し、そして本明細書で随所に記載した、例えば、メジアン、平均、分位(quantile)、PLS-DA、ロジスチック回帰分析、ランダムフォレスト分類(random forest classification)または閾値を与える他の方法を含む、適当な統計尺度から参照を計算することにより得ることができよう。閾値は、診断および予後の試験の感受性および特異性の所望の臨床設定を考慮に入れるべきである。
【0030】
より好ましくは、参照結果、すなわち、少なくとも1つの代謝物質の少なくとも1つの特徴的特性に対する値を好適なデータ記憶媒体、例えばデータベースに保存し、こうして、将来の診断にも利用できるようにする。こうすることにより、疾患に対する素因を効率的に診断できるようになる、何故なら、対応する参照サンプルを得た被験体が(実際に)前立腺癌を発症したことを(将来)確認すると、好適な参照結果をデータベースで同定できるからである。ヒトにおける前立腺癌またはその素因に関連する好ましい参照結果を、添付した実施例の表に示した。
【0031】
用語「比較」は、以下に詳しく記載した測定結果、すなわち、少なくとも1つの代謝物質の定性的もしくは定量的測定結果が参照結果と同一もしくは類似であるかまたはそれらと異なるかどうかを評価することを意味する。
【0032】
前立腺癌を患うことがわかっているかまたは前立腺癌の素因を有することがわかっている被験体もしくはグループからまたは前立腺癌を含むかもしくは本質的にそれから成る組織サンプルから参照結果を得る場合、前記疾患または素因を、試験サンプルから得た試験結果と上述の参照結果との間の同一性または類似性の程度に基づいて(すなわち、少なくとも1つの代謝物質についての同一または類似の定性的もしくは定量的組成に基づいて)診断することができる。もし特徴的特性の値、定量的測定の場合には、および強度値が同一であれば、試験サンプルの結果と参照結果は同一である。もし特徴的特性の値は同一であるが強度値が異なれば、前記結果は類似である。かかる相違は、好ましくは、有意でなく、強度の値は少なくとも参照値の1st〜99thパーセンタイル、5th〜95thパーセンタイル、10th〜90thパーセンタイル、20th〜80thパーセンタイル、30th〜70thパーセンタイル、40th〜60thパーセンタイルの区間内にあるかまたは参照値の50th、60th、70th、80th、90thまたは95thパーセンタイルであることで特徴づけられる。
【0033】
前立腺癌を患わないことがわかっているかまたは前立腺癌の素因を有しないことがわかっている被験体もしくはグループからまたは明らかに健康な前立腺組織から本質的になる組織サンプルから参照結果を得る場合、前記疾患または素因を試験サンプルから得た試験結果と上述の参照結果の間の相違に基づいて(すなわち、少なくとも1つの代謝物質についての定性的もしくは定量的組成の相違に基づいて)診断することができる。先に記載の計算した参照を用いる場合も同様である。相違は代謝物質の絶対的もしくは相対的な量の増加(時折、代謝物質のアップレギュレーションと呼ぶ:実施例も参照されたい)または代謝物質の前記両方の量の減少もしくは検出可能量の不在であってもよい。好ましくは、相対的もしくは絶対的な量の相違は有意であり、すなわち参照値の45th〜55thパーセンタイル、40th〜60thパーセンタイル、30th〜70thパーセンタイル、20th〜80thパーセンタイル、10th〜90thパーセンタイル、5th〜95thパーセンタイル、1st〜99thパーセンタイルの区間外にある。
【0034】
本明細書の随所で言及する具体的な代謝物質について、相対量の変化(すなわち、メジアンの変化)またはレギュレーションの種類(すなわちより高いもしくはより低い相対的および/または絶対的な量をもたらす「アップ(up)」または「ダウン(down)」レギュレーション)を下表に示す。もし前記表において、所与の代謝物質が被験体もしくは組織サンプルで「アップレギュレーション」と示していれば、相対的および/または絶対的な量は増加しうるし、もし「ダウンレギュレーション」であれば、相対的および/または絶対的な量は減少しうる。さらに、メジアンは増加もしくは減少の程度を示し、例えば、2.0のメジアンは参照と比較した代謝物質の量の2倍であることを意味する。
【0035】
従って、本発明の方法は、好ましい実施形態において、前立腺癌を患うことがわかっている被験体もしくはグループ、またはその素因を有することがわかっている被験体もしくはグループ、または前立腺癌組織を含むかもしくは本質的にそれから成るバイオプシー組織サンプルから誘導された参照を含む。最も好ましくは、試験サンプルと前記参照に対する同一または類似(すなわち少なくとも1つの代謝物質の相対的もしくは絶対的な量の類似)の結果は、この場合、前立腺癌またはその素因の指標である。本発明の方法の他の好ましい実施形態においては、前立腺癌を患わないことがわかっている被験体またはその素因を有しないことがわかっている被験体または明らかに健康な前立腺組織から本質的に成るバイオプシー組織サンプルから参照を誘導する。さらに、参照は、好ましくは、計算した参照でありうる。最も好ましくは、少なくとも1つの代謝物質の不在または、好ましくは参照サンプルと比較して試験サンプルで有意に異なる(すなわち、絶対的もしくは相対的な量に有意差が認められる)量は、この場合、前立腺癌またはその素因の指標である。
【0036】
比較を、好ましくは、自動化により支援する。例えば、2つの異なるデータセット(例えば、特徴的特性値を含むデータセット)を比較するアルゴリズムを含む好適なコンピュータープログラムを用いることができる。かかるコンピューターおよびアルゴリズムは当技術分野で周知である。以上に関わらず、比較を手作業で実行してもよい。
【0037】
上述の少なくとも1つの代謝物質を測定する方法を、デバイス中に実装することができる。本明細書で使用するデバイスは少なくとも上述の手段を含むであろう。さらに、デバイスは検出した少なくとも1つの代謝物質の特徴的特性および、好ましくは、さらに測定したシグナル強度を比較および評価する手段を含む。デバイスの手段は、好ましくはお互いに作動しうる形で連結されている。手段を作動する方式でいかに連結するかは、デバイス中に組み入れる手段の型式に依存しうる。例えば、代謝物質を自動で定性的または定量的に測定する手段を適用する場合、前記自動で作動する手段によって得たデータを、例えば、コンピュータプログラムにより処理して診断を容易にすることができる。好ましくは、その手段は、かかる場合には単一デバイスに含まれる。前記デバイスは従って、代謝物質の分析ユニットおよび得られる診断用データを処理するコンピューターユニットを含みうる。あるいは、代謝物質を測定するために試験ストライプなどの手段を用いる場合、診断用手段は、測定した結果データを前立腺癌もしくはその素因に関連する公知の結果データに割り当てる対照ストライプもしくは表、または先に考察した健康な被験体の指標となるものを含む。好ましいデバイスはまた、専門臨床医の特別な知識無しに適用できるデバイス、例えば、試験ストライプまたはサンプルを供給するだけが必要な電子デバイスである。
【0038】
あるいは、少なくとも1つの代謝物質を測定する方法を、好ましいお互いに作動しうる形で連結されたいくつかのデバイスを含むシステム中に実装することができる。具体的には、これらの手段は以下に詳しく記載した本発明の方法の実行を可能にする方式で連結されなければならない。それ故に、本明細書で使用する表現「作動しうる形で連結される」は好ましくは、機能的に連結されることを意味する。本発明のシステムに使用する手段に応じて、前記手段間のデータ伝送を可能にする手段、たとえば、ガラスファイバーケーブルおよび他のハイスループットデータ伝送用ケーブルにより各手段を他の手段に接続することによって、前記手段を機能的に連結することが可能である。それにも関わらず、本発明は、例えば、LAN(無線LAN、W-LAN)を介する、手段間の無線データ転送も想定している。好ましいシステムは、代謝物質を測定する手段を含む。本明細書で使用する代謝物質を測定する手段は、代謝物質を分離する手段(たとえばクロマトグラフィデバイス)、および代謝物質を測定する手段(たとえば質量分析デバイス)を含む。好適なデバイスは、先に詳細に記載したものである。本発明のシステムに使用する好ましい化合物分離手段には、クロマトグラフィデバイス、より好ましくは、液体クロマトグラフィ、HPLC、および/またはガスクロマトグラフィ用のデバイスが含まれる。好ましい化合物測定用のデバイスは、質量分析デバイス、より好ましくは、GC-MS、LC-MS、直接注入質量分析計、FT-ICR-MS、CE-MS、HPLC-MS、四重極質量分析計、任意に逐次連結した質量分析計(たとえばMS-MSもしくはMS-MS-MS)、ICP-MS、Py-MSまたはTOFを含む。好ましくは、分離手段と測定手段をお互いに連結する。最も好ましくは、本明細書で随所に詳細に記載したように、LC-MSおよび/またはGC-MSを本発明のシステムに使用する。さらに、代謝物質の測定手段から得た結果を比較および/または分析する手段も含まれるものとする。結果を比較および/または分析する手段は、少なくとも1つのデータベースおよび結果を比較するために実装したコンピュータプログラムを含みうる。
【0039】
有利なことに、本発明により、上述した代謝物質の少なくとも1つまたは1グループは前立腺癌またはその素因に対する好適なバイオマーカーでありうることが見出されている。これらの代謝物質をバイオマーカーとして応用することにより、迅速で、信頼できてかつ費用効果的な前立腺癌の診断が可能になる。さらに、従来の技術で利用しうる技法を越えるさらなる利点として、本発明の方法は前立腺癌を発症する素因の診断すら可能になる。さらに、本方法は本明細書で随所に記載した自動化により支援することができ、そして前立腺癌を患うリスクのある被験者のハイスループットスクリーニングが可能である。それにより、本発明の方法は前立腺癌予防用の保健プログラムを支援することができ、治療法および栄養食を含む前立腺癌を予防するための治療法または対策の成功をモニターするのに用いることができる。さらに、本明細書で言及する代謝物質もしくは代謝物質の組み合わせは、本明細書に記載した代謝性プロファイル技法により、時間および費用効果的な方式で、同時に決定することができる。
【0040】
以上の用語の説明と解釈は、特に断らない限り、本明細書で以下に記載した他の実施形態にも準用される。
【0041】
以上の本発明の方法の好ましい実施形態において、試験サンプル中の少なくとも1つの代謝物質は、次の表1に掲げた代謝物質から成る群より選択される。より好ましくは、前記試験サンプルは組織バイオプシーサンプルである。特に好ましい変化またはレギュレーションの種類も表に示した。
【0042】
本発明の他の好ましい実施形態において、前記試験サンプル中の少なくとも1つの代謝物質は、以下の表3に掲げた代謝物質から成る群より選択される。より好ましくは、前記試験サンプルは全血、血清または血漿またはこれらのいずれかの一画分である。特に好ましい変化またはレギュレーションの種類も表に示した。
【0043】
本発明はさらに、前立腺癌の進行を診断する方法であって、
(a) 進行中の前立腺癌を患うことが疑われる被験体の試験サンプル中の少なくとも1つの代謝物質を測定するステップであって、前記少なくとも1つの代謝物質がMetID(58300131)、ホスファチジルコリン(C18:0、C18:2)、ホスファチジルコリン(C16:0, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:2、C18:2)、2-オキソイソカプロン酸、エリトロン酸、コリンプラスマロゲン(C18,C20:4)、コリンプラスマロゲン、リソホスファチジルコリン(18:0)、ホスファチジルコリン(C16:0、C16:0)、ホスファチジルコリン、ピルビン酸、ホスホエノールピルビン酸エステル、β-シトステロール、および補酵素Q10から成る群より選択される前記ステップ;ならびに
(b) ステップ(a)における測定の試験結果を参照と比較し、これにより前記進行中の前立腺癌を診断するステップ
を含むものである前記方法である。
【0044】
用語「前立腺癌の進行」および「進行中の前立腺癌」は前立腺癌の一段階から他の段階、好ましくはさらに進んだ段階への変換に関する。好ましくは、本発明の方法で想定する前立腺癌の進行は、既に述べたグリーソンスコア系による進行である。本明細書で先に随所で記載したように、進行の分類と決定は効率的かつ適当な治療介入を可能にするために重要である。特に、転移が起こる段階へ前立腺癌が進行する前に、治療介入を開始することが望ましい。
【0045】
好ましくは、前立腺癌の進行を診断する上記方法に使用する参照は、進行中の前立腺癌、好ましくは少なくともグリーソン段階3aまたは3bによる前立腺癌を患うことがわかっている被験体から誘導すべきであることは理解されよう。より好ましくは、試験サンプルと参照に対して同一または類似の結果がかかる場合における進行中の前立腺癌に対する指標である。あるいは、参照を、好ましくは、進行中の前立腺癌を患わないことがわかっている被験体から、好ましくは、グリーソン段階2aまたは2bによる前立腺癌を患う被験体から誘導することができる。より好ましくは、前記少なくとも1つの代謝物質の不在または参照サンプルと比較して試験サンプルにおいて異なるその量は、これらの場合の進行中の前立腺癌の指標となる。参照はまた、かかる被験体のグループから先に考察した尺度により得ることができ、例えば、バイオマーカーの量のメジアンもしくは平均を測定してもよいことは理解されよう。
【0046】
具合の良いことに、上に掲げた代謝物質は前立腺癌の進行を示すバイオマーカーとして好適であることを見出した。従って、本発明の方法に基づいて適当な治療介入を決定することが可能である。例えば患者が、まだ転移する可能性の無い非進行中の前立腺癌を患うと診断された患者の場合、全身化学療法を回避することができる。他方、もし患者が進行中の前立腺癌を患うと診断されれば、全身化学療法を適用すべきである。
【0047】
被験体における前立腺癌の退行も上述の方法により診断できることは理解されよう。具体的に、本発明はさらに前立腺癌の退行を診断する方法を意図しており、その方法は
(a) 退行中の前立腺癌を患うと疑われる被験体の試験サンプル中の少なくとも1つの代謝物質を測定するステップであって、前記少なくとも1つの代謝物質がMetID(58300131)、ホスファチジルコリン(C18:0、C18:2)、ホスファチジルコリン(C16:0, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:2、C18:2)、2-オキソイソカプロン酸、エリトロン酸、コリンプラスマロゲン(C18,C20:4)、コリンプラスマロゲン、リソホスファチジルコリン(18:0)、ホスファチジルコリン(C16:0、C16:0)、ホスファチジルコリン、ピルビン酸、ホスホエノールピルビン酸エステル、β-シトステロール、および補酵素Q10から成る群より選択される前記ステップ;および
(b) ステップ(a)における測定の試験結果を参照と比較するステップであって、それにより前記退行中の前立腺癌を診断するステップ
を含むものである。
【0048】
用語「前立腺癌の退行」および「退行中の前立腺癌」は、前立腺癌のさらに進行した段階からより低い段階への変換に関する。
【0049】
好ましくは、前立腺癌の退行を診断する上記方法に使用する参照は、退行中の前立腺癌、好ましくは少なくともグリーソン段階2aまたは2bによる前立腺癌を患うことがわかっている被験体から誘導すべきであることは理解されよう。より好ましくは、試験サンプルと参照に対する同一または類似の結果は、かかる場合において、退行中の前立腺癌に対する指標である。あるいは、参照を、好ましくは、退行中の前立腺癌を患わないことがわかっている被験体から、好ましくは、グリーソン段階3aまたは3bによる進行中の前立腺癌を患う被験体から誘導することができる。より好ましくは、前記少なくとも1つの代謝物質の不在または参照サンプルと比較して試験サンプルにおいて異なるその量は、これらの場合の退行中の前立腺癌の指標となる。参照はまた、かかる被験体のグループから先に考察した尺度により得ることができ、例えば、バイオマーカーの量のメジアンもしくは平均を測定してもよいことは理解されよう。
【0050】
本発明はさらに、前立腺癌が(高もしくは低)または(高、中間もしくは低)のグリーソンスコアを有するかどうかを確認する方法であって、
(a) (高もしくは低)または(高、低もしくは中間)のグリーソンスコアの前立腺癌を患うと疑われる被験体の試験サンプル中の表6または表8の少なくとも1つの代謝物質を確認するステップ;および
(b) ステップ(a)の確認の試験結果を参照と比較し、それにより前立腺癌が(高もしくは低)または(高、中間もしくは低)グリーソンスコアを有するかどうかを決定するステップ
を含むものである前記方法を意図する。
【0051】
用語「前立腺癌が(高もしくは低)または(高、中間もしくは低)のグリーソンスコアを確認するステップ」はサンプル中の分析した前立腺癌をグリーソンスコア系によるカテゴリーに割り当てることを意味する。従って、この方法は異なる強度のグリーソンスコア間の区別を行う。グリーソンスコアのグリーソンスコア二分法に対するこれらの高および低強度、ならびにグリーソンスコア三分法に対するこれらの高、中間および低強度へのグループ化はそれぞれ、下の表9に見出すことができる。上述の方法の好ましい一実施形態においては、前立腺癌が、グリーソンスコアBi(二分法)に対して列に示した表6もしくは表8の少なくとも1つの代謝物質に基づいて(高もしくは低)のグリーソンスコアを有するかどうかを確認する。上述の方法の他の好ましい一実施形態においては、前立腺癌が、グリーソンスコアTri(三分法)に対して列に示した表6もしくは表8の少なくとも1つの代謝物質に基づいて(高、中間もしくは低)のグリーソンスコアを有するかどうかを確認する。
【0052】
先に記載した方法との関係における参照は、好ましくは、表9にグリーソンスコアBiに対して以下に示した、高もしくは低グリーソンスコア前立腺癌を患うことがわかっている被験体のサンプルから(または複数の被験体のサンプルから)得ることができる。もし高グリーソンスコア前立腺癌サンプル由来の参照が適用されれば、参照と本質的に同一であるという試験結果は試験サンプル中に存在する前立腺癌の高グリーソンスコアを示すと理解されよう。参照から有意に異なる試験結果は、試験サンプル中に存在する前立腺癌の低グリーソンスコアを示すであろう。代謝物質に対する好ましい相対的相違(すなわち、参照に対してアップまたはダウンレギュレーション)はグリーソンスコアBiに対する表6または表8に掲げた情報から誘導することができる。さらに、好ましい倍数変化も、表6または表8(すなわち、グリーソンスコアBiに対して見積もった変化)から誘導することができる。参照と本質的に同一である、すなわち有意差のない試験結果は、サンプル中の前立腺癌の高グリーソンスコアを示す。これは表6または8によるグリーソンスコアTriスコアリングに対する高、中間および低グリーソンスコアにも準用される。
【0053】
好ましくは、上述の方法におけるサンプルは、前立腺癌組織または前立腺癌細胞を含むと疑われる組織の組織サンプルである。かかる場合、好ましくは、少なくとも1つのバイオマーカーを表6から選択する。好ましくはまた、サンプルは血清サンプルであり、かかる場合には少なくとも1つのバイオマーカーを表8から選択する。
【0054】
上述の方法によって、腫瘍の分類、腫瘍進行のモニタリング、ならびに、適用した療法が成功であるかどうかを確認することが可能になる。
【0055】
本発明は、さらに、前立腺癌が高もしくは低pTスコアを有するかどうかを確認する方法を考えており、その方法は
(a) 高または低pTスコアの前立腺癌を患うと疑われる被験体の試験サンプル中の表7の少なくとも1つの代謝物質を測定するステップ;および
(b) ステップ(a)における測定の試験結果を参照と比較し、それにより、前立腺癌が高もしくは低pTスコアを有するかどうかを確認するステップ
を含むものである。
【0056】
用語「前立腺癌が高もしくは低pTスコアを有するかどうかを確認する」はサンプル中の分析した前立腺癌をpT腫瘍スコア系によるカテゴリー中に割り当てることを意味する。従って、この方法は、異なる強度のpTスコア間の区別を可能にする。pTスコアの高および低強度のものへのグループ化は、以下の表9に見出すことができる。
【0057】
上記の方法との関係での参照は、好ましくは、pTスコアに対する以下の表9に示した、高または低pTスコア前立腺癌を患うことがわかっている被験体のサンプル(または複数の被験体のサンプル)から得ることができる。もし高pTスコア前立腺癌サンプル由来の参照を適用すれば、参照と本質的に同一である試験結果は試験サンプル中に存在する前立腺癌の高pTスコアを示すことは理解されよう。参照と有意に異なる試験結果は、試験サンプル中に存在する前立腺癌の低pTスコアを示すであろう。代謝物質に対する好ましい相対的相違(すなわち、参照に対してアップまたはダウンレギュレーション)はpTスコアに対する表7に掲げた情報から誘導することができる。さらに、好ましい倍数変化はまた、表7(すなわちpTスコアに対する変化の見積)から誘導することができる。参照と本質的に同一である、すなわち、有意差のない試験結果はサンプル中の前立腺癌の高pTスコアを示す。
【0058】
好ましくは、上述の方法のサンプルは前立腺癌組織または前立腺癌細胞を含むと疑われる組織の組織サンプルである。
【0059】
従って、上述の方法によって、腫瘍の分類、腫瘍進行のモニタリング、ならびに、適用した療法が成功であるかどうかを確認することが可能になる。
【0060】
前立腺癌またはその素因を診断するためならびに進行中または退行中の前立腺癌を診断するための本発明の方法はまた、患者に対する好適な療法を確認するためまたは療法の成功をモニターするために適用することができる。従って、被験体のサンプル中の上記のグループのいずれかからの少なくとも1つの代謝物質は、原則として、被験体に対する好適な療法を決定するためまたは療法の成功をモニターするために利用することができる。
【0061】
それ故に、本発明はさらに、被験体が前立腺癌療法から利益を受けうるかどうかを決定する方法であって、本発明の方法のステップ、ならびに診断結果(すなわち、被験体が前立腺癌を患うかまたはその素因を有することを示す結果)に基づく前立腺癌療法から利益を得る被験体を同定するさらなるステップを含むものである前記方法を考えている。好適な前立腺癌療法には、外科、低および高用量照射、ホルモン療法および全身化学療法例えば、細胞分裂停止薬、単独でもしくは他の薬物と組み合わせて、例えばドセタキセルと第一選択治療法としてプレドニゾロンとの組み合わせ、ドセタキセルとホルモン療法またはビノレルビン、エピルビシン、カペシタビン、またはカルシトリオールのような細胞分裂停止薬との組み合わせが含まれる。その方法を適用して、被験体が進行中の前立腺癌に対する療法から利益を受けうるかまたは必要とするかどうかを決定できることは理解されるであろう。かかる方法を「積極的監視」のような治療手法に適用することができる。この手法においては、それほど進行性でない前立腺癌を患う被験体に、進行の早発性を検出するために短定期的に上述したように、進行中の前立腺癌を診断する。進行が検出可能であった後にだけ、被験体を好適な療法、例えば外科または照射により処置する。こうして「積極的監視」は前立腺癌を患うものの治療を即時必要としない被験体において、療法の有害な副作用を防止する。この段階で治療を避けることにより、療法の有害な副作用も回避できることは理解されるであろう。「積極的監視」手法は、通常、若年の被験体について行われる。「注意深い待機」の手法は、本発明の方法を長定期的に適用するものであって、ホルモン療法およびモニタリングに基づく。もし進行中の前立腺癌の徴候がなければ、さらなる治療対策、例えば外科または照射およびそれらの副作用を避けることができる(Dall'Era 2009, Curr Opin Urol 19:000-000)。
【0062】
本発明はさらに、前立腺癌療法または進行中の前立腺癌に対する療法の成功をモニタリングする方法を考えている。本方法は再び、前立腺癌またはその素因を診断するためおよび進行中の前立腺癌を診断するための上述の本発明の方法のステップ、ならびに診断結果に基づく成功する療法を同定するさらなるステップを含むものである。成功する療法は、少なくとも1つのバイオマーカーの病気またはその進行した段階から健康または病気の軽い段階への変化をもたらすことは理解されるであろう。
【0063】
先に記載したように、本発明の方法の好ましい実施形態においては、前記少なくとも1つの代謝物質の測定は質量分析(MS)を含むものである。本明細書で使用する質量分析は、化合物、すなわち、本発明により測定すべき代謝物質に対応する分子量(すなわち質量)または質量変数の測定を可能にする全ての技法を包含する。好ましくは、本明細書で使用する質量分析は、GC-MS、LC-MS、直接注入質量分析計、FT-ICR-MS、CE-MS、HPLC-MS、四重極質量分析計、任意に逐次に連結した質量分析計(たとえばMS-MSもしくはMS-MS-MS)、ICP-MS、Py-MSまたはTOF、または上述の技法を用いる任意の組み合わせ手法に関する。当業者はこれらの技法の適用の仕方を熟知している。さらに、好適なデバイスが市販されている。より好ましくは、本明細書で使用する質量分析はLC-MSおよび/またはGC-MS、すなわち先行するクロマトグラフィ分離ステップと作動しうる形で連結された質量分析に関する。より好ましくは、本明細書で使用する質量分析は四重極MSを包含する。最も好ましくは、前記四重極MSは次のステップ:a)質量分析器の第1分析用4重極(I)におけるイオン化によって形成されたイオンの質量/電荷比(m/z)を選択するステップ、b)衝突ガスで満たされ、衝突室として働く追加の後続の4重極(II)において加速電圧を印加することによりステップa)で選択されたイオンを断片化するステップ、c)追加の後続の4重極(III)において、ステップb)の断片化プロセスによって生成されたイオンの質量/電荷比を選択するステップ(この際、ステップa)〜c)を少なくとも1回実施する)、ならびに、d)イオン化の結果として物質混合物中に存在する全イオンの質量/電荷比を分析するステップ(この際、分析中に、4重極(II)は衝突ガスで満たされているが、加速電圧は印加されない)の通り行う。本発明により使用する前記最も好ましくは質量分析の詳細はWO 03/073464に見出すことができる。
【0064】
より好ましくは、前記質量分析は液体クロマトグラフィ(LC)MSおよび/またはガスクロマトグラフィ(GC)MSである。本明細書で使用する液体クロマトグラフィは、液または超臨界相で化合物(すなわち代謝物質)の分離を可能にする全ての技法を意味する。液体クロマトグラフィは、移動相中の化合物を静止相を通過させることを特徴とする。化合物が静止相を色々な速度で通過するときに、各化合物は特定の保持時間(すなわち、化合物がこの系を通過するのに必要な時間)を有するので、これらは時間で分離される。本明細書で使用する液体クロマトグラフィはまた、HPLCを含む。液体クロマトグラフィ用のデバイスは、例えば、Agilent Technologies(USA)から市販されている。本発明により適用されるガスクロマトグラフィは、原則として、液体クロマトグラフィと比較しうる機能を有する。しかし、固定相を通過する液移動相中に化合物(すなわち代謝物質)を有するよりむしろ、化合物は気体の体積中に存在しうる。化合物は、固定相として固体支持材を含有するかまたはその壁が固定相を果たすかまたは固定相でコーティングされているカラムを通過する。再び、各化合物は、カラムを通過するのに必要とされる特定の時間を有する。さらに、ガスクロマトグラフィの場合、好ましくは、化合物を誘導体化した後にガスクロマトグラフィで処理する。誘導体化の好適な技法は当技術分野で周知である。好ましくは、本発明による誘導体化は好ましくは極性化合物のメトキシム化およびトリメチルシリル化、好ましくは非極性(すなわち親油性)化合物のトランスメチル化、メトキシム化およびトリメチルシリル化に関する。
【0065】
さらに、本発明は、前立腺癌もしくはその素因または進行中の前立腺癌を示す少なくとも1つの代謝物質であって、本発明の方法により先に言及したそれぞれのグループから選択された前記代謝物質の特徴的な値を含むものであるデータ収集に関する。用語「データ収集」は、物理的および/または論理的に一緒にグループ化できるデータの収集を意味する。従って、データ収集は、単一のデータ記憶媒体でまたはお互いに作動しうる形で連結された物理的に分離されたデータ記憶媒体で実装することができる。好ましくは、データ収集はデータベースを用いて実装される。従って、本明細書で使用するデータベースは好適な記憶媒体上のデータ収集を含むものである。さらにデータベースは、好ましくは、さらにデータベース管理システムを含むものである。データベース管理システムは、好ましくは、ネットワーク型、階層型またはオブジェクト指向型のデータベース管理システムである。さらに、データベースは、連邦型データベースまたは統合データベースであってもよい。より好ましくは、データベースは、分散型(連邦型)システムとして、たとえばクライアントサーバーシステムとして実装されるであろう。より好ましくは、データベースは、検索アルゴリズムが試験データセットをデータ集合に含まれるデータセットと比較できるように構築される。具体的には、かかるアルゴリズムを用いてデータベースを検索(たとえば、クエリー検索)して、前立腺癌もしくはその素因の指標となる類似のまたは同一のデータセットを得ることができる。従って、データ収集で同一または類似のデータセットを同定できれば、試験データセットは前立腺癌またはその素因または前立腺癌の進行と関連付けられるであろう。その結果、データ収集から得た情報を用いて、被験体から得た試験データに基づき前立腺癌またはその素因を診断することができる。より好ましくは、データ収集は、上に記載したグループのいずれかに含まれる全ての代謝物質の特徴的な値を含むものである。
【0066】
以上を考慮すると、本発明は、上述のデータ収集を含むデータ記憶媒体を包含する。本明細書で使用する用語「データ記憶媒体」は、単一の物理的要素に基づくデータ記憶媒体、たとえば、CD、CD-ROM、ハードディスク、光記憶媒体、またはディスケットを包含する。さらに、この用語は、好ましくはクエリー検索に好適な方式で上述のデータ収集を提供するように互いに作動しうる形で連結された物理的に分離された要素から成るデータ記憶媒体を包含する。
【0067】
本発明はまた、先に記載したデータ記憶媒体(b)と作動しうる形で連結されたサンプルの代謝物質の特性値を比較する手段(a)を含むシステムに関する。
【0068】
本明細書で使用する用語「システム」は、互いに作動しうる形で連結された異なる手段を意味する。前記手段は単一のデバイスに実装されてもよいし、またはお互いに作動しうる形で連結された物理的に分離されたデバイスであってもよい。代謝物質の特性値を比較する手段は、好ましくは、上で述べた比較用のアルゴリズムに基づいて作動する。データ記憶媒体は、好ましくは、それぞれの記憶データセットが前立腺癌またはその素因の指標となる上述のデータ集合またはデータベースを含むものである。従って、本発明のシステムを用いれば、試験データセットがデータ記憶媒体に記憶されたデータ収集に含まれるかどうかを同定することが可能になる。その結果、本発明のシステムを、前立腺癌またはその素因またはその進行を診断する上での診断手段として適用することができる。
【0069】
システムの好ましい実施形態においては、サンプルの代謝物質の特性値を測定する手段が含まれる。「代謝物質の特性値を測定する手段」という用語は、好ましくは、代謝物質を測定するための上述のデバイス、例えば、質量分析デバイス、NMRデバイス、または代謝物質の化学的アッセイもしくは生物学的アッセイを行うためのデバイスを意味する。
【0070】
さらに本発明は、上に記載したグループのいずれかから選択される少なくとも1つの代謝物質の測定手段を含む診断手段に関する。
【0071】
用語「診断手段」は、好ましくは、本明細書で随所に詳細に記載した診断デバイス、システム、または生物学的アッセイもしくは化学的アッセイを意味する。表現「少なくとも1つの代謝物質を測定する手段」は、代謝物質を特異的に認識できるデバイスまたは作用剤を意味する。好適なデバイスは、分光測定デバイス、たとえば、質量分析デバイス、NMRデバイス、またはバイオマーカーの化学的アッセイもしくは生物学的アッセイを行うためのデバイスでありうる。好適な作用剤は、代謝物質を特異的に検出する化合物でありうる。本明細書で使用する検出は、2ステップのプロセスであってもよい。すなわち、最初に、化合物を検出すべき代謝物質と特異的に結合させ、続いて、検出可能なシグナル、たとえば、蛍光シグナル、化学発光シグナル、放射性シグナルなどを発生させてもよい。検出可能なシグナルを発生させるために、さらなる化合物を必要とすることがあり、かかる化合物は全て、用語「少なくとも1つの代謝物質を測定する手段」に包含される。代謝物質と特異的に結合する化合物は、本明細書で随所に詳細に記載されており、それらには、好ましくは、酵素、抗体、リガンド、受容体、または代謝物質と特異的に結合する他の生物学的分子もしくは化学物質などが含まれる。好ましい実施形態において、検出可能なシグナルはまた、定量的シグナルも表し、これは、少なくとも1つの代謝物質の相対強度が検出可能なシグナルの相対強度と比例することを意味する。
【0072】
さらに本発明は、上に記載したグループのいずれかから選択される少なくとも1つの代謝物質を含む診断組成物に関する。
【0073】
上述したグループのいずれかから選択される少なくとも1つの代謝物質は、バイオマーカー、すなわち被験体の病理学的症状もしくはその素因、すなわち前立腺癌またはその素因に対する指標分子として機能しうる。従って、代謝物質分子自体が診断組成物として、好ましくは本明細書において記載した手段による可視化または検出時の診断組成物として機能しうる。従って、本発明による代謝物質の存在を示す診断組成物はまた、前記バイオマーカーを物理的に含んでもよく、例えば、抗体と検出すべき代謝物質との複合体も診断組成物として機能しうる。そのため、診断組成物はさらに、本明細書で随所に記載した代謝物質の検出手段を含みうる。あるいは、もし検出手段、例えばMSまたはNMRに基づく技法が使用されれば、病理学的症状の指標として機能する分子種は、検査すべき試験サンプルに含まれる少なくとも1つのバイオマーカーでありうる。従って、本発明で言及した少なくとも1つの代謝物質は、バイオマーカーとして同定されるので、それ自体が診断組成物として機能するものである。
【0074】
最後に、本発明は被験体のサンプル中の前立腺癌、その素因もしくは進行中の前立腺癌を診断するための、少なくとも1つの代謝物質またはその測定手段であり、前記代謝物質は本発明の方法によって先に言及したそれぞれのグループから選択される。
【0075】
先に既に記載したように、前記代謝物質はそれぞれ、それ自体が本明細書で言及した疾患に対する好適なバイオマーカーである。しかし、最も好ましいのは、上述したグループのうちのいずれかのバイオマーカーを含むバイオマーカーのグループを本発明の方法により測定することである。バイオマーカーのグループは、好ましくは、上述したバイオマーカーの、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、好ましくは、全てまでから成る。
【0076】
本明細書において上に参照した全ての参照文献は、その全開示内容ならびに以上の説明で明示的に言及した具体的な開示内容に関して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
本発明を以下の実施例により説明するが、この実施例は本発明の範囲を制限または限定することを意図しない。
【0078】
(実施例)
【実施例1】
【0079】
代謝物質の測定
同じヒト被験体のグループからの組織および部分的に血清サンプルを分析することによりバイオマーカーを発見してサンプル中の代謝物質のレベルを測定し、次いで、その結果を統計的に解析して、組織もしくは血清中の同じかもしくは異なるこれらの代謝物質を決定した。
【0080】
前立腺癌を患う107件の被験体からの癌および対照組織ならびに64件の被験体のサブセットからの血清サンプルを前記分析に用いた。全ての被験体に対するさらなる臨床情報(例えば、年齢、BMI、投薬処方、サンプル採取日、DRUS、TRUS、全PSA、遊離PSA、f/t PSA比、腫瘍状態pT、グリーソン[全]グリーソン[パンチ])がこの分析に含まれた。
【0081】
サンプルを調製し、次に記載の通り、LC-MS/MSおよびGC-MSまたはヒト血清サンプルについてはXLC-MS/MS(ホルモン)分析で処理した。
【0082】
サンプルを次の手順で調製した:タンパク質を血清からまたは凍結乾燥した組織材料の溶解抽出で得た抽出物から、沈降により分離した。水およびエタノールとジクロロメタンの混合物を加えた後、残留サンプルを極性の水相(極性画分)と親油性の有機相(脂質画分)に分画した。
【0083】
脂質のトランスメタノリシスのために、140μlのクロロホルム、37μlの塩酸(水中、37重量%HCl)、320μlのメタノールおよび20μlのトルエンの混合物を、蒸発させた抽出物に加えた。その溶液を密封し、2時間100℃にて振とうしながら加熱した。溶液を次いで蒸発乾固した。残留物を完全に乾燥した。
【0084】
カルボニル基のメトキシム化を、密封した容器中でメトキシアミン塩酸塩(ピリジン中の20mg/ml×100μl、1.5時間、60℃にて)との反応によって行った。奇数炭素数の直鎖脂肪酸の溶液20μl(3/7(v/v)ピリジン/トルエン中の、7〜25炭素原子の脂肪酸それぞれ0.3mg/mLおよび27、29および31炭素原子の脂肪酸それぞれ0.6mg/mLの溶液)を時間標準として加えた。最後に、100μlのN-メチル-N-(トリメチルシリル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド(MSTFA)による誘導体化を30分間60℃にて、再び密封した容器中で行った。GC中への注入前の最終体積は220μlであった。
【0085】
極性相については、次の手順で誘導体化を実施した。カルボニル基のメトキシム化を、密封した容器中でメトキシアミン塩酸塩(ピリジン中の20mg/ml×50μl、1.5時間、60℃にて)との反応によって行った。奇数炭素数の直鎖脂肪酸の溶液10μl(3/7(v/v)ピリジン/トルエン中の、7〜25炭素原子の脂肪酸それぞれ0.3mg/mLおよび27、29および31炭素原子の脂肪酸それぞれ0.6mg/mLの溶液)を時間標準として加えた。最後に、50μlのN-メチル-N-(トリメチルシリル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド(MSTFA)による誘導体化を30分間60℃にて、再び密封した容器中で行った。GC中への注入前の最終体積は110μlであった。
【0086】
GC-MSシステムはAgilent 5973 MSDと連結したAgilent 6890 GCから成る。自動サンプラーはCTCからのCompiPalまたはGCPalである。
【0087】
分析については、通常の市販キャピラリー分離カラム(30m x 0,25mm x 0,25μm)を使用し、このカラムは分析すべきサンプル材料と相分離ステップからの画分に応じて0%〜35%の芳香族部分を含有する異なるポリ-メチル-シロキサン固定相を備えた(例えば: DB-1ms、HP-5ms、DB-XLB、DB-35ms、Agilent Technologies)。1μLまでの最終体積を分割せずに注入し、オーブン温度プログラムを70℃にてスタートし、十分なクロマトグラフィ分離と各分析質ピークの数を達成するために、サンプル材料と相分離ステップからの画分に応じて340℃にて終了した。さらにRTL(Retention Time Locking(保持時間ロッキング)、Agilent Technologies)を分析に使用し、および通常のGC-MS標準条件、例えば名目上1〜1.7ml/minの定常流、および移動相ガスとしてヘリウム、イオン化を70eVの電子衝撃で行い、m/z範囲15〜600内で2.5〜3走査/secの走査速度および標準チューン条件により走査した。
【0088】
HPLC-MS 系はAPI 4000 質量分析計 (Applied Biosystem/MDS SCIEX、Toronto、Canada)と連結したAgilent 1100 LC 系 (Agilent Technologies、Waldbronn、Germany)から構成された。HPLC分析は、市販のC18静止相(例えば:GROM ODS 7 pH、Thermo Betasil C18)を備えた逆相分離カラムで実施した。10μLまでの最終サンプル体積の蒸発させかつ再構成した極性および親油性相を注入し、分離はメタノール/水/蟻酸またはアセトニトリル/水/蟻酸勾配を用いて200μL/minの流量にて勾配溶出により実施した。
【0089】
質量分析は、電子スプレーイオン化により非極性画分(脂質画分)についてはポジティブモードでそして極性画分についてはネガティブモードで、多重反応モニタリング(MRM)モードおよび100〜1000amuのフルスキャンを用いて行った。
【0090】
ステロイドとそれらの代謝物質はオンラインSPE-LC-MS(固相抽出-LC-MS)により測定した。カテコールアミンとそれらの代謝物質はYamada et al [21]が記載したオンラインSPE-LC-MSにより測定した。
【実施例2】
【0091】
データ評価
血清サンプルは無作為化分析シーケンス設計で、各サンプルのアリコートから作製したプールサンプル(いわゆる「プール」)を用いて分析した。生データを分析シーケンス当たりのプールのメジアンに対して正規化してプロセスの可変性を説明した(いわゆる「比」)。比をlog10変換してデータを正規分布に近づけた。統計解析を線形モデルにより行い、BMI、年齢および 貯蔵時間に対するデータを補正しかつ全PSA、フリーPSA、f/t PSA比、腫瘍状態pT、グリーソン[全]、グリーソン[パンチ]を予測した。代謝物質をこの解析から同定した。さらに、受信者動作特性曲線(Receiver Operating Characteristic:ROC)解析を実施して第2期〜第3期の腫瘍状態の進行に対する面積下曲線(AUC)を計算した。
【0092】
前立腺組織サンプルを半無作為化分析シーケンス設計(semi-randomized analytical sequence design)で分析し(すなわち、各被験体のサンプルを、サブシーケンスのスロット、被験体および無作為化組織のシーケンスで分析し)、この目的のために提供された余分のサンプルから作製したプールサンプル(=「プール」)を用いた。生ピークデータを分析シーケンス当たりのプールのメジアンに対して正規化してプロセスの可変性を説明した(いわゆる「比-対-プール」)。比-対-プールを次の2つの異なる方法を用いて再センター化した:1)対照グループの可変性を保持することによって癌が誘発した変化を明らかにするために、全対照サンプルのメジアンに対する正規化、2)個体内での可変性を説明するために、癌サンプル比の対応する対照サンプルに対する個体内正規化。全ての比をlog10に変換してデータの正規分布に近づけた。統計解析を、正規化方法1からのlog10変換比についてペア両側t検定により、正規化方法2からのlog10変換比について線形回帰分析により、全PSA、フリーPSA、f/tPSA比、腫瘍-状態pT、グリーソン[全]グリーソン[パンチ]について実施した。さらに、受信者動作特性(ROC)解析を実施して、比の癌組織-対-健康対照に対する計算面積下曲線(AUC)を正規化方法1から計算した。
【0093】
血清と前立腺組織サンプルのデータ統合を、癌サンプルの対応する対照に対しての個体内正規化からの血清比および前立腺組織比について行った。統計解析を、血清からの全代謝物質と前立腺癌組織からの全代謝物質との線形回帰により行った。得た相関マトリックスから、バイオマーカー候補を次の3つの方法によって同定した:
1)前立腺組織中の同じ代謝物質と有意な相関を示す血清データの代謝物質、それ故に前立腺癌診断に対する血清中のバイオマーカー候補、
2)前立腺組織データと有意な相関を示す(すなわち、線形回帰のp値に基づくトップ40の最も有意な相関の中にある)血清中の代謝物質、それ故に前立腺癌診断に対する血清中のバイオマーカー候補、
3)7つの最も有意に変化した前立腺組織代謝物質(7-メチルグアニン、ビオチン、グリシン、ヒポキサンチン、トリコサン酸、MetID(69800140)、ウリジン)と有意な相関を示す血清中の代謝物質、それ故に前立腺癌診断に対する血清中のバイオマーカー候補。
【0094】
データ評価の結果を次の表で示す。
【0095】
表1:ペアワイズ両側t検定に基づく、健康組織と比較して有意差のある濃度レベルをもつ前立腺癌組織中の代謝物質バイオマーカー
【表1】
【0096】
表2:癌が第2期から第3期に進行する時に有意に異なる濃度レベルを示し、前立腺癌進行診断用の血清中のバイオマーカーを提供する血清中の代謝物質
【表2】
【0097】
表3:前立腺組織と比較して血清中で同定された代謝物質
【表3】
【0098】
表4:表3に記載した色々なデータ解析手法の詳しい説明
【表4】
【0099】
表5:MetIDおよび選択された代謝物質の化学/物理的特性。先の諸表においてMetID番号により定義されたバイオマーカーは次の化学および物理的特性により特徴付られる。
【表5】
【0100】
さらなるデータ解析の手法は、高グリーソンスコア前立腺癌と低グリーソンスコア前立腺癌による(表6および表8においてグリーソンスコア二分法はグリーソンBiと省略した)被験体の代謝区分を目指した。類似の手法をグリーソン三分法(表6および表8においてグリーソンTriと省略した)により実施した。両方の解析を前立腺組織データと血清データの両方に適用した。類似の手法を前立腺組織データの腫瘍状態pT(表7)についても実施した。被験体のグリーソンBi、グリーソンTriおよびpTスコア低/高への分類の詳細を表9に掲げる。区別する代謝物質を線形モデルで同定し(ANOVA)、表6、7、8に掲げた。評価した変化>1はアップレギュレーションを示し、評価した変化<1はダウンレギュレーションを示す。
【0101】
表6:前立腺癌組織における異なるグリーソンスコアレベル間を区別する代謝物質。予測される変化とp値を、log10変換比に対する混合効果線形モデル(無作為因子として被験体によるANOVA)により計算した。分類の判定基準を表9に掲げる。
【表6】
【0102】
表7:前立腺癌組織における異なる腫瘍状態pTレベル間を区別する代謝物質。見積もった変化とp値を、log10変換した比に対する混合効果線形モデルにより計算した(無作為因子としての被験体によるANOVA)。分類の判定基準を表9に掲げる。
【表7】
【0103】
表8:血清における異なるグリーソンスコアレベル間を区別する代謝物質。見積もった変化とp値を、年齢、BMIおよびサンプル貯蔵時間をlog10変換比に対する固定効果として用いて、線形モデルにより計算した(ANOVA)。分類の判定基準を表9に掲げた。
【表8】
【0104】
表9:低、中間および高のグリーソンスコアおよびpTスコアを分類する判定基準
【表9】
[1] 前立腺癌またはその素因を診断する方法であって、
(a) 前立腺癌を患うかまたはその素因を有すると疑われる被験体の試験サンプル中の少なくとも1つの代謝物質を測定するステップであって、該少なくとも1つの代謝物質が7-メチルグアニン、2-ヒドロキシベヘン酸(C22:0)、セレブロン酸(2-OH-C24:0)、イソペンテニルピロリン酸(IPP)、14-メチルヘキサデカン酸、2-アミノアジピン酸、セラミド(d18:1、C24:1)、エイコセン酸(C20:cis[11]1)、トリコサン酸(C23:0)、グリセロホスホエタノールアミン、極性画分、エイコサジエン酸(C20:2)No 02、アルギニン、ベヘン酸(C22:0)、β-カロテン、コレステノールNo 02、シトシン、DAG(C18:1、C18:2)、ジヒドロコレステロール、エリスロ-ジヒドロスフィンゴシン、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、ドデカノール、エイコサン酸(C20:0)、エイコサペンタエン酸(C20:cis[5,8,11,14,17]5)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:cis[8,11,14]3)、エリスロ-C16-スフィンゴシン、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、γ-トコフェロール、グルコン酸、グルクロン酸、グリセロール-2-リン酸エステル、リグノセリン酸(C24:0)、リソホスファチジルコリン(C18:2)、リソホスファチジルコリン(C20:4)、マルトトリオース、myo-イノシトール、脂質画分、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分、ネルボン酸(C24:cis[15]1)、ニコチンアミド、ペンタデカノール、ホスファチジルコリン(C18:0、C22:6)、植物スフィンゴシン、プソイドウリジン、ピルビン酸、3-O-メチルスフィンゴシン、スレオ-スフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴシン-1-リン酸エステル、トレオン酸、スフィンゴシン異性体No 01、コリンプラスマロゲン(C18,C20:4)、2-オキソイソカプロン酸、MetID(68300015)、MetID(68300047)、エリトロン酸、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分(myo-イノシトールホスホリピド類)、MetID(38300600)、1,5-アンヒドロソルビトール、3-ヒドロキシ酪酸エステル、3-メトキシチロシン、4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニルグリコール(HMPG)、5-ヒドロキシ-3-インドール酢酸(5-HIAA)、β-シトステロール、カンタキサンチン、セラミド(d18:1、C24:0)、MetID(68300017)、補酵素Q10、共役リノール酸(C18:trans[9,11]2)、クリプトキサンチン、ジヒドロテストステロン、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、グリセリン酸エステル、乳酸エステル、リコペン、リソホスファチジルコリン(16:0)、リソホスファチジルコリン(C17:0)、ホスファチジルコリン(C16:0, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0、C18:2)、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、MetID(68300048)、ホスファチジルコリン、MetID(68300020)、scyllo-イノシトール、3-O-メチルスフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴミエリン(d18:1, C16:0)、MetID(68300045)、テストステロン、およびデヒドロエピアンドロステロン硫酸塩から選択される上記ステップ;ならびに
(b) ステップ(a)の測定の試験結果をそれにより前立腺癌またはその素因を診断する参照と比較するステップ、
を含む、上記方法。
[2] 前記参照が前立腺癌を患うことがわかっているかまたはその素因を有することがわかっている被験体から誘導される、1に記載の方法。
[3] 試験サンプルと参照が同一または類似の結果は前立腺癌またはその素因に対する指標となる、2に記載の方法。
[4] 前記参照が前立腺癌を患わないことがわかっているかまたはその素因を有しないことがわかっている被験体から誘導される、1に記載の方法。
[5] 前記参照が被験体の集団中の前記少なくとも1つの代謝物質に対して計算された参照である、1に記載の方法。
[6] 前記少なくとも1つの代謝物質の不在または参照サンプルと比較して試験サンプルにおいて異なるその量は前立腺癌またはその素因の指標である、4または5に記載の方法。
[7] ビオチン、ウリジン、ヒポキサンチン、イノシン、グリシン、システイン、シスチン、ウラシル、アスパラギン酸、イソロイシン、trans-4-ヒドロキシプロリン、プロリン、メチオニン、グリセロール-3-リン酸エステル、5-オキソプロリン、葉酸、グルタミン酸、グルタミン、ロイシン、ミリスチン酸(C14:0)、フェニルアラニン、ヘプタデカン酸(C17:0)、シトルリン、トレオニン、myo-イノシトール-1-リン酸エステル、myo-イノシトールホスホリピド、リボース、フマル酸塩、トリプトファン、グリセロール、チロシン、ホモセリン、ヒスチジン、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、キサンチン、オルニチン、アルギニン、シトルリン、パントテン酸、パルミトレイン酸(C16:cis[9]1)、コハク酸塩、フルクトース、α-トコフェロール、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、マルトース、バリン、アデニン、リシン、リンゴ酸塩、アラニン、スペルミジン、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、オレイン酸(C18:cis[9]1)、グリセロールリン酸エステル、N-アセチルノイラミン酸、キシリトール、セリン、N-アセチルノイラミン酸、S-アデノシルメチオニン、リン酸エステル、グルコース、コレステロール、スペルミン、プトレシン、cis-アコニット酸塩、クエン酸塩、リブロース-5-リン酸エステル、ピロリン酸(PPi)、エライジン酸(C18:trans[9]1)、アデニン、2-ヒドロキシ酪酸エステル、サルコシン、イソクエン酸塩、クレアチン、グルタチオンジスルフィド(GSSG)、3-ヒドロキシ酪酸エステル、およびタウリンから成る群より選択される少なくとも1つのさらなる代謝物質を測定する、1〜6のいずれか1項に記載の方法。
[8] 前立腺癌の進行を診断する方法であって、
(a) 進行中の前立腺癌を患うことが疑われる被験体の試験サンプル中の少なくとも1つの代謝物質を測定するステップであって、該少なくとも1つの代謝物質がMetID(58300131)、ホスファチジルコリン(C18:0、C18:2)、ホスファチジルコリン(C16:0, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:2、C18:2)、2-オキソイソカプロン酸、エリトロン酸、コリンプラスマロゲン(C18,C20:4)、コリンプラスマロゲン、リソホスファチジルコリン(18:0)、ホスファチジルコリン(C16:0、C16:0)、ホスファチジルコリン、ピルビン酸、ホスホエノールピルビン酸エステル、β-シトステロール、および補酵素Q10から成る群より選択される上記ステップ;ならびに
(b) ステップ(a)における測定の試験結果を参照と比較し、これにより該進行中の前立腺癌を診断するステップ
を含むものである上記方法。
[9] 前記参照が進行中の前立腺癌を患うことがわかっている被験体から誘導される、8に記載の方法。
[10] 試験サンプルと参照が同一または類似の結果は進行中の前立腺癌の指標である、9に記載の方法。
[11] 前記参照が進行中の前立腺癌を患わないことがわかっている被験体から誘導される、8に記載の方法。
[12] 前記参照が被験体の集団中の前記少なくとも1つの代謝物質に対する計算された参照である、8に記載の方法。
[13] 前記少なくとも1つの代謝物質の不在または参照サンプルと比較して試験サンプルにおいて異なるその量は進行中の前立腺癌の指標である、11または12に記載の方法。
[14] 前記少なくとも1つの代謝物質を前記測定する手段が質量分析(MS)を含むものである、1〜13のいずれか1項に記載の方法。
[15] 前記質量分析が液体クロマトグラフィ(LC)MSおよび/またはガスクロマトグラフィ(GC)MSである、14に記載の方法。
[16] 前記サンプルが前記被験体の体液である、1〜15のいずれか1項に記載の方法。
[17] 前記被験体がヒトである、1〜16のいずれか1項に記載の方法。
[18] 前立腺癌またはその素因の指標である少なくとも1つの代謝物質の特徴的な値を含むデータ収集であって、前記代謝物質が7-メチルグアニン、2-ヒドロキシベヘン酸(C22:0)、セレブロン酸(2-OH-C24:0)、イソペンテニルピロリン酸(IPP)、14-メチルヘキサデカン酸、2-アミノアジピン酸、セラミド(d18:1、C24:1)、エイコセン酸(C20:cis[11]1)、トリコサン酸(C23:0)、グリセロホスホエタノールアミン、極性画分、エイコサジエン酸(C20:2)No 02、アルギニン、ベヘン酸(C22:0)、β-カロテン、コレステノールNo 02、シトシン、DAG(C18:1、C18:2)、ジヒドロコレステロール、エリスロ-ジヒドロスフィンゴシン、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、ドデカノール、エイコサン酸(C20:0)、エイコサペンタエン酸(C20:cis[5,8,11,14,17]5)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:cis[8,11,14]3)、エリスロ-C16-スフィンゴシン、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、γ-トコフェロール、グルコン酸、グルクロン酸、グリセロール-2-リン酸エステル、リグノセリン酸(C24:0)、リソホスファチジルコリン(C18:2)、リソホスファチジルコリン(C20:4)、マルトトリオース、myo-イノシトール、脂質画分、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分、ネルボン酸(C24:cis[15]1)、ニコチンアミド、ペンタデカノール、ホスファチジルコリン(C18:0、C22:6)、植物スフィンゴシン、プソイドウリジン、ピルビン酸、3-O-メチルスフィンゴシン、スレオ-スフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴシン-1-リン酸エステル、トレオン酸、スフィンゴシン異性体No 01、コリンプラスマロゲン(C18,C20:4)、2-オキソイソカプロン酸、MetID(68300015)、MetID(68300047)、エリトロン酸、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分(myo-イノシトールホスホリピド類)、MetID(38300600)、1,5-アンヒドロソルビトール、3-ヒドロキシ酪酸エステル、3-メトキシチロシン、4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニルグリコール(HMPG)、5-ヒドロキシ-3-インドール酢酸(5-HIAA)、β-シトステロール、カンタキサンチン、セラミド(d18:1、C24:0)、MetID(68300017)、補酵素Q10、共役リノール酸(C18:trans[9,11]2)、クリプトキサンチン、ジヒドロテストステロン、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、グリセリン酸エステル、乳酸エステル、リコペン、リソホスファチジルコリン(16:0)、リソホスファチジルコリン(C17:0)、ホスファチジルコリン(C16:0, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0、C18:2)、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、MetID(68300048)、ホスファチジルコリン、MetID(68300020)、scyllo-イノシトール、3-O-メチルスフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴミエリン(d18:1, C16:0)、MetID(68300045)、テストステロン、およびデヒドロエピアンドロステロン硫酸塩から成る群より選択される、上記データ収集。
[19] 進行中の前立腺癌の指標である少なくとも1つの代謝物質の特徴的な値を含むデータ収集であって、前記代謝物質がMetID(58300131)、ホスファチジルコリン(C18:0、C18:2)、ホスファチジルコリン(C16:0, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:2、C18:2)、2-オキソイソカプロン酸、エリトロン酸、コリンプラスマロゲン(C18,C20:4)、コリンプラスマロゲン、リソホスファチジルコリン(18:0)、ホスファチジルコリン(C16:0、C16:0)、ホスファチジルコリン、ピルビン酸、ホスホエノールピルビン酸エステル、β-シトステロール、および補酵素Q10から成る群より選択される、上記データ収集。 [20] 18または19に記載のデータ収集を含むデータ記憶媒体。
[21] 20に記載のデータ記憶媒体(b)
と作動しうる形で連結されたサンプルの代謝物質の特性値を比較する手段(a)
を含むシステム。
[22] サンプルの代謝物質の特徴的な値を測定する手段をさらに含むものである、21に記載のシステム。
[23] (i)次の代謝物質:7-メチルグアニン、2-ヒドロキシベヘン酸(C22:0)、セレブロン酸(2-OH-C24:0)、イソペンテニルピロリン酸(IPP)、14-メチルヘキサデカン酸、2-アミノアジピン酸、セラミド(d18:1、C24:1)、エイコセン酸(C20:cis[11]1)、トリコサン酸(C23:0)、グリセロホスホエタノールアミン、極性画分、エイコサジエン酸(C20:2)No 02、アルギニン、ベヘン酸(C22:0)、β-カロテン、コレステノールNo 02、シトシン、DAG(C18:1、C18:2)、ジヒドロコレステロール、エリスロ-ジヒドロスフィンゴシン、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、ドデカノール、エイコサン酸(C20:0)、エイコサペンタエン酸(C20:cis[5,8,11,14,17]5)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:cis[8,11,14]3)、エリスロ-C16-スフィンゴシン、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、γ-トコフェロール、グルコン酸、グルクロン酸、グリセロール-2-リン酸エステル、リグノセリン酸(C24:0)、リソホスファチジルコリン(C18:2)、リソホスファチジルコリン(C20:4)、マルトトリオース、myo-イノシトール、脂質画分、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分、ネルボン酸(C24:cis[15]1)、ニコチンアミド、ペンタデカノール、ホスファチジルコリン(C18:0、C22:6)、植物スフィンゴシン、プソイドウリジン、ピルビン酸、3-O-メチルスフィンゴシン、スレオ-スフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴシン-1-リン酸エステル、トレオン酸、スフィンゴシン異性体No 01、コリンプラスマロゲン(C18,C20:4)、2-オキソイソカプロン酸、MetID(68300015)、MetID(68300047)、エリトロン酸、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分(myo-イノシトールホスホリピド類)、MetID(38300600)、1,5-アンヒドロソルビトール、3-ヒドロキシ酪酸エステル、3-メトキシチロシン、4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニルグリコール(HMPG)、5-ヒドロキシ-3-インドール酢酸(5-HIAA)、β-シトステロール、カンタキサンチン、セラミド(d18:1、C24:0)、MetID(68300017)、補酵素Q10、共役リノール酸(C18:trans[9,11]2)、クリプトキサンチン、ジヒドロテストステロン、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、グリセリン酸エステル、乳酸エステル、リコペン、リソホスファチジルコリン(16:0)、リソホスファチジルコリン(C17:0)、ホスファチジルコリン(C16:0, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0、C18:2)、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、MetID(68300048)、ホスファチジルコリン、MetID(68300020)、scyllo-イノシトール、3-O-メチルスフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴミエリン(d18:1, C16:0)、MetID(68300045)、テストステロン、およびデヒドロエピアンドロステロン硫酸塩の少なくとも1つを測定する手段、または(ii)次の代謝物質: MetID(58300131)、ホスファチジルコリン(C18:0、C18:2)、ホスファチジルコリン(C16:0, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:2、C18:2)、2-オキソイソカプロン酸、エリトロン酸、コリンプラスマロゲン(C18,C20:4)、コリンプラスマロゲン、リソホスファチジルコリン(18:0)、ホスファチジルコリン(C16:0、C16:0)、ホスファチジルコリン、ピルビン酸、ホスホエノールピルビン酸エステル、β-シトステロール、および補酵素Q10の少なくとも1つを測定する手段
を含む、診断手段。
[24] (i)次の代謝物質:7-メチルグアニン、2-ヒドロキシベヘン酸(C22:0)、セレブロン酸(2-OH-C24:0)、イソペンテニルピロリン酸(IPP)、14-メチルヘキサデカン酸、2-アミノアジピン酸、セラミド(d18:1、C24:1)、エイコセン酸(C20:cis[11]1)、トリコサン酸(C23:0)、グリセロホスホエタノールアミン、極性画分、エイコサジエン酸(C20:2)No 02、アルギニン、ベヘン酸(C22:0)、β-カロテン、コレステノールNo 02、シトシン、DAG(C18:1、C18:2)、ジヒドロコレステロール、エリスロ-ジヒドロスフィンゴシン、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、ドデカノール、エイコサン酸(C20:0)、エイコサペンタエン酸(C20:cis[5,8,11,14,17]5)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:cis[8,11,14]3)、エリスロ-C16-スフィンゴシン、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、γ-トコフェロール、グルコン酸、グルクロン酸、グリセロール-2-リン酸エステル、リグノセリン酸(C24:0)、リソホスファチジルコリン(C18:2)、リソホスファチジルコリン(C20:4)、マルトトリオース、myo-イノシトール、脂質画分、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分、ネルボン酸(C24:cis[15]1)、ニコチンアミド、ペンタデカノール、ホスファチジルコリン(C18:0、C22:6)、植物スフィンゴシン、プソイドウリジン、ピルビン酸、3-O-メチルスフィンゴシン、スレオ-スフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴシン-1-リン酸エステル、トレオン酸、スフィンゴシン異性体No 01、コリンプラスマロゲン(C18,C20:4)、2-オキソイソカプロン酸、MetID(68300015)、MetID(68300047)、エリトロン酸、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分(myo-イノシトールホスホリピド類)、MetID(38300600)、1,5-アンヒドロソルビトール、3-ヒドロキシ酪酸エステル、3-メトキシチロシン、4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニルグリコール(HMPG)、5-ヒドロキシ-3-インドール酢酸(5-HIAA)、β-シトステロール、カンタキサンチン、セラミド(d18:1、C24:0)、MetID(68300017)、補酵素Q10、共役リノール酸(C18:trans[9,11]2)、クリプトキサンチン、ジヒドロテストステロン、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、グリセリン酸エステル、乳酸エステル、リコペン、リソホスファチジルコリン(16:0)、リソホスファチジルコリン(C17:0)、ホスファチジルコリン(C16:0, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0、C18:2)、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、MetID(68300048)、ホスファチジルコリン、MetID(68300020)、scyllo-イノシトール、3-O-メチルスフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴミエリン(d18:1, C16:0)、MetID(68300045)、テストステロン、およびデヒドロエピアンドロステロン硫酸塩の少なくとも1つ、または
(ii)次の代謝物質:MetID(58300131)、ホスファチジルコリン(C18:0、C18:2)、ホスファチジルコリン(C16:0, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:2、C18:2)、2-オキソイソカプロン酸、エリトロン酸、コリンプラスマロゲン(C18,C20:4)、コリンプラスマロゲン、リソホスファチジルコリン(18:0)、ホスファチジルコリン(C16:0、C16:0)、ホスファチジルコリン、ピルビン酸、ホスホエノールピルビン酸エステル、β-シトステロール、および補酵素Q10の少なくとも1つを測定する手段、
を含む、診断組成物。
[25] 被験体のサンプル中の前立腺癌またはその素因を診断するための、少なくとも1つの代謝物質の使用またはその測定用手段であって、該少なくとも1つの代謝物質が7-メチルグアニン、2-ヒドロキシベヘン酸(C22:0)、セレブロン酸(2-OH-C24:0)、イソペンテニルピロリン酸(IPP)、14-メチルヘキサデカン酸、2-アミノアジピン酸、セラミド(d18:1、C24:1)、エイコセン酸(C20:cis[11]1)、トリコサン酸(C23:0)、グリセロホスホエタノールアミン、極性画分、エイコサジエン酸(C20:2)No 02、アルギニン、ベヘン酸(C22:0)、β-カロテン、コレステノールNo 02、シトシン、DAG(C18:1、C18:2)、ジヒドロコレステロール、エリスロ-ジヒドロスフィンゴシン、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、ドデカノール、エイコサン酸(C20:0)、エイコサペンタエン酸(C20:cis[5,8,11,14,17]5)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:cis[8,11,14]3)、エリスロ-C16-スフィンゴシン、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、γ-トコフェロール、グルコン酸、グルクロン酸、グリセロール-2-リン酸エステル、リグノセリン酸(C24:0)、リソホスファチジルコリン(C18:2)、リソホスファチジルコリン(C20:4)、マルトトリオース、myo-イノシトール、脂質画分、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分、ネルボン酸(C24:cis[15]1)、ニコチンアミド、ペンタデカノール、ホスファチジルコリン(C18:0、C22:6)、植物スフィンゴシン、プソイドウリジン、ピルビン酸、3-O-メチルスフィンゴシン、スレオ-スフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴシン-1-リン酸エステル、トレオン酸、スフィンゴシン異性体No 01、コリンプラスマロゲン(C18,C20:4)、2-オキソイソカプロン酸、MetID(68300015)、MetID(68300047)、エリトロン酸、myo-イノシトール-2-リン酸エステル、脂質画分(myo-イノシトールホスホリピド類)、MetID(38300600)、1,5-アンヒドロソルビトール、3-ヒドロキシ酪酸エステル、3-メトキシチロシン、4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニルグリコール(HMPG)、5-ヒドロキシ-3-インドール酢酸(5-HIAA)、β-シトステロール、カンタキサンチン、セラミド(d18:1、C24:0)、MetID(68300017)、補酵素Q10、共役リノール酸(C18:trans[9,11]2)、クリプトキサンチン、ジヒドロテストステロン、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、グリセリン酸エステル、乳酸エステル、リコペン、リソホスファチジルコリン(16:0)、リソホスファチジルコリン(C17:0)、ホスファチジルコリン(C16:0, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0、C18:2)、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、MetID(68300048)、ホスファチジルコリン、MetID(68300020)、scyllo-イノシトール、3-O-メチルスフィンゴシン、5-O-メチルスフィンゴシン、エリスロ-スフィンゴシン、スフィンゴミエリン(d18:1, C16:0)、MetID(68300045)、テストステロン、およびデヒドロエピアンドロステロン硫酸塩から成る群より選択される、上記少なくとも1つの代謝物質の使用またはその測定用手段。
[26] 被験体のサンプル中の進行中の前立腺癌を診断するための、少なくとも1つの代謝物質の使用またはその測定用手段であって、該少なくとも1つの代謝物質がMetID(58300131)、ホスファチジルコリン(C18:0、C18:2)、ホスファチジルコリン(C16:0, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:2、C18:2)、2-オキソイソカプロン酸、エリトロン酸、コリンプラスマロゲン(C18,C20:4)、コリンプラスマロゲン、リソホスファチジルコリン(18:0)、ホスファチジルコリン(C16:0、C16:0)、ホスファチジルコリン、ピルビン酸、ホスホエノールピルビン酸エステル、β-シトステロール、および補酵素Q10から成る群より選択される、上記少なくとも1つの代謝物質の使用またはその測定用手段。